| 【発明の名称】 |
プレフィルド型シリンジ |
| 【発明者】 |
【氏名】義永 隆明
【氏名】肥後 成人
【氏名】谷田 宣文
【氏名】露木 幸星
【氏名】牟田 一則
【氏名】久保 順一
|
| 【要約】 |
【課題】保管中にリドカイン溶液がヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出することがなく、使用時にはヒアルロン酸ナトリウム溶液の注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛を十分に抑制することができるプレフィルド型シリンジを提供する。
【構成】注射針14が装着されたプレフィルド型シリンジ10の使用時において、まず、局所麻酔剤のリドカインを含有するリドカイン溶液Aが第1注射剤として患部に注射され、続いて、治療薬のヒアルロン酸ナトリウムを含有するヒアルロン酸溶液Bが第2注射剤として患部に注射される。ここで、リドカインとヒアルロン酸ナトリウムとの質量比が0.1以上0.4未満であるため、リドカインによる患部の局所麻酔効果が十分に発揮され、ヒアルロン酸ナトリウムの注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛が十分に抑制される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1注射剤に続いて第2注射剤を注射可能な分注方式のプレフィルド型シリンジであって、 第1注射剤としてリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩を含有する所定量の溶液が予め充填され、第2注射剤としてヒアルロン酸ナトリウムを含有する所定量の溶液が予め充填されており、 前記ヒアルロン酸ナトリウムに対する前記リドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩の質量比が0.1以上0.4未満であることを特徴とするプレフィルド型シリンジ。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、注射剤が予め充填されているプレフィルド型シリンジに関し、詳しくは、異なる2種の注射剤を順次注射可能な分注方式のプレフィルド型シリンジに関するものである。 【背景技術】 【0002】 医薬品の剤型の一つである注射剤の医療現場への供給形態として、いわゆるプレフィルド型シリンジとして供給する形態がある。このプレフィルド型シリンジは、密封容器を兼用する注射筒内に所望の注射剤が予め充填されている使い捨てタイプの注射器である。そして、このプレフィルド型シリンジは、簡便に使用でき、緊急時でも所望の注射剤を誤用することなく正確な投与量で投与でき、しかも衛生性が高く細菌などの微生物汚染を回避できるなどの種々の利点があるため、近年多用される傾向にある。 【0003】 この種のプレフィルド型シリンジ用の注射器の構造として、例えば特許文献1には、予め1種の注射剤を注射筒内に密封状態で充填しておくことができる注射器の構造が開示されている。また、例えば特許文献2には、予め2種の注射剤を注射筒内に分離して充填しておき、その2種の注射剤を順次注射できるようにした分注方式の注射器の構造が開示されている。 【0004】 一方、変形性関節症、慢性関節リウマチ等の各種関節症疾患の治療に関しては、関節液の潤滑作用、関節軟骨表面保護作用の低下に起因する運動障害や疼痛症状の発生を緩和するために、ヒアルロン酸溶液を疾患関節部位へ注入する方法が採用されており、ある程度の効果を示している(例えば特許文献3、非特許文献1参照)。 【0005】 他方、ヒアルロン酸ナトリウムを患者の患部の関節腔内に投与すると、その投与直後に一過性の疼痛が患部に誘発されるという問題が指摘されている(例えば非特許文献1参照)。これに関連して、特許文献4には、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を注射する際の患者の苦痛を予め予防できるキット製剤として、リドカイン水溶液を第1の薬液とし、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を第2の薬液とした直列順次分注型注射器を用いたキット製剤が開示されている。 