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【発明の名称】 ゴルフボールの製造方法
【発明者】 【氏名】永沢 裕之

【氏名】樋口 博士

【氏名】青柳 元喜

【氏名】新井 大助

【要約】 【課題】

【構成】本発明は、コアと1層以上のカバー層とを有するゴルフボールの製造方法であって、上記カバー層は溶融したカバー樹脂材料を射出することにより形成されるものであり、上記カバー層のうち少なくとも1層のカバー樹脂材料として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物及び(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを含有し、これらの組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50である単一樹脂配合物を用い、上記カバー樹脂材料中に、上記(B)成分中のイソシアネート基の総数のうち10〜99%が未反応状態で残存した状態で、上記カバー樹脂材料を射出することを特徴とするゴルフボールの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと1層以上のカバー層とを有するゴルフボールの製造方法であって、上記カバー層は溶融したカバー樹脂材料を射出することにより形成されるものであり、上記カバー層のうち少なくとも1層のカバー樹脂材料として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物及び(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを含有し、これらの組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50である単一樹脂配合物を用い、上記カバー樹脂材料中に、上記(B)成分中のイソシアネート基の総数のうち10〜99%が未反応状態で残存した状態で、上記カバー樹脂材料を射出することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【請求項2】
上記カバー樹脂材料を射出成形機により射出する際、該カバー樹脂材料の供給部から射出成形機の内部に亘って、不活性ガス又は低露点エアーを充填することにより、上記(B)成分中のイソシアネート基の未反応状態を保つようにした請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項3】
上記カバー樹脂材料の各成分の組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜30:8〜50である請求項1又は2記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項4】
上記カバー樹脂配合物の210℃におけるメルトマスフローレート(MFR)値が5g/10min以上である請求項1、2又は3記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項5】
上記カバー樹脂材料にリサイクル樹脂材料を含有させた請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項6】
上記カバー層を成形したゴルフボールを、150℃以下の温度環境及び/又は高湿度環境の下、所定時間にて後処理する請求項1〜5のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項7】
上記の処理環境が、下記の(i)〜(iv)のうち1つから選ばれる請求項6記載のゴルフボールの製造方法。
(i)120℃以下の熱源下、
(ii)80℃以下相対湿度50%以上の恒温恒湿槽内、
(iii)80℃以下の温水中、及び
(iv)25℃以下の水中
【請求項8】
上記の処理時間が5時間を超えないものである請求項7記載のゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の熱可塑性ポリウレタン材料をカバー材料として用い、コアの周囲に射出してゴルフボールを製造する製造方法に関し、更に詳述すると、反発性が高く、スピン性能に優れ、しかも耐擦過傷性に優れると共に、流動性、生産性に優れたゴルフボールを得ることができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフボールのカバー材料としてポリウレタン材料を用いることが注目されている。ポリウレタン材料は成形物の成形方法の観点から、熱硬化性ポリウレタン材料と熱可塑性ポリウレタン材料に大きく分けられている。前者の熱硬化性ポリウレタン材料の成形物はイソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーと、ポリオール、ポリアミンといった硬化剤の液状原料とを加熱混合し、これを直接金型に流し込み加熱してウレタン硬化反応を生じさせることで得ることができる。
【0003】
上記のような熱硬化性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールの提案は数多くなされており、例えば、特許文献1:米国特許第5334673号明細書、特許文献2:同6117024号明細書、特許文献3:同6190268号明細書などに記載されている。熱硬化性ポリウレタン材料の成形方法については、例えば特許文献4:米国特許5006297号明細書、特許文献5:同5733428号明細書、特許文献6:同5888437号明細書、特許文献7:同5897884号明細書、特許文献8:同5947843号明細書などに記載されている。
