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高温高圧マイクロミキサー - 特開2008−12453 | j-tokkyo
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【発明の名称】 高温高圧マイクロミキサー
【発明者】 【氏名】若嶋 勇一郎

【氏名】鈴木 明

【氏名】川▲崎▼ 慎一朗

【氏名】伯田 幸也

【要約】 【課題】超臨界水反応用マイクロミキサーを提供する。

【構成】第一反応溶液と第二反応溶液を混合して所定の反応系及び温度場を形成するためのマイクロミキサーであって、第一反応溶液と第二反応溶液を混合するマイクロ混合部、第一反応溶液を該混合部に導入するための第一反応溶液導入管、該混合部において第一反応溶液に対して側面から第二反応溶液を導入して衝突混合させる複数の第二反応溶液導入管、及び混合溶液を流出させる流出管を第一反応溶液導入管と同一軸に設置したことを特徴とするマイクロミキサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一反応溶液と第二反応溶液を混合して所定の反応系及び温度場を形成するためのマイクロミキサーであって、第一反応溶液と第二反応溶液を混合するマイクロ混合部、第一反応溶液を該混合部に導入するための第一反応溶液導入管、該混合部において第一反応溶液に対して側方から第二反応溶液を導入して衝突混合させる複数の第二反応溶液導入管、及び混合溶液を流出させる流出管を第一反応溶液導入管と同一軸に設置したことを特徴とするマイクロミキサー。
【請求項2】
上記第二反応溶液を混合部に導入する複数の導入管が、2本以上の複数本設置されている、請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項3】
上記第二反応溶液の複数の導入管の中心軸が、第一反応溶液導入管の中心軸と交差せず、かつ、第一反応溶液導入管及び混合溶液の流出管を結ぶ1つの中心軸に対して回転対称的に設置されている、請求項2に記載のマイクロミキサー。
【請求項4】
流路寸法がマイクロ混合部から混合溶液の流出管に向かって滑らかに絞られており、縮流となっている、請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項5】
マイクロ混合部に流入してくる第二反応溶液の運動エネルギーを利用して、マイクロ混合部に流入してきた第一反応溶液にせん断力及び回転運動を与える、請求項3に記載のマイクロミキサー。
【請求項6】
上記第一反応溶液が1種類又は複数種類の反応基質を含む常温の反応溶液であり、上記第二反応溶液が高温高圧状態の水もしくは1種類又は複数種類の反応基質を含む水溶液である、請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項7】
上記高温高圧状態の水もしくは水溶液が、水の熱力学的臨界点を超えた超臨界流体となっている、請求項6に記載のマイクロミキサー。
【請求項8】
上記第一反応溶液を導入する導入管の内径が0.5〜3mm、上記第二反応溶液を導入する複数の導入管の内径が0.5〜3mmである、請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項9】
上記マイクロミキサーが、超臨界水を反応媒体とする反応系の連続反応システムにおける反応溶液の混合及び加熱手段である、請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項10】
上記第一反応溶液と第二反応溶液の流量比が1/10〜1/2である、請求項6に記載のマイクロミキサー。
【請求項11】
最高圧力300MPa、最高温度600℃までの高温高圧反応溶液を使用することが可能な構造強度を有する、請求項1に記載のマイクロミキサー。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、第一反応溶液と第二反応溶液を混合して所定の反応系及び温度場を形成するためのマイクロミキサーに関するものであり、更に詳しくは、例えば、常温の反応基質溶液と超臨界水を混合して、所定の温度に設定された反応系を瞬時に調整することを可能とする超臨界水マイクロミキサーに関するものである。本発明は、特に、超臨界水を反応媒体とする反応系の反応システムにおける反応溶液と反応媒体の急速混合及び加熱手段として有用な新規マイクロミキサーを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧場の流通式反応装置の反応器に、反応溶液、及び反応媒体である高温高圧水を導入して反応を行う反応システムは公知である(特許文献1)。また、超臨界反応システムにおいて、超臨界水を超臨界水用ノズルにより反応器に導入することは公知である(特許文献2)。