【特許文献1】特公昭62−58745号公報(図1) 【特許文献2】特開平8−308928号公報(要約書、図1) 【特許文献3】国際公開W02004/016275 【特許文献4】特開2003−299734号公報(段落0085) 【非特許文献1】「炎症・再生 Vol.21 No.6 NOVEMBER 2001」(p653〜658) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ここで、患部の関節腔内にヒアルロン酸ナトリウム溶液を投与した直後に誘発される一過性の疼痛を抑制するために、患部の関節腔内に予めリドカイン溶液を投与する場合、その投与量が多いほど一過性の疼痛を効果的に抑制できるものと思われる。しかしながら、患部の関節腔内には容量の限度があるため、ヒアルロン酸ナトリウム溶液の必要な投与量を考慮すると、リドカイン溶液の投与量を増量するにも限度がある。 【0007】 この場合、リドカイン溶液の投与量を増量する代わりにその濃度を上げることが考えられる。しかしながら、高濃度のリドカイン溶液は浸透圧が高いため、高濃度のリドカイン溶液とヒアルロン酸ナトリウム溶液とを中間弁により分離して予め充填したプレフィルド型シリンジにおいては、その保管中に高濃度のリドカイン溶液が中間弁を湿潤させてヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出するという不都合が懸念される。 【0008】 そこで、本発明は、保管中にリドカイン溶液がヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出することがなく、使用時にはヒアルロン酸ナトリウム溶液の注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛を十分に抑制することができるプレフィルド型シリンジを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、この課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、通常は、ヒアルロン酸ナトリウムの投与に先立ってある程度の量のリドカインを投与しないと、ヒアルロン酸ナトリウムの投与直後に誘発される一過性の疼痛を抑制することは困難であると考えられるが、ヒアルロン酸ナトリウムの必要量に対するリドカインの量が質量比で0.1〜0.4程度、特に0.1といった低い量でも、ヒアルロン酸ナトリウムの投与直後に誘発される患部の一過性の疼痛を抑制できることを見出した。 【0010】 また、ヒアルロン酸ナトリウムに対するリドカインの質量比が0.4未満であれば、分注方式のプレフィルド型シリンジに予め分離して充填されたリドカイン溶液がヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出することもないことを見出した。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成した。 【0011】 すなわち、本発明は、第1注射剤に続いて第2注射剤を注射可能な分注方式のプレフィルド型シリンジであって、第1注射剤としてリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩を含有する所定量の溶液が予め充填され、第2注射剤としてヒアルロン酸ナトリウムを含有する所定量の溶液が予め充填されており、ヒアルロン酸ナトリウムに対するリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩の質量比が0.1以上0.4未満であることを特徴とする。 【0012】 本発明に係るプレフィルド型シリンジでは、第2注射剤中のヒアルロン酸ナトリウムに対する第1注射剤中のリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩の質量比を0.4未満としたため、保管中に第1注射剤であるリドカイン溶液が第2注射剤であるヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出する不都合が回避される。 【0013】 そして、本発明のプレフィルド型シリンジでは、注射針が装着された使用時において、まず、局所麻酔剤のリドカインを含有する第1注射剤が患部に注射され、続いて、治療薬のヒアルロン酸ナトリウムを含有する第2注射剤が患部に注射される。 【0014】 ここで、第2注射剤中のヒアルロン酸ナトリウムに対する第1注射剤中のリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩の質量比を0.1以上としたため、第2注射剤中のヒアルロン酸ナトリウムの注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛が第1注射剤中のリドカインにより十分に抑制される。 