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【発明の名称】 メタクリル酸製造用触媒の製造方法
【発明者】 【氏名】前原 桂子

【氏名】福井 友基

【氏名】近藤 正英

【氏名】内藤 啓幸

【要約】 【課題】メタクリル酸収率の高いメタクリル酸製造用触媒、その製造方法、およびこのメタクリル酸製造用触媒を用いたメタクリル酸の製造方法を提供する。

【構成】少なくともモリブデン、リンならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むスラリー(A液)とアンモニア若しくはアンモニウム根を含む溶液またはスラリー(B液)を調製し、A液とB液を混合してAB混合液または混合スラリー(AB液)を調製する工程を含むメタクリル酸製造用触媒の製造方法において、A液とB液を混合する際のA液の温度を−15℃以上0℃未満、および、B液の温度を−10℃以上30℃以下にそれぞれ調整することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモリブデン、リンならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むスラリー(A液)とアンモニア若しくはアンモニウム根を含む溶液またはスラリー(B液)を調製し、A液とB液を混合してAB混合液または混合スラリー(AB液)を調製する工程を含むメタクリル酸製造用触媒の製造方法において、A液とB液を混合する際のA液の温度を−15℃以上0℃未満、および、B液の温度を−10℃以上30℃以下にそれぞれ調整することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により製造されたメタクリル酸製造用触媒。
【請求項3】
請求項2に記載のメタクリル酸製造用触媒の存在下で、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸を製造する際に使用する触媒(以下、メタクリル酸製造用触媒という。)の製造方法、メタクリル酸製造用触媒、および、メタクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているメタクリル酸製造用触媒の製造方法のうち、触媒成分元素およびアンモニア化合物を含む2種類以上の混合溶液を混合する方法としては特許文献1〜2に記載されている方法が挙げられる。特許文献1には、モリブデン、リンおよびバナジウムを含む均一溶液(A液)と、アンモニア化合物を含む均一溶液(B液)と、セシウムなどその他の触媒元素を含む均一溶液(C液)を調製して、0〜25℃に調整したA液にB液とC液を順次添加した後に噴霧乾燥して得られるメタクリル酸製造用触媒の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、モリブデン、リンおよびバナジウムを含む溶液またはスラリーと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリーを混合し、次いでアンモニア化合物を含む溶液またはスラリーを100℃以下の30℃〜70℃で混合し、混合液を保持することにより混合液または混合スラリーの粒子径が0.05〜2.0μmの粒子を10%以下にすることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平5−31368号公報
【特許文献2】特開2005−66476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら公報に記載された方法を用いて製造された触媒はメタクリル酸の収率は必ずしも十分でなく、工業触媒としてさらなる触媒性能の向上が望まれている。
【0004】
本発明は、メタクリル酸を製造する際に用いられる、メタクリル酸収率の高いメタクリル酸製造用触媒、その製造方法、およびこのメタクリル酸製造用触媒を用いたメタクリル酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、少なくともモリブデン、リンならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むスラリー(A液)とアンモニア若しくはアンモニウム根を含む溶液またはスラリー(B液)を調製し、A液とB液を混合してAB混合液または混合スラリー(AB液)を調製する工程を含むメタクリル酸製造用触媒の製造方法において、A液とB液を混合する際のA液の温度を−15℃以上0℃未満、および、B液の温度を−10℃以上30℃以下にそれぞれ調整することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法である。
【0006】
また、本発明は上記メタクリル酸製造用触媒の存在下で、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メタクリル酸を製造するための触媒の製造方法、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法においてメタクリル酸収率の高い触媒および高収率でメタクリル酸を製造することのできるメタクリル酸の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造法は、(i)モリブデン原子、リン原子ならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリー(A液)を調製する工程と(ii)アンモニアまたはアンモニウム根を含む溶液またはスラリー(B液)を調製する工程と、(iii)A液とB液を混合してAB液を調製する工程と、必要に応じて(iv)AB液と触媒の製造に使用する触媒原料を混合し、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する工程と(v)この触媒前駆体の溶液またはスラリーを乾燥・焼成する工程を含む触媒製造方法を使用する。なお、アンモニウム根とは、アンモニウム(NH)になり得るアンモニア(NH)、およびアンモニウム塩等のアンモニウム含有化合物に含まれるアンモニウムの総称である。
【0009】
<A液の調製>
A液は、少なくともモリブデン、リンならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。A液は、モリブデン原子およびリン原子の他に、バナジウム原子、銅原子、X元素、Y元素、Z元素、およびアンモニウム根を含んでいてもよい。
【0010】
