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【発明の名称】 光触媒部材
【発明者】 【氏名】松川聖子

【氏名】鈴木孝樹

【氏名】坂内厚一

【氏名】半澤勝

【氏名】井平誠

【要約】 【課題】摩擦堅牢性、特に、耐払拭性に優れた傷付きにくい光触媒部材と、その製造方法を提供する。

【構成】熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材1の上に保護層2と光触媒層3が積層され、基材1から保護層2を通って光触媒層3の表面まで移行した熱硬化性樹脂4が光触媒層3の表面に面一に露出し、この露出部4aが光触媒層の表面に分散した光触媒部材A1とする。熱硬化性樹脂露出部4aで光触媒層3が保護されるので摩擦堅牢性、耐払拭性、防傷性が向上し、光触媒層3が剥離、脱落しないので良好な光触媒作用を長期間持続できる。製造方法は、光触媒層3と保護層2を積層した転写フィルムを基材形成用材料の上に重ねて熱圧着する際に、基材形成用材料に含まれる未硬化の熱硬化性樹脂を保護層2を通して光触媒層3の表面まで移行させて露出、分散させるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材の上に、保護層を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在した光触媒部材であって、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が、光触媒層と保護層を通って基材まで連続していることを特徴とする光触媒部材。
【請求項2】
熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材の上に、保護層を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在した光触媒部材であって、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が、基材から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行していることを特徴とする光触媒部材。
【請求項3】
保護層の厚さが0.3〜5.0μmである請求項1又は請求項2に記載の光触媒部材。
【請求項4】
光触媒層の表面の面積に占める熱硬化性樹脂の露出部の合計面積の割合が20〜99%である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光触媒部材。
【請求項5】
ブラックライトブルーを用いて1mW/cm2の強度の光を168時間照射した後の表面の水との接触角が30〜90°である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光触媒部材。
【請求項6】
基材が、繊維と熱硬化性樹脂と無機フィラーとよりなる芯材層の上に熱硬化性樹脂含浸化粧層を積層一体化した化粧板である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光触媒部材。
【請求項7】
熱硬化性樹脂が熱硬化性メラミン樹脂である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光触媒部材。
【請求項8】
剥離フィルムの上に光触媒粒子を含んだ光触媒層と保護層とを順次形成して転写フィルムを作製し、未硬化の熱硬化性樹脂を含んだ基材形成用材料の上に転写フィルムを保護層が基材側となるように重ねて熱圧着することにより、未硬化の熱硬化性樹脂を基材形成用材料から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行させて、光触媒層の表面に露出、散在させると共に、未硬化の熱硬化性樹脂を熱硬化させて形成した基材の上に保護層と光触媒層を転写することを特徴とする光触媒部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒機能を有する光触媒部材に関し、更に詳しくは、摩擦堅牢性、特に、耐払拭性に優れた光触媒部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックス、金属、合成樹脂などからなる基材の表面に光触媒層を形成し、光触媒機能を付与した種々の光触媒部材が開発されている。かかる光触媒部材は、表面に露出する光触媒粒子によって、悪臭を分解したり、抗菌・防黴作用を発揮したり、親水性を発現したりするため、クーラーや掃除機の内部に使用されたり、カーポートの屋根材や高速道路の防音板等の用途に使用されている。
【0003】
また、基材の表面に光触媒粒子を含んだ層を形成し、この層の表面に10〜100nm程度の親水部と親油部をモザイク状に分散形成した親水親油性部材も提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−166495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光触媒部材のように薄くて脆弱な光触媒層が表面に形成されているものは、物が当ったり擦ったりすると、その衝撃力や摩擦力で光触媒層が損傷したり剥脱したりして、光触媒機能が低下するという問題があった。
【0005】
また、特許文献1の親水親油性部材は、光触媒粒子を含んだ光触媒層の表面に酸素を配位させて親油性表面を形成し、水分子の存在下で光触媒粒子が励起する波長の光を照射して、配位した酸素の開裂反応を局所的に生じさせ、この開裂反応によりチタン原子に水酸基を結合させて、10〜100nm程度の親水部と親油部をモザイク状に分散形成したものであるから、光触媒層それ自体は従来の光触媒部材と同様に脆弱で表面に形成されており、従って、この特許文献1の親水親油性部材も、外部からの衝撃力や摩擦力で光触媒層が損傷したり脱落したりして光触媒機能の低下を招くという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情の下になされたもので、摩擦堅牢性、特に、耐払拭性に優れ、傷付きにくい光触媒部材を提供することと、その光触媒部材の製造方法を提供すること解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る光触媒部材は、熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材の上に、保護層を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在した光触媒部材であって、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が、光触媒層と保護層を通って基材まで連続していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る他の光触媒部材は、熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材の上に、保護層を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在した光触媒部材であって、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が、基材から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行していることを特徴とするものである。
【0009】
