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【発明の名称】 分散質の分散方法、再分散方法及び解砕方法、並びにそれらの装置
【発明者】 【氏名】中塚 康雄

【氏名】清原 進

【氏名】丹 通雄

【氏名】池田 健一

【氏名】田中 克史

【氏名】秋山 隆一

【要約】 【課題】分散媒中に分散質を均一に分散させる方法を提供すること。

【構成】本発明の分散質の分散方法は、分散媒及び分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする。かかる分散方法においては、分散媒及び分散質を含む混合物2を収容する容器3と、混合物2に電場を印加するための、対向する一対の電極5a、5bを有する電場印加手段4とを備えることを特徴とする分散装置を使用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒及び分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、分散媒中に分散質を均一に分散する方法。
【請求項2】
分散媒中に沈降した分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、分散媒中に分散質を均一に再分散する方法。
【請求項3】
分散媒中に凝集した分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、凝集した分散質の解砕方法。
【請求項4】
分散媒が電場印加時の温度において液状若しくは流動性を有する溶媒又は有機樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
分散質が分散媒よりも高い誘電率を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分散質が無機粒子及び無機繊維のうちの少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電場として交流電圧を印加することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
平行電極間で電場を印加することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする、組成物。
【請求項10】
分散媒及び分散質を含む混合物を収容する容器と、
混合物に電場を印加するための、対向する一対の電極を有する電場印加手段と
を備えることを特徴とする、分散質の分散装置。
【請求項11】
分散媒中に凝集又は沈降した分散質を含む混合物を収容する容器と、
混合物に電場を印加するための、対向する一対の電極を有する電場印加手段と
を備えることを特徴とする、分散質の再分散又は解砕装置
【請求項12】
容器内に混合物を撹拌するための撹拌手段を備えることを特徴とする、請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】
混合物を電場印加手段へ給送するための給送手段を備えることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
混合物中の分散質を粗分散させるための粗分散手段を備えることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
電場の電源波形が交流であることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
電極が平行電極であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は分散媒中に分散質を分散又は再分散する方法及び凝集した分散質の解砕方法、並びにこれらの方法に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散媒としての有機樹脂中に、分散質としての有機又は無機フィラーを分散させた複合材料は多岐の分野に使用されている。かかる複合材料は、通常、分散媒と分散質とを含む混合物をボールミル等の分散装置を用いて調製されるが(特許文献1)、かかる分散方法の原理は、分散質に対して外部から機械的衝撃、振動、剪断力等を付与して分散化することにある。しかしながら、無機フィラー等の分散質は、分散質相互間におけるファンデルワールス力や静電気力により、あるいは湿気や調製時に使用する溶媒等により凝集しやすい性質を有するために、混合物を分散処理する際や分散処理後において分散質同士が凝集したり、更には分散媒よりも密度の大きな分散質は沈降して密度ムラ等を生じやすい。そのため、上記分散方法においては、分散媒中に分散質が均一に分散した複合材料を得難いという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、前述の混合物に分散剤や界面活性剤を添加して分散処理する方法も考えられるが、分散質の表面に分散剤や界面活性剤が吸着されると、一般に分散質本来の機能、例えば、導電性、熱伝導性、光屈折特性等が損なわれやすくなる。そのため、良好な分散状態が得られれば、分散剤や界面活性剤を添加しない方が望ましいとされている。また、分散剤や界面活性剤を添加すると、分散質の表面に疎水基や親水基が形成されることによって、分散質に粒子間反発力(斥力)が付与されるため分散性が向上するものと推察されるが、疎水基や親水基が占める体積に応じて分散質の添加量が制限されるため、場合によっては分散質を所望量添加できないこともある。
したがって、分散質の凝集や沈降を解消し、あるいは防止して分散媒中に分散質を均一に分散させることの可能な簡便な方法の構築が望まれている。
【特許文献1】特開2004−27206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、分散媒中に分散質を均一に分散させる方法、分散媒中で凝集又は沈降状態にある分散質を解砕又は再分散させる方法、並びにこれらの方法に使用可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記問題点に鑑みて鋭意検討を行なったところ、分散媒及び分散質を含む混合物に電場を印加することで、分散質の凝集又は沈降の解消及び防止が可能になり、更には分散質を可及的に微細な粒子として分散媒中に分散できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)分散媒及び分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、分散媒中に分散質を均一に分散する方法。