【0004】
熱硬化性ポリウレタン材料の成形物は、加熱による可塑性がないために、原料および成形品のリサイクルを行うことはできない。また、熱硬化性ポリウレタン材料の成形物は、加熱硬化工程および冷却工程が長時間であること、原料の加熱反応性が高く不安定なため、成形時間のコントロールが非常に困難であることから、ゴルフボールカバーのような特殊な成形物(芯材の周囲に被覆する成形物)に適用した場合の生産性は効率的ではないとされる。
【0005】
一方、後者の熱可塑性ポリウレタン材料の成形物は、直接原料を反応させて成形物を得るのではなく、前述の熱硬化性ポリウレタン材料とはやや異なった原料と製造法を用いることで合成された線状ポリウレタン材料が成形に用いられる。このようなポリウレタン材料は熱可塑性があり、熱可塑化したポリウレタン材料は冷却することで固まる性質を持つ。よって、このようなポリウレタン材料は射出成形機を用いた成形が可能である。熱可塑性ポリウレタン材料の射出成形は成形時間が熱硬化性ポリウレタン材料の成形時間に比べて非常に短く、また精密成形に適しているので、ゴルフボールカバーの成形法として最適である。また、熱可塑性ポリウレタン材料はリサイクルが可能であり地球環境にも優しい。特許文献9:米国特許3395109号明細書、特許文献10:同4248432号明細書、特許文献11:同4442282号明細書などでは、熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールの提案がなされている。
【0006】
しかしながら、従来の熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールカバーは、打感、コントロール性、反発性、アイアン打撃時の耐擦過傷性の全てを満足するものではなかった。
【0007】
これに対し、特許文献12:特開平9−271538号公報には反発性の高い熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールカバーが記載されている。しかし、このゴルフボールカバーも、アイアン打撃時の耐擦過傷性の点では十分でなかった。
【0008】
また、特許文献13:特開平11−178949号公報には熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート化合物との反応生成物を主成分とし、アイアン打撃時の耐擦過傷性が比較的良好なゴルフボールカバーが記載されている。このカバーでは、添加剤としてブロックジイソシアネート、イソシアネート二量体といったイソシアネート化合物が熱可塑性ポリウレタン材料に添加されている。添加方法としては押出機を用いた加熱溶融混合時や射出成形時に添加することで、成形時に反応させるようにしている。
【0009】
しかし、上記特開平11−178949号公報のカバーの成形においては、イソシアネート化合物の取り扱いが水分による失活のために難しく、安定した反応生成物を得ることが困難であった。また、吸湿に強いブロックイソシアネートは熱により解離した際のブロック剤の臭気が強く、カバーの成形には不向きであった。更に、イソシアネート化合物がパウダー状や溶液状である場合、熱可塑性ポリウレタン材料への添加量のコントロールが難しく、カバー物性のコントロールが困難であった。しかも、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート化合物との融点の差、溶融粘度の差から成形機内でのすべり現象が生じ、十分な混練ができないこともあった。上記公報記載の技術では、以上のことが原因でカバー材料における水分の影響や添加剤添加量のコントロールが不十分となり、その結果、耐擦過傷性の改良効果の点で十分に満足できるゴルフボールカバーを得ることはできなかった。
【0010】
更に、上記特開平11−178949号公報に記載されている好ましい熱可塑性ポリウレタン材料は脂肪族イソシアネートをベースとしたものであるが、この熱可塑性ポリウレタン材料はイソシアネートとの反応性が非常に大きく反応のコントロールが困難であるために、射出成形に用いる前にゲル化を生じやすく十分な可塑性を確保できないという問題や成形中にゲル化することがあるという問題、リサイクル樹脂がゲル化のために再生不能になることがあるという問題などを有していた。そして、これらの問題のため、上記公報に記載の技術を実用化することは困難であった。
【0011】
一方、特許文献14:特公昭58−2063号公報(米国特許4347338号明細書)には、二個以上のイソシアネート基を持つ化合物をイソシアネート基と反応しない熱可塑性樹脂と混和し、得られた混和物を熱可塑性ポリウレタン材料に配合し、成形機に供して成形する熱硬化性ポリウレタン成形品の製造法が記載されている。しかし、上記公報記載の技術は、耐溶剤性と連続的な繰返し磨耗に対しての改良のみを目的としており、該公報には、上記成形材料をゴルフボールのカバー材料として使用することは示されていない。ゴルフボールのカバー材料としては、反発性、飛距離、スピン性、コントロール性、打感、耐擦過傷性、耐カット性、耐変色性といったゴルフボールに必要な種々の特性を満たす材料が要望されている。
【0012】