【0003】
一般に、連続流通型の反応装置においては、流体配管中での反応溶液の混合操作が、熱の移動、物質の移動、及び望ましい反応場形成のための重要な操作であることから、種々の用途におけるマイクロミキサーが開発されて来ている。一方で、これらの既開発のマイクロミキサーは、常温常圧近傍での使用条件下のものに限られており、高温高圧反応場、特に超臨界水を反応媒体とする流通反応装置に対して、混合性能の改善を目的として設計されたマイクロミキサーは提示されていない。そのため、従来は、市販配管継手をそのままミキサーとして用いることが多かった。このような継手は、配管接続の用途のみを目的として設計、製作されているため、ミキサーとしての性能は優れたものではなかった。
【0004】
近年、グリーン・ケミストリーと呼ばれる環境調和型の化学生産技術開発が著しく進展しているが、超臨界水反応は、その中でも特に有力な化学合成法の一つであると考えられている。ここで、超臨界水反応において、顕著な混合性能を発揮するマイクロミキサーが新規に提案されれば、超臨界水反応技術の更なる発展に寄与すると考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−52715号公報
【特許文献2】特開2002−52334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、超臨界水を反応媒体とする反応系の反応システムにおいて好適に使用することができるマイクロミキサーを開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、反応溶液と反応媒体を混合するマイクロ混合部、反応溶液を該混合部に導入する反応溶液導入管、及び反応媒体を該混合部に導入する複数の導入管を有するマイクロミキサーの開発に成功し、本発明を完成するに至った。本発明は、高温高圧条件下、特に超臨界水を反応媒体とする条件下で好適に使用することが可能な、高い混合性能を有する新しいタイプのマイクロミキサーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段より構成される。
(1)第一反応溶液と第二反応溶液を混合して所定の反応系及び温度場を形成するためのマイクロミキサーであって、第一反応溶液と第二反応溶液を混合するマイクロ混合部、第一反応溶液を該混合部に導入するための第一反応溶液導入管、該混合部において第一反応溶液に対して側方から第二反応溶液を導入して衝突混合させる複数の第二反応溶液導入管、及び混合溶液を流出させる流出管を第一反応溶液導入管と同一軸に設置したことを特徴とするマイクロミキサー。
(2)上記第二反応溶液を混合部に導入する複数の導入管が、2本以上の複数本設置されている、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
(3)上記第二反応溶液の複数の導入管の中心軸が、第一反応溶液導入管の中心軸と交差せず、かつ、第一反応溶液導入管及び混合溶液の流出管を結ぶ1つの中心軸に対して回転対称的に設置されている、前記(2)に記載のマイクロミキサー。
(4)流路寸法がマイクロ混合部から混合溶液の流出管に向かって滑らかに絞られており、縮流となっている、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
(5)マイクロ混合部に流入してくる第二反応溶液の運動エネルギーを利用して、マイクロ混合部に流入してきた第一反応溶液にせん断力及び回転運動を与える、前記(3)に記載のマイクロミキサー。
(6)上記第一反応溶液が1種類又は複数種類の反応基質を含む常温の反応溶液であり、上記第二反応溶液が高温高圧状態の水もしくは1種類又は複数種類の反応基質を含む水溶液である、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
(7)上記高温高圧状態の水もしくは水溶液が、水の熱力学的臨界点を超えた超臨界流体となっている、前記(6)に記載のマイクロミキサー。
(8)上記第一反応溶液を導入する導入管の内径が0.5〜3mm、上記第二反応溶液を導入する複数の導入管の内径が0.5〜3mmである、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