(2)分散媒中に沈降した分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、分散媒中に分散質を均一に再分散する方法。
(3)分散媒中に凝集した分散質を含む混合物に電場を印加することを特徴とする、凝集した分散質の解砕方法。
(4)分散媒が電場印加時の温度において液状若しくは流動性を有する溶媒又は有機樹脂であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)分散質が分散媒よりも高い誘電率を有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)分散質が無機粒子及び無機繊維のうちの少なくとも1種である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)電場として交流電圧を印加することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)平行電極間で電場を印加することを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法により得られることを特徴とする、組成物。
【0007】
(10)分散媒及び分散質を含む混合物を収容する容器と、混合物に電場を印加するための、対向する一対の電極を有する電場印加手段とを備えることを特徴とする、分散質の分散装置。
(11)分散媒中に凝集又は沈降した分散質を含む混合物を収容する容器と、混合物に電場を印加するための、対向する一対の電極を有する電場印加手段とを備えることを特徴とする、分散質の再分散又は解砕装置
(12)容器内に混合物を撹拌するための撹拌手段を備えることを特徴とする、上記(10)又は(11)記載の装置。
(13)混合物を電場印加手段へ給送するための給送手段を備えることを特徴とする、上記(10)〜(12)のいずれかに記載の装置。
(14)混合物中の分散質を粗分散させるための粗分散手段を備えることを特徴とする、上記(10)〜(13)のいずれかに記載の装置。
(15)電場の電源波形が交流であることを特徴とする、上記(10)〜(14)のいずれかに記載の装置。
(16)電極が平行電極であることを特徴とする、上記(10)〜(15)のいずれかに記載の装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分散方法によれば、分散媒及び分散質を含む混合物に電場を印加することで、分散質に荷電又は誘電分極が生じ、その結果分散質自体に粒子間斥力が発生する。これにより、分散媒中の分散質が電場印加前よりも微細な粒子に解砕されるとともに、均一に分散させることが可能になる。このような効果が得られる原因は必ずしも明確ではないが、電場印加により下記の1)〜4)のうちの少なくとも1以上の要因によって分散質自体に斥力(例えば、粒子間斥力)が誘起されることによるものと、本発明者らは推察している。
1)粒子(分散質、以下同様)と液相(分散媒、以下同様)との界面で、局部的かつ瞬間的な爆発又は膨張現象が生じ、そのエネルギーで粒子界面が分離すること。
2)凝集した2次粒子は全体で振動エネルギーによって振動しているが、この振動により粒子界面で摩擦力が生ずること。
3)電場印加条件は粒子にとって巨大な電界強度であるため通常誘電分極が生ずるが、粒子の材質(例えば、チタン酸バリウム等の強誘電体)によっては分極反転が生じて粒子の結晶構造が変化し、1%程度の結晶格子歪を生じること。
4)粒子自体が帯電すること。
このように、本発明の分散方法は、電場印加という簡便な手段により、しかも従来の方法とは異なる原理により分散質を均一に分散及び解砕させることが可能であることから、その技術的意義は大きい。
また、本発明によれば、上記と同様の原理により、分散媒中に沈降した分散質を含む混合物に電場を印加することで分散媒中に分散質を均一に再分散させることが可能であり、また分散媒中に凝集した分散質を含む混合物に電場を印加することで凝集した分散質を解砕させることも可能である。
さらに、本発明によれば、上記方法に適用可能な分散質の分散装置、再分散装置及び解砕装置も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0010】
先ず、本発明の分散装置について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る分散装置の構成を示す模式図である。
分散装置1Aは、分散媒中に分散質を均一に分散させるための装置であり、バッチ処理方式を採用する。分散装置1Aは、混合物2を収容する容器3と、混合物2に電場を印加するための電場印加手段4とを備える。電場印加手段4は対向する一対の電極(5a、5b)を有しており、電極には所望条件で電場を印加できるように増幅装置6及び電圧発生装置7が接続されている。また、使用する分散媒の融点又は軟化点が室温以上である場合には、分散媒が電場印加時において流動性を有するように、容器3に加熱手段を備えていてもよい。
混合物2は、分散媒及び分散質を含んで構成されるが、分散媒は混合物中で最も多く含有される成分であって、連続相を形成している。他方、分散質は、分散媒中に分散されている微細な粒子であって、分散質相互間におけるファンデルワールス力や静電気力により、あるいは湿気や調製時に使用する溶媒等により凝集しやすい性質を有している。混合物2は、分散媒及び分散質を別々に容器3に投入し調製してもよく、あるいは予め調製された混合物2を用いてもよい。予め混合物2を調製する場合、ディスパー撹拌翼、ボールミル、ビーズミル、超音波分散装置等の公知の分散装置を用いて粗分散処理を施してもよい。これにより、電場印加による分散処理効率が高められると共に、分散質の分散性が一層良好になる。
【0011】
また、容器としては、容器内壁が絶縁処理されたものであれば特に制限されることなく使用することができ、例えば、アルミナやジルコニアを内壁にライニングしたステンレス容器が挙げられる。さらに、電極としては、例えば、電場処理液中で金属イオン化し難く、かつ導電性を有する酸化物系セラミックス(例えば、ITO、ATO、酸化アンチモン)をコーティングした金属材料(例えば、ステンレス)を使用できる。また、電極としては均一な電場が得られる点で平板電極が好適に使用され、その形状は矩形や円形などが挙げられる。また、電極は、電極間の距離を調節できるように可動式にしてもよく、これにより最適な電界強度を設定しやすくなる。
