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【発明の名称】 フィルター用繊維積層体
【発明者】 【氏名】西谷 高幸

【氏名】岩田 満寿夫

【要約】 【課題】高い捕集能力を有し、従来品より圧力損失が低く、高性能〜HEPAクラスのフィルターとなしうることができるフィルター用濾材を提供する。

【構成】平均繊維径10μm以下の繊維からなり、目付が40gsm以下である繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維(ただし、繊維径は繊維層Aを構成する繊維の平均繊維径より大である)からなり、目付が10〜500gsmである繊維層Bとが、繊維層AまたはBを構成する繊維に含まれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂の熱融着によって結合された繊維積層体をフィルター用濾材とする。繊維層A及び繊維層Bの少なくとも1つの層を構成する繊維を、10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維とし、該複合繊維の低融点成分の熱融着を介して両層を一体化するようにするのが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径10μm以下の繊維からなり、目付が40gsm以下である繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維からなり、目付が10〜500gsmである繊維層Bとが、繊維層AまたはBを構成する繊維に含まれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂の熱融着によって結合された繊維積層体からなるものであり、繊維層Bを構成する繊維の繊維径が繊維層Aを構成する繊維の平均繊維径より大きいことを特徴とするフィルター用繊維積層体。
【請求項2】
繊維層Aと繊維層Bが、互いに独立して、ウェブまたは不織布である請求項1項に記載の繊維積層体。
【請求項3】
繊維層A及び繊維層Bの少なくとも1つの層を構成する繊維が、10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維であり、該複合繊維の低融点成分の熱融着により、繊維層Aと繊維層Bが一体化されている請求項1または2項に記載の繊維積層体。
【請求項4】
繊維層Aがメルトブロー法によって得られた繊維層であって、a.単一の熱可塑性樹脂で構成された単繊維、b.10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維、または、c.a及びbの繊維からなる群から選ばれた少なくとも2つの異なる繊維を含む混合繊維で構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維積層体。
【請求項5】
繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層であって、10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された繊維長が3〜40mmの複合繊維を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維積層体。
【請求項6】
繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層であって、繊維層に含まれる繊維を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1種が、反応性官能基を有するビニルモノマーの重合体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維積層体。
【請求項7】
風速5cm/secの条件下で直径0.3μmの粒子の捕集効率が70%以上である請求項1〜6いずれか1項に記載の繊維積層体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維積層体からなるものであって、繊維層Aが被ろ過物質の流出側に、繊維層Bが被ろ過物質の流入側に位置するようにしたフィルター用濾材。
【請求項9】
前記繊維積層体の表面または裏面に、他の繊維、不織布、ネット、編み物及び織物から選ばれた少なくとも一種が積層されている請求項8のフィルター用濾材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はフィルター用の積層不織布に関する。さらに、詳しくは平均繊維径10μm以下で目付40gsm以下の繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維で目付10〜500gsmの繊維層Bとの少なくとも二層の繊維層が積層された繊維積層体に関する。この繊維積層体はエアフィルターの高性能クラスやHEPA(高能率粒子捕集フィルター)クラスの濾材として好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや地下街また車両やアミューズメントスペースから、研究所や工場等のクリーンルームにいたるまで、ごみ、塵、埃のない空間への関心が高まっており、これらの空間を提供する為に、空気を清浄化するエアフィルターの需要は増加している。このようなエアーフィルターには不織布加工品が多く用いられており、それらは繊維径の細い繊維で形成した緻密なマトリックスや、フィルターを帯電させて静電気的な吸引力などで微小な塵埃の捕集を可能としている。