このような本発明の各光触媒部材においては、保護層の厚さが0.3〜5.0μmであること、光触媒層の表面の面積に占める熱硬化性樹脂の露出部の合計面積の割合が20〜99%であること、ブラックライトブルーを用いて1mW/cm2の強度の光を168時間照射した後の表面の水との接触角が30〜90°であることが好ましい。また、基材として、繊維と熱硬化性樹脂と無機材とよりなる芯材層の上に熱硬化性樹脂含浸化粧層を積層一体化した化粧板などが好ましく使用され、熱硬化性樹脂としては熱硬化性メラミン樹脂が好ましく使用される。
【0010】
一方、本発明に係る光触媒部材の製造方法は、剥離フィルムの上に光触媒粒子を含んだ光触媒層と保護層とを順次形成して転写フィルムを作製し、未硬化の熱硬化性樹脂を含んだ基材形成用材料の上に転写フィルムを保護層が基材側となるように重ねて熱圧着することにより、未硬化の熱硬化性樹脂を基材形成用材料から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行させて、光触媒層の表面に露出、散在させると共に、未硬化の熱硬化性樹脂を熱硬化させて形成した基材の上に保護層と光触媒層を転写することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光触媒部材のように、基材の上に保護層を介して光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在し、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が光触媒層と保護層を通って基材まで連続していると、光触媒層が熱硬化性樹脂の散在した露出部によって保護されるため、光触媒部材の摩擦堅牢性、特に、耐払拭性が向上し、防傷性も向上する。しかも、光触媒層表面に露出している熱硬化性樹脂の露出部は、基材から光触媒層表面にまで連続する熱硬化性樹脂によって支持されているため、外部からの衝撃力や摩擦力に対する強度が大きく、優れた保護作用を発揮する。従って、光触媒部材表面が繰り返し擦られても光触媒層や光触媒粒子が剥脱し難く、また、物が当っても光触媒層が損傷し難いので、長期に亘って安定した光触媒作用を発揮することができる。もっとも、厳密に言えば、熱硬化性樹脂の露出部相互間の光触媒層表面は直接的に保護されないが、この熱硬化性樹脂の露出部相互の間隔は狭いため、露出部相互間の光触媒層表面のみに物が当って損傷したり、露出部相互間の光触媒層表面のみが払拭されて光触媒粒子が剥脱するようなことは現実には皆無に等しく、従って、光触媒部材の表面全体に亘って摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性が向上することになる。
【0012】
本発明に係る他の光触媒部材のように、熱硬化性樹脂からなる基材又は熱硬化性樹脂を含んだ基材の上に、保護層を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層が積層され、且つ該光触媒層表面に熱硬化性樹脂が露出状態で散在し、該露出散在する熱硬化性樹脂の少なくとも一部が基材から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行していると、光触媒層が熱硬化性樹脂の散在した露出部によって保護されるため、前記と同様に、光触媒部材の摩擦堅牢性、特に、耐払拭性が向上し、防傷性も向上する。しかも、光触媒層表面に露出している熱硬化性樹脂の露出部は、基材から光触媒層表面にまでの移行通路に存在する熱硬化性樹脂によって支持されているため、前記と同様に、外部からの衝撃力や摩擦力に対する強度が大きく、優れた保護作用を発揮する。従って、光触媒部材表面が繰り返し擦られても光触媒層や光触媒粒子が剥脱し難く、また、物が当っても光触媒層が損傷し難いので、長期に亘って安定した光触媒作用を発揮することができる。
【0013】
本発明の光触媒部材のように、熱硬化性樹脂が光触媒層表面に散在する状態で露出していても良好な光触媒作用が発揮される理由については明らかでないが、光触媒層の熱硬化性樹脂露出部の相互間において発揮される光触媒作用に加えて、熱硬化性樹脂の露出部を透過した光によっても光触媒層の光触媒粒子が活性化されて発生したラジカル種や活性酸素種などが、熱硬化性樹脂の露出部の表面側へ飛散し、悪臭成分や低分子量有機物の分解作用、抗菌・防黴作用などの光触媒作用を行うからであると推測される。
【0014】
本発明に係る光触媒部材において、上記のように熱硬化性樹脂の少なくとも一部が、光触媒層と保護層を通って基材まで連続するか、或いは、基材から保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行している状態にあるのは、後述する基材の表面に保護層と光触媒層を熱圧着によって転写して積層する製法を用いた場合、その圧力によって基材の熱硬化性樹脂が保護層と光触媒層を通って光触媒層の表面まで移行したのち、保護層又は/及び光触媒層の変動によって一部の熱硬化性樹脂の移行通路が遮断されるからであると推測される。
【0015】
保護層の厚さが0.3〜5.0μmである光触媒部材は、基材まで連続する熱硬化性樹脂形成し易いし、また、光触媒層表面まで移行(滲出)する熱硬化性樹脂の量を適量にすることができるため、光触媒層表面の熱硬化性樹脂の露出部の占める割合や露出部の散在する状態を良好とすることができ、光触媒作用を低下させることなく、光触媒層表面の摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性を大幅に向上させることが可能となる。保護層の厚さが0.3μmよりも薄くなると、保護層の樹脂透過性が良すぎて、光触媒層表面に露出する熱硬化性樹脂の量が多くなりすぎたり、光触媒層表面まで移行(滲出)する熱硬化性樹脂の量が多すぎるため、光触媒部材の外観が低下し、光触媒作用の低下を招く恐れも出てくる。一方、保護層の厚さが5.0μmを超えると、保護層の樹脂透過性が大幅に低下し、光触媒層表面に露出する熱硬化性樹脂の量が少なくなりすぎたり、光触媒層表面まで移行する熱硬化性樹脂の量が激減して光触媒層表面に露出し難くなるため、光触媒層表面の摩擦堅牢性、防傷性を向上させることが困難になる。
【0016】
そして、光触媒層の表面の面積に占める熱硬化性樹脂の露出部の合計面積の割合が20〜99%である光触媒部材は、熱硬化性樹脂の露出部相互間の面積や間隔が適度に小さくなるので、光触媒層の表面全体の摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性が更に向上するようになる。熱硬化性樹脂の露出部の合計面積の割合が20%より少なくなると、熱硬化性樹脂の露出部による光触媒層表面の保護作用が低下するため、摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性の向上が不充分になり、その割合が99%を超えると、光触媒部材の外観が悪くなると共に、悪臭成分や低分子量有機物の分解作用、抗菌・防黴作用などの光触媒作用の低下を招く恐れが生じる。
【0017】
また、ブラックライトブルーを用いて1mW/cm2の強度の光を168時間照射した後の表面の水との接触角が30〜90°である光触媒部材は、親水性に劣り水の濡れ性が悪いため、光触媒作用の一つである親水性化による自己浄化の作用は実質的に発揮されないが、悪臭成分、低分子量有機物等の分解作用や抗菌・防黴作用などの光触媒作用は充分発揮することができ、タバコのヤニを分解したり、シックハウス症候群の原因となる揮発性有機化合物(VOC)ガスの分解等の効果も得ることができる。
【0018】
また、基材として、繊維と熱硬化性樹脂と無機材とよりなる芯材層の上に熱硬化性樹脂含浸化粧層を積層一体化した化粧板を用いた光触媒部材は、化粧板の芯材層の繊維により熱伸縮を抑制することができるため、光触媒層や保護層にクラックが発生するのを防止することができ、熱硬化性樹脂含浸化粧層の模様や図柄を光触媒層と保護層を通して目視できる化粧光触媒部材とすることもできる。しかも、上記の化粧板は難燃性ないし不燃性とすることが容易であるので、そのような化粧板を使用すれば難燃性ないし不燃性の光触媒部材とすることもできる。