このように、本実施形態に係る分散装置によれば、使用する分散質に最適な処理条件にて電場を印加できるため、分散媒中に分散質が均一に分散された混合物を簡便に得ることができる。
【0012】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る分散装置の構成を示す模式図である。
分散装置1Bは、容器3、電場印加手段4、増幅装置6及び電圧発生装置7に加えて、更に容器3内に混合物2を撹拌するための撹拌手段8を備えている。本実施形態に係る撹拌手段8は、容器3の底部に設置され、モータMに接続された撹拌翼であるが、撹拌手段8はこれに限定されず、例えばマグネティックスターラ、超音波振動子、熱対流等も使用可能である。本実施形態においては、このような撹拌手段を備えることで混合物2が容器3内全体に拡散されるため、分散質の沈降の防止や、電極間に存在する処理済液を未処理液へ置換することが可能になる。その結果、容器3内に収容された混合物2に電場を均一に印加することが可能になるため、分散媒中に分散質が一層均一に分散した混合物を得ることができる。なお、分散装置1Bにおける、容器3、電場印加手段4、増幅装置6及び電圧発生装置7の構成及び配置は、第1実施形態に関して説明した通りである。
【0013】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る分散装置の構成を示す模式図である。
分散装置1Cは、容器3、電場印加手段4、増幅装置6、電圧発生装置7及び撹拌手段8に加えて、更に混合物2を電場印加手段4へ給送するための給送手段9を備えている。給送手段9には、混合物2を電場印加手段4に効率的に給送すべくポンプPが接続されている。これにより、混合物2が系内を循環し連続的な分散処理が可能になるため、歩留まりが向上する。更に、給送手段9には処理済の混合物を排出するための排出手段10が接続されている。これにより、排出手段10を通して処理済の混合物を採取して分散状態を確認し、更に混合物を循環させて分散処理に供するか否かを判断することも可能である。なお、分散装置1Cにおける、容器3、電場印加手段4、増幅装置6、電圧発生装置7及び撹拌手段8の構成及び配置は、第1及び第2実施形態に関して説明した通りである。
【0014】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る分散装置を模式的に示す構成図である。
分散装置1Dは、容器3、電場印加手段4、増幅装置6、電圧発生装置7、撹拌手段8及び給送手段9に加えて、混合物2中の分散質を粗分散させるための粗分散手段11が接続されている。このような構成により、予備的な分散処理に供した混合物に対して連続的に電場処理を施すことが可能になるため、処理効率がより一層高められるとともに、分散媒中における分散質の分散性も更に一層向上させることができる。粗分散手段11としては、当該技術分野において公知の分散装置を使用でき、例えば、ディスパー撹拌翼、ボールミル、ビーズミル、超音波分散装置が挙げられる。なお、分散装置1Dにおける、容器3、電場印加手段4、増幅装置6、電圧発生装置7、撹拌手段8、給送手段9及び排出手段10の構成及び配置は、第1〜3実施形態に関して説明した通りである。
【0015】
以上、本発明の分散装置について詳細に説明したが、本発明の再分散装置及び解砕装置は上述した分散装置を再分散装置又は解砕装置として使用することが可能である。その場合、再分散装置においては混合物として分散媒中に沈降した分散質を含む混合物を使用することで、分散質の沈降状態が解消され、電場印加前よりも微細な粒径を有する分散質が分散媒中に均一に分散した混合物を得ることが可能である。また、解砕装置においては混合物として分散媒中に凝集した分散質を含む混合物を使用することで、分散質同士の凝集力が弱められ、その結果電場印加前よりも微細な粒径を有する分散質が分散媒中に均一に分散した混合物を得ることができる。
【0016】
次に、本発明の分散質の分散方法について、上述した本発明の分散装置を参照しつつ説明する。
先ず、分散媒及び分散質を含む混合物を分散装置の容器に収容する。混合物は、前述のように分散媒及び分散質を別々に容器に投入し調製してもよく、あるいは予め調製された混合物を容器内に投入してもよい。混合物を予め調製する場合には、ディスパー撹拌翼、ボールミル、ビーズミル、超音波分散装置等の公知の分散装置を用いて粗分散処理を施してもよい。
【0017】
分散媒としては、電場処理時の温度において液状であるか、あるいは流動性を有するものであって、分散質が分散媒中を移動できる程度の粘度を有するものが好適に使用される。すなわち、分散質の含有量が少ない場合には、相対的に分散媒の粘度が高くても電場印加により分散質を移動させることができるが、分散質の含有量が多い場合には相対的に分散媒の粘度を低くしなければ分散質を移動させ難くなる。したがって、電場を印加した場合に、分散媒中で分散質が容易に移動できるように、分散媒の粘度及び分散質の含有量を適宜選択することが望ましい。
【0018】
分散媒としては、例えば、溶剤、有機樹脂が好適に使用される。
溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、ヘキサン、トルエン)、エーテル類(テトラヒドロフラン(THF))、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、)、アミド類(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−ジメチルアセトアミド(DMAC))、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA))が挙げられる。中でも、非プロトン性の極性溶媒が好適に使用され、具体的には、MEK、アセトン、NMP、酢酸エチルが好ましい。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
有機樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂等が好適に使用され、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。熱可塑性樹脂としては融点又は軟化点が電場印加時における温度よりも低いものが好適に使用され、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂としては室温において液状であるか、あるいは流動性を有するものが好適に使用される。有機樹脂の粘度は、フィラーの性状(例えば、含有量、粒径、形状、表面粗さ(表面摩擦抵抗))や、電場印加条件(例えば、電場周波数、電界強度、印加時間、温度)等によって一様ではないが、例えば、25℃における粘度が通常10〜2,000mPa・S、好ましくは10〜200mPa・Sである。ここで、粘度とは、JIS 7117−1に準拠してB型粘度計により測定されるものをいう。
