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フィルタおよびその製造方法 - 特開2008−682 | j-tokkyo
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【発明の名称】 フィルタおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】中森 雅彦

【氏名】後藤 禎仁

【氏名】谷口 信志

【氏名】小林 久人

【氏名】大田 康雄

【要約】 【課題】ナノオーダーの繊維径を有し、さらに荷電処理された不織布を用いることにより、フィルタの圧力損失上昇につながる目付量増加をしなくても、捕集効率が高い高性能フィルタを提供することにある。

【構成】高分子と有機溶媒とを主成分とする溶液を製造し、ついで得られた溶液を荷電紡糸法を用いて紡糸し、捕集基板に高分子繊維を捕集し、他の層と積層することにより、繊維径が0.001〜1μmの繊維からなる荷電処理された不織布を含むフィルタを作成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が0.001〜1μmの繊維からなる荷電処理された不織布を含むフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載の不織布の層と、該不織布より大きい繊維径を持つ不織布を積層させたフィルタ。
【請求項3】
繊維が、ポリアミドイミド繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルタ。
【請求項4】
高分子と有機溶媒とを主成分とする溶液を製造し、ついで得られた溶液を荷電紡糸法を用いて紡糸し、捕集基板に高分子繊維を捕集することを特長とする、請求項1又は3記載のフィルタの製造方法。
【請求項5】
高分子と有機溶媒とを主成分とする溶液を製造し、ついで得られた溶液を荷電紡糸法を用いて紡糸し、該繊維より大きい繊維径を持つ不織布に積層することを特長とする、請求項1乃至3記載のフィルタの製造方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は繊維径が0.001〜1μmの繊維からなる荷電処理された不織布を含むフィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電処理されたフィルタは、メルトブロー装置を用いて製造されたポリプロピレンウェブやに荷電処理したものや荷電処理されたポリプロピレンフィルムを開繊したものが用いられてきた。微粒異物をろ過する用途、例えば呼吸マスク、空気清浄機用エアフィルタ、水フィルタ、その他の用途、防音材、断熱材に広く利用させている。また、捕集効率の向上を目的に、フィルタに用いられる不織布中の繊維径または繊維幅を特定分布にすることも提案されている。しかし、これまでの不織布の繊維径またはスリット幅は数μmのものであった。このため荷電処理された不織布フィルタを製造する際には、一般的に目付量を多くすることにより捕集効率を上げているが、目付量を多くすると不織布の厚みが大きくなり、加工性が低下するという問題があった。また、繊維径または繊維幅が大きいものが含まれるためにポアサイズが大きくなり、さえぎり、慣性衝突などの物理的捕集が寄与せず、粉塵を負荷すると静電気による捕集効果が小さくなり、捕集効率が低下する問題があった。
【0003】
近年、繊維径が1μm以下のナノオーダー繊維(ナノファイバー)が広く検討されている。繊維径の小さい繊維の集合体を製造する方法として、複合紡糸法、高速紡糸法、荷電紡糸法などが挙げられる。そのうち、荷電紡糸法は、他の方法より簡便に、少ない工数で紡糸することが可能である。液体(例えば繊維を形成する高分子を含有する溶液、溶融させた高分子)に高電圧をかけることで液体に電荷を与え、液体を対極物質に向かって曳かせ、繊維を形成させる。普通、繊維を形成する高分子は溶液から曳き出され、対極物質に捕捉されるまでの間に繊維を形成する。繊維形成は、例えば、繊維を形成する高分子を含有する溶液を用いた場合は、溶媒蒸発によって、溶融させた高分子を用いた場合は冷却によって、または、化学的硬化(硬化用蒸気による処理)、により行われる。また、得られる繊維は、必要に応じ配置した捕集体上に捕集され、必要ならばそこから剥離し、繊維の集合体として利用することも可能である。また、不織布状の繊維の集合体を直接得ることが可能なため、他の方法のように、一旦繊維を紡糸した後、繊維の集合体を形成する必要がなく、操作が簡便である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