A液に含まれるアンモニウム根の量は、モリブデン原子12モルに対して0〜1.5モルが好ましく、より好ましくは0〜1.0モルである。アンモニウム根の量をこの範囲とすることにより、収率の高い触媒が得られる。A液中に含まれるアンモニウム根の量は、これらを含む触媒原料やアンモニアの使用量により調節することができる。
【0011】
A液の製造に用いる触媒原料としては、各元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩等を適宜選択して使用することができる。例えば、モリブデンの原料としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸等のアンモニウムを含まない化合物が好ましいが、パラモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、テトラモリブデン酸アンモニウム等の各種モリブデン酸アンモニウムも少量であれば使用できる。また、リンの原料としては、正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等が使用できる。さらに、モリブデンおよびリンの原料として、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム等のヘテロポリ酸を使用することもできる。さらに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の原料としては、各元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等を適宜選択して使用することができる。本発明では、アルカリ金属を使用することで優れた効果が得られ、カリウム、ルビジウムおよびセシウムを用いることが好ましく、セシウムを用いることがより好ましい。例えば、セシウムの原料としては、硝酸セシウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム等が使用できる。触媒原料は、各元素に対して1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0012】
A液の溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、エチレングリコール、アセトン等およびそれらの混合液が挙げられるが、水を用いることが好ましい。A液中の溶媒の量は特に限定されないが、A液中に含まれるモリブデン化合物と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100が好ましく、1:0.5〜1:50がより好ましい。
【0013】
A液は、室温で撹拌して調製してもよいが、加熱撹拌して調製することが好ましい。加熱温度は、50℃以上150℃以下が好ましく、70℃以上130℃以下がより好ましい。加熱温度をこのような範囲にすることで、活性の高い触媒が得られる。加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。加熱時間をこのような範囲にすることで、触媒原料同士の反応を十分に進行させることができる。また、加熱時間は、24時間以下が好ましく、特に12時間以下がより好ましい。
【0014】
A液にはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属が含まれるが、全ての原料を同時に加熱して調製しても、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く原料を上記の条件で加熱した後にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を添加してA液を調製してもよい。特に後者の方法で触媒を製造することで収率の高い触媒を調製することができる。後者の方法でA液を調製する場合のそれぞれの溶液またはスラリーの温度は特に限定されず、100℃以下が好ましく80℃以下がより好ましい。また、この二つの液を混合する方法については特に限定されない。
【0015】
<B液の調製>
B液は、アンモニウム根含有化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。B液は、アンモニウム根含有化合物の他に、リン原子、モリブデン原子、バナジウム原子、銅原子、X元素、Y元素、Z元素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含んでいてもよいが、これらの元素は含まないことが好ましい。
【0016】
B液に含まれるアンモニウム根の量は、A液に含まれるモリブデン原子12モルに対して6モル以上が好ましく、7モル以上がより好ましい。また、B液に含まれるアンモニウム根の量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して17モル以下が好ましく、15モル以下がより好ましい。B液に含まれるアンモニウム根の量をこの範囲とすることにより、収率の高い触媒が得られる。
【0017】
B液の調製に用いるアンモニウム根含有化合物はアンモニアや各種のアンモニウム塩である。例えば、アンモニア(アンモニア水)、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。アンモニウム根含有化合物は1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
B液の溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0019】
B液中の溶媒の量は特に限定されないが、通常、B液中に含まれるアンモニウム根含有化合物と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100であることが好ましく、1:0.5〜1:50がより好ましい。
【0020】
B液の温度は、−10℃以上30℃以下が好ましく、より好ましくは−5℃以上25℃以下である。B液の冷却には、恒温槽に不凍液を混合した溶剤を入れて使用し、B液の入った槽全体を冷却することが好ましい。
【0021】
<A液とB液の混合>
本発明において、A液とB液の混合方法は特に限定されず、例えば、A液にB液を添加して混合する方法、B液にA液を添加して混合する方法、A液とB液を同時に混合する方法等、任意の方法が適用できる。中でも好ましいのは、A液にB液を添加して混合する方法である。B液は2回以上に分けて混合してよい。
【0022】
本発明の方法では、A液とB液を混合する際のA液の温度を−15℃以上0℃未満に調整することが必要であり、−10℃以上0℃未満が好ましく、−5℃以上0℃未満がより好ましい。A液の温度をこの範囲にすることで比表面積が増大し、結晶径が小さくなり、活性の高い触媒が得られる。また、A液と混合する際のB液の温度は−10℃以上30℃以下に調整することが必要であり、−5℃以上25℃以下が好ましく、−3℃以上20℃以下がより好ましい。B液の温度をこの範囲にすることで、A液の場合と同様に比表面積が増大し、結晶径が小さくなり、活性の高い触媒が得られる。
