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【発明の名称】 薬剤吐出装置及び薬剤吐出方法
【発明者】 【氏名】浜野 宗二

【氏名】今井 満

【要約】 【課題】薬剤の吸入時の環境の変動下において、投薬量をより正確なものとし、薬剤を効率良く吸入できる薬剤吐出装置を提供する。

【構成】薬剤吐出装置は、使用時の外気環境又は薬剤の状態に応じて、薬剤を吐出させるための薬剤吐出部の吐出動作条件を決定する決定部を有することを特徴とする。この決定部は、薬剤吐出装置の制御部(コントローラ)内に存在し、決定部により決定された吐出動作条件に従って、薬剤吐出部(吐出ヘッド)へ駆動信号を送信する。薬剤吐出部は、この駆動信号により薬剤を吐出する。外気の温度および湿度を測定する温・湿度センサ12、気圧を測定する圧力センサ13、並びに薬剤タンク7の表面温度を測定する温度センサ17の少なくとも一つが設けられている。そのうちの少なくとも一つを選択して測定した測定値に基づいて吐出動作条件を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に投与する薬剤を吐出する薬剤吐出装置であって、
使用時の外気環境又は薬剤の状態に応じて、薬剤を吐出させるための吐出動作条件を決定する決定部と、
前記決定部により決定された吐出動作条件に従って薬剤の吐出を行う薬剤吐出部と、を有することを特徴とする薬剤吐出装置。
【請求項2】
前記決定部は、使用時の外気温度、外気湿度、外気気圧、及び薬剤の温度のうちの少なくとも一つの値に基づいて、薬剤を吐出させるための前記薬剤吐出部の吐出動作条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の薬剤吐出装置。
【請求項3】
薬剤の温度を測定する薬剤温度測定センサ、外気の温度を測定する温度センサ、外気の湿度を測定する湿度センサ、外気の気圧を測定する気圧センサのうちの少なくとも一つを有し、
前記決定部は、その中の少なくとも一つを選択して測定した測定値に基づいて、薬剤を吐出させるための前記薬剤吐出部の吐出動作条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の薬剤吐出装置。
【請求項4】
前記決定部は、薬剤の投薬量に相当する薬剤を吐出させるための吐出動作期間を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬剤吐出装置。
【請求項5】
利用者に投与する薬剤を吐出する薬剤吐出装置であって、
薬剤を収容する薬剤収容部と、
前記薬剤収容部から供給される薬剤を吐出する薬剤吐出部と、
使用時の外気環境又は薬剤の状態に応じて前記薬剤吐出部の吐出動作条件を決定する決定部と、を有し、
前記薬剤吐出部は、前記決定部により決定された吐出動作条件に従って薬剤の吐出を行うことを特徴とする薬剤吐出装置。
【請求項6】
前記薬剤吐出部は、薬剤に熱エネルギーを付与する電気熱変換素子又は機械エネルギーを付与する電気機械変換素子を有する請求項5に記載の薬剤吐出装置。
【請求項7】
利用者に投与する薬剤を薬剤吐出装置によって吐出する薬剤吐出方法であって、
投与時の外気環境又は薬剤の状態に応じて、薬剤の吐出動作条件を決定する工程と、
決定された吐出動作条件により薬剤の吐出を行う工程と、を有することを特徴とする薬剤吐出方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入装置などの、利用者に投与する薬剤を吐出する薬剤吐出装置及び薬剤吐出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利用者に吸入させて薬剤を摂取させる薬剤吸入装置において、電子カルテなどの情報データベースを活用できる利用者への処置が具現化しつつある。こうした薬剤吸入装置は、利用者のカルテおよび処方箋の情報を含む利用者個人に関する情報を格納する記憶手段と、利用者に吸入させるための薬剤を吐出する薬剤吐出装置を兼ね備えた携帯端末である。そして、前記処方箋の情報にしたがって利用者が薬剤を吸入できるように、利用者の吸気プロファイルに応じて薬剤吐出装置を制御して薬剤を吐出させる吐出制御手段を有するものである。