「静電紡糸法により製造された、平均繊維径が0.01μm以上、0.5μm未満の極細繊維集合体層と、平均繊維径が0.5μm以上、5μm以下の細繊維集合体層とを備えていることを特徴とする濾過材」が提案されている。繊維径が小さく、ポアサイズが小さくなり、さえぎり、慣性衝突などの物理的捕集の寄与は大きくなり、捕集効率を向上させるが、本濾過材は荷電処理を行っておらず、従来技術同様に、更なる捕集効率を向上させるためには、目付量を多くする必要があり、フィルタの圧力損失を大きくし、フィルタへの負荷が大きくなるという問題がある。(特許文献4)
【0005】
【特許文献1】特公昭48−1466号公報
【特許文献2】特開昭63−145465号公報
【特許文献3】特開2002−249966号公報
【特許文献4】特開2005−218909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するために行われたものであり、荷電処理やナノファイバによる効果によって、高いフィルタ性能を有するフィルタを提供することにある。すなわち、ナノオーダーの繊維径を有する荷電処理された不織布からなるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
1.繊維径が0.001〜1μmの繊維からなる荷電処理された不織布を含むフィルタ。
2.上記不織布の層と、該不織布より大きい繊維径を持つ不織布を積層させたフィルタ。
3.繊維が、ポリアミドイミド繊維であることを特徴とするフィルタ。
4.高分子と有機溶媒とを主成分とする溶液を製造し、ついで得られた溶液を荷電紡糸法を用いて紡糸し、捕集基板に高分子繊維を捕集することを特長とする、フィルタの製造方法。
5.高分子と有機溶媒とを主成分とする溶液を製造し、ついで得られた溶液を荷電紡糸法を用いて紡糸し、該繊維より大きい繊維径を持つ不織布に積層することを特長とするフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は繊維径が小さい高分子繊維およびその不織布、およびその製造方法を提供する。また本発明によって得られる不織布は、非常に大きな表面積を有し、濾過性能、耐熱性、機械的物性、熱寸法安定性に優れるため、大変好ましい性質を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に使用する高分子重合体は、荷電処理により高い静電気永久帯電性を保持するものであれば、特に限定されるものではない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−4メチル−1ペンテン、ポリ−3メチル−1ブテン、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルI−テルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、全芳香族ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体やそれらの混合物が用いられる。荷電処理後、電荷の熱的安定度を増加させるため、また製造、使用環境での熱的な寸法安定性を増加させるためにも使用する高分子重合物の融点、
このようなものの好ましい一つとしてポリアミドイミドが挙げられる。以下ポリアミドイミドに関して詳細に説明する。
【0010】
ポリアミドイミドはトリメリット酸クロリドとジアミンを用いる酸クロリド法やトリメリット酸無水物とジイソシアネートを用いるジイソシアネート法等の通常の方法で合成されるが製造コストの点からジイソシアネート法が好ましい。
【0011】
ポリアミドイミドの合成に用いられる酸成分はトリメリット酸無水物(クロリド)であるが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物。シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレンーブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0012】
また、トリメリット酸化合物の一部をグリコールに置き換えることもできる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールや上記ジカルボン酸の1種又は2種以上と上記グリコールの1種又は2種以上とから合成される、末端水酸基のポリエステル等が挙げられる。
【0013】
ポリアミドイミドの合成に用いられるジアミン(ジイソシアネート)成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’ −ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’ −ジアミノジフェニルメタン、4,4’ −ジアミノジフェニルエーテル、4,4’ −ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネート等が挙げられ、これらの中では反応性、コストの点から4,4’ −ジアミノジフェニルメタン、o−トリジン及びこれらのジイソシアネートが好ましい。
