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【発明の名称】 水中油型乳化組成物の製造方法
【発明者】 【氏名】山脇 有希子

【氏名】南部 博美

【氏名】本間 成二

【要約】 【課題】高分子乳化剤を用い、油滴の平均粒径が微細であり、なおかつ、室温はもとより高温においても安定な水中油型乳化組成物を製造する方法の提供。

【構成】中和可能な官能基を有する親水性構成単位(a)、非イオン性親水性構成単位(b)、及び疎水性構成単位(c)を含む高分子乳化剤(A)、油性成分(B)、及び水(C)を混合した系を、可溶化状態にした後、40℃以下に冷却し、さらにその後中和する工程を含む、水中油型乳化組成物の製造方法、並びにこの製造方法により得られる水中油型乳化組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中和可能な官能基を有する親水性構成単位(a)、非イオン性親水性構成単位(b)、及び疎水性構成単位(c)を含む高分子乳化剤(A)、油性成分(B)、及び水(C)を混合した系を、可溶化状態にした後、40℃以下に冷却し、さらにその後中和する工程を含む、水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
高分子乳化剤(A)の中和前の曇点が、50〜90℃であり、中和後の曇点が、90℃を超える温度である、請求項1記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項3】
構成単位(a)が、一般式(1)で表される構成単位であり、構成単位(b)が、一般式(2)で表される構成単位であり、構成単位(c)が、一般式(3)で表される構成単位である、請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10及びR11は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R8は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R12は炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、X1及びX2は同一又は異なって、酸素原子又はNHを示し、Mは水素原子又は陽イオン基を示し、nは1〜14の数を示す。)
【請求項4】
高分子乳化剤(A)と油性成分(B)の配合割合が、(A)/(B)(重量比)=1/0.2〜1/10である、請求項1〜3いずれかに記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の製造方法により得られる水中油型乳化組成物。
【請求項6】
油滴の平均粒径が1〜200nmである、請求項5記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子乳化剤、油性成分、及び水を含む安定な水中油型乳化組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非イオン乳化剤/油/水系の乳化組成物は、曇点以下の限られた温度範囲において、水相中へ油が見かけ上溶解度以上に溶解する状態である可溶化状態を形成することが知られている。このため、系を可溶化状態で一定時間保持してから冷却を行うと、油性成分の含有量が多く、油滴の平均粒径が微細な乳化組成物が得られることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、得られた乳化組成物を高温で保存すると、油滴の平均粒径が増大したり、非イオン乳化剤が析出する等の現象が起こり、安定な乳化組成物を得ることができないという問題があった。
【0004】
一方、近年、高分子乳化剤が提案されており、非イオン性基と中和可能な官能基を持つものも提案されている(特許文献1)。しかしながら、中和可能な官能基については予め部分的に中和されたものが開示されているのみであり、かかる高分子乳化剤を油性成分の乳化に用いた場合、油滴の平均粒径が微細な乳化組成物を得ることは困難であった。
【非特許文献1】中島英夫、表面、36、P39−50、1998
【特許文献1】特開平5−103969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高分子乳化剤を用い、油滴の平均粒径が微細であり、なおかつ、室温はもとより高温においても安定な水中油型乳化組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、中和可能な官能基を有する高分子乳化剤を中和することにより、曇点を上昇させられることを見出し、この性質を利用し、まず乳化効率の良い可溶化状態を形成する温度で乳化を行った後に、乳化組成物を冷却し、さらにその後に中和することにより、高分子乳化剤の曇点を上昇させ、油滴の平均粒径が微細であり、なおかつ、室温はもとより高温においても安定な水中油型乳化組成物が得られることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、中和可能な官能基を有する親水性構成単位(a)、非イオン性親水性構成単位(b)、及び疎水性構成単位(c)を含む高分子乳化剤(A)、油性成分(B)、及び水(C)を混合した系を、可溶化状態にした後、40℃以下に冷却し、さらにその後中和する工程を含む、水中油型乳化組成物の製造方法、並びにこの製造方法により得られる水中油型乳化組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油滴の平均粒径が微細であり、なおかつ、室温はもとより高温においても安定な水中油型乳化組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[高分子乳化剤(A)]
