| 【発明の名称】 |
皮膚移植片のための方法および組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】アレン−ホフマン, ビー. リン
|
| 【要約】 |
【課題】皮膚移植片のための方法および組成物を提供する。
【構成】ドナーケラチノサイトと共培養された不死化ヒトケラチノサイト細胞を含むキメラな皮膚であって、層化したうろこ状上皮の正常な皮膚構造および分化マーカーを含み、後期段階の分化マーカーの発現および局在化が、損なわれていないヒト皮膚の特徴を示し、前記不死化ヒトケラチノサイト細胞と前記ドナーケラチノサイトとの総和に対する前記不死化ヒトケラチノサイト細胞の比が少なくとも40%である、キメラな皮膚。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドナーケラチノサイトと共培養された不死化ヒトケラチノサイト細胞を含むキメラな皮膚であって、層化したうろこ状上皮の正常な皮膚構造および分化マーカーを含み、後期段階の分化マーカーの発現および局在化が、損なわれていないヒト皮膚の特徴を示し、前記不死化ヒトケラチノサイト細胞と前記ドナーケラチノサイトとの総和に対する前記不死化ヒトケラチノサイト細胞の比が少なくとも40%である、キメラな皮膚。 【請求項2】 ドナーケラチノサイトがヒト起源である、請求項1記載の皮膚。 【請求項3】 不死化ケラチノサイトが、自然に不死化したケラチノサイトである、請求項1記載の皮膚。 【請求項4】 不死化ケラチノサイトがATCC CRL-12191である、請求項1記載の皮膚。 【請求項5】 不死化ケラチノサイトが遺伝子操作されたものである、請求項1記載の皮膚。 【請求項6】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物が発現しているか、または増強されているものである、請求項5記載の皮膚。 【請求項7】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物の発現が抑制されているものである、請求項5記載の皮膚。 【請求項8】 キメラな皮膚を作製する方法であって、 (a)不死化ヒトケラチノサイト細胞の培養物と、ドナーケラチノサイトとを得る工程; (b)不死化ケラチノサイトと、ドナーケラチノサイトとを、キメラな皮膚が形成されるように共培養する工程 を含み、前記皮膚が、層化したうろこ状上皮の正常な皮膚構造および分化マーカーを含み、後期段階の分化マーカーの発現および局在化が、損なわれていないヒト皮膚の特徴を示し、前記不死化ヒトケラチノサイト細胞と前記ドナーケラチノサイトとの総和に対する前記不死化ヒトケラチノサイト細胞の比が少なくとも40%であることを特徴とする、キメラな皮膚を作製する方法。 【請求項9】 ドナーケラチノサイトがヒト起源である、請求項8記載の方法。 【請求項10】 不死化ケラチノサイトが、自然に不死化したケラチノサイトである、請求項8記載の方法。 【請求項11】 不死化ケラチノサイトがATCC CRL-12191である、請求項8記載の方法。 【請求項12】 不死化ケラチノサイトおよびドナーケラチノサイトの少なくとも一方を遺伝子操作する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。 【請求項13】 不死化ヒトケラチノサイトと、ドナーケラチノサイトとを含む単層共培養物であって、層化したうろこ状上皮の正常な皮膚構造および分化マーカーを含み、後期段階の分化マーカーの発現および局在化が、損なわれていないヒト皮膚の特徴を示し、前記不死化ヒトケラチノサイト細胞と前記ドナーケラチノサイトとの総和に対する前記不死化ヒトケラチノサイト細胞の比が少なくとも40%である、単層共培養物。 【請求項14】 ドナーケラチノサイトがヒト起源である、請求項13記載の単層共培養物。 【請求項15】 不死化ケラチノサイトが、自然に不死化したケラチノサイトである、請求項13記載の単層共培養物。 【請求項16】 不死化ケラチノサイトがATCC CRL-12191である、請求項13記載の単層共培養物。 【請求項17】 不死化ケラチノサイトが遺伝子操作されたものである、請求項13記載の単層共培養物。 【請求項18】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物が遺伝子操作の結果として発現しているか、または増強されているものである、請求項17記載の単層共培養物。 【請求項19】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物が遺伝子操作の結果として抑制されているものである、請求項17記載の単層共培養物。 【請求項20】 不死化ヒトケラチノサイトと、ドナーケラチノサイトとを含む器官型共培養物であって、層化したうろこ状上皮の正常な皮膚構造および分化マーカーを含み、後期段階の分化マーカーの発現および局在化が、損なわれていないヒト皮膚の特徴を示し、前記不死化ヒトケラチノサイト細胞と前記ドナーケラチノサイトとの総和に対する前記不死化ヒトケラチノサイト細胞の比が少なくとも40%である、器官型共培養物。 【請求項21】 ドナーケラチノサイトがヒト起源である、請求項20記載の器官型共培養物。 【請求項22】 不死化ケラチノサイトが、自然に不死化したケラチノサイトである、請求項20記載の器官型共培養物。 【請求項23】 不死化ケラチノサイトがATCC CRL-12191である、請求項20記載の器官型共培養物。 【請求項24】 不死化ケラチノサイトが遺伝子操作されたものである、請求項20記載の器官型共培養物。 【請求項25】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物が遺伝子操作の結果として発現しているか、または増強されているものである、請求項24記載の器官型共培養物。 【請求項26】 少なくとも1つの遺伝子または遺伝子産物が遺伝子操作の結果として抑制されているものである、請求項24記載の器官型共培養物。
|
【発明の詳細な説明】【関連出願の相互参照】 【0001】 本出願は米国特許出願第09/844,194号(2001年4月27日出願;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)の一部継続出願である。なお、米国特許出願第09/844,194号は、米国特許出願第09/114,557号(1998年7月13日出願;現在、これは米国特許第5,989,837号(1999年11月23日発行)である)の継続出願である米国特許出願第09/769,124号(2001年1月24日出願)の継続出願である。本出願はまた、米国仮特許出願第60/286,169号(2001年4月24日出願;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)の優先権を主張する。 【連邦政府援助による研究または開発に関する記述】 【0002】 本発明は、下記の当局によって与えられた合衆国政府援助を用いてなされた。国立衛生研究所(NIH)AR40284。合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。 【発明の背景】 【0003】 皮膚は、人体における最大の器官であり、外部環境における感染性病原体などの病原体に対する保護バリアとして、そして体液の恒常性を維持し、かつ組織水分の蒸発を防止する防水バリアとして機能している。損なわれていない(intact)皮膚により、微生物による真皮または他の下層組織の局所的感染が防止されている。妨げられない場合、そのような局所的感染は侵襲性になることがあり、敗血症または全身性感染をもたらし得る。 【0004】 皮膚の一時的な喪失は、多くの場合、致命的または病的な状態をもたらす。皮膚の完全性の広範囲に及ぶ喪失は、たいていの場合、大きなやけどに伴う。皮膚のバリア機能の重要性が、ある年齢の場合、死亡数がやけどのサイズに直接関連するという事実によって明らかにされている。現在の治療基準では、体液の恒常性およびバリア機能を回復させるためにできる限り早く患者の皮膚を再形成することが推奨されている。 【0005】 やけど患者は、たいていの場合、自己の皮膚移植片による皮膚の再形成が行われる。様々な自己皮膚移植片技術が広く使用されているが、成功しないことが多い。例えば、広いやけどを負った患者は、移植部位を覆うために利用可能な十分なドナー皮膚を有しないことがある。 【0006】 現在、2つの主要な代替的な患者救済技術が利用可能である。1つは、やけど組織のすべてを完全に切除し、一時的な表皮で患者を覆うことである。INTEGRA(Johnson and Johnson、New Brunswick、New Jersey)は、ウシコラーゲンおよびコンドロイチン-6-硫酸の内側層と、シリコーンの外側層とを有する新真皮(neo-dermis)二重層である。新真皮の血管形成の後(14日後〜21日後)、シリコーンの外側層が手術によって除去され、患者は、広く網状組織化した薄い自己移植片による皮膚の再形成が行われる。この薄い自己移植片により、限定されたドナー部位が治癒し、かつ連続して集められることを可能にするという明らかな利点が提供される。