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【発明の名称】 光触媒材料の製造方法及び光触媒材料
【発明者】 【氏名】高橋 誠治

【氏名】森 連太郎

【氏名】石井 仁士

【要約】 【課題】新たな組成の固溶体を有する光触媒材料を提供する。

【構成】チタンと、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を有する材料を光触媒材料とする。二酸化チタンに対して、前記第1の金属元素と前記第2の金属元素とを同時に添加することにより、従来固溶化が困難であったこれらの双方の金属元素を固溶化できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒材料であって、
チタンと、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を有する、材料。
【請求項2】
前記第1の金属元素は、タングステン、ニオブ、タンタル、バナジウム、モリブデン及びアンチモンからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記第1の金属元素は、タングステン、ニオブ、タンタル及びアンチモンからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記第1の金属元素はタングステンである、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
前記第2の金属元素は、イオン価数がII価の金属元素から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
前記第2の金属元素は典型金属元素及びアルカリ土類金属元素から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
前記第1の金属元素はタングステンであり、前記第2の金属元素はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及び銅から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の材料。
【請求項8】
前記固溶体は、以下の式(1)において、xが0.01以上0.29以下であり、yが0.01以上0.29以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の材料。
Ti(1−X−Y) ・・・(1)
(Mは第1の金属元素を表し、xはそのモル数を表し、Mは第2の金属元素を表し、yはそのモル数を表す)
【請求項9】
前記式(1)において(x+y)が0.3以下である、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
前記固溶体はアナターゼ型結晶構造又はルチル型結晶構造を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
光触媒材料の製造方法であって、
チタン化合物と、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素の金属化合物と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素の金属化合物と、を含有する原料を準備する工程と、
前記原料から、チタンと、前記第1の金属元素と、前記第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を合成する工程と、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒材料は、通常紫外光によって高い触媒能を示すが、可視光に限定した場合には触媒活性が顕著に低下してしまう。このため、酸化チタンなどに可視光応答性を付与することが検討されている。例えば、二酸化チタンに高いイオン価数の金属を固溶することが開示されている(特許文献1)。また、二酸化チタンにIII価の金属元素である窒素をドープすることも開示されている(特許文献2)。さらに、二酸化チタンにイオン価数がIII価の金属とV価又はVI価の金属を固溶することも開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−195439号
【特許文献2】国際公開WO01/010522パンフレット
【特許文献3】特開2004−196641号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、二酸化チタンに高いイオン価数の金属元素を固溶化するには限界があり、固溶化によって可視光応答性を高めるのには限界があった。また、二酸化チタンに窒素をドープした場合には、酸化に対して不安定になってしまうため、安定した光触媒性能が得られ難いという問題があった。さらに、二酸化チタンにIII価の金属を固溶させてV価又はVI価の金属のイオン価数の大きい金属を固溶するには、III価の金属を同量以上固溶させなければならず、結果として十分な光触媒活性が得られなかった。
【0004】
一方、従来、イオン価数がI価の金属元素やII価の金属元素の酸化物と二酸化チタンとでは複酸化物を形成してしまうなどして固溶もわずかである。また、こうした低イオン価数の金属元素を、二酸化チタンの光応答性を向上させるために固溶することは報告されていない。