【0003】
上記の如き薬剤吸入装置では、利用者に吸い口を介して吸入される外気、すなわち空気流の中に、ヒータで気泡を発生させて液体を吐出させる方式や圧電素子の機械エネルギーで液体を吐出させる方式により、吐出ヘッド(吐出口)から適正な液滴を所定数吐出させる方法が採用されている。
【0004】
【特許文献1】WO95/01137号公報
【特許文献2】WO02/04043号公報
【特許文献3】特開2006−68508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の薬剤吐出装置では、使用時の外気環境(温度、湿度、気圧など)や薬剤の状態によって、吸収できる薬剤量が大きく変わってしまう問題がある。
【0006】
まず、液体状の薬剤の場合、液体の温度が低くなるとその粘度が高くなるために、吐出液滴の体積が減少する傾向にある。特に、ヒータで気泡を発生させて液体を吐出する方式では、液体の温度が低くなり、液体の粘度が高くなると発生する気泡の体積が小さくなったり、発泡が生じにくくなる。これによりヒータとしての電気熱変換素子に一定時間の間に電気パルスを繰り返し供給しても、吐出ヘッドから吐出される液滴の総量が減少する。その結果、利用者の薬剤吸収量も減少してしまう。
【0007】
また、外気の温度が低くなると、もちろん薬剤温度にも影響するが、それ以外の要因として、吐出ヘッドの吐出動作期間の初期のヘッドの昇温に時間がかかるため、吐出動作期間の初期で特に吐出特性が悪くなり、その結果吐出される液滴の総量が減少する。
【0008】
吐出ヘッドから吐出される液滴が微小であるため、吸引される空気の湿度によって吐出後に液滴径が変化する。一般的には、肺胞からの体内への吸収を可能とするためには、生理学上液滴径は3μm程度であることが望ましい。例えば、吐出ヘッドのノズル径を3μmとして、薬剤の吐出を行った場合、空気の湿度が90%程度の高い状態にあれば多くの液滴が3μmの液滴径を維持することができる。しかし、湿度が低くなればなるほど粒径が小さくなっていく液滴が増えるために目標の投与部に沈着する薬剤量が少なくなっていく。ちなみに、液滴径が小さくなり過ぎると、人の呼気によって体外に排出されてしまう。その結果、利用者は所望の量の薬剤を吸収することができない。
【0009】
また、大気圧が下がると薬剤の沸点も下がるので、吐出される薬剤量は、増える方向に働く。
【0010】
薬剤は、薬効が失われないように冷蔵保存することが基本的であり、冷蔵庫から取り出してすぐに吸入したい場合がある。例えば、吸入する外気温度は25℃であるのに対し、薬剤温度は5℃となる場合もある。また、屋外に携帯して持ち歩く場合には、薬剤が体温に近い温度(例えば、身に付けていた場合)で、吸入装置が10℃付近にあるような寒い環境になることもある。このような寒い環境では、薬剤温度が外気温度より高い場合もある。このように使用条件が様々で薬剤吸収量の一定化が難しい状況が存在する。
【0011】
本発明は、薬剤の吸入時の環境の変動下において、投薬量をより正確なものとし、薬剤を効率良く吸入できる薬剤吐出装置及び薬剤吐出方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は所望の液滴径の薬剤を一定量吸入させるための薬剤吐出装置及び薬剤吐出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の薬剤吐出装置は、利用者に投与する薬剤を吐出する薬剤吐出装置であって、使用時の外気環境又は薬剤の状態に応じて、薬剤を吐出させるための吐出動作条件を決定する決定部と、前記決定部により決定された吐出動作条件に従って薬剤の吐出を行う薬剤吐出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬剤吐出装置は、上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0014】
使用時の外気環境の変化又は薬剤の状態の変化に起因する吐出される液剤量の変動、あるいは所望の液滴径をもつ吐出液剤の総量の変動を補正して、利用者が処方箋に従った正確な投薬量の薬剤を吸入することが可能となる。その結果、精神的、肉体的負担を軽減し、投薬量の薬剤を肺まで確実に送り込んで、効率よく薬剤を投与することができる。