(9)上記マイクロミキサーが、超臨界水を反応媒体とする反応系の連続反応システムにおける反応溶液の混合及び加熱手段である、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
(10)上記第一反応溶液と第二反応溶液の流量比が1/10〜1/2である、前記(6)に記載のマイクロミキサー。
(11)最高圧力300MPa、最高温度600℃までの高温高圧反応溶液を使用することが可能な構造強度を有する、前記(1)に記載のマイクロミキサー。
【0008】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、第一反応溶液と第二反応溶液を混合して所定の反応系及び温度場を形成するためのマイクロミキサーであって、第一反応溶液と第二反応溶液を混合するマイクロ混合部、第一反応溶液を該混合部に導入するための第一反応溶液導入管、該混合部において第一反応溶液に対して側面から第二反応溶液を導入して衝突混合させる複数の第二反応溶液導入管、及び混合溶液を流出させる流出管を第一反応溶液導入管と同一軸に設置したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、上記第一反応溶液が、反応基質を含む溶液であり、上記第二反応溶液が、高温高圧状態の水もしくは第一反応溶液に含まれる反応基質とは異なる基質を含む水溶液であること、その高温高圧状態が水の熱力学的臨界点を超えた超臨界状態となっていること、を好ましい実施様態としている。
【0010】
本発明におけるマイクロミキサーの形態としては、上記第二反応溶液を混合部に導入する複数の導入管が、2本以上の複数本設置されており、それらの上記第二反応溶液の複数の導入管の中心軸が、第一反応溶液導入管の中心軸と交差せず、かつ、第一反応溶液導入管及び混合溶液の流出管を結ぶ1つの中心軸に対して回転対称的に設置されていることが望ましい。
【0011】
これにより、マイクロ混合部に流入してくる第二反応溶液の運動エネルギーを利用して、マイクロ混合部に流入してきた第一反応溶液にせん断力及び回転運動を与えることにより、反応溶液同士の接触混合界面を急速に拡大せしめ、その結果、高い混合性能を発揮する。これらの導入管と流出管の代表的な配置例を、図1(a)、(b)及び(c)に示す。第一反応溶液導入管と第二反応溶液導入管の中心軸線が成す交差角は、最大90〜30度程度が望ましく、好適には45〜65度が最も好適な条件として例示される。
【0012】
更に、上記マイクロ混合部の流路寸法が、第一反応溶液の流入口から混合溶液の流出管に向かって滑らかにテーパー状に絞られており、縮流となっていることを特徴とする。このテーパーの角度は、4〜20度程度が好ましく、高い混合性能を発揮するために、好適には5〜10度の範囲が例示されるが、本発明のマイクロリアクターの形状は、この角度に制限されるものではなく、実現したい流体の混合状況によって適宜設計されるべきものである。
【0013】
本発明では、上記第一反応溶液を導入する導入管の内径が0.5〜3mm、上記第二反応溶液を導入する複数の導入管の内径が0.5〜3mmであること、が好適な管内径として例示されるが、これらは、反応系の種類、混合を行わせたい反応溶液の流量、ミキサーの使用目的等に応じて、任意に設計することができる。
【0014】
本発明のマイクロミキサーは、好適には、例えば、超臨界水を反応媒体とする反応系の反応システムにおける反応溶液の混合及び温度操作手段として使用されるが、これに制限されるものではなく、種々の反応溶液と高温高圧流体を混合するためのマイクロミキサーとして、また、異なる種類の反応溶液との混合に、任意に使用することができる。
【0015】
例えば、最も基本的な流体混合の例として、常温の第一反応溶液に対して、第二反応溶液として高温の超臨界水を混合することで、第一反応溶液の加熱を行う例が挙げられるが、第二反応溶液が、あらかじめ系外において混合された複数の種類の反応基質を含む反応溶液であっても良いし、あるいは複数本配されている反応溶液導入管に、それぞれ別個に供給し、同時に2種類以上の反応溶液を混合する形態であっても良い。
【0016】
マイクロミキサーの構造材料としては、その使用条件及び通過反応溶液の性状を考慮して、好適には、ニッケル基合金、例えば、インコネル625、ハステロイC276、あるいはSUS316,304などのステンレス鋼が例示されるが、これらと同等なしは類似の材料であれば、同様に使用することができる。また、耐食性能の向上や反応溶液との化学的反応性を考慮して、チタン合金類、各種セラミック、各種めっき等を組みあわせて使用しても良い。