【0020】
具体的には、熱可塑性樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホン等が好適に使用され、中でもポリイミド樹脂がより好ましい。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイド樹脂、シアネ−ト樹脂等が好適に使用される。中でも、エポキシ樹脂がより好ましく、例えば、主剤としての脂肪族ポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂に、硬化剤(例えば、酸無水物)及び硬化促進剤(例えば、三級アミン、ルイス酸塩基型触媒)を混合した液状のエポキシ樹脂が好適に使用される。なお、これら各成分の配合割合は、目的に応じて適宜設定することが可能である。光硬化性樹脂としては、紫外線(UV)硬化性樹脂等が挙げられる。光又は電子線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー、反応性希釈剤及び光重合開始剤(例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系等)を混合した液状の硬化性樹脂が好適に使用される。なお、これら各成分の配合割合も、目的に応じて適宜設定することが可能である。
【0021】
分散質としては、例えば、セラミックス、金属、合金等の無機粒子又は無機繊維や、有機樹脂粒子が挙げられる。また、分散質の形状としては、例えば、球状、楕円状、針状、板状、繊維状等が挙げられ、中でも球状、繊維状が好適である。分散質としては、分散媒よりも高い誘電率を有するものが好適であり、例えば、無機粒子、無機繊維等が好適に使用される。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
無機粒子としては、例えば、金属又は非金属の、炭化物、窒化物、酸化物等が挙げられ、具体的には、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、スズ系酸化物、スズ−アンチモン系酸化物、酸化チタン/スズ−アンチモン系酸化物、インジウム−スズ系酸化物等の無機粉末が挙げられる。無機繊維としては、例えば、チタン酸バリウム、アルミナ、シリカ、炭素等のセラミックス繊維や、鉄、銅等の金属繊維が挙げられ、中でもチタン酸バリウム等のセラミックス繊維が好適である。また、有機樹脂粒子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂又はそれらの混合物等の粉末が挙げられる。例えば、アクリル系樹脂粒子(例えば、架橋アクリル粒子、非架橋アクリル粒子)はMXシリーズ、MRシリーズ、MPシリーズ(以上、商品名、綜研化学(株))として、またポリスチレン樹脂粒子(例えば、架橋ポリスチレン粒子)はSXシリーズ、SGPシリーズとして商業的に入手することが可能である。
【0022】
また、分散質として、例えば、金属粒子をコアとし、その外表面を無機酸化物で被覆した2層構造を有する粒子(コア/シェル2層構造粒子)を使用してもよい。具体的には、銅粒子をコアとし、その外表面をチタン酸バリウムで被覆した2層構造粒子が挙げられる。さらに、形状の異なる分散質を組み合わせて使用すること可能であり、例えば、カーボンナノチューブのような直径がnmサイズの無機繊維と、球状の無機粒子とを組み合わせて使用することができる。
【0023】
分散質としては、粒度分布においてばらつきのない、略均一の粒径を有するものが好適に使用される。分散質の平均粒径は、通常0.5nm〜100μm、好ましくは10nm〜20μm、より好ましくは100nm〜10μmである。粒径が0.5nm未満であると、分散質のブラウン運動によって電場に対する応答性が悪化する傾向にある。他方、100μmを超えると、重力により分散質が沈降しやすくなる傾向にある。ここで、本明細書において、平均粒径とは、使用する分散質をレーザ回折式粒度分布測定装置(形式SALD−2100、島津製作所製)にて測定し得られる平均粒径(D50)をいい、平均粒径が0.1μm以下の場合には、動的光散乱式粒度分布測定装置(型式N5、バックマンコールタ社製)にて測定し得られる平均粒径(D50)をいう。なお、無機繊維の場合、球状の形状と仮定して測定し得られる値をいう。
【0024】
分散質の含有量は混合物の使用目的に応じて適宜選択することが可能であるが、分散媒に対して、通常1〜60体積%、好ましくは5〜30体積%、より好ましくは10〜20体積%である。分散質の含有量が多くなると、電場を印加した際に分散質を移動させ難くなることから、前述した範囲内とすることが望ましい。
【0025】
次に、混合物に電場を印加する。
混合物を構成する分散媒が、室温で液状であるか、又は流動性を有するものである場合には、そのまま電場を印加する。他方、分散媒が室温で液状ではなく、あるいは流動性を有しないものである場合には、加熱しながら分散媒に流動性を付与しつつ電場を印加する。
また、本発明においては、電場として直流電圧又は交流電圧を印加することが可能であるが、分散効果の点から交流電圧が好ましい。なお、交流電圧による処理条件は以下のとおりである。
電界強度は、通常0.1〜50kV/mm、好ましくは1〜25kV/mm、より好ましくは5〜20kV/mmである。0.1kV/mm未満であると、凝集体が電場に応答し難くなる傾向にある。他方、50kV/mmを超えると、混合物の絶縁破壊を生じやすくなる。
周波数は、通常0.1〜1MHz、好ましくは0.1〜100kHz、より好ましくは0.1〜50kHz、更に好ましくは0.1〜20kHzである。周波数が上記範囲外であると、所望の分散状態を得難くなる傾向にある。
処理時間は使用する分散媒によって一様ではないが、通常0.01〜100分、好ましくは0.5〜30分、より好ましくは1〜10分である。0.01分未満であると分散質の分散性が不十分となる場合があり、他方100分を超えると混合物の絶縁破壊を生じやすくなる傾向にある。
また、分散質の平均粒径や誘電率等を考慮して、表1に示す条件で交流電圧を印加することが特に好ましい。
【0026】
【表1】