やけどの社会では、INTEGRAが受け入れられているが、感染に対する感受性により、汚れたやけど傷または感染したやけど傷の患者ではその使用が制限されている(1)。もう1つの大きな制限要因はドナー部位の入手性である。悲劇的なやけど傷害の患者では、はるかにより薄い自己移植片が要求されるという明らかな利点にもかかわらず、十分なドナー部位が利用できる状態にない場合がある。 【0007】 もう1つの広く用いられている技術では、やけど傷を切除し、死者の皮膚の一時的な真皮/表皮被覆物を提供し、皮膚のバリア機能を回復させることである。自己のケラチノサイトが集められ、培養に付される。EPICEL(Genzyme Corporation、Cambridge、Massachusetts)は、市販されている唯一の永続的な代用皮膚であり、ケラチノサイトを、細かい網目ガーゼに付着させて2層〜6層の細胞層の厚さで形成させる。これらの自己移植片は、生検のときから3週間〜4週間で得ることができる。広いやけどの場合、この時間予定は、多くの場合、やけど傷による敗血症の発症と一致している。細菌汚染および他の要因により、従来の分層皮膚移植片では見られないEPICELの大きい失敗率が生じている(2)。 【0008】 やけど傷治療におけるさらなる進歩が組織工学の分野からもたらされ得る。1つの提案は、確立された同種細胞培養物と混合された自己のケラチノサイトのキメラな培養物を用いてバリア機能を回復させることであった(3、4)。これは、最終的な培養物の形成のために要求される時間を著しく減少させることによってより早い傷の被覆を可能にし得る。同種の細胞は拒絶されるので、皮膚のより遅い永続的な表面再形成が自己のケラチノサイトにより行われる。1つの大きな障害は、確立され、培養され、かつ試験された同種ケラチノサイト系統が求められていることである。これまで、これは、ケラチノサイトが培養で老化するので、新しいケラチノサイト系統を継続的に確立および試験しなければならないために実用的ではなかった。 【0009】 皮膚は、真皮および表皮の2層から構成される。真皮は、コラーゲンと弾性繊維とのマトリックスに埋め込まれた繊維芽細胞を含有する結合組織である。対照的に、表皮は主に細胞からなり、結合組織をほとんど有しない。 【0010】 ケラチノサイトは表皮の主要な細胞性成分であり、成人の皮膚では細胞の約80%を構成する。ケラチノサイトは、皮膚のバリア性質ならびに修復的性質および再生的性質を提供することを担う表皮成分である。その名称は、その優勢な細胞骨格成分のケラチンに由来する。ケラチンはケラチンフィラメントのサブユニットであり、I型(酸性)ケラチンおよびII型(塩基性または中性)ケラチンの2つのタイプに分けられる。すべての上皮は、分子量が40kDa〜70kDaの範囲にあるI型ケラチンおよびII型ケラチンを発現する。種々の上皮組織が特異的な対のケラチンを発現する。I型ケラチンおよびII型ケラチンのヘテロ二量体により、弾性強度および構造的支持を細胞および生じる上皮組織に与える中間フィラメントが形成される。 【0011】 表皮は、形態学的および生化学的に異なる4つの層からなる。ケラチノサイトの基底層は、表皮を真皮から隔てる基底膜と接触している。基底細胞は、有糸分裂を行うことができる損なわれていない皮膚における唯一のケラチノサイトであり、それ自体、表皮におけるすべての他のケラチノサイトの源である。基底細胞は、ヘミデスモソームを介して基層に結合し、デスモソームおよびアドヒレンスの接合部を介して隣接細胞に結合する(JensenおよびWheelock(1996)の総説)。基底層の細胞は、形状が柱状であり、ケラチンK5およびケラチンK14を産生する。 【0012】 基底上の最初のケラチノサイト層は、隣接細胞間の多くのデスモソーム接触部が「とげ状」の外観であるためにそのように命名された表皮有棘層である。この層のケラチノサイトは、K5およびK14をもはや産生せず、しかし、その代わり、分化特異的なケラチンK1およびケラチンK10を合成する。細胞は、インボルクリンおよび表皮特異的トランスグルタミナーゼを上部の表皮有棘層において産生し始める。形態学的には、とげ状の細胞は、基底細胞よりも大きく、そして大きく平らになっている(Holbrook(1994)の総説)。 【0013】 インボルクリンの発現は正常な皮膚の基底上細胞および顆粒細胞の細胞質に局在化する(MansbridgeおよびKnapp、1987;Murphy et al.、1984)。インボルクリンはまた、これらの層の細胞周囲に局在化することが示されているが、これらの免疫組織化学実験のために使用された組織は固定処理されていなかった。そのため、このタンパク質が切片作製処理時またはその後で細胞境界に拡散したことが仮定された(Smola et al.、1993;Watt、1983)。 【0014】 トランスグルタミナーゼは、タンパク質を相互に、またはポリアミンに共有結合的に架橋することを触媒するカルシウム依存性酵素の一群である(Rice et al.(1994)の総説)。ケラチノサイトのトランスグルタミナーゼイソ酵素TGKは、基底上表皮において膜結合しており、インボルクリンおよび少なくとも6つの他の膜タンパク質を架橋することを触媒しており、角質化した包膜(CE)を形成する(Rice et al.(1994)の総説)。CEは、形質膜の下に形成された非常に安定な不溶性のタンパク質構造体であり、これは、界面活性剤および還元剤に対して抵抗性があり、かつ最上部の表皮層の最後に分化した細胞に強度および剛直性を与える。多くのCE成分は、TGKを含めて、表皮有棘層で合成されるが、包膜は、細胞が表皮顆粒層から角質層に移動するまでは形成されない。TGKはまた、表皮のその後の層のすべてに見出されている(Michel et al.、1997;Mansbridge et al.、1987;Asselineau et al.、1989)。この酵素は、分化の最終段階において、膜の完全性がなくなり、細胞内へのカルシウムの流入が生じるまでは不活性である(AeschlimannおよびPaulsson、1994)。 【0015】 ケラチノサイトがさらに分化するとき、顆粒層が形成される。この層の細胞は、プロフィラグリン(フィラグリンのタンパク質前駆体)を含有する、電子密度が大きい明瞭なケラトヒアリン顆粒によって特徴づけられる(Dale et al.(1994)の総説)。顆粒細胞はまた、脂質で満たされた顆粒を含有しており、これは、顆粒層と角質層との間の移行域の途中で形質膜と融合し、その内容物を細胞外空間に放出し、これにより疎水性を表皮表面に与える。 【0016】 分化中のケラチノサイトが顆粒層から角質層に移動するとき、プロフィラグリンが切断されて、マクロフィブリルと呼ばれるケラチン束のジスルフィド結合によるアラインメントおよび凝集に関与するフィラグリンが生じる(Holbrook(1994)の総説)。マクロフィブリルは、角質化した包膜の塩基性の構造単位である。正常な皮膚の断面において、フィラグリンが顆粒層に局在化しており、かなり不鮮明な連続した染色が数層の角質化したシート状の層に存在する(Michel et al.、1997;Asselineau et al.、1989;Mansbridge et al.、1987)。フィラグリンに対する抗体により、プロフィラグリンならびにその切断産物が検出されることには留意しなければならない。これにより、顆粒層のケラトヒアリン顆粒の強い斑点状の染色パターンが説明される。 【0017】 最上部の表皮層は角質層である。この層の細胞は、分化プロセスを完了しているので、その核およびすべての代謝機能を失っている。細胞は主に、完成したばかりのCEおよび上に重なる形質膜によって包まれたケラチンフィラメントからなる。角質細胞は、修飾されたデスモソームによって結びつけられており、最終的には皮膚の表面からシート状に剥離する。 【0018】 ケラチノサイトはまた、様々なカドヘリン接着分子を産生する。古典的なカドヘリン(N-カドヘリン、E-カドヘリンおよびP-カドヘリン)は、アドヒレンス接合部に局在化し、かつ相同器官の相互作用による細胞−細胞の接着を媒介するカドヘリンのサブファミリーである。これらのカルシウム依存性膜貫通糖タンパク質は、組織形成における主要な調節的な役割を有しており、細胞間相互作用を容易にする。カドヘリンの複合体はまた、アクチン細胞骨格とのその会合による細胞内シグナルの変換にも関与していると考えられている(Knudsen et al.、1998)。ケラチノサイトはE-カドヘリンおよびP-カドヘリンの両方を産生する。E-カドヘリンは表皮の生存層のすべてに見出されており(JensenおよびWheelock(1996)の総説)、一方、P-カドヘリンは基底層およびすぐ上の基底上細胞に見出されている。 【0019】 皮膚は28日毎に再生される(Sams(1996)の総説)。基底のケラチノサイトが基底膜との接触を失うとき、ケラチノサイトは、基底上層を通って皮膚表面にまで上方向に移動するに従い、最後に分化する娘細胞を産生する。最後の分化には、皮膚のバリア機能および保護機能を行う、死んでいる平らになった鱗屑の層をもたらす一連の生化学的変化および形態学的変化が伴う。これらの角質化した細胞は、通常、剥離して、新たに分化した細胞と置き換わり、これにより、組織の恒常性に関与する増殖と分化との制御されたバランスが維持される。 【0020】 ケラチノサイトの培養 構成要素に分けられたヒト皮膚から単離され、培養された細胞が、ケラチノサイトの増殖および分化を研究するために20年以上にわたって使用されている(Leigh et al.