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【発明の名称】 急速ゲル化生体適合性ポリマー組成物
【発明者】 【氏名】ウォレス, ドナルド ジー.

【氏名】コーカー, ジョージ ティー. ザ サード

【氏名】シュローダー, ジャクリーン アン

【氏名】クルーズ, グレゴリー エム.

【氏名】リー, ウーンザ エム.

【氏名】マロニー, マルセー エム.

【要約】 【課題】一緒に混合された場合、急速に共有結合を形成するツーパートポリマー組成物に関する。

【構成】一緒に混合された場合に、迅速に反応して投与部位にてマトリクスを形成する、2成分ポリマー組成物を開示する。このような組成物は、1分未満のゲル時間を示す。このような組成物は、組織への急速な接着およびゲル形成が所望される場合の組織関連の様々な用途に使用するために特に適切である。特に、これらは、止血を促進する際、薬物送達のため、組織接着を行う際、組織増強を提供する際、および外科的癒着の防止において、組織シーラントとして有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボ投与のための生体適合性二成分ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
式、化合物1−(SH)mで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル基含有化合物を含む第1成分であって、ここでm≧2である、第1成分;および
式、化合物2−Ynで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル反応性基含有化合物を含む第2成分であって、ここでYはスルフヒドリル反応性基であり、そしてここで、n≧2である、第2成分、
を含み、
ここで、該第1成分または第2成分の少なくとも1つがポリアルキレンオキシドであり、そしてここで、該スルフヒドリル基および該スルフヒドリル反応性基が一緒に混合される場合、該成分は互いに反応して、それらの間で共有結合を形成して、1分未満でゲルを形成する、組成物。
【請求項2】
組織を処置するための方法における使用のためのキットであって、該キットが、以下:
(a)式、化合物1−(SH)mで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル基含有化合物を含む第1成分であって、ここで、m≧2である、第1成分を含む容器;および
(b)式、化合物2−Ynで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル反応性基含有化合物を含む第2成分であって、ここで、Yはスルフヒドリル反応性基であり、そしてここで、n≧2である、第2成分を含む容器;および
(c)第2成分を、組織部位に第1成分と同時にまたは引き続いて投与することにより該スルフヒドリル基および該スルフヒドリル反応性基を互いに反応させて、それらの間で共有結合を形成し、1分未満でゲルを形成することを示す説明書、
を包含し、ここで、該第1または第2成分の少なくとも1つがポリアルキレンオキシドである、
キット。
【請求項3】
一分未満のゲル化時間を有する、インビボ投与のための生体適合性の二成分ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
酸性のpHを有する液体媒体中のポリアルキレンオキシド−(SH)4;および
8と10.5との間のpHを有する緩衝液中のポリアルキレンオキシド−Y4であって、ここで、Yはスクシンイミジルである、ポリアルキレンオキシド−Y4
を含む、組成物。
【請求項4】
1分未満のゲル化時間を有する、インビボ投与のための生体適合性2成分ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
ポリアルキレンオキシド−(SH)12;および
ポリアルキレンオキシド−Y12であって、ここで、Yはスクシンイミジル基またはマレイミジル基である、ポリアルキレンオキシド−Y12
を含む、組成物。
【請求項5】
インビボ投与のための生体適合性二成分ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
式、コア−(SH)mで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル基含有ポリアルキレンオキシドを含む、酸性pHを有する緩衝溶液中の第1成分であって、ここで、m≧2である、第1成分;および
アルカリ性pHを有する緩衝溶液、
を含み、
ここで、該成分が一緒に混合される場合、該スルフヒドリル基が互いに反応して、それらの間に共有結合を形成し、1分未満でゲルを形成する、組成物。
【請求項6】
インビボ投与のための生体適合性ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
式、化合物1−(SH)mで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル基含有化合物であって、ここで、m≧2である、スルフヒドリル基含有化合物;
式、化合物2−Ynで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル反応性基含有化合物であって、ここでYはスルフヒドリル反応性基であり、そしてここで、n≧2である、スルフヒドリル反応性基含有化合物;および
コラーゲン、を含み、
ここで、該スルフヒドリル基含有化合物または該スルフヒドリル反応性基含有化合物のいずれか少なくとも一方が、ポリアルキレンオキシドであり、ここで該スルフヒドリル基および該スルフヒドリル反応性基が互いに反応して、それらの間に共有結合を形成し得る、組成物。
【請求項7】
インビボ投与のための生体適合性ゲル形成組成物であって、該組成物が、以下:
(a)酸性pHを有する第1成分であって、該第1成分が、以下:
(i)式、化合物1−(SH)mで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル基含有化合物であって、ここでm≧2である、スルフヒドリル基含有化合物;
(ii)式、化合物2−Ynで与えられる少なくとも1つのスルフヒドリル反応性基含有化合物であって、ここでYはスルフヒドリル反応性基であり、そしてここで、n≧2である、スルフヒドリル反応性基含有化合物;および
(iii)コラーゲン、
を含む、第1成分;ならびに
(b)8と10.5との間のpHを有する緩衝液を含む第2成分、を含み、
ここで、該スルフヒドリル基含有化合物または該スルフヒドリル反応性基含有化合物のいずれか少なくとも一方が、ポリアルキレンオキシドである、組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、一緒に混合される場合に迅速に共有結合を形成するツーパート(two−part)ポリマー組成物に関する。このような組成物は、組織に対する迅速な接着およびゲル形成が所望される場合の種々の組織関連適用における使用のために特に十分に適切である。特に、それらは、組織密封材として、ホメオスタシスの促進において、薬物送達のために、組織接着の効率化において、組織の増強の提供において、および手術での接着の予防において有用である。
【背景技術】
【0002】
組織工学におけるポリマー組成物、特に合成ポリマーからなる組成物の使用は、現在、広範に認識されている。多くの天然に由来する組成物とは対照的に、合成ポリマー組成物は、所定の物理学的特性(例えば、ゲルの強度)および生物学的特性(例えば、分解能)を示すように処方され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
種々の組織工学適用において、液体として投与され得るが、その後に投与部位でヒドロゲルを形成する組成物を使用することが所望される。このようなインサイチュでヒドロゲルを形成する組成物は、種々の異なるデバイスからの液体として投与されるために、使用することがより簡便であり、そして予め形成されないために任意の部位への投与により適合する。インサイチュでヒドロゲル形成を促進するために使用され得る多くの異なる機構が、記載されている。例えば、水溶性コポリマープレポリマーおよびポリエチレングリコールの光活性化混合物が、ヒドロゲルの障壁および薬物放出マトリクスを作製するために記載されている。別のアプローチにおいて、冷水に溶解するが、体温にて組織に接着する不溶性ヒドロゲルを形成する、PluronicおよびPoloxamerのブロックコポリマーが、設計されている(Leachら、Am.J.Obstet.Gynecol.162:1317〜1319(1990))。ポリマー化可能なシアノアクリレートもまた、組織接着剤としての使用について記載されている(Ellisら、J.Otolaryngol.19:68〜72(1990))。なお別のアプローチにおいて、一緒に混合された場合に、互いにおよび露出した組織表面と共有結合を形成するツーパート合成ポリマー組成物が、記載されている(PCT WO97/22371(これは、米国特許出願第08/769,806号に対応する))。ツーパート組成物に関する同様のアプローチにおいて、タンパク質および二重官能性架橋剤の混合物が、組織接着剤としての使用について記載されている(米国特許第5,583,114号)。
【0004】
インサイチュヒドロゲル形成組成物を設計する場合に遭遇する1つの困難性は、ゲルの形成を増強するためにこの組成物を最適化することにより、投与部位での組織炎症が悪化し得るということである。この効果についての可能性のある説明は、迅速にゲルを形成し得る高度に反応性の組成物の成分が組織表面に有害に影響し得るということである。
【0005】
本発明の組成物は、迅速なゲル化を提供するために処方されており、そしてまた、投与部位にて、以前に記載されている組成物よりもより組織の炎症を引き起こさない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般に、一緒に混合された場合に、迅速に反応して投与部位にてマトリクスを形成する、2成分ポリマー組成物を開示する。このような組成物は、1分未満のゲル時間を示す。本発明の1つの局面において、この成分のうちの一方は、スルフヒドリル含有化合物である。本発明の別の局面において、両方の成分は、複数の官能基を含み、そしてこれら化合物の少なくとも一方は、3以上の官能基を含む。このことは、3次元ポリマーマトリクスの形成に十分な反応性を保障する。好ましくは、両方の化合物は、4以上の官能基を含む。組成物を極めて素早く反応させるために、両方の化合物は、12個の官能基を含む。
【0007】
本発明の1つの局面において、これら化合物の少なくとも一方および好ましくは両方は、ポリマーである。ポリマー化合物の非反応性部分は、その「コア」といわれる。適切なポリマーコアは、合成ポリマー、ポリアミノ酸、およびポリサッカリドである。好ましい実施形態において、このコアは、ポリアルキレンオキシドであり、そしてより好ましくは、これは、ポリエチレングリコールである。
【0008】
これらの化合物の分子量は、所望の適用に依存して変動し得る。ほとんどの場合、この分子量は、約100〜100,000モル重量、より好ましくは約1,000〜約20,000モル重量である。コア材料がポリエチレングリコールである場合には、化合物の分子量は、約7,500〜約20,000モル重量であり、そしてより好ましくは、それらは、約10,000モル重量である。
【0009】
化合物の一方のみがポリマーである場合、他方は、多官能性活性化有機低分子である。適切な有機低分子としては、官能性活性化スクシンイミジル化合物およびマレイミジル化合物が挙げられる。
【0010】