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の薬剤吐出装置は、使用時の外気環境又は薬剤の状態に応じて、薬剤を吐出させるための薬剤吐出部の動作条件を決定する決定部を有することを特徴とする。この決定部は、薬剤吐出装置の制御部(コントローラ)内に存在し、決定部により決められた吐出動作条件に従って、薬剤吐出部(吐出ヘッド)へ駆動信号を送信する。薬剤吐出部は、この駆動信号により薬剤を吐出する。これにより、装置使用時の環境変化や薬剤の状態の変化に関わらず、所望の液滴径の液滴を一定量吸入させることが可能となる。
【0016】
吐出動作条件の決定にあたり考慮することが好ましいパラメータとして、装置使用時の外気温度、外気湿度、外気気圧などが挙げられる。これらが変化することにより吐出される液剤の量、吐出される液剤の総量、又は、所望の液滴径をもつ吐出液剤の総量に変動が生じる。また、考慮すべき薬剤の状態としては、薬剤の温度、薬剤の粘度などが挙げられる。これらが変化することにより、上述した各総量、即ち、薬剤の吐出量に変動が生じる。本発明の薬剤吐出装置は、この変動を補償し、利用者が一定の薬剤量を吸入することができるように、上記パラメータの少なくとも一つの値に基づいて薬剤を吐出する薬剤吐出部の吐出動作条件を決定する。
【0017】
薬剤吐出装置が、上記パラメータの実測値を認識する方法は任意である。考えられる一つの実施態様として、利用者が使用前に外気温度、あるいは外気湿度などの測定値を入力する形態が考えられる。この場合薬剤吐出装置は、利用者が測定値を入力するための入力ボタンを有し、決定部は入力された値に基づいて吐出動作条件を決定することになる。
【0018】
また、別の実施形態としては薬剤吐出装置自体が、薬剤の温度を測定する薬剤温度測定センサ、外気の温度を測定する温度センサ、外気の湿度を測定する湿度センサ、外気の気圧を測定する気圧センサの少なくとも一つを有していることも好ましい。この場合決定部は、その中の少なくとも一つを選択して測定した測定値に基づいて薬剤を吐出させるための薬剤吐出部の吐出動作条件を決定する。このような構成とすることにより、利用者が入力するなどの手間を省略し、装置が自動的に適切な吐出動作条件を決定することができるため、よりユーザーフレンドリーである。
【0019】
本発明において、薬剤吐出部(吐出ヘッド)は任意の吐出圧発生素子を有する。薬剤に熱エネルギーを付与する電気熱変換素子又は機械エネルギーを付与する電気機械変換素子を例示できる。すなわち、薬剤の吐出方法としては、電気熱変換素子を用いて薬剤に熱エネルギーを付与して吐出させる方法(サーマルジェット方式)、薬剤に機械エネルギーを付与する電気機械変換素子(例えば圧電素子)の振動圧を用いて薬剤を吐出する方法を例示できる。吐出方法については、薬剤の種類などに応じて選択可能である。
【0020】
サーマルジェット方式を用いた場合、個々の液体吐出ユニットについて、吐出口の口径、吐出に利用される熱パルスの熱量、電気熱変換素子としてのマイクロ・ヒーターなどのサイズ精度、再現性を高くすることが可能である。このため、狭い液滴径分布を達成することが可能である。また、ヘッドの製作コストが低く、ヘッドを頻繁に交換する必要がある小型の装置への適用性も高い。従って、液体吐出装置に携帯性や利便性が求められる場合には、特に、サーマルジェット式の吐出装置が好ましい。
【0021】
所望の液滴径の液滴を一定量利用者に吸入させるための吐出動作条件の決定方法としては、以下のようなものが挙げられる。
【0022】
まず、薬剤の投薬量に相当する薬剤を吐出させるための吐出動作期間を決定する方法が考えられる。ここでの「吐出動作期間」とは、吐出圧発生素子に最初のパルスを与えてから、最後のパルスを与え終わるまでの時間、すなわち吐出エネルギー発生用パルス列が供給される期間を意味する。吐出動作期間を長くすることで薬剤吐出量を増やすことができる。また、吐出動作期間は変化させなくても、吐出圧発生素子の吐出周波数を変化させることで吐出量を変化させることも可能である。ここで「吐出周波数」とは、単位時間あたりに吐出圧発生素子に与える薬剤を吐出するためのパルス信号の数に相当する。また、パルス幅を変えることによっても吐出される薬剤の量を変化させることが可能である。「パルス幅」とは、一回のパルス信号付与における通電時間である。パルス幅を長くすることにより、一回のパルス信号に応じて吐出する薬剤の量が増加する。