【0027】
本発明においては、上記条件にて電場を印加することにより、分散質が電場印加前よりも微細な粒子に解砕されると共に、分散媒中に均一に分散させることが可能になる。
このような効果が得られる要因については明確に解明されていないが、電場印加により下記の1)〜4)のうちの少なくとも1以上の要因によって分散質自体に斥力、例えば粒子間斥力が付与されるため、分散質のファンデルワールス引力に起因する分散質の凝集が抑制される結果、上記効果が得られるものと、本発明者らは推察している。
1)粒子(分散質、以下同様)と液相(分散媒、以下同様)との界面で、局部的かつ瞬間的な爆発又は膨張現象が生じ、そのエネルギーで粒子界面が分離すること。
2)凝集した2次粒子は全体で振動エネルギーによって振動しているが、この振動により粒子界面で摩擦力が生ずること。
3)電場印加条件は粒子にとって巨大な電界強度であるため通常誘電分極が生ずるが、粒子の材質(例えば、チタン酸バリウム等の強誘電体)によっては分極反転が生じて粒子の結晶構造が変化し、1%程度の結晶格子歪を生じること。
4)粒子自体が帯電すること。
一方、従来のボールミル等による分散方法は、分散質に対して外部から機械的衝撃、振動、剪断力等を付与して分散化するものであり、その分散原理は本願発明と全く異なる。しかも、従来の分散方法では、分散媒中に再現性よく分散質を分散することは困難であり、また分散質の微細化の点においても限界がある。
【0028】
本発明の分散方法は前述の分散原理より、分散媒中に分散質を可及的に微細な粒子として均一に分散させることが可能であることから、かかる方法によって得られる組成物は、下記1)〜4)のうちの少なくとも1種以上の電気・電子部品用組成物として有用である。
1)プリント配線板やコンデンサ等の高誘電性が求められる電気・電子部品
2)プリント配線板や半導体封止樹脂パッケージ等の高熱伝導性が求められる電気・電子部品
3)IC等の機能素子と、プリント配線板等の電子部品とを、特に微細にかつ多点箇所を同時に電気的に接続するために用いられる異方性導電シート
4)プリント配線板や半導体封止樹脂パッケージ等、あるいはこれらの電子機器モジュールの電磁波遮蔽が求められる電気・電子部品
【0029】
以上、本発明の分散方法について詳細に説明したが、本発明の再分散方法又は解砕方法も上述した分散方法と同様の原理により分散質を再分散又は解砕することが可能である。すなわち、本発明の再分散方法によれば、分散媒中に沈降した分散質を含む混合物に上述と同様の方法により電場を印加することで分散質自体に斥力を誘起させ、沈降した分散質を電場印加前よりも微細な粒子として分散媒中に均一に分散させることが可能になる。また、本発明の解砕方法によれば、分散媒中に凝集した分散質を含む混合物に上述と同様の方法により電場を印加することで分散質自体に斥力を誘起させ、凝集した分散質を電場印加前よりも微細な粒子に解砕させることができる。
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1〜4)
下記表2に記載の各成分を配合して、無溶剤型エポキシ樹脂を調製した。得られた無溶剤型エポキシ樹脂の誘電率は、3.3であった。
【0032】
【表2】