本発明の高分子乳化剤(A)は中和可能な官能基を有する親水性構成単位(a)、非イオン性親水性構成単位(b)、及び疎水性構成単位(c)を含むものである。
【0010】
ここで親水性構成単位における親水性とは、その構成単位を形成するモノマーの20℃の蒸留水への溶解度(g/100g水)が8以上のものを言い、疎水性構成単位における疎水性とは、その構成単位を形成するモノマーの20℃の蒸留水への溶解度(g/100g水)が8未満のものを言う。
【0011】
中和可能な官能基としては、酸性基又は塩基性基が挙げられ、酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等、塩基性基としては、第3級アミノ基等が挙げられる。これらの中では酸性基が好ましく、カルボキシル基が更に好ましい。
【0012】
中和可能な官能基を有する親水性構成単位(a)としては、中和可能な官能基を有する親水性モノマー(以下親水性モノマー(a)という)由来の構成単位や、重合後に中和可能な官能基を付加させた親水性構成単位等が挙げられる。
【0013】
親水性モノマー(a)は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基、又は第3級アミノ基等の塩基性基などの中和可能な官能基を有する親水性モノマーである。
【0014】
酸性基を有する親水性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート等が挙げられる。
【0015】
塩基性基を有する親水性モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアリールアミン、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0016】
これらの中では酸性基を有する親水性モノマーが好ましく、一般式(4)で表される親水性モノマーがより好ましい。
【0017】
【化2】


【0018】
(式中、R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、Mは水素原子又は陽イオン基を示す。)
一般式(4)において、R1及びR2は水素原子が好ましく、Mは水素原子が好ましい。
【0019】
また、重合後に中和可能な官能基を付加させる方法としては、例えば高分子化合物中に存在する中和可能でない官能基を中和可能な官能基に変換する方法が挙げられる。この場合、中和可能でない官能基とは、例えばエステル基やニトリル基が挙げられ、加水分解することによるカルボキシル基が生成する。
【0020】
あるいは、高分子化合物に存在する官能基と反応可能な官能基及び中和可能な官能基を有する化合物を、高分子化合物に結合する方法が挙げられる。結合に用いられる官能基としては、水酸基とカルボキシル基の組合せ、アミノ基とカルボキシル基の組合せ等が挙げられ、例えば水酸基を有する高分子化合物にジカルボン酸を結合することにより、カルボキシル基を付加することができる。
【0021】
非イオン性親水性構成単位(b)としては、非イオン性親水性モノマー(以下非イオン性親水性モノマー(b)という)由来の構成単位や、重合後に非イオン性親水基を付加させた親水性構成単位等が挙げられる。
【0022】
非イオン性親水性モノマー(b)としては、例えばメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
これらの中では、一般式(5)で表される非イオン性親水性モノマーが好ましく、ポリエチレンオキシド鎖の重合度が1〜14であるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0024】
【化3】


【0025】
(式中、R4、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R8は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X1は酸素原子又はNHを示し、nは1〜14の数を示す。)
一般式(5)において、R4及びR5は水素原子が好ましい。R7はエチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。X1は酸素原子が好ましい。
【0026】
疎水性構成単位(c)としては、疎水性モノマー(以下疎水性モノマー(c)という)由来の構成単位や、重合後に疎水性基を付加させた疎水性構成単位等が挙げられる。
【0027】
疎水性モノマー(c)としては、一般式(6)で表される疎水性モノマーが好ましい。
【0028】
【化4】


【0029】
(式中、R9、R10及びR11は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R12は炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、X2は酸素原子又はNHを示す。)