【0023】
また、これら複数の方法を組み合わせて必要な投薬量を達成するための薬剤の吐出量を変化させても構わない。要は、薬剤に与えるエネルギーの量をコントロールすることができれば良いので、その方法は任意である。ただし、駆動周波数などは各装置において機能上の制約があるので、吐出動作期間を変更するように調節する方法が簡便ではある。
【0024】
本発明に用いられる薬剤とは、薬理的、生理的な作用を示す医薬用化合物の薬剤のみならず、医薬用化合物に加えて更に、嬌味嬌臭目的の成分、染料、顔料なども含まれる概念である。そして、薬剤は液体でも粉末でも構わない。
【0025】
また、本発明に用いられる薬液とは、液体の薬剤、または薬剤を含む液媒体を言う。薬液には、任意の添加剤を含んでよい。液中の薬剤の状態は、溶解、分散、乳化、懸濁、スラリーのいずれでも良く、液中に均一化されていればなお良い。
【0026】
薬剤として薬液を用いる場合、液の主媒体は水または有機物が好ましく、生体に投与されることを考慮すると水が主媒体であることが好ましい。
【0027】
以下に、本発明に係る薬剤吐出装置を吸入装置とした例でより詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明に係る薬剤吐出装置の一実施形態による吸入装置の外観を示す斜視図であり、図2は図1に示す吸入装置のアクセスカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【0029】
本実施例の吸入装置Eは、箱状のハウジング本体1の開放面に、フロントカバー3およびアクセスカバー2が配設されている。
【0030】
フロントカバー3は、ハウジング本体1の開放面の長手方向一方側を閉鎖するように一体的に設けられている。アクセスカバー2はハウジング本体1の開放面の長手方向他端縁にヒンジ2aを介して回動自在に取り付けられており、図示しない戻しバネによって常時開く方向へ付勢されている。他方フロントカバー3には、アクセスカバー2が不用意に開かないようにするため、アクセスカバー2の先端(自由端)に係合する突起部10aを有するロックレバー10が配設されている。
【0031】
ロックレバー10をバネの弾力に抗してスライドさせると、突起部10aがアクセスカバー2の先端からはずれ、戻しバネの弾力によりアクセスカバー2が不図示のヒンジ軸のまわりに回動して開く。
【0032】
図2に示すように、アクセスカバー2が開くと吐出ヘッド8と薬剤タンク(薬剤収容部)7が一体となった薬剤吐出ユニット6や吸い口4が見えてくる。なお、薬剤吐出ユニット6と吸い口4は、ハウジング本体1のガイド部20に脱着可能に支持されている。
【0033】
図3に示すように、薬剤吐出ユニット6は、薬剤を収容する薬剤タンク7と、薬剤を吐出する吐出ヘッド8と、吐出ヘッド8に設けたヒータに熱エネルギーを発生させるための電力を供給するバッテリ18との電気接続面9aを有する部材9からなる。バッテリ18は充電可能な2次電池を用いる。このように、薬剤タンクと吐出ヘッドは一体となってカートリッジ形態になっていても構わないし、薬剤タンクと吐出ヘッドがそれぞれ別体として構成されていても良い。
【0034】
図4の(a)は、図1に示した吸入装置の縦断面図,図4の(b)は吸入装置の電気的ブロック図である。以下では、投与時の外気環境や薬剤の状態を測定する手段を吸入装置自体が有する構成で、決定部が吐出動作期間を調節する場合で説明する。外気の温度および湿度を測定する温・湿度センサ12と、外気気圧測定用の圧力センサ13がコントロール基板11上に配設されている。また、不図示であるが、投与時における薬剤吐出装置の薬剤吐出量が処方箋に従った投薬量に相当する液適を吐出させるための吐出動作期間を決定する決定部と、この吐出動作期間による吐出を行う指令を出力するための制御手段が配設されている。つまり、制御プログラムを記憶するROMと、吐出時間の決定の基になる前記各測定値と補正係数との関係を示すデータテーブル等を記憶しておくRAMが配設されている。これに加えて最低限、前記ROMや前記RAMのデータを呼び出して演算処理して吐出動作期間を決定し、吐出ユニット6を制御するためのCPUが配設されている。
