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【発明の名称】 リハビリテーション用トレーニングシステム
【発明者】 【氏名】鴇田 守

【要約】 【課題】被験者のトレーニングの必要な筋を適切に特定することができるとともに、トレーニングの到達目標を適切に設定することができ、リハビリテーション効果を向上させることができるようにする。

【構成】被験者の生体データの測定及びトレーニングを行うトレーニング実施装置と、該トレーニング実施装置の測定した被験者の生体データを保管するデータ保管手段と、前記トレーニング実施装置の測定したリハビリテーションを実施する被験者の生体データと、前記データ保管手段に保管されている当該被験者の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成するメニュー作成手段とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被験者の生体データの測定及びトレーニングを行うトレーニング実施装置と、
(b)該トレーニング実施装置の測定した被験者の生体データを保管するデータ保管手段と、
(c)前記トレーニング実施装置の測定したリハビリテーションを実施する被験者の生体データと、前記データ保管手段に保管されている当該被験者の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成するメニュー作成手段とを有することを特徴とするリハビリテーション用トレーニングシステム。
【請求項2】
前記生体データは筋力のデータであり、前記メニュー作成手段は筋力の低下した筋を特定してリハビリテーションメニューを作成する請求項1に記載のリハビリテーション用トレーニングシステム。
【請求項3】
前記トレーニング実施装置は、人間の上肢又は下肢を模した構造を備える二関節アーム装置を備え、該二関節アーム装置によって、被験者の上肢又は下肢の筋力を測定するとともにトレーニングを行う請求項1に記載のリハビリテーション用トレーニングシステム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション用トレーニングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事故や疾病によって身体に障害を受けたり、病気や怪我などによって長期間の療養生活を送ったりした患者は、筋力が大きく低下しているので、健康な生活に復帰するためのリハビリテーションを受けて、筋力を回復するのが通例である。この場合、一人一人の患者に適したリハビリテーションメニューを作成し、該リハビリテーションメニューに従ってリハビリテーションを実施することが望ましい。
【0003】
そこで、患者に対して初期リハビリテーションを実施する際に患者の生体データを測定し、測定した生体データに基づいて、当該患者に適したリハビリテーションメニューを作成するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
該システムにおいては、初期リハビリテーションを実施する際に測定した患者の生体データに基づいて、リハビリテーション指導者が患者に最適な運動処方プログラムを作成し、該運動処方プログラムに従ってリハビリテーションを実施する。また、患者の生体データは、通信回線によって送信可能となっているので、端末さえあれば患者はどこにいても、リハビリテーションを実施することができる。
【特許文献1】特開2002−191718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のシステムにおいては、リハビリテーションが必要になった患者が初めて初期リハビリテーションを実施した際に測定した生体データに基づいて運動処方プログラムを作成するのであって、患者が健康なときに測定した生体データに基づいて運動処方プログラムを作成することができない。そのため、患者が健康な生活に復帰するのに最適なリハビリテーションを実施することができなかった。
【0006】
本発明は、前記従来のシステムの問題点を解決して、リハビリテーションが必要となる以前の被験者の生体データを測定して保管し、保管した生体データとリハビリテーションが必要となったときに測定した前記被験者の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成することによって、被験者のトレーニングの必要な筋を適切に特定することができるとともに、トレーニングの到達目標を適切に設定することができ、リハビリテーション効果を向上させることができるリハビリテーション用トレーニングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明のリハビリテーション用トレーニングシステムにおいては、被験者の生体データの測定及びトレーニングを行うトレーニング実施装置と、該トレーニング実施装置の測定した被験者の生体データを保管するデータ保管手段と、前記トレーニング実施装置の測定したリハビリテーションを実施する被験者の生体データと、前記データ保管手段に保管されている当該被験者の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成するメニュー作成手段とを有する。