【0005】
さらに、従来、可視光応答性を付与することによって酸化チタンの光触媒特性が低下することについては充分な解決が図られていなかった。
【0006】
本発明は、新たな組成の固溶体を有する光触媒材料及びその製造方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、良好な可視光応答性と光触媒特性を備える光触媒材料及びその製造方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、安定して可視光応答性と光触媒特性とを発揮できる光触媒材料を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、光触媒活性と可視光応答性とが制御された光触媒材料及びその製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、二酸化チタンに対して、イオン価数がV価又はVI価の金属元素とイオン価数がI価又II価の金属元素とを同時に添加することにより、従来固溶化が困難であったこれらの金属元素を固溶化できることを見出し、さらに、こうした固溶体組成を有する二酸化チタンが良好な可視光応答性や光触媒特性を備えることを見出し、これらの知見に基づいて、上記した課題の少なくとも一つを解決するものとして本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0008】
本発明によれば、光触媒材料であって、チタンと、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を有する、材料が提供される。
【0009】
本発明の光触媒材料においては、前記第1の金属元素は、タングステン、ニオブ、タンタル、バナジウム、モリブデン及びアンチモンからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、より好ましくはタングステン、ニオブ、タンタル及びアンチモンからなる群から選択される1種又は2種以上である。さらに好ましくは、前記第1の金属元素はタングステンである。
【0010】
また、本発明の光触媒材料においては、イオン価数がII価の金属元素から選択されることが好ましい。また、前記第2の金属元素は典型金属元素及びアルカリ土類金属元素から選択される1種又は2種以上であってもよい。より好ましくは、前記第2の金属元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及び銅から選択される1種又は2種以上である。さらに好ましくは、マグネシウムである。
【0011】
本発明の光触媒材料においては、前記第1の金属元素はタングステンであり、前記第2の金属元素はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及び銅から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0012】
また、前記固溶体は、以下の式(1)において、xが0.01以上0.29以下であり、yが0.01以上0.29以下であることが好ましい。また、(x+y)が0.3以下であることが好ましい。
Ti(1−X−Y) ・・・(1)
(Mは第1の金属元素を表し、xはそのモル数を表し、Mは第2の金属元素を表し、yはそのモル数を表す)
【0013】
本発明の光触媒材料は、前記固溶体はアナターゼ型結晶構造又はルチル型結晶構造を有することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、光触媒材料の製造方法であって、
チタン化合物と、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素の金属化合物と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素の金属化合物と、を含有する原料を準備する工程と、
前記原料から、チタンと、前記第1の金属元素と、前記第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を合成する工程と、
を備える、製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の可視光応答性光触媒材料は、チタンと、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体を有している。イオン価数がV価又はVI価の金属元素とともにイオン価数がI価又はII価である金属元素を含むために、これらの双方の金属元素が二酸化チタンに固溶化された固溶体を有することができる。こうした固溶体を有する光触媒材料は、新規な光触媒材料である。
【0016】
また、本発明の光触媒材料によれば、I価又はII価の金属元素を同時に固溶することで、V価又はVI価の金属元素の固溶量が少なくても良好な可視光応答性を発揮することができる。したがって、チタン比率を大きく低下させることなく可視光応答性を付与できる。したがって、本発明によれば、可視光応答性と光触媒特性とを兼ね備えた光触媒材料を提供することができる。また、本発明の光触媒材料は、金属元素が固溶されて可視光応答性と光触媒特性とを発揮しているため、これらの特性を安定して発揮できる。さらに、本発明の光触媒材料は、I価又はII価の金属元素の固溶量により可視光応答性に寄与するV価又はVI価の金属元素の固溶量を容易にかつ効果的に増量できるため、可視光応答性と光触媒特性とを広い範囲で調節可能な光触媒材料となっている。以下、本発明の光触媒材料及びその製造方法について詳細に説明する。
