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【発明の名称】 透析装置
【発明者】 【氏名】谷口 昌弘

【氏名】増田 利明

【氏名】松木 和夫

【要約】 【課題】血液に対する活性酸素種の測定を行うのではなく、透析療法における透析液中の活性酸素種の測定を行うことにより、活性酸素種の測定のための特別な患者負担を回避し、血球成分等による干渉を防止し、精度よく、かつ効率的に血液中に含有される活性酸素種を測定することができる装置を提供することを目的とする。

【構成】少なくともダイアライザ、該ダイアライザに連結される体外循環回路、該ダイアライザに連結される透析液回路及び該透析液回路に組み込まれた透析機器を含み、さらに、前記ダイアライザの下流側の前記透析液回路内に活性酸素種センサーが付設されてなることを特徴とする透析装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともダイアライザ、該ダイアライザに連結される体外循環血液回路、該ダイアライザに連結される透析液回路及び該透析液回路に組み込まれた透析機器を含み、さらに、前記ダイアライザの下流側の前記透析液回路内に活性酸素種センサーが付設されてなることを特徴とする透析装置。
【請求項2】
活性酸素種センサーが、導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体の重合膜が形成されてなる活性酸素種用電極を含んで構成される請求項2に記載の透析装置。
【請求項3】
活性酸素種センサーが、さらに、対極及び/又は参照電極を含む請求項3に記載の透析装置。
【請求項4】
活性酸素種センサーが、活性酸素種が関与する酸化還元反応で生じる電流を測定するものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の透析装置。
【請求項5】
活性酸素種が関与する酸化還元反応が、金属ポルフィリン錯体の重合膜中の金属と活性酸素種との間の酸化還元反応である請求項4に記載の透析装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に関し、より詳細には、透析療法において活性酸素種を測定するために用いる透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体は活性酸素に代表される化学物質等に由来するフリーラジカルに暴露されている。特に、高齢、糖尿病、慢性炎症状態に基づくものなどは、抗酸化作用が低下することが知られており、また、透析療法自体でも、血液と生体適合性の低い透析膜との接触、透析液からのエンドトキシンの流入が酸化ストレスを惹起すると言われている。これらの患者においては、フリーラジカルの産生又は暴露がより顕著になる。体内での過剰なフリーラジカルの産生は、正常な細胞や組織に損傷を与え、動脈硬化、心血管合併症、透析関連合併症、透析アミロイドーシスなど種々の病態をもたらすと考えられている。
従って、簡便に血液中の活性酸素種の量を測定することができ、増加した活性酸素を除去するための指標を得ることができれば、各種疾患の発生のリスクの軽減を図ることが可能となる。
【0003】
しかし、従来においては、インビトロ及びインビボにおいて、活性酸素種を簡便に測定することは困難であったため、その結果を直ちに臨床的に応用することはほとんど検討されていなかった。
一般に、活性酸素を測定する方法として、分光分析、磁気分析等が知られている。しかし、いずれも大型の測定装置が必要となる。また、測定に際しては、血液等の生物学的試料を採取し、それを処理する等、時間と手間がかかるという課題があった。
【0004】
一方、近年、活性酸素種を測定するセンサーとして、導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体の重合膜を用いるものが提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、血液中の活性酸素種を測定する場合には、血液中に含まれる血球成分等のタンパクの影響によって、経時的な活性酸素の測定を精度よく行うことは困難である。
