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【発明の名称】 吸着筒
【発明者】 【氏名】国分 磨希也

【氏名】斎藤 達央

【氏名】安部 敏行

【要約】 【課題】吸着剤の充填高さが低くなっても常に吸着剤の上面に押え板を隙間なく配置することができ、吸着筒のメンテナンスを容易に行うことができるとともに、常に所望の製品ガスを良好に得ることのできる吸着筒を提供する。

【構成】筒体11の上部に上部円筒部12を連設し、該円筒部内にガス流通性を備えた円形の押え板20を上下動可能に配設する。上部円筒部12の上端開口部をガス配管接続口を有する閉塞板30で閉塞するとともに、筒体11の下部から円筒部内の高さまで充填された吸着剤14の上面に向けて押え板20を押圧するためのねじ部材40を設ける。ねじ部材40を閉塞板30に設けた雌ねじ部材31に螺合させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の内部に吸着剤を充填した圧力スイング吸着法に用いられる吸着筒において、前記筒体の上部に配置した円筒部内に、ガス流通性を備えた円形の押え板を上下動可能に配設し、前記円筒部の上端開口部をガス配管接続口を有する閉塞板で閉塞するとともに、前記筒体の下部から前記円筒部内の高さまで充填された吸着剤の上面に向けて前記押え板を押圧するためのねじ部材を設け、該ねじ部材を前記閉塞板に設けた雌ねじ孔又は該閉塞板に設けた雌ねじ部材に螺合させたことを特徴とする吸着筒。
【請求項2】
前記閉塞板の上方に突出した前記ねじ部材を覆う袋ナットを前記閉塞板又は前記雌ねじ部材に着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の吸着筒。
【請求項3】
前記押え板の外周縁に、前記円筒部の内周壁に当接して前記押え板を水平に保ちながら上下動させるガイド片を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の吸着筒。
【請求項4】
前記円筒部内に、前記押え板の下降限を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の吸着筒。
【請求項5】
前記閉塞板又は前記雌ねじ部材に螺合するとともに前記押え板に設けた貫通孔を回動可能に貫通するねじ部材を設け、前記貫通孔を貫通した前記ねじ部材の先端に前記貫通孔より大きな押え板支持部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の吸着筒。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス中の目的ガスを選択的に分離する吸着剤を用いた圧力スイング吸着法(PSA法)に用いられる吸着筒の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気等の混合ガス中の特定成分を相対的に高い圧力下で吸着剤に吸着させ、吸着剤に吸着しないガスを製品ガスとして取り出す圧力スイング吸着法(PSA法)が知られている。このPSA法では、吸着筒内を相対的に高い圧力に加圧して特定成分を吸着剤に吸着させる吸着工程と、吸着筒内を相対的に低い圧力に減圧して吸着剤に吸着した特定成分を脱着させる再生工程とを基本工程としており、一般的には、複数の吸着筒を吸着工程と再生工程とに交互に切り換えるとともに、吸着工程と再生工程との間に均圧工程を行うようにしている。
【0003】
このようなPSA装置に用いられる吸着筒は、筒内の上下にそれぞれ設けたスクリーン間に吸着剤を所定の充填密度で充填しているが、各工程への移行時に、筒内外の圧力差によって急激なガスの出入りが生じるため、吸着剤が揺動して次第に圧密され、吸着剤の充填高さが低くなって上部スクリーンと吸着剤上面(充填面)との間に隙間が発生し、この隙間の部分で吸着剤が揺動して粉化したり、ガス流れの分布が乱れて製品ガスの純度低下を招いたりする問題があった。
【0004】