【0017】
(光触媒材料)
本発明の光触媒材料は、チタンと、イオン価数がI価又はII価である金属元素から選択される1種又は2種以上の第1の金属元素と、イオン価数がV価又はVI価である金属元素から選択される1種又は2種以上の第2の金属元素と、を含むチタン含有酸化物固溶体相を有している。
【0018】
(固溶体の成分)
第1の金属元素は、イオン価数がV価またはVI価の金属元素から選択されるものであれば特に限定されない。V価又はVI価の金属元素としては、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)が挙げられる。これらの金属元素は、二酸化チタンの格子空間に固溶させることができ、可視光応答性を発揮させることができる。また、これらの金属元素によれば、ルチル型結晶構造又はアナターゼ型結晶構造の固溶体を得ることができる。これらの金属元素においては、可視光応答性を高めるなどの観点から、タングステン、モリブデン、バナジウム、及びアンチモンが好ましい。なかでも、タングステンは、二酸化チタンに対して単独添加によりほとんど固溶させることができず可視光応答性を示すような電子構造に変化させることができなかったが本発明によって初めて可視光応答性を発現する有効量を固溶させることができた点において本発明を適用するのが好ましい。また、タングステンは少量の固溶量でも良好な可視光応答性を発現する点においても好ましい。
【0019】
第2の金属元素は、イオン価数がI価又はII価の金属元素から選択される1種又は2種以上であれば特に限定されない。I価又はII価の金属元素としては、Li、Na、K、Rb及びCsなどのアルカリ金属、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaなどのアルカリ土類金属、Mn、Co、Ni及びCuなどの遷移金属元素及びZnが挙げられる。水溶液中での溶出性を考慮すると、Mg、Ca及びSrなどのアルカリ土類金属が好ましく、より好ましくはMgもしくはCaである。また、遷移金属元素のなかでは、Cuが好ましい。
【0020】
本材料の固溶体においては、第1の金属元素に加えて第2の金属元素を添加していることで、いずれも二酸化チタンに固溶しにくいこれらの金属元素を互いに二酸化チタンに固溶させることができるようになる。しかも、第2の金属元素はI価又はII価であるためにIII価の金属元素を用いる場合と比較して少量でV価又はVI価の第1の金属元素を固溶することができる。したがって、光応答性に寄与する第1の金属元素の固溶量をチタン含有量を維持して増大させることができる。このため、本材料は、光応答性と光触媒特性とが調節されて、必要に応じた特性を備えるものとなっている。
【0021】
第1の金属元素と第2の金属元素とは、それぞれ上記した範囲で適宜組み合わせることができるが、第1の金属元素をタングステンを用いる場合には、第2の金属元素としてマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及び銅から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくはMgである。また、第1の金属元素としてタングステンのみを使用し、第2の金属元素としてマグネシウムのみを使用することも好ましい。
【0022】
チタンと第1の金属元素と第2の金属元素とを含むチタン含有酸化物固溶体における、これらの金属元素の組成は、以下の式(1)で表される組成を採ることができる。本発明においては、以下の式においてxが0.01以上0.49以下であることが好ましい。より好ましくは0.01以上0.29以下である。また、yは、0.01以上0.49以下であることが好ましい。また、0.01以上0.29以下であることがより好ましい。
Ti(1−X−Y) ・・・(1)
(Mは第1の金属元素を表し、xはそのモル数を表し、Mは第2の金属元素を表し、yはそのモル数を表す)
【0023】
また、(x+y)が0.5以下であることが好ましい。(x+y)が0.5以下であると、Tiが0.5以上となり、本材料における光触媒特性を確保することができるからである。より好ましくは、(x+y)は0.3以下である。この範囲であると、良好な光触媒特性及び安定した光触媒特性を確保することができる。さらに好ましくは、(x+y)は、0.1以下である。
【0024】
また、第1の金属元素と第2の金属元素とのモル比x:yは、用いる第1の金属元素と第2の金属元素との価数によって好ましい範囲が存在する。たとえば、第1の金属元素:第2の金属元素の組み合わせと好ましいモル比の範囲を以下の表1に挙げることができる。
【表1】


【0025】
なお、本固溶体においては、チタンとともに金属元素としてジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)を含んでいてもよい。ジルコニウム及びハフニウムは、アナターゼ型結晶構造に固溶化でき、アナターゼ型結晶構造の安定性と光触媒特性とに寄与することができる。
【0026】
