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【発明の名称】 均質バルブ
【発明者】 【氏名】▲濱▼谷 希人

【氏名】佐伯 達也

【要約】 【課題】従来よりも低い圧力で高い均質効果を発揮できる均質バルブを提供する。

【構成】内部に孔13が形成されたバルブシート11と、前記バルブシート11の孔13の中心軸線13a上に配置されたバルブ本体12とを備え、これらバルブシート11及びバルブ本体12のうちいずれか一方には流路14の流れ方向を横切る方向に延在する刃17が形成され、バルブシート11及びバルブ本体12のうち前記一方とは異なる他方には刃17と対向する位置に溝18が形成され、刃17の先端17aは溝18内に挿入されており、刃17及び溝18の延在方向に垂直な断面において、刃17の側面17bがなす角度をθ、溝18の側面18bがなす角度をθとするとき、θ>θであることを特徴とする均質バルブ10を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に孔が形成されたバルブシートと、前記バルブシートの孔の中心軸線上に配置されたバルブ本体とを備え、これらバルブシート及びバルブ本体のうちいずれか一方には流路の流れ方向を横切る方向に延在する刃が形成され、バルブシート及びバルブ本体のうち前記一方とは異なる他方には前記刃と対向する位置に溝が形成され、前記刃の先端は前記溝内に挿入されており、前記刃及び溝の延在方向に垂直な断面において、前記刃の側面がなす角度をθ、前記溝の側面がなす角度をθとするとき、θ>θであることを特徴とする均質バルブ。
【請求項2】
(θ−θ)/2が10°以上70°以下であることを特徴とする請求項1に記載の均質バルブ。
【請求項3】
内部に孔が形成されたバルブシートと、前記バルブシートの孔の中心軸線上に配置されたバルブ本体とを備え、これらバルブシート及びバルブ本体は流路に臨んで相対向する平行面を有し、前記平行面のいずれか一方の面には、前記流路の流れ方向を横切る方向に延在しかつ前記平行面のうち前記一方の面と対向する他方の面に対して突出する刃が形成されていることを特徴とする均質バルブ。
【請求項4】
前記刃の延在方向に垂直な断面において、前記刃の側面がなす角度をθとするとき、θが40°以上160°以下であることを特徴とする請求項3に記載の均質バルブ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン中の不連続相の粒子を効率的に微粒化して均質化する均質バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルジョンを均質化するため、狭空間にエマルジョンを高圧で通過させてエマルジョン中の不連続相の粒子を微粒化する均質バルブが用いられている。例えば、特許文献1には、相対向して接触する一対のディスク面の片側をフラットな面とし、他の片側のディスク面には複数本の溝を同心円状に設け、液体を高圧で圧入することにより、ディスク面の間隙がミクロン単位に押し開いて液が遠心方向に流れるようになり、さらに粒子が溝壁に衝突して細かくなるという均質バルブが記載されている。また、特許文献2には、バルブ及びバルブシートの相対面する両端面に、同心円状に交互に連続した山部と谷部を形成し、該両端面の山部と谷部を互いに噛み合わせて弁部を形成した均質装置が記載されている。従来、均質バルブでエマルジョンが均質される原理は、液をポンプで高圧にして圧送することにより、液がバルブとシートの間隙をこじ開けて通過したとき、キャビテーション等の現象を生じるためと言われている(例えば非特許文献1、2参照)。
【特許文献1】実開昭62−9803号公報
【特許文献2】実開昭63−82429号公報
【非特許文献1】「食品工学基礎講座」第9巻、株式会社光琳、昭和63年11月30日発行、p184−185
【非特許文献2】「乳化・分散技術応用ハンドブック」、株式会社サイエンスフォーラム、昭和62年2月25日発行、p485