【0008】
本発明の他のリハビリテーション用トレーニングシステムにおいては、さらに、前記生体データは筋力のデータであり、前記メニュー作成手段は筋力の低下した筋を特定してリハビリテーションメニューを作成する。
【0009】
本発明の更に他のリハビリテーション用トレーニングシステムにおいては、さらに、前記トレーニング実施装置は、人間の上肢又は下肢を模した構造を備える二関節アーム装置を備え、該二関節アーム装置によって、被験者の上肢又は下肢の筋力を測定するとともにトレーニングを行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リハビリテーション用トレーニングシステムは、リハビリテーションが必要となる以前の被験者の生体データを測定して保管し、保管した生体データとリハビリテーションが必要となったときに測定した前記被験者の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成するようになっている。これにより、被験者のトレーニングの必要な筋を適切に特定することができるとともに、トレーニングの到達目標を適切に設定することができ、リハビリテーション効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施の形態におけるリハビリテーション用トレーニングシステムの構成を示す図、図2は本発明の実施の形態におけるトレーニング実施システムの構成を示す図である。
【0013】
図1において、40は本実施の形態におけるリハビリテーション用トレーニングシステムであり、後述される被験者60の生体データとしての筋力を測定して保管するとともに、保管された筋力のデータと新たに測定した筋力のデータとを比較して、被験者60のリハビリテーションメニューを作成し、該リハビリテーションメニューに従って、前記被験者の筋力トレーニングを行うためのシステムである。ここで、被験者60は、何らかの原因によって筋力が低下した者、例えば、加齢により筋力が低下したり、事故や疾病によって身体に障害を受けたり、病気や怪我などによって長期間の療養生活を送ったりした者であって、リハビリテーションを実施して、低下した筋力を回復しようとする者であるが、いかなる者であってもよい。この場合、被験者60は、事前に、すなわち、リハビリテーションが必要となる以前に、リハビリテーション用トレーニングシステム40を使用して筋力を測定する。そして、測定された筋力のデータは、リハビリテーション用トレーニングシステム40によって保管される。後日、前記被験者60がリハビリテーションを実施する際には、新たに被験者60の筋力を測定し、これを保管されていたデータと比較して、リハビリテーションメニューを作成する。そして、該リハビリテーションメニューに従いながら、リハビリテーション用トレーニングシステム40を使用して、前記被験者60のリハビリテーション用トレーニングとしての筋力トレーニングが実施される。
【0014】
そして、前記リハビリテーション用トレーニングシステム40は、各地に点在するリハビリテーションセンタ、スポーツジム等のような被験者60が筋力トレーニングを実施する施設に配設されたトレーニング実施システム42、前記リハビリテーション用トレーニングシステム40の運営及び管理を行う者の管理センタ、コンピュータセンタ等に配設されたデータ保管手段としてのサーバ41、及び、被験者60の自宅、職場等に配設され、被験者60が操作する被験者操作端末45を有する。なお、トレーニング実施システム42及びサーバ41、並びに、該サーバ41及び被験者操作端末45は、図示されないネットワークによって、通信可能に接続されている。該ネットワークは、例えば、インターネットであるが、その他のネットワークであってもよく、無線又は有線の専用通信回線網又は公衆通信回線網、オンラインネットワーク、イントラネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等いかなる種類のネットワークを含むものであってもよい。
【0015】
また、前記リハビリテーション用トレーニングシステム40の運営及び管理を行う者は、例えば、病院等の医療機関、スポーツジムを運営する企業等であるが、いかなる種類の団体又は個人であってもよい。そして、被験者60は、前記リハビリテーション用トレーニングシステム40の運営及び管理を行う者と、前記リハビリテーション用トレーニングシステム40を利用するための契約をあらかじめ締結しておくものとする。なお、図に示される例において、トレーニング実施システム42の数は3つであり、被験者操作端末45の数は2つであるが、トレーニング実施システム42及び被験者操作端末45の数は、いくつであってもよく、任意に設定することができる。また、トレーニング実施システム42及び被験者操作端末45は、いかなる場所に配設されてもよい。