また、特許文献15:特開2002−336378号公報には、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート混合物からなるカバー材を用いたゴルフボールが記載され、当該カバー材はリサイクル可能であり、かつ反発性が高く、しかも耐擦過傷性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料である。このカバー材は、熱可塑性ポリウレタンの生産性の良さと熱硬化性ポリウレタン並みの物性発現の両立を達成せしめると同時にイソシアネート化合物の可塑化効果により熱可塑性ポリウレタン材料の流動性を向上させ、生産性も向上させることができるという点で優れた手法である。しかし、上記の手法では、イソシアネート混合物を成型機内に直接投入することによる焼け異物の発生や、ドライブレンドという手法を用いるために配合比率にばらつきがあり、均一性が良くなく、成形の不安定さを引き起こすという問題が生じると同時に、イソシアネート混合物中のイソシアネート化合物と、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂との組成比が決まっているため、添加したいイソシアネート化合物の量及び熱可塑性樹脂の量、更には種類を自由に選択することは困難であった。
【0013】
更に、特許文献16:特開2002−336380号公報には、高分子ポリオールとして平均分子量1500以上のポリエーテルポリオールを含み反発弾性率40%以上の熱可塑性ポリウレタン材料と、特定のイソシアネート混合物とを配合した材料をカバー材に用いたゴルフボールが記載されているが、上記特許文献15における場合と同様、当該カバー材を成形機内に投入することによる焼け異物の発生や、成形の不安定さ、更には、イソシアネート化合物の添加量や種類の選択が制限されるなどの不都合があった。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5334673号明細書
【特許文献2】米国特許第6117024号明細書
【特許文献3】米国特許第6190268号明細書
【特許文献4】米国特許第5006297号明細書
【特許文献5】米国特許第5733428号明細書
【特許文献6】米国特許第5888437号明細書
【特許文献7】米国特許第5897884号明細書
【特許文献8】米国特許第5947843号明細書
【特許文献9】米国特許第3395109号明細書
【特許文献10】米国特許第4248432号明細書
【特許文献11】米国特許第4442282号明細書
【特許文献12】特開平9−271538号公報
【特許文献13】特開平11−178949号公報
【特許文献14】特公昭58−2063号公報
【特許文献15】特開2002−336378号公報
【特許文献16】特開2002−336380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、反発性が高く、しかも耐擦過傷性に優れ、かつ流動性、生産性に優れたゴルフボールを得ることができるゴルフボールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、射出成形法により、コアの周囲に1層以上のカバー層を成形してゴルフボールを製造する際、上記カバー樹脂材料として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物及び(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50で配合した樹脂混合物を主材として用い、上記(B)成分中のイソシアネート基の総数のうち10〜99%が未反応状態でカバー樹脂材料の射出成形を行うことにより、カバー樹脂材料の流動性が高く、イソシアネート混合物を成型機内に直接投入することによる樹脂焼け等の発生もなく、成形の環境も安定していることを見出した。また、上記の射出成形により得られたカバー成形物(カバー層)を外層に有するゴルフボールにおいては、反発性が高く、耐擦過傷性に優れていることを知見した。
【0017】
従って、本発明は、下記のゴルフボールの製造方法を提供する。
〔1〕コアと1層以上のカバー層とを有するゴルフボールの製造方法であって、上記カバー層は溶融したカバー樹脂材料を射出することにより形成されるものであり、上記カバー層のうち少なくとも1層のカバー樹脂材料として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物及び(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを含有し、これらの組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50である単一樹脂配合物を用い、上記カバー樹脂材料中に、上記(B)成分中のイソシアネート基の総数のうち10〜99%が未反応状態で残存した状態で、上記カバー樹脂材料を射出することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
〔2〕上記カバー樹脂材料を射出成形機により射出する際、該カバー樹脂材料の供給部から射出成形機の内部に亘って、不活性ガス又は低露点エアーを充填することにより、上記(B)成分中のイソシアネート基の未反応状態を保つようにした〔1〕記載のゴルフボールの製造方法。
〔3〕上記カバー樹脂材料の各成分の組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜30:8〜50である〔1〕又は〔2〕記載のゴルフボールの製造方法。
〔4〕上記カバー樹脂配合物の210℃におけるメルトマスフローレート(MFR)値が5g/10min以上である〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載のゴルフボールの製造方法。
〔5〕上記カバー樹脂材料にリサイクル樹脂材料を含有させた〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
〔6〕上記カバー層を成形したゴルフボールを、150℃以下の温度環境及び/又は高湿度環境の下、所定時間にて後処理する〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