このため、吸着筒上部の鏡部内に複数のスクリーン部材を分割配置した上部スクリーンを設け、この上部スクリーンの上部に多数のセラミックボールを載置し、吸着剤が圧密されて充填面が降下したときに、セラミックボールの重量で上部スクリーンを吸着剤上面に押し付ける構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−99012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された吸着筒では、上部スクリーンが鏡部に設けられていることから、充填面の降下に伴う面積の増大に上部スクリーンが追随できなくなると、鏡部と上部スクリーンとの間に隙間が発生し、この隙間からガスと共に吸着剤が流出してしまうおそれがあった。また、急激にガスが上昇する際に上部スクリーンの浮き上がりを防止するためには、相当量のセラミックボールを使用する必要があることから、充填筒全体の重量が増大して設置コスト等の上昇を招くことになる。
【0006】
そこで本発明は、吸着剤の充填高さが低くなっても常に吸着剤の上面に押え板を隙間なく配置することができ、吸着筒のメンテナンスを容易に行うことができるとともに、常に所望の製品ガスを良好に得ることのできる吸着筒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の吸着筒は、第1の構成では、筒体の内部に吸着剤を充填した圧力スイング吸着法に用いられる吸着筒において、前記筒体の上部に配置した円筒部内に、ガス流通性を備えた円形の押え板を上下動可能に配設し、前記円筒部の上端開口部をガス配管接続口を有する閉塞板で閉塞するとともに、前記筒体の下部から前記円筒部内の高さまで充填された吸着剤の上面に向けて前記押え板を押圧するためのねじ部材を設け、該ねじ部材を前記閉塞板に設けた雌ねじ孔又は該閉塞板に設けた雌ねじ部材に螺合させたことを特徴としている。
【0008】
第2の構成では、前記閉塞板の上方に突出した前記ねじ部材を覆う袋ナットを前記閉塞板又は前記雌ねじ部材に着脱可能に取り付けたことを特徴とし、第3の構成では、前記押え板の外周縁に、前記円筒部の内周壁に当接して前記押え板を水平に保ちながら上下動させるガイド片を設けたことを特徴としている。また、第4の構成では、前記円筒部内に、前記押え板の下降限を規制するストッパを設けたことを特徴とし、第5の構成では、前記閉塞板又は前記雌ねじ部材に螺合するとともに前記押え板に設けた貫通孔を回動可能に貫通するねじ部材を設け、前記貫通孔を貫通した前記ねじ部材の先端に前記貫通孔より大きな押え板支持部材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着筒によれば、充填面が降下したときには、閉塞板の上方に突出したねじ部材を締め付け方向に回動させることにより、押え板を吸着剤の上面に押圧することができ、押え板と吸着剤との間に隙間を生じさせないことから、吸着剤の揺動による粉化やガスの流れが乱れることを防止できる。また、円筒部内に押え板を配設したことから、押え板を下降させても押え板と円筒部との間に隙間が生じることなく、吸着剤の流出を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図4は本発明の吸着筒の第1形態例を示し、図1は吸着筒の一部断面正面図、図2は吸着筒上部の拡大断面図、図3はねじ部材の装着状体を示す拡大断面図、図4は押え板の要部拡大断面図である。
【0011】
本形態例の吸着筒10は、金属製の縦円筒型の筒体11の上方及び下方が、鏡部11a,11aによって絞り込まれ、各鏡部11a,11aの中央には上部円筒部12と下部円筒部13とがそれぞれ連設されている。吸着筒10の内部には、下部円筒部13の上端に設けられた下部スクリーンから、上部円筒部12の中間部まで吸着剤14が充填されている。
【0012】
上部円筒部12には、該円筒部12の内径よりも僅かに小径で、かつ、ガス流通性を備えた円形の押え板20が、吸着剤14の上部に上下動可能に設けられる。この押え板20は、上部側から、目皿21,金網(スクリーン)22,パッキン23,リング部材24を順に重ね合わせ、ボルト25とナット26で一体化して形成されている。
【0013】
目皿21は、上部円筒部12の内径よりも小径の金属製の円板に、例えば直径10mm程度の通孔21aを多数形成したもので、これら通孔21aを介して対象ガスが流通する。金網22は、吸着剤14がガスに同伴して噴出しないようにするもので、目皿21と略同一径の円形に形成され、吸着剤14の大きさにより、そのメッシュサイズを適宜選択して用いられる。金網22は、メッシュサイズが異なるものを複数枚重ねて用いることもでき、また、合成繊維フィルタを用いることもできる。