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の均質バルブは、エマルジョンをポンプによって高圧で流すことが必要であり、高い均質効果を得るためには、圧力を上昇させる以外に良い方法はなかった。しかし、装置の耐久性や安全性のためには高圧専用機としての設計が必要であり、エネルギーコストが上昇する上、低圧処理には向かない等のデメリットもあった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも低圧で高い均質効果を発揮できる均質バルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、内部に孔が形成されたバルブシートと、前記バルブシートの孔の中心軸線上に配置されたバルブ本体とを備え、これらバルブシート及びバルブ本体のうちいずれか一方には流路の流れ方向を横切る方向に延在する刃が形成され、バルブシート及びバルブ本体のうち前記一方とは異なる他方には前記刃と対向する位置に溝が形成され、前記刃の先端は前記溝内に挿入されており、前記刃及び溝の延在方向に垂直な断面において、前記刃の側面がなす角度をθ、前記溝の側面がなす角度をθとするとき、θ>θであることを特徴とする均質バルブを提供する。
この均質バルブは、(θ−θ)/2が10°以上70°以下であることが好ましい。
【0006】
また、本発明は、内部に孔が形成されたバルブシートと、前記バルブシートの孔の中心軸線上に配置されたバルブ本体とを備え、これらバルブシート及びバルブ本体は流路に臨んで相対向する平行面を有し、前記平行面のいずれか一方の面には、前記流路の流れ方向を横切る方向に延在しかつ前記平行面のうち前記一方の面と対向する他方の面に対して突出する刃が形成されていることを特徴とする均質バルブを提供する。
この均質バルブは、前記刃の延在方向に垂直な断面において、前記刃の側面がなす角度をθとするとき、θが40°以上160°以下であることを特徴とする請求項3に記載の均質バルブ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の均質バルブによれば、互いに対向する刃の側面と溝の側面、もしくは刃の側面とそれに対向する面との間に、刃の先端に近づくにつれて流路の断面積が小さくなるような角度勾配を有する構造(すなわち流路の断面積が縮小し、次いで拡大する構造)が形成される。このため、流れが刃の先端を通過するときに、流体の圧力を集中させるとともに、刃の先端を通過した後に流体のエネルギーを急激に放散させることができる。これにより、非常に高い剪断速度が生じ、高い剪断応力を発生させる結果、流体を従来より低い圧力で均質バルブに導入したときでも、高い均質効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。図1に、本発明の均質バルブの一形態例を示す。この均質バルブ10は、バルブシート11と、バルブ本体12とを有して構成されている。バルブシート11の内部には、原料流体が通過する両端が開口した孔13が形成されており、この孔13の上流側の一端側から原料流体が導入されるようになっている。バルブ本体12は、バルブシート11の孔13の中心軸線13a上に配置されており、バルブシート11とバルブ本体12との間には流路14が設けられている。これにより、孔13を通じて導入された流体はバルブ本体12に衝突して流れの向きを変え、孔13の出口から放射状に広がってバルブシート11とバルブ本体12との間の流路14を通るようになっている。
本発明の均質バルブは、粒子径が不均一な不連続相を含む原料流体(エマルジョン)を通すことにより、不連続相の粒子を微粒化して均質することができる。原料流体は、例えば牛乳やクリーム等のように、脂肪分を不連続相とする水中油滴型のエマルジョンが挙げられる。
【0009】
また、バルブシート11及びバルブ本体12は、前記流路14に臨んで相対向する面15、16を有する、本形態例の均質バルブ10の場合、これら相対向する面15、16が互いに平行となるようにバルブシート11とバルブ本体12との位置関係が規定されている。バルブシート11側の対向面15には、バルブシート11とバルブ本体12との間の流路14の流れ方向を横切る方向に延在する刃17が形成されており、バルブ本体12側の対向面16には、前記刃17と対向する位置に溝18が形成されている。刃17は、その刃17と対向する意味に形成された溝18に向けて突出しており、刃17の先端17aは溝18内に挿入されている。ここで、刃17の先端17aが溝18内に挿入されているとは、刃17の先端17aが溝18の両側縁を結ぶ線18aより内側に位置していることを意味し、この形態例では、刃17の先端17aがバルブ本体12側の対向面16よりも溝18の内部に進入していることとなる。
【0010】