【0035】
外気の環境(温度、湿度、気圧)は、ハウジング本体1に開けられた外気との連通孔15を通してハウジング内へ吸引された外気の環境を測定している。連通孔15には水の侵入を防止し、空気は通す微細な連続多孔質構造をもつ素材の遮断シート16をハウジングの内側に設けるのが良い。これは、薬剤が液体であることと、吸い口4を使い捨てにしない限り洗浄することが必要となるので、防水性を付与し、電気機器としての安全性を向上させるためである。
【0036】
また、薬剤タンク7の温度センサ17もコントロール基板11に配設され、薬剤タンク7の表面温度を測定している。薬剤の温度を直接測定すれば最良であるが、薬剤は雑菌等が薬剤に入り込まないように密閉された容器の中に収容されているために直接的な温度測定は難しい。そこで、ほぼ同等である薬剤タンク7の表面温度を測定し、薬剤温度として代用する。
【0037】
温・湿度センサ12で測定された外気温度、外気湿度の測定値、圧力センサ13で測定された外気圧の測定値、温度センサ17で測定された薬剤温度の測定値は、制御部11に送られ、制御部11にて吐出動作期間が決定される。制御部11は、吐出ヘッド8に駆動信号を送信する(図4の(b))。
【0038】
続いて、本実施形態による吸入工程を図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0039】
まず、利用者によって電源スイッチが押されるなどの操作により使用開始状態となる(S001)。使用開始後、薬剤吐出ユニット6の有無をチェックし(S002)、なければ薬剤吐出ユニット6がないことを利用者に知らせる警告表示を出し(S021)、電源OFF(S022)を経て終了(S023)する。
【0040】
薬剤吐出ユニット6の検出手段としては、例えば薬剤吐出ユニット6がサーマルジェット方式による吐出エネルギー発生手段を有する液体吐出ヘッドを備えている場合、吐出エネルギー発生手段となるヒータの抵抗値を測定することで実現できる。
【0041】
薬剤吐出ユニット6がある場合、バッテリの残量をチェックし(S003)、足りなければ、バッテリ交換や充電を促す表示を行い(S020)、電源OFF(S022)を経て、終了(S023)する。
【0042】
バッテリ残量が少なくとも一回の吸入動作を実行できると判断された場合、電源をオンし(S004)、初期設定(S005)を行う。この初期設定は、利用者個人に関する処方箋による投薬量に相当する吐出液滴の総量が得られる基準吐出動作期間を設定する。
【0043】
初期設定(S005)完了後、薬剤の温度、外気の温度、湿度および気圧のうちのいずれか1つを選択し、選択した測定手段で測定した測定値に基いて、補正係数を決定する。決定された補正係数を前記基準吐出動作期間に乗算した値により前記基準吐出動作期間を補正して吐出動作期間を決定する。
【0044】
ここで、外気温度測定工程は、コントロール基板11上に設けた温・湿度センサ12にて外気温度の測定を行い(S006)、外気温度に起因する吐出量の変動量を修正する補正係数を決定する(S014)。つまり、外気温度補正係数を吸入装置のコントロール基板11に配設されたCPU、RAM、ROM等を使用して、決定する。図7に、外気温度と吐出量の関係を示す。3μmのノズル径を有する吐出ヘッドを使用し、外気相対湿度が50%、気圧が1013hPa、薬剤温度が25℃の環境にて薬剤の吐出を行った。吐出した薬剤の組成を図15に示す。図7に示すように、外気温度と吐出量はほぼリニアな関係にあり、外気温度が上昇すれば吐出量が増え、外気温度が下がれば吐出量は減少する。したがって、外気温度が高いと補正係数によって吐出動作期間を短くする方向に補正し、外気温度が低いと吐出動作期間を長くする方向に補正を行う。外気温度が25℃の場合に投薬量に相当する薬剤を吐出するための吐出動作期間を基準とすると、図8のように補正係数を決定すればよいことになる。