(1994)の総説)。3T3マウス胚繊維芽細胞のフィーダー層の存在下または血清非含有培地配合物において培養されたヒト包皮ケラチノサイトは、老化する前に約80回の集団倍加にわたって持続した増殖を示す(LeighおよびWatt(1994)の総説)。これらの条件のもとで培養されたヒトケラチノサイトは、インボルクリンならびにケラチンK1およびケラチンK10などの分化特異的タンパク質を位置特異的な様式で発現することができる(FuchsおよびWeber(1994)の総説)。 【0021】 うろこ状の分化および限られた層化の特徴が培養ケラチノサイト単層物において一貫して認められるが、正常な皮膚構造は明らかにされていない。従来の液内培養における表皮細胞が、非増殖性の繊維芽細胞の上で培養されたときに最適に増殖するという発見は、ケラチノサイトの細胞生物学の研究に対する大きな貢献であった(Rheinwald、1980;Fuchs(1993)の総説)。この培養システムの使用により、研究者は非常に様々な目的のためにケラチノサイトを連続的に培養することができるようになった。残念なことに、液内培養システムは、真の層化した上皮の特異的な形態学的特徴および生化学的特徴を有しない数層のみのケラチノサイトからなる限られた異常な層化をもたらす。例えば、正常な上皮分化のいくつかのマーカー、例えば、ケラチン1およびケラチン10、そして後期段階のマーカーのフィラグリンなどが液内培養では産生されない(Fuchs(1993)の総説)。いくつかの要因により、このインビトロシステムは制限される。第1に、インビボでの上皮は、真皮の上に位置しており、そのため、その栄養分および増殖シグナルを、真皮から基底膜を通って上に重なる基底細胞層への拡散によって受け取る。これにより、浸っている培地に対するすべての上部表面を介して供給される従来の液内細胞培養では達成することができない極性が組織にもたらされる。第2に、このような様式で増殖した上皮細胞は基底膜を産生せず、正常な分化および増殖を行うためのその間葉系の刺激に曝されない(Fusenig(1994)の総説)。第3に、繊維芽細胞の「フィーダー」層はケラチノサイトの増殖を促進する一方で、このような様式での細胞の培養は、プラスチック基層の上で増殖させた培養物において見られるのと同じ異常な分化特徴または欠落した分化特徴をもたらす。このことは、ケラチノサイトが、機能的な表皮を産生するために、繊維芽細胞および細胞外マトリックスタンパク質のより複雑な間葉を要求することを示している。従って、従来の液内培養システムは、比較的単純化された研究にのみ適する。 【0022】 この20年間にわたって開発および試験されたいくつかのシステムは、よりインビボ様のケラチノサイト培養条件を開発するために設計されている。1979年に、コラーゲンゲルが、ケラチノサイトを空気−培地の境界で増殖させるための生理学的な「基礎」として最初に使用された(Bell et al.、1979;Fusenig(1994)の総説;Parenteau et al.、1992)。これは、培地からの栄養物および増殖因子を、コラーゲンを介してケラチノサイトの基底層に拡散させることができ、そして最上部のケラチノサイト層を空気に露出させた。これらの加えられたインビボ様の条件により、培養された表皮の組織学的構造が改善された。完全な層化および組織学的分化を、これらの三次元の「器官型」培養方法を使用して達成することができ、そしてそのような培養方法は、インビボの増殖環境をより厳密に再現するために引き続き改変されている。 【0023】 その後の器官型システムでは、生きた繊維芽細胞がコラーゲンゲルに取り込まれ、ケラチノサイトが収縮コラーゲンの「基礎」の上に置かれ、そして損なわれていない皮膚をまねるために基礎全体が空気−培地の境界に上げられた(Fusenig(1994)の総説)。この場合、真皮の繊維芽細胞などの内在する真皮細胞が、著しく改善された分化プログラムを有する基底膜および上皮を産生させるための、ケラチノサイトへのシグナル伝達に関与している(WattおよびHertle(1994)の総説)。生存している繊維芽細胞は、基底膜タンパク質の培養ケラチノサイトによる有益なシグナルおよび促進された産生をもたらす。 【0024】 ケラチノサイトの分化 損なわれていない皮膚および器官型培養の両方において、分化中のケラチノサイトは、特定の分化段階に特徴的なタンパク質を産生する。これらのタンパク質マーカーの存在および局在化を、生化学的および免疫組織化学的な方法を使用して検出することができ、そして上皮組織が正常に分化(層化)しているかどうかを明らかにするために使用することができる。いくつかのそのようなタンパク質の発現プロフィルが下記に示される。 【0025】 表皮の分化を明らかにするために非常に広く研究されているタンパク質は、表皮ケラチノサイトにおいて中間フィラメント網目組織を構成するケラチンであり、K5/14およびK1/10が最も注目されている。この網目組織により、核からデスモソームおよびヘミデスモソームと呼ばれる特定の接着接合部にまで広がる細胞骨組みがもたらされる(FuchsおよびCleveland(1998)の総説)。これらの細胞−細胞相互作用および細胞−基層相互作用は、ケラチンフィラメントにつながったとき、ケラチノサイトの相互の固定および下の基底膜への固定を生じさせる。ケラチンフィラメントのK5/K14の対が、層化したうろこ状上皮の基底細胞において発現される(Fuchs(1993)の総説)。予想されるように、K14のmRNAは正常なヒト表皮の基底層にだけ存在する(Stoler et al.、1988)。表皮の基底細胞が分化し始めるとき、基底細胞はK5/K14のその発現をダウンレギュレーションし、分化特異的なケラチンの産生を始める。ケラチンフィラメントのK1/K10の対が表皮の基底上層において発現される(Fuchs(1993)の総説)。K1およびK10は、基底層から離れるときにケラチノサイトにより産生されるので、最後の分化の初期マーカーである。損なわれていないヒト皮膚のサンプルにおいて、K1は、組織の表面全体を通して最初の基底上層に由来する(Stoler et al.、1988;Stark et al.、1999;Asselineau et al.、1989;Boukamp et al.、1990)。 【0026】 初代のヒトケラチノサイト器官型培養物では、K1タンパク質合成の開始が、損なわれていない皮膚と比較して遅れる。タンパク質の局在化が基底膜の上の5層〜8層の細胞層で始まり、これは、正常な皮膚サンプルにおける1層〜2層とは対照的である。K1産生の誘導が、器官型培養物をヌードマウスに移植した後では正常になる(Smola et al.、1993;Stark et al.、1999)。これらの研究では、K1のmRNA発現は調べられていなかった。 【0027】 インボルクリンは、固定処理された組織でさえも、初代ケラチノサイト器官型培養物では基底上の細胞膜に局在化する(Boukamp et al.、1990;Smola et al.、1993;Stark et al.、1999;Watt et al.、1987)。いくつかのグループはまた、膜状のパターンがヌードマウスへの移植後に持続していることを見出した(Breitkreutz et al.、1997;Watt et al.、1987)。 【0028】 TGKの発現は、正常なヒトケラチノサイトの器官型培養物では異なるようであり、最初に表皮有棘層または表皮顆粒層のいずれかで認められ、角質層を通り抜けて上に続く(Michel et al.、1997;Stark et al.、1999)。 【0029】 正常なヒトケラチノサイトの器官型培養物はまた、表皮組織の最上層の顆粒におけるフィラグリンの局在化を示す(Boukamp et al.、1990;Michel et al.、1997;Stark et al.、1999)。 【0030】 分化マーカーに加えて、接着タンパク質の存在および局在化をモニターすることによってもまた、表皮組織の構造的および機能的な一体性を評価することができる。 【0031】 今日まで、E-カドヘリンまたはP-カドヘリンのいずれも、初代ケラチノサイトの器官型培養物では調べられてはいない。しかし、E-カドヘリンが正常な皮膚において免疫組織化学的に検出されている(Haftek et al.、1996)。 【0032】 Smolaおよび共同研究者(Smola et al.、1998)は、正常な真皮繊維芽細胞およびケラチノサイトから構成される器官型培養物が、ヘミデスモソームなどの細胞タイプ特異的な接着構造物を支持することができる基底膜域を発達させることを明瞭に示している。 【発明の概要】 【0033】 本発明は、ヒト不死化ケラチノサイト細胞およびヒトドナー細胞の共培養物が、皮膚移植方法および他の形成外科方法において使用されるキメラな皮膚として都合良く用いられるという点で要約される。 【0034】 本発明の目的および特徴および利点は、添付された図面とともに理解される下記の説明を検討したときに明らかになる。 【発明の説明】 【0035】 本発明は、皮膚移植片を形成させるために、インビトロ培養された条件的不死性のキャリアヒトケラチノサイトと、ドナー患者に由来するケラチノサイトとの組合せを使用することを伴う。