【0014】
ポリアミドイミドの重合に用いられる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等があげられる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。
【0015】
ポリアミドイミドの対数粘度は0.2dl/gより大きいことが好ましい。対数粘度が0.2dl/g以下では、機械的特性が不十分であり、また、荷電紡糸を行った際、連続繊維を形成させることができない。
【0016】
ポリアミドイミドを得るためには前記の有機溶媒中、ジアミン(ジイシシアネート)成分の使用量が酸成分のモル数に対する比として好ましくは0.90〜1.20であり、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0017】
ポリアミドイミドの重合条件として、上記極性溶剤中、不活性ガス雰囲気下で60〜200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。
必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)等のアミン類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属塩等を触媒として用いることもできる。
【0018】
ポリアミドイミド溶液のポリマー濃度としては、固形分濃度として0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜25重量%である。
【0019】
本発明においては、紡糸によって得られる不織布の種々の特性を改善する目的で、無機もしくは有機フィラー等の添加剤を配合することもできる。ポリアミドイミドと親和性の低い添加剤の場合、その大きさは、得られるポリアミドイミド繊維の直径より小さいものが好ましい。大きいものであると、荷電紡糸中に添加剤が析出し、糸切れを起こす原因となる。添加剤を配合する方法としては、例えば、必要量の添加剤をポリアミドイミド重合の反応系中にあらかじめ添加しておく方法とポリアミドイミド重合の反応終了後に必要量の添加剤を添加する方法が挙げられる。重合阻害をしない添加剤の場合は前者の方が均一に添加剤の分散した不織布が得られるので好ましい。
【0020】
ポリアミドイミドの重合反応終了後に必要量の添加剤を添加する方法の場合、超音波による攪拌、ホモジナイザーなどによる機械的な強制攪拌が用いられる。
【0021】
本発明の不織布は平均繊維径が0.001〜1μmである繊維より形成される。平均繊維径が0.001μmより小さいと、自己支持性が乏しいため好ましくない。また平均繊維径が1μmより大きいと表面積が小さくなり好ましくない。より好ましい平均繊維径は0.005〜0.8μmであり、特に好ましい平均繊維径は0.01〜0.5μmである。
【0022】
本発明の不織布を製造する方法としては、0.001〜1μmの繊維径の繊維等が得られる手法であれば特に限定されないが、荷電紡糸法が好ましい。以下荷電紡糸法により製造する方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明で用いる荷電紡糸法とは、溶液紡糸の一種であり、一般的には、ポリマー溶液にプラスの高電圧を与え、それがアースやマイナスに帯電した表面にスプレーされる過程で繊維化を起こさせる手法である。荷電紡糸装置の一例を図1に示す。図において、荷電紡糸装置1には、繊維の原料となるポリマーを吐出する紡糸ノズル2と紡糸ノズル2に対向して、対向電極5とが配置されている。この対向電極5はアースされている。高電圧をかけ荷電したポリマー溶液は、紡糸ノズル2から対極電極5に向けて飛び出す。その際、繊維化される。ポリアミドイミドを有機溶媒に溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を対向電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板に累積することによって不織布を得ることができる。ここでいう不織布とは既に溶液の溶媒が留去され、不織布となっている状態のみならず、溶液の溶媒を含んでいる状態も示している。
【0024】
溶媒を含んだ不織布の場合、荷電紡糸後に、溶剤除去を行う。溶剤を除去する方法としては、例えば、貧溶媒中に浸漬させ、溶剤を抽出する方法や熱処理により残存溶剤を蒸発させる方法などが挙げられる。
【0025】
溶液槽3としては、材質は使用する有機溶剤に対し耐性のあるものあれば特に限定されない。また、溶液槽3中の溶液は、機械的に押し出される方式やポンプなどにより吸い出される方式などによって、電場内に吐出することができる。