本材料の固溶相は、アナターゼ、ルチル、ブルッカイト,単斜晶、バデライト構造などの結晶構造を有することができる。好ましくはアナターゼ型、ブルッカイト型又はルチル型である。より好ましくは、アナターゼ型および/またはルチル型である。また、本材料の固溶相は非晶質相を含むことを排除するものではない。なお、本材料は、こうした固溶相のほかに本材料の特性を妨げない範囲において他の固溶相、結晶質相又は非晶質相を有することができる。
【0027】
本材料は、粉末、薄膜、厚膜、多孔体、焼結体、多結晶体、単結晶等各種形態を採ることができる。また、本材料は、他の材料と複合化されていてもよい。複合化する他の材料としては、例えば、活性炭、ゼオライト、触媒担体、金属、ガラス、セラミックス、塗料、樹脂、有機材料に分散保持あるいはこれらの表面などの一部にコーティングなどにより付着ないし担持させることができる。
【0028】
(光触媒材料の製造方法)
本発明の光触媒材料の製造方法は、チタン化合物と、イオン価数がV価又はVI価である第1の金属元素の金属化合物と、イオン価数がI価又はII価である第2の金属元素の金属化合物と、を含有する原料を準備する工程と、前記原料から、チタンと前記第1の金属元素前記低イオン価数金属元素と、前記高イオン価数金属元素とを含むチタン含有酸化物固溶体組成を有する酸化物を合成する工程と、を備えている。
【0029】
本発明の製造方法は、本発明の光触媒材料を製造するのに好ましい方法である。本製造方法におけるチタン化合物、第1の金属元素の金属化合物及び第2の金属元素の金属化合物は、これらの金属についての金属塩、金属有機化合物、金属アルコキシドなどを用いることができる。金属塩としては、オキシ塩化物など含む塩化物に代表されるハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、オキシ硫化物を含む硫酸塩が挙げられる。金属有機化合物としては、MO(C、有機酸アンモニウム塩が挙げられる。また、金属アルコキシドとしては、金属のイソプロオキシドやブトキシドなどが挙げられる。
【0030】
例えば、チタン化合物としては、合成方法にもよるが、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシドなどのアルコキシド、オキシ硫酸チタン、塩化チタン、水酸化チタン等から選択される1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、塩化チタン、水酸化チタンなどを好ましく用いることができる。また、第1の金属元素の金属化合物中、タングステン化合物としては、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、六臭化タングステン、オキシ塩化タングステン、臭化タングステン、フッ化タングステン、ヘキサエトキシタングステン、ヘキサメトキシタングステン、ヘキサ−i−プロポキシタングステン、ヘキサ−n−プロポキシタングステン、ヘキサ−n−ブトキシタングステン、ヘキサ−n−ブトキシタングステン、ヘキサ−sec−ブトキシタングステンなどから選択される1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、などを好ましく用いられる。また、同様の態様のタンタル化合物、ニオブ化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物及びバナジウム化合物が挙げられ、好ましい態様を同様に好ましく用いることができる。
【0031】
こうした原料は適用な溶媒に溶解して原料溶液として準備する。溶媒としては、アルコールやTHFなどの有機溶媒や過酸化水素水などの水溶液を適宜選択して用いることができる。また、原料溶液においては、得ようとする光触媒材料におけるチタン、第1の金属元素及び第2の金属元素の上記式(1)におけるモル比(1−x−y):x:yが所望の比率となるように各化合物が配合される。
【0032】
次に、こうした原料溶液に公知のセラミックス合成方法を適用してチタン含有酸化物を合成する。合成方法は特に限定しないで、化学気相蒸着法、反応性蒸着法、反応性スパッタ法などの気相法や、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、水熱法などの液相法等が挙げられる。合成に際しては、典型的には、80℃以上200℃以下の温度で、酸又はアルカリの存在下で水熱反応により本材料を合成することができる。
【0033】
本製造方法によれば、従来二酸化チタンへの固溶化が困難であったV価又はVI価の金属元素である第1の金属元素とI価又はII価の金属元素である第2の金属元素とを二酸化チタンに固溶させた光触媒材料を得ることができる。この結果、良好な可視光応性を備える光触媒材料を得ることができる。また、これら第1の金属元素と第2の金属元素とを含んだチタン含有酸化物固溶体を合成することで固溶体におけるチタン含有量を低下させることなく第1の金属元素の固溶化量を増加させることができるため、良好な可視光応答性と光触媒特性とを備える光触媒材料を製造できるものとなっている。さらに、第1の金属元素の固溶化量を第2の金属元素の固溶化量により調節が可能であるため、可視光応答性と光触媒特性とを容易に制御することができるようになっている。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0035】
(実施例1)
(光触媒材料の合成)