一般式(6)において、R9及びR10は水素原子が好ましい。R12は、乳化安定性の点から、炭素数8〜22、特に炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。具体的にはオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等が挙げられる。X2は酸素原子が好ましい。
【0030】
疎水性モノマー(c)の具体例としては、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でもラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
親水性構成単位(a)、非イオン性親水性構成単位(b)、疎水性構成単位(c)の配列は、ランダム、ブロック、またはグラフトのいずれでも良い。また、これら構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の高分子乳化剤(A)を構成する全構成単位中の親水性構成単位(a)の割合は、高分子乳化剤(A)の中和後の曇点が90℃を超えるようにする観点から、0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましい。また、全構成単位中の非イオン性親水性構成単位(b)の割合は、高分子乳化剤(A)の中和前の曇点を50〜90℃にする観点から、30重量%以上が好ましく、40〜80重量%、特に50重量%を超えることがより好ましい。また、全構成単位中の疎水性構成単位(c)の割合は、十分な乳化性能を得る観点から、10重量%以上が好ましく、20〜60重量%がより好ましい。
【0033】
本発明の高分子乳化剤(A)として特に好ましいものは、一般式(1)で表される構成単位、一般式(2)で表される構成単位、及び一般式(3)で表される構成単位を有するものである。
【0034】
【化5】


【0035】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、X1、X2、M及びnは前記の意味を示す。)
高分子乳化剤(A)は公知の合成方法により得ることができる。例えば、親水性モノマー(a)、非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(c)を含むモノマー成分を溶液重合法で重合させることで得られる。
【0036】
上記の溶液重合に用いられる溶媒としては、例えば芳香族系炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の有機溶媒を使用することができる。溶媒量(重量基準)は、モノマー全量に対し0.5〜10倍量が好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド類等が挙げられる。重合開始剤量は、モノマー成分全量に対し0.01〜5モル%が好ましく、0.01〜3モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が特に好ましい。
重合反応は、窒素気流下、60〜180℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5〜20時間が好ましい。
【0038】
高分子乳化剤(A)/油/水系の乳化組成物は、高分子乳化剤(A)(未中和品)の曇点以下の限られた温度範囲において可溶化状態を形成するので、油性成分の含有量が多く、油滴の平均粒径が微細な乳化組成物を得る観点から、高分子乳化剤(A)の中和前の曇点が、常温(25℃)より高く、水の沸点よりも低いものが好ましく、50〜90℃のものがより好ましく、50〜70℃のものが更に好ましい。また、高温安定性の良好な乳化組成物を得る観点から、高分子乳化剤(A)の中和後の曇点が可能な限り高温であるものが好ましく、90℃を超えるものがより好ましく、91℃以上のものが更に好ましい。
【0039】
ここで曇点とは、高分子乳化剤(A)の水溶液の温度を上昇させていったときに、溶液から高分子が不溶化しはじめる温度であり、曇点測定条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0040】
高分子乳化剤(A)の重量平均分子量は、皮膚に対する刺激性、及び乳化性能の観点から、5,000〜100万が好ましく、1万〜20万がより好ましい。なお、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値であり、測定条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0041】
[油性成分(B)]