【0026】
紡糸ノズル2としては、内径0.1〜3mm程度のものが望ましい。ノズル材質としては、金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを一方の電極として使用することができ、ノズル2が非金属製である場合には、ノズルの内部に電極を設置することにより、押し出した溶解液に電界を作用させることができる。生産効率を考慮し、ノズルを複数本使用することも可能である。また、一般的には、ノズル形状としては、円形断面のものを使用するが、ポリマー種や使用用途に応じて、異型断面のノズル形状を用いることも可能である。
【0027】
対向電極5としては、図1に示すロール状の電極や平板状、ベルト状の金属製電極など用途に応じて、種々の形状の電極を使用することができる。
【0028】
また、これまでの説明は、電極が繊維を捕集する基板を兼ねる場合であるが、電極間に捕集する基板となる物を設置することで、そこにポリアミドイミド繊維を捕集してもよい。この場合、例えばベルト状の基板を電極間に設置することで、連続的な生産も可能となる。
【0029】
また、一対の電極で形成されているのが一般的ではあるが、さらに異なる電極を導入することも可能である。一対の電極で紡糸を行い、さらに導入した電位の異なる電極によって、電場状態を制御し、紡糸状態を制御することも可能である。
【0030】
電圧印加装置4は特に限定されるものではないが、直流高電圧発生装置を使用できるほか、ヴァン・デ・グラフ起電機を用いることもできる。また、印加電圧は特に限定するものではないが、一般に3〜100kV、好ましくは5〜50kV、一層好ましくは5〜30kVである。なお、印加電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであっても良い。
【0031】
電極間の距離は、荷電量、ノズル寸法、紡糸液流量、紡糸液濃度等に依存するが、5〜120kVのときには5〜20cmの距離が適切であった。
【0032】
次に高分子重合体としてポリアミドイミドを用い荷電紡糸法による本発明の製造手法について詳細に説明する。まずポリアミドイミドを有機溶媒に溶解した溶液を製造する。本発明の製造方法における溶液中のポリアミドイミドの濃度は0.1〜30重量%であることが好ましい。ポリアミド酸の濃度が0.1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため不織布を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる不織布の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましいポリアミドイミドのポリマー濃度は1〜20重量%である。
【0033】
ポリアミドイミド溶液を形成する有機溶媒とは、ポリアミドイミドを上記濃度内に溶解すれば特に限定されない。紡糸を行う際、ポリアミドイミドを製造した重合溶液のまま使用することも可能であり、また、ポリマーの貧溶媒を用い、ポリアミドイミドを析出、洗浄を行い、精製したものをポリマーの良溶媒に再溶解させ溶液として使用することも可能である。得られたポリアミドイミド繊維に支障がない場合は、重合溶媒をそのまま使用することが好ましい。
【0034】
ポリマーの溶媒には、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の高い溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルホルマート、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホランなどの揮発性が相対的に低い溶媒が挙げられる。または、上記溶剤を2種以上混合させて用いることも可能である。
【0035】
紡糸をする雰囲気として、一般的には空気中で行うが、二酸化炭素などの空気よりも放電開始電圧の高い気体中で荷電紡糸を行うことで、低電圧での紡糸が可能となり、コロナ放電などの異常放電を防ぐこともできる。また、水がポリマーの貧溶媒である場合、紡糸ノズル近傍でのポリマー析出が起こる場合がある。そのため、空気中の水分を低下させるために、乾燥ユニットを通過させた空気中で行うことが好ましい。
【0036】
次に捕集基板に累積される不織布を得る段階について説明する。本発明においては、該溶液を捕集基板に向けて曳糸する間に、条件に応じて溶媒が蒸発して繊維状物質が形成される。通常の室温であれば捕集基板上に捕集されるまでの間に溶媒は完全に蒸発するが、もし溶媒蒸発が不十分な場合は減圧条件下で曳糸しても良い。この捕集基板上に捕集された時点で遅くとも本発明の繊維が形成されている。また、曳糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は、0〜50℃である。そして多孔質繊維がさらに捕集基板に累積されて不織布が製造される。