刃17と溝18とは密着しておらず、刃17と溝18との間には間隙が形成されている。この間隙は、対向面15、16間の流路14を通る流体が、刃17の側面17bに沿って迂回して流れる、折れ曲がった狭い空間の流路となっている。刃17と溝18との間隙の大きさは、バルブシート11とバルブ本体12とを互いに押圧する圧力と、間隙を流れる液の圧力とのバランスによって決定されるが、前者の押圧力を増減させたり、バルブシート11及びバルブ本体12の一方又は両方を動かすことにより調節可能である。例えばバルブシート11が固定されている場合は、バルブ本体12を不図示の油圧式シリンダー等で駆動することにより、間隔を調節することができる。
【0011】
本形態例においては、刃17及び溝18の延在方向に垂直な断面(この形態例では図1に示す、孔13の中心軸線13aを含む平面に沿った断面)において、刃17の2つの側面17bがなす角度をθ、溝18の2つの側面18bがなす角度をθとするとき、θ>θとされている。この場合、図1(b)に示すように、刃17の先端17aと溝18の底部18cとの距離dは、対向面15、16間の間隔Dよりも小さくなるように構成することが好ましく、刃17の側面17bと溝18の側面18bとの間に、刃17の先端17aに近づくにつれて流路の断面積が小さくなるような角度勾配を有する構造(すなわち流路の断面積が縮小し、次いで拡大する構造)が形成される。このため、流体が刃17と溝18との間を通過するときに、一旦、流体の圧力を集中させるとともに、通過の後には流体のエネルギーを急激に放散させることができる。これにより、非常に高い剪断速度が生じ、高い剪断応力を発生させる結果、高い均質効果を得ることができる。
【0012】
刃17及び溝18の同じ側の側面17bと18bのなす角度θは、θとθの差の半分、すなわちθ=(θ−θ)/2で表される。本形態例の均質バルブ10において、(θ−θ)/2は、10°以上70°以下であることが好ましい。例えば図10に流速V=5m/sとしたときの、d(刃17の先端17aと溝18の底部18cとの距離[mm])に対する圧力損失ΔP[MPa]をSCRYU(株式会社ソフトウエアクレイドル製の解析プログラム)で計算した結果を示す。図10に示すように、同じ圧力損失でもθが大きいほどdが小さくなる。例えばΔP=10MPaのとき、θ=10°の場合はd=0.085mmであり、θ=30°の場合はd=0.0575mmである。従ってθが10°以上70°以下であれば、導入路圧力損失を効果的に低減させることができる。
【0013】
このように、本形態例の均質バルブ10では、流体にバルブシート11とバルブ本体12との間を通過させるとき、刃17と溝18とにより構成される特徴的な構造によって流体に高い剪断力を与えることができるので、高い均質効果を得ることができる。バルブシート11とバルブ本体12との間隙をこじ開けるための高い圧力を与える必要がないため、流体を均質バルブ10に導入するときのポンプ圧は、従来より低い圧力で済む。刃17と溝18との間を通過して均質された流体は、均質バルブ10の外へ排出される。
【0014】
図1に示す均質バルブ10の場合、面15、16上において刃17及び溝18は、バルブシート11の孔13と同心の円環状であり、孔13の出口から刃17及び溝18に到達するまでの行程が方向によらず等距離となっている。これにより、流路14を通過する流体の流れが乱れにくくなり、流体が刃17に衝突するときの流速や圧力のばらつきを抑制できる。しかし本発明は、刃17及び溝18が円環状である場合に限らず、孔13の出口を囲むように閉じた形状に延在するものであれば、流体が刃17に衝突して、さらに刃17と溝18との間の狭空間を通過するときに、粒子にせん断力を与えて微粒化することができる。
【0015】
刃17及び溝18が円環状であるときの直径R(リング径)は、特に図1に示す例に限られるものではない。例えば、図2に示す均質バルブ10Aのように、刃17の内側の側面が吐出孔13の出口に接する程度に刃17及び溝18のリング径Rを小さくしても良い。また、図3に示す均質バルブ10Bのように、刃17及び溝18のリング径Rが対向面15,16の直径の0.8倍程度の大きさであっても良い。
【0016】
また、刃17及び溝18を複数組設けて、流体が刃17と溝18との間を2回以上通過するように構成することもできる。例えば、図4に示す均質バルブ10Cのように、刃17及び溝18を同心円状に2組設けたり、図5に示す均質バルブ10Dのように、刃17及び溝18を同心円状に3組設けたりしても良い。
【0017】
