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【発明の名称】 中空糸多孔質膜および製膜組成物
【発明者】 【氏名】和木 敏則

【氏名】浜田 豊三

【要約】 【課題】本発明は、強度と透水性能を高いレベルでバランス良く具備する中空糸多孔質膜の製造に適した製膜組成物を提供することを課題とする。

【構成】ポリスルホン、ポリエーテルスルホンから選ばれるポリマー成分10〜40質量%、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドから選ばれる良溶剤20〜60質量%、グリコール類から選ばれる貧溶剤10〜60質量%、及びポリビニルピロリドン1〜25質量%を含有する製膜溶液及び、その製膜溶液から形成される中空糸多孔質膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホンから選ばれるポリマー成分10〜40質量%、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドから選ばれる良溶剤20〜60質量%、グリコール類から選ばれる貧溶剤10〜60質量%、及びポリビニルピロリドン1〜25質量%を含有する製膜溶液から形成される中空糸多孔質膜。
【請求項2】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホンから選ばれるポリマー成分10〜40質量%、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドから選ばれる良溶剤20〜60質量%、グリコール類から選ばれる貧溶剤10〜60質量%、及びポリビニルピロリドン1〜25質量%を含有する製膜組成物。
【請求項3】
組紐外表面側に半透膜層を有する中空糸状多孔質膜の製造に用いる製膜組成物であり、前記半透膜層を形成するために用いる請求項2記載の製膜組成物。
【請求項4】
組紐外表面側に半透膜層を有し、かつ前記組紐と前記半透膜層の間で、前記半透膜層の一部は前記組紐中に埋設されて複合層となっている中空糸状多孔質膜の製造に用いる製膜組成物であり、前記半透膜層と前記複合層を形成するために用いる請求項1又は2記載の製膜組成物。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、強度及び透水性能の良い中空糸多孔質膜の製造に適した製膜組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸多孔質膜は、一般に紡糸原液(製膜組成物)となるポリマー溶液を二重紡糸口金から押し出した後、凝固・乾燥させることにより製造されるもので、食品分野、医薬品分野、電子工業分野、水処理分野等の各種分野において汎用されている。
【0003】
特許文献1〜10には、ポリスルホン系ポリマー及びポリビニルピロリドンを含有する製膜溶液から製造された多孔質膜が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−006033号公報
【特許文献2】特開昭63−093309号公報
【特許文献3】特開平02−302449号公報
【特許文献4】特公平06−076510号公報
【特許文献5】特許2505428号公報
【特許文献6】特開2000−084379号公報
【特許文献7】特許3196029号公報
【特許文献8】特開2002−119833号公報
【特許文献9】特開2003−144128号公報
【特許文献10】特許3422657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、文献1〜10のポリスルホン系ポリマーからなる多孔質膜では、膜の強度と透水性能のバランスについては考慮されていない。
【0005】
本発明は、強度と透水性能を高いレベルでバランス良く具備する中空糸多孔質膜の製造に適した製膜組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題解決の手段として、ポリマー成分、良溶剤、水酸基を含む貧溶剤、第4成分としてポリビニルピロリドンを含有する製膜溶液から形成される中空糸多孔質膜を提供する。
【0007】
また、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンから選ばれるポリマー成分10〜40質量%、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドから選ばれる良溶剤20〜60質量%、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類から選ばれる貧溶剤10〜60質量%、及びポリビニルピロリドン1〜25質量%を含有する製膜組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製膜組成物を用いることにより、強度と透水性能を高いレベルでバランス良く具備する中空糸多孔質膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ポリマー成分としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンから選ばれたものを用いることができる。製膜組成物中のポリマー成分の含有量は10〜40質量%が好ましく、13〜35質量%がより好ましく、15〜30質量%が更に好ましい。
【0010】
良溶剤は、ポリマー成分を溶解できるものであれば特に限定されないが、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましい。製膜組成物中の良溶剤の含有量は20〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。
【0011】
貧溶剤は、水酸基を有するものであり、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類を用いることができる。製膜組成物中の貧溶剤の含有量は10〜60質量%が好ましく、30−60質量%がより好ましく、35−50質量%が更に好ましい。
【0012】
第4成分のポリビニルピロリドンは、製膜組成物中の含有量が1〜25質量%が好ましく、1〜20質量がより好ましく、1〜15質量%が更に好ましい。製膜組成物中にポリビニルピロリドンを含有させることにより、製膜組成物中のポリマー成分の含有量増加による透水性能低下を抑制し、強度と透水性能を高いレベルでバランス良く具備させることが可能となる。
【0013】
本発明の製膜組成物は、本発明の課題を解決できる範囲で公知の製膜用成分を含有することができる。