【0045】
外気湿度測定工程は、コントロール基板11上に配置した温・湿度センサ12によって外気湿度を測定し(S008)、CPU、RAM、ROM等を使用して外気湿度補正係数を決定する(S009)。図9に外気湿度と液滴径変化の関係を示す。3μmのノズル径を有する吐出ヘッドを使用し、外気温度が25℃、気圧が1013hPa、薬剤温度が25℃の環境にて薬剤の吐出を行った。吐出した薬剤の組成は図15に示す。図9に示すように、湿度が低くなるにつれ、時間の経過に対して液滴径(空気力学径)が3μmである液滴の割合が少なくなり、所望の部位に到達できる薬剤量が少なくなる。そこで、湿度が高くなる程補正係数は、小さくなる方向に補正をかける。相対湿度50%を基準にした場合、図10のように補正係数を決定すればよい。
【0046】
外気気圧測定工程は、コントロール基板11上に配置した圧力センサ13によって外気気圧測定を行う(S010)。
【0047】
圧力センサ13は、圧力変化を抵抗値に変換する抵抗変化型、圧力変化を静電量の変化に変換する静電容量型、圧力変化を発振周波数に変換する水晶発振周波数型などを用いる。この圧力センサ13で測定された外気気圧に基いて、CPU、ROM、RAM等にて外気気圧補正係数を決定する(S011)。図11に外気気圧と吐出量の関係を示す。3μmのノズル径を有する吐出ヘッドを使用し、外気相対湿度が50%、外気温度が25℃、薬剤温度が25℃の環境にて薬剤の吐出を行った。吐出した薬剤の組成は図15に示す。図11に示すように、外気気圧が低い程、吐出量は増大する傾向にある。そこで、気圧が低くなるほど補正係数を小さくしていくように補正をかけることになる。1気圧の場合を基準とすると、図12のように補正係数を決定すればよい。
【0048】
薬剤温度測定工程は、コントロール基板11上に配置した温度センサ17にて薬剤タンク7の温度を測定して薬剤温度とする(S012)。ついでこの測定した薬剤温度を基にコントロール基板11上に設けたCPU、RAM、ROM等を使用して、薬剤温度補正係数を決定する(S013)。図13に薬剤温度と吐出量の関係を示す。3μmのノズル径を有する吐出ヘッドを使用し、外気相対湿度が50%、外気温度が25℃、気圧が1013hPaの環境にて薬剤の吐出を行った。吐出した薬剤の組成は図15に示す。図13に示すように、薬剤温度と吐出量はほぼリニアな関係にあり、薬剤温度が上昇すれば吐出量が増え、薬剤温度が下がれば吐出量は減少する。したがって、薬剤温度が高くなるほど、補正係数を小さくしていくように補正をかけることになる。薬剤温度が25℃を基準とした場合、図14のように補正係数を決定すればよい。温度センサ17は放射型温度センサを薬剤タンク7に対して非接触にて測定するか、または、熱電対を使用した表面温度センサタイプでも良い。
【0049】
上述の外気温度補正係数、外気湿度補正係数、外気気圧補正係数、薬剤温度補正係数のいずれか一つを選択して補正係数を決定する(S014)。ついで前記基準吐出動作期間に選択した補正係数を乗算した値により、前記基準吐出動作期間を補正して吐出動作期間を決定し(S015)、吸入開始を待つ(S016)。
【0050】
使用条件である外気温度、外気湿度、外気気圧、薬剤温度のいずれか一つを選択する優先順位は、例えば薬剤の液滴の吐出量の変化に大きく影響を及ぼすものから順次、(1)薬剤温度、(2)外気温度、(3)外気湿度、(4)外気気圧の順に選択するとよい。例えば、薬剤温度を測定して補正係数を決める場合には、図4において温度センサ17を有していれば良く、温・湿度センサ12及び圧力センサ13は備えていなくてもよい。他の測定を行う場合も同様である。例えば、25℃の環境で薬剤を冷蔵庫から出したばかりで薬剤温度が5℃だとすると、基準吐出動作期間を1.1秒とした場合、1.1x1.563=1.7193秒が今回の吐出動作期間になる。
【0051】
吸入(S017)が検知されると、所定の吐出周波数にて吐出動作(S018)を開始する。このときに吐出中であることを表示、振動モータによる振動、音で利用者に告知する手段を有しても良い。その後、吐出動作期間が経過して吐出パルス信号の供給を停止して、吐出動作を終了させる(S019)。吐出動作が終了すると電源オフ(S022)を経て、終了(S023)に至る。