〔7〕上記の処理環境が、下記の(i)〜(iv)のうち1つから選ばれる〔6〕記載のゴルフボールの製造方法。
(i)120℃以下の熱源下、
(ii)80℃以下相対湿度50%以上の恒温恒湿槽内、
(iii)80℃以下の温水中、及び
(iv)25℃以下の水中
〔8〕上記の処理時間が5時間を超えないものである〔7〕記載のゴルフボールの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゴルフボールの製造方法は、使用されるカバー樹脂材料の流動性が高く、ゴルフボールの生産性を高めたものであり、生産されたゴルフボールは、反発性が高く、スピン性能、耐擦過傷性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールの製造方法は、コアの周囲に溶融したカバー樹脂材料を射出することによりカバー層を成形し、コアと1層以上のカバー層とを有するゴルフボールを得るものである。本発明では、上記カバー樹脂材料として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物及び(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを含有し、これらの組成比が、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50である単一樹脂配合物を用いることを特徴とする。
【0020】
上記カバー樹脂材料は、上記のとおり、熱可塑性ポリウレタンを主体としたものであり、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)ポリイソシアネート化合物、または(C)熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを含有するものである。
【0021】
上記の(A)成分と(B)成分とを合わせた合計重量については、特に制限はないが、カバー層全体の重量の60%以上、より好ましくは、70%以上である。本発明に用いられる(A)成分、(B)成分及び(C)成分については、それぞれ以下に詳述する。
【0022】
上記(A)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤およびポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0023】
上記のポリエーテルポリオールとしては、例えば、環状エーテルを開環重合して得られるポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしては1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリ(テトラメチレングリコール)および/またはポリ(メチルテトラメチレングリコール)が好ましい。
【0024】
これらの長鎖ポリオールの数平均分子量としては1,500〜5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れた熱可塑性ポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,700〜4,000の範囲内であることがより好ましく、1,900〜3,000の範囲内であることが更に好ましい。
【0025】
なお、上記の長鎖ポリオールの数平均分子量とは、JIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0026】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブチレングリコールがより好ましい。
【0027】
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。但し、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0028】
上記(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとして最も好ましいものは、長鎖ポリオールとしてポリエーテルポリオール、鎖延長剤として脂肪族ジオール、ポリイソシアネート化合物として芳香族ジイソシアネートを用いて合成される熱可塑性ポリウレタンであって、上記ポリエーテルポリオールが数平均分子量1,900以上のポリテトラメチレングリコール、上記鎖延長剤が1,4−ブチレングリコール、上記芳香族ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのものであるが、特にこれらに限られるものではない。
【0029】
また、上記熱可塑性ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は、上記した反発性、スピン性能、耐擦過傷性および生産性などの種々の特性がより優れたゴルフボールを得ることができるよう、好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖延長剤とを反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95〜1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
【0030】
上記(A)成分の熱可塑性ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤およびポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0031】