本発明者らは、インビトロ細胞培養供給物に由来するそのようなキャリアケラチノサイトが、移植用に好適な操作されたキメラな皮膚を作製するために、単層培養法または器官型培養法を使用してドナー患者のケラチノサイトと共培養できることを本明細書中に開示する。条件的不死性のケラチノサイトは、規定された増殖条件のもとで不死化しているケラチノサイトである。ケラチノサイトは、20回を越える継代について、好ましくは30回を越える継代について、さらにより好ましくは40回を越える継代について、なお一層より好ましくは50回を越える継代について、規定された増殖条件のもとで培養され得るならば、不死性であると見なされる。本明細書において、用語「条件的不死性の」および用語「不死性の(している)」は交換可能に使用される。インビトロ培養された条件的不死性のキャリアヒトケラチノサイトは、移植受容者に対して同種である。ドナーまたは患者に由来するケラチノサイトは、好ましくは、移植受容者に対して自己のものである。 【0036】 いくつかの好ましい実施形態において、自然に不死化したNIKS(Near-Diploid Immortalized KeratinocyteS[近二倍体の不死化したケラチノサイト])細胞株がキャリアケラチノサイトの供給源として利用される。NIKS細胞(ATCC CRL-12191)は、変異原には曝されておらず、野生型のp53遺伝子およびRb遺伝子を有し、細胞タイプ特異的な増殖要求および分化性質を保持し、そしてヌードマウスおよびSCIDマウスにおいて腫瘍形成性ではなく、ウイルスを含まず、損なわれていない皮膚構造を単層培養および器官型培養で再現し、ケラチノサイトの増殖を調節する増殖因子(EGFおよびTGF-β1など)に応答する。このことは、より後の継代において、足場非依存的な増殖を示し、大きいコロニー形成効率を有し、大きい飽和密度に達し、そして連続培養のために細胞タイプ特異的な培養条件を要求しないHaCaT細胞(Boelsma et al.、1999;Schoop et al.、1999)とは対照的である(FusenigおよびBoukamp、1998)。 【0037】 自然に不死化した他のケラチノサイト細胞株(HaCaTなど)とは異なり、NIKSケラチノサイトは、真皮の繊維芽細胞との器官型培養において、元のBC-1-Epケラチノサイトと同じ程度に、そして同じ速度で分化して、元のBC-1-Ep細胞および他の正常なケラチノサイト株と組織学的に同一である層化した上皮を形成させる。角質化する多層化した上皮は高度に組織化されており、ヘミデスモソーム、デスモソーム、ケラチントノフィラメントおよびケラトヒアリン顆粒などの、損なわれていない皮膚に典型的な特徴を示す。元のケラチノサイトおよびNIKSケラチノサイトはともに、ヘミデスモソームを器官型培養において産生する。このことは、細胞外マトリックス糖タンパク質の合成および沈着および組立てが行われていることを示唆している。 【0038】 標準的な単層共培養または器官型共培養において、NIKS細胞は、ヒトケラチノサイトよりも大きくならず、(試験された分化タンパク質の中で)異常な分化タンパク質発現パターンを示さず、そして組織区画境界を守り、基底膜の下に降下せず、また腫瘍細胞のように作用もしない。NIKS細胞は、コラーゲンゲル中において真皮の繊維芽細胞の異常な複製を生じさせない。 【0039】 NIKSは、新生児の包皮から最初に培養され、その後、培養における著しい生存性の利点をこれらの細胞が有することを可能にする、第8染色体の長腕の自然に生じた安定な遺伝的付加が明らかになった。米国特許第5,989,837号および同第6,214,567号(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)には、NIKS細胞の作製および使用が開示される。Allen-Hoffmann, B.L. et al.、「自然に不死化した近二倍体ヒトケラチノサイト細胞株NIKSにおける正常な増殖および分化」、J. Invest. Dermatol.、114:444-455、2000(これは参考として本明細書中に組み込まれる)もまた参照のこと。これには、NIKS細胞を条件的不死性で維持するための好適な単層培養条件および器官型培養条件が記載される。 【0040】 そのような操作されたキメラな単層細胞培養物および器官型細胞培養物ならびに/または操作されたキメラな皮膚等価組織移植片は、即座の傷被覆を提供し、そしてまた、後で正式に傷をふさぐための自己の細胞をも提供するという他にない特徴を有すると考えられる。新しい皮膚等価組織は、例えば、自己の移植片(NIKS+患者の細胞)または同種移植片(NIKS+患者に関して非関連の細胞)または異種移植片(NIKS+ブタの細胞もしくは霊長類の細胞)を、例えば、傷をふさぐ目的(糖尿病性潰瘍、皮膚のやけど、壊死性の皮膚病など)のために、または化粧目的(若返り整形術、他の形成外科手法)のために使用する代用皮膚として使用することができる。本発明のキメラな皮膚等価組織は、当該方法における当業者が既存の移植片および組織を使用する様々な移植方法および他の方法における使用に好適な様々なサイズおよび厚さで提供することができる。 【0041】 しかし、本発明は、キメラな共培養におけるNIKS細胞の使用に限定されない。実際、本発明では、分化するように誘導されたときに角質化した包膜を形成し、正常なうろこ状分化を受け、かつ細胞タイプ特異的な増殖要求を維持している、様々な他の条件的不死化した腫瘍形成性でないキャリア細胞およびキャリア細胞株の使用が考えられる。そのような細胞の他の供給源には、ヒトおよび死体ドナーから採取されたケラチノサイトおよび真皮繊維芽細胞(Auger et al.、In Vitro Cell. Dev. Biol. Animal、36:96-103;米国特許第5,968,546号および同第5,693,332号、これらはそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)、新生児の包皮(Asbill et al.、Pharm. Research、17(9):1092-97(2000);Meana et al.、Burns、24:621-30(1998);米国特許第4,485,096号、同第6,039,760号、同第5,536,656号、これらはそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)、そしてNM1細胞(Baden、In Vitro Cell. Dev. Biol.、23(3):205-213(1987))およびHaCaT細胞(Boucamp et al.、J. cell. Biol.、106:761-771(1988))などの不死化したケラチノサイト細胞株を挙げることができる。これらの細胞株のそれぞれを、より詳しく下記に記載されるように培養または遺伝子操作することができる。本発明の範囲はまた、NIKS細胞の誘導体を含む、上記の好適な細胞タイプから直接的または間接的に由来する細胞および細胞株の使用に拡大される。この場合、そのような細胞および細胞株は、本発明の方法において機能する能力を保持している。 【0042】 一般に、本発明の方法は下記の工程を特徴とする。インビトロでのキャリアケラチノサイト培養物、好ましくは、NIKS細胞などの不死化したケラチノサイトの器官型培養物を得る。培養されたケラチノサイトを遺伝子操作することが望まれることがある。例えば、細胞を、タンパク質もしくは他の遺伝子産物を発現するように、またはタンパク質もしくは他の遺伝子産物の発現を増強するように、あるいはタンパク質もしくは他の遺伝子産物を抑制するように操作することができる。他の操作として、遺伝子のノックインもしくはノックアウト(除去)、または存在する遺伝子もしくは遺伝子産物の変異を挙げることができる。例えば、いくつかの好ましい実施態様において、キャリアケラチノサイト細胞または患者由来細胞のいずれかが、目的とする遺伝子(例えば、ヒトのクルッペル様因子(GKLF)4をコードする遺伝子)でトランスフェクションまたは形質転換される。さらなる好ましい実施態様において、目的とする遺伝子は、適切なベクターにおいてプロモーターに機能的に連結される。いくつかの好ましい実施態様において、インボルクリンまたはトランスグルタミナーゼ3のプロモーターなどの組織特異的なプロモーターが利用される。他の好ましい実施態様において、GKLFの発現は、pTetOnプラスミド(Clontech、Palo Alto、CA)の誘導可能なプロモーターシステムによって駆動される。さらに他の実施態様において、構成的なプロモーターを使用することができる。他の哺乳動物発現ベクターが本発明における使用のために好適であることが考えられる。そのような哺乳動物発現ベクターには、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(以上、Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(以上、Pharmacia)が含まれるが、これらに限定されない。宿主において複製し、生存し続けることができる限り、任意の他のプラスミドまたはベクターを使用することができる。本発明のいくつかの好ましい実施態様において、哺乳動物発現ベクターは、複製起点、好適なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位、転写終結配列、そして5'の隣接非転写配列を含む。