【0016】
ここで、前記トレーニング実施システム42は、図2に示されるように、被験者の生体データの測定及びトレーニングを行うトレーニング実施装置43と、メニュー作成手段ととしてのオペレータ端末44を有する。前記トレーニング実施装置43は、例えば、特願2005ー247243号によって提案されている二関節アーム装置を使用し、被験者60の筋力の測定及びトレーニングを行うことができる装置である。また、前記オペレータ端末44は、例えば、パーソナルコンピュータであり、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置から成る入力部、CRT、液晶ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置から成る表示部、CPU、MPU等の演算装置、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶装置、通信インターフェイス等を有する。前記オペレータ端末44は、トレーニング実施装置43及びサーバ41に通信可能に接続され、前記トレーニング実施装置43の上位装置として機能する。
【0017】
そして、前記筋力トレーニングを実施する施設に所属するトレーナ等の担当者は、オペレータ端末44を操作して、トレーニング実施装置43が測定した被験者60の筋力のデータ、すなわち、生体データを取得し、必要に応じて、前記サーバ41に送信して保管させる。また、前記担当者は、オペレータ端末44を操作して、サーバ41に保管された被験者60の生体データを取得し、新たに測定した前記被験者60の生体データと比較しながら、差分に基づいて前記被験者60に適したリハビリテーションメニューを作成することができる。さらに、前記担当者は、オペレータ端末44を操作して、リハビリテーションメニューに則した筋力トレーニングを実施するための動作を前記トレーニング実施装置43に行わせることができる。
【0018】
また、前記サーバ41は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、キーボード、マウス等の入力手段、CRT、液晶ディスプレイ等の表示手段、通信インターフェイス等を備えるコンピュータであり、被験者60の生体データを前記被験者60との契約によって定められた期間だけ保管する。なお、該期間は、契約の更新等によって延長することができる。また、前記生体データは、定期的又は不定期に追加してサーバ41に保管することができる。
【0019】
さらに、前記被験者操作端末45は、例えば、パーソナルコンピュータであり、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置から成る入力部、CRT、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等の表示装置から成る表示部、CPU、MPU等の演算装置、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶装置、通信インターフェイス等を有する。そして、被験者60は、被験者操作端末45からサーバ41にアクセスすることによって、自身の生体データを閲覧することができる。
【0020】
次に、前記トレーニング実施装置43の構成について詳細に説明する。
【0021】
図3は本発明の実施の形態におけるトレーニング実施装置の二関節アーム装置の構成を示す図、図4は本発明の実施の形態におけるアクチュエータの駆動シーケンスと力の方向を示す図である。
【0022】
図3において、10は本実施の形態におけるトレーニング実施装置43に含まれる二関節アーム装置であって、人間の上肢、すなわち、腕の部分を模した構造を有する。なお、前記二関節アーム装置10は、人間の下肢、すなわち、脚の部分を模した構造を有するものであってもよいが、ここでは上肢を模した構造を有するものである場合について説明する。
【0023】
そして、11は、上肢を模した構造の二関節アーム装置10の下膊(はく)に該当する第1リンクであり、12は、上肢を模した構造の二関節アーム装置10の上膊に該当する第2リンクである。また、13は、肩に該当するベースとしてのフレームであり、根本端部(図における上端部)が図示されない土台等に固定された固定部材33に固着されている。そして、前記フレーム13の先端部(図における下端部)には、肩関節に該当する第2関節部15を介して、第2リンク12の根本端部が回転可能に接続されている。さらに、第2リンク12の先端部には、肘(ひじ)関節に該当する第1関節部14を介して、第1リンク11の根本端部が回転可能に接続されている。
【0024】