本発明で用いる油性成分(B)としては、揮発性、不揮発性のいずれでも良く、常温での形態として固体状、ペースト状、液体状のいずれでもよい。例えば固体状又は液体状パラフィン、ワセリン、セレシン、オゾケライト、モンタンロウ、スクアラン、スクワレン等の炭化水素類;ユーカリ油、ハッカ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、牛脂、豚脂、馬油、卵黄油、オリーブ油、カルナウバロウ、ラノリン、ホホバ油等の油脂類;グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、フタル酸ジエチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ−2−へプチルウンデシル、ミリスチン酸セチル、乳酸セチル、1−イソステアロイル−3−ミリストイルグリセロール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、ジパラメトキシ桂皮酸モノ2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油;セチル1,3−ジメチルブチルエーテル等のエーテル油;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール;ローズマリー、ルイボス、ローヤルゼリー、ハマメリス等の天然精油;リグナン、ビタミンE、油溶性ビタミンC、ビタミンA誘導体、セラミド類、セラミド類似構造物質(例えば、N−(3−ヘキサデシロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド;特開昭62−228048号公報参照)、油溶性紫外線吸収剤、香料等の機能性油性物質などのほか、シリコーン類、フッ素系油剤などが挙げられる。
【0042】
[水中油型乳化組成物及びその製造方法]
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、高分子乳化剤(A)、油性成分(B)及び水(C)を混合した系を可溶化状態にした後、40℃以下に冷却し、さらにその後中和する工程を含む方法である。
【0043】
ここで、可溶化状態とは、乳化剤水溶液中に油性成分がその水への溶解度以上に溶解した状態である。なお、系が可溶化状態であることの確認条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0044】
高分子乳化剤(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、任意に配合できるが、本発明の乳化組成物中の高分子乳化剤(A)の含有量は、優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0045】
油性成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、任意に配合できるが、本発明の乳化組成物中の油性成分(B)の含有量は、優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0046】
水(C)は任意に配合できるが、本発明の乳化組成物中の水(C)の含有量は、優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜99重量%である。
【0047】
また、高分子乳化剤(A)と油性成分(B)の重量比((A)/(B))は、優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは1/0.2〜1/10、より好ましくは1/0.2〜1/5、特に好ましくは1/0.5〜1/5である。
【0048】
本発明の乳化組成物は、更に水溶性有機溶媒を含有することができる。かかる水溶性有機溶媒としては、例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量200〜1540)等のグリコール類;ポリオキシエチレンメチルグルコシド、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコール;トリス(2−(2−エトキシエトキシ)エチル)ホスフェート等が挙げられ、1種以上を用いることができる。本発明の乳化組成物中の水溶性有機溶媒の含有量は、優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0049】
本発明の水中油型乳化組成物は、例えば、高分子乳化剤(A)、油性成分(B)及び水(C)を混合し、攪拌下、加温して可溶化状態にし、可溶化状態で一定時間、好ましくは10分以上保持した後、40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは0〜30℃に冷却後、さらに中和剤を添加して中和することにより調製される。
【0050】
ここで用いられる中和剤としては、高分子乳化剤(A)が中和可能な官能基として酸性基を有する場合には、無機又は有機塩基を用いることができる。無機又は有機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが挙げられる。高分子乳化剤(A)が中和可能な官能基として塩基性基を有する場合には、中和剤としては無機又は有機酸を用いることができる。無機酸として例えば、ホウ酸、炭酸、クエン酸、ヨウ素酸、亜硝酸、硝酸、リン酸、硫酸、塩酸等が、有機酸として例えば、ギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、フタル酸等が挙げられる。
【0051】
中和剤はそのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。油滴の平均粒径が微細な乳化組成物を得るためには、可溶化状態で高分子乳化剤(A)、油性成分(B)、及び水(C)の混合を行う必要があり、中和は必ず混合物の冷却後に行う必要がある。
【0052】