他の実施態様において、SV40のスプライス部位およびポリアデニル化部位に由来するDNA配列を、要求される非転写遺伝子エレメントを提供するために使用することができる。さらに、KLF4遺伝子をレトロウイルスベクターによって挿入することができる。トランスフェクションを、当該分野で知られている任意の方法によって達成することができ、そのような方法は、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロ粒子衝撃、リポソーム媒介トランスフェクション、またはレトロウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。 【0043】 さらにさらなる実施態様において、移植片は、治療剤を被験体に提供するために操作される。本発明は、任意の粒子状治療剤の送達に限定されない。実際、酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイムおよびアンチセンスRNA(これらに限定されない)を含む様々な治療剤を被験体に送達できることが考えられる。これらの治療剤は、遺伝的欠陥を正す目的(これに限定されない)を含む様々な目的のために送達することができる。いくつかの特定の好ましい実施態様において、治療剤は、移植片が野生型組織として使用される、代謝の遺伝した先天性の誤り(例えば、アミノ酸症)を有する患者を治療する目的のために送達される。治療剤の送達は、そのような欠陥を正すことが考えられる。いくつかの実施態様において、皮膚等価物を形成させるために使用されるケラチノサイトは、治療剤(例えば、インスリン、凝固因子IX、エリスロポイエチンなど)をコードするポリヌクレオチドを含み、皮膚等価物が被験体に移植される。その場合、治療剤は、移植片から患者の血流または他の組織に送達される。好ましい実施態様において、治療剤をコードするポリヌクレオチドは好適なプロモーターに機能的に連結される。本発明は、任意の特定のプロモーターの使用に限定されない。実際、様々なプロモーターが考えられ、これには、誘導可能なプロモーター、構成的なプロモーター、組織特異的なプロモーターおよびケラチノサイト特異的なプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、治療剤をコードする核酸が、ケラチノサイトに、直接的に、(すなわち、リン酸カルシウム共沈殿またはリポソームトランスフェクションによって)導入される。他の好ましい実施態様において、治療剤をコードする核酸はベクターとしてもたらされ、ベクターが、当該分野で知られている方法によってケラチノサイトに導入される。いくつかの実施態様において、ベクターは、プラスミドなどのエピソームベクターである。他の実施態様において、ベクターはケラチノサイトのゲノムに組み込まれる。組込み型ベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターおよびトランスポゾンベクターが含まれるが、これらに限定されない。 【0044】 さらに他の実施態様において、相同的組換えなどの技術を、遺伝子をノックインまたはノックアウトするために使用することができる。特に好ましい実施態様において、α-2マクログロブリンに対する遺伝子、または主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子が欠失または不活性化される。相同的組換えのための技術および試薬が、米国特許第5,416,260号、同第5,965,977号および同第5,981,214号に記載される(これらはそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)。 【0045】 次に、患者が同定され、共培養のために細胞が単離される。ヒトケラチノサイトを単層培養で培養するために、組織サンプルが得られる。ケラチノサイトがヒトの皮膚または他の層化したうろこ状上皮から単離される。ケラチノサイトの培養物は、以前の記載(Allen-HoffmannおよびRheinwald、1984)のように、マイトマイシンCで処理されたSwissマウス3T3繊維芽細胞の存在下で単一細胞懸濁物の一部を培養することにより確立される。標準的なケラチノサイト培養培地は、2.5%のウシ胎児血清(FCS)、0.4μg/mlのヒドロコルチゾン(HC)、8.4ng/mlのコレラトキシン(CT)、5μg/mlのインスリン(Ins)、24μg/mlのアデニン(Ade)、10ng/mlの上皮増殖因子(EGF)、100ユニットのペニシリンおよび100μg/mlのストレプマイシン(P/S)が補充された、ハムF-12培地:ダルベッコ改変イーグル培地(DME)の混合物(3:1、0.66mMの最終的なカルシウム濃度)から構成される。細胞は、通常、マイトマイシンCで処理されたフィーダー層とともに、100mm組織培養ディッシュあたり3×105個の細胞(約1:25の分割)で、1週間間隔で継代培養される。組換えヒトEGFおよびトランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)はR&D Systems(Minneapolis、MN)から得られる。 【0046】 ドナーケラチノサイトおよびキャリアケラチノサイト(好ましくは、NIKSケラチノサイト)のキメラな培養物を作製するために、ドナーケラチノサイトとキャリアケラチノサイトとの所望される比率が、継代培養のときに、または培養プロセス中の任意の他のときに使用される。例えば、NIKS細胞を接着性のドナーケラチノサイト培養物に加えたり、ドナーケラチノサイトを接着性のNIKS単層培養物に加えたり、またはキャリア細胞およびドナーケラチノサイトを継代培養のときに一緒に混合したりすることができる。 【0047】 キャリアケラチノサイト細胞(例えば、NIKS細胞)とドナー患者由来ケラチノサイトとを器官型培養で培養するためのいくつかの好ましい実施態様において、コラーゲンの基部が、10%FCSおよびP/Sを含有するハムF-12培地においてI型コラーゲンとともに、正常なヒト繊維芽細胞を混合することにより形成される。該コラーゲンの基部は、収縮したコラーゲン基礎を形成させるために5日間収縮させられる。ドナー患者由来ケラチノサイトおよびNIKSケラチノサイトが、0.2%のFCS、0.4μg/mlのHC、8.4ng/mlのCT、5μg/mlのIns、24μg/mlのAdeおよびP/Sが補充されたハムF-12:DMEの混合物(3:1、1.88mMの最終的なカルシウム濃度)の50μlにおいて3.5×105個の細胞で、収縮したコラーゲン基礎に置床される。細胞を2時間付着させ、その後、培養チャンバーを培地で冠水させる(0日目)。1日目および2日目に、細胞には、培地が再び与えられる。4日目に、細胞は綿パッドで空気との境界に上げられ、そして、2%のFCS、0.4μg/mlのHC、8.4ng/mlのCT、5μg/mlのIns、24μg/mlのAdeおよびP/Sが補充されたハムF-12:DME(3:1、1.88mMの最終的なカルシウム濃度)を含有する角質化培地に切り換えられる。細胞には、完全な層化が達成されるまで、角質化培地が3日毎に与えられる(約15日)。培養ディッシュにおけるケラチノサイトの存在を視認することによって、完成した単層培養を確認することができる。完成した器官型培養は、ドナー患者由来ケラチノサイト対キャリアケラチノサイトの比率を観察することによって確認される。 【0048】 本明細書中に例示されるドナー患者由来ケラチノサイト対キャリアケラチノサイトの比率は限定されないものとする。実際、本明細書中に示される指針に基づいて、様々な比率が本発明では使用され得ることは明らかである。従って、いくつかの実施態様において、ドナー患者由来ケラチノサイト対キャリアケラチノサイトの好適な比率は約0.5%:99.5%〜約80%:20%の範囲であり、好ましくは約10%:90%〜約60%:40%の範囲であり、最も好ましくは約20%:80%の比率である。 【0049】 本発明の皮膚移植片は、正常な皮膚の組織構造および組織分化および接着マーカーを有する。従って、本発明の皮膚移植片は、患者由来の皮膚から作製された皮膚移植片よりも早く増殖することができる。 【0050】 ドナーケラチノサイトおよびキャリアケラチノサイトの器官型キメラ共培養物、および得られる本発明の皮膚移植片は、器官型培養物において認められる典型的な変化を考慮に入れると、実質的には上記の「発明の背景」に記載されるように、そして図5に示されるように、正常な皮膚および器官型ヒトケラチノサイト培養物の構造に非常に類似する組織構造を示す。例えば、初代ヒトケラチノサイトおよびNIKS細胞の器官型キメラ共培養物をパラフィン包埋し、切片化し、組織学的検査のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。共培養物は、柱状の基底細胞からなる明らかな基底層を示す。上に重なる表皮有棘層は、より大きい、段々と平たくなる細胞の数層から構成される。上部の層は、ヘマトキシリンで染色されるケラトヒアリン顆粒を有する顆粒状の層を示す。 【0051】 培養物は、うろこ状分化の様々な段階と関連する細胞タイプ特異的なタンパク質の正常な分布を示す。