【0033】
得られた無溶剤型エポキシ樹脂に、体積比率で5、10、20又は30vol%のチタン酸バリウム(BaTiO)(品番BT−03、堺化学工業(株)製、平均粒径0.3μm、純度99.9%以上、誘電率約3,300)をそれぞれ配合して混合物を調製した。次いで、得られた混合物を遊星型ボールミル(型番Planet-M、Gokin Planetaring製)を用いて粗分散処理した。なお、粗分散処理に用いた容器及びボールはジルコニア製であり、ボールの直径が1、2、4及び8mmのものを組み合わせて使用した。また、粗分散処理の条件は、公転回転数600rpm、自転回転数1,500rpm、処理時間10minとした。
【0034】
次いで、得られた混合物に、動的粘弾性測定装置(型式MR-300V、レオロジー社製)を改造して作製した電場処理装置を用いて電場を印加した。上部電極(1oz銅箔)及び下部電極(3oz銅箔)として、SUS製の支持体に導電性両面テープを介して銅箔を取り付けた。次いで、電極間に混合物を注入し、ギャップ量を50〜100μm厚に調整した。電場印加条件は、表3に示すとおりであり、処理時間は5分間とした。次いで、電場処理装置からSUS製の支持体を取り出し、導電性両面テープと、銅箔とを分離して以下の評価用試料を得た。
【0035】
【表3】