【発明の効果】 【0015】 本発明に係るプレフィルド型シリンジによれば、その保管中に第1注射剤であるリドカイン溶液が第2注射剤であるヒアルロン酸ナトリウム溶液側へ漏出する不都合を回避することができる。 【0016】 また、第2注射剤中の治療薬であるヒアルロン酸ナトリウムの注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛を第1注射剤中の局所麻酔剤であるリドカインにより十分に抑制することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 以下、図面を参照して本発明に係るプレフィルド型シリンジの最良の実施形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係るプレフィルド型シリンジの未使用状態を示す斜視図、図2は一実施形態に係るプレフィルド型シリンジの使用時の形態を示す縦断面図である。 【0018】 図1、図2に示す一実施形態のプレフィルド型シリンジ10は、予め充填された異なる2種の注射剤を順次注射可能な分注方式の使い捨てタイプの注射器である。このプレフィルド型シリンジ10は、2種の注射剤が予め充填される密封容器として機能するバレル(注射筒)11と、このバレル11内に直後端の開口部からの挿入されたプランジャー12とを備えている。 【0019】 ここで、プレフィルド型シリンジ10の未使用状態では、バレル11の先端部に形成された小径の針装着部11Aに密封用のトップキャップ13が被着されている(図1参照)。そして、トップキャップ13が取り外されたプレフィルド型シリンジ10の使用時には、トップキャップ13の代わりに注射針14が針装着部11Aに装着される(図2参照)。 【0020】 図2に示すように、バレル11内には、プランジャー12の先端部に配設されたエンドストッパ12Aが摺動自在に嵌合されている。そして、このエンドストッパ12Aの前方のバレル11内に前室および後室を区画形成するように、バレル11内にはミドルストッパ15が摺動自在に嵌合されている。 【0021】 ミドルストッパ15は、例えば短円柱状のゴム弾性体などで構成されており、その前部の外周には、弾性変形可能なリング状のリップ部15Aがバレル11の内周面に摺接するように形成されている。なお、ミドルストッパ15の後端部の外周には、バレル11の内周面に摺接することでリップ部15Aと協働してミドルストッパ15の軸線の傾きを防止する複数のガイド突起15Bが形成されている。 【0022】 ここで、図1に示すように、バレル11の前端部の内面には、針装着部11A内の注射口11Bの周囲からバレル11の内周面に向かって等角度間隔で放射状に延びる3対のバイパス用突条11Cが形成されている。これら3対のバイパス用突条11Cは、バレル11の内周面に延出する部分が図3に示すようにミドルストッパ15のリップ部15Aを弾性変形させることにより、ミドルストッパ15の後方の後室と注射口11Bとを連通するバイパス通路を形成する。 【0023】 このような構造を有するプレフィルド型シリンジ10において、図2に示すように、バレル11内のミドルストッパ15の前方に区画される前室には、所定量のリドカイン溶液Aが第1注射剤として予め充填されている。また、バレル11内のミドルストッパ15の後方に区画される後室には、所定量のヒアルロン酸溶液Bが第2注射剤として予め充填されている。 【0024】 ここで、リドカイン溶液Aは、リドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩を局所麻酔剤として含有する溶液であり、例えば塩酸リドカイン溶液が好ましく用いられる。このリドカイン溶液Aに含まれる組成物は、リドカイン、塩化ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、注射用蒸留水であり、性状は無色澄明の液である。リドカイン溶液AのpHは、5.0〜7.0に調整されているのが好ましい。 【0025】 一方、ヒアルロン酸溶液Bは、例えばヒアルロン酸ナトリウムを変形性関節症、慢性関節リウマチ等の各種関節症疾患の治療薬として含有する溶液である。このヒアルロン酸溶液Bに含まれる組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、注射用蒸留水であり、性状は無色澄明の粘稠な液である。ヒアルロン酸溶液BのpHは、6.8〜7.8に調整されているのが好ましい。 【0026】 ここで、リドカイン溶液Aおよびヒアルロン酸溶液Bの総量は、患者の患部である関節腔内の容量に応じた所定量とされており、ヒアルロン酸溶液Bに治療薬として含有されるヒアルロン酸ナトリウムの量は、治療に必要な所定量とされている。