HEPAクラスや高性能クラスのフィルターには、緻密なマトリックスを形成する為に直径0.1〜1μmのガラス繊維や平均繊維径数μmのメルトブロー極細繊維不織布が多く用いられている。
【0003】
しかし、ガラス繊維は繊維が折れ易く脱落しやすいため加工時や使用時に弊害があることや、焼却できないため廃棄処理が困難であること、ガラス繊維フィルターに含まれるホウ素が使用環境に悪影響を与えること等の多くの問題を有していた。また、メルトブロー極細繊維不織布では嵩高な不織布が得られず、剛性のない不織布となる。このため、フィルター成型時のプリーツ加工性等の加工適性を改善する目的で、二次加工で不織布の剛性を向上させる支持体との張り合わせが必要となるという問題点がある。さらにはこれらのフィルターは、フィルター自体が緻密なマトリックスを形成していることや、捕集性能にあまり寄与しない支持体、または支持体を結合するための接着層によって圧力損失が高くなるといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決する為に、素材としては環境負荷が小さく焼却可能なポリオレフィン繊維を使用し、さらに圧力損失を低下させる為、エレクトレット処理によってフィルターを帯電することで、静電気的捕集機能を加え、粗いマトリックスでも高い捕集性能を維持できるフィルターが特許文献1にて提案されている。
【特許文献1】特開20006−002329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の如きフィルターはエアレイド法やカード法から得られる短繊維不織布であり、開繊された繊維が適度な空間を有して配列しているため圧力損失が低い特徴を有している。しかし、このフィルターの性能は、中〜高性能クラスの捕集性能であり、高性能〜HEPAクラスのフィルターとしては捕集能力が不足しているという問題があった。
そこで、本発明は、このような欠点を解消し、高い捕集能力を有し、従来品より圧力損失が低く、高性能〜HEPAクラスのフィルターとなしうることができるフィルター用濾材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、平均繊維径10μm以下の繊維からなる目付が40gsm以下である繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維からなる目付が10〜500gsmである繊維層Bとを積層した繊維積層体を使用することで、素材に環境負荷の低いポリオレフィン繊維を用いながらも、高い捕集能力を有し、且つ従来品より圧力損失の低い、高性能〜HEPAクラスのフィルターが提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明には、下記のものが含まれる。
〔1〕平均繊維径10μm以下の繊維からなり、目付が40gsm以下である繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維からなり、目付が10〜500gsmである繊維層Bとが、繊維層AまたはBを構成する繊維に含まれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂の熱融着によって結合された繊維積層体からなり、繊維層Bを構成する繊維の繊維径が繊維層Aを構成する繊維の平均繊維径より大であることを特徴とするフィルター用繊維積層体。
〔2〕繊維層Aと繊維層Bが、互いに独立して、ウェブまたは不織布である前〔1〕項に記載の繊維積層体。
〔3〕繊維層A及び繊維層Bの少なくとも1つの層を構成する繊維が、10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維であり、該複合繊維の低融点成分の熱融着により、繊維層Aと繊維層Bが一体化されている前〔1〕または〔2〕項に記載の繊維積層体。
〔4〕繊維層Aがメルトブロー法によって得られた繊維層であって、a.単一の熱可塑性樹脂で構成された単繊維、b.10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維、または、c.a及びbの繊維からなる群から選ばれた少なくとも2つの異なる繊維を含む混合繊維で構成されている、前〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の繊維積層体。
〔5〕繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層であって、10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された繊維長が3〜40mmの複合繊維を含む前〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の繊維積層体。
〔6〕繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層であって、繊維層に含まれる繊維を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1種が、反応性官能基を有するビニルモノマーの重合体を含む前〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の繊維積層体。
〔7〕風速5cm/secの条件下で直径0.3μmの粒子の捕集効率が70%以上である前〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の繊維積層体。
〔8〕前記〔1〕〜〔7〕項のいずれか1項に記載の繊維積層体からなるものであって、繊維層Aが被ろ過物質の流出側に、繊維層Bが被ろ過物質の流入側に位置するようにしたフィルター用濾材。