具体的な(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとし、市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT8295,同T8290,同T8260(いずれもディーアイシーバイエルポリマー社製)などが挙げられる。
【0032】
次に、上記(B)成分として用いられるポリイソシアネート化合物については、単一な樹脂配合組成物中において、少なくとも一部が、一分子中の全てのイソシアネート基が未反応状態で残存していることが必要である。即ち、単一な樹脂配合物中に、1分子中の全てのイソシアネート基が完全にフリーな状態であるポリイソシアネート化合物が存在すればよく、このようなポリイソシアネート化合物と、一分子中の一部がフリーな状態のポリイソシアネート化合物とが併存していてもよい。
【0033】
このポリイソシアネート化合物としては、特に制限はないが、各種のイソシアネートを採用することができ、具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。上記のイソシアネートの群のうち、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを採用することが、(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとの反応に伴う粘度上昇等による成形性への影響と、得られるゴルフボールカバー材料の物性とのバランスとの観点から好適である。
【0034】
また、上記(C)成分である、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーは、カバー樹脂材料の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールカバー材として要求される諸物性を高めるなどの点から本発明のカバー材料の成分として有効に用いられる。この熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレンブロックエラストマー、水添スチレンブタジエンゴム、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体又はその変性物、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体又はその変性物、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体又はその変性物、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレン及びナイロン樹脂から選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。特に、生産性を良好に維持しつつ、イソシアネート基との反応により、反発性や耐擦過傷性が向上することなどの理由から、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリアセタールを採用することが好適である。
【0035】
本発明において、上記(A)、(B)及び(C)成分の組成比については、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50であることが必要とされ、より好ましくは、(A):(B):(C)=100:2〜30:8〜50(質量比)とすることである。このように上記(A)〜(C)成分の配合を適宜調整することにより、カバー樹脂材料の流動性を高め、生産性を高めると共に、カバー樹脂材料の諸特性を一層向上させて、反発性や耐擦過傷性を高めることができる。
【0036】
本発明では、(A)成分と(B)成分、更に加えて(C)成分を混合して樹脂配合物を作成するが、その際、(B)成分中のイソシアネート基の全部または一部が未反応状態で残存するような条件を選択する必要がある。例えば、窒素ガス等の不活性ガスや真空状態で混合すること等の処置を講ずる必要がある。この樹脂配合物は、その後に金型に配置されたコア周囲に射出成形されることになるが、その取り扱いを円滑かつ容易に行う理由から、長さ1〜10mm、直径0.5〜5mmのペレット状に形成することが好ましい。この樹脂ペレット中には、未反応状態のイソシアネート基が残存しており、コアの周囲に射出成形している間やその後のアニーリング等の後処理により、未反応イソシアネート基は(A)成分や(C)成分と反応して架橋物を形成する。また、上述した樹脂配合物のペレット化は、特に制限はないが、例えば、二軸スクリュー型押出機などを用いて行うことができる。
【0037】
更に、上記のカバー樹脂材料には、上記(A)〜(C)成分のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0038】
上記樹脂配合物の210℃におけるメルトマスフローレート(MFR)値は、特に制限はないが、流動性及び生産性を高める点から、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは、6g/10min以上である。樹脂配合物のメルトマスフローレートが少ないと流動性が低下してしまい、射出成形時に偏芯の原因となるだけでなく、成形可能なカバー厚みの自由度が低くなるおそれがある。なお、上記のメルトマスフローレートの測定値は、JIS−K7210(1999年版)に準拠した測定値である。
【0039】