中和剤の添加量は、中和後の高分子乳化剤(A)の曇点が90℃を超える温度になるために必要な量以上であればいくらでもよいが、全中和可能な官能基の1モル%以上を中和するのが好ましい。油性成分(B)の含有量が多く、油滴の平均粒径が微細な乳化組成物を得るためには、中和以前の工程において高分子乳化剤(A)は一定の濃度以上、特に5重量%以上で用いるのが好ましい。中和後の乳化組成物は必要に応じて水で希釈できる。また、すべての工程において水溶性有機溶媒を添加することもできる。
【0053】
本発明において、各成分を加えて混合するには、通常の方法により攪拌・混合すれば良く、例えばホモジナイザー、超音波乳化機、高圧乳化機等を用いて行うこともできる。
【0054】
本発明においては、高分子乳化剤(A)と油性成分(B)との割合や、水溶性有機溶媒の種類と使用量を選択することにより、油滴の平均粒径をコントロールすることができる。本発明の水中油型乳化組成物中の油滴の平均粒径は、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nmである。
【0055】
なお、本発明において油滴の平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定した散乱光強度から求めた算術平均径(体積平均)を用いる。これらの粒径測定は、25℃で行うものである。
【実施例】
【0056】
以下の合成例及び実施例における各物性の測定条件をまとめて以下に示す。
【0057】
<重量平均分子量測定条件>
高分子乳化剤の重量平均分子量は、高分子乳化剤をクロロホルムに溶解した0.5重量%溶液をGPCにより下記条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0058】
・GPC測定条件
カラム:昭和電工(株)製 KF−804L 2本、溶離液:1mmol/LファーミンDM20(花王(株)製)/CHCl3、流速:1.0mL/min、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折率計
<NMR測定条件>
高分子乳化剤の全構成単位中における各構成単位の割合は、高分子乳化剤を重水素置換ジメチルスルホキシドに溶解した1重量%溶液をプロトン核磁気共鳴スペクトルにより測定して求めた。
【0059】
<曇点測定条件>
曇点の確認は成書(新・界面活性剤入門、藤本武彦著、三洋化成工業、1992)に倣い、次の方法に従って行った。すなわち、高分子乳化剤の5重量%水溶液を一定の温度で30分間保持し、溶液から高分子乳化剤が不溶化するかを観察する。温度を上昇させていったときに、高分子乳化剤が不溶化しはじめた温度を曇点とした。
【0060】
<可溶化状態確認条件>
系が可溶化状態であることは、以下の方法に従って確認した。すなわち、高分子乳化剤、油性成分、水の混合溶液を一定の温度で10分間保持し、溶液の濁度が変化するかを観察する。系が可溶化状態ではないときには溶液の濁度が上昇するため、溶液の濁度が変化しなかったときに系は可溶化状態であるとした。
【0061】
合成例1(高分子乳化剤(A−1)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、メトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート82.5g、ラウリルメタクリレート60g、メタクリル酸7.5g、及び重合溶媒メチルエチルケトン100gと、開始剤V−65(和光純薬(株)製)1.5gを仕込み、65℃にて6時間重合反応を行った。その後乾燥して、高分子乳化剤(A−1)を得た。得られた高分子乳化剤(A−1)の重量平均分子量は8.4万であった。得られた高分子乳化剤(A−1)の全構成単位中におけるメトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート由来の構成単位の割合は58重量%、ラウリルメタクリレート由来の構成単位の割合は36重量%、メタクリル酸由来の構成単位の割合は6重量%であった。高分子乳化剤(A−1)(未中和品)の曇点は60℃であった。高分子乳化剤(A−1)中におけるメタクリル酸由来の構成単位の20%以上を水酸化カリウムにより中和した後には、高分子乳化剤(A−1)の曇点は100℃以上であった。
【0062】
合成例2(高分子乳化剤(A−2)の合成)
ラウリルメタクリレート60gの代わりにステアリルメタクリレート60gを用いたこと以外は合成例1と同一条件で合成し、重量平均分子量6.9万の高分子乳化剤(A−2)を得た。得られた高分子乳化剤(A−2)の全構成単位中におけるメトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート由来の構成単位の割合は55重量%、ステアリルメタクリレート由来の構成単位の割合は40重量%、メタクリル酸由来の構成単位の割合は5重量%であった。高分子乳化剤(A−2)(未中和品)の曇点は60℃であった。高分子乳化剤(A−2)中におけるメタクリル酸由来の構成単位の20%以上を水酸化カリウムにより中和した後には、高分子乳化剤(A−2)の曇点は100℃以上であった。
【0063】
合成例3(高分子乳化剤(A−3)の合成)