様々な分化マーカーの局在化が、間接的な免疫蛍光を使用して可視化された。初期段階の分化マーカーであるケラチン1が、すべての培養物においてぼやけた細胞質染色として現れ、発現は第1または第2の基底上の細胞層に始まり、層を通り抜けて上方向に続いている。 【0052】 免疫蛍光染色により、最初の数層の基底上細胞層に始まるインボルクリンのぼやけた細胞質タンパク質局在化が示される。NIKS培養物は、8日目、11日目および13日目に、21日目と同一のインボルクリンの空間的局在化を示す(Loertscher et al.、2000)。完全で、正常なヒト皮膚サンプルの以前の分析では、インボルクリンの予想された細胞質局在が明らかにされている(MansbridgeおよびKnapp、1987;Murphy et al.、1984)。本発明者らのデータは、予想されるように、インボルクリンタンパク質が細胞質区画に局在化することを示している。この発見は、ヒトケラチノサイトおよびNIKSケラチノサイトのキメラな器官型培養物が正常かつインビボ様に分化しているという本発明者らの主張を裏づけている。 【0053】 中間の分化マーカーであるTGKは、NIKSとヒトケラチノサイトとのキメラな器官型培養物において同一の局在化パターンおよび強度を示す(図5)。蜂の巣様のその明瞭な外観は、膜結合したTGK酵素の局在化を反映している。 【0054】 後期段階の分化マーカーであるフィラグリンは、その斑点状の染色パターン(図5)によって示されるように、NIKSおよび初代ケラチノサイト基礎の顆粒層の細胞におけるケラトヒアリン顆粒に局在化している。ヒトケラチノサイトとNIKSケラチノサイトとのキメラな器官型培養物は、15日目にフィラグリンの正常な空間的局在化を示した(図5)。 【0055】 免疫組織化学はまた、E-カドヘリンおよびP-カドヘリンの存在および局在化を明らかにするために使用された。本発明の共培養物において、E-カドヘリンは、すべての培養物において細胞−細胞の接触領域に現れ、発現はすぐ上の基底上層に始まり、生きている基層を通り抜けて上に続いている(図5)。P-カドヘリンの発現パターンもまた、すべての培養物において類似しているが、基底層に始まり、最初の数層の基底上層にだけ続いている(図5)。これらの発見は、損なわれていない皮膚で認められる知見を反映しており、キメラな器官型のヒトケラチノサイトとNIKSケラチノサイトとの培養物が、ヒトケラチノサイト単独および/または損なわれていないヒト皮膚の器官型培養物と比較した場合、カドヘリン分子の適切なパターンをもたらすことを明らかにしている。 【0056】 本発明は、下記の非限定的な実施例を検討したとき、より完全に理解される。 【実施例】 【0057】 方法 細胞培養方法 ドナーケラチノサイト(GS-1-EP、LAW-1-EP)を新生児のヒト包皮から単離した。サンプルは、病院のヒト被験体委員会および生物安全性委員会の承認のもとでの割礼の後に得られた。GS-1-EP、LAW-1-EPおよびNIKSの各ケラチノサイト培養物は、以前の記載(6)のように、単一細胞懸濁物の一部を、マイトマイシンCで処理されたSwissマウス3T3繊維芽細胞(mito-3T3)の存在下で培養することにより確立された。標準的なケラチノサイト培養培地は、2.5%のウシ胎児血清(FCS)、0.4μg/mlのヒドロコルチゾン(HC)、8.4ng/mlのコレラトキシン(CT)、5μg/mlのインスリン(Ins)、24μg/mlのアデニン(Ade)、10ng/mlの上皮増殖因子(EGF)、100ユニットのペニシリンおよび100μg/mlのストレプマイシン(P/S)が補充された、ハムF-12培地:ダルベッコ改変イーグル培地(DME)の混合物(3:1、0.66mMの最終的なカルシウム濃度)から構成された。細胞は、mito-3T3フィーダー層とともに、100mm組織培養ディッシュあたり3×105個の細胞(約1:25の分割)で、1週間間隔で継代培養された。 【0058】 緑色蛍光タンパク質を発現するNIKS(NIKSGFP)の作製 プラスミドDNAを、エンドトキシン非含有Maxiprepキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して調製した。pGreenLantern(Gibco-BRL、Rockville、MD)およびpcDNA3neo(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、XmnIおよびBglIIの制限酵素(Promega、Madison、WI)をそれぞれ使用して線状化した。合計で20μgのDNA(15μgのpGreenLanternおよび5μgのpcDNA3neo)を、3:1のpGreenLantern対pcDNA3neoの比率でNIKS細胞をトランスフェクションするために使用した。NIKSを100mmのディッシュにおいてmito-3T3フィーダー層の上に3×105細胞の密度で置床した。細胞を48時間接着させ、その後、mito-3T3層を、0.5mMのEDTAを用いて除いた。継代数が30〜40であるNIKS細胞を、ポリカチオン性の脂質GeneFECTOR(VennNova、Miami、FL)を使用してトランスフェクションした。トランスフェクション混合物は、各100mmディッシュについて、線状化プラスミドDNAおよびGeneFECTORを、滅菌milli-Q水で500μlの最終容量に加えることによって作製された。トランスフェクション混合物をゆっくりゆすり、室温で15分間インキュベーションした。NIKS細胞をDMEで2回洗浄して、5mlのDMEを再び与えた。500μlのトランスフェクション混合物を各100mmプレートに滴下様式で加え、細胞を、5%CO2のもと、37℃で5時間インキュベーションした。培地を除き、細胞をDMEで2回洗浄して、血清含有培地を再び与えた。細胞を、GFPの発現を観察するために、GFP短帯域通過フィルターを備えたIX-70倒立蛍光顕微鏡(Olympus、Melville、NY)でトランスフェクションの24時間後に調べ、その後、フロー活性化細胞分取(Flow-Activated Cell Sorting: FACS)によって分析した。 【0059】 ケラチノサイトの増殖速度に対するキメラ培養の評価 NIKSGFP、LAW-1-EPおよびGS-1-EPを別々に培養し、1:1、1:10および1:100(NIKSGFP:GS-1-EPまたはLAW-1-EP)の比率で混合した。細胞を3T3フィーダー層に三連で105細胞/60mmディッシュの最終濃度で置床し、4日後に計数した。実験を、NIKSGFPおよびGS-1-EPを用いて2回、そしてLAW-1-EPを用いて1回繰り返した。結果を、異なる系統のケラチノサイトの間における培養効率の差について正規化した。 【0060】 器官型培養方法 器官型培養物を、下記の変化を用いて透明ウエル培養チャンバーにおいて以前の記載(7)のように増殖させた。コラーゲンの基部を、10%のFCSおよびP/Sを含有するハムF-12培地において正常なヒト新生児繊維芽細胞(系統:CI-1-F)をラットの尾の腱のI型コラーゲンと混合することによって形成させた。コラーゲンの基部を4日間〜7日間収縮させた。LAW-1-EP、GS-1-EPおよびNIKSGFP(継代数:47)を下記の比率で別々に培養した。(90%NIKSGFP、10%LAW-1-EP)、(87.5%NIKSGFP、12.5%LAW-1-EP)、(75%NIKSGFP、25%LAW-1-EP)、(50%NIKSGFP、50%LAW-1-EP)。合計で3.5×105個の細胞を、0.2%のFCS、0.4μg/mlのHC、8.4ng/mlのCT、5μg/mlのIns、24μg/mlのAdeおよびP/Sが補充されたハムF-12:DMEの混合物(3:1、1.88mMの最終的なカルシウム濃度)の50μlで、収縮させたコラーゲン基部に置床した。細胞を2時間付着させ、その後、培養チャンバーを培地で冠水させた(0日目)。2日目に、細胞には、培地が再び与えられた。4日目に、細胞は綿パッドで空気/培地の境界に上げられ、2%のFCS、0.4μg/mlのHC、8.4ng/mlのCT、5μg/mlのIns、24μg/mlのAdeおよびP/Sが補充されたハムF-12:DME(3:1、1.88mMの最終的なカルシウム濃度)を含有する角質化培地に切り換えられた。細胞には、角質化培地が3日毎に与えられ、細胞を16日目に集めた(図1)。 【0061】 組織学および免疫組織化学の方法 標本を1%パラホルムアルデヒドで2時間固定した。凍結のための準備において、培養物を20%スクロース/PBSに4℃で一晩浸け、その後、液体窒素で冷却されたイソペンタン浴におけるOCTにて凍結した。凍結保存された培養物および移植片生検物を連続切片(5μm)にして、ガラス製スライドガラスに載せ、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、Olympus IX-70倒立顕微鏡で調べた。像を、DEI-750カメラ(Optronics Engineering)およびImage-Pro Plusソフトウエア(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)を用いて取得した。