さらに本発明の技術的思想に基づき、さらなる改変が可能である。例えば、溝を省略して刃が平面に対向する構造とすることもできる。この構造の例として図6に示す均質バルブ10Eは、内部に吐出孔13が形成されたバルブシート11と、バルブシート11の吐出孔13の中心軸線13a上に配置されたバルブ本体12とを備え、これらバルブシート11及びバルブ本体12は両者の間に形成される流路14に臨んで相対向する平行な面15,16を有する点では、図1に示す均質バルブ10と共通する。しかし、バルブシート11側の対向面15に、流路14の流れ方向を横切る方向に延在する刃17を設ける一方、バルブ本体12側の対向面16には溝を省略し、刃17と対向する部分を含めて全面を平面としている。刃17とこれに対向する平面16とは密着しておらず、刃17と平面16との間には間隙が形成されている。この例の均質バルブ10Eの場合、刃17と平面16との間隙は、対向面15、16間の流路14を通る流体が、刃17の側面17bに沿って迂回して流れる、折れ曲がった狭い空間の流路となっている。刃17と対向面16との間隙の大きさは、バルブシート11及びバルブ本体12の一方又は両方を動かすことにより調節可能である。例えばバルブシート11が固定されている場合は、バルブ本体12を不図示の油圧式シリンダー等で駆動することにより、間隔を調節することができる。
【0018】
図6に示す均質バルブ10Eのように、刃と対向する溝を省略した場合であっても、刃17の側面17bとそれに対向する面16との間に、刃17の先端17aに近づくにつれて流路の断面積が小さくなるような角度勾配を有する構造(すなわち流路の断面積が縮小し、次いで拡大する構造)が形成される。図6(b)に示すように、刃17の高さをA、対向面15,16の間隔をDとおくとき、刃17の先端17aとそれに対向する面16との距離dは、D−Aとなる。すなわち、本形態例の均質バルブ10Eでは、対向面の間隔Dに比べて極端に狭い、幅dの流路が断続的に存在したものとなる。したがって、液が断続的に存在するd幅の狭い流路を通過する際に、集中的にエネルギー損失が発生し、エネルギーを集中的に損失していくために、液に発生する最大剪断速度は大きく、また、そのために、液に発生する最大剪断応力も大きい。この結果、本形態例の均質バルブでは高い均質効果を得ることができるのである。エネルギー損失の集中度合いを高めるため、平面に対向する刃を複数設ける場合には、それぞれの組の間に十分な距離を設けることが好ましい。
【0019】
刃17の側面17bと平面16のなす角度θは、刃17の延在方向に垂直な断面において刃17の側面17bがなす角度をθとするとき、θ=90°−(θ/2)で表される。すなわち刃17が平面16に対向して設けられた本形態例の均質バルブ10Eとは、刃17と溝18とが対向する形態において溝18の側面のなす角度θが180°である場合と考えることができる。刃17と溝18とが対向する形態においてθ=(θ−θ)/2が10°以上70°以下であることが好ましいのと同様に、刃17が平面16に対向して設けられた本形態例の均質バルブ10Eにおいても、θ=90°−(θ/2)は10°以上70°以下であることが好ましい。すなわち、θが40°以上160°以下であることが好ましい。
【0020】
このように、本形態例の均質バルブ10Eでは、流体にバルブシート11とバルブ本体12との間を通過させるとき、平面16に向けて刃17を突出させた特徴的な構造によって流体に高い剪断力を与えることができるので、高い均質効果を得ることができる。バルブシート11とバルブ本体12との間隙をこじ開けるための高い圧力を与える必要がないため、流体を均質バルブ10Eに導入するときのポンプ圧は、従来より低い圧力で済む。刃17と平面16との間を通過して均質された流体は、均質バルブ10Eの外へ排出される。
【0021】
また別の改変例として、バルブ本体がバルブシートの孔の中に挿入され、刃及び溝が、バルブ本体の側面及びバルブシートの孔の内面に設けられることもできる。この構造の例として図7に示す均質バルブ20は、内部に孔23が形成されたバルブシート21と、バルブシート21の孔23の中心軸線23a上に配置されたバルブ本体22とを備え、バルブシート21の孔23の内面25とバルブ本体22の側面26との間に流路24が形成されている。この構成によれば、孔23の入口から導入された流体はバルブ本体22に衝突して流れの向きを変え、孔23の内面25とバルブ本体22の側面26との間の流路24を通過したのち、孔23の出口から吐出される。
【0022】