【0017】
上記混合部に導入される第二反応溶液は、1つの供給源、例えば、高圧液体ポンプから送液された場合に、2本以上の複数本配設されている第二反応溶液導入管に対して均等に分配を行う必要があるが、例えば、2本の導入管に対して反応溶液を均等に分割するためには、分配点からマイクロミキサーまでの管路において、発生する圧力損失をできるだけそろえることが望ましく、それには、配管の物理形状、長さ、曲がり等について、対称性を持たせることが好適である。
【0018】
本発明では、第一反応溶液と第二反応溶液の流量比は、任意の範囲で変更することができる。混合部に流入してくる第二反応溶液の運動エネルギーを混合に利用する見地から、第二反応溶液に対する第一反応溶液の流量割合は、1/10〜1/2であることが望ましい。例えば、常温の第一反応溶液に対して第二反応溶液として超臨界水を混合して超臨界状態とするためには、超臨界水の温度によるが、例えば、1:3〜1:2であることが好適である。また、本マイクロミキサーの混合特性は、主として流量比によって定まる。
【0019】
本発明のマイクロミキサーは、上述のように、超臨界水を反応媒体とする反応系の調製に好適に使用することができるが、これに制限されるものではなく、例えば、微粒子混合用デバイス、微粒子生成反応用混合デバイス、各種流体混合用デバイスとして、あらゆる流体混合に好適に使用することができる。本発明のマイクロミキサーは、特に、高温高圧水を反応媒体とする反応系において、極めて短時間のうちに流体の混合を完結させ、温度分布、物質濃度分布の均質化を実現する、流体の高速混合場、反応場を提供することを可能にするものとして、従来のミキサーにない高い性能と有用性を有するものである。
【0020】
本発明では、上記マイクロミキサーの形状は、反応系における温度場の均質的な上昇、流体微小塊の温度上昇過程とその昇温速度、流下方向の断面平均温度上昇過程とその昇温速度、層流、乱流状態の選択を基準として、適宜設計することができる。本発明において、好適に用いられるマイクロミキサーの流路の形状及び構造の例を、図2及び図3に示す。また、図4に、金属ブロックを用いて製作したマイクロミキサーの流路構造の例を示す。
【0021】
図4に示す流路構造は、前述の好適な構造材料として、インコネル625を用いた場合に、最高300MPa、温度600℃の使用条件でも使用可能な構造強度を有する。このマイクロミキサーを必要な高圧流体配管と溶接等の金属接合手法を用いて結合することにより、超臨界水反応装置における混合装置として用いることができる。図5に、連続流通型超臨界水反応装置において、常温の反応溶液と超臨界水を高速混合する流体ライン中での配置の概念図を示す。
【0022】
本発明では、マイクロミキサーの構造体を高温高圧条件に耐える構造強度を維持せしめるために、その使用する材料の使用条件下における強度を勘案して、適度な肉厚構造とするが、その場合、構造材内部での固体伝熱による反応溶液同士の温度変化を抑制するために、流路の冷却機構、断熱構造を備えても良い。例えば、反応溶液とは別個に冷却水循環流路の配設や、断熱材としてポーラスなセラミックチューブの挿入を行っても良く、これらは、必要に応じて、任意に設計し、配設することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)高温高圧水、特に、超臨界水を反応媒体とする種々の反応系での混合及び加熱操作を短時間に高効率で行うことが可能な新規マイクロミキサーを提供することができる。
(2)複数種類の反応溶液と反応媒体を混合して、極めて短時間の内に、所定の均一な温度場、物質濃度場を持つ反応系を形成するためのマイクロミキサーを提供することができる。
(3)前項(1)において、特に、高速に温度操作したい反応溶液に対して、側方より対称的に配置された複数の導入管から、高温の超臨界水又は冷却水を衝突させることにより、反応溶液に対して、せん断変形と回転運動を与え、その結果生み出される旋回流れにより、反応溶液と混合部壁面との接触を抑制すると同時に、反応溶液の温度を極めて短時間に目標温度まで変化させることが可能なマイクロミキサーを提供することができる。
(4)本発明のマイクロミキサーを使用することで、流体混合系の調製、昇温、反応、冷却等の一連の操作工程を短時間にかつ高精度で実施することを可能とする超臨界水高速マイクロ反応システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
(1)マイクロミキサーの構築