【0052】
なお、補正吐出動作期間を決定する方法としては、基準吐出動作期間に補正係数を乗算する方法に限定されることはない。例えば、RAMに補正動作期間値テーブルを記憶させて、各測定値毎に対応する補正吐出動作期間値を直接呼び出し、各補正吐出動作期間値に基いて各吐出動作期間をそれぞれ決定することもできる。
【実施例2】
【0053】
他の実施例による吸入工程を図6に示すフローチャートに沿って説明する。本実施形態は、上記4つのパラメータを全て測定し、考慮して吐出動作期間を決定するものである。
【0054】
まず、利用者によって電源スイッチが押されるなどの操作により使用開始状態となる(S101)。使用開始後、薬剤吐出ユニット6の有無をチェックし(S102)、なければ薬剤吐出ユニット6がないことを利用者に知らせる警告表示を出し(S121)、電源OFF(S122)を経て終了する(S123)。
【0055】
薬剤吐出ユニット6の検出手段としては、例えば薬剤吐出ユニット6がサーマルジェット方式として電気熱変換素子を備えた吐出ヘッド8によって吐出を行う場合、該素子の抵抗値を測定することで実現できる。
【0056】
薬剤吐出ユニット6がある場合、バッテリの残量をチェックし(S103)、足りなければ、バッテリ交換や充電を促す表示を行い(S120)、電源OFF(S122)を経て、終了(S123)する。
【0057】
バッテリ残量が少なくとも一回の吸入動作を実行できると判断された場合、電源をオンし(S104)、初期設定(S105)を行う。この初期設定は、利用者個人に関する処方箋による投薬量に相当する液滴吐出量になる基準吐出動作期間を設定する。
【0058】
初期設定(S105)完了後、コントロール基板11上に設けた温・湿度センサ12にて外気温度の測定を行い(S106)、外気温度補正係数をコントロール基板11上に配設されたCPU、RAM、ROM等にて決定する(S107)。
【0059】
次に、外気湿度測定工程は、コントロール基板11上に配置した温・湿度センサ12によって外気湿度を測定し(S108)、外気温度補正係数と同様にCPU、RAM、ROM等を使用して外気湿度補正係数を決定する(S109)。
【0060】
次に、外気気圧測定工程は、コントロール基板11上に配置した圧力センサ13によって外気気圧測定を行う(S110)。圧力センサ13は、圧力変化を抵抗値に変換する抵抗変化型、圧力変化を静電量の変化に変換する静電容量型、圧力変化を発振周波数に変換する水晶発振周波数型などを用いる。この圧力センサ13で測定された外気気圧に基いて、コントロール基板11上のCPU、ROM、RAM等にて外気気圧補正係数を決定する(S111)。
【0061】
最後に、薬剤温度測定工程は、コントロール基板11上に配置した温度センサ17にて薬剤タンク7の温度を測定して薬剤温度とする(S112)。ついでこの測定した薬剤温度を基にコントロール基板11上に設けたCPU、RAM、ROM等にて、薬剤温度補正係数を決定する(S113)。温度センサ17は放射型温度センサを薬剤タンク7に対して非接触にて測定するか、または、熱電対を使用した表面温度センサタイプでも良い。
【0062】
上述の外気温度補正係数と、外気湿度補正係数と、外気気圧補正係数と、薬剤温度補正係数とによってTOTAL補正係数を決定する(S114)。ついで前記基準吐出動作期間にTOTAL補正係数を乗算した値である補正吐出動作期間により前記基準吐出動作期間を補正して吐出動作期間を決定し(S115)、吸入開始を待つ(S117)。ここでは、基準吐出動作期間は、実施例1において各パラメータの補正係数を決定する際に基準として条件で吐出した場合に、投薬量に相当する薬剤を吐出するのに必要な時間とする。以下、実施例1の例で説明する。外気温度25℃、相対湿度50%、外気圧1013hPa、薬剤温度25℃の場合の吐出動作期間を1.1秒(基準吐出動作期間)とする。吸入時の外気温度が40℃、外気湿度が75%、外気圧が3000mの高地で吸入するとして701hPa、薬剤温度が5℃とすると、吐出動作期間は以下のようになる。
(1.563×0.962×0.978×0.980)×1.1=1.585秒