粉末A(Ti0.90.05Mg0.05)及び粉末B(Ti0.70.15Mg0.15)を合成するための原料として、塩化チタンとタングステン酸と酢酸マグネシウムとを用いた。これらの原料をそれぞれ、0.9:0.05:0.05及び0.7:0.15:0.15となるように、過酸化水素水に溶解した。この溶液を、噴霧熱分解装置を用いて噴霧熱分解法によって結晶性粉末を合成した。具体的には、溶液を超音波振動によって霧化し、霧化した微粒子をキャリアガス(空気)により200℃、400℃、600℃及び800℃に保持した電気炉に導入し、霧化した液滴の乾燥、分解、結晶化を行い、生成した微粒子粉末をフィルターで回収した。なお、キャリアガス(空気)流量は、5L/分とした。
【0036】
(評価)
得られた2種類の粉末A、Bについて粉末X線回折スペクトルを測定するとともに、各粉末の可視光下での光触媒性能をメチレンブルー分解率によって評価した。試験条件は、300Wランプを用い、光強度(波長500nm):50μWcm−2(410nm以下を光学フィルターにてカット)した。なお、対照例として二酸化チタン(石原産業株式会社製、ST−01)についても、同様に評価した。本実施例で合成した各粉末のX線回折スペクトルを図1に示し、可視光下での光触媒性能の評価結果を図2に示す。
【0037】
図1に示すように、粉末A及びBは、いずれも高い比率で結晶性相を有する粉末であり、いずれの粉末A,Bの組成によっても固溶体が得られていることがわかった。粉末Aは粉末Bに比べてアナターゼ型結晶構造相の比率が高いことが推測された。また、図2に示すように、粉末A、Bはいずれも対照例(二酸化チタン)よりも優れた可視光応答性光触媒活性を有していたが、タングステンのモル数がより少なく、チタンのモル数がより多い粉末Aにおいてより高い可視光応答性光触媒活性を有していた。
【0038】
以上のことから、二酸化チタンにほとんど固溶化できないVI価の金属元素であるタングステンを、同様に二酸化チタンにほとんど固溶化できないII価の金属元素であるマグネシウムを同時に用いることにより、両者を二酸化チタンに固溶化できることがわかった。また、有効な可視光応答性光触媒活性を得るには、可視光応答性に寄与する金属元素を固溶化させるだけでなくチタン含有比率を維持して必要な可視光応答性能を得るための金属元素を固溶化させることが重要であることがわかった。さらに、こうした2種類の金属元素の固溶化により、可視光応答性と光触媒特性とを調節し、これらを兼ね備えた光触媒材料が得られることがわかった。
【0039】
(実施例2)
(光触媒材料の合成)
以下の表1に示す粉末A、C〜Fを合成するための原料として、塩化チタンとタングステン酸と酢酸塩とを用い、これらの原料を表2に示す金属元素のモル数となるように、過酸化水素水中に溶解した。この溶液を、噴霧熱分解装置を用いて噴霧熱分解法によって結晶性粉末を合成した。具体的には、溶液を超音波振動によって霧化し、霧化した微粒子をキャリアガス(空気)により200℃、400℃、600℃及び800℃に保持した電気炉に導入し、霧化した液滴の乾燥、分解、結晶化を行い、生成した微粒子粉末をフィルターで回収した。なお、キャリアガス(空気)流量は、5L/分とした。なお、粉末Fは、本発明の粉末A、C〜Eに対する比較例の粉末である。
【表2】


【0040】
(評価)
得られた2種類の粉末A、C〜Fについて粉末X線回折スペクトルを測定するとともに、実施例1と同様にして各粉末の可視光下での光触媒性能を評価した。なお、対照例として二酸化チタン(石原産業株式会社製、ST−01)についても、同様に評価した。本実施例で合成した各粉末のX線回折スペクトルを図3に示し、可視光下での光触媒性能の評価結果を図4に示す。
【0041】
図3に示すように、粉末A、C〜Fは、いずれも高い比率で結晶性相を有する粉末であり、いずれの粉末の組成によっても固溶体が得られていることがわかった。また、図4に示すように、粉末A、C、Eは、いずれも対照例(二酸化チタン)よりも優れた可視光応答性光触媒活性を有していたが、また、粉末D(ストロンチウム利用)においては、固溶体が得られたものの今回の金属元素のモル比によっては充分な可視光応答性及び光触媒特性のいずれかあるいは双方が充足されていないと推測された。また、粉末F(アルミニウム利用)においては固溶体を形成していたが、対照例よりも低い可視光応答性光触媒活性を示した。
【0042】
以上のことから、二酸化チタンにIII価の金属元素を利用することによってもタングステンなどのVI価の金属元素を固溶化できるが、かえって可視光応答性光触媒活性が低下することがあることがわかった。すなわち、可視光応答性光触媒活性は、可視光応答性に寄与する金属元素とともに固溶化される金属元素がIII価の場合には、チタン含有量をある程度維持できたとしても、充分な可視光応答性光触媒活性を付与することが困難であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】粉末A、Bの粉末X線回折スペクトルを示す図。
【図2】粉末A、Bの可視光応答性光触媒活性の評価結果を示す図。
【図3】粉末A、C〜Fの粉末X線回折スペクトルを示す図。
【図4】粉末A、C〜Fの可視光応答性光触媒活性の評価結果を示す図。
【出願人】 【識別番号】000173522
【氏名又は名称】財団法人ファインセラミックスセンター
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−691(P2008−691A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172952(P2006−172952)