【0019】
そして、基材の熱硬化性樹脂や光触媒層表面に露出状態で散在する熱硬化性樹脂が熱硬化性メラミン樹脂である光触媒部材は、該メラミン樹脂が三次元に架橋、硬化して高い表面硬度と強度を有し、しかも、表面の摩擦抵抗が小さいものであるため、光触媒層表面の摩擦堅牢性、特に耐払拭性の向上や、防傷性の向上が顕著になる。また、熱硬化性メラミン樹脂は光線透過率が高く、光触媒層の表面に露出していても可視光や紫外線を良く透過させて光触媒層の光触媒粒子を活性化させるので、光触媒作用を充分に発揮させることができる。加えて、熱硬化性メラミン樹脂は撥油性の樹脂であるから、このような撥油性のメラミン樹脂が光触媒層表面に露出状態で散在している光触媒部材を、台所などの油を多用する環境で用いると、油汚れが拭き取りやすくなり、光触媒層による有機物分解作用と相乗して優れた油汚れ防止効果を発揮することができる。
【0020】
このような光触媒部材は、上述した本発明の製造方法によって効率良く量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0022】
図1は本発明に係る光触媒部材の一実施形態を示す模式断面図、図2は本発明に係る光触媒部材の他の実施形態を示す模式断面図である。
【0023】
図1、図2にそれぞれ示す光触媒部材A1,A2は、熱硬化性樹脂からなるシート状ないし板状の基材1の上に、保護層2を介して、光触媒粒子を含んだ光触媒層3を積層したものであって、光触媒層3の表面に熱硬化性樹脂4が露出状態で散在して露出部4aを形成していて、光触媒層3の摩擦堅牢性や防傷性を向上させている。そして、該露出散在している熱硬化性樹脂の露出部4aの少なくとも一部は、該露出部4aから光触媒層3を通って基材1まで連続して連結しているか、或いは、基材1から保護層2と光触媒層3を通って光触媒層表面の露出部4aまで移行して連結(以下、これらの連結した熱硬化性樹脂をあわせて称する場合は連結熱硬化性樹脂4と記す)している。
【0024】
これらの光触媒部材A1と光触媒部材A2の構成上の相違点は、光触媒部材A1よりも光触媒部材A2の方が、連結熱硬化性樹脂4の量が若干多く、そのため、光触媒部材A2の連結熱硬化性樹脂4の露出部4aが図2に示すように周囲に拡大して、光触媒部材A1の連結熱硬化性樹脂4の露出部4aよりも面積が大きくなっている点である。その他の構成は、光触媒部材A1も光触媒部材A2も共通している。
【0025】
尚、これらの光触媒部材A1,A2はいずれも、保護層2と光触媒層3を基材1の片面に積層しているが、基材1の両面に形成しても勿論よい。また、連結熱硬化性樹脂4は、図においては、直線的に連続して連結しているが、これに限らず曲線的に連続していてもよく、後述する転写製法においては、ランダムな曲線でもって形成されることが一般的である。
【0026】
これらの光触媒部材A1,A2を後述する転写製法を用いて製造した場合、理論的には図1,図2に示すように熱硬化性樹脂の露出部の全てが基材1と連続している筈であるが、熱硬化性樹脂の露出部のうちの大半が基材1と連続し、残りは基材1と不連続になっている場合もある(但し、図1,図2では不連続のものを図示していない)。このように熱硬化性樹脂の露出部のうちの一部が基材1と不連続になるのは、基材1の表面に保護層2と光触媒層3を熱圧着によって転写して積層する際、その圧力によって基材1の熱硬化性樹脂が保護層2と光触媒層3を通って光触媒層3の表面へ移行して露出したのち、その圧力による圧延作用などのために保護層2が変動することによって一部の熱硬化性樹脂の移行通路が遮断されるからであると推測される。また、図2に示すように連結熱可塑性樹脂4の露出部4aが拡大している場合は、拡大した露出部4aの一部が分断されて光触媒層3の表面に分散することも一つの原因であると推測される。
【0027】
基材1としては、熱硬化性樹脂からなるもの、熱硬化性樹脂に無機繊維(例えばガラス繊維等)や有機繊維(例えばカーボン繊維、セルロース繊維等)や無機フィラーなどを配合したもの、無機又は有機繊維の集合体に熱硬化性樹脂を含浸させたもの、熱硬化性樹脂を含んだ後述の繊維補強化粧材などが用いられる。上記の熱硬化性樹脂に繊維、無機フィラーなどを配合した基材や、繊維の集合体に熱硬化性樹脂を含浸させた基材や、熱硬化性樹脂を含んだ繊維補強化粧材からなる基材は、繊維や無機フィラーによって熱伸縮が抑制され、保護層2や光触媒層3にクラックを発生させることがないので、好ましく使用される。
【0028】
この基材1は、光触媒部材A1,A2の用途に適合するように、無色透明としても、着色透明としても、着色不透明としても、図柄・模様入りとしてもよいものであり、その厚さや形状についても特に限定されることなく光触媒部材A1,A2の用途に適合した厚さや形状とすればよいものである。また、この基材1には、熱線吸収機能、熱線反射機能、耐候性機能、電磁波吸収機能、電磁波反射機能、制電機能、ハードコート機能などを適宜付与してもよい。
【0029】
基材1を構成する熱硬化性樹脂や基材1に含まれる熱硬化性樹脂は、光触媒層3の表面まで連続、又は移行して該表面に露出し、該露出部4aが光触媒層3の表面に散在して光触媒層3の摩擦堅牢性や防傷性を向上させるものであるから、熱硬化時に三次元網目状に架橋、硬化して大きい強度を発揮するメラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの単独又は混合若しくは共重合樹脂が用いられる。これらの中でも、透明性が良好で表面硬度の高い熱硬化性のアクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが好ましく使用され、特に、結合エネルギーが高く、光触媒作用で分解されにくく、表面硬度が高くて、透明性に優れたメラミン樹脂は極めて好ましく使用される。また、対傷自己治癒性のあるウレタンアクリレート樹脂なども好適に用いられる。
【0030】
保護層2は、光触媒層3の光触媒作用が基材1に及ぶのを阻止して基材1を保護する役目を果たすものであり、かかる保護層2の好ましい例としては、シリカなどの無機物と、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などのバインダー樹脂とを均一に混合した組成物で形成された層や、シリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂又は共重合樹脂で形成された層や、シリコーン樹脂のみで形成された層や、アモルファスの酸化チタン等の金属酸化物で形成された層などを挙げることができる。
【0031】
この保護層2の厚みは、光触媒層3の表面に露出、散在する熱硬化性樹脂の量をコントロールする上で重要なものであり、適量の熱硬化性樹脂4を光触媒層3の表面に露出、散在させて摩擦堅牢性、特に耐払拭性、及び、防傷性を向上させるためには、保護層2の厚さを0.3〜5.0μmの範囲内に設定することが好ましい。保護層2の厚さが0.3μmよりも薄くなると、保護層2の樹脂透過性が良すぎて光触媒層3の表面に露出、散在する熱硬化性樹脂の量が多くなりすぎるため、光触媒層3の表面の大部分が露出した多量の熱硬化性樹脂で厚く覆われて光触媒部材A1,A2の外観が悪くなり、光触媒層3の光触媒作用を低下させる恐れも出てくる。一方、保護層2の厚さが5.0μmを超えると、保護層2の樹脂透過性が大幅に低下し、光触媒層3の表面に露出する熱硬化性樹脂の量が激減して光触媒層3の表面に露出し難くなるため、光触媒層3の表面の摩擦堅牢性、防傷性を向上させることが困難になる。保護層2のより好ましい厚みは、0.5〜2.0μmである。
【0032】