カバー樹脂材料の形態としては、上記(A)〜(C)成分及び必要に応じて各種の添加剤を配合した樹脂配合物を二軸スクリュー型押出機等の各種の公知の混練機により、ペレット化して用いることが好ましい。本発明では、上記各種の混練機により、上記(A)〜(C)成分等を混練する際や混練後に、水分と隔離した雰囲気下にて冷却、ペレタイズし、反応未完了の状態にてペレット化することが本発明の効果を十分に発揮させるためにも好適に採用することができる。
【0040】
本発明では、上記のとおり、カバー樹脂材料をコアの周囲に射出成形する方法であるが、使用される射出成形機は、通常ゴルフボールの成形に用いられる公知の射出成形機を採用することができる。また、射出成形の成形温度については、熱可塑性ポリウレタン等の種類によって異なるが、通常150〜250℃の範囲である。
【0041】
本発明では、射出成形の際、カバー樹脂材料に活性イソシアネート基が残存している状態にてゴルフボールの製造が行われるものである。即ち、本発明の製造方法は、射出成形後にゴルフボールに求められる諸物性を得るために十分な架橋効果を発現させる目的により、可能な限り、(B)成分中のイソシアネート基を不活性にする要因を排除するようにしたものである。上記のイソシアネート基の失活は、ゴルフボールの諸物性に悪影響を与えるのみでなく、射出成形時の射出圧力が変動するなど、生産性を不安定にする要因になり、ゴルフボールの製造方法の上では好ましくない。
【0042】
上記イソシアネート基の失活を防止する手段として、カバー樹脂材料の供給部から搬送経路を経由して射出成形機の内部に亘って、樹脂搬送時の圧送媒体として、窒素ガス等の不活性ガス又は低露点エアーを充填することが好適に採用される。この手段を用いることにより、イソシアネート基の失活の原因となる水分を除去し、イソシアネート基の未反応状態を維持すること、即ち、イソシアネート基の反応を進行せず、イソシアネート基の失活を防ぐことができる。
【0043】
更には、微量に存在する水分がイソシアネート基と反応して二酸化炭素ガスが発生したり、加熱によりポリイソシアネート化合物が気化するおそれがあるので、かかる事態を防止すべく、使用される金型の内部に真空排気システムを導入することも可能である。
【0044】
また、上記イソシアネート基の失活を防止する手段として、真空処理等により低湿度環境下で射出成形を行なうこともできる。低湿度環境下で射出成形を行なうことにより、樹脂が金型内部に充填される前のイソシアネート基の反応の進行を抑制し、ある程度イソシアネート基が遊離した状態の形態のポリイソシアネートを樹脂成形物に含めることで、ゴルフボールの生産性を高め、生産されたボールの反発性や耐擦過傷性等の諸特性を向上させることができる。
【0045】
なお、カバー樹脂材料中における未反応状態のポリイソシアネート化合物の存在を確認する手法としては、該ポリイソシアネート化合物のみを選択的に溶解させる適当な溶媒により抽出し、確認する手法等考えられるが、簡便な方法としては不活性雰囲気下での示差熱熱重量同時測定(TG−DTA測定)により確認する手法が挙げられる。例えば、本発明で用いられる樹脂配合物(カバー材料)を窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minにて加熱していくと、約150℃程度から緩やかなジフェニルメタンジイソシアネートの重量減少を確認することができる。一方、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート混合物との反応を完全に行った樹脂サンプルでは約150℃からの重量減少は確認されず、230〜240℃程度からの重量減少を確認することができる。
【0046】
上記(B)成分中のイソシアネート基の総数のうち10〜99%が活性イソシアネート基であることが必要であり、好ましくは、50〜99%、更に好ましくは、70〜99%が未反応イソシアネート基であることが必要である。
【0047】
上記カバー樹脂材料を射出成形した後、成形したカバー層の外表面に対して後処理を行って架橋反応を更に進行させ、ゴルフボールカバーとしての特性を更に改良することができる。
【0048】
なお、上記架橋反応としては、熱可塑性ポリウレタン組成物中の残存OH基に残存イソシアネート基が反応して新たにウレタン結合を形成したり、熱可塑性ポリウレタンのウレタン基に残存イソシアネート基の付加反応が生じ、アロファネート結合を形成したりすることが考えられる。特に、高湿度又は水中・温水中等の条件下では、尿素結合やビゥレット結合を形成させる可能性があり、耐擦過傷性改良のためには望ましい条件である。
【0049】
上記熱処理の条件としては、特に制限はないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、最も好ましくは80℃以下で温度処理を行うことができる。このように熱処理することにより架橋効率を上げることができる。この場合、熱処理は、高温であるほど短時間にて架橋反応を終了させることができるが、過剰な熱処理はカバー層の劣化を促進する場合もあるので好ましくない。また、本発明に用いるカバー樹脂材料では、水分が存在する下では架橋反応を進行し、効果的な架橋を得る可能性があるので、必ずしも高温を必要とするものではない。
【0050】
製造物であるゴルフボールの構成として、例えば、コアとコアを被覆する中間層と中間層を被覆するカバーとにより構成し、かかる中間層をアイオノマー樹脂にて形成する場合には、熱処理条件を高温にしすぎるとアイオノマー樹脂のTi(クラスター融点)を超えてしまう場合があり、ゴルフボールの反発性が低下する場合がある。また、アイオノマー樹脂のTm(融点)を超えると中間層が変形してしまう場合がある。このため、Tiよりも低温で処理することが望ましい。
【0051】