そして、リドカイン溶液Aに含有されるリドカイン及び/又はその薬学的に許容できる塩と、ヒアルロン酸溶液Bに含有されるヒアルロン酸ナトリウムとの質量比、例えばリドカインとヒアルロン酸ナトリウムとの質量比は、以下の理由により、0.1以上0.4未満が好ましく、0.1以上0.3以下がより好ましく、0.3程度がさらに好ましい。 【0027】 ヒアルロン酸ナトリウムに対するリドカインの質量比が0.1未満であると、リドカインの局所麻酔効果が十分に発揮されず、ヒアルロン酸ナトリウムの投与直後に誘発される患部の一過性の疼痛をリドカインによって十分に抑制できない恐れがある。一方、ヒアルロン酸ナトリウムに対するリドカインの質量比が0.4以上であってリドカイン溶液A中のリドカインの濃度が高い場合には、リドカイン溶液Aが浸透圧によりミドルストッパ15を湿潤させてヒアルロン酸溶液B中に漏出する不都合がある。そこで、リドカインとヒアルロン酸ナトリウムとの質量比は、前述のように0.1以上0.4未満が好ましく、0.1以上0.3以下がより好ましく、0.3程度がさらに好ましい。 【0028】 以上のように構成された一実施形態のプレフィルド型シリンジ10では、図2に示すように注射針14が針装着部11Aに装着された使用時において、まず、予め定められた所定量のリドカイン溶液Aが患部の関節腔内に注射され、続いて、予め定められた所定量のヒアルロン酸溶液Bが患部の関節腔内に注射される。 【0029】 従って、一実施形態のプレフィルド型シリンジ10によれば、局所麻酔剤としてのリドカインを含有するリドカイン溶液Aに続いて治療薬としてのヒアルロン酸ナトリウムを含有するヒアルロン酸溶液Bを正確な投与量で簡便に患部に注射することができる。 【0030】 ここで、治療薬としてのヒアルロン酸ナトリウムに先立って局所麻酔剤としてのリドカインが患部に注射されるため、リドカインによる患部の局所麻酔効果が十分に発揮され、ヒアルロン酸ナトリウムの注射の際の痛みだけでなく、注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛が十分に抑制される。すなわち、一実施形態のプレフィルド型シリンジ10によれば、リドカインによる患部の局所麻酔効果を十分に発揮させることができ、ヒアルロン酸ナトリウムの注射の際の痛みだけでなく、注射直後に誘発される患部の一過性の疼痛を十分に抑制することができる。 【実施例】 【0031】 一実施形態のプレフィルド型シリンジ10の前室に充填されたリドカイン溶液Aが後室に充填されたヒアルロン酸溶液B中に漏出して移行するか否かの試験を行った。使用したプレフィルド型シリンジ10は、バレル11の材質をCOP樹脂、ミドルストッパ15の材質をゴムとし、それぞれにシリコーンコーティングを施したものである。前室には、リドカイン溶液Aとして0.5%リドカイン溶液1.5mLを充填し、後室にはヒアルロン酸溶液Bとして1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液2.5mLを充填した。ヒアルロン酸ナトリウムに対するリドカインの質量比は0.3である。 【0032】 このプレフィルド型シリンジ10を40℃の温度環境で6ヶ月間保管したが、前室に充填されたリドカイン溶液が後室に充填されたヒアルロン酸ナトリウム溶液中に漏出して移行する事態は確認されなかった。 【0033】 <試験例1>リドカインの疼痛抑制効果の確認試験 【0034】 ヒアルロン酸ナトリウムの投与直後に誘発される患部の一過性の疼痛に対するリドカインの疼痛抑制効果を確認するため、正常な被験ラットの左後肢膝関節を患部と想定し、その患部関節腔内に所定量の塩酸リドカイン溶液とヒアルロン酸ナトリウム溶液とを順次注射した。そして、被験ラットの左後肢にかかる荷重値を右後肢にかかる荷重値で除した両後肢足底荷重比ppr(Paw Pressure Ratio)を注射直後の経過時間毎に測定する試験を行った。この両後肢足底荷重比pprは、値が1であれば患部に痛みがないことを示し、値が1より小さくなる程、患部の痛みが大きいことを示す指標となる。 【0035】 被験ラットは、正規投与群A,Bと、これらと比較するための擬似投与群Cおよび陰性対照群Dに分け、正規投与群A,Bのそれぞれ10匹の被験ラットの左後肢膝関節腔内には、0.5%塩酸リドカイン溶液(Lid)を注射し、その直後に0.1mLの1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA)を注射した。そして、注射直後の経過時間毎に各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。 