分化マーカーの免疫組織化学分析のために、凍結保存された組織を連続切片(5μm)にして、ガラス製スライドガラスに載せ、-20℃のアセトンで軽く固定した。切片をPBSで洗浄し、3%の正常ヤギ血清(Sigma、St. Louis、MO)でブロッキングして、一次抗体と1時間インキュベーションした。一次抗体には、抗ケラチノサイトトランスグルタミナーゼ(1:100の希釈)(Biomedical Technologies Inc.、Stoughton、MA)、抗フィラグリン(1:250の希釈)(Biomedical Technologies Inc.、Stoughton、MA)、抗ケラチン-1(1:50の希釈)(Novo Castra、Newcastle upon Tyne、英国)、抗E-カドヘリン(1:80の希釈)(Transduction Laboratories、Lexington、KY)、抗P-カドヘリン(1:20の希釈)(Transduction Laboratories、Lexington、KY)、および抗インボルクリン(1:5000の希釈)(Sheibani、1994)が含まれる。その後、切片をAlexa594コンジュゲート化免疫グロブリン-G(1:1000の希釈)(Molecular Probes、Eugene、OR)とインキュベーションして、Hoechst33258(1μg/ml)で対比染色した。すべてのインキュベーションは、37℃で行われた抗P-カドヘリン一次抗体のインキュベーションを除き、室温で行われた。切片を、FITCおよびHoechstの帯域通過フィルターを備えたOlympus IX-70倒立顕微鏡で調べた。像を、DEI-750カメラ(Optronics Engineering)およびImage-Pro Plusソフトウエア(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)を用いて取得した。 【0062】 キメラな器官型培養物の移植 Harlan Sprague Dawleyから得られた無胸腺Nu/Nuマウス(5週齢)を使用した動物実験は、ウィスコンシン大学動物研究規則に従って行われ、動物の管理および使用委員会によって承認された。マウスは、麻酔の導入のために3%イソフルランを使用して麻酔され、その後、処置期間中については1.5%〜2.5%のイソフルランで維持された。移植処置を始める前に麻酔のレベルを評価するために、マウスについて足の指をつまんだ。手術後の痛み管理はブプレノルフィン(0.05mcg/kgの皮下)で緩和された。抗生物質(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリム、5mlあたり200mg/40mg)を、手術後の最初の3日間、飲料水に入れた(10ml/250ml H2O)。マウスは4%クロルヘキシジングルコナート(Zeneca Pharmaceuticals、Wilmington、DE)で消毒され、滅菌された生理食塩水で洗浄され、その後、切開された。皮膚の欠損部をマウスの背に作製した。器官型培養された移植片を、真皮側を下にして置き、ナイロン縫合糸で固定した。バシトラシン亜鉛(500ユニット)および硫酸ポリミキシンb(10,000ユニット)の軟膏(E. Fougera、Melville、NY)を含浸させたAquaphorガーゼ(Beiersdorf-Jobst Inc、Rutherford College、NC)を、移植片を覆って留めた。Xeroformガーゼ(3%ビスマストリブロモフェナート)(Sherwood Medical、St Louis、MO)を、移植片の上部を覆って留めた。スパンデッックス織物のさらなる層が所定位置に留められ、マウスが包帯を取り除かないようにした。マウスを手術後1週間にわたって毎日観察した。1週間後、マウスは前記のように再び麻酔され、包帯が除かれた。移植片の生検物を、7日、14日および28日の間隔で、CO2チャンバーで安楽死させた後に得た。 【0063】 結果 緑色蛍光タンパク質を発現するNIKS(NIKSGFP)の作製 本発明者らは、異種遺伝子の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させるためにNIKS細胞を遺伝子操作した。これらの細胞は、mito-3T3フィーダー層とともに、100mm組織培養ディッシュあたり3×105個の細胞で1週間の間隔で継代培養された。NIKSGFPは、この研究の多くの局面について重要な細胞試薬であり、蛍光顕微鏡での可視化を可能した(図2)。NIKSGFPは、増殖および分化の特徴が、トランスフェクションされていないNIKS細胞の特徴と同一である。 【0064】 ケラチノサイトの増殖速度に対するキメラ培養の評価 単層培養技術では、GFPを発現するNIKS細胞とドナーヒトケラチノサイトとの連続したキメラな上皮シートの形成が報告された。NIKSGFP細胞を他の系統のケラチノサイトと共培養することにより、単層培養におけるケラチノサイトの増殖速度はいずれの系統も影響を受けなかった。NIKSGFPの継代培養物は、LAW-1-EPまたはGS-1-EPのいずれかよりも遅い速度で90%のコンフルエンスに達する。すなわち、NIKSGFPは、単層培養では増殖速度が遅くなっている(図3)。正規化された結果は、単層培養における増殖速度に対する、1:1、1:10および1:100の比率でのキメラな培養の影響がないことを示している(図4)。 【0065】 器官型培養物の組織学および免疫組織化学分析 キメラなNIKSGFP/LAW-1-EPのインビトロ器官型培養物では、1:1および3:1の比率における正常な増殖および構造が明らかにされている(図2)。NIKSGFPおよびGS-1-EPの器官型培養物でもまた、正常な構造が、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色することにより、1:1、10:1および100:1の比率において明らかにされた。分化マーカーおよび接着分子の免疫組織化学的分析が図5に示される。ケラチン1および膜結合した分化マーカーのトランスグルタミナーゼ-1が基底上の位置に見出された。トランスグルタミナーゼ-1は、細胞膜と結合してリング状に明瞭に認められる。フィラグリンの染色は顆粒層にほぼ限定されている。接着分子の分析では、P-カドヘリンの発現が基底層にほぼ限定され、そしてE-カドヘリンの発現が表皮全体に存在することが示される。 【0066】 キメラな器官型培養物の移植 培養された移植片の実用性が注目された。培養された移植片は、取扱いが容易であり、傷床部に容易に移すことができる。移植片は、縫合または固定によって裂けず、非破砕性網目化体(Brennan Medical、St. Paul、MN)との2:1の比率で問題なく網目化した。著しい初期の移植片収縮が生じたが、移植片サイズは20日目までに安定化した(図6)。移植片の生検物により、正常な組織構造およびGFP発現が7日目および28日目に明らかにされた(図7、図8)。X-Y動原体の分析により、ヒト細胞の存在が確認された(図9)。 【0067】 考察 悲劇的なやけど傷害の患者は、受容部位を覆うために利用できる十分なドナー部位を有していない。皮膚の表面再形成のために利用できる現在の技術は、やけど患者の命を救うことができるが、大きな問題が残っている。自己の培養されたケラチノサイトの使用に対する大きな障害は、クローン拡大のために要求される遅れである。多くの場合、患者は、培養された移植片が利用できるようになる前に、制御できない敗血症を発症してしまう。従って、自己の皮膚移植片を作製するために要求される培養時間を短くすることは、患者治療における大きな改善であると考えられる。 【0068】 本発明者らは、今回、NIKS細胞が、器官型培養物でドナーヒトケラチノサイトと共培養することでき、そして皮膚移植のために好適な操作された組織として使用できることを明らかにした。10%の自己ケラチノサイトを点在させた90%の同種細胞を使用する迅速な器官型増殖により、より早い傷被覆が可能になると考えられる。同種の細胞は拒絶されるので、皮膚のより遅い永続的な表面再形成化が自己のケラチノサイトにより生じると考えられる。そのような移植片は、即座の傷被覆を提供し、そしてまた、後で正式に傷をふさぐための自己の細胞を提供するという他にない特徴を有していると考えられる。 【0069】 この特異な方法の実現可能性が動物モデルで以前に明らかにされている。いずれかの実験マウスに移植された異なる系統のマウス(BALB/cおよびC3H/He)に由来するキメラ培養されたケラチノサイトは、同系ケラチノサイトの長期間の生存および同種ケラチノサイトの拒絶をもたらした(3)。このことはまた、98%の同種細胞および2%だけの同系細胞を含有するキメラなケラチノサイト培養物を使用して示されている(8)。さらに、マウスに移植されたキメラな同系−異種(マウス−ヒト)の培養されたケラチノサイトは、異種の細胞が排除されたので、同系細胞による皮膚の完全な表面再形成化をもたらした(4)。 【0070】 この技術の臨床的進歩に対する大きな障害は、確立された同種ケラチノサイトの系統を入手することができないことであった。NIKS細胞株に伴う著しい生存性の利点により、NIKS細胞株は、患者の自己ケラチノサイトとのキメラ培養を行うための十分に適する同種細胞株になる。より低いコンフルエンスで継代培養され、培養されているNIKSに加えられた自己のケラチノサイトは、著しい時間節約を生じさせることができる。