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【発明の名称】 針状体の版型製造方法および針状体の製造方法
【発明者】 【氏名】上野 雅弘

【氏名】杉村 浩

【要約】 【課題】大量生産に適し、先端部が鋭利で根元部が太く、強度の高い微細なアレイ状の針状体を製造するための版型と、該版型を用いる、生体に適合する針状体の製造方法を提供すること。

【構成】基板10上に、アレイ状に一体成型することの出来る、針状体を形成するための版型を製造する方法であって、(1)複数の針状体に対応する穴型を形成すべき箇所を開口部とするようなマスク11を形成し、ドライエッチング法を用いて針状体の本体に対応する垂直に深掘りされた直方体状の穴型を形成する第1のプロセスを施す工程と、(2)前記マスク11を剥離し、結晶異方性エッチングによって針状体の先端部および根元部に対応する部位に傾斜形状を形成する第2のプロセスを施す工程と、を有してなることを特徴とする前記製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に一体成型することの出来る、針状体を形成するための版型を製造する方法であって、
(1)基板上に、複数の針状体に対応する穴型を形成すべき箇所を開口部とするようなマスクを形成し、ドライエッチング法を用いて針状体の本体に対応する垂直に深掘りされた直方体状の穴型を形成する第1のプロセスを施す工程と、
(2)前記マスクを剥離し、結晶異方性エッチングによって針状体の先端部および根元部に対応する部位に傾斜形状を形成する第2のプロセスを施す工程と、
を有してなることを特徴とする前記製造方法。
【請求項2】
前記版型の材質がシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記垂直に深掘りされた直方体状の穴型の側面がシリコン(110)面であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記針状体の先端部に対応する傾斜形状がシリコンの(111)面で構成される穴型を有してなることを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記針状体の根元部に対応する傾斜形状がシリコンの(311)面で構成される穴型を有してなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの製造方法により製造された版型を用いて、生体適合性樹脂を用いた針状体を形成することを特徴とする針状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラッグデリバリーシステム(以下 DDSとする) 等の医療、創薬に用いる微細針を製造するための針状体の版型製造方法および針状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療・創薬における分野では、痛みを伴わない無痛針として微細な針状体の開発が進められている。
【0003】
微細な針状体の種類として、1本のみで使用されるものとアレイ状に配置され使用されるものがある。
【0004】
従来、微細な針状体は、シリコンをその材質とするものが多く見られる。その製造方法の一つとして、特許文献1に開示されているように、シリコン基板にマスクを設けた後、等方性エッチングまたは結晶異方性エッチングを施し、ある程度針の先端を形成し、さらに異方性エッチングを施し、針本体を形成した後、側面に堆積した堆積層を除去し、さらに勾配エッチングを施し先端を尖らせるというような方法がとられている。
【0005】
しかし、該方法ではマスクを設けた状態で、その直下部分を細らせることによりマスクが倒壊し、歩留まりが悪くなるという問題点がある。また、該方法では勾配エッチングにより先端を尖らせる方法として、HNO3/HF/CH3COOH/H2O溶液を用いた勾配エッチングを行っているが、針の先端が形成された時点で、先の細い先端部が優先的にエッチングされるため、先端部の先鋭度が得られない。
【0006】
また、DDSに用いられる無痛針の材料として、シリコンの針をそのまま用いた場合、万一体内で折れた時に、固体のシリコン針がそのまま体内に残ってしまうという不都合が生じるため、原版より転写を繰り返し、生態適合性のある材質の最終製品を作製することが必要になる。
【0007】
この時、シリコンの針を原版とすると最終製品までに少なくとも二回の転写工程が必要であり、大量生産をする場合の歩留まりが悪くなる。
【0008】
また、医療、創薬の分野においては、人体への影響を無視することは出来ない。このため人体へ用いる用途においては、人体への影響が低負荷である材料を用いた針状体が望まれる。このような人体の影響が低負荷である材料としてポリ乳酸などを用いた微細な針状体を形成した例が報告されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005-199392号公報(段落番号0004参照)
【特許文献2】特開2005-21677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、大量生産に適し、先端部が鋭利で根元部が太く、強度の高い微細なアレイ状の針状体を製造するための版型と、該版型を用いる、生体に適合する針状体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の技術的課題を鑑みてなされたものであって、以下の構成による針状体の版型製造方法および針状体の製造方法を提供する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、アレイ状に一体成型することの出来る、針状体を形成するための版型を製造する方法であって、