【0036】 ここで、正規投与群Aは、塩酸リドカイン溶液(Lid)の投与量が0.02mLであって、投与された塩酸リドカインのヒアルロン酸ナトリウムに対する質量比(Lid/HA)は0.1である。また、正規投与群Bは、塩酸リドカイン溶液(Lid)の投与量が0.04mLであって、投与された塩酸リドカインのヒアルロン酸ナトリウムに対する質量比(Lid/HA)は0.2である。 【0037】 一方、擬似投与群Cの10匹の被験ラットの左後肢膝関節腔内には、0.18mLの生理食塩液(Saline)のみを注射し、注射直後の経過時間毎に各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。また、陰性対照群Dの10匹の被験ラットの左後肢膝関節腔内には、0.08mLの生理食塩液(Saline)を注射し、その直後に0.1mLの1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA)を注射した。そして、注射直後の経過時間毎に各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。 【0038】 各群の10匹ずつの被験ラットの両後肢足底荷重比pprの測定結果は、以下の表1および図4のグラフに示す通りであった。ここで、表1中、各群の被験ラットの両後肢足底荷重比pprを示す欄の上段の値は被験ラット10匹のpprの平均値、下段の値は各群のpprの標準誤差SE(n=10)を示している。また、図4のグラフの各ポイントは、各群10匹ずつの被験ラットのpprの平均値±標準誤差SE(n=10)の値を示している。なお、統計解析は、分散分析のうちDunnett法により後検定を行った。 【表1】
【0039】 ここで、表1および図4のグラフに示すように、正規投与群A,Bの被験ラットでは、0.5%塩酸リドカイン溶液(Lid)の投与量が0.02mLから0.04mLに増えると、両後肢足底荷重比pprの値が増大して疼痛抑制効果が上昇することが確認された。すなわち、(HA)の投与直後に誘発される患部の一過性の疼痛に対する(Lid)の疼痛抑制効果は、(Lid)の投与量に依存することが確認された。 【0040】 また、正規投与群A,Bの被験ラットのppr値は、陰性対照群Dの被験ラットのppr値と比較した場合、経過時間0の注射直後および経過時間1分後ではそれぞれ高値(表1中にアンダーラインを付して表示)の傾向を示すことが確認された(Dunnett検定において危険率pはそれぞれp<0.01、p<0.01)。 【0041】 一方、陰性対照群Dの被験ラットにおける経過時間0の注射直後および経過時間1分後のppr値は、同じ経過時間における擬似投与群Cの被験ラットのppr値(表1中にアンダーラインを付して表示)と比較した場合、それぞれ有意に低値であることが確認された(Dunnett検定において危険率pはそれぞれp<0.01、p<0.01)。しかしながら、陰性対照群Dの被験ラットのppr値は、経過時間3分後では擬似投与群Cの被験ラットのppr値より低値の傾向を示すものの有意差は確認されず、経過時間5分後では擬似投与群Cの被験ラットのppr値と同程度の値で推移した。 【0042】 <試験例2>関節痛モデルにおけるリドカインの疼痛抑制効果の確認試験 【0043】 関節痛を生じているモデルの患部にヒアルロン酸ナトリウムを投与した直後に誘発される患部の一過性の疼痛に対するリドカインの疼痛抑制効果を確認するため、正常な被験ラットの左後肢膝関節を患部と想定し、その患部関節腔内に尿酸ナトリウム塩(MSU)針状結晶の懸濁液を注射して患部を起炎させた。使用した尿酸ナトリウム塩(MSU)針状結晶の懸濁液は、10%Tween80含有生理食塩水に尿酸ナトリウム塩(MSU)針状結晶を10%w/v%となるように懸濁した液である。 【0044】 そして、患部の起炎処置から7日後、起炎した被験ラットを正規投与群E,F、擬似投与群Gおよび陰性対照群Hに分け、各群10匹ずつの起炎した被験ラットに対して前述した試験例1と同様の試験を行った。すなわち、正規投与群E,Fのそれぞれ10匹の起炎した被験ラットの左後肢膝関節腔内には、投与量を0.02mL、0.04mLと変化させて0.5%塩酸リドカイン溶液(Lid)を注射し、その直後にそれぞれ0.1mLの1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA)を注射した。そして、注射直後の経過時間毎に正規投与群E,Fの起炎した各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。 