また、16〜21はアクチュエータとしての第1アクチュエータ〜第6アクチュエータであり、22は前記第1リンク11に第1アクチュエータ16及び第2アクチュエータ17を固定する第1ブラケット、23は前記フレーム13に第5アクチュエータ20及び第6アクチュエータ21を固定する第2ブラケットである。そして、24〜31はワイヤであり、ワイヤ24は第2アクチュエータ17と図示されない第2リンク固定肘プーリとを連結し、ワイヤ25は第1アクチュエータ16と前記第2リンク固定肘プーリとを連結し、ワイヤ26は第3アクチュエータ18と図示されない第1リンク固定肘プーリとを連結し、ワイヤ27は第3アクチュエータ18と図示されないフレーム固定肩プーリとを連結し、ワイヤ28は第4アクチュエータ19と前記フレーム固定肩プーリとを連結し、ワイヤ29は第4アクチュエータ19と前記フレーム固定肩プーリとを連結し、ワイヤ30は第5アクチュエータ20と図示されない第2リンク固定肩プーリとを連結し、ワイヤ31は第6アクチュエータ21と前記第2リンク固定肩プーリとをそれぞれ連結している。
【0025】
この場合、第1アクチュエータ16及び第2アクチュエータ17並びに第3アクチュエータ18及び第4アクチュエータ19は、第1リンク11及び第2リンク12を各々独立して回転させるための駆動力を発生する。また、第5アクチュエータ20及び第6アクチュエータ21は、第1リンク11及び第2リンク12をフレーム13に対して同時に回転させるための駆動力を発生する。
【0026】
図3において、a〜fは第1リンク11の先端部に発生する力の方向を示したものであり、例えば、図3のa方向に力を発生させる場合には、図4の駆動シーケンスaのように、第1アクチュエータ16〜第6アクチュエータ21の出力を制御することによって実現することができる。このように、図4の駆動シーケンスa〜fは、図3の力の発生方向a〜fに対応している。なお、図4には、各アクチュエータと、後述される上肢における各筋との対応関係も示されている。
【0027】
また、第1アクチュエータ16の出力をF2、第2アクチュエータ17の出力をE2、第3アクチュエータ18の出力をF3、第4アクチュエータ19の出力をE3、第5アクチュエータ20の出力をF1、第6アクチュエータ21の出力をE1とし、図4に示される駆動シーケンスに従って各アクチュエータを駆動したときのa〜fの発生力を示すと、該発生力が、図3に示されるように、六角形になることが知られている。
【0028】
さらに、線分ab及び線分deの長さはF3とE3との和に等しく、線分bc及び線分efの長さはF2とE2との和に等しく、線分cd及び線分afの長さはF1とE1との和に等しいことが知られている。
【0029】
次に、前記構成のリハビリテーション用トレーニングシステム40の動作について説明する。
【0030】
図5は本発明の実施の形態におけるサーバに保管される生体データを示す図である。
【0031】
まず、被験者60は、トレーニング実施システム42が配設されたリハビリテーションセンタ、スポーツジム等の施設において、リハビリテーション用トレーニングシステム40を利用するための契約を締結する。なお、該契約は、トレーニング実施システム42が配設された施設以外の場所、例えば、代理店等のような場所で締結することもできる。
【0032】
そして、前記被験者60は、契約を締結すると、トレーニング実施システム42のトレーニング実施装置43を使用して、契約締結時における自身の筋力を測定する。トレーニング実施装置43によって測定した筋力のデータは、オペレータ端末44からサーバ41に送信され、前記被験者60の生体データとしてサーバ41に保管される。なお、前記生体データには、身長、体重等の基本的なデータも含まれることが望ましい。そして、前記生体データは、図に示されるような形式で、契約によって定められた期間だけ、サーバ41に保管される。図において、50はサーバ41に保管されるデータファイルであり、各被験者60の生体データが、データ管理番号、氏名、データ測定日等とともに格納されている。
【0033】
なお、被験者60がトレーニング実施システム42が配設された施設で契約を締結した場合は、契約を締結した施設のトレーニング実施システム42を使用して、生体データの測定及び登録が実施される。また、被験者60がトレーニング実施システム42が配設されていない代理店等で契約を締結した場合は、代理店等の指定する施設のトレーニング実施システム42を使用して、生体データの測定及び登録が実施される。
【0034】
そして、被験者60は、被験者操作端末45からサーバ41にアクセスすることによって、自身の生体データを閲覧することができる。また、被験者60は、定期的又は不定期に、契約によって指定された施設のトレーニング実施システム42を使用して生体データを測定し、測定した生体データを追加登録することができる。なお、登録された生体データは、追加登録されたものも含め、すべて、契約によって定められた期間だけサーバ41に保管される。
【0035】