【0023】
本発明において、A液とB液の混合液(以下、AB液という)の温度は、混合開始時から終了時まで、混合開始時を基準として−10〜+10℃の範囲に保持することが好ましく、−5〜+5℃の範囲に保持することがさらに好ましい。このような温度範囲に保持することで、収率が高い触媒を再現性よく製造できる。
【0024】
A液およびAB液の冷却には、恒温槽に不凍液を混合した溶剤を入れて使用し、A液およびAB液の入った槽全体を冷却することが好ましい。
【0025】
A液とB液の混合速度は、混合開始時から終了時まで同じ速度でもよいし、途中で速度を変えてもよい。
【0026】
<AB液と原料Cの混合>
次いで、必要であれば上記で調製したAB液と、触媒の製造に使用する触媒原料(以下、原料Cとする)とを混合し、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する。混合する原料Cとしては、例えば、鉄の原料として、硝酸鉄、酸化鉄、水酸化鉄等が使用できる。原料Cは各元素に対して1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
これらの原料CはAB液にそのままの状態で加えてもよく、溶液や懸濁液の状態で加えてもよい。使用する溶媒は、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等およびそれらの混合液が挙げられるが、水を用いることが好ましい。この溶媒の量は特に限定されない。
【0028】
AB液と原料Cの混合方法は、特に限定されず、例えばAB液に原料Cを添加する方法、原料CにAB液を混ぜていく方法、AB液と原料Cを同時に混ぜる方法が利用できる。AB液と原料Cを混合する際の溶液の温度は特に限定されないが、90℃以下であることが好ましく、より好ましくは80℃以下である。
【0029】
<乾燥および焼成>
次いで、上記のようにして得られた触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを乾燥し、触媒前駆体の乾燥物を得る。乾燥方法としては種々の方法を用いることが可能であり、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法等を用いることができる。乾燥に使用する乾燥機の機種や乾燥時の温度、時間等は特に限定されず、乾燥条件を適宜変えることによって目的に応じた触媒前駆体の乾燥物を得ることができる。
【0030】
このようにして得られた触媒前駆体の乾燥物は、必要により粉砕した後、成形せずにそのまま次の焼成を行ってもよいが、通常は成形品を焼成する。
【0031】
成形方法は特に限定されず、公知の乾式および湿式の種々の成形法が適用できるが、シリカ等の担体などを含めずに成形することが好ましい。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形、担持成型等が挙げられる。成形品の形状についても特に限定されず、例えば、円柱状、リング状、球状等の所望の形状を選択することができる。なお、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。そして、このようにして得られた触媒前駆体の乾燥物またはその成形品を焼成し、メタクリル酸製造用触媒を得る。
【0032】
焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、用いる触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200〜500℃、好ましくは300〜450℃で、0.5時間以上、好ましくは1〜40時間で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させないような気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0033】
上記のようにして製造される本発明のメタクリル酸製造用触媒は、下記式(1)で示される組成を有することが好ましい。
【0034】
MoCu (1)
(P、Mo、V、CuおよびOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅および酸素を示し、X、Y、Zは前述のX元素、Y元素、Z元素に相当し、Xはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比率を表し、b=12のときa=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)
<メタクリル酸の製造方法>
次に、本発明のメタクリル酸の製造方法について説明する。本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記のようにして得られる本発明の触媒の存在下でメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するものである。反応は、固定床で行う。また、触媒層は1層でも2層以上でもよく、担体に担持させたものであっても、その他の添加成分を混合したものであってもよい。
【0035】
上記のような本発明の触媒を用いてメタクリル酸を製造する際には、メタクロレインと分子状酸素とを含む原料ガスを触媒と接触させる。原料ガス中のメタクロレイン濃度は広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が適当であり、3〜10容量%がより好ましい。分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気等も用いることができる。原料ガス中の分子状酸素濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが適当であり、0.5〜3モルがより好ましい。原料ガスは、メタクロレインおよび分子状酸素源を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。また、原料ガスには水蒸気を加えてもよい。水の存在下で反応を行うと、より高収率でメタクリル酸が得られる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、1〜40容量%がより好ましい。また、原料ガス中には、低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。メタクリル酸製造反応の反応圧力は、大気圧から数気圧まで用いられる。反応温度は、230〜450℃の範囲で選ぶことができるが、250〜400℃がより好ましい。原料ガスの流量は特に限定されないが、接触時間は1.5〜15秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。触媒の組成は触媒成分の原料仕込み量から求めた。反応原料ガスおよび生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。また、溶液中に含まれるアンモニアおよびアンモニウムの量は、キェールダール法で測定した。