本発明の2つの化合物を一緒に反応させることによって形成される連結基は、一方の化合物のスルフヒドリル基中の硫黄原子と、例えば、他の化合物のスフルヒドリル反応基中の炭素原子または硫黄原子との間で形成される共有結合である。この連結は、チオエステル、チオエーテルまたはジスルフィドであり得るが、チオエステル連結が好ましい。
【0011】
本発明の別の局面において、化合物はさらに、ポリマーコアと官能基との間の鎖伸長剤(chain extender)を含む。このような鎖伸長剤は、官能基の反応性を活性化または抑制し得、そしてまた、加水分解または分解のための部位を提供するために使用され得る。適切な鎖伸長剤としては、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(ホスホエステル)、および酵素により切断可能なペプチド基が挙げられる。
【0012】
本発明の組成物は、1分未満、およびより好ましくは30秒未満、および最も好ましくは15秒未満のゲル時間にて、ゲルを形成する。得られるゲルの強度(すなわち、弾性率またはG')は、この組成物が採用される適用に依存するが、好ましくは、軟ゲルについては約102〜104dynes/cm2の間であるか、またはより硬いゲルについては約105〜108の間である。
【0013】
本発明の組成物の2つの反応性成分に加えて、任意の材料(グリコサミノグリカン、タンパク質(例えば、コラーゲン)、薬物、細胞、ホメオスタシス剤、遺伝子、DNA、治療剤、抗生物質、増殖因子など)もまた、含まれ得る。
【0014】
本発明の組成物は、投与部位に液体形態または固体形態にて適用される。それらを予め混合された不活性のものとして供給して、次いで投与部位にてそれらを活性化することもまた可能である。
【0015】
本発明の別の局面において、組織の密着、接着の予防、生物学的に活性な薬剤の送達のためのプラットフォームの提供、または組織の増強の目的のために組織を処置するための方法が、提供される。この方法は、所望の医学的効果を生じさせるために、投与部位において本明細書中上記の2成分を一緒に混合する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、投与部位にて一緒に混合される場合にマトリクスを形成するツーパートポリマー組成物に関する。この組成物の各成分は、一般に、組織部位に別々に投与される。次いで、投与部位にて一緒に混合されたすぐ直後において、この組成物は、十分な接着強度かつ粘着強度でゲルを形成して、適所に固定される。
【0017】
(定義)
以下の定義は、本発明の好ましい実施形態の種々の局面をさらに記載するために提供される。
【0018】
用語「ゲル」とは、液体と固体との間の物質の状態をいう。それ自体、「ゲル」は、液体のいくつかの特性(すなわち、この形状は、弾力性に富みかつ変形能がある)、および固体のいくつかの特性(すなわち、この形状は、2次元表面に対して3次元を維持するに十分に分散性である)を有する。従って、「ゲル化時間」(本明細書中で「ゲル時間」ともいわれる)とは、組成物が適度な応力下で非流動性になるために必要とされる時間をいう。これは、一般に、1分未満にて102dynes/cm2以上のゲル強度(G')を達成するものとして示される。
【0019】
用語「粘着強度」は、本発明の組成物が、物理的応力または環境的条件に供された場合にインタクトなままである(すなわち、破断、分裂または分解しない)能力をいう。粘着強度は、時折、「破裂強度」の関数として測定される。
【0020】
用語「粘着強度」とは、本発明の組成物が、物理的応力または環境的条件に供された場合に、投与部位にて組織に接着したままであり得る能力をいう。
【0021】
用語「ポリマー」とは、一緒に連結されている個々の化学部分(同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じである)からなる分子をいう。本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」とは、末端間が連結されて直線状分子を形成する個々の化学部分、および分岐(例えば、「複数のアーム(arm)」または「星型形状」)構造の形態において一緒に連結した個々の化学部分をいう。
【0022】
用語「生体適合性」とは、本発明の組成物が、有意な炎症および線維症または他の有害な組織応答を誘発することなく組織に適用される能力をいう。
【0023】
用語「合成ポリマー」とは、天然に存在せず、かつ化学合成または組換え合成によって生成されるポリマーをいう。それ自体、天然に存在するタンパク質(例えば、コラーゲン)および天然に存在するポリサッカリド(例えば、ヒアルロン酸)は、特に除かれる。タンパク質(例えば、合成コラーゲン)および糖質(例えば、合成ヒアルロン酸)ならびにそれらの誘導体が、含まれる。
【0024】
用語「活性化合成ポリマー」は、対応する反応パートナー(例えば、スルフヒドリル−反応基)と反応して、共有結合を形成し得る、少なくとも1個の官能基(例えば、スルフヒドリル基)を有するか、または有するように化学的に改変させた合成ポリマーをいう。用語「多官能性活性化」は、2以上の求核基または求電子基を有する合成ポリマーをいう。多官能性活性化合成ポリマーのタイプは、二官能性活性化ポリマー、三官能性活性化ポリマー、四官能性活性化ポリマー、およびスター型活性化ポリマー(4以上の官能基を有する)を含む。
【0025】
(組成物の成分)
本発明の2部の組成物は、2つの異なる化合物(各々組成物の別々の部分を含み、この少なくとも1つはポリマーである)を含み、互いに反応して、共有結合で架橋したゲルマトリクスを形成する。このようにして、これらは、別々に容易に投与され、そして投与部分にゲルを迅速に形成し得る。
【0026】
本発明の組成物において、各成分は、本明細書中において他に記載されるような他の最適な成分と共に、2つの別々の部分の1つ、または組成物の「成分」中に存在する。2つの反応化合物およびこれらが共に混合される場合に形成するゲルマトリクスは、以下の式Iによって示され得る。
【0027】
化合物1−(SH)m+化合物2−Yn→化合物d1−Z−化合物2 (I)
化合物d1は、化合物d2と反応する複数(m≧2)のスルフヒドリル基(SH)を有し、この化合物d2は、複数(m≧2)のスルフヒドリル反応基(Y)を有する。スルフヒドリル基はまた、「スルフヒドリル反応基」であることが理解されるべきである。なぜならば、スルフヒドリル基は、特定の条件下で互いに反応することが周知であるからである。互いに混合する場合、2つの化合物は、共有結合(Z)を介して相互に結合し得る。例示の目的のみのために図1に示されるように、化合物d1と化合物d2との間に単結合のみが形成される。しかし、m+n≧5である場合、2つの成分のおおよその比が、本明細書中において他に記載されるように利用され、この2つの化合物は、互いに複数の結合を形成し、3次元のポリマーマトリクスを生じる。好ましくは、両方の化合物は、4個以上の官能基を含む。なぜならば、このような多官能基により、全体としてより強い凝集強度を有するゲルマトリクスを生じるからである。特定の好ましい実施形態において、この化合物の各々は、四官能性活性化される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、化合物は、各々12個の官能基を有する。このような化合物は、第1の四官能性活性化ポリマーを第二の四官能性活性化ポリマーと反応させることから形成され、ここで2つの化合物の各々の官能基は、反応対であり、そして互いに反応して「12原子」官能性活性化ポリマーを形成する。このような「12原子」化合物の例は、ドデカ−スルフヒドリル−PEG、50,000mol.wt.であり、これは、4つの(外部)4官能性スルフヒドリル−PEG分子に連結される、コア4官能性スクシンイミドエステルPEGから構成される。このようなポリマーは、4官能性活性化ポリマー出発物質の分子量に依存して、10,000mol.wt.〜100,000mol.wt.を超える大きさの範囲にわたる。
【0029】
多官能性ポリマーの他のタイプは、慣用的な合成法を使用して容易に合成され得る。しかし、処理は、反応基の立体的な障害を避けるために、一定の原子長を有する多原子生成物を生成するように行われるべきである。従って、本発明での使用のために適切な活性化ポリマーは、種々の幾何学的な形状および構成を有し得る。
【0030】
(化合物コア)
上記のように、化合物の個々は、複数の官能基(スルフヒドリル基またはスルフヒドリル反応基のいずれか)を有する。この化合物の非反応性残基は、「コア(core)」であると考えられる。2つの化合物の少なくとも1つは、有効なゲルマトリクスを形成するためにポリマーコアを有さなければならない。この化合物の一方が、ポリマーコアを有する場合、もう一方の化合物は、複数のスルフヒドリル反応基を有する小さな有機分子であり得る。しかし、最適のために、両方の化合物が同じまたは異なるポリマーコアを有することが好ましい。
【0031】
このポリマーコアは、合成ポリアミノ酸、ポリサッカリド、または合成ポリマーであり得る。好ましいポリマーコア物質は、合成親水性ポリマーである。適切な合成親水性ポリマーとしては、特に、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド((CH2CH2O)n)、ポリプロピレンオキシド((CH(CH3)CH2O)n)またはポリエチレン/ポリプロピレンオキシドの混合物((CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)n))が挙げられる。特に好ましい合成親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これは、約100〜約100,000mol.wt.、より好ましくは、約1,000〜約20,000mol.wt.の範囲内の分子量を有する。よりさらに好ましくは、このポリマーコアがポリエチレングリコールである場合、約7,500〜約20,000mol.wt.の範囲内の分子量を有する。より好ましくは、このポリエチレングリコールは、約10,000mol.wt.の分子量を一般に有する。
【0032】
多官能性活性化ポリアルケンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)は、市販されており、これはまた、公知の方法を使用して容易に調製される。例えば、Poly(ethylene Glycol)Chemistryの22章;Biotechnical and Biomedical Applications、J.Milton Harris編、Plenum Press、NY(1992);およびShearwater Polymer,Inc.Catalog,Polyethylene Glycol Derivatives,Huntsville,Alabama(1997−1998)を参照のこと。組織シーラントとしての使用のために、活性化ポリマーの好ましい組み合わせは、以下の通りである:スルフヒドリル反応基含有化合物は、4官能性PEG、ペンタエリスリトールポリ(エチレングリコール)エーテルtetra−スクシンイミジルグルタラート(10,000mol.wt.)であり;そしてスルフヒドリル基含有化合物は、4官能性PEG、ペンタエリスリトールポリ(エチレングリコール)エーテルtetraスルフヒドリル(10,000mol.wt.)である。両方の場合において、これらの「4原子」PEGは、ペンタエリスリトールのエトキシ化によって形成され、4個の鎖の各々は、約2,500mol.wt.であり、次いで、4個の原子の各々上に官能基を導入するために誘導体化される。また好ましくは、ペンタエリスリトールの代わりにジグリセロールから重合体化された類似のポリ(エチレングリコール)様化合物である。
【0033】