【0045】 ここで、正規投与群Eは、塩酸リドカイン溶液(Lid)の投与量が0.02mLであって、投与された塩酸リドカインのヒアルロン酸ナトリウムに対する質量比(Lid/HA)は0.1である。また、正規投与群Fは、塩酸リドカイン溶液(Lid)の投与量が0.04mLであって、投与された塩酸リドカインのヒアルロン酸ナトリウムに対する質量比(Lid/HA)は0.2である。 【0046】 一方、擬似投与群Gの起炎した10匹の被験ラットの左後肢膝関節腔内には、0.18mLの生理食塩液(Saline)のみを注射し、注射直後の経過時間毎に起炎した各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。また、陰性対照群Hの起炎した10匹の被験ラットの左後肢膝関節腔内には、0.08mLの生理食塩液(Saline)を注射し、その直後に0.1mLの1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA)を注射した。そして、注射直後の経過時間毎に起炎した各被験ラットの両後肢足底荷重比pprを測定した。 【0047】 各群の起炎した10匹ずつの被験ラットの両後肢足底荷重比pprの測定結果は、以下の表2および図5のグラフに示す通りであった。ここで、表2中、各群の起炎した被験ラットの両後肢足底荷重比pprを示す欄の上段の値は起炎した被験ラット10匹のpprの平均値、下段の値は各群のpprの標準誤差SE(n=10)を示している。また、図5のグラフの各ポイントは、各群10匹ずつの被験ラットのpprの平均値±標準誤差SE(n=10)の値を示している。なお、統計解析は、分散分析のうちDunnett法により後検定を行った。 【表2】
【0048】 ここで、表2および図5のグラフに示すように、正規投与群E、Fの起炎した被験ラットのppr値は、経過時間15分までの全経過時間にわたって陰性対照群Hの起炎した被験ラットのppr値よりも高い値を示しており(表2中にアンダーライン付して表示)、疼痛抑制効果のあることが確認された(Dunnett検定において危険率pはそれぞれp<0.01、p<0.01)。 【0049】 一方、生理食塩液(Saline)に続いて1.0%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(HA)を注射した陰性対照群Hの起炎した被験ラットのppr値は、経過時間15分までの全経過時間にわたって顕著に低下していることが確認された。 【0050】 また、生理食塩液(Saline)のみを注射した擬似投与群Gの起炎した被験ラットのppr値も、陰性対照群Hの起炎した被験ラットのppr値に較べて軽度ではあるが、経過時間15分までの全経過時間にわたって低下していることが確認された。 【図面の簡単な説明】 【0051】 【図1】本発明の一実施形態に係るプレフィルド型シリンジの未使用状態を示す斜視図である。 【図2】一実施形態に係るプレフィルド型シリンジの使用時の形態を示す縦断面図である。 【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。 【図4】試験例1に示した各群の被験ラットの両後肢足底荷重比pprの経過時間による変化を示すグラフである。 【図5】試験例2に示した各群の被験ラットの両後肢足底荷重比pprの経過時間による変化を示すグラフである。 【符号の説明】 【0052】 10…プレフィルド型シリンジ、11…バレル、11A…針装着部、11B…注射口、11C…バイパス形成用突条、12…プランジャー、12A…エンドストッパ、13…トップキャップ、14…注射針、15…ミドルストッパ、15A…リップ部、15B…ガイド突起、A…リドカイン溶液、B…ヒアルロン酸溶液。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000160522 【氏名又は名称】久光製薬株式会社
|
| 【出願日】 |
平成18年8月28日(2006.8.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088155 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657 【弁理士】 【氏名又は名称】寺崎 史朗
|
| 【公開番号】 |
特開2008−49082(P2008−49082A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月6日(2008.3.6) |
| 【出願番号】 |
特願2006−231149(P2006−231149) |
|