続いて、後日、例えば、加齢により筋力が低下したり、事故や疾病によって身体に障害を受けたり、病気や怪我などによって長期間の療養生活を送ったりしたことにより、リハビリテーションを実施する必要が生じたときには、前記被験者60は、契約によって定められたリハビリテーションセンタ、スポーツジム等の施設において、トレーニング実施システム42を使用してリハビリテーションを実施することができる。
【0036】
この場合、被験者60は、まず、トレーニング実施装置43によって新たに筋力を測定して、リハビリテーションを実施する前の生体データを取得する。すると、該生体データは、オペレータ端末44に送信される。続いて、該オペレータ端末44は、前記サーバ41にアクセスして検索し、サーバ41に登録されて保管されている前記被験者60の生体データを取得する。そして、サーバ41から取得した生体データ、すなわち、リハビリテーションが必要となる以前の前記被験者60の生体データと、新たに測定された生体データ、すなわち、リハビリテーションが必要となったときに測定した前記被験者60の生体データとを比較して、差分に基づいてリハビリテーションメニューを作成する。
【0037】
そして、前記被験者60は、作成されたリハビリテーションメニューに従ってトレーニング実施装置43を使用し、弱っている筋、すなわち、トレーニングの必要な筋を選択的にトレーニングを行う。
【0038】
次に、前記二関節アーム装置10を使用して被験者60の筋力を測定する方法について説明する。
【0039】
図6は本発明の実施の形態におけるトレーニング実施装置の二関節アーム装置を使用して被験者の筋力を測定する方法を示す図である。
【0040】
図において、60は被験者であり、61は被験者60の上体と上膊とを連結する肩関節であり、62は被験者60の上膊と下膊とを連結する肘関節であり、63は被験者60の下膊と手とを連結する手首関節であって、上肢の先端部である。そして、64〜69は被験者60の上肢における筋であり、64は三角筋前部、65は三角筋後部、66は上腕二頭筋長頭、67は上腕三頭筋長頭、68は上腕筋、69は上腕三頭筋外側頭である。ここで、肩関節61の中心点をO1 、肘関節62の中心点をO2 、手首関節63の中心点をO3 とする。また、二関節アーム装置10においては、第1リンク11の先端部における円形部分の中心点をO4 、第1関節部14の中心点をO5 、第2関節部15の中心点をO6 とする。
【0041】
そして、被験者60の筋力を測定する場合、二関節アーム装置10と被験者60との位置関係を、図に示されるようにする。すなわち、、中心点O1 、O3 、O4 及びO6 が同一直線上にあるようにする。そして、線分O1 2 と中心点O1 から鉛直方向に引いた直線とがなす角度をθ1 、線分O2 3 と中心点O2 から鉛直方向に引いた直線とがなす角度をθ2 、線分O5 6 と中心点O5 から鉛直方向に引いた直線とがなす角度をθ5 、線分O5 6 と中心点O6 から鉛直方向に引いた直線とがなす角度をθ6 とすると、θ1 =θ2 =θ5 =θ6 =θref となるように設定する。なお、θref は所定角度であり、任意に設定することができる。
【0042】
まず、被験者60は二関節アーム装置10と正対した状態となり、被験者60と二関節アーム装置10との位置関係を図に示されるようにする。そして、この位置関係を初期位置として、第2リンク12に対する第1リンク11の回転角度及び第2リンク12に対するフレーム13の回転角度を測定するエンコーダのカウント値を記録する。なお、被験者60の手首関節63を第1リンク11の先端部に、任意の手段によって固定しておく。例えば、被験者60の手首関節63と第1リンク11の先端部とを紐(ひも)によって結ぶことにより手首関節63を第1リンク11の先端部に固定してもよいし、被験者60が手で第1リンク11の先端部を把持することによって手首関節63を第1リンク11の先端部に固定してもよい。また、被験者60に対しては、二関節アーム装置10から力を受けても、受けた力に抗して上肢に力を入れ、手首関節63の位置を初期位置、すなわち、図に示される位置から移動させないようにする旨の指示をあらかじめ与えておく。
【0043】
そして、二関節アーム装置10は、第1リンク11の先端部において、図3で示されるa方向に力を発生させる。この場合、図4の駆動シーケンスaのように、第1アクチュエータ16〜第6アクチュエータ21の出力を制御することによってa方向に力を発生させる。具体的には、第1アクチュエータ16、第3アクチュエータ18及び第6アクチュエータ21の出力は0のままで固定し、第2アクチュエータ17、第4アクチュエータ19及び第5アクチュエータ20の出力を同時に、かつ、等しくなるように変化させ、すなわち、同期させて、0から徐々に増加させる。これにより、二関節アーム装置10の第1リンク11の先端部がa方向に向けて発生する力は、徐々に増加する。
【0044】