反応化合物の1つのみがポリマーコアを含む場合、他の反応化合物は多官能性活性小有機分子である。このような化合物としては、二官能性ジスクシンイミジルエステルおよび二マレイミジル化合物、ならびに他の周知の市販化合物(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois)が挙げられる。さらに、当業者は、慣用的な有機化学の技術を使用して低分子量の多官能性反応化合物を容易に合成し得る。このような化合物は、図2に示され、この化合物は、各原子がN−ヒドロキシル−スクシンイミジルエステル(NHS)でキャップされ、4つのグルタレートに連結されたペンタエリスリトールである。類似の化合物は、イノシトール(放射6原子)、ラクチトール(9原子)またはソルビトール(直鎖6原子)から合成され得る。エンドキャップ反応基は、NHSの代わりに、まさに簡単なものとしてスルフヒドリル、マレイミジル、ビニルスルホンなどであり得る。ポリマーまたは小分子は、NHSおよびSH、マレイミジルおよびSHなどのような組成物中に反応対が存在する限り、いずれかの反応末端基を有し得る。
【0034】
(反応基およびマトリクス結合)
本発明において、結合Zは、スルフヒドリル基含有化合物中の硫黄原子と、例えばスルフヒドリル反応基含有化合物中の炭素原子および硫黄原子との共有結合を含む。従って、この結合は、チオエステル、チオエーテル、ジスルフィドなどであり得る。広範のスルフヒドリル−反応基およびスルフヒドリル基と反応する場合に形成する結合の型は、化学文献において周知である。例えば、Bodanszky,M.,Principles of Peptide Synthesis,第2版、21〜37頁、Springer−Verlog,Berlin(1993);およびLundbland,R.L.,Chemical Reagents for Protein Modification,第2版,6章,CRC Press,Boca Raton,Fllorida(1991)を参照のこと。
【0035】
最も良い適用には、スルフヒドリル基と反応してチオエステル結合を形成するスルフヒドリル反応基が、好ましい。このような化合物としては、図1に示され、特に、図1に示される構造に対応する括弧内の数字の以下の化合物が挙げられる:混合無水物(例えば、PEG−グルタリル−アセチル−無水物(1)、PEG−グルタリル−イソバレリル−無水物(2)、PEG−グルタリル−ピバリル−無水物(3)およびBodanszkyの23頁に示されるような関連化合物);リンのエステル誘導体(例えば、構造(4)および(5));p−ニトロフェノール(6)、p−ニトロチオフェノール(7)、ペンタフルオロフェノール(8)、構造(9)のエステル誘導体、およびBodanszkyの31〜32頁および表2に示されるような関連する活性エステル;置換ヒドロキシアミンのエステル(例えば、N−ヒドロキシ−フタルイミド(10)、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(11)、およびN−ヒドロキシ−グルタルイミド(12)、ならびにBodanszkyの関連する構造);表3;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(13)、3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−ベンゾトリアジン−4−オン(14)および3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−4−オンのエステル;カルボニルイミダゾールの誘導体;ならびにイソシアネート。これらの化合物に関して、補助試薬は、例えば、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドのような結合形成を容易にするために使用され得、カルボキシル基(すなわち、グルタレートおよびスクシネート)とスルフヒドリル基との結合を容易にするために使用され得る。
【0036】
チオエステル結合を形成するスルフヒドリル反応化合物に加えて、他のタイプの結合を形成する種々の他の化合物が、利用され得る。例えば、メチルイミデート誘導体を含む化合物は、スルフヒドリル基を有するイミド−チオエステル結合を形成する。あるいは、以下のスルフヒドリル基とジスフィド結合を形成するスルフヒドリル反応基が、使用され得る:例えば、オルトピリジルジスルフィド、3−ニトロ−2−ピリデンスルフェニル(pyridenesulfenyl)、2−ニトロ−5−チオシアノ安息香酸、5,5−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)、メタン−チオスルフェートの誘導体、および2,4−ジニトロフェニルシステイニルジスルフィド。このような場合において、補助試薬(例えば、過酸化水素、またはアゾジカルボン酸のジ−tert−ブチルエステル)は、ジスルフィド結合の形成を容易にするために使用され得る。
【0037】
さらに別のクラスのスルフヒドリル反応基は、スルフヒドリル基とチオエステル結合を形成する。このような基は、特に、ヨードアセトアミド、N−エチルマレイミドおよび他のマレイミド(デキストランマレイミド、モノ−ブロモ−ビマン(bimane)および関連化合物を含む)、ビニルスルホン、エポキシド、O−メチル−イソウレアの誘導体、エチレンイミン、アジリジン、ならびに4−(アミノスルホニル)−7−フルオロ−2,1,3−ベンズオキサゾールが挙げられる。
【0038】
(鎖伸長剤)
官能基は、化合物コアに直接結合され得るか、またはこの官能基は、鎖伸長剤によって直接結合され得る。このような鎖伸長剤は、当該分野で周知である。例えば、PCT WO97/22371を参照のこと。これには、本発明の組成物中で鎖伸長剤としての使用のために適切な「連結基」を開示する。鎖伸長剤は、分子間の直接的な結合の形成に関連する立体障害の問題を回避するために使用される。あるいは、鎖伸長剤を、いくつかの多官能性活性化化合物と共に連結して、大きな分子を生成するために使用し得る。特に好ましい実施形態において、鎖伸長剤は、投与後の組成物および得られるゲル形態の分解特性を変えるために使用され得る。例えば、鎖伸長剤は、工業的に活性化されたポリマーの1方または両方に取り込まれ得、加水分解を促進し、加水分解を阻止し、酵素分解部位を提供する。鎖伸長剤はまた、スルフヒドリルおよびスルフヒドリル反応基の活性を活性化または抑制し得る。例えば、スルフヒドリル基の1または2個の炭素内の電子吸引基は、低い求核性のために、結合の効果が減少すると期待される。炭素とカルボニル炭素の二重結合は、この効果を有すると予測される。いずれかのパートナーの嵩高い隣接の基は、立体障害のために結合速度が減少されると予測される。グルタリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルの反応性カルボニルに隣接する電子吸引基は、スルフヒドリルパートナーとより反応性のカルボニル炭素を生成すると予想される。
【0039】
鎖伸長剤は、分解部位(すなわち、加水分解可能な部位)を提供し得る。加水分解可能な鎖伸長剤の例としては、特に、α−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸);ポリ(ラクトン)(例えば、カプロラクトン、バレロラクトン(valerolactone)、γ−ブチルラクトンおよびp−ジオキサノン);ポリ(アミノ酸);ポリ(無水物)(例えば、グルタレートおよびスクシネート);ポリ(オルトエステル);ポリ(オルトカルボネート)(例えば、トリエチレンカルボネート;およびポリ(ホスホエステル)が挙げられる。非分解性鎖伸長剤は、特に、スクシンイミド、プロピオン酸およびカルボキシメチルが挙げられる。例えば、PCT WO99/07417を参照のこと。酵素学的に分解可能な鎖伸長剤の例としては、Leu−Gly−Pro−Ala(これは、コラーゲンによって分解される);およびGly−Pro−Lys(これは、プラスミンによって分解される)が挙げられる。
【0040】
(ゲル強度およびゲル化時間)
本発明の組成物は、適切な強度および迅速なゲル化時間を示すように処方される。弾性率「G」は、ゲル強度の好ましい尺度である。組織シーラントとしての使用のための好ましい組成物は、約103〜108dyn/cm2、より好ましくは104〜107dyn/cm2のゲル強度を達成し得る。止血剤としての使用または癒着防止のための好ましい組成物は、軟性ゲルが所望される場合、少なくとも102〜104dyn/cm2のゲル強度、またはより硬いマトリクスが所望される場合、105〜108dyn/cm2のゲル強度を有する。
【0041】
好ましい処方物のゲル化時間は、60秒未満、より好ましくは30秒未満、そして最も好ましくは15秒未満である。速いゲル化時間は、処置されるべき部位における最大量の物質および十分な機械特性を確実する。
【0042】
(任意の組成物成分)
反応性化合物に加えて、本発明の組成物はまた、他の成分を含み得、これは、二成分組成物の成分の1つまたは両方に含まれ得るか、または別々に投与され得る。1実施形態において、これらの化合物は、それらが一緒に混合された後に、反応化合物の1つまたは両方に架橋することによってマトリクス自体に共有結合によって組み込まれ得る。別の実施形態において、本化合物が反応性化合物のいずれかと非反応性である場合、本化合物は、それが混合後、マトリクス形成化合物と物理的にまたはイオン的に結合し、従ってマトリクス自体の一部となるような様式で、投与され得る。
【0043】
加えられ得る追加の化合物は、グリコサミノグリカンおよびタンパク質である。適切なグリコサミノグリカンとして、特に、ヒアルロン酸、キチン、硫酸コンドロイチンA、BまたはC、硫酸ケラチン、ケラタン硫酸およびヘパリン、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。別の実施形態において、タンパク質は種々の目的のために加えられ得る。例えば、コラーゲンはマトリクスの生体適合性(例えば、細胞による潜在的コロニー化、創傷治癒の促進など)を改良し得る。コラーゲンおよび任意のアミノ基含有タンパク質はまた、他のマトリクス成分と共にマトリクスに架橋することによって、マトリクスの構造完全性に寄与する。特に、PEG−スクシンイミジルエステルが使用される場合、コラーゲンによって形成されたアミド結合は、スクシンイミジルエステルとスルフヒドリルとの反応によって形成された結合より、加水分解に対してより安定である。
【0044】
適切なタンパク質として、特に、コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチンおよびアルブミン、ならびにそれらのペプチドフラグメントが挙げられる。特に、コラーゲンが好ましく、このコラーゲンは、非繊維状コラーゲン、微繊維状コラーゲンまたは繊維状コラーゲンの形態であり得る。ウシ真皮またはヒト胎盤から単離された、または組換えDNA法によって調製されたI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンが、適している。適切なコラーゲンおよびコラーゲン誘導体の説明については、PCT WO90/05755を参照のこと。組成物にコラーゲンを加える場合、沈殿を避けるために他の組成物成分の濃度を調節することが重要であることを理解するべきである。
【0045】
組成物に加えられ得る追加の成分として、抗生物質、成長因子、止血タンパク質(例えば、トロンビン、フィブリン、フィブリノーゲン、血液因子など)、細胞、遺伝子、DNAなどが挙げられる。
【0046】
(組成物処方)
本発明の組成物は、2つの別個の部分または「成分」を含み、これらは液体形態または固体液体であり得る。好ましい実施形態において、両方の成分は、液体であり、その結果、各々は投与の部位に別々に容易に投与され得る。さらに、成分の1つは、乾燥粉末形態であり得、これは、液体形態である第2の成分と、各々が組織上に別々に噴霧される場合、または組織部位で混合されることによって、混合される。両方の成分が、投与の部位において緩衝液と混合される粉末として、その部位に送達されることも可能である。