また、この保護層2に含まれる上記樹脂の架橋密度を制御しても、光触媒層3の表面に露出する熱硬化性樹脂4の量をコントロールすることができる。即ち、架橋密度を高くすると、樹脂透過性が低下して光触媒層3の表面に露出、散在する熱硬化性樹脂が減少し、架橋密度を低くすると、樹脂透過性が良くなって光触媒層3の表面に露出、散在する熱硬化性樹脂の量が増大する。従って、架橋密度が高くなりすぎると、光触媒層表面に露出、散在する熱硬化性樹脂が激減するため、光触媒層3の表面の摩擦堅牢性、防傷性を向上させることが困難になり、架橋密度を低くしすぎると、多量の熱硬化性樹脂が露出、散在して光触媒部材A1,A2の外観の低下や光触媒層3の光触媒作用の低下を招く恐れが生じると共に、基材1との密着力が低下して剥離や白化が生じるようになるので、架橋密度を適正に制御することが大切である。
【0033】
架橋密度の制御は、例えば、保護層2がアクリル−シリコーン共重合樹脂からなる場合には、反応基としてアルコキシシリル基などの変性シリコーン基の量を調整したり、硬化剤の種類や添加量を調整したり、後述するように剥離フィルムの上に光触媒層と保護層を形成して転写フィルムを作製する際に保護層を乾燥する熱量(加熱温度×時間)を調整することによって、行うことができる。
【0034】
光触媒層3は、光触媒粒子と、シリカもしくはシリコーン樹脂と、必要に応じて1質量%以下の分散剤やバインダーとを、均一に分散させて形成した層であって、これに含有されている光触媒粒子によって、悪臭成分や低分子量有機物を分解したり、抗菌・防黴作用を発揮したり、親水性を発現させるなどの光触媒作用を行うものである。但し、この光触媒部材A1,A2は、光触媒層3の表面に親水性に劣る熱硬化性樹脂4が露出し、該露出部4aが分散している関係上、親水性化され難いので、親水性化による自己浄化作用は奏しない。
【0035】
光触媒層3に分散させる光触媒粒子としては、紫外線で活性化する粒子、可視光で活性化する粒子のいずれもが使用可能である。前者の紫外線活性化粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、SrTiO、WOなどの金属酸化物が用いられる。その中でも、酸化チタン、特にアナターゼ型酸化チタンは、光触媒機能が高く、入手もし易いので、最も好ましく用いられる。
【0036】
後者の可視光活性化粒子としては、例えば、上記の金属酸化物の粒子に、窒素、フッ素、硫黄、炭素などをドーピングした光触媒粒子、或は、白金担持、酸素欠陥、ブルッカイト型などの光触媒粒子が使用される。これらの光触媒粒子が可視光により光触媒機能を発揮する機構は明らかではないが、例えば、酸化チタンに窒素をドーピングした光触媒粒子の場合は、Ti―N、或はTi―O―Nの化学結合が生じ、可視光を吸収して光触媒機能を発揮すると考えられる。これらの可視光活性化粒子の中でも、酸化チタン、特にアナターゼ型酸化チタンに窒素をドーピングした光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタン自体が他の粒子より活性が高く入手が容易であり、しかも、可視光を吸収して高い光触媒機能を発揮するので、極めて好ましく使用される。
【0037】
さらに、上記の紫外線活性化粒子又は可視光活性化粒子に、アパタイト、ゼオライト、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、マグネシア、カルシアなどの無機材を網状もしくは多孔質状に被覆してなる網状被覆型光触媒粒子なども好ましく使用される。上記の無機材は、数オングストローム〜数μmの厚さで、0.1〜5.0質量%となるように光触媒粒子に被覆され、網状被覆型光触媒粒子の直径が500μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは0.001〜20μmとされている。このような網状被覆型光触媒粒子は、被覆網目を通じて紫外線又は/及び可視光が光触媒粒子に到達して光触媒機能を発揮する。上記の網状被覆型光触媒粒子の中でも、ゼオライト又はシリカの多孔質材で酸化チタンを被覆した光触媒粒子は、ゼオライトやシリカが悪臭成分を捕獲し、酸化チタンの光触媒作用で悪臭成分を分解するので、悪臭成分の分解効果が顕著であり、極めて好ましい。
【0038】
上述した光触媒粒子は、光触媒層3の中に均一に分散させて5〜99質量%含有させることが好ましい。5質量%未満では、光触媒作用を発揮させることが困難になり、99質量%より多く含有させると光触媒層3が脆くなって層の形成が困難になる。光触媒粒子の更に好ましい含有率は、紫外線活性化光触媒粒子を含有させる場合には5〜50質量%、可視光活性化光触媒粒子を含有させる場合には5〜99質量%、網状被覆型光触媒粒子を含有させる場合には5〜80質量%である。
【0039】
光触媒層3中に光触媒粒子と共に含有させる前記シリカとしては、シリカ前駆体、水ガラスなどのシリカを主体とした無機材料が用いられる。また、このシリカに代えてシリコーン樹脂を光触媒粒子と共に含有させて光触媒層3を形成してもよいし、シリカとシリコーン樹脂との混合物を光触媒粒子と共に含有させて光触媒層3を形成してもよい。これらのシリカ、シリコーン樹脂、両者の混合物は光触媒層3に95〜1質量%含有される。
【0040】
光触媒層3には、直接照射される光、及び、熱硬化性樹脂4の露出部4aを透過して隣接する光触媒層3に照射される光のエネルギーによって充分な光触媒作用を発揮できる量の光触媒粒子を含有させる必要があり、そのためには光触媒層3の厚さを5〜300nmの範囲に設定することが好ましい。5nmより薄くなると、光触媒粒子量が不足して光触媒作用を発揮することが困難になり、また、300nmより厚くしても、光触媒作用の更なる向上が見られず、むしろ長期間使用するうちに光触媒層3にクラックが発生するという不都合が生じる。紫外線等の光触媒粒子を活性化させる光が十分得られる環境で使用する光触媒部材の場合は、光触媒層3の厚さを5〜35nmと薄く設定しても光触媒作用を発揮できるが、十分な光が期待できない環境で使用される光触媒部材の場合は、光触媒層3の厚さを35〜300nm、好ましくは50〜200nmに設定して光触媒粒子の含有量を多くしなければ充分な光触媒作用を発揮し難くなる。
【0041】
この光触媒層3は、例えば、基材1が熱伸縮の大きい熱硬化性樹脂からなるものであると、その基材1の熱伸縮に伴って伸縮しようとし、一定以上の応力が光触媒層3に生じるとクラックを発生することになるが、光触媒層3の厚さが上記のように5〜35nmであると、伸縮に伴う内部応力が小さくなるので、クラックの発生を防止することができる。基材1が透明であるか又は着色したものである場合に光触媒層3にクラックが発生すると、光散乱により白濁して透明性や色相などの初期外観を保てなくなるが、光触媒層3を上記の厚さにしてクラックの発生を防止すると、初期の透明性や色相などを保つことができるようになる。
【0042】
これに対し、基材1が、熱硬化性樹脂に繊維、無機フィラーなどを配合した基材や、繊維の集合体に熱硬化性樹脂を含浸させた基材や、熱硬化性樹脂を含んだ後述の繊維補強化粧材からなる基材のように、熱伸縮の小さい基材である場合は、基材1の熱伸縮に伴う光触媒層3の伸縮が小さいので、光触媒層3を300nmの厚さにしてもクラックが発生することはない。
【0043】
以上のことから、光触媒粒子を活性化させる紫外線等の光を充分に得られる環境下に使用される光触媒部材であって熱伸縮の大きい基材1を用いたものでは、光触媒作用の確保、クラックの防止の観点から、光触媒層3の厚さを5〜35nmに設定することが好ましく、一方、光触媒を活性化させる紫外線等の光を十分に得られない環境下に使用される光触媒部材であって熱伸縮の小さい基材1を用いたものでは、光触媒作用の確保、クラックの防止、光干渉模様の防止の観点から、光触媒層3の厚さを35〜300nm、好ましくは35〜200nmに設定するのが大切であることが分かる。