また、熱処理方法としては、特に制限はないが、例えば、オーブン中で加熱処理をしたり、或いは、射出工程中に熱源個所を設置し、そのライン上を通過させることにより行うことができる。また、水分の存在下で処理を行うために、80℃以下相対湿度50%以上の恒温・恒湿槽等を設けたり、スチーム発生箇所を設置し、そのライン上を通過させることにより実施することもできる。或いは、25℃以下の水槽、80℃以下の温水層等を設け、その中にて浸漬処理を実施することができる。熱処理時間については、処理温度との相関があるので必ずしも一義的には決定されないが、熱処理効果が発現される範囲内で適宜設定すれば良い。効果的な処理効果を得るためには、熱処理時間を30分以上とすることが好ましく、より好ましくは1時間以上、最も好ましくは2時間以上である。但し、必要以上の熱処理は好ましくなく、上限として、好ましくは15時間以下、より好ましくは8時間以下、最も好ましくは5時間以下であるが、これらの時間の範囲に限定されるものではない。水分の存在や処理温度、更には処理時間との兼ね合いにより、反発性等のカバー成形物の樹脂物性に悪影響を及ぼす場合があるので、熱処理については、目的とする諸物性が確実に得られるために、最適条件を適宜設定する必要がある。
【0052】
本発明の製造方法においては、射出成形時に発生するランナーを粉砕して再利用することもできる。上記のランナーとは、溶融樹脂を射出成形時に均一に送り込むための通り道に固まってできた余分な樹脂であり、通常、熱可塑性樹脂成形品では粉砕して樹脂に混ぜ込み再利用することができる。本発明において、リサイクル樹脂材料を配合する場合には、ランナー樹脂等が成形後に時間経過に伴い架橋反応が進行し、粘度が上昇する事情をあらかじめ考慮して、ランナー樹脂等の反応完了前に投入することが望ましい。また、ランナー等の粉砕物をリサイクル樹脂材料として再利用する際のリペレット化工程の際には、上記と同様のイソシアネート基の失活防止措置を講じることが望まれる。
【0053】
本発明のゴルフボールを構成する1層以上のカバー層は、その少なくとも1層が上記熱可塑性ポリウレタン組成物にて形成されるものであるが、上記熱可塑性ポリウレタン組成物にて形成されたカバー層の表面硬度としては、デュロメータD型硬度で通常30〜90、好ましくは35〜85、より好ましくは40〜80、更に好ましくは45〜75である。カバー層の表面硬度が低すぎるとドライバー打撃時のスピン量が多くなり飛距離が低下する場合がある。また、カバー層の表面硬度が高すぎるとフィーリングが悪くなると共にウレタン素材の反発性能、耐久性能に劣る場合がある。
【0054】
なお、本発明においてデュロメータD型硬度とは、JIS K7215に準拠したタイプDデュロメータによる測定硬度をいう。
【0055】
また、上記カバー層の反発弾性率としては通常35%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは47%以上である。熱可塑性ポリウレタンはもともとそれ程反発性に優れたものではないため、上記反発弾性率は厳密に選択することが好ましい。カバー層の反発弾性率が低すぎるとゴルフボールの飛距離が大幅に低下する場合がある。また、カバー層の反発弾性率が高すぎると100ヤード以内のコントロールを必要とするショットやパッティングで初速度が高くなりすぎ、ゴルファーのフィーリングに合わないことがある。なお、本発明において反発弾性率とは、JIS K7311に準拠した反発弾性率をいう。
【0056】
本発明の製造方法に使用されるコアについては特に制限はなく、例えばツーピースボール用ソリッドコア、複数の加硫ゴム層を持つソリッドコア、複数の樹脂層を持つソリッドコア、糸ゴム層を有する糸巻きコアといった種々のコアが使用可能である。コアの外径、重量、硬度、材質等についても制限はない。
【0057】
また、本発明の製造方法において、ゴルフボールを中間層を含む構成とする場合、かかる中間層の硬度、材質、厚み等にも特に制限はない。中間層とカバー間の密着性改良のため、必要に応じてプライマー層を設けることも可能である。
【0058】
なお、上記カバー層の厚さは0.1〜5.0mmの範囲とすることが好ましい。カバー層は1層に限らず、2層以上の多層構造に形成することができるが、多層構造に形成する場合はカバー全体の厚さを上記範囲内とすることができる。
【0059】
本発明の製造方法により得られたゴルフボールは、ゴルフ規則に従った直径および重量に形成されることが好ましく、通常、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成されるが、直径は42.67〜42.9mmであることが好ましい。また、980N(100kg)荷重時のボールの変形量としては通常2.0〜4.0mm、特に2.2〜3.8mmであることが適当である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0061】
〔実施例1〜5,比較例1〜3〕
コア組成
ポリブタジエンゴム 100質量部
アクリル酸亜鉛 24.5質量部
酸化亜鉛 12質量部
ジクミルパーオキサイド 1質量部
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩 1質量部
【0062】
上記組成のコア材料を混練した後、155℃で20分間加硫成形することにより、直径38.5mmのツーピースソリッドゴルフボール用ソリッドコアを得た。なお、ポリブタジエンゴムとしては日本合成ゴム(株)製BR01を用いた。得られたコアの比重は1.17g/cm3であり、980N(100kg)荷重を加えた時の変形量は3.4mm、USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した初速度は78.1m/sであった。
【0063】
実施例1〜5については、表1に示した各原料(単位:質量部)を二軸スクリュー型押出機により窒素ガス雰囲気下で混練りし、未反応イソシアネート基が残存する樹脂配合物を得た。この樹脂配合物は、長さ3mm、直径1〜2mmのペレット状であった。