〔9〕前記繊維積層体の表面または裏面に、他の繊維、不織布、ネット、編み物及び織物から選ばれた少なくとも一種が積層されている前〔8〕項のフィルター用濾材。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における繊維積層体は、平均繊維径10μm以下の繊維からなり、目付が40gsm以下の繊維層Aと、繊度0.5〜100dtexの繊維からなり、目付が10〜500gsmの繊維層Bとが積層され融着された少なくとも二層構造を有するものであれば良く、フィルターの自己保持性を向上させるため、各層ごとに粒径の異なる塵埃を捕集するように繊維間孔径の異なる層を数層積層し、厚み方向に密度勾配を持たせることも可能である。
【0009】
本発明における繊維積層体を構成する繊維層Aは、平均繊維径10μm以下の繊維を用いて形成された目付40gsm以下の繊維層であれば、その製法は限定されない。ただし、繊維層Bを構成する繊維の繊維径が繊維層Aを構成する繊維の平均繊維径より大であることが必要である。
【0010】
本発明の繊維積層体を構成する繊維層Aを構成する繊維は、a.単一の熱可塑性樹脂からなる繊維、b.10℃以上の融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維、または、c.a及びbの繊維からなる群から選ばれた少なくとも2つの異なる繊維を含む混合繊維のいずれかで構成されるのが好ましい。更に、これらはメルトブロー法によって得られる繊維であるのが好ましく、aの繊維からなる繊維層は、単一の熱可塑性樹脂を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡糸して得られ、更に高温、高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で繊維ウェブとしたものが例示できる。次に、bの複合繊維からなる繊維層は、融点に10℃以上差がある少なくとも2種の熱可塑性樹脂をそれぞれ独立に溶融押出し、複合メルトブロー紡糸口金から、低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成するように共押出することで紡糸し、更に高温、高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で複合繊維ウェブとし、必要に応じ熱融着処理することにより不織布としたものが例示できる。cの混合繊維の繊維層は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂をそれぞれ独立に溶融押出し、混繊メルトブロー紡糸口金から紡糸して得られ、更に高温、高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で混合繊維ウェブとして得られた層、または少なくとも2種の熱可塑性樹脂を混合して溶融押し出し、メルトブロー紡糸口金から紡糸して得られ、更に高温、高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で混合繊維ウェブとして得られた層、または、それら2種のブロー紡糸された単一繊維もしくは複合繊維からなる群から選ばれた少なくとも2つの異なる繊維を含む混合繊維を捕集装置で複合繊維ウェブとし、必要に応じ熱融着処理することにより不織布としたものが例示できる。
【0011】
本発明の繊維層Aに使用される樹脂は、紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特別な制限はない。例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの2または3元共重合体等のポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類、フッ素樹脂、上記樹脂の混合物等、その他紡糸可能な樹脂などが使用できるが、細い繊維が紡糸し易いポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0012】
本発明の繊維層Aにおける複合紡糸の樹脂の組合せは、例えば、プロピレン・エチレン・ブテン−1結晶性共重合体/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/プロピレン・エチレン・ブテン−1結晶性共重合体、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0013】
本発明の繊維層Aが複合繊維である場合、複合繊維の形態は鞘芯型、並列型、多層型、中空多層型等のいずれでもよいが、低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成するようにした複合繊維を使用するのが好ましい。
【0014】
複合繊維の低融点樹脂の溶融により、繊維層Aと繊維層Bを一体化するためには、複合繊維を構成する低融点樹脂と高融点樹脂の融点差は10℃以上であるのがよい。融点差が10℃以上であれば、繊維層Aと繊維層Bの積層加工における加熱処理で温度調節が容易であり、熱融着度合は十分で、高強力な積層不織布が得られ、繊維の毛羽立ちも抑えることができる。また、高温加熱でシワや熱収縮が発生せず、不織布全体が溶融し部分的にフィルム化した不織布となる等の問題も起こらず、更に、積層面での剥離も防げる。
【0015】