【0044】
光触媒層3の表面の面積に占める熱硬化性樹脂の露出部4aの合計面積の割合は20〜99%であることが好ましく、この範囲内であれば、露出部4aが細かく略均一に散在して良好な分散状態となり、露出部4aの相互間の間隔や面積が適度に小さくなるので、光触媒層3の表面全体の摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性が顕著に向上するようになる。露出部4aの合計面積の割合が20%より少なくなると、露出部4aによって保護される光触媒層3の面積が小さくなりすぎるため、摩擦堅牢性、特に耐払拭性や、防傷性の向上が不充分になる。一方、露出部4aの合計面積の割合が99%を超えると、露出部4aの分散状態が悪くなって光触媒部材A1,A2の外観が低下すると共に、光触媒層3の占める割合が減少して悪臭成分や低分子量有機物の分解作用、抗菌・防黴作用などの光触媒作用の低下を招く恐れが生じる。光触媒層3の表面に占める露出部4aの合計面積の更に好ましい割合は、20〜80%、更に好ましい割合は25〜70%である。
【0045】
熱硬化性樹脂の露出部4aの占める割合は、既述したように保護層2の厚さ、保護層2の架橋密度などでも調整できるが、後述する基材1の上に保護層と光触媒層を熱圧着で転写する製法を用いる場合には、その圧力などを調整し、保護層2と光触媒層3を通って基材1から光触媒層3の表面へ移行(滲出)する熱硬化性樹脂の量を制御することによって、20〜99%の範囲内に調節できる。即ち、光触媒層3の表面に移行(滲出)する熱硬化性樹脂4の量を増やすと、図2に示すように、個々の露出部4aは周囲に拡大して面積が大きくなり、露出部4aの占める割合は上昇して99%に近づくことになる。一方、光触媒層3の表面に移行(滲出)する熱硬化性樹脂の量を減らすと、図1に示すように、個々の露出部4aは周囲に拡大せず、熱硬化性樹脂の移行通路も細くなるため、露出部4aの占める割合は減少して20%に近づくことになる。
【0046】
この光触媒部材A1,A2の表面の水との接触角は、ブラックライトブルーランプを用いて1mW/cm2の強度の光を168時間照射した直後に測定したとき、30〜90°であることが好ましい。ミクロな視点でみると、厳密には熱硬化性樹脂の露出部4aと、該露出部相互間の光触媒層3の表面とで異なっていると思われるが、露出部4aが略均一に細かく分散しているため、光触媒部材表面のどの部分の水との接触角を測定しても略同じであり、この接触角が上記のように30〜90°であると、光触媒作用の一つである親水性化による自己浄化作用は発揮できないが、悪臭成分や低分子量有機物の分解作用や、抗菌・防黴作用は充分に発揮することができる。また、上記の接触角であると、光触媒作用がそれほど強くないので、長期間経過しても、熱硬化性樹脂の露出部4aが光触媒作用で変質、劣化する恐れは殆どない。
【0047】
光触媒層3の表面に露出、散在する熱硬化性樹脂の露出部4a分散形態は特に限定されるものではなく、例えば、露出部4aが個々に分離した状態で光触媒層3の表面に点在していてもよいし、露出部4aが互いに連なった状態で光触媒層3の表面に分散していてもよいし、これら双方の分散状態が混在していてもよいが、いずれの分散形態の場合も、露出部4aが光触媒層3の表面全体に亘って実質的に均一に分散していることが好ましい。
【0048】
熱硬化性樹の脂露出部4aの面積は分散状態によって異なるため、特に限定されるものではないが、個々に分離した状態での露出部4aは1.0×10-4〜0.1mm2程度の面積であることが好ましく、1.0×10-4mm2よりも小さくなると、露出部4aによる光触媒層3の保護作用が低下する恐れがあり、一方、0.1mmよりも大きくなると、光触媒作用、特に有機物分解能が阻害されて悪臭分解や抗菌・防黴性の効果が低下する等の不都合を生じる恐れがある。
【0049】
また、光触媒層3表面における悪臭成分、低分子量有機物などの分解作用や、抗菌・防黴作用の強さは、後述の実施例に記載するメチレンブルー分解試験で判定した場合、その分解活性示数Rが3.0〜5.5[nmol/l/min]の範囲にあることが好ましく、この範囲内の分解活性示数であると、十分な分解作用等を発揮できる。
【0050】
なお、この光触媒層3の光触媒粒子として前述の可視光活性化粒子を含有させる場合は、光触媒作用を阻害しない程度で、紫外線吸収剤を熱硬化性樹脂に含有させて、その露出部4aの耐候性を向上させるようにしてもよい。
【0051】
以上のような構成の光触媒部材A1,A2は、建築資材や道路資材として使用されたり、空気清浄器、クーラー、冷蔵庫などの電機器具の内装部材として使用される。そして、自然光、照明光、照射光などが光触媒部材表面に当たると、光触媒粒子が活性化されてラジカル種や活性酸素種などを発生し、熱硬化性樹脂の露出部4a相互間の光触媒層3の表面で光触媒作用が発揮されると共に、ラジカル種や活性酸素種などが露出部4aの表面側にも飛散して光触媒作用が発揮されるため、悪臭成分や低分子量有機物等が分解されたり、抗菌や防黴が行われる。しかも、これらの光触媒部材A1,A2は、光触媒層3が細かく散在する露出部4aによって保護されており、特に、この露出部4aの大部分はは基材1から光触媒層3表面まで連結する連結熱硬化性樹脂4で支持されている関係上、外部からの衝撃力や摩擦力に対する強度が大きく優れた保護作用を発揮するため、光触媒部材表面の摩擦堅牢性、特に、耐払拭性が顕著に向上し、防傷性も大幅に向上する。従って、光触媒部材の表面を繰り返し拭き掃除したり、光触媒部材表面に物が当ったりしても、光触媒層3が剥脱したり傷付いたりすることが皆無に等しく、長期に亘って良好な光触媒作用を発揮することができる。
【0052】
図3は本発明に係る光触媒部材の更に他の実施形態を示す模式断面図である。
【0053】
この光触媒部材A3は、基材1として、無機又は有機繊維と熱硬化性樹脂と無機フィラーとからなる芯材層1aと、その上に積層された熱硬化性樹脂含浸化粧層1bとを具備してなる化粧板10を使用し、その上に保護層2を介して光触媒層3を積層したものであって、化粧板10の熱硬化性樹脂含浸化粧層1bの上に保護層と光触媒層を転写する際の圧力によって、熱硬化性樹脂含浸化粧層1bの熱硬化性樹脂が保護層2を通り光触媒層3の表面まで移行(滲出)して光触媒層3の表面に略面一に露出しており、この熱硬化性樹脂の露出部4aが光触媒層1の表面に略均一に散在し、光触媒層3の摩擦堅牢性や防傷性を向上させている
【0054】
化粧板10としては、例えば、ガラス繊維に熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性フェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させると共に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルクなどの無機フィラーを全体の95〜80質量%となるように含有させて芯材層1aを形成し、この芯材層1aの表面に、酸化チタンを含有する化粧紙に熱硬化性メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を60〜150質量%となるように含浸させた熱硬化性樹脂含浸化粧層1bを積層したものなどが好ましく使用される。芯材層1aの無機フィラー材の含有量と、熱硬化性樹脂含浸化粧層1bの熱硬化性樹脂の含浸量をそれぞれ上記の範囲にすると、難燃性ないし不燃性の化粧板10とすることができる。
【0055】
この光触媒部材A3の保護層2、光触媒層3、熱硬化性樹脂の露出部4aなどの構成は、前述した光触媒部材A1,A2のそれらと同じであるので、説明を省略する。
【0056】