【0047】
代替の実施形態において、両方の成分は、単一の水性媒体中で共に混合され得、ここで両方の成分とも、例えば低pH緩衝液中で非反応性である。その後、それらは、迅速に反応しかつゲルを形成した後に、高pH緩衝液と共に組織部位上に噴霧され得る。この実施形態は、実施例9に記載される。
【0048】
組成物成分の各々における反応性化合物の濃度は、必ず、多くの因子に依存する。例えば、組成物成分が各々4−アームPEG(すなわち、PEG−PEG組成物)である場合、混合前の二成分の各々の20〜25重量%濃度は、混合後、およそ105〜106dyn/cm2の弾性率「G'」を有するゲルを生じ、これは、外科用シーラントとしての使用に適切である。メチル化したコラーゲンおよび4−アームスクシンイミジルPEGを、それぞれ濃度2〜4%および0.2〜0.4%で使用することによって、10〜15%のPEG−PEGゲルに匹敵する凝集強度を有するゲルを生じる。成分の1つとしてアルブミンを使用する場合、30%以上の濃度は、同様の凝集強度を達成する。各成分における化合物の適切な濃度、および任意の成分の適切な濃度、および従って、最終ゲルマトリクス中のマトリクス成分の相対濃度は、慣用的実験を使用して、所望のゲル化時間およびゲル強度を達成するために、容易に最適化され得る。上記の好ましい4つのアームPEGを使用する場合、合成ポリマーは、一般に2〜50%(w/v)、より好ましくは、10〜25%の濃度で存在する。
【0049】
本発明の組成物の液体成分は、液体媒体に活性化された合成ポリマー(乾燥形態であるか、または濃縮溶液として)を加えることによって、各々別々に調製される。適切な液体媒体として、緩衝水溶液(例えば、0.5〜300mMの濃度の、一塩基性リン酸ナトリウム/二塩基性リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム、グルタメートまたはアセテート)が挙げられる。一般的に、スルフヒドリル−反応性PEGは、約5〜6のpHを有する水または希釈緩衝液中で、調製される。スルフヒドリル−PEG成分を調製するための約8〜10.5のpKを有する緩衝液は、スルフヒドリル−PEG/SG−PEGの混合物を含む組成物の速いゲル化時間を達成するために有用である。これらには、カーボネート、ボレート、およびAMPSO(3−[(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]2−ヒドロキシ−プロパン−スルホン酸)が挙げられる。これに対して、マレイミジルPEGおよびスルフヒドリル−PEGの組み合わせを使用する場合、スルフヒドリルPEGを調製するために使用される液体媒体について、約5〜9のpHが好ましい。活性的に出血する組織部位への止血適用のための特に好ましい組成物は、第1成分としてのマレイミジルPEGおよびスクシンイミジルPEGの混合物、および第二成分としてのスルフヒドリルPEGを含む。このような組成物は、マレイミジルPEGのみまたはスクシンイミジルPEGのみを単独で有する組成物と比較した場合、向上した生分解性および優れたゲル化時間を有するゲルを生成する。
【0050】
2つ(またはそれ以上)の組成物成分の各々について使用される緩衝水溶液のpHは、送達プロセスを妨害する瞬時のゲル化をもたらすことなく、迅速なゲル化を導く最終pHを達成するための慣用的な最適化を使用して調製されるべきである。例えば、アミノPEGおよびスルフヒドリルPEGの両方は、求核性を高めるために塩基性pHを必要とする。ゲル化時間に及ぼすpHの影響は、以下の実施例で議論される。
【0051】
(使用および投与)
本発明の組成物は、一般に、組成物の2つの個々の成分が、最初の時間に投与の部位で、または投与直前に、互いに接触するような様式で、投与の部位に送達される。従って、本発明の組成物は、好ましくは、2つの成分を別々に送達することが可能である装置を使用して、投与の部位に送達される。このような送達システムは、通常、二区画の単一出口または二重出口の噴霧デバイスを含む。あるいは、この2つの成分は、任意の型の制御可能な押出しシステムを使用して別々に送達され得るか、あるいは別々のペースト、液体または乾燥粉末の形態で手動で送達され得、そして投与の部位で手動で一緒に混合される。二成分組織シーラント/止血剤の送達のために適応される多くのデバイスは、当該分野で周知であり、本発明の実施においても使用され得る。
【0052】
本発明の組成物を送達するなお別の方法は、不活性な形態で液体または粉末として、2つの反応性成分(または、ジスルフィド結合を形成するために設計されるスルフヒドリル含有成分の場合は単一の反応性成分)を調製することである。次いで、このような組成物は、組織部位への適用後、または活性因子を適用する直前に、活性化され得る。1実施形態において、活性因子は、一旦混合されると組成物を活性化するpHを有する緩衝溶液である。投与までは低pHに維持され、次いでゲル化を開始するために適用部位において高いpH緩衝液と混合されるスルフヒドリル含有PEG組成物を記載する実施例12を参照のこと。
【0053】
本発明の組成物は、種々の異なる薬学的適用において使用され得る。一般的に、本明細書中に記載される組成物は、合成ゲルマトリクスが現在利用されている任意の組織工学適用における使用のために適用され得る。例えば、本発明の組成物は、組織シーラントとして、組織増強において、組織修復において、組織癒着防止において、表面修飾において、および薬物/細胞/遺伝子送達適用において、有用である。当業者は、本明細書に記載される原理および周知の科学的原理に基づく、既知のゲル強度およびゲル化時間を有する任意の組成物を用いて使用するための適切な投与プロトコルを容易に決定し得る。幾つかの特定の適用のより詳細な記載は、以下に与えられる: (組織シーラントおよび接着剤)
好ましい適用において、本明細書中に記載される組成物は、ガス、液体または固体の漏れを防ぐためにコーティング層またはシーリング層を必要とする医用状態に使用され得る。本方法は、1)血流を停止または最小化するために血管および/または他の組織または器官をシールするために;2)空気の漏れを停止または最小にするために胸部組織をシールするために;3)便または組織内容物の漏れを停止または最小化するために胃腸管または膵臓組織をシールするために;4)尿の漏れを停止または最小化するために膀胱または尿管をシールするために;5)CSFの漏れを停止または最小化するために硬膜をシールするために;および6)漿膜流体(serosal fluid)の漏れを停止するために皮膚または漿膜組織をシールするために、損傷した組織または器官に両方の成分を適用する工程を包含する。
【0054】
これらの組成物はまた、小さな血管組織、神経組織または皮膚組織のような組織を一緒に接着するために使用され得る。この材料は、1)一組織の表面にこの材料を適用し、次いで第2の組織が第1の組織に対して迅速にプレスされ得ることによって使用され得るか、または2)組織を近接並置させ、次いで材料を適用することによって使用され得る。
【0055】
(外科的接着)
好ましい適用は、患者における外科的手順後の癒着の形成を軽減する方法である。本方法は、両方の成分を一緒に噴霧するか、または事前に混合された成分を適用することによって、損傷された組織または器官に材料を適用する工程を包含する。これら成分は、一緒に反応して、組織表面上でヒドロゲルを形成する。医用手順は、婦人科学的適用、腹部の適用、神経外科的適用、心臓の適用、および整形外科的適用を含む。
【0056】
(ドラッグデリバリー)
好ましい適用は、患者に生物学的に活性な物質を局所的に適用する方法である。この活性物質は、二成分と組み合わせて送達され得、その結果、この材料はインサイチュで、または予備形成された移植片として形成され得る。この活性物質は、拡散制御されたプロセスを通して放出され得るか、または成分に共有結合され、その結果、生じるヒドロゲル分解物として放出され得る。
【0057】
この生物学的に活性な物質は、任意の種々の有機物質および無機物質(タンパク質、炭水化物、および核酸を含む)であり得る。具体的な例として、酵素、抗生物質、抗腫瘍剤、サイトカイン、局所麻酔剤、ホルモン、抗脈管形成剤、抗体、神経伝達物質、精神活性薬物、再生器官に影響を及ぼす薬物、および治療用オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0058】
(移植片の改変)
好ましい適用は、移植片の表面特性に影響を及ぼすために、または組織表面に移植片を接着するのを補助するために、移植片にコーティングを適用する方法である。成分のコートは、1)血管移植片、ステントに適用され、これらのデバイスからの血液または漿膜流体の漏れを最小化または停止し得;2)カテーテルまたは胸部移植片に適用され、過剰の繊維形成を軽減または停止し得;3)人工パッチまたは人工メッシュに適用され、過剰の繊維形成を最小化し得、そして組織表面に移植片を接着することを補助し得る。
【0059】
(細胞または遺伝子の送達)
組成物の好ましい適用は、カプセル化し、それによって細胞または遺伝子(これらは、天然供給源由来の物質または合成DNA、RNAおよびそれらの個々のアンチセンス形態を含む)を所望の部位に送達することである。この細胞は、間葉性幹細胞、上皮細胞および神経外胚葉細胞を含む。この細胞は、本来、同種であるか、または異種であり得る。
【実施例】
【0060】
(実施例1 二成分組織シーラント組成物の調製)
a.第1の成分
ペンタエリスリトールポリ(エチレングリコール)エーテルテトラ−スクシンイミジルグルタレート(「SG−PEG」)(分子量10,000)を、0.5mMのリン酸ナトリウムpH6.0に、20%w/vの濃度で溶解する。(この溶液は、活性エステルの加水分解に対する敏感さに起因して水性媒体中で不安定であり、そして調製後1時間以内に使用されるべきである)。
【0061】
b.第2の成分
ペンタエリスリトールポリ(エチレングリコール)エーテルテトラスルフヒドリル(分子量 10,000)を。300mMリン酸ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(「P/C緩衝液」)(pH9.6)に20%w/vの濃度で溶解する。P/C緩衝液を以下のように調製する:300mMの一塩基リン酸ナトリウムを、300mMの炭酸ナトリウムと混合してpH9.6を達成する。最終モル濃度は、約117mMのリン酸塩および183mMの炭酸塩である。この溶液は水性媒体中で安定であるが、ジスルフィドヘの酸化を防ぐために、溶液の酸素への曝露を防ぐように注意するべきである。pHは、特定の組成物には好ましいが、8〜10.5のpHは、本発明の実施における使用に適切であると概して考えられる。
【0062】
(実施例2 動脈の外科的シーリング)
ニュージーランドシロウサギの右頸動脈を露出する。これらのウサギを200U/kgのヘパリンで処置し、そして血管を非外傷性血管クランプを使用して近位および遠位でクランプする。27Gの針を使用して頸動脈に穿刺を作成する。コントロールのウサギを、止血が達成されるまでタンポナーデで処置する。処置されたウサギについては、実施例1に記載されるように調製された組成物の2つの成分の各々約0.5mLを、二成分噴霧器(Duo Flow,Hemaedics,Malibu,California)を使用して瑕疵部位に送達する。この材料を30秒間凝固させた後、クランプを取り外し、そして止血の時間と血液損失を測定する。コントロールウサギの動脈はまた、一貫性のために30秒間クランプしたままにする。表1に結果を示す。
(表1)
処置との相関としての血液損失および止血の時間
【0063】
【表1】