(1)複数の針状体に対応する穴型を形成すべき箇所を開口部とするようなマスクを形成し、ドライエッチング法を用いて針状体の本体に対応する垂直に深掘りされた直方体状の穴型を形成する第1のプロセスを施す工程と、
(2)前記マスクを剥離し、結晶異方性エッチングによって針状体の先端部および根元部に対応する部位に傾斜形状を形成する第2のプロセスを施す工程と、
を有してなることを特徴とする前記製造方法である。
請求項2に記載の発明は、前記版型の材質がシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、前記垂直に深掘りされた直方体状の穴型の側面がシリコン(110)面であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記針状体の先端部に対応する傾斜形状がシリコンの(111)面で構成される穴型を有してなることを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記針状体の根元部に対応する傾斜形状がシリコンの(311)面で構成される穴型を有してなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの製造方法により製造された版型を用いて、生体適合性樹脂を用いた針状体を形成することを特徴とする針状体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、大量生産に適し、先端部が鋭利で根元部が太く、強度の高い微細なアレイ状の針状体を製造するための版型と、該版型を用いて製造された、生体に適合する針状体を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、版型の材質をシリコンとしているので、加工性・耐消耗性などに優れ、微細な加工に適し、またシリコン基板(シリコンウェハ)は半導体工程などに用いられており、入手が容易かつ安価である。また、シリコンは結晶異方性エッチング加工に対して、面方位によって大きくエッチング速度が違うため、針状体の先端部形状となる斜めのテーパ面を容易に形成することが出来る。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、垂直に深掘りされた直方体状の穴型の側面をシリコン(110)面とし、結晶異方性エッチング加工を行えば、請求項4に記載の発明のように、針状体の先端部に対応する傾斜形状がシリコンの(111)面で構成されるようになる。この場合、エッチング速度の遅い(111)面が(110)面に対して35.3度の角度で形成される。この角度は、シリコンの持つ物性によって必然的に決定される角度である。これにより、針状体の先端部の角度θは70.6度となる。さらに、請求項5に記載の発明のように、針状体の根元部に対応する傾斜形状がシリコンの(311)面で構成されるようにすれば、版型から針状体を取り出す際に抜け易く有利となり、かつ、この面が針状体の土台となり、針状体の強度も増加し、好ましい。
【0015】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれかの製造方法により製造された版型を用いていることから、生体適合性樹脂を用いた針状体を生産性よく製造することができ、DDSに用いられる無痛針の材料等に、とくに有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のアレイ状に一体成型することの出来る、微細な針状体を形成するための版型の製造方法について、図1〜図3を参照しつつ、工程順に詳細に説明する。
【0017】
(1) シリコンウェハ上にレジストマスクをパターニングする工程(図1(a)〜(c))
まず、図1(a)に示したように、シリコンウェハ10を準備し、図1(b)〜(c)に示したように、レジストマスク11をシリコンウェハ10の表側の面に塗布し、所定の形状にパターニングする。パターニングは、例えば図2に示すように、複数の針状体に対応する穴型を形成すべき箇所を開口部11aとするマスクとなるように行うのが好ましい。
開口部11aは、図2に示すように四角形の形状を成し、シリコンウェハ10の(100)面上に形成される。このとき、開口部11aは、開口部11aにおける四角形のいずれか一辺がシリコンウェハ10の(110)面と平行になるように配置される。
また、レジストには、例えばポジ型レジストを用いる。レジスト塗布には、例えばスピンコーターを用いる。露光には、アライナを用いる。
【0018】
(2) レジストマスクを用いて深掘り加工を施す工程(図1(d))
次に、シリコンウェハ10の表側の面からドライエッチング加工を施し、所定の深さまで垂直に深掘りを行い、図1(d)に示したように、複数の針状体に対応する穴型を形成する。ドライエッチング加工にはICP−RIE(誘導結合型プラズマによる反応性イオンエッチング) 装置を用いる。前述した開口部11aの配置により、深掘り加工を施した際に、穴型内部の側面10bが(110)面となる。
【0019】
(3) レジストマスクを除去する工程(図1(e))
次に、図1(e)に示したように、シリコンウェハ10上に形成されたレジストマスク11を除去する。レジストマスク11は、例えば酸素プラズマによるアッシングによって除去する。
【0020】
(4) 結晶異方性エッチングを施し、針状体形状を形成する工程(図1(f))