【0037】
本発明の不織布の目付量は使用用途に応じて決められるものでり、特に限定されるものではないが、0.05〜50g/m2であるのが好ましい。ここでいう目付量はJIS−L1085に準じたものである。0.05g/m2以下であると、フィルタ捕集効率が低く好ましくなく、50g/m2以上であると、フィルタ通気抵抗が高くなりすぎるので好ましくない。
【0038】
本発明の不織布の厚みは使用用途に応じて決められるものであり、特に限定されるものではないが、1〜100μmであるのが好ましい。ここでいう厚みはマイクロメータで測定したものである。
【0039】
本発明の不織布は必要であれば、各種用途に適合するように、後処理を実施することができる。例えば、緻密化または厚み精度を整えるためのカレンダー処理、親水処理、撥水処理、界面活性剤付着処理、純水洗浄処理などを実施することができる。
【0040】
本発明によって得られる不織布は、単独で用いても良いが、取扱性や用途に応じて、他の部材と組み合わせて使用しても良い。例えば、捕集基板として支持基材となりうる布帛(不織布、織物、編物)やフィルム、ドラム、ネット、平板、ベルト形状を有する、金属やカーボンなどからなる導電性材料、有機高分子などからなる非導電性材料を使用することができる。その上に不織布を形成することで、支持基材と該不織布を組み合わせた部材を作成することも出来る。
【0041】
上記支持基材となりうる布帛としては、経済的観点から不織布が最も好適に使用可能である。支持基材の不織布を構成する繊維径は、荷電処理された本発明の不織布の繊維径より大きな繊維径を持つことが望ましい。支持基材の不織布は、フィルタとしての剛性を高めフィルタの変形を防ぐのに有効である。上記目的のため、支持基材の不織布を構成する繊維径は、荷電処理された本発明の不織布の繊維径の1.5倍以上であることが望ましく、さらに望ましくは2倍以上、特に望ましくは5倍以上の繊維径である。繊維径が500倍以上になると両不織布の接合が困難になる場合がある。
【0042】
本発明によって得られる不織布は、荷電処理することによりフィルタ性能を格段に向上させることができる。荷電処理の方法は、特に限定されないが、コロナ放電による荷電、電子線照射による荷電、高電界下における荷電、十分な圧力による水流衝突による荷電などが挙げられる。ポリアミドイミドを主成分とする不織布は、これらの荷電処理によりエレクトレット化され、捕集性能が大幅に向上する。
【0043】
本発明によって得られる不織布の繊維径は、0.001〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5μm、さらに好ましくは0.001〜0.3μmである。繊維径は細い程、高い捕集効率が得られ好ましく、特に0.5μmより細くなると通常の不織布フィルタと比較して通気抵抗が小さくなるスリップフロー効果が発現するのでより好ましい。0.001μmより細くなると、不織布強度が低下したり毛羽だちによるハンドリング性が悪くなる。
【0044】
本発明によって得られる不織布の用途は、空気清浄機用フィルタ、精密機器用フィルタ、自動車、列車等のキャビンフィルタ、エンジンフィルタ、およびビル空調用フィルタなど、各種エアフィルタ用途に用いることが出来る。特に耐熱性、機械的強度、熱寸法安定性が求められる空気浄化用途に好適である。
【実施例】
【0045】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また以下の各実施例における評価項目は以下のとおりの手法にて実施した。
【0046】
[対数粘度]
ポリアミドイミド樹脂0.5gを100mlのN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液を30℃に保ちウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0047】
[平均繊維径]
得られた不織布の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率10000倍)を撮影し、その写真からn=30にて繊維径を測定した平均値を算出した。
【0048】
[ガラス転移温度]
測定幅4mm、長さ15mmのポリアミドイミドフィルムをレオロジー社製DVE−V4レオスペクトラーを用い、周波数110Hzの振動を与えて測定した動的粘弾性の損失弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
[フィルタ性能の評価]
通気抵抗は、不織布試料をダクト内に設置し、フィルタ通過線速度が10cm/秒になるようコントロールし、フィルタ上流、下流の静圧差を圧力計で読み取り求めた。また粒子捕集効率の評価は大気塵を10cm/秒にてフィルタに通気した際の粒子径0.3〜0.5μmの粒子濃度を、パーティクルカウンター(リオン社製 KC01−C)にてフィルタの上下流を測定し、上流側と下流側の粒子濃度の比率から捕集効率を求めた。