【0038】
なお、メタクロレインの反応率、生成したメタクリル酸の選択率、メタクリル酸の単流収率は以下のように定義される。
【0039】
メタクロレインの転化率(%)=(β/α)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(γ/β)×100
メタクリル酸の単流収率(%)=(γ/α)×100
ここで、αは供給したメタクロレインのモル数、βは反応したメタクロレインのモル数、γは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0040】
[実施例1]
(A液の調製)
純水300部に三酸化モリブテン100部、85質量%リン酸8.00部、メタバナジン酸アンモニウム4.06部および三酸化アンチモン1.69部を加え、還流下で3時間撹拌した。さらに純水28.43部に硝酸セシウム13.54部を加えて50℃に加熱した溶液をモリブデンおよびリン等を含む溶液に混合し、A液を調製した。A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して0.6モルであった。
【0041】
(B液の調製)
25質量%アンモニア水39.44部をB液とした。B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して10.0モルであった。
【0042】
(AB液の調製)
A液を−2℃に冷却した後、A液を撹拌しながら20℃のB液をA液に約2分間で混合した。その後、液温を−2℃に保ったまま90分間撹拌を続けてAB液を調製した。
【0043】
(AB液と触媒原料Cの混合)
触媒原料C−1として硝酸銅2.34部を純水23.0部に溶解し、AB液に撹拌しながら混合した。さらに触媒原料C−2として硝酸鉄2.34部を純水10.0部に溶解して、−2℃のAB液に撹拌しながら添加して、触媒前駆体を含むスラリーを調製した。この触媒前駆体を含むスラリーを101℃まで加熱し、撹拌しながら蒸発乾固した。そして、得られた固形物を130℃で16時間乾燥し、乾燥物を加圧成形した後、空気流通下、390℃にて6時間焼成して触媒を得た。得られた触媒の組成は、P1.2Mo12.6Cu0.2Sb0.2Cs1.2Fe0.1であった。
【0044】
(メタクリル酸の合成反応)
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5%、酸素10%、水蒸気30%、窒素55%(容量%)の混合ガスを、大気圧下、反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じたときの反応結果は、メタクロレイン転化率72.32%、メタクリル酸選択率89.62%、メタクリル酸単流収率64.81%であった。
【0045】
[実施例2、比較例1〜4]
実施例1においてA液にB液を添加する際のA液及びB液の温度を表1に示す温度とした以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸製造用触媒を調製した。調製した触媒を用いて実施例1と同様にメタクリル酸を製造した結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
(A液の調製)
純水300部に三酸化モリブテン100部、85質量%リン酸8.00部、メタバナジン酸アンモニウム4.06部および硝酸銅2.34部を純水23.0部に溶解した溶液を加え、還流下で3時間撹拌した。さらに、還流後50℃に冷却して三酸化アンチモン4.22部を添加し、次いで純水28.43部に重炭酸セシウム13.47部を溶解した溶液をモリブデンを含む溶液に混合し、A液を調製した。A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して0.6モルであった。
【0047】
(B液の調製)
硝酸アンモニウム13.44部を純水20部に溶解してこれらをB液とした。B液中に含まれるアンモニウム根量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して2.9モルであった。
【0048】
(AB液の調製)
A液を−2℃に降温した後、A液を撹拌しながら20℃のB液をA液に約2分間で混合した。その後、液温を−2℃に保ったまま90分間撹拌を続けてAB液を調製した。
【0049】
(触媒原料Cの混合)
さらに触媒原料Cとして硝酸鉄4.68部を純水10.0部に溶解して、−2℃のAB液に混合して触媒前駆体を含むスラリーを調製した。
【0050】
この触媒前駆体を含むスラリーを101℃まで加熱し、撹拌しながら蒸発乾固した。そして、得られた固形物を130℃で16時間乾燥し、乾燥物を加圧成形した後、空気流通下、390℃にて6時間焼成して触媒を得た。得られた触媒の組成は、P1.2Mo120.6Cu0.2Sb0.5Cs1.2Fe0.2であった。
【0051】
(メタクリル酸の合成反応)
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5%、酸素10%、水蒸気30%、窒素55%(容量%)の混合ガスを、大気圧下、反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じたときの反応結果は、メタクロレイン転化率88.70%、メタクリル酸選択率90.03%、メタクリル酸単流収率79.86%であった。
【0052】
[比較例5]
実施例3において、A液にB液を添加する際のA液及びB液の温度を表1に示した温度とした以外は実施例3と同様にメタクリル酸製造用触媒を調製した。調製した触媒を用いて実施例3と同様にメタクリル酸を製造した結果を表1に示す。
【表1】


【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−681(P2008−681A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172449(P2006−172449)