NIKSを患者の自己ケラチノサイトとキメラ培養することは、後で正式に傷をふさぐために自己の細胞を提供する操作された組織による、より早い傷被覆をもたらすと考えられる。 【0071】 本発明者らは、キメラな様式でドナーケラチノサイトと共培養されたとき、一方の細胞タイプがもう一方の細胞タイプよりも大きく成長しないことを示している。本発明者らはさらに、後期段階の分化マーカー(ケラチン1、トランスグルタミナーゼ1およびフィラグリン)および接着分子(E-カドヘリンおよびP-カドヘリン)の発現および局在化が損なわれていない皮膚のそれらの発現および局在化と同一であることを示している。NIKSは、永続的な同種ドナーケラチノサイト系統として使用される好ましい細胞株である。 【0072】 今日まで、NIKS細胞株は、主要組織適合性複合体抗原(MHC)の発現について特徴づけされておらず、その拒絶反応特性は不明である。皮膚移植片とは異なり、器官型培養物は、ランゲルハンス細胞および毛細血管などの非常に抗原性の上皮エレメントまたは血管内皮エレメントを含んでいない。NIKSは、ヒトに置かれたとき、拒絶されないことが可能である。キメラ培養された皮膚移植片は、免疫適格の動物モデルでは異種移植の拒絶を受けると考えられるが、そのような皮膚移植片では、NIKS細胞が臨床的環境で拒絶されるかどうかは明確には明らかにされていない。NIKSが拒絶反応によって能動的に排除されるならば、表面再形成化は自己の細胞によって行われると考えられる。NIKSが拒絶されないならば、この細胞株は、潜在的には、万能的なドナー皮膚として機能し得る。少なくとも、キメラ培養されたNIKSは、一時的な生物学的被覆体として、そして自己のケラチノサイトに対する送達ビヒクルとして作用すると考えられる。 【0073】 毛細血管叢がないこともまた重要である。これは、培養された皮膚の血管再生が、既に存在する毛細血管に対する血管吻合によって行われるのではなく、むしろ、血管形成によって行われるからである。血管再生の遅れは、本研究において見られる移植片サイズの迅速な初期の減少のためであり得るが、別の説明は、迅速な傷収縮は無胸腺マウスの特徴であるということが考えられる。様々な遺伝子操作技術が、培養された皮膚における固有的な血管再生の遅れを検討するために使用されている。 【0074】 NIKSは、NIKSGFPの成功した作製によって明らかに示されるような安定な細胞株を作製するための分子遺伝学技術を容易に受けることができる。NIKS細胞は遺伝子操作することができるので、キメラな移植片の傷治癒特性を促進させるために、遺伝子操作されたNIKSケラチノサイトをキメラな培養物に取り込むことが可能である。さらに、増殖因子の発現などの特定の遺伝的プロフィルを有するNIKS細胞株を作製することができる。結果として、用途に応じて作製された非常に様々なNIKS型組織産物を作製することができる。 【0075】 本発明は、前記の開示に限定されるものではなく、むしろ、添付された請求項の範囲に含まれるそのような改変および変化のすべてを包含するものとする。 【0076】 参考文献 1.Boyce, S.T., et al.、切除された全層やけど部をふさぐための無処理の皮膚自己移植片および同種移植片の代わりに使用するためのIntegra Artificial Skin(登録商標)と組み合わせられる培養された代用皮膚、J. Burn Care Rehabil.、20:453-461、1999。 【0077】 2.Cairns, B.A., et al.、傷を最適にふさぐための生物工学的探求、Arch. Surg.、128:1246-1252、1993。 【0078】 3.Suzuki, T.、Ui, K.、Shioya, N.およびIhara, S.、移植可能な代用皮膚として同系および同種のマウスケラチノサイトを含む混合培養物、Transplantation、59:1236-1241、1995。 【0079】 4.Rouabhia, M.、異種および同系のケラチノサイトを含むキメラな上皮の培養シートを使用する永続的な代用皮膚、Transplantation、61:1290-1300、1996。 【0080】 5.Allen-Hoffmann, B.L., et al.、自然に不死化した近二倍体ヒトケラチノサイト細胞株NIKSにおける正常な増殖および分化、J. Invest. Dermatol.、114:444-455、2000。 【0081】 6.Allen-Hoffmann, B.L.およびRheinwald, J.G.、培養におけるヒト表皮ケラチノサイトの多環芳香族炭化水素の突然変異誘発、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:7802-7806、1984。 【0082】 7.Parenteau, N.L., et al.、形態および機能を達成するためのヒト皮膚ケラチノサイトと繊維芽細胞との器官型培養、Cytotechnology、9:163-171、1992。 【0083】 8.Larochelle, F.、Ross, G.およびRouabhia, M.、5%未満の同系ケラチノサイトを含有する操作された表皮を使用する永続的な代用皮膚、Lab. Invest.、78:1089-1099、1998。 【0084】 9.Vogt, P.M., et al.、傷部に移植された遺伝子操作ケラチノサイトは表皮を再構成する、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、91:9307-9311、1994。 【0085】 10.Supp, D.M.、Supp, A.P.、Bell, S.M.およびBoyce, S.T.、血管内皮細胞増殖因子を過剰発現するように遺伝子操作された培養代用皮膚の増強された血管新生、J. Invest. Dermatol.、114:5-13、2000。 【0086】 11.Supp, D.M.およびBoyce, S.T.、血管内皮細胞増殖因子の過剰発現は遺伝子操作された培養代用皮膚の初期の血管新生を促進させ、その治癒を改善させる、J. Burn Care Rehabil.、23:10-20、2002。 【図面の簡単な説明】 【0087】 【図1】図1は、器官型培養物を調製するフローチャートである。 【図2】図2A〜図2Hは、共培養された組織の1組の断面である。図2Aおよび図2BはNIKSGFP細胞である。図2Cおよび図2DはLAW-1ケラチノサイトである。図2Eおよび図2Fは、比率が1:1のNIKSGFPおよびLAW-1-EPケラチノサイトである。図2Gおよび図2Hは比率が3:1である。図2A、図2C、図2Eおよび図2Gは、ヘマトキシリンおよびエオシンにより染色されている。図2B、図2D、図2Fおよび図2Hは、細胞の核を見るためにHoescht染色されている。 【図3】図3は、単層培養の増殖速度の棒グラフである。 【図4】図4は、単層培養の正規化された増殖速度の棒グラフである。 【図5】図5A〜図5Jは、分化マーカーおよび接着分子の免疫組織化学的分析を表す1組の断面である。図5Aおよび図5Bはケラチン-1を示す。図5Cおよび図5Dはトランスグルタミナーゼ-1を示す。図5Eおよび図5Fはフィラグリンを示す。図5Gおよび図5HはE-カドヘリンを示す。図5Iおよび図5JはP-カドヘリンを示す。図5A、図5C、図5E、図5Gおよび図5Iは、組織の組織学を見るためにヘマトキシリンおよびエオシンにより染色されている。図5B、図5D、図5F、図5Hおよび図5Jは、間接的な免疫蛍光技術を使用して可視化されている。 【図6】図6は、平均的な傷収縮面積のグラフである。 【図7】図7A〜図7Cは、生検物切片の1組の図である。図7Aはインビボでの外観である。図7Bは、組織学を見るためのヘマトキシリンおよびエオシンである。図7CはGFP発現である。 【図8】図8Aおよび図8Bは、移植後28日における生検物切片の1組の図である。図8Aは組織学である。図8BはGFP発現である。 【図9】図9A、図9Bおよび図9Cは、x/y動原体を分析する1組の図である。図9Aは28日におけるキメラ体の図である。図9Bおよび図9Cはx/y動原体の分析である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】390023641 【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ フオンデーシヨン 【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
|
| 【出願日】 |
平成19年9月4日(2007.9.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070002 【弁理士】 【氏名又は名称】川崎 隆夫
【識別番号】100076439 【弁理士】 【氏名又は名称】飯田 敏三
|
| 【公開番号】 |
特開2008−43772(P2008−43772A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月28日(2008.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2007−229461(P2007−229461) |
|