上記の光触媒部材A3は、基材1として用いる化粧板10が難燃性ないし不燃性となし得るものであり、光触媒層3の表面の熱硬化性樹脂の露出部4aも高耐熱性のメラミン樹脂からなるものであるため、難燃性ないし不燃性の光触媒部材とすることができ、光触媒層3と保護層2を通して熱硬化性樹脂含浸化粧層1bの模様や図柄を透視することもできるので、内装材等の建築資材として好適に使用される。そして、この光触媒部材A3も、前述した光触媒部材A1,A2と同様に、光を受けて活性化される光触媒層3の光触媒粒子によって悪臭成分等の分解や抗菌・防黴などの光触媒作用が発揮され、しかも、細かく分散して散在する露出部4aによって光触媒層3が保護されているため、拭き掃除を繰り返したり物が当ったりしても光触媒層3の剥脱や損傷がなく、長期間に亘って良好な光触媒作用を保つことができる。
【0057】
以上の光触媒部材A1,A2,A3はいずれも平板状(プレート状、シート状、フィルム状を含む)に形成されているが、本発明は平板状の光触媒部材に限定されるものではなく、平板状以外の所望の三次元立体形状の基材1の表面や全面に保護層2と光触媒層3を積層して所望形状の光触媒部材とすることができる。
また、以上の光触媒部材A1,A2,A3はいずれも、基材1と保護層2との間に接着剤層を設けていないが、基材1と保護層2との接合強度を高めるために、基材1から光触媒層3表面への熱硬化性樹脂4の移行を妨げない程度の厚さを有する接着剤層を設けてもよい。接着剤としては、基材1と保護層2の双方に良好に接着する樹脂接着剤が使用される。
【0058】
次に、上記の光触媒部材A3を製造する場合を例にとって、本発明の製造方法を説明する。
【0059】
まず、剥離フィルムの上に光触媒層と保護層を積層した転写フィルムを、次の要領で作製する。
即ち、保護層用塗料(例えば、前述のアクリル樹脂とシリコーン樹脂との共重合樹脂を主成分として硬化剤を配合した塗料など)と、光触媒層用塗料(例えば、前述の光触媒粒子と、シリカ又はシリコーン樹脂と、必要に応じて1質量%以下の分散剤とを溶剤又は水に混合、分散させた塗料)を調製する。そして、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、バーコート等の手段を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルムの上に上記の光触媒層用塗料を塗布、乾燥して厚さ5〜300nm、好ましくは5〜200μmの光触媒層3を形成し、更にその上に上記の保護層用塗料を塗布、乾燥して厚さ0.3〜5.0μm、好ましくは0.5〜2μmの保護層を形成することにより、転写フィルムを作製する。
【0060】
他方、基材形成用材料として、ガラス繊維に熱硬化性メラミン樹脂などの未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させると共に、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機フィラーを全体の95〜80質量%となるように含有させた前記化粧板10の芯材層1aを形成するための材料シート(以下、芯材層形成用材料シートという)と、酸化チタンを含んだ化粧紙に熱硬化性メラミン樹脂などの未硬化の熱硬化性樹脂を60〜150質量%となるように含浸させた前記化粧板10の熱硬化性樹脂含浸化粧層1bを形成するための材料シート(以下、化粧層形成用シートという)を準備する。そして、この芯材層形成用材料シートの上に化粧層形成用材料シートを重ね合わせ、その上に上記転写フィルムをその保護層が下側(化粧層形成用材料シート側)となるように重ね合わせて、熱プレス成形機にセットし、熱圧着する。
【0061】
このように熱圧着すると、その圧力によって、化粧層形成用材料シートに含浸されている未硬化の熱硬化性樹脂が保護層2と光触媒層3を通って光触媒層3の表面まで移行(滲出)して細かく分散した状態で該表面に面一に露出する。そして、この移行した未硬化の熱硬化性樹脂や、上記の材料シートに含浸されている未硬化の熱硬化性樹脂が熱硬化すると、この熱硬化により形成された芯材層1aと熱硬化性樹脂含浸化粧層1bが一体化して化粧板10となり、同時に該化粧板10の熱硬化性樹脂含浸化粧1bの表面に保護層2と光触媒層3が転写されて一体化される。そこで、この積層一体化物を熱プレス成形機から取出して剥離フィルムを除去すると、光触媒層3及び保護層2を通して熱硬化性樹脂含浸化粧層1bの美麗な図柄・模様を透視でき、しかも、光触媒層3の表面には、移行し表面に露出した熱硬化性樹脂の露出部4aが散在していて、摩擦堅牢性(特に耐払拭性)及び防傷性に優れた難燃性ないし不燃性の化粧性を有する光触媒部材A3が得られる。
【0062】
上記の製造方法においては、転写フィルムを作製する際に、上記のように保護層の厚さを調整したり、保護層を形成する樹脂の架橋密度を調整することによって、熱圧着時に光触媒層3の表面へ移行する熱硬化性樹脂の量が適量となるようにコントロールすることが好ましい。また、熱圧着時の温度や圧力を調整することによって、光触媒層3の表面へ移行する熱硬化性樹脂4の量をコントロールすることも好ましい。熱圧着の好ましい温度、圧力、時間等は、熱硬化性樹脂の種類、保護層及び光触媒層の組成や厚さなどによって多少異なるが、総体的に好ましい概略の温度範囲は80〜160℃、圧力範囲は4.9×10〜9.8×10N/m、時間は20〜100分であり、これらの範囲内で最適の温度、圧力、時間を設定するのがよい。
【0063】
なお、本発明の光触媒部材は、上記の本発明の製造方法以外の方法、例えば、上記の転写フィルムを保護層が内側となるように成形型の内面沿いにセットし、未硬化の熱硬化性樹脂を成形型内にモールドして加熱硬化させる方法等によっても、製造することができる。この場合も、未硬化の熱硬化性樹脂がモールド圧により保護層を通って光触媒層の表面まで移行、露出し、該露出部が光触媒層の表面に分散した状態で、成形型内の熱硬化性樹脂及び移行した熱硬化性樹脂が熱硬化するため、脱型後、剥離フィルムを除去すれば、成形型に合致した三次元立体形状を有する熱硬化性樹脂基材1の表面に保護層2と光触媒部材3が積層一体化された、摩擦堅牢性及び防傷性の良好な光触媒部材を得ることができる。
その他に、パンチングなどの処理によって孔のあけられたアクリルなどの接着性樹脂フィルムに保護層と光触媒層を形成したラミネートフィルムを作製し、これを未硬化の熱硬化性樹脂を含む基材に重ね合わせて熱圧着することによっても製造することができる。この場合は、未硬化の熱硬化性樹脂がパンチングの孔を通過し、さらに保護層2と光触媒層3を通って光触媒層の表面まで移行、露出し、該露出部が光触媒層の表面に散在し分散状態で熱硬化性樹脂が熱硬化するため、熱硬化性樹脂基材1の表面に接着樹脂フィルムと保護層2と光触媒部材3が積層一体化された、摩擦堅牢性及び防傷性の良好な光触媒部材を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の更に具体的な実施例を説明する。
【0065】
[実施例1]
基材形成用材料として、ガラス繊維に未硬化の熱硬化性メラミン樹脂を含浸させると共に、無機フィラーとして水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムを含有させた芯材層形成用材料シートと、酸化チタンを含有する化粧紙に未硬化の熱硬化性メラミン樹脂を含浸させた化粧層形成用材料シートを準備した。
【0066】
一方、保護層用塗料として、ポリジメチルシロキサンとアクリル樹脂とを均一に混合した塗料を準備し、光触媒層用塗料として、窒素をドープした可視光応答型光触媒酸化チタン4質量%と、シリカ0.5質量%を、アルコール系分散液で均一に分散させた塗料を準備した。
【0067】
そして、ポリエチレンテレフタレートよりなる剥離フィルムの表面に上記の光触媒層用塗料を塗布、乾燥(温度100℃、時間15分)して厚さ100nmの光触媒層を形成し、その上に上記の保護層用塗料を塗布、乾燥(温度130℃、時間30分)して厚さ3.0μmの保護層を形成することにより、転写フィルムを作製した。