本発明の繊維層Aを構成する繊維が複合繊維の場合、繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂の好ましい重量比は、低融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%、高融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%であり、さらに好ましくは低融点熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高融点熱可塑性樹脂が70〜30重量%である。低融点熱可塑性樹脂が10重量%以上であれば、熱接着性が十分となり、不織布に加工したときの不織布強力を十分に保つことができ、また、逆に低融点熱可塑性樹脂が90重量%以下であれば芯成分である高融点熱可塑性樹脂が繊維形態を確実に維持することができる。
【0016】
本発明の繊維層Aがメルトブロー法によって得られた繊維層である場合、メルトブロー法におけるブロー紡糸する際の気体は通常、空気、窒素ガス等の不活性気体が使用される。該気体の温度は約200〜500℃、好ましくは約250〜450℃、圧力は約0.1〜6.0kg/cm2、好ましくは約0.2〜5.5kg/cm2である。この紡糸条件は、使用する樹脂の物性や組合せ、目的とする繊維径、紡糸口金等の装置等により、適宜設定される。
【0017】
本発明の繊維層Aは、平均繊維径が10μm以下の複合繊維からなるのが好ましく、繊維積層体の通気度と圧力損失への影響を考慮すると、0.1〜10μmであるのがより好ましい。なお、繊維層Aを構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であれば、繊維間孔径が、繊維層Bのそれより小さいので、本発明の繊維積層体の効果が十分に得られる。また、平均繊維径0.1μm以上の繊維は、繊維の製造が容易で、価格が抑えられる。
【0018】
本発明の繊維層Aがメルトブロー法によって得られた繊維層である場合、繊維積層体製造時にその繊維の交点が熱融着されていることが好ましい。該熱融着は、紡糸時の自熱で融着されたものであっても、また、紡糸後または積層時の、熱スルーエアー、熱カレンダーロール、熱エンボスロール等の加熱装置を用いた際に、熱融着したものであっても良い。
【0019】
本発明の繊維層Aの目付は、1〜40gsmであることが好ましい。さらに好ましくは、5gsm〜10gsmである。
【0020】
本発明の繊維層Aの通気度は、70cm/sec以下であることが好ましい。さらに好ましくは、40cm/sec以下である。
【0021】
本発明における繊維積層体を構成する繊維層Bは、繊度0.5〜100dtexの繊維で構成され、目付が10〜500gsmである繊維層であればよく、その製法は限定されない。
【0022】
本発明の繊維積層体を構成する繊維層Bは、紡糸可能な熱可塑性樹脂を原料とした繊維からなるものであり、熱可塑性樹脂の単独または2種類以上を均一に混合した樹脂から溶融紡糸された単一繊維や、2種類以上の熱可塑性樹脂を用いて複合紡糸した複合繊維が用いられ、特にエアレイド法によって得られる繊維層であるのが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの2元または3元系共重合体等のポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類、フッ素樹脂及び上記樹脂の混合物等を挙げることができる。
【0023】
本発明の繊維層Bを構成する繊維が複合繊維の場合には、鞘芯型、並列型、3層以上の多層型、中空多層型、異形多層型等の複合形態を用いることができる。このとき、熱可塑性樹脂の組み合わせは、融点差が10℃以上とすることが好ましく、さらに繊維を構成する熱可塑性樹脂のうち低融点熱可塑性樹脂が繊維表面の少なくとも一部が露出し、さらに繊維の長さ方向に沿って連続している構造となることが好ましく、これにより、低融点熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上、高融点熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することで、複合繊維の低融点熱可塑性樹脂が溶融され、繊維の交点が熱接着された三次元網目状構造の熱接着性不織布を形成させることができる。
【0024】
本発明の繊維層Bを構成する繊維が複合繊維の場合、低融点熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂との2種類の熱可塑性樹脂からなる場合、その組み合わせ例としては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/プロピレン−エチレン−ブテン−1結晶性共重合体、エチレン-プロピレン共重合体/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6/ナイロン66、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン/ポリエチレンテレフタレート、線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物/ポリエチレン等が例示できる。好ましくは、複合繊維がポリオレフィン系の成分からなるもので、このような低融点熱可塑性樹脂/高融点熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体/ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0025】