【0014】
<中空糸多孔質膜の製造方法>
本発明の製膜組成物は、中空糸多孔質膜の製造用として適しており、特に基材として組紐を用いた中空糸多孔質膜の製造用として適している。
【0015】
以下、本発明の製膜組成物を、基材としての組紐外表面側に半透膜層を有し、且つ前記組紐と前記半透膜層の間で、前記半透膜層の一部は前記組紐中に埋設されて複合層となっている中空糸膜状多孔質膜の製造に用いた実施形態について説明する。
【0016】
まず、第1工程として、製膜組成物を中空糸状の組紐の表面に付着させる処理をする。
【0017】
第1工程の処理としては、製膜組成物を入れた容器中に中空糸状の組紐を浸漬し、所要時間放置する方法、製膜組成物を入れた容器中に中空糸状の組紐を連続的に潜らせる方法、中空糸状の組紐の編紐工程(組紐を編む工程)において、編まれている状態の組紐表面に製膜組成物を連続的に噴霧、噴射又は塗布する方法等を適用できる。
【0018】
第1工程の処理時間は、製膜組成物の種類及び濃度、組紐の密度、中空糸状多孔質膜の透水性能等に応じて、所望の厚みの半透膜層(複合層を含む)が形成されるように調整する。組紐に対する複合層の厚みを所定割合の範囲内にする条件は、前記した各要件を変化させながら組み合わせることにより経験的に得ることができる。
【0019】
具体的には、各実施例に記載のものと同一の組紐及び同一の製膜組成物を用いる場合は、各実施例における半透膜層(複合層を含む)の厚みを基準として、製膜組成物の濃度を増減したり、製膜組成物への浸漬時間を増減することで、半透膜層(複合層を含む)の厚みを増減させることができる。
【0020】
組紐は、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、セルロース、セルロースアセテート等の天然又は合成樹脂繊維、ステンレス、黄銅、銅等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等からなるものを用いることができる。
【0021】
組紐の内径及び外径は特に制限されるものではないが、取り扱い易さや製造技術上の問題から、内径が好ましくは0.2〜3.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmで、外径は好ましくは0.5〜5.0mm、より好ましくは1.0〜3.0mmのものを用いることができる。
【0022】
第2工程は、組紐の表面に付着した製膜組成物を凝固させる工程である。この工程の処理には、湿式法や乾式法等を適用できるが、瞬時に成形できる湿式法や半乾式湿式法が好ましい。
【0023】
湿式法を適用する場合は、水等の凝固浴中に組紐を浸漬した後、乾燥する方法を適用できる。乾式法を適用する場合は、製膜組成物の濃度、溶媒の種類に応じて、1段処理するか、又は温度及び湿度条件を変化させて2段以上の処理をすることができる。処理温度及び湿度は、温度30〜200℃、好ましくは60〜150℃、相対湿度30〜95%、好ましくは60〜90%であり、処理時間は0.5〜60分間、好ましくは2〜30分間である。
【0024】
複合層の厚みは組紐厚みの50〜95%の範囲内が好ましく、より好ましくは55〜95%、更に好ましくは60〜90%の範囲である。
【0025】
半透膜層の外表面の平均孔径は0.05〜5μmが好ましく、より好ましくは0.08〜3μm、更に好ましくは0.1〜2.5μm、特に好ましくは0.2〜2μmである。
【0026】
本発明の製膜組成物を用いて得られた中空糸多孔質膜は、外径が好ましくは1.5〜3.0mm、より好ましくは1.8〜2.5mmで、内径が好ましくは0.5〜1.5mm、より好ましくは0.7〜1.3mmである。
【0027】
本発明の製膜組成物を用いて得られた中空糸多孔質膜は、有効長さ0.5m、圧力0.1MPaでの純水透過速度が100〜1000L/m2/hrのものであり、好ましくは100〜800L/m2/hrのものである。
【0028】
本発明の製膜組成物を用いて得られた中空糸多孔質膜は、内圧式や外圧式の中空糸膜(中空糸膜モジュール)として、各種水処理に適用することができる。
【実施例】
【0029】
(1)中空状半透膜の純水透水性試験
長さ1mの中空糸膜の片端を封じ、中空糸膜の片端の内側にP1(=0.1MPa) の圧力をかけて純水をデッドエンド濾過し、濾過時間、透過する純水量および他方の片端の圧力P2を測定した。膜間圧力は、(P1+P2)/2で算出し、単位圧力(=0.1MPa)、単位時間、単位膜面積(外表面積換算)あたりに透過する純水量を算出した。
(2)中空状半透膜のエアー通気試験
水中に浸漬した中空糸膜(長さ1m)の両端の内側にエアーを徐々にかけ、中空糸膜の外表面から最初にエアーが発生する圧力を測定した。この圧力は一般的にバブルポイントとして定義され、膜細孔径の算出に使用されているが、ピンホールを内在した膜等においては、バブルポイントよりも小さくなる。バブルポイントは、膜細孔径、膜と水との接触角、水の表面張力を用いて容易に算出できる。

[実施例1]
ポリエーテルスルホン(PES)(住友化学製)18質量%、N-メチルピロリドン(NMP)32質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)(PEG200)45質量%、ポリビニルピロリドンK-30(PVP K-30)5質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用意した。
【0030】
この製膜溶液を40℃に加温し、コーティング容器にギアポンプで圧送するとともに、コーティング容器の中央に、内径1.0mm、外径1.9mm、厚み0.45mmのテトロンスリーブ(組紐、繊維密度38目/インチ)を、1m/分の速度にて走行させて、テトロンスリーブ外表面側から製膜溶液を塗布した。塗布されたテトロンスリーブは、走行中スリットを通過し、過剰塗布溶液の除去/真円度、編肉度調整を行った後、30℃の水中で凝固/洗浄し、中空糸多孔質膜を得た。
【0031】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、800L/m2/hr、エアー発生圧力は0.3MPaであった。
[実施例2]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)20質量%、N-メチルピロリドン28質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)47質量%、ポリビニルピロリドンK-30、5質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0032】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0033】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、450L/m2/hr、エアー発生圧力は0.4MPaであった。