吸入が検知されると所定の吐出周波数を用いて吐出動作(S118)を開始する。このときに吐出中であることを表示、振動モータによる振動、音で利用者に告知する手段を有しても良い。その後、補正された吐出動作期間が経過して、吐出用のパルスの供給を停止して、吐出動作を終了させる(S119)。吐出動作が終了すると電源オフ(S122)を経て、終了(S123)に至る。
【0063】
なお、より正確な補正を行うには上記4つの測定(外気温度、外気湿度、外気気圧、薬剤温度)を全て行うことが好ましい。しかし、上述の実施例2に係る吸入装置において、4つの測定のうち2つまたは3つを選択し、選択した2つあるいは3つのTOTAL補正係数をそれぞれ決定するように変更できる。これらの変形例は、上述した実施例2の図6のフローチャートに示す吸入工程に準じた吸入工程を実行すればよいので、その説明は省略する。この場合、例えば外気気圧以外の3つを測定し、そのTOTAL補正係数より吐出動作期間を決定する場合などは、図4における圧力センサ13は備えていなくても良い。
【0064】
本発明において、各補正係数は、薬剤の含有物によって影響されるので薬剤の種類によって変わる数値である。
【0065】
また、吐出動作期間は、RAMに補正動作期間値テーブルを記憶させて、各外気環境の測定値に対応する補正吐出動作期間値を直接呼び出し、各補正吐出動作期間値に基いて各吐出動作期間を決定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、薬剤吸入用の他に種々の用途に用いることができる。例えば、芳香剤の吸入装置、ニコチンなどの嗜好品の吸入装置等、確実で衛生的な液滴吐出を必要とする種々の用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の薬剤吐出装置の一実施形態による吸入装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す吸入装置のアクセスカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す吸入装置における薬剤吐出ユニットの斜視図である。
【図4】(a)は図1に示した吸入装置の縦断面図、(b)は、図4の(a)に示した吸入装置の電気的ブロック図である。
【図5】本発明の薬剤吐出装置を用いた吸入方法の一例を表すフローチャートである。
【図6】本発明の薬剤吐出装置を用いた吸入方法の他の例を表すフローチャートである。
【図7】本発明の薬剤吐出装置において、外気温度と吐出量の関係を示すグラフである。
【図8】図7に基づいて計算した外気温度に対する補正係数を示す表である。
【図9】本発明の薬剤吐出装置において、外気湿度と、吐出された液滴のうち液滴径が3μmのものの残存率との関係を示すグラフである。
【図10】図9に基づいて計算した外気湿度に対する補正係数を示す表である。
【図11】本発明の薬剤吐出装置において、外気圧と吐出量の関係を示すグラフである。
【図12】図11に基づいて計算した外気圧に対する補正係数を示す表である。
【図13】本発明の薬剤吐出装置において、薬液温度と吐出量の関係を示すグラフである。
【図14】図13に基づいて計算した薬液温度に対する補正係数を示す表である。
【図15】実験に使用した薬剤の組成を示す表である。
【符号の説明】
【0068】
1 ハウジング
2 アクセスカバー
3 フロントカバー
5 流路
6 薬剤吐出ユニット
7 薬剤タンク
8 吐出ヘッド
12 温・湿度センサ
13 圧力センサ
15 連通孔
16 温度センサ
18 バッテリ
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成19年7月5日(2007.7.5)
【代理人】 【識別番号】100095991
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 善朗


【公開番号】 特開2008−49139(P2008−49139A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−177023(P2007−177023)