【0036】
(実施例5〜8)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100重量部に、カーボンブラック(品番SB−4、デグッサ製、平均粒径398nm)5重量部、及びポリビニルピロリドン(PVP)分散剤(品番K−90、ISPジャパン製)1重量部を配合し、ディスパー撹拌翼(回転数1200rpm)で20分間粗分散処理した。30分間静置後、容器の高さ方向に対して上端から半分までの上澄み液を採取し、評価用混合物を得た。
次いで、片面の全面にITO膜(膜厚200〜300Å)がスパッタリングされたガラス基板を平板電極として用い、電極間距離を50μmとした。厚さ50μmのポリイミドフィルムをスペーサとし、Arガスを用いて電極間に混合物を充填し、表4に示す電場印加条件にて混合物に電場を5分間印加した。そして、電場印加後、電極間にNMPを注入して混合物を取り出した。
【0037】
【表4】


【0038】
(実施例9〜12)
カーボンブラックに代えて、カーボンナノチューブ(品番 MWCNT−2、多層CNT、シンセンナノテクポート製、平均管径20nm)を0.5重量部用いたこと以外は、実施例5と同様の方法により評価用混合物を得、この混合物に表5に示す電場処理条件にて電場を5分間印加した。
【0039】
【表5】


【0040】
(実施例13〜17)
下記表6に記載の各成分を配合して、メチルエチルケトン(MEK)溶剤型エポキシ樹脂を調製した。得られた溶剤型エポキシ樹脂の誘電率は、3.3であった。
【0041】
【表6】


【0042】
得られた溶剤型エポキシ樹脂に、体積比率で10vol%のBaTiO(品番BT−03、堺化学工業(株)製、平均粒径0.3μm、純度99.9%以上、誘電率約3,300)を配合し、ディスパー撹拌翼(回転数1000rpm)で20分間分散処理を施した。30分間静置後、容器の高さ方向に対して上端から半分までの上澄み液を採取し、評価用分散液を得た。
次いで、片面の全面にITO膜(膜厚200〜300Å)がスパッタリングされたガラス基板を平板電極として用い、電極間距離を50μmとした。厚さ50μmのポリイミドフィルムをスペーサとし、Arガスを用いて電極間に分散液の充填し、表7に示す電場処理条件にて分散液に電場を10分間印加した。そして、電場印加後、電極間にMEKを注入して分散液を取り出した。
【0043】
【表7】


【0044】
(比較例1〜4)
電場処理を行なわなかったこと以外は、実施例1〜4と同様の方法により評価用試料を得た。
【0045】
(比較例5)
電場処理を行なわなかったこと以外は、実施例5と同様の方法により評価用試料を得た。
【0046】
(比較例6)
電場処理を行なわなかったこと以外は、実施例9と同様の方法により評価用試料を得た。
【0047】
(比較例7)
電場処理を行なわなかったこと以外は、実施例13と同様の方法により評価用試料を得た。
【0048】
(評価試験)
(1)分散性評価
実施例2〜4及び比較例2〜4で得られた混合物について、走査型電子顕微鏡(SEM、型式S−4700、日立製作所(株)製)を用いてSEM写真を撮影した。実施例2〜4及び比較例2〜4で得られた混合物のSEM写真を示す図5に示す。
SEM写真から、実施例の混合物は殆どBaTiOの凝集物が観察されなかったのに対し、比較例の混合物はBaTiOの巨大な凝集物が多く観察された。このことから、本実施例の混合物は、電場処理によって凝集状態の分散質が解砕処理と、分散処理が同時に施されたことが確認された。
【0049】
(2)粒径測定
実施例5〜12及び比較例5〜6で得られた評価用試料について、サブミクロン粒子アナライザー(モデル N5、動的光散乱方式、ベックマンコールター社製)を用いて、分散質の平均粒径を測定した。なお、実施例9〜12及び比較例6で使用したCNTについては、球状の形状であると仮定して平均粒径を計測した。実施例5〜8及び比較例5の測定結果を表8に示し、実施例9〜12及び比較例6の測定結果を表9に示す。
【0050】
【表8】


【0051】
【表9】


【0052】
実施例13〜17及び比較例7で得られた評価用試料について、粒度分布測定装置(型式 SALD−2100、レーザ回折方式、島津製作所製)を用いて、分散質の平均粒径を測定した。測定結果を表10に示す。
【0053】
【表10】


【0054】
表10の結果から、電場処理時間を10分間と十分な時間を与え、かつ周波数0.1〜1kHz、電界強度2〜4kV/mmと抑えることで、分散質の分散性が大きく改善されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の分散装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の分散装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の分散装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の分散装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図5】実施例2〜4及び比較例2〜4で得られた混合物のSEM写真を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1A…分散装置、2…混合物、3…容器、4…電場印加手段、5…電極、6…増幅装置、7…電圧発生装置。

【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一


【公開番号】 特開2008−686(P2008−686A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172642(P2006−172642)