【0068】
次いで、上記の芯材層形成用材料シートの上に上記の化粧層形成用材料シートを重ね合わせ、その上に上記の転写フィルムをその保護層が化粧層形成用材料シート側となるように重ね合わせて、熱プレス成形機にセットし、温度140℃、圧力7.8×10N/mの条件で、30分間熱圧着することによって、未硬化の熱硬化性メラミン樹脂を化粧層形成用材料シートから保護層と光触媒層を通し光触媒層の表面まで移行(滲出)させて散在した分散状態で略面一に露出させると共に、この移行させた熱硬化性メラミン樹脂と上記の材料シートに含浸されている熱硬化性メラミン樹脂を熱硬化させ、芯材層と熱硬化性樹脂含浸化粧層と保護層と光触媒層が一体に接合された積層一体化物とした。そして、この積層一体化物を熱プレス成形機から取出し、剥離フィルムを除去して、図3に示す構造の光触媒部材、即ち、熱硬化性メラミン樹脂とガラス繊維と無機フィラーとからなる芯材層1aの上に熱硬化性メラミン樹脂含浸化粧層1bを積層一体化した化粧板10を基材1とし、その上に保護層と光触媒層を転写して積層一体化した平板状の光触媒部材であって、熱硬化性メラミン樹脂が化粧層1bから保護層2と光触媒層3を通り光触媒層3の表面まで移行して、その露出部4aが散在している光触媒部材を得た。
【0069】
得られた光触媒部材について、光触媒層の表面に占める熱硬化性メラミン樹脂露出部の合計面積の割合を以下の試験方法で測定したところ、熱硬化性メラミン樹脂露出部は光触媒層の表面の33%を占めていた。
【0070】
(試験方法)
容器内に0.1Nの硝酸銀水溶液を入れ、この硝酸銀水溶液中に得られた光触媒部材を浸漬して、この光触媒部材の上方に配置したブラックライトブルー(BLB)ランプから0.5±0.05mW/cmの出力で紫外線を30分間照射した。これは、光触媒層上に熱硬化性メラミン樹脂の露出部が存在していると、その露出部は硝酸銀水溶液中で光触媒部材に紫外線照射を照射しても短時間では硝酸銀反応によって淡黒色を呈さず、光触媒層上に熱硬化性メラミン樹脂露出部が存在しないところは硝酸銀反応によって速やかに淡黒色を呈する性質を利用したものである。紫外線照射後、光触媒部材を硝酸銀水溶液から取出し、(株)キーエンス製デジタルHFマイクロスコープVH-8000を用いて450倍で観察・撮影し、その写真を(株)キーエンス製Picture Folderを用いて2値化処理したのち、淡黒色に呈色した部分の面積をデジタル算出した。そして、上記の淡黒色に呈色した合計面積を、淡黒色の呈色部分を算定した範囲の面積で除することにより、光触媒層の表面に占める全ての熱硬化性メラミン樹脂露出部の合計面積の割合を算定した。
【0071】
上記の試験方法において2値化処理した後の画面を図4に示す。この図4を見ると、硝酸銀反応による淡黒色部分は斑点状に散在して、部分的にしか反応しておらず、このことから、熱硬化性メラミン樹脂露出部は光触媒層の一部にしか存在していないことがわかる。
【0072】
また、得られた光触媒部材に、ブラックライトブルー(BLB)ランプにて1±0.05mW/cmの紫外線を168時間照射した。一定時間毎に、マイクロシリンジを用いて光触媒層側の表面にイオン交換水20mlを滴下し、その表面の水滴の接触角を画像処理接触角度計(協和界面科学(株)製、CA−A)を用いて3点法で各3箇所を測定し、その平均値を求めた。その結果、接触角は、照射前は78°であったが、24時間後、48時間後、72時間後、120時間後、168時間後には、夫々76°、74°、74°、72°、70°であった。
【0073】
更に、得られた光触媒部材について、以下のメチレンブルー分解試験を行うことにより有機物分解性を調べたところ、分解活性示数Rは4.9[nmol/l/min]であり、光触媒層の表面まで熱硬化性メラミン樹脂が移行(湧出)して露出、散在しているにも拘わらず、良好な分解作用を発揮することが確認された。
【0074】
(メチレンブルー分解試験)
光触媒部材を60mm角の大きさに切断して3個の試験片を作製し、各試験片の上に円筒形のセルをシリコーングリースで液密的に取付けて、各セルにメチレンブルー吸着液(メチレンブルー三水和物を精製水に0.02mmol/l濃度となるように溶解させた液)を35ml注入し、カバーガラスで蓋をして、吸着飽和状態になるまでメチレンブルーを吸着させる。そして、セル中のメチレンブルー吸着液を新しいメチレンブルー試験液0.01mmolに交換して、真上から各試験片に1±0.05mW/cmの紫外線を20分照射し、照射後直ちにメチレンブルー試験液の600〜700nmの波長域での吸光スペクトルを分光光度計で測定し、測定に使用した液をすみやかにセルに戻して再び紫外線を照射する。この手順で紫外線を20分照射して吸光スペクトルを測定する作業を、照射時間の合計が3時間になるまで9回繰り返す。そして、次の手順で分解活性示数を求める。
即ち、紫外線t分照射後の吸光スペクトルのピークトップにおける吸光度Abs(t)を読み取る(t=20,40,60,80,100,120,140,160,180)と共に、初期吸光スペクトルのピークトップにおける吸光度を読み取ってこれをAbs(0)とする。そして、Abs(0)を用いて、下記の式(1)より、吸光度を濃度に換算するための換算係数Kを求め、この換算係数Kを用いて、下記の式(2)より、吸光度Abs(t)を、t分後のメチレンブルー試験液濃度C(t)[μmol/l]に換算し、図6に示すように、縦軸にC(t)[μmol/l]を、横軸に紫外線照射時間(分)をとって、3個の試験片のそれぞれについてデータをプロットする。そして、各試験片について求めた傾き(最も傾きが大きくなる4点を選んで最小二乗法で直線近似した傾き)をa(n=1,2,3)とし、下記の式(3)により分解活性示数Rを求める。

K=10[μmol/l]/Abs(0) …式(1)

C(t)=K×Abs(t)[μmol/l] …式(2)

R=|(a+a+a)/3|×10[nmol/l/] …式(3)
【0075】
また、得られた光触媒部材を切断して作製した3個の試験片について、以下の方法で耐払拭性を調べたところ、払拭しない初期において、試験片の全てが硝酸銀の呈色反応を示し、払拭回数が500回に達しても、更に、3000回に達しても、試験片の全てが硝酸銀の呈色反応を示した。このことから、熱硬化性メラミン樹脂露出部が散在している光触媒層は、3000回払拭しても磨滅、剥脱されないことが分かった。
【0076】
(耐払拭試験)
染色堅牢度試験用摩擦試験機(JIS L 0823)を平板用に改良し、この試験機に錘(200g)と摩擦用白綿布かなきん3号(JIS L 0862)を取付け、試験片を500回、及び3000回払拭する。そして、各試験片を0.1Nの硝酸銀溶液に浸漬し、ブラックライトブルーランプにて1±0.05mW/cmの紫外線を10時間照射し、各試験片の表面における銀の析出の有無(硝酸銀の呈色反応の有無)によって、試験片の光触媒層の有無を判断する。
【0077】
実施例1で得られた光触媒部材について行った以上の試験の結果をまとめて、下記の表1に記載する。また、この光触媒部材の水との接触角のグラフを図5に示し、メチレンブルー濃度の変化を図6に示す。
【0078】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレートよりなる剥離フィルムの表面に、実施例1で準備した光触媒層用塗料を塗布、乾燥(温度100℃、時間15分)して厚さ100nmの光触媒層を形成し、その上に実施例1で準備した保護層用塗料を塗布、乾燥(温度130℃、時間30分)して厚さ1.5μmの保護層を形成することにより、転写フィルムを作製した。
【0079】