【0014】
パッキン23は、上部円筒部12の内径よりも大径のリング状に形成され、押え板20を上部円筒部12に上方から挿入したときに、外周縁23aが上部円筒部12の内周壁に沿って上方に立ち上がり、上部円筒部12の内周壁に密着して押え板20の外周を気密に保持する。リング部材24は、パッキン23の下面に装着され、目皿21,金網22,パッキン23を一体化させるために設けられるもので、外径は目皿21と同径に形成され、内径は通孔21aを塞がない程度に形成されている。さらに、リング部材24の外周縁には、上部円筒部12の内周壁に沿って下方に延びるガイド片24aが設けられている。
【0015】
また、上部円筒部12の下部内周壁には、内周側に突出する複数のストッパ12cが設けられており、このストッパ12cにガイド片24aの下端が当接することによって押え板20の下降限が規制されている。
【0016】
前記上部円筒部12の上端開口部12aの外周にはフランジ部12bが設けられ、該フランジ部12bに開口部12aを閉塞する閉塞板30がガスケットを介して載置され、ボルト・ナットによって固定されている。閉塞板30には、中央部にガス配管の接続口30aが設けられると共に、外周部にねじ部材40が設けられている。このねじ部材40は、閉塞板30に設けられた挿通孔30b及び該挿通孔30bの閉塞板30上面に設けられた雌ねじ部材31を貫通しており、球面状に形成した先端部40aが前記押え板20を吸着剤14側に押圧するように形成されている。また、雌ねじ部材31には、閉塞板30から外側上方に突出したねじ部材40の基端側を覆う袋ナット41が着脱可能に取り付けられている。
【0017】
雌ねじ部材31は、閉塞板30に固着される円盤状の台座部31aと、該台座部31aの中央から突出する筒状部31bとを備えた断面ハット状に形成され、中心部には前記ねじ部材40が螺合する雌ねじ孔31cが形成されるとともに、筒状部31bの外周には前記袋ナット41を螺着する雄ねじ部31dが形成されている。また、台座部31aの上面には、袋ナット41の端面との間をシールするシールリング32が設けられている。
【0018】
ねじ部材40は、前記球面状に形成した先端部40aを有する雄ねじ部40bと、該雄ねじ部40bの基端に形成された角軸部40cとを備えている。このねじ部材40は、角軸部40cに係合する治具を用いて締め付け方向に回動させることにより、雄ねじ部40bが雌ねじ部材31の雌ねじ孔31cに螺合していることからねじ部材40が下降し、先端部40aが押え板20の上面に当接して押え板20を吸着剤14の上面に向けて押圧する。
【0019】
このように形成された吸着筒10では、PSA装置の運転に伴う吸着筒10内への急激なガスの出入りにより、吸着剤14が揺動して充填密度が高くなり、吸着剤14の充填高さが低くなったときに、袋ナット41を雌ねじ部材31から取り外し、ねじ部材40を締め付け方向に回動させてねじ部材40を下降させることにより、先端部40aで押え板20を吸着剤14側に押圧する。
【0020】
これにより、閉塞板30を取り外すことなく押え板20を吸着剤14の上面に押圧することができ、短い時間で簡単にメンテナンスを行うことができる。また、押え板20と吸着剤14との間や、押え板20と円筒部12の内周壁との間に隙間が生じないことから、吸着剤14が隙間を揺動して粉化したり、ガス流れに分布が発生してガス濃度が不安定になったりすることがなく、所望の製品ガスを安定して供給することができる。
【0021】
また、通常の使用時には、閉塞板30から外側に突出したねじ部材40を袋ナット41で覆い、雌ねじ部材31の台座部31aと袋ナット41の端面との間にシールリング32を設けて気密に保持しているので、挿通孔30bや雌ねじ孔31cを介してガスが外部に漏れることはない。さらに、押え板20にガイド片24aを設けたことにより、押え板20が傾くことを抑制でき、押え板20と上部円筒部12との間に隙間が生じることがない。また、ガイド片24aがストッパ12cに当接することによって押え板20の下降限が規制され、押え板20が鏡部11aまで下降することを防止できる。
【0022】