一方、被験者60は、あらかじめ与えられた指示に従い、a方向と逆の方向、すなわち、d方向に手首関節63を移動するように力を発生し、手首関節63の位置を初期位置から動かないようにするために上肢に力を入れる。そして、第1リンク11の先端部がa方向に向けて発生する力が徐々に増加するので、第1リンク11の先端部に固定された手首関節63の位置が動かないようにするために、被験者60が上肢に入れる力も徐々に増加する。
【0045】
また、二関節アーム装置10は、第2アクチュエータ17、第4アクチュエータ19及び第5アクチュエータ20の出力を同期させて増加させるとともに、第1リンク11の先端部の初期位置からのずれをエンコーダのカウント値に基づいて監視する。
【0046】
そして、被験者60が上肢に力を入れて手首関節63の位置が動かないようにしているので、被験者60が上肢に入れる力と二関節アーム装置10が発生する力とが釣り合って拮(きっ)抗している間は、手首関節63に固定された第1リンク11の先端部の位置は、初期位置から動くことがない。しかし、二関節アーム装置10が発生する力が増加して、被験者60が上肢に入れる力の限界、すなわち、最大値を超えると、二関節アーム装置10が発生する力が被験者60が上肢に入れる力に打ち勝つので、第1リンク11の先端部がa方向に移動することになる。そのため、第1リンク11の先端部がa方向に移動を開始した時点において二関節アーム装置10が発生する力が、d方向に手首関節63を移動させるために被験者60が上肢に入れる力の最大値、すなわち、被験者60の上肢の筋力の最大値であると考えることができる。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、エンコーダとのカウント値に基づいて、第1リンク11の先端部の位置が初期位置からa方向に移動したと判断すると、第1リンク11の先端部の位置が初期位置からa方向に移動した時点における第2アクチュエータ17の出力E2、第4アクチュエータ19の出力E3及び第5アクチュエータ20の出力F1の値を記録する。このようにして記録された第2アクチュエータ17、第4アクチュエータ19及び第5アクチュエータ20の出力値が、d方向に手首関節63を移動させるために被験者60が発生する上肢の筋力の最大値に対応する出力値である。これにより、d方向に手首関節63を移動させるために被験者60が発生する上肢の筋力の最大値に対応する二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力値を記録することができる。
【0048】
続いて、二関節アーム装置10は、前述の動作を繰り返して行い、第1リンク11の先端部においてb〜f方向に力を発生させ、e〜c方向に手首関節63を移動させるために被験者60が発生する上肢の筋力の最大値に対応する二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力値を記録する。なお、二関節アーム装置10が力を発生する方向の順番は、a〜fの順に限ることなく、適宜変更することができる。
【0049】
ところで、二関節アーム装置10が第1リンク11の先端部においてa方向に発生させる力をアクチュエータ出力Faとすると、該アクチュエータ出力Faは、次の式(1)で算出することができる。
Fa=E2+F1×sinθref +E3×sinθref ・・・式(1)
ここで、Faの単位は〔%〕である。
【0050】
そして、同様にして、二関節アーム装置10が第1リンク11の先端部においてb〜f方向に発生させる力をアクチュエータ出力Fb〜Ffを求めることができる。この結果に基づいて、図3に示されるような六角形を描くことができる。
【0051】
次に、記録された二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力値に基づいて、被験者60の各筋の筋力を算出する方法について説明する。
【0052】
被験者60の上肢における三角筋前部64の筋力をf1、三角筋後部65の筋力をe1、上腕二頭筋長頭66の筋力をf3、上腕三頭筋長頭67の筋力をe3、上腕筋68の筋力をf2、上腕三頭筋外側頭69の筋力をe2とすると、二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力値と被験者60の上肢における各筋の筋力との関係は、次の式(2)〜(4)で表される。
F2+E2=f2+e2 ・・・式(2)
F3+E3=f3+e3 ・・・式(3)
F1+E1=f1+e1 ・・・式(4)
そのため、記録された二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力値を前記式(2)〜(4)に代入することによって、被験者60の上肢における各筋の筋力の最大値を得ることができる。
【0053】