【0049】
[実施例1]
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)0.995モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が25%となるようにN、N−ジメチルアセトアミドと共に仕込み、90℃に昇温して約3時間攪拌を行いポリアミドイミドを合成した。得られたポリアミドイミドの対数粘度は0.86dl/g、ガラス転移温度は290℃であった。得られたポリアミドイミド溶液にN、N−ジメチルアセトアミドを加え固形分濃度を20%にした。
このポリアミドイミド溶液を図1に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に目付量80g/m2、繊維径45μm、厚み0.2mmのポリエステル不織布を貼り付け、30分間吐出した。紡糸ノズル2に18G(内径:0.8mm)の針を使用し、電圧は15kV、紡糸ノズル2から繊維を捕集する対向電極5までの距離は10cmであった。得られた不織布の平均繊維径は0.50μm、目付量3.2g/m2であった。
得られた不織布をアルミ平板の接地電極上に置き、不織布との1cmの距離から針状電極を用いて電圧20kV、10秒間のコロナ荷電処理を実施し、フィルタ性能を測定した。通気抵抗は7.3mmAq、捕集効率は96.7%であった。
【0050】
[実施例2]
実施例1と同様にポリアミドイミドを作製し、固形分濃度を15%にした。
このポリアミドイミド溶液を図1に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に目付量80g/m2、繊維径45μm、厚み0.2mmのポリエステル不織布を貼り付け、45分間吐出した。紡糸ノズル2に18G(内径:0.8mm)の針を使用し、電圧は13kV、紡糸ノズル2から繊維を捕集する対向電極5までの距離は10cmであった。得られた不織布の平均繊維径は0.25μm、目付量1.8g/m2であった。
実施例1と同様に荷電処理を実施し、フィルタ性能を測定した結果、通気抵抗は10.9mmAq、捕集効率は99.3%であった。
【0051】
[実施例3]
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1モル、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)0.02モルを、固形分濃度が15%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と共に仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して約3時間攪拌後、120℃に昇温し1時間攪拌を行い、ポリアミドイミド樹脂を合成した。得られたポリアミドイミドの対数粘度は1.38dl/g、ガラス転移温度は290℃であった。
平均繊維径0.09μm、目付量1.10g/m2であった。
実施例1と同様に荷電処理を実施し、フィルタ性能を測定した結果、通気抵抗は18.2mmAq、捕集効率は99.99%であった。
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様にフィルタを作製し、コロナ荷電処理を実施せずにフィルタ性能を測定した。通気抵抗は7.3mmAq、捕集効率は66.5%であった。
【0053】
[比較例2]
実施例2と同様にフィルタを作製し、コロナ荷電処理を実施せずにフィルタ性能を測定した。 通気抵抗は10.9mmAq、捕集効率は80.5%であった。
【0054】
[比較例3]
実施例2と同様にフィルタを作製し、コロナ荷電処理を実施せずにフィルタ性能を測定した。通気抵抗は18.2mmAq、捕集効率は96.2%であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
繊維径が0.001〜1μmの繊維からなる不織布を荷電処理することにより高いフィルタ性能を有するフィルタを実現し提供するものであり、工業的、環境的価値の大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】荷電紡糸装置の模式的な断面図
【符号の説明】
【0057】
1 荷電紡糸装置
2 紡糸ノズル
3 溶液槽
4 高電圧電源
5 対向電極(捕集基板)

【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−682(P2008−682A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172485(P2006−172485)