さらに、上部スクリーンとなる押え板20をねじ部材40で押圧するので、自重あるいはセラミックボールの重量で吸着剤上面に押圧するものに比べて上部スクリーン部分を大幅に軽量化できるとともに、下部円筒部13上端の下部スクリーンから上部円筒部12内まで吸着剤14を充填することにより、吸着筒10の小型化も図れる。
【0023】
図5及び図6は、本発明の第2,第3形態例をそれぞれ示す要部拡大断面図で、第1形態例と同様の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0024】
図5に示される第2形態例では、雌ねじ部材31には、前記雌ねじ孔31cに代えてねじ部材40を挿通する挿通孔31eを設けるとともに、閉塞板30にねじ部材40が螺合する雌ねじ孔30cを形成したものである。
【0025】
図6に示される第3形態例では、閉塞板30に設けた挿通孔30dとねじ部材42との間を、ねじ部材42に装着した環状シール材43によって気密に保持している。これに伴って前記袋ナット41が不要となることから、雌ねじ部材33は中央部の雌ねじ孔33aを設けた円板状に形成され、ねじ部材42には環状シール材43を装着するための環状凹溝が形成されている。また、雌ねじ孔33aに螺合するねじ部材42の雄ねじ部42aは、上方の基端部側に設けられ、環状シール材43を装着する中間部は雄ねじを設けない軸部としている。
【0026】
さらに、本形態例に示すねじ部材42は、その先端部を押え板20に設けた貫通孔20aから吸着剤14側に突出させるとともに、先端部の雄ねじ部に貫通孔20aより大きなナット44を螺着して押え板支持部材とし、ナット44を押え板20の吸着剤側面に当接させて押え板20を支持するようにしている。
【0027】
なお、前記ねじ部材の設置数は、上部円筒部の内径等の条件に応じて任意に設定することができるが、押え板を均一に押圧するためには、3本以上のねじ部材を同一円周上に等間隔で配置することが好ましい。また、ねじ部材の長さが同一ならば、閉塞板から突出したねじ部材の状態によって押え板の上下方向位置や傾きの有無を確認することができる。
【0028】
さらに、上述の形態例は、筒体の上下部に鏡部を有する吸着筒を用いて説明したが、本発明はこれに限らず、鏡部を備えず、筒体の上下部の径が筒体の胴径と等しい略円柱状の吸着筒においても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1形態例を示す吸着筒の一部断面正面図である。
【図2】同じく吸着筒上部の拡大断面図である。
【図3】同じくねじ部材の装着状体を示す拡大断面図である。
【図4】同じく押え板の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の第2形態例を示す吸着筒の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第3形態例を示す吸着筒の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…吸着筒、11…筒体、11a…鏡部、12…上部円筒部、12a…開口部、12b…フランジ部、12c…ストッパ、13…下部円筒部、14…吸着剤、20…押え板、20a…貫通孔、21…目皿、22…金網、23…パッキン、24…リング部材、30…閉塞板、30a…接続口、30b…挿通孔、30c…雌ねじ孔、30d…雌ねじ孔、30d…挿通孔、31…雌ねじ部材、31a…台座部、31b…筒状部、31c…雌ねじ孔、31d…雄ねじ部、31e…挿通孔、32…シールリング、33…雌ねじ部材、33a…雌ねじ孔、40…ねじ部材、40a…先端部、40b…雄ねじ部、40c…角軸部、41…袋ナット、41a…雌ねじ部、42…ねじ部材、43…環状シール材、44…ナット
【出願人】 【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦

【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦


【公開番号】 特開2008−662(P2008−662A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171169(P2006−171169)