本発明の繊維層Bを構成する繊維が複合繊維の場合、繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂の好ましい重量比は、低融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%、高融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%であり、さらに好ましくは低融点熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高融点熱可塑性樹脂が70〜30重量%である。低融点熱可塑性樹脂が10重量%以上であれば、熱接着性が十分となり、不織布に加工したときの不織布強力を十分に保つことができ、また、逆に低融点熱可塑性樹脂が90重量%以下であれば芯成分である高融点熱可塑性樹脂が繊維形態を確実に維持することができる。
【0026】
本発明の繊維層A及び/又はBを構成する繊維が複合繊維の場合、該繊維の表面の一部に長さ方向に沿って連続して露出する低融点成分に反応性官能基を有したビニルモノマーからなる重合体を含む樹脂(変性剤)を含有させることができる。特に繊維層Bに含有させるのが好ましい。変性剤は、反応性官能基を有した樹脂であり、該反応性官能基としては、水酸基、アミノ、ニトリル、ニトリロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、グリシジル等の基が挙げられる。変性ポリオレフィンは、前記反応性官能基を有するビニルモノマーを用いて重合することができ、ブロック、ランダム、ラダー等の共重合体、グラフト重合体のいずれも使用することができる。反応性官能基を有するビニルモノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等から選択された不飽和カルボン酸、その誘導体、またはその無水物を少なくとも1種含むビニルモノマー、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、または同様なアクリル酸エステル等を少なくとも1種含むビニルモノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、3.4−エポキシブテン、5.6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等を少なくとも1種含むビニルモノマーを挙げることができる。
【0027】
変性剤としては、一般的に変性剤の全重量に対して前記反応性官能基を有するビニルモノマーを0.05〜2.0mol/kgの変性率で有するものを利用するのが好ましく、0.05〜0.2mol/kgの変性率の変性剤を利用するのがより好ましい。
【0028】
変性剤は、不織布を構成する際に他のセルロース系繊維や、無機物との接着性が高いことや、繊維処理剤と反応して本発明における繊維積層体の帯電性の向上に寄与することから、本発明では変性剤として、不飽和カルボン酸またはその誘導体からなるビニルモノマーとポリオレフィンとからなる変性ポリオレフィンを好ましく用いることができる。
【0029】
上記の変性ポリオレフィンのうち、グラフト重合体である変性ポリオレフィンが、ポリマー強度が高く、繊維加工性が良好であることから、より好ましく利用でき、変性率に関しては、繊維加工性及び本発明の効果を妨げない範囲で可能な限り、高変性率であることが好ましい。
【0030】
変性ポリオレフィンの幹ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等が用いられる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレ、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが用いられる。これらは、密度が0.90〜0.97g/cm、融点は、100〜135℃程度のポリマーである。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体が用いられる。これらは、融点130〜170℃程度のポリマーである。ポリブテン−1は、融点が110〜130℃程度のポリマーである。これらのポリマーの中では、融点、共重合、グラフト重合の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましく、不織布強度を向上させるためには、ポリマー強度が高い、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0031】
上記変性ポリオレフィンを含む低融点成分には、変性ポリオレフィンの単独、少なくとも2種の変性ポリオレフィンの混合物、少なくとも1種の変性ポリオレフィンと他の熱可塑性樹脂との混合物等を利用することができる。変性ポリオレフィンは、未変性のポリオレフィンと比較した場合、一般的にポリマー強度が低下する傾向であるため、繊維強度をより高く維持するためには、低融点成分として、高変性率の変性ポリオレフィンと未変性のポリオレフィンとの混合物を用いることが好ましく、相溶性の面から変性ポリオレフィンの幹ポリマーと同じポリマーを用いることが特に好ましい。
【0032】
変性剤と他の熱可塑性樹脂とを混合する場合には、0.1mol/kg程度以上の高変性率の変性剤を用いることが好ましい。変性剤と他の熱可塑性樹脂との混合率は好ましくは0.25〜20.0wt%/Fiber、さらに好ましくは1.0〜8.0wt%/Fiberである。変性剤を用いることにより、本発明の繊維積層体の帯電性を向上させるという効果を付加することができる。これは繊維処理剤と繊維表面に存在する変性剤の反応性官能基が反応して、帯電性を向上していると推測される。また、変性剤を構成する幹ポリマーと同じ熱可塑性樹脂と混合することが好ましい。
【0033】