刃27と溝28とは密着しておらず、刃27と溝28との間には間隙が形成されている。この間隙は、流路24を通る流体が、刃27の側面27bに沿って迂回して流れる、折れ曲がった狭い空間の流路となっている。本形態例においては、刃27及び溝28の延在方向に垂直な断面(この形態例では図7に示す、孔23の中心軸線23aを含む平面に沿った断面)において、刃27の2つの側面27bがなす角度をθ、溝28の2つの側面28bがなす角度をθとするとき、θ>θとされている。これにより、刃27の側面27bと溝28の側面28bとの間に、刃27の先端27aに近づくにつれて流路の断面積が小さくなるような角度勾配を有する構造(すなわち流路の断面積が縮小し、次いで拡大する構造)が形成される。このため、流体が刃27と溝28との間を通過するときに、一旦、流体の圧力を集中させるとともに、通過の後には流体のエネルギーを急激に放散させることができる。これにより、非常に高い剪断速度が生じ、高い剪断応力を発生させる結果、高い均質効果を得ることができる。
本形態例の均質バルブ20において、(θ−θ)/2は、10°以上70°以下であることが好ましい。これにより、導入路圧力損失を減少させることができる。
【0023】
このように、本形態例の均質バルブ20では、流体にバルブシート21とバルブ本体22との間を通過させるとき、刃27と溝28とにより構成される特徴的な構造によって流体に高い剪断力を与えることができるので、高い均質効果を得ることができる。バルブシート21とバルブ本体22との間隙をこじ開けるための高い圧力を与える必要がないため、流体を均質バルブ20に導入するときのポンプ圧は、従来より低い圧力で済む。刃27と溝28との間を通過して均質された流体は、孔23の出口から均質バルブ20の外へ排出される。
【0024】
図7に示す均質バルブ20の場合、バルブシート21の孔23の内面25及びバルブ本体22の側面26は略円錐面であり、刃27及び溝28は円錐面の周に沿って円環状に形成されている。
バルブシート21の孔23に対してバルブ本体22を挿入したり抜き出したりするため、図8に示す均質バルブ20Aのように、溝28を有するバルブシート21の孔23の内面25の内径を、孔23の入口側(図8の左側)から出口側(図8の右側)に向けて単調に増加するものとすることが好ましい。また、図9に示す均質バルブ20Bのように、刃27をバルブシート21の孔23の内面25に、溝28をバルブ本体22の側面26に設ける場合は、溝28を有するバルブ本体22の側面26の外径を、孔23の入口側(図9の左側)から出口側(図9の右側)に向けて単調に増加するものとすることが好ましい。図8及び図9に示す均質バルブ20A,20Bによれば、刃27と溝28とが干渉することなく、バルブシート21の孔23に対してバルブ本体22を挿入したり抜き出したりすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0026】
1)実験方法
原乳(牛乳)および、試験用に配合したクリーム(以下、「合成クリーム」という。)を表1に示す各実施例及び比較例の均質バルブにより均質処理を1回ずつ行った。
【0027】
実施例1(図5を参照。)で使用した均質バルブ10Dは、3枚の刃17及びそれに対向して設けられた溝18の直径がR=4mm、R=9mm、R=14mm、刃17の高さが1mm、溝18の深さが0.35mm、刃17の側面のなす角度θが40°、溝18の側面のなす角度θが60°、よってθ=10°である。
実施例2(図4を参照。)で使用した均質バルブ10Cは、2枚の刃17及びそれに対向して設けられた溝18の直径がR=4mm、R=9mm、刃17の高さが1mm、溝18の深さが0.35mm、刃17の側面のなす角度θが40°、溝18の側面のなす角度θが60°、よってθ=10°である。
実施例3(図2を参照。)で使用した均質バルブ10Aは、刃17及びそれに対向して設けられた溝18の直径Rが4mm、刃17の高さが1mm、溝18の深さが0.35mm、刃17の側面のなす角度θが40°、溝18の側面のなす角度θが60°、よってθ=10°である。
実施例4(図1を参照。)で使用した均質バルブ10は、刃17及びそれに対向して設けられた溝18の直径Rが9mm、刃17の高さが1mm、溝18の深さが0.35mm、刃17の側面のなす角度θが40°、溝18の側面のなす角度θが60°、よってθ=10°である。
実施例5(図3を参照。)で使用した均質バルブ10Bは、刃17及びそれに対向して設けられた溝18の直径Rが14mm、刃17の高さが1mm、溝18の深さが0.35mm、刃17の側面のなす角度θが40°、溝18の側面のなす角度θが60°、よってθ=10°である。