このように、二関節アーム装置10は、人間の上肢を模した構造を有し、上肢の拮抗一関節筋群及び拮抗二関節筋群の各筋、すなわち、三角筋前部64、三角筋後部65、上腕二頭筋長頭66、上腕三頭筋長頭67、上腕筋68及び上腕三頭筋外側頭69に対応するアクチュエータを備える。そのため、被験者60の手首関節63を第1リンク11の先端部に固定し、被験者60が二関節アーム装置10から力を受けても、手首関節63の位置を初期位置から移動させないようにさせることによって、被験者60の上肢における拮抗一関節筋群及び拮抗二関節筋群の各筋の出力、すなわち、筋力を測定することができる。すなわち、第1リンク11の先端部において発生される六方向の力と被験者60の力とを拮抗させることによって、被験者60の上肢の先端部において発生される六方向の力を測定することができる。この場合、第1リンク11の先端部において発生する力の方向を六方向に変化させることによって、六方向に手首関節63を移動させるための筋力を各々測定することができる。
【0054】
そのため、被験者60が出力の方向を意識する必要がないので、被験者60に負担をかけることなく、被験者60の筋力を容易に、かつ、高い精度で測定することができる。
【0055】
次に、被験者60の筋力をトレーニングを行う方法について説明する。
【0056】
図7は本発明の実施の形態における被験者の筋力の測定結果の一例を示す図である。
【0057】
ここで、被験者60の上肢における三角筋前部64、三角筋後部65、上腕二頭筋長頭66、上腕三頭筋長頭67、上腕筋68及び上腕三頭筋外側頭69の筋力の測定を完了したものとする。そして、測定の結果、図に示されるように、一部の筋の筋力が弱いことが判明した場合、その該当する筋力をトレーニングして向上させる必要がある。なお、図7において、点線で描かれた六角形51は、リハビリテーションが必要となる以前に測定した被験者60の筋力を示し、実線で描かれた六角形52は、リハビリテーションが必要となったときに測定した被験者60の筋力を示しているものとする。図に示される例においては、上腕二頭筋長頭66の筋力が著しく低下していることを示している。
【0058】
この場合、二関節アーム装置10を使用して被験者60の筋力をトレーニングを行うことができる。筋力の測定結果が図7に示されるような例においては、上腕二頭筋長頭66の筋出力が弱いので、該上腕二頭筋長頭66に、他の筋よりも高い負荷をかけて、トレーニングを行うことが有効である。そして、上腕二頭筋長頭66の筋出力を向上させるためのトレーニングメニューを実行することによって、被験者60は、適切な筋力トレーニングを行うことができる。
【0059】
二関節アーム装置10を使用して被験者60の筋力をトレーニングを行う場合には、筋力を測定する場合と同様に、被験者60は、図6に示されるように、二関節アーム装置10と正対した状態となる。そして、被験者60の手首関節63を第1リンク11の先端部に、任意の手段によって固定しておく。また、被験者60に対しては、二関節アーム装置10から力を受けても、受けた力に抗して上肢に力を入れ、手首関節63の位置を初期位置、すなわち、図6に示される位置から移動させないようにする旨の指示をあらかじめ与えておく。
【0060】
ところで、一般に、人間の上肢においても、図4と同様なパターンによる筋の協調活動が行われている。なお、図4には、二関節アーム装置10の各アクチュエータと、人間の上肢における各筋との対応関係が示されているが、図4の駆動シーケンスa〜fに対応させて、人間の上肢における各筋の筋力を発生させた場合の力の発生方向は、図7に示されるa〜fに対応する。該図7に示されるa〜fの方向は被験者60の側から観た方向を示しており、図3に示されるような二関節アーム装置10の側から観たa〜fの方向と対称の関係にある。
【0061】
そのため、例えば、二関節アーム装置10の第1リンク11の先端部が、図3に示されるb方向に力を発生した場合に、被験者60が上肢に力を入れて手首関節63の位置が動かないようにすると、被験者60は、図7に示されるb方向に手首関節63を移動するように力を発生することになる。すなわち、図7に示されるb方向に手首関節63を移動するような負荷が被験者60の上肢における各筋に与えられることになる。この場合、図4の駆動シーケンスbのように、三角筋前部64、上腕三頭筋外側頭69及び上腕二頭筋長頭66が、負荷を与えられて筋力を発生する。
【0062】
また、例えば、被験者60が、図7に示されるd方向に手首関節63を移動するような負荷が被験者60の上肢に与えられた場合、図4の駆動シーケンスdのように、三角筋後部65、上腕筋68及び上腕二頭筋長頭66が、負荷を与えられて筋力を発生する。
【0063】
さらに、例えば、図7に示されるb方向及びd方向に手首関節63を移動するような負荷が、1:1の割合で被験者60の上肢に与えられた場合、一関節筋、すなわち、三角筋前部64、三角筋後部65及び上腕筋68には均等に負荷が与えられ、上腕二頭筋長頭66には、一関節筋の2倍の負荷が与えられ、上腕三頭筋長頭67には負荷が与えられない。したがって、この場合には、上腕二頭筋長頭66には高い負荷が選択的に与えられ、上腕三頭筋長頭67には低い負荷が選択的に与えられたことになる。
【0064】