図4に、本実施例で構築したマイクロミキサーの例を示す。混合部は、直径が最大で2.8mm、長さが12.9mmで、流出管に向かって4度のテーパーを有する円錐状となっている。前述の第一反応溶液の導入流路として、内径1mmの導入管を用い、第二反応溶液導入流路として、2つの内径1mmの導入管を用いた。第一反応溶液導入管、流出管、混合部の中心軸は一致しており、その中心軸に対して、2つの第二反応溶液導入管は、60度の角度を成している。
【0026】
2本の反応溶液導入管は、この中心軸に対して回転対称的に配置され、更に、中心軸上の一点で交差せずに、0.7mmのオフセットを有する。これにより、第一反応溶液導入管から流入してきた反応溶液に、第二反応溶液が衝突した場合、その流体力学的効果により、反応溶液に対してせん断力と回転運動を与え、その結果、混合させたい溶液同士の接触面積を急速に拡大し、効率良く混合が行われる。
【0027】
(2)マイクロミキサーの配置
図5に、連続流通型の超臨界水反応装置に、上記マイクロミキサーを設置したときの概念図を示す。外部の供給装置から供給される超臨界水は2分割されて、上記マイクロミキサーの2つの第二反応溶液導入管に供給される。高圧ポンプによって供給される第一反応溶液供給管は、側面から衝突する超臨界水とマイクロミキサー内で急速に混合され、温度を上昇させる。
【実施例2】
【0028】
(1)マイクロミキサーの性能試験
各種の金属塩水溶液に対して超臨界水を混合することにより、極めて微細な固体微粒子を連続生産する方法が、公知の超臨界水熱合成法として知られている(「超臨界流体反応法の基礎と応用」シーエムシー出版、1998、pp.76−79)。ここで、本発明のマイクロミキサーの性能評価を行う目的で、硝酸アルミニウム水溶液を第一反応溶液として、また、第二反応溶液として超臨界水を用い、両者をマイクロミキサーによって急速混合し、反応生成物であるアルミニウム酸化物(ベーマイト)微結晶粒子の合成実験を実施した。圧力30MPa、温度400℃の条件で、2.0秒間反応を進展させた後、目的の微粒子を回収した。
【0029】
回収した微粒子のサンプルを、電子顕微鏡(TEM)観察及び動的光散乱法(DLS)測定の結果、得られた微粒子の性状は、従来ミキサーとして用いられてきたスウェージロックタイプの1/16”T字型ミキサー(内径0.8mm)を用いた場合よりも、粒子サイズ、分布ともに、50%程度小さくなることが確認された。これは、高温高圧水と第一反応溶液との混合が迅速化され、より均一な反応場での析出反応が起きたことを表している。
【0030】
表1に、より詳しく実験条件を示す。また、図6には、本性能試験のために構築した超臨界水熱連続反応試験装置のフロー図を示す。本装置は、超臨界水熱合成用の試験装置として既に確立された一般的な仕様構成となっている(「超臨界流体反応法の基礎と応用」シーエムシー出版、1998、pp.76−79参照)。以下、試験内容について説明する。まず、常温の金属塩水溶液及び純水を、高圧液体ポンプにより、所定の流量、圧力条件で加圧送液を行う。純水はヒータ中のコイル管を通過することによって、所定の温度の超臨界水とされ、本発明のマイクロミキサーに導入される。
【0031】
この超臨界水は、途中でT字継手によって等分され、図4に示すマイクロミキサーの2つの反応溶液導入管へ流入する。マイクロミキサーのマイクロ混合部では、常温の硝酸アルミニウム水溶液と超臨界水とが急速混合され、高速に温度変化が起きることにより、アルミニウム酸化物の析出反応が開始される。その後に、必要時間温度を一定に保つことで微結晶粒子を成長させ、更に冷却し、減圧弁を通過して大気圧状態に戻り、水中に分散したスラリー溶液として回収される。
【0032】
図7に、TEM観察の結果として、回収微粒子の拡大画像を、図8に、DLS測定による微粒子サイズ分布の測定結果を示す。DLSによって計測された平均微粒子径とTEM画像によって計測される微粒子径が、ほぼ同一であることから、生成した粒子は、回収溶液中に2次的な凝集なしに、良く分散していることが分かる。
【0033】
また、従来型のミキサーでは、平均粒子径が126.2nmで、2次凝集が発生しているが、本発明によるマイクロミキサーでは、同じ混合条件(流量、流量比)であるにも係らず、平均微粒子径が59.7nmで、2次凝集が見られず、よりシャープな粒系分布が得られるなどの顕著な改善結果が得られた。これらの特徴は、各種のナノサイズ誘電体やセラミック、ナノテク材料の有力な製造法として研究開発が進められている、前記の超臨界水熱合成法に大きく貢献するものである。
【0034】