【0064】
上記の結果は、この組成物が穿刺した動脈からの血液損失の量および止血の時間をかなり減少させるということを例示する。
【0065】
(実施例3 ePTFE移植片の外科的シーリング)
480秒より長い活性化された凝固時間を達成するために、イヌをヘパリンで処理する。これらのイヌの左腸骨(iliac)を露出し、そして遠位および近位に配置された非外傷性血管クランプを使用して分離する。この動脈の5cmの部分を切除し、そして同じ直径のePTFE(ポリテトラフルオロエチレン(polythetrafluoroethylene))移植片と置き換える。吻合の完了の前に、この移植片を27G注射針を使用して脱気した。実施例1に従って調製された組成物の2つの成分の各々約3.0mLを二成分噴霧器(Cohesion Technologies,Inc.,Palo Alto,California)を使用して瑕疵部位に送達する。この材料を30秒間凝固させた後、クランプを取り外し、そして止血の時間と血液損失を測定する。材料の適用を除いて、この手順を左腸骨に繰り返した。右腸骨は、タンポナーデ処置のみを受けた。これらの結果を表2に示す。
(表2)
処置との相関としての血液損失および止血の時間
【0066】
【表2】


【0067】
上記の結果は、この組成物が血液損失の量およびePTFE吻合からの止血の時間をかなり減少させるということを例示する。
【0068】
(実施例4 チオエステル連結組成物の増強された生体適合性)
6個までの皮下ポケットを、ニュージーランドシロウサギの背部上に作成する。実施例1に記載される組成物の成分の各々約1.0mLを、液体処方物用の二成分噴霧器(Cohesion Technologies,Inc.,Palo Alto,California)またはエキソビボでゲル化した処方物用のへらを使用して瑕疵部位に送達する。格付け表を表3に示し、そして結果を表4に示す。
(表3)
生体適合性実験のための格付け表
【0069】
【表3】