【特許文献1】国際特許公開パンフレットWO03/054536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血液に対する活性酸素種の測定を行うのではなく、透析療法における透析液中の活性酸素種の測定を行うことにより、活性酸素種(O2-:スーパーオキシドアニオンラジカル(いわゆる、スーパーオキシド)、HO・:ヒドロキシラジカル、H22:過酸化水素)の測定のための特別な患者負担を回避し、血球成分等による干渉を防止し、精度よく、かつ効率的に血液中に含有される活性酸素種を測定することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透析装置は、少なくともダイアライザ、該ダイアライザに連結される体外循環血液回路、該ダイアライザに連結される透析液回路及び該透析液回路に組み込まれた透析機器を含み、さらに、前記ダイアライザの下流側の前記透析液回路に活性酸素種センサーが組み込まれてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性酸素種センサーが組み込まれた透析装置を用いることにより、透析療法における透析液中の活性酸素種の測定を行うことができ、これによって、活性酸素種の測定のための特別な患者負担を回避し、血球成分等による干渉を防止し、精度よく、かつ効率的に血液中に含有される活性酸素種を測定することができる透析装置を提供することが可能となる。
【0008】
特に、透析患者はその治療の過程で種々の酸化ストレスを受けているが、本発明の活性酸素種の測定が可能な透析装置を用いることにより、透析中の酸化ストレスの評価として、活性酸素種をリアルタイムで測定することができ、透析患者に対する適切な治療を選択することが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、従来から用いられている透析装置に活性酸素種センサーを付設するという簡便な方法により、コンパクト化を実現することができるとともに、透析液中の活性酸素種の安定した測定を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、一般的な透析装置を用いた通常の透析療法をそのまま利用して行うことができる。
透析装置としては、一般的な例として、少なくともダイアライザ、体外循環血液回路、透析機器及び透析液回路を含んで構成されるものが挙げられ、市販されているものの全てを利用することができる。この透析装置には、活性酸素種センサーを、内蔵又は付設、言い換えると、一体化又は取り付けて、利用される。
【0011】
透析装置は、例えば、図1の模式図に示すように、ダイアライザ1、ダイアライザ1へ透析液を供給する新鮮透析液回路2及びダイアライザ1から戻る透析液が流れる使用済透析液回路3からなる透析液回路4、透析患者10から血液をダイアライザ1に導く動脈側体外循環回路5及びダイアライザ1から透析患者10に透析後の血液をもどす静脈側体外循環回路6からなる体外循環回路7、および透析機器8等を含んで構成されるものが挙げられる。
【0012】
透析機器8は、任意に、血中水分量測定手段、透析液の温度の監視及び調整を行う温度センサーを含む温度設定機構、ダイアライザ1に流入させる透析液の流量の制御手段、ダイアライザ1内の血液と透析液との間に圧力差を生じさせて、血液内の水分を透析液側に移行させる除水機構(ビスカスチャンバー方式、除水ポンプを利用したもの等)、体外循環血液回路内に血液を流すための血液ポンプ、除水機構及び血液ポンプ等を制御するための制御部9を備える。
このような透析装置において、ダイアライザの下流側の透析液回路4、つまり、使用済透析液回路3には、活性酸素種センサー11が組み込まれている。
【0013】
活性酸素種センサーとしては、公知のもの及びその原理に準じたものの全てを利用することができる。例えば、活性酸素種測定用の電極を含んでなるものが挙げられる。具体的には、図2(a)に示すような、活性酵素種用電極12自体、あるいは図2(b)に示す2電極(又は3電極式)セル13等を利用することができる(例えば、国際特許公報WO/03/054536号参照)。
【0014】
活性酵素種用電極12は、図2(a)に示すように、絶縁性材料で形成された細管14中に、作用極15となる導電性部材を挿入し、さらにこの細管14の外側に対極16となる導電性部材を被覆することにより形成することができる。作用極15及び対極16を構成する導電性部材は、特に限定されるものではなく、例えば、白金、金、銀等の貴金属、チタン、ステンレス鋼、鉄−クロム合金等の耐食性合金、カーボン等を用いることができる。なお、作用極15の側面(表面)には金属ポルフィリン錯体の重合膜(図示せず)が形成されているものが好ましい。特に、カーボン電極に金属ポルフィリン錯体の重合体が被覆されているものが好ましい。金属ポルフィリン錯体の重合膜を用いることにより、電極を容易かつ安価に作製することができ、薄膜形状でコンパクトに形成することができ、失活しにくい安定な電極を得ることができる。また、式量電位は自在で測定も可能であるセンサーを用いることにより、測定検体の活性酸素種の濃度を分単位で測定することが可能となる。つまり、センサーの反応電極にかける電位を自在に変更することにより、活性酸素種の微量の濃度、測定時間等を変化させることができる。この電極には、さらに参照電極、アース等に相当する導電性部材が、絶縁性材料を介して被覆されていてもよい。