本発明の繊維層Bに付着される繊維処理剤は、エアレイド法による繊維加工時に、繊維結束、繊維の開繊不良、繊維の絡み等欠点の発生が少なければ、任意の界面活性剤を用いることが出来る。さらには、繊維積層体形成後に帯電処理を行うことから、制電性の高いイオン性成分を含まない非イオン性成分のみで構成される界面活性剤が好ましい。
【0034】
本発明の繊維層Bには、好ましくは、非イオン性の繊維処理剤、特に、ソルビタン脂肪酸エステル類が不織布加工時に制電性を有し、エレクトレット処理時には静電気の帯電を妨げないことから好ましく用いることができる。具体例としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類のポリオキシエチレン誘導体の例としては、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(EO=5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=6)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=6)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)モノヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノパルミレート、ポリオキシエチレン(EO=5)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタントリステアレートなどが挙げられる。本発明に用いられるソルビタン脂肪酸エステル類は特にこれらに限定されるものではない。
【0035】
ソルビタン脂肪酸エステル類を繊維処理剤の主成分として含有する場合、繊維処理剤の重量に対して、50重量%以上配合され、好ましくは60〜70重量%の範囲に配合される。配合されるその他の成分としては、非イオン性の任意の界面活性剤が好ましく、これらは繊維処理剤の乳化や防腐効果を高めるために用いられることもある。
【0036】
本発明の繊維層Bが特にエアレイド法によって得られた繊維層である場合、特に限定されないが、繊維処理剤は繊維表面に0.10〜1.0wt%の範囲付着されるのが好ましい。さらに好ましくは0.15〜0.50wt%である。繊維処理剤の付着量が0.10wt%以上であれば、エアレイド法による繊維加工時の静電気発生を抑えることができ、加工機への付着やウェブ押えロール等への巻き付きなどを避けることができる。また、繊維処理剤の付着量が1.0wt%以下であれば、前記繊維結束を抑え、繊維の開繊も良好となり、繊維の絡み等の問題は発生せず、繊維積層体への帯電処理も十分に行うことができる。
【0037】
本発明の繊維層Bを構成する繊維の繊度は特に限定されないが、0.5〜100dtexの範囲が好ましく用いられている。また、捕集対象物や要求される通気性の点によってこの限りではないが、0.5〜20dtexの範囲の繊度が好ましく用いられる。
【0038】
本発明の繊維層Bは、単独もしくはたとえばナイロンのような他の繊維と混合して得られるウェブや、それをスルーエアー型熱処理機等で繊維の交点を熱融着するか、ウォータージェット法等で繊維を機械的に交絡することで得られる不織布として用いることが出来る。
【0039】
本発明の繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層である場合、繊維を篩、またはスクリーンを通して繊維が均一分散したウェブとなるよう降り積もらせることが必要である。このためには、繊維長が3〜40mmの範囲の短繊維を用いることが好ましい。繊維長が40mm以下であれば繊維は十分均一に分散し、不織布に発生する地合斑を抑えることができる。逆に、繊維長が3mm以上であれば、不織布に加工したときの不織布強力の低下を抑えることができ、エアレイド法の特徴である嵩高性を十分に生かすことができる。
【0040】
エアレイド法に用いられるウェブ製造装置としては、例えば、前後、左右、上下、水平円状等のいずれかに振動し短繊維をふるいの目から分散落下させる箱形篩いタイプの装置が使用できる。また、ネット状の金属多孔板が円筒状に成形され、且つその側面に繊維の投入口を有し、繊維をそのふるいの目から分散・落下させるネット状円筒型タイプの装置も使用できる。
【0041】
本発明の繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層である場合、繊維の捲縮数は特に制限されないが、エアレイド法でウェブ化する場合には、0〜15山/25mmの範囲がウェブの形成が良好となり好ましい。このとき、捲縮数が15山/25mm以下であれば、繊維間の絡みを抑えて繊維の開繊性を十分に保つことができるため、均一な地合いのウェブさらには不織布が得られる。また、捲縮形状はジグザグ型の二次元捲縮やスパイラル型、オーム型等の立体三次元捲縮等、いずれの形状も用いることができる。
【0042】
本発明の繊維層Aと繊維層Bとの積層時には、ウェブまたは、繊維交点を熱処理や機械交絡によって結合した不織布のいずれの状態であっても良い。熱処理は低融点熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上、高融点熱可塑性樹脂の融点未満の温度に加熱して繊維の交点を融着する装置を用い、スルーエアー型熱処理機、エンボスロール型熱処理機、フラットロール型熱処理機等が使用できる。特にエアレイド法により得られたウェブはスルーエアー型熱処理機を用いることで嵩高な不織布が得られるため好適である。また、機械交絡は高圧水流によって機械的にウェブを絡ませる方法であり、繊維に付着する繊維処理剤が洗い落とされ、繊維積層体の帯電効果が向上するため好適である。