【0070】
(表4)
生体適合性実験の結果



【0071】
【表4】


【0072】
実験AおよびBは、繊維状コラーゲン(Collagen Corporation,Palo Alto,California)および外科的コントロールの中度の異物応答および組織学的応答を示す。実験Cは、アミノ−PEGで作製されたヒドロゲルに対する重篤な応答を示す。応答は、ヒドロゲルの粘稠なカプセル化および膿瘍形成からなる。実験Dのように、アミノ−PEGをスルフヒドリル−PEGで置き換えることにより、ヒドロゲルの生体適合性はかなり改善される。実験Eは、エキソビボでのアミノヒドロゲルの形成工程およびモノ−SG PEG(分子量5000)溶液中でヒドロゲルをインキュベートする工程を包含する。インキュベーションの間に、モノ−SG PEGは、ヒドロゲル網状組織上に存在する遊離のアミンと反応し、それによりポリマー網状組織上の遊離のアミンの量を減少させる。この処理は、ヒドロゲルの生体適合性を増強する。実験Fは、エキソビボでスルフヒドリルヒドロゲルを形成する工程およびモノ−SG PEG(分子量5000)の溶液中でヒドロゲルをインキュベートする工程を包含する。インキュベーションの間に、ジ−アミノPEGは、ヒドロゲル網状組織上に存在するSG基と反応し、それによりポリマー網状組織上の遊離のアミンの量を増加させる。この処理は、ヒドロゲルの生体適合性を減少させる。従って、これらの結果は、アミノ処方物と比較してスルフヒドリル処方物の増強された生体適合性を示す。
【0073】
(実施例5 ゲル時間に対する緩衝液および反応性基の効果)
本明細書中に記載される組成物の所望の特徴は、迅速にゲル化を達成する能力である。この実施例において、ゲル化の速度論に対する緩衝液強度および組成物の効果が調べられる。全ての実験について、実施例1に記載される四官能化SG PEGを、0.5mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に溶解し、そして実施例1に記載のテトラスルフヒドリルPEGまたは等量のテトラ−アミノPEGを表5に列挙される緩衝液に溶解する。
(表5)
アミノ処方物およびスルフヒドリル処方物での炭酸塩緩衝液に対するリン酸塩緩衝液の効果


【0074】
【表5】


【0075】
実験AおよびBは、リン酸塩緩衝液中のアミノ処方物およびスルフヒドリル処方物におけるゲル時間の差異を示す。この緩衝液において、ゲル化速度の増大は、アミノ処方物と比較してスルフヒドリル処方物で観察される。実験CおよびDは、炭酸塩緩衝液中のアミノ処方物およびスルフヒドリル処方物におけるゲル化時間の差を示す。示されるように、ゲル時間の減少は、炭酸塩緩衝液中のスルフヒドリル処方物について観察される。好ましいP/C緩衝液において3秒のゲル時間が観察される。
【0076】
(実施例6 血流測定)
第1の成分(四官能性スルフヒドリル−PEG、分子量10,000)を、実施例1にしたがって調製し、そしてP/C緩衝液に懸濁した。第2の成分(四官能性SG−PEG、分子量10,000)を実施例1に従って、0.5mMホスフェート(pH6.0)中で調製した。これら2つの成分(各0.6ml)を、接合物およびカニューレを有する二重シリンジデバイスに充填した。カニューレは混合要素を含有した。溶液を混合し、そして生じた混合物をRheometrics Fluids Spectrometer 8500(Rheometrics,Inc.,Piscataway,NJ)の平行プレートセルに直ぐ移した。上部プラテンは25mmの直径を有し、そして上部および下部の平行プレートの間隔は1.5mmであった。
【0077】
ゲル化は処方物を混合して直ちに開始した。機器を始動させ、そしてG'およびG''(それぞれ、弾性係数および粘性係数)を1%のひずみおよび1ラジアン/秒で測定した。1分未満でG'は、軟性ゴム状材料に特徴的なほぼ104ダイン/cm2であった。G'は、15分以内にプラトーになり始め、そしてその後1時間より長く非常に緩やかに上昇しつづけた。G''は、102ダイン/cm2のオーダーであり、そして徐々に低下した。これらの結果は、迅速ゲル化材料と一致する。未反応の出発材料についてのG'およびG''は、約1〜10ダイン/cm2であった。これらの結果を図3に示す。
【0078】
この実験において、血流計は約50ダイン/cm2より小さいG'およびG''を正確に定量することができない。さらに、ゲル化は、非常に速く起きるので、混合物は所望の空間の30〜95%を充填するだけである(プレートを取り囲むゲル化流体が存在するが、プレートの間には存在しない)。これらの制限を有するが、時間の関数としての弾性係数(G')および粘性係数(G'')の測定が、なおなされ得、そしてゲル化の速度論に従い得る。この実験に示されるように、1分未満で102ダイン/cm2より大きいG'は、迅速なゲル化を示す。
【0079】
(実施例7 スルフヒドリル−PEGおよびN−ヒドロキシ−スクシンイミジル−PEG(NHS−PEG)を使用するゲル時間に対する緩衝液の効果)
50mlの20%(w/v)4アーム(分子量10,000)四官能性SG−PEGを、50mlの20%(w/v)4アーム(分子量10,000)四官能性スルフヒドリル−PEGと混合して、全ての試験を行った。異なる緩衝液を使用して、そしてゲル化する時間を記録した。SG−PEGを、全ての試験について0.5mMのホスフェート(pH6.0)中に溶解した。スルフヒドリル−PEGを以下に与えられる緩衝液中にpH9.6で溶解し、そしてゲル化の時間を記録した。
(表6)
ゲル化時間に対する緩衝液の効果
【0080】
【表6】