【表1】


【0035】
(2)マイクロミキサー内の流動過程に関する数値シミュレーション
本発明によるマイクロミキサー内での流動現象について、より詳しく調べる目的で、市販の流体伝熱解析ソフトウェア(Fluent6.2,Fluent,Inc.)を用いて、常温の高圧純水と超臨界水との混合過程の流体シミュレーションを実施した。前述の図2及び図3のマイクロミキサー形状例のほかに、比較対象として、従来良く用いられているT字合流型ミキサーを計算対象として混合流体の温度分布について調べた。
【0036】
計算の設定については、次の通りとした。常温の高圧純水の流量を20g/min(温度27℃)、超臨界水の流量を40g/min(温度550℃)として、一定とした。この時、エネルギー保存側から計算される混合後の流体到達温度は、378℃であった。純水の物性は、IAPWS97の国際標準データを用いて、温度多項式として評価した。計算では、圧力場に対しては、SIMPLEスキーム及び2次精度風上差分を用い、乱流モデルには、RNG k−εモデルを用いて、連続・運動量・エネルギー方程式を解き、ミキサー内部の時間平均乱流場を解析した。
【0037】
図9(a)、(b)及び(c)に、混合点(常温純水と高圧水の接触が物理的に可能になった位置)からミキサーの中心軸方向に座標を取り、各位置におけるミキサー鉛直断面内の流体の最高温度、最低温度を調べたものを示す。もし混合が良好であれば、両者は、最終到達温度である378℃に向かって急速に接近するはずであり、混合が不良であれば、両者の大きな温度差が、ミキサーを通過しても残存することになる。図からは、従来のT字継ぎ手を利用したミキサーに比較して、本発明による2つのミキサー例(図2及び図3)の方が急速な温度変化、すなわち良好な混合結果が得られていることが分かる。特に、図2に示したミキサー構造が、3者のうちで最も好ましい結果が得られた。
【0038】
図10(a)、(b)及び(c)には、各流路断面内での温度分布について、水の臨界温度に近い370℃以上の温度領域のみを表示させた温度分布図を示す。各断面において表示がなされていない部分は、流体が370℃未満であることを示し、図10(b)及び(c)に対して、T字合流ミキサーの結果を示した(a)では、この370℃未満の領域が大きい。これは、(b)及び(c)に対して、混合性能が劣るため、混合点から十分な距離及び時間が経過しても、断面内に大きな流体温度のばらつきが残存していることを表している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上詳述したように、本発明は、超臨界水等の高温高圧水反応用途に供するためのマイクロミキサーに係るものであり、本発明により、例えば、超臨界水を反応媒体とする反応系の反応システムにおける反応溶液と反応溶媒との混合及び温度操作手段として有用なマイクロミキサーを提供することができる。本発明は、例えば、常温の反応溶液に超臨界水を衝突混合させて、極めて短時間のうちに昇温させて、所定の均一な高温高圧条件を調整して反応を行わせることができる、高温高圧条件に適合したマイクロミキサーを提供することを可能にするものであり、今後、更なる発展と産業応用が進むと考えられる超臨界水反応技術に貢献するものとして、高い技術的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】反応溶液導入管と流出管の配置関係の例を示す。
【図2】本発明のマイクロミキサーの一実施例を示す。
【図3】本発明のマイクロミキサーの他の実施例を示す。
【図4】本発明の一実施例のマイクロミキサーの構造製作図を示す。
【図5】本発明のマイクロミキサーを反応装置ラインに配置した概念図を示す。
【図6】マイクロミキサーを組み込んだ超臨界水熱合成試験装置のフロー図を示す。
【図7】TEM観察による水熱合成微粒子画像を示す。
【図8】DLS測定による微粒子サイズ分布測定結果を示す。
【図9】ミキサー断面内流体最高最低温度のシミュレーション結果を示す。
【図10】ミキサー断面内温度分布のシミュレーション結果を示す。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100102004
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 政彦


【公開番号】 特開2008−12453(P2008−12453A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187255(P2006−187255)