次に、図1(f)に示したように、深掘り加工がなされたシリコンウェハ10に対して結晶異方性エッチングを施す。結晶異方性エッチングは、いわゆるウェットエッチングを行い、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液を用い、深掘り加工がなされたシリコンウェハ10を所定の時間浸漬することによって、底面のエッチングが進行しなくなるまで加工する。前述のように、シリコンウェハ10には、表面が(100)面のものを用い、異方性エッチングにより底面の(111)面13が針状体の先端部斜面となるようにエッチングが進行する。深堀り加工で形成された穴型の四方の側面と底面の境界より、それぞれ(111)面が現れ、それらが交わりあったところでエッチングがストップする。
【0021】
また、穴型の入口部では、(100)面側は(311)面12が現れるように、エッチングが進行する。このため、針状体の根元部から本体部となるべき箇所にかけて順テーパ形状が得られる。
【0022】
このような逆テーパ形状は、実際に版型から針状体を取り出す際にも抜けやすく有利であり、また製造された針状体自体の強度も増すという利点も備えている。
【0023】
(5) 生体適合性樹脂を用いた針状体を形成する工程
前記の版型を用い、生体適合性樹脂を用いた針状体を形成する場合は、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、キャスティング法などによって、針状体の複製を行う。複製品の材質は特に制限されないが、生体適合性材料であるデキストラン、ポリ乳酸、シリコーン等を用いることで、生体に適用可能な針状体を形成できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0025】
実施例1
(100)面を表面にもつ、厚さ525μmの単結晶シリコンウェハ10を準備した。
【0026】
次いで、以下の要領でシリコンウェハ10に対して、深掘り加工を施すための、レジストマスクのパターニング処理を施した。すなわち、シリコンウェハ10の表側の(100)面に、レジストマスク11を公知のスピンコートおよび現像処理法により、複数の針状体に対応する穴型を形成すべき箇所が開口部11aとなるように、レジストマスクを形成した。レジストマスクの厚さは14μmであり、現像液は、ポジ型レジスト用現像液を用いた。
【0027】
このようにして作製した、レジスト付シリコンウェハ10に対して、ICP-RIEを用いて図1(d)に示すように垂直深掘り加工処理を施し、複数の針状体に対応する直方体状の穴型を形成した。
【0028】
穴型のシリコンウェハ10に対する垂直方向への深さを200μmとした。
【0029】
次に、レジストマスク11を、酸素プラズマを用いたアッシングを30分間施すことによって除去した。
【0030】
次に、レジストマスク11が除去されたシリコンウェハ10に結晶異方性エッチング加工を施すことによって、図1(f)に示すように針状体の先端部および根元部に対応する傾斜形状を作成した。
【0031】
エッチング液には12.5%に希釈したTMAH液を6L用意した。
【0032】
この12.5%に希釈したTMAH液を80℃に昇温し、そこに深掘り加工を施したシリコンウェハ10を40分間浸漬し、その後20分間、超純水に浸漬するリンス処理を施した。
【0033】
図3(a)に示すように、シリコンウェハ10の表面10aおよび底面は(100)面であり、穴型内部の側面10bが(110)面となる。TMAH液でエッチングをする場合には、図3(b)、(c)に示すように穴型の底面と側面の境界部よりエッチング速度の遅い(111)面13が表面に現れ、(111)面13同士が接触し合ったところでエッチング速度が急激に落ち、形状が維持される。このようにして出来た逆ピラミッド型の部位が針状体の先端部に対応する形となる。この場合、針状体の先端部の角度θは70.6度となる。また側面と表面の境界部では準安定面の(311)面12が表面に現れ、針状体の土台に対応する形状を形成する。
【0034】
このようにして製造された版型を用いて転写を行うと、図4に示すような針状体14がアレイ状に形成された。
【0035】
実施例2
前記版型を用い、インプリント法によって、針状体の複製を行った。ここでは生体適合性材料であるポリ乳酸を用いた。これにより、ポリ乳酸から成る針状体を、図4に示す通りのアレイ状に一体成型された形で形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により得られる版型を用いて製造された針状体は、例えば、医療、生物現象、創薬に用いる微細な針として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】版型の製造工程を経時的に説明するための概略断面図である。
【図2】シリコンウェハ上に形成した深掘り加工用レジストのパターン配置を示す図である。
【図3】結晶異方性エッチングを経時的に説明するための概略断面図である。
【図4】版型を用いて転写して得られた針状体を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10……シリコン基板(シリコンウェハ)、10a……シリコンウェハの表面、10b……穴型内部の側面、11……レジストマスク、12……(311)面、13……(111)面、14……針状体、θ……先端角。
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂


【公開番号】 特開2008−29386(P2008−29386A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−203188(P2006−203188)