【0081】
*(3[1,1−ジメチル−2−ヒドロキシ−エチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパン−スルホン酸
示されるように、8と10.5との間のpKを有する緩衝液(ホウ酸塩、8:1;炭酸塩10.3;AMPSO、9.0)およびそれらの混合物が適切である。
【0082】
(実施例8 スルフヒドリル−反応性PEG)
いくつかの異なる処方物のゲル化特性を、以下に記載する:
8a:(二官能性マレイミジル−PEG(分子量3400)(MAL−PEG)のテトラ−スルフヒドリルPEG(分子量10,000)でのゲル化)0.5mMリン酸ナトリウム(pH6.0)中のMAL−PEGの20%(w/v)溶液を、等容量の150mMリン酸ナトリウム(pH5.0)中の20%(w/v)テトラ−スルフヒドリルPEGと素早く混合した。ゲル化は、15秒で起こった。ゲルは1分以内に堅く、ゴム状の固体になった。
【0083】
8b:(二官能性ヨードアセトアミドPEG(分子量3400)(「IAM−PEG」)のテトラ−スルフヒドリルPEG(分子量10,000)でのゲル化)IAM−PEGを0.5mMリン酸ナトリウム(pH6.0)中に20%(w/v)で溶解し、そしてP/C緩衝液リン酸−炭酸ナトリウム(pH9.6)中のテトラ−スルフヒドリルPEGの20%(w/v)溶液と素早く混合した。ゲル化は40秒未満で起こった。堅いゲルが2分以内に形成した。
【0084】
8c:(テトラ−スルフヒドリルPEG(分子量10,000)の希釈過酸化水素水でのゲル化)テトラ−スルフヒドリルPEGのP/C緩衝液中の20%(w/v)溶液を等容量の0.1%(w/v)過酸化水素水と混合した。ゲル化は15秒で起こった。堅いゲルが2分未満で形成した。
【0085】
(実施例9)
(PEG組成物中に組み込まれたトロンビンの血液凝固活性)
この実験は、活性トロンビンタンパク質を含有する吐血性PEGゲルが組織上に形成され得ることを示す。
【0086】
9a:テトラスルフヒドリルPEGゲル中に組み込まれたトロンビンは、過酸化水素と共にゲル化した。20mgのテトラスルフヒドリルPEG(1,000mol.wt.)を80μlのPC緩衝液に溶解し、そして0.72M 塩化ナトリウム中、8850NIH単位/mlでの11μlのウシトロンビン(Thrombin topical,USP,Gentrac,Inc.,Middleton,Wisconsin)を添加した。次いで、テトラスルフヒドリルPEGおよびトロンビンのこの溶液を、1.5mlプラスチック管において速やかに撹拌することによって、水中で0.1%(w/v)の過酸化水素100μlと混合した。この混合物は、スルフヒドリル基のジスルフィド結合への酸化に起因して40秒未満でゲル化した。1.5分後、このゲルは硬く弾性のある固体であった。200μlのウサギ血漿を、このゲルの上に重ねた。この血漿は、クエン酸塩加血液から分離され、そして約11mM クエン酸塩を含んでいた。添加の直前に、このクエン酸塩加血漿を、8μlの0.5M 塩化カルシウムの添加によって再石灰化して、約20mMのカルシウム濃度を達成した。この再石灰化した血漿は、PEGゲル上に重ねた1.5分後に、フィブリン血餅を形成することが観察された。凝固反応は、PEGゲル中の活性トロンビンの存在を示す証拠と考えられた。
【0087】
コントロール研究がなされる場合、トロンビンを有さない第2の酸化スルフヒドリルPEGゲルは、20分が経過するまでウサギ血漿を凝固させない。さらなるコントロールとして、再石灰化したウサギ血漿を、同一プラスチック管の中に保持すると;これは13分後に自然と凝固する。従って、トロンビンを有さないスルフヒドリルPEGゲルが、コントロール再石灰化血漿より速く血液を凝固させることはない。
【0088】
類似の実験が、テトラスルフヒドリルPEGおよびテトラSG−PEGならびにトロンビンを用いて試みられた際、血漿の凝固時間の向上は観測されなかった。血漿の凝固は、25分以上遅れた。この結果は、SG−PEGが、おそらくPEGをトロンビンのリシン側鎖に結合することによって、そしてその酵素活性を阻害することによって、トロンビンを不活性化したことを示す、と解釈される。
【0089】
9b:LAM−PEG/スルフヒドリルPEGゲル中に組み込まれたトロンビン。20mgのテトラスルフヒドリルPEG(10,000mol.wt.)を、上記9aのように、11μlのトロンビンと共に80μlのPC緩衝液に溶解する。20mgのIAM−PEGを、80μlの0.5mM リン酸ナトリウム(pH6.0)に溶解する。この2つの溶液を、1.5mlプラスチック管において速やかに混合する。この混合物は、30秒未満のゲル化時間を有し、そして1.5分までには弾性のあるゲルである。再石灰化したウサギ血漿(200μl)をこのゲルの上に重ねると、このゲルの上に重ねてから2分未満で、この血漿中にフィブリン血餅が形成する。トロンビンを有さないコントロール反応は、PEGゲルの上に重ねてから18分以上後にフィブリン血餅を形成する。トロンビン含有サンプル中でのフィブリン血餅の迅速な形成は、PEGゲル中の活性トロンビンの存在を示す証拠と考えられる。
【0090】
9c:NEM−PEG/スルフヒドリルPEGゲル中に取り込まれたトロンビン。20mgのテトラスルフヒドリルPEG(10,000mol.wt.)を、上記9aのように、11μlのトロンビンと共に80μlの150mM リン酸ナトリウム(pH5.0)に溶解する。20mgのNEM−PEGを、0.5mM リン酸ナトリウム(pH6.0)に溶解する。この2つの溶液を、プラスチック管において速やかに混合する。ゲル化は15秒で生じる。15μlのP/C緩衝液をPEGゲルの上に重ねて、pHを7〜9に調節する。次いで、200μlの再石灰化したウサギ血漿を添加する。フィブリン血餅は、血漿の添加から1.5分後に形成した。トロンビンを有さないコントロールゲルは、フィブリン血餅を30分後に形成した。再び、トロンビンを有するPEGゲル中でのフィブリン血餅の迅速な形成は、活性トロンビンの存在を示す証拠と考えられる。
【0091】
9d:トロンビンを有する積層ゲルのゲル化。トロンビンが添加され得、そして活性を維持し得るSG−PEGおよびスルフヒドリルPEGからゲル処方物を提供するために、「ゲル積層(gel layering)」技術を使用し得る。まず、実施例1に従って調製した、20%固体のテトラスルフヒドリルPEGおよびテトラSG−PEGゲルを、実施例2に記載されるようにシート上に噴霧する。このシートは、生理食塩水で水和された粗い繊維質のコラーゲンであり、これは組織表面を刺激する。全容積は、約0.5mlである。この処方物は、18〜15秒でゲル化する。16秒で、全ゲル混合物、全容積約0.5mlのうちテトラスルフヒドリルPEG、ジマレイミジルPEG(共に20%固体)およびトロンビン(700NIH単位/ml)の第2ゲル混合物を、第1ゲルの上に噴霧する。この第2ゲル層は、約2分でゲル化する。第1ゲルが噴霧された3分後に、上記のように調製した0.4mlの再石灰化ウサギ血漿をPEGゲルの上に重ねた。この血漿は、PEGゲル上に重ねられた1.5分後に凝固する。トロンビンがないコントロールに比較してこのように早い時間でのフィブリン血餅の形成は、PEGゲル中の活性トロンビンを示す証拠と考えられる。
【0092】
(実施例10)
(粉末状処方物を使用するゲル化)
10mgの粉末状テトラSG PEG(10,000mol.wt.)を1枚の重し紙(weighting paper)の表面上に噴霧する。10mgのテトラスルフヒドリルPEG(10,000mol.wt.)を、80μlのP/C緩衝液に溶解する。スルフヒドリルPEG溶液を、Haemedics(Malibu,California)スプレーヘッドを用いて1ccシリンジ中に装填し、そして重し紙上のSG−PEG上に噴霧する。噴霧された液体は、撹拌も混合もされない。それは、27秒でゲル化し始め、そして2分までには硬い弾性のある層を形成する。この試験は、粉末形状の成分もまた本発明における使用に適切であることを示す。
【0093】
(実施例11)
(コラーゲン含有組成物)
メチル化コラーゲンを以下のプロセスによって調製する:ウシ革質部コラーゲンを、ペプシンを用いて可溶化し、そして米国特許第4,233,360号に記載されるように精製する。この精製され、可溶化されたコラーゲンは、0.2M リン酸ナトリウム(pH7.2)中への中和によって沈澱する。この沈澱物を、70mg/mlの最終濃度まで遠心分離によって単離する。この物質を2日間乾燥し、次いで粉末化する。HClを(0.1Nまで)含む乾燥メタノールを添加し(40ml)、そして4日間撹拌する。コラーゲンを、酸性メタノールから分離し、真空乾燥し、そして照射によって滅菌する。最終生成物を、pH3〜4で水に溶解する。
【0094】
シーラントとしての送達のために、10mgのメチル化コラーゲン、100mgの四官能性スルフヒドリルPEG(10,000mol.wt.)および100mgの四官能性SG PEG(10,000mol.wt.)を、1mlの最終体積までpH3〜4で水に溶解する(第1成分)。第2成分は、1mlのP/C緩衝液である。各成分をシリンジに入れて、混合し、そして実施例1に記載されるようにデュアルシリンジ送達システムを用いて所望の試験部位上に噴霧する。塗布された混合物は、3秒未満でゲル化する。
【0095】
このゲルの接着性および粘着性を、破裂試験において調べる。この試験を、円圧力計装置(PSI−Tronix,Model PG5000,Tulare,California)にて行う。この装置は、圧力線によって、直径2mmの中央オリフィスを有する円形の試料プレートに接続されている。シーラント処方物をプレート上に噴霧して、オリフィスをシールする。処方物の組織への結合を促すために、試料プレートには粗い繊維質コラーゲンの円形シートが固定されている。このシートは、シートを貫き、そして試料プレートのオリフィスから2〜3mmずらされている、2mmの孔を有する。破裂強度は、生理食塩水を5ml/分の流速でこのシーラントゲルに通すために必要な圧力の関数として測定される。
【0096】
この結果を、以下で表7に与える。
【0097】
【表7】