【0015】
また、2電極式セル13は、図2(b)に示すように、上述した活性酵素種用電極12が、測定溶液20を充填したセル容器21に挿入されて構成されている。なお、セル容器21内で、任意に、対極、参照極、アース等を、活性酵素種用電極12と別個に組み合わせて用いてもよい。また、導入口22から導入される透析液を攪拌するためのマグネットスターラ17及び攪拌子18等をさらに備えていてもよい。また、測定溶液20としては、特に限定されないが、透析液の成分及び活性酸素種と反応しないもの、XODを安定化させる薬剤等を含むものが挙げられる。
【0016】
このような原理を実現した活性酸素種センサー19には、さらに、対極と作用極との間に流れる活性酸素種の濃度に対応する微弱電流を、任意に増幅して、測定する活性酸素種濃度測定手段(図示せず)が接続されていることが好ましい。また、活性酸素種センサー19の対極と作用極とに印加するためのポテンシオスタット等の電圧供給手段23等を備えていることが好ましい。
【0017】
このような透析装置を用いる際、まず、透析供給部または透析液供給装置から送られる透析液と、血液とを、ダイアライザにおいて接触させて血液中の物質等の移動及び/又は交換を行う。この工程は、通常、「透析」と呼ばれるものを指す。この場合に使用することができる透析液としては、通常、用いられているもの、例えば、酢酸系透析液、重炭酸系透析液等の全てを用いることができる。さらに透析ろ過や血液ろ過も物質移動の考えからすれば「透析」の範疇とみなされる。
【0018】
続いて、ダイアライザの下流側の透析液回路において、活性酸素種センサーを用いて透析液の活性酸素種を測定する。
活性酵素種の測定は、上述した透析装置に併設又は付加された活性酵素種センサーを利用して行うことができる。つまり、活性酸素種センサーによって、活性酸素種が関与する酸化還元反応で生じる電流、具体的には、作用極、金属ポリフィリン錯体の重合膜中の金属と、活性酸素種との間の酸化還元反応で生じる電流を測定する。
【0019】
つまり、上述したような活性酵素種センサーを用いる場合には、透析液及び/又は透析液が添加された測定溶液に活性酸素種が存在すると、作用極の導電性部材が還元される。この還元された作用極に、酸化され得る程度の電位を印加することにより、作用極が電気化学的に酸化される。従って、この際に流れる電流(酸化電流)を測定することによって、測定された電流値に対応した活性酸素種の濃度を定量的に検出することが可能となる。
【0020】
活性酸素種センサーは、電極自体をダイアライザの下流側の透析液に直接浸漬して用いてもよいが、図2(b)に示したように、ダイアライザの下流側の透析液の一部を測定溶液中に導入することによって、セル形態で用いることが好ましい。また、活性酸素種を測定する透析液は、ダイアライザの下流側から採取したもの、つまり、使用済透析液であればその採取部位等は特に限定されないが、血液と接触した後の、ダイアライザから導出した直後(例えば、30秒以内又は1mの流路以内、早いほど好ましい)のものを測定することが好ましい。
また、活性酸素種の測定は、透析中の任意の単一の時点又は定時的に複数の時点で行ってもよいし、連続的に経時変化を検出するものとして行ってもよい。
【0021】
なお、本発明によって、血液中の活性酸素種を測定した場合、その活性酸素種濃度を調整することが必要な場合がある。つまり、測定した活性酸素種が所定の濃度よりも高いと判断されることがある。このような場合には、血液中の活性酸素種を低減させるための方法を、患者に適用することが好ましい。この低減方法は、特に限定されるものではなく、薬剤を投与する方法、透析液等として特別の処方のものを使用する方法(例えば、特開平9−77672号参照)、透析患者に適用するダイアライザに、活性酸素種を除去する物質(βカロチン;ビタミンC;SOD;脂溶性ビタミン、例えば、コエンザイムQ10、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びユビキノン等)を添加又は塗布する方法(例えば、特開平9−66225号参照)等、公知の技術の全てを利用することができる。これにより、患者の血液中の活性酸素種を有効に除去することができる。
【0022】
以下に、本発明の透析療法における活性酸素種の測定が可能な透析装置の実施例を詳述する。