【0064】
射出成形用金型内に前記ソリッドコアを配し、このコアの周囲に前記カバー材を射出成形することにより、厚さ2.1mmのカバーを有するツーピースゴルフボールを得た。また、カバー材の射出成形後に表中に示す条件にて後処理を施した。得られたゴルフボールを更に1週間室温に放置した後、ボール特性を評価した。
なお、カバー物性については、射出成形により得られた厚さ2mmのシートに100℃×8時間、アニール処理を施し、更に1週間室温に放置した後にカバー物性を測定した。結果を表1に示した。
【0065】
一方、比較例1及び2については、射出成形用金型内に前記ソリッドコアを配し、このコアの周囲に、熱可塑性ポリウレタンのペレットとイソシアネート混合物のペレットとを各々ドライブレンドしたものを射出成形することにより、厚さ2.1mmのカバーを有するツーピースゴルフボールを得た。比較例3については、熱可塑性ポリウレタンのみからなるペレットを単独で射出成形した。その後の処理は、上記実施例と同様に行われた。
【0066】
【表1】


【0067】
【表2】


【0068】
ポリウレタン1(熱可塑性ポリウレタン材料)
「パンデックスT8295」(ディーアイシーバイエルポリマー社製)
ポリウレタン2(熱可塑性ポリウレタン材料)
「パンデックスT8295」と「パンデックスT8290」とを質量比75/25で使用。いずれもディーアイシーバイエルポリマー社の製品。
ポリウレタン3(熱可塑性ポリウレタン材料)
「パンデックスT8260」と「パンデックスT8295」とを質量比50/50で使用。いずれもディーアイシーバイエルポリマー社の製品。
「パンデックスT8295」の説明:MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、樹脂硬度JIS−A「97」、反発弾性率44%
「パンデックスT8290」の説明:MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、樹脂硬度JIS−A「93」、反発弾性率52%
「パンデックスT8260」の説明:MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、デュロメータD型樹脂硬度「56」、反発弾性率45%
【0069】
イソシアネート混合物
クロスネートEM−30(大日精化工業社製イソシアネートマスターバッチ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート30%含有。マスターバッチベース樹脂はポリエステルエラストマー)
ポリイソシアネート化合物
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0070】
ポリエチレンワックス
「サンワックス161P」(三洋化成社製)
モンタンワックス
「リコワックスE」(クラリアント・ジャパン社製)
【0071】
熱可塑性エラストマー
熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(東レ・デュポン社製の「ハイトレル4001」)を使用。
【0072】
メルトマスフローレート(MFR)
JIS−K7210(試験温度210℃、試験荷重21N(2.16kgf))に従い測定した材料のメルトフローレート(またはメルトインデックス)。
【0073】
カバー層の表面硬度
JIS−K7215に準拠したデュロメータD型硬度を測定した。
【0074】
カバー材料の反発弾性
JIS−K7311に準拠した反発弾性率を測定した。
【0075】
ボール変形量(mm)
980N(100kg)荷重を加えた時のたわみ変形量を測定した。
【0076】
ボール初速度(m/s)
USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した。
【0077】
ボールの耐擦過傷性
ボールを23℃、13℃、0℃に各々保温するとともに、スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジを使用して、ヘッドスピード33m/sで各ボールを打撃し、打撃傷を以下の基準で目視にて評価した。
5点:傷がついていないか、ほとんど傷が目立たない。
4点:やや傷が見られるものの、ほとんど気にならない。
3点:表面がやや毛羽立っている。
2点:表面が毛羽立ったり、ディンプルが欠けたりしている。
1点:ディンプルが完全に削り取られてしまっている。
【0078】
ボールの生産性
良 好:量産において成型条件が安定であり、樹脂焼け等の発生が少ない。
やや難:量産において成型条件が不安定であり、樹脂焼け等の発生頻度が高い。
【出願人】 【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
【出願日】 平成19年8月7日(2007.8.7)
【代理人】 【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司

【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織

【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成

【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史


【公開番号】 特開2008−49152(P2008−49152A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−205093(P2007−205093)