【0098】
両方の処方物が3秒未満のゲル化時間を有する。上記に示されるように、コラーゲンの処方物への付加は、破裂強度を増強する。
【0099】
(実施例12)
(「12アーム」PEG化合物の合成)
12アームの求電子性PEG化合物を、1molの4アームスルフヒドリルPEG(10,000mol.wt.)および4molの4アームSG−PEG(10,000mol.wt.)から形成する。得られる化合物を、図4aに示す。示されるように、この化合物の中心は、ペンタエリトリトールPEGエーテルテトラスルフヒドリルであり、そして末端官能基はスクシンイミドである。官能基が互いに反応性であって化学結合を形成する限り、スルフヒドリル(sulfydryl)基であるXは、他の求核性基(例えば、NH2など)で置換され得、そしてスクシンイミジル基であるYは、他の求電子性基(例えば、マレイミド、カルボニルイミダゾール、またはイソシアナート)で置換され得る。この方法はまた、4モルの4アームスルフヒドリルPEGを1モルの4アームSG−PEGと反応させることによって図4bに示される12アーム求核性PEG化合物を調製するために使用される。それらの各4アーム中間体に由来するこれらの化合物の調製物もまた図5に示される。このような反応は、活性化PEG生成物の異種集合(12本未満のアームを有するものもあれば、12本より多いアームを有するものもある)を生じることが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、「12アーム」PEGはまた、各分子上に平均約12本のアームを有するこのような異種反応生成物をいう。
【0100】
12a:12アームスルフヒドリルPEG
8gのペンタエリトリトール(ポリエチレングリコール)エーテルテトラスルフヒドリルを、100mLの塩化メチレンおよび100mLのトリエチルアミンの混合物中に溶解した。40mLの塩化メチレン中の2gのペンタエリトリトール(ポリエチレングリコール)エーテルテトラスクシンイミジルグルタレートを、撹拌しながら、室温で、アルゴン下で、一晩ゆっくりと添加した。溶媒を除去し、そしてその生成物を、エタノール中での再結晶によって単離し、乾燥した。
【0101】
12b:12アームスクシンイミジルPEG
2gのペンタエリトリトール(ポリエチレングリコール)エーテルテトラスクシンイミジルグルタレートを、50mLの塩化メチレン中に溶解した。10mLの塩化メチレン中の0.5gのペンタエリトリトール(ポリエチレングリコール)エーテルテトラアミンを、撹拌しながら、室温で、アルゴン下で、一晩ゆっくりと添加した。溶媒を除去し、そしてその生成物を、エタノール中での再結晶によって単離し、乾燥した。
【0102】
これらの2つの化合物を、実施例12に記載されるように破裂強度について試験すると、これらは、150mmHgより大きい破裂強度および2秒未満のゲル化時間を示した。
【0103】
上記のシステムに対して、その基本的な技術から逸脱することなく多くの改変がなされ得る。本発明は、1つ以上の特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載されてきたが、当業者は、本出願において具体的に開示された実施例は変更されるが、これらの改変および改良は以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神を越えないことを理解する。本出願に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもこれらの刊行物、特許、または特許出願の各々が明確にそして個々に示されて本明細書中に参考として援用されるように、本明細書中で参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、種々のスルフヒドリル反応基の構造を示し、ここで「R」は、反応基が付着する化学構造を示す。
【図2】図2は、低分子量の多官能性反応化合物の構造を示す。
【図3】図3は、反応性四官能性ポリエチレングリコールの混合物のゲル化のレオメトリック(rheometric)測定を示す。
【図4】図4は、実施例13に記載されるような「12アーム」スルフヒドリル反応性又はスクシンイミジル反応性PEG化合物を示す。
【図5】図5は、実施例13に記載されるような「4アーム」中間体からの2つの「12アーム」PEG化合物の形成を示す。
【出願人】 【識別番号】506414587
【氏名又は名称】アンジオデバイス インターナショナル ゲーエムベーハー
【出願日】 平成19年8月21日(2007.8.21)
【代理人】 【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男

【識別番号】100084009
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信夫

【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤

【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治

【識別番号】100114007
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 孝二


【公開番号】 特開2008−29855(P2008−29855A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−215016(P2007−215016)