なお、被験者60の上肢に与えられる負荷の大きさは、筋力の測定結果に基づいて制御される。この場合、測定された各筋の出力に応じた負荷が各筋に与えられるように、二関節アーム装置10の各アクチュエータの出力を制御することによって、各筋にとって最適な負荷を与え続けることができる。
【0065】
このように、被験者60の上肢における各筋に対し、選択的に最適な負荷を与えることによって、被験者60に過大な負荷をかけることなく、効果的なトレーニングを実施することができ、被験者60の筋力を効果的に向上させ、かつ、筋力のバランスを向上させることができる。
【0066】
また、筋力を現状より更に向上させたいという被験者60の要求がある場合、現状における被験者60の各筋の筋力の測定結果から目標とする筋力を設定し、トレーニングを実施する。この場合、図4に示される駆動シーケンスa〜fに対応する第1アクチュエータ16〜第6アクチュエータ21の出力を、現状における被験者60の各筋の筋力に対応する値から徐々に増加させながら、トレーニングを繰り返すことによって、被験者60の上肢全体の筋力をバランスよく向上させることができる。
【0067】
このように、二関節アーム装置10は、人間の上肢を模した構造を有し、上肢の拮抗一関節筋群及び拮抗二関節筋群の各筋、すなわち、三角筋前部64、三角筋後部65、上腕二頭筋長頭66、上腕三頭筋長頭67、上腕筋68及び上腕三頭筋外側頭69に対応するアクチュエータを備える。そのため、被験者60の手首関節63を第1リンク11の先端部に固定し、被験者60に二関節アーム装置10から力を受けても、手首関節63の位置を初期位置から移動させないようにすることによって、被験者60の上肢における拮抗一関節筋群及び拮抗二関節筋群の各筋に選択的に負荷を与え、効果的なトレーニングを実施することができる。この場合、二関節アーム装置10が第1リンク11の先端部において発生する力の方向を選択することによって、負荷を与えてトレーニングを行う筋を選択することができる。
【0068】
また、筋力の測定に使用された二関節アーム装置10を使用することによって被験者60の筋力をトレーニングを行うことができ、筋力の測定とトレーニングとのために別個の装置を用意する必要がなく、設備コストを低減することができる。
【0069】
さらに、二関節アーム装置10が人間の上肢を模した構造を有するので、被験者60は違和感を感じることなく、効果的にトレーニングを実施することができる。
【0070】
このように、本実施の形態においては、リハビリテーションを必要とする以前の被験者60の生体データを測定して、測定された生体データを保管するようになっているので、リハビリテーションが必要となったとき、リハビリテーションを必要とする以前の生体データとリハビリテーションが必要となった時点での生体データとを比較し、弱っている筋を適切に特定してトレーニングを行うことができる。そのため、トレーニングの到達目標が被験者60にとって最適化され、リハビリテーション効果の向上を期待することができる。
【0071】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態におけるリハビリテーション用トレーニングシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるトレーニング実施システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるトレーニング実施装置の二関節アーム装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるアクチュエータの駆動シーケンスと力の方向を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるサーバに保管される生体データを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるトレーニング実施装置の二関節アーム装置を使用して被験者の筋力を測定する方法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における被験者の筋力の測定結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 二関節アーム装置
40 リハビリテーション用トレーニングシステム
41 サーバ
43 トレーニング実施装置
44 オペレータ端末
60 被験者
【出願人】 【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明

【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守

【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠


【公開番号】 特開2008−43647(P2008−43647A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−224240(P2006−224240)