【0028】
比較例で使用した従来型の均質バルブは、図11に示すように、バルブシート31とバルブ本体32とを有して構成され、これらバルブシート31及びバルブ本体32は、バルブシート31の吐出孔33の出口34と、バルブ本体32の液導入壁35とが互いに対向する面間に間隙36が形成されるように配置され、かつバルブシート31及びバルブ本体32の互いに対向する面に凹凸37,38が形成されている均質バルブ30であり、このように間隙36に凹凸37,38が形成されることにより、間隙36に形成される狭い流路をエマルジョンが流れることによって発生する剪断力で均質すると考えられているものである。均質バルブ30のバルブシート31とバルブ本体32とは、バルブシート31側の凹凸37とバルブ本体32側の凹凸38とが互いに噛み合わさるように配置され、凹凸37,38の角度は互いに同一であり、かつ凹凸37,38の高さは互いに同一である。この比較例で用いた均質バルブ30の場合、凹凸37,38の角度は60°、凹凸37,38の高さは3mmとした。
【0029】
なお、図1に示した均質バルブ10に特有の形状及び作用と、図11に示した均質バルブ30に特有の形状及び作用とについて、各々比較する。
図11に示した従来の均質ポンプ30では、バルブシート31及びバルブ本体32の相対面する両端面に、同心円状に交互に連続した山部と谷部が形成され、該両端面の山部と谷部とが互いに噛み合わされて流路が形成されている。このため、山部と谷部による凹凸37,38の角度は互いに同一であり、かつ凹凸37,38の高さは互いに同一であり、山部と谷部の間に形成される流路は、一定の幅で連続的なものとなっている。また、山部の先端や谷部の底部には、凹凸のすり合わせのため、丸み(R形状)が大きく設けられている。
このため、図11に示した従来の均質ポンプ30は、液の圧力エネルギー損失が分散的に発生し、圧力エネルギーが徐々に損失していくために、液に発生する最大剪断速度が小さくなり、また、そのために、液に発生する最大剪断応力も小さい、という特有の作用を有する。
【0030】
これに対して図1に示した均質バルブ10は、バルブシート11及びバルブ本体12の対向面にそれぞれ設けられた刃17と溝18によって流路が形成されており、この刃と溝の角度が互いに異なる(θ>θ)、という本発明の形状を有している。
そして、均質バルブ10に特有の形状として、刃17の先端が尖って略V字型の断面になっており、また、溝18の底部も略V字型の断面となっている。さらに、刃17の高さAと溝18の深さBについてもA>Bとなっている。このため、対向面の間隔Dに比べて極端に狭い、幅dの流路が断続的に存在したものとなる。
したがって、図1に示した均質ポンプ10は、液が断続的に存在するd幅の狭い流路を通過する際に、集中的に圧力エネルギー損失が発生し、圧力エネルギーが集中的に損失していくために、液に発生する最大剪断速度は大きく、また、そのために、液に発生する最大剪断応力も大きくなる、という特有の作用を有している。この結果、図1に示した均質バルブ10では高い均質効果を得ることができるのである。
なお、圧力エネルギー損失の集中度合いを高めるため、刃と溝の組み合わせを複数組設ける場合には(図4、図5参照。)、それぞれの組の間に十分な距離を設けることが好ましい。
【0031】
均質処理に際して、あらかじめ原乳はプレート式熱交換器で約80℃に加温した。また、合成クリームは約70℃で予備乳化を行った。
均質処理された原乳および合成クリームを均質機出口でサンプリングし、サンプリング後は速やかに氷水により冷却した後、脂肪球のメジアン径を測定した。なお、均質処理前の原乳では、脂肪球のメジアン径は約3.94μmであり、均質処理前の合成クリームでは、脂肪球のメジアン径は約3.95μmであった。
【0032】
【表1】


【0033】
2)テスト条件
均質前の原乳の温度 80[℃]
均質前の合成クリームの温度 70[℃]
均質圧 5,7,9,11,13,15[MPa]
流量 100[l/hr]
使用機器 三丸機械工業株式会社製均質機(HC3−1)
【0034】
合成クリームの配合は以下のとおりである。
クリーム配合比率(重量%)
パーム油 35%
脱脂粉乳 5.5%
カゼインナトリウム 0.5%
分散剤 0.2%
メタリン酸ナトリウム 0.1%
レシチン 0.2%
水 58.5%
【0035】
3)測定