そして、実施例1で準備した芯材層形成用材料シートの上に、実施例1で準備した化粧層形成用材料シートを重ね合わせ、その上に上記の転写フィルムをその保護層が下側となるように重ね合わせて、熱プレス成形機にセットし、温度140℃、圧力7.8×10N/mの条件で30分間熱圧着した後、熱プレス成形機から取り出して剥離フィルムを除去することにより、図3に示す構造の平板状の光触媒部材を得た。
【0080】
この光触媒部材について、実施例1と同様にして、光触媒層の表面に占める熱硬化性メラミン樹脂露出部の合計面積の割合、光触媒層側の表面の水との接触角、光触媒層の分解活性示数、光触媒層の耐払拭性を調べた。その結果を下記の表1に併記する。
【0081】
[比較例1]
実施例1で準備した芯材層形成用材料シートと、実施例1で準備した化粧層形成用材料シートを予め熱圧着してメラミン樹脂を硬化させることにより積層一体化した化粧板(芯材層と熱硬化性樹脂含浸化粧層が積層一体化された化粧板)を基材とし、この基材の熱硬化性樹脂含浸化粧層の上に、接着剤(日本ポリウレタン工業(株)製のウレタン接着剤)を塗布、乾燥して厚さ5μmの接着剤層を形成すると共に、更にその上に、実施例1で準備した保護層塗料と光触媒層用塗料を順次塗布、乾燥して、厚さ3μmの保護層と厚さ100nmの光触媒層を形成することにより、平板状の光触媒部材を作製した。
【0082】
この光触媒部材は、熱圧着して硬化した化粧板に、接着層と保護層と光触媒層
とを塗布、形成されたものであるので、この光触媒部材を硝酸銀水溶液中に浸漬し紫外線を照射したところ、全面に均一な硝酸銀反応による淡黒色を呈して、光触媒層表面に露出した熱硬化性メラミン樹脂は存在しなかった。これは、化粧板の熱硬化性樹脂が硬化した後に接着層と保護層と光触媒層を形成したので、熱硬化性樹脂が移行することができなかったためである。
【0083】
この比較用の光触媒部材について、実施例1と同様にして、光触媒層側の表面の水との接触角、光触媒層の分解活性示数、光触媒層の耐払拭性を調べた。その結果を下記の表1に併記する。また、この光触媒部材の水との接触角のグラフを図5に併記し、メチレンブルー濃度の変化を図6に併記する。
【0084】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレートよりなる剥離フィルムの表面に、実施例1で準備した光触媒層用塗料を塗布、乾燥(温度100℃、時間15分)して厚さ100nmの光触媒層を形成し、その上に実施例1で準備した保護層用塗料を塗布、乾燥(温度130℃、時間50分)して厚さ8.0μmの保護層を形成することにより、転写フィルムを作製した。
【0085】
そして、実施例1で準備した芯材層形成用材料シートの上に、実施例1で準備した化粧層形成用材料シートを重ね合わせ、その上に上記の転写フィルムをその保護層が下側となるように重ね合わせて、熱プレス成形機にセットし、実施例1と同じ条件で熱圧着した後、熱プレス成形機から取出して剥離フィルムを除去することにより、平板状の光触媒部材を作製した。この光触媒部材は、芯材層と熱硬化性樹脂含浸化粧層が積層一体化された化粧板の上に保護層と光触媒層が転写されて一体化されたものであるが、この光触媒部材を硝酸銀水溶液中に浸漬し紫外線を照射したところ、全面に均一な硝酸銀反応による淡黒色を呈したので、化粧層の熱硬化性メラミン樹脂が保護層を通って光触媒層の表面に露出しておらず、保護層によって熱硬化性メラミン樹脂の移行(滲出)が阻止されたものであった。
【0086】
この比較用の光触媒部材について、実施例1と同様にして、光触媒層側の表面の水との接触角、光触媒層の分解活性示数、光触媒層の耐払拭性を調べた。その結果を下記の表1に併記する。
【0087】
【表1】


【0088】
この表1を見ると、保護層の厚さが3.0μmである実施例1の光触媒部材は光触媒層表面へ移行(滲出)する熱硬化性メラミン樹脂の量がやや少ないため、光触媒層の表面に占める熱硬化性メラミン樹脂露出部の合計面積の割合が33%となっているのに対し、保護層の厚さが1.5μmとやや薄い実施例2の光触媒部材は、光触媒層表面へ移行する熱硬化性メラミン樹脂の量がやや多いため、熱硬化性メラミン樹脂露出部の占める割合が62%とやや高くなっている。一方、保護層の厚さが8μmと厚い比較例2の光触媒部材は、熱硬化性メラミン樹脂の移行が保護層により阻止されるため、光触媒層表面における熱硬化性メラミン樹脂の露出は皆無である。以上のことから、転写フィルムを熱圧着して光触媒部材を作製する場合、保護層の厚さを調整することにより、光触媒部材の表面へ移行する熱硬化性メラミン樹脂の量を制御して、熱硬化性メラミン樹脂露出部の占める割合をコントロールできることがわかる。また、熱硬化性メラミン樹脂露出部の占める割合を20〜99%にコントロールするためには、保護層の厚さを0.3〜5.0μm程度にすれば良いことが予測できる。
【0089】
また、熱硬化性メラミン樹脂が光触媒層の表面に露出して散在し、その露出部の占める割合が20〜99%の範囲内にある実施例1,2の光触媒部材は、紫外線を168時間照射した後の水との接触角が70°以上であって、親水性化による自己浄化作用を発揮できないものであるが、分解活性示数Rは実施例1の光触媒部材で4.9[nmol/l/min]、実施例2の光触媒部材で3.5[nmol/l/min]であり、悪臭成分や低分子量有機物の充分な分解作用を発揮できることが分かる。しかも、熱硬化性メラミン樹脂が光触媒層の表面に露出、散在した実施例1,2の光触媒部材は、3000回の耐払拭試験に充分耐え、光触媒層の脱落や剥離を防止して良好な光触媒作用を維持できるものであることがわかる。
【0090】
これに対し、熱硬化性メラミン樹脂が光触媒層の表面に存在しない比較例1,2の光触媒層は、紫外線を48時間照射した後の水との接触角が0°に近くなるので、強く親水性化されて自己浄化作用を発揮でき、また、分解活性示数も6.5[nmol/l/min]、又は6.2[nmol/l/min]と高いので、光触媒作用を強く発揮できるものであるが、耐払拭性に劣るため、わずか500回の耐払拭試験にも耐えられず、短期間で光触媒層が剥離、脱落して光触媒作用が失われるという致命的な欠点を有することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る光触媒部材の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る光触媒部材の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る光触媒部材の更に他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】実施例1のサンプルを硝酸銀水溶液に浸漬して、ブラックライトブルーランプで紫外線照射したものを撮影し、撮影写真を2値化処理した写真である。
【図5】実施例1のサンプルと比較例1のサンプルについて、水との接触角(°)と紫外線照射時間(時)との関係を示したグラフである。
【図6】実施例1のサンプルと比較例1のサンプルについて、メチレンブルー分解試験で得られたデータをプロットしたものであって、メチレンブルー試験液濃度C(t)[μmol/l]と紫外線照射時間(分)との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0092】
1 基材
1a 芯材層
1b 熱硬化性樹脂含浸化粧層
2 保護層
3 光触媒層
4 連結熱硬化性樹脂
4a 連結熱硬化性樹脂の露出部
A1,A2,A3 光触媒部材
【出願人】 【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹


【公開番号】 特開2008−6389(P2008−6389A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180581(P2006−180581)