【0043】
本発明の繊維層Bの目付は特に限定されないが、フィルターに用いる場合には、10〜500gsmの範囲の目付が好ましい。ハウジングのサイズ適性や要求される捕集性能の程度から、この限りではないが20〜200gsmの範囲が好適である。
【0044】
本発明の繊維層AとBを構成する繊維の繊維径についてはこの限りではないが、A層の繊維径がB層の繊維径の50%以下が好適である。更に好ましくはA層の繊維径がB層の繊維径の25%以下である。
【0045】
本発明の両繊維層の繊維を構成する熱可塑性樹脂には本発明の効果を妨げない範囲内で酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、顔料、可塑剤及び他の熱可塑性樹脂等を添加することができる。
【0046】
本発明の繊維積層体を構成する繊維層Aと、繊維層Bは互いに独立して、ウェブまたは不織布であるが、不織布層であることが加工時のハンドリング性や繊維積層体の強度の面から好ましい。
【0047】
本発明の両繊維層を積層する加工方法については、各繊維層を構成した後に両層を積層させる方法や、繊維積層体のいずれか一方の繊維層を構成した後、もう一方の繊維層を既成された繊維層に一括で積層する方法が挙げられるがこの限りではない。
【0048】
本発明の繊維積層体は、構成する繊維層AとBの少なくともいずれか一方を構成する繊維または、繊維を構成する熱可塑性樹脂の熱融着を介して一体化され、ラテックス等の接着剤を必要としないことを特徴とする。
【0049】
本発明の繊維積層体において熱融着される成分が繊維の場合は、層を構成する低融点側の繊維を、繊維成分の場合は、構成する低融点側の熱可塑性樹脂を介して熱融着されるのが好ましい。
【0050】
本発明の繊維積層体において、積層時の熱処理は低融点熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上、高融点熱可塑性樹脂の融点未満の温度に加熱して繊維の交点を融着する装置を用い、スルーエアー型熱処理機、エンボスロール型熱処理機、フラットロール型熱処理機等公知の技術が使用できる。特にメルトブロー法によって得られた繊維層と、エアレイド法によって得られた繊維層の積層界面でのより強い熱融着を得るには、スルーエアー型熱処理機が他の熱接着法に比べ熱融着が促進されより好ましい。但し、両繊維層を積層する方法についてはこれに限定されるものではない。
【0051】
本発明の繊維積層体において多層構造を形成する場合は、繊維層Aがメルトブロー法、繊維層Bがエアレイド法によって得られた繊維層である場合、その積層パターンとしては、メルトブロー層/エアレイド層、メルトブロー層/エアレイド層/メルトブロー層、メルトブロー層/エアレイド層/他素材の層等が挙げられるがこの限りではない。また、繊維積層体中の表面層側にメルトブロー層を配置することが好適である。他素材の層についてはトウ、繊維、不織布、ネット、パルプ、木材、編み物、織物等が例示できる。
【0052】
本発明の繊維積層体は、繊維の低融点成分が溶融しない程度の加熱雰囲気下で電荷を与える熱エレクトレット法や、コロナ放電によって電荷を与えるコロナ放電法等のエレクトレット処理を行うことで繊維積層体に電荷を帯電させて捕集機能等の特性を繊維積層体に与える。但し、エレクトレット処理法についてはこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の繊維積層体は、エアコンや空調設備に用いられる高性能からHEPAクラスのエアフィルターに好適に用いられる。また、要求される性能との適合によっては、家具や床等の掃除用ワイパーや、マスク等に使用することができる。
【0054】
本発明の繊維積層体をフィルターやマスク用途に使用するときは、清浄空気を排出する側にメルトブロー法によって得られた繊維層を配置することが特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、実施例、比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中に示された物性値の測定法または定義を以下に示す。
【0056】
<繊維物性>
捲縮数:JIS−L−1015に準じて測定した(山数/inch)。
単糸繊度:JIS−L−1015に準じて測定した(dtex)。
繊維処理剤付着量(%):乾燥した繊維2gから、繊維に付着した繊維処理剤をメタノール25mlで抽出し、抽出メタノールからメタノールを蒸発させて残った残渣を秤量し、繊維に対する重量比を算出した値(%)。
メルトブロー繊維径:ウェブまたは不織布から小片を切取り、走査型顕微鏡にて倍率100〜5000倍の写真を撮り、計20本の繊維直径を測定し、平均値から繊維径を算出した(μm)。
【0057】
<不織布物性>
目付:不織布を50cm角に切った成形体全体の重量を秤量し、単位面積当たりの重量で示した(g/m2)。
剥離強度:積層不織布を長さ200mm×幅25mmに切取る。25mm幅に切取った粘着テープをメルトブロー層側に貼り付け、押えローラーを10往復させてメルトブロー層とテープを十分に粘着させる。サンプルの一端から50mm程粘着テープを剥がし状況を観察する。テープにメルトブロー層粘着され積層界面が剥離していた場合、サンプルメルトーブロー層ともう一方の層を引張強度試験機の両チャックに挟み、剥離強力を求める。3個の平均値をとった(N/25mm)。メルトブロー層が粘着されずテープだけが剥がれた場合、繊維積層体の積層界面の剥離強力は使用した粘着テープの被着体粘着力以上の剥離強力を有すると判断し、測定値として示した。粘着テープはセロテープNo.252(1.5N/25mm以下)と、強粘着テープ(5.0N/25mm以下)を使用して測定を行った。