脂肪球のメジアン径の測定には、株式会社堀場製作所(HORIBA)製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910)を使用した。
【0036】
4)結果
原乳を均質処理したときのテスト結果を図12のグラフに示す。各実施例に係る均質バルブで処理した原乳の脂肪球のメジアン径(体積基準)は、どの組合わせにおいても、比較例に係る従来型均質バルブで処理した原乳の脂肪球のメジアン径より小さくなっており、高い均質効果が得られた。
また、合成クリームを均質処理したときのテスト結果を図13のグラフに示す。各実施例に係る均質バルブで処理した合成クリームの脂肪球のメジアン径(体積基準)は、どの組合わせにおいても、比較例に係る従来型均質バルブで処理した合成クリームの脂肪球のメジアン径より小さくなっており、高い均質効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の均質バルブは、エマルジョンの均質処理に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の均質バルブの一形態例を示す図面であり、(a)は均質バルブの断面図、(b)は刃及び溝の部分拡大断面図である。
【図2】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃及び溝のリング径が図1の均質バルブより小さい場合を示す断面図である。
【図3】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃及び溝のリング径が図1の均質バルブより大きい場合を示す断面図である。
【図4】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃及び溝が2組設けられた例を示す断面図である。
【図5】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃及び溝が3組設けられた例を示す断面図である。
【図6】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃が平面に対向して設けられた例を示す断面図であり、(a)は均質バルブの断面図、(b)は刃と平面が対向した箇所の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の均質バルブの一形態例であって、バルブ本体がバルブシートの孔の中に設けられた例を示す断面図である。
【図8】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃がバルブ本体の側面に設けられ、溝がバルブシートの孔の内面に設けられた例を示す断面図である。
【図9】本発明の均質バルブの一形態例であって、刃がバルブシートの孔の内面に設けられ、溝がバルブ本体の側面に設けられた例を示す断面図である。
【図10】刃と溝の側面のなす角度θに対する圧力損失の計算結果を示すグラフである。
【図11】比較例で使用した従来型の均質バルブを示す断面図である。
【図12】実施例及び比較例の均質バルブを用いて均質処理した原乳の脂肪球のメジアン径の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例及び比較例の均質バルブを用いて均質した合成クリームの脂肪球のメジアン径の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10,10A,10B,10C,10D,10E…均質バルブ、11…バルブシート、12…バルブ本体、13…吐出孔、14…流路、15…バルブシート側の対向面、16…バルブ本体側の対向面、17…刃、18…溝、20,20A,20B…均質バルブ、21…バルブシート、22…バルブ本体、23…孔、24…流路、25…バルブシートの内面、26…バルブ本体の側面、27…刃、28…溝。
【出願人】 【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
【識別番号】501496360
【氏名又は名称】三丸機械工業株式会社
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−36600(P2008−36600A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−218165(P2006−218165)