透析装置として、コンソールNCU−8、NDF−01又はNDF−21(ニプロ(株)社製)において、トリアセテート中空糸ダイアライザ(モデルNo.FB−130U、ニプロ(株)社製)を用いて、透析患者に対して血液透析を行った。この透析装置は、上述したような、図1に示す構成、つまり、ダイアライザ1、ダイアライザ1へ透析液を供給する新鮮透析液回路2及びダイアライザ1から戻る透析液が流れる使用済透析液回路3からなる透析液回路4、透析患者10から血液をダイアライザ1に導く動脈側体外循環血液回路5及びダイアライザ1から透析患者10に透析後の血液を返還する静脈側体外循環血液回路6からなる体外循環回路7、および透析機器8を含んで構成されている。
【0023】
また、活性酸素種センサーは、ナノセンス(商品名)(日美商事株式会社)を用いた。なお、このようなセンサーとしては、図2(b)に示したようなセル型のもの、図2(a)に示したようなニードル型の電極を備えたものの何れでも用いることができる。さらに、対極と作用極との間に流れる活性酸素種の濃度に対応する微弱電流を測定する活性酸素種濃度測定手段とポテンシオスタットを備えて構成されている。
【0024】
このような透析装置を用いて、透析患者2名に対して血液透析を行った。透析開始、30分、60分、120分及び210分まで、透析患者のA(動脈)側血液(A側人工腎臓用血液回路のポート)、ダイアライザ通過後のV(静脈)側血液(V側人工腎臓用血液回路のポート)及びダイアライザを通過した後の透析液のそれぞれを1ミリリットル採取してサンプルとした。各血液サンプル採取用の注射器は微量の抗凝固薬(ヘパリン)をシリンジに加えた。各サンプルについて、活性酸素種測定用電極を用いて、電極電位を測定し、活性酸素種濃度に変換した。
【0025】
なお、活性酸素種を測定するためのサンプルを測定する際には、活性酸素種センサーの先端を活性酸素フリー液(生理食塩液)で数回、完全に洗浄して用いた。ここでの活性酸素フリー液は、生理食塩液の他、ブドウ糖液、透析液等を用いてもよい。
【0026】
その結果を図3に示す。なお、測定結果は、2名の患者において大差はなく、図3では、それらの平均値として表わしている。
図3によれば、血液透析によって、経時的に血液中の活性酸素種の濃度が減少することが観察されるが、その傾向は、動脈血、静脈血及び透析液のすべてについて同様の傾向が認められることが確認された。これにより、使用済透析液における活性酸素種の測定においても、血液中の活性酸素種濃度を正確に測定できることが確認された。
【0027】
このようなことから、活性酸素種の測定結果をリアルタイムで測定することができるために、透析患者の酸化ストレスをその場で評価することができ、直ちに医療現場で適用することができる。また、透析液のサンプリングという簡便な方法により活性酸素種の濃度を測定することができるために、透析患者の負担を回避し、患者ごとの適切な治療方法を選択することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、透析を受ける透析患者に対する透析療法において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の透析装置の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の透析装置と併用する活性酸素種センサーの実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の透析装置及び活性酸素種センサーを用いて透析液の活性酸素種を測定した値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 ダイアライザ
2 新鮮透析液回路
3 使用済透析液回路
4 透析液回路
5 動脈側体外循環血液回路
6 静脈側体外循環血液回路
7 体外循環回路
8 透析機器
9 制御部
10 透析患者
11、19 活性酸素種センサー
12 活性酵素種用電極
13 2電極セル
14 細管
15 作用極15
16 対極
17 マグネットスターラ
18 攪拌子
20 測定溶液
21 セル容器
22 導入口
23 電圧供給手段
【出願人】 【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
【出願日】 平成18年8月17日(2006.8.17)
【代理人】 【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人


【公開番号】 特開2008−43555(P2008−43555A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−222515(P2006−222515)