[実施例3]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)22質量%、N-メチルピロリドン33質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)40質量%、ポリビニルピロリドンK−30、5質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0034】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0035】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、300L/m2/hr、エアー発生圧力は0.6MPaであった。
[実施例4]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)18質量%、N-メチルピロリドン30質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)42質量%、ポリビニルピロリドンK−30、10質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0036】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0037】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、340L/m2/hr、エアー発生圧力は0.5MPaであった。
[実施例5]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)20質量%、N-メチルピロリドン23質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)47質量%、ポリビニルピロリドンK−30、10質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0038】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0039】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、150L/m2/hr、エアー発生圧力は0.6MPaであった。
[実施例6]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)22質量%、N-メチルピロリドン25質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)43質量%、ポリビニルピロリドンK−30、10質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0040】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0041】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、120L/m2/hr、エアー発生圧力は0.7MPaであった。
[比較例1]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)18質量%、N-メチルピロリドン28質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)54質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0042】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0043】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、1000L/m2/hr、エアー発生圧力は0.1MPaであった。
[比較例2]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)20質量%、N-メチルピロリドン33質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)47質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0044】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0045】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、350L/m2/hr、エアー発生圧力は0.3MPaであった。
[比較例3]
ポリエーテルスルホン(住友化学製)22質量%、N-メチルピロリドン35質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)43質量%からなる製膜溶液(液状製膜組成物)を用いた。
【0046】
この製膜溶液を用いて、実施例1と同様の方法にて、中空糸膜を得た。
【0047】
得られた中空糸多孔質膜の0.1MPa下での純水透過速度は、50L/m2/hr、エアー発生圧力は0.4MPaであった。
【0048】
上記実施例1〜6、及び比較例1〜3の製膜溶液の組成、及び得られた膜の物性を、図1に示した。また、図2に、実施例と比較例で得られた中空糸多孔質膜の、PES濃度と純水透過速度の関係を示した。図3には、実施例と比較例で得られた中空糸多孔質膜の、PES濃度とエアー発生圧力の関係を示した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例及び比較例の製膜溶液の組成、及び得られた膜の物性を示す表。
【図2】実施例と比較例で得られた中空糸多孔質膜の、PES濃度と純水透過速度の関係を示す図。
【図3】実施例と比較例で得られた中空糸多孔質膜の、PES濃度とエアー発生圧力の関係を示す図。
【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−6327(P2008−6327A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176511(P2006−176511)