メタクリル酸7.5gの代わりにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート5gを用いたこと以外は合成例2と同一条件で合成し、重量平均分子量7.3万の高分子乳化剤(A−3)を得た。得られた高分子乳化剤(A−3)の全構成単位中におけるメトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート由来の構成単位の割合は54重量%、ステアリルメタクリレート由来の構成単位の割合は41重量%、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の構成単位の割合は5重量%であった。高分子乳化剤(A−3)(未中和品)の曇点は60℃であった。高分子乳化剤(A−3)中におけるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の構成単位の20%以上をコハク酸により中和した後には、高分子乳化剤(A−3)の曇点は100℃以上であった。
【0064】
実施例1
高分子乳化剤(A−1)(未中和品)1g、デカン1g、及び水9gを混合し、攪拌下、60℃で10分間保持した後、25℃に冷却した。その後、攪拌下、25℃で10重量%水酸化カリウム水溶液0.08gを添加して中和した後(中和度20.4%)、水86gを添加して水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0065】
実施例2、3
実施例1と同様にして、但し、デカン1gの代わりにそれぞれ、流動イソパラフィン(パールリームEX、日本油脂(株)製)0.5g、又はリンゴ酸ジイソステアリル(コスモール222、日清製油(株)製)0.5gを用いて水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0066】
実施例4
実施例1と同様にして、但し、デカンの代わりにジカプリン酸ネオペンチルグリコール(エステモールN−01、日清製油(株)製)を用いて水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0067】
実施例5、6、8
実施例2と同様にして、但し、高分子乳化剤(A−1)の代わりに高分子乳化剤(A−2)(未中和品)、流動イソパラフィンの代わりにそれぞれ、セチル1,3−ジメチルブチルエーテル(ASE−166、花王(株)製)、アジピン酸ジ−2−へプチルウンデシル(サラコス618、日清製油(株)製)、又はオリーブ油(クロピュアOL、クローダジャパン(株)製)を用い、10重量%水酸化カリウム水溶液の添加量を0.07gとして水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。また、水酸化カリウムによる中和度は21.5%であった。
【0068】
実施例7
実施例5と同様にして、但し、セチル1,3−ジメチルブチルエーテル0.5gの代わりに、スクアラン(東京化成(株)製)0.75gを用いて水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0069】
実施例9
実施例4と同様にして、但し、高分子乳化剤(A−1)の代わりに高分子乳化剤(A−3)(未中和品)、10重量%水酸化カリウム水溶液0.08gの代わりに10重量%コハク酸水溶液0.04gを用いて水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。また、コハク酸による中和度は21.5%であった。
【0070】
比較例1
実施例1と同様にして、但し、水酸化カリウムを添加せずに水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0071】
比較例2、3
それぞれ実施例2、8と同様にして、但し、それぞれ10重量%水酸化カリウム水溶液0.08g、又は0.07gを予め混合して、攪拌下、70℃で10分間保持した後、25℃に冷却した。70℃で系は可溶化状態ではなかった。
【0072】
比較例4
実施例4と同様にして、但し、高分子乳化剤(A−1)の代わりにポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(エマレックスOD−20、日本エマルジョン(株)製)を用いて、水酸化カリウムを添加せずに水中油型乳化組成物を調製した。60℃で系は可溶化状態であった。
【0073】
実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた水中油型乳化組成物について、各成分の配合組成、及び得られた乳化組成物中の乳化油滴の平均粒径と、50℃で3日間保存した後の乳化油滴の平均粒径を表1に併せて示した。尚、いずれの乳化組成物も、水中油型であることを電気伝導度により確認した。
【0074】
【表1】


【0075】
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた水中油型乳化組成物は、油滴の平均粒径が小さく、高温における保存安定性も良好であった。これに対し、高分子乳化剤の中和を行わなかったものである比較例1及び4で得られた水中油型乳化組成物は高温における保存安定性が悪かった。また、予め中和を行った高分子乳化剤を用いたものである比較例2及び3で得られた水中油型乳化組成物は油滴の平均粒径が大きく、高温における保存安定性も悪かった。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−18368(P2008−18368A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−193644(P2006−193644)