通気度:JIS−L−1004、JIS−L−1018に準じて測定した(cm/sec)。
【0058】
<フィルター特性試験>
捕集効率(%):パーティクル測定器(リオン株式会社製パーティクルカウンターKC−01(0.3〜5μm))にて、大気塵(0.3〜5μm)を速度5cm/secでサンプルを通過させた時に、不織布に捕集された塵の量を測定し、通過させた塵の全体の量から100分率で算出した値(%)。
圧力損失(Pa):大気塵(0.3〜5μm)を速度5cm/secでサンプルを通過させた時の大気圧に対する差圧をゲージから読み取る(Pa)。
【0059】
[実施例1〜6]
表1に示したメルトブロー不織布(繊維層A)と、表1に示したエアレイド法による目付45、80、95g/m2のウェブ(繊維層B)を作り、138℃のスルーエアー熱処理機を通過させた後、これらを積層し、再度138℃のスルーエアー熱処理機を通過させて積層不織布を得た。これに100℃雰囲気下で5分間保持した後−10kVの電圧を5秒間印加することでエレクトレット積層不織布を作製した。
【0060】
なお、繊維層Aは、表1に示す如く、実施例1〜4は芯に融点160℃の結晶性ポリプロピレンを、鞘に融点130℃のエチレン・プロピレン共重合体(エチレン成分3.5wt%、密度0.922g/cm)を重量比率で1:1の割合で用いた芯鞘型複合繊維を使用し、実施例5は融点160℃の結晶性ポリプロピレンからなる単繊維を、実施例6は融点160℃の結晶性ポリプロピレンからなる繊維と融点130℃のエチレン・プロピレン共重合体からなる繊維を重量比率で1:1の割合で混合した混合繊維を使用して、メルトブロー法で不織布に製造されたものであり、目付及び平均繊維径は表1に示す通りである。
【0061】
また、繊維層Bは、芯側に融点158℃の結晶性ポリプロピレンを、鞘側に密度0.960g/cm、融点128℃の高密度ポリエチレンを、50wt%/50wt%の比率で配した鞘芯型複合繊維で、繊度が1.7dtex、繊維長3mmの繊維を使用して、エアレイド法で表1に示す目付となるように形成されたものであり、繊維表面には、繊維処理剤としてソルビタン脂肪酸エステル類を0.25wt%付着しており、繊維の捲縮数は10〜13山/25mmの繊維を用いた。
【0062】
[比較例1〜3]
表1に示す如く、実施例の繊維層Bと同様の芯鞘型複合繊維を使用し、エアレイド法にて、目付50、85、100g/m2のウェブを作り、138℃のスルーエアー熱処理機を通過させて不織布とし、これに100℃雰囲気下で5分間保持した後−10kVの電圧を5秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0063】
【表1】


【0064】
実施例1〜6及び比較例1〜3の製品について、積層界面の剥離強度と、エレクトレット不織布のフィルター特性である捕集効率並びに圧力損失の測定を実施した。その結果を表2に示す。
【0065】
【表2】


【0066】
表2に示されるように、本発明の繊維積層体は低い圧力損失で高い捕集性能を有することが分かった。また、本発明の実施例の繊維積層体と同じ目付である比較例の試験結果を比較することにより、本発明では、捕集性能が大幅に上昇することも確認できた。
更に、従来から一般的に使用されてきたメルトブロー層に支持体としてスパンボンド不織布を積層した繊維積層体と比較しても低い圧力損失に抑えられることを確認している。これは、繊維層Bにあたるエアレイド法によって得られる繊維層が、短繊維を堆積させる製法で得られることや、繊維が二次元捲縮や三次元立体構造捲縮を有していることから嵩高な繊維層を形成し易いことから、スパンボンド層より繊維層の厚み方向の通気性が高いためと推測される。さらには、剥離強度試験の結果から、メルトブロー層に複合繊維を使用することで、より高い強力で一体化された繊維積層体得られた。これにより、積層界面でのレジンボンドやラテックス等の接着成分が不必要となり、さらに圧力損失を抑えた繊維積層体が得られることが可能となった。本発明の繊維積層体は低い圧力損失を維持しながら高性能からHEPAクラスの捕集性能を得ることが出来る。
【0067】
本発明の繊維積層体は低い圧力損失で中性能から高性能クラスの捕集性能を有するエアレイド法によって得られた繊維層Bに、繊維層Aを熱可塑性樹脂成分で熱融着して結合されているので、従来のメルトブロー層に支持体を積層しただけの濾材と比較して捕集性能の向上が見込める。また、エアレイド法によって得られた繊維層Bの嵩高性によって捕集対象物質の自己保持量の向上が期待できるので、フィルターライフについても向上すると考えられる。
【0068】
本発明の繊維積層体は、有機材料のみから構成されることから、焼却が可能で廃棄も容易であることから環境負荷の低いフィルター濾材である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の繊維積層体は、高性能クラスやHEPAクラスの高い捕集性能を有しながらも、圧力損失を抑えることができるので、長期間にわたり高い集塵効果を要求されるエアーフィルターやマスク等の濾材に利用することができる。
【出願人】 【識別番号】000002071
【氏名又は名称】チッソ株式会社
【識別番号】399120660
【氏名又は名称】チッソポリプロ繊維株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所


【公開番号】 特開2008−696(P2008−696A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173552(P2006−173552)