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【発明の名称】 消臭剤およびその利用
【発明者】 【氏名】飯塚 和広

【氏名】新垣 善雄

【要約】 【課題】エチルアクリレート等の低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減する性能に優れた低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭剤を提供する。

【構成】本発明の低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭剤は、下記式(1):
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
2N(CH2CH2NH)nH ・・・(1)
(ただし、式中のnは2〜5の整数である。);
で表される化合物を有効成分として含む、低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭剤。
【請求項2】
前記式(1)中のnが3である、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物と水とを1:0.5〜1:3の体積比で混合してなる、請求項2に記載の消臭剤。
【請求項4】
低級アルキル(メタ)アクリレートの輸送容器または貯留容器内の消臭あるいは低級アルキル(メタ)アクリレート製造装置の反応容器内の消臭に使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項5】
前記低級アルキル(メタ)アクリレートはエチルアクリレートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の消臭剤を低級アルキル(メタ)アクリレートに接触させる、低級アルキル(メタ)アクリレートの消臭方法。
【請求項7】
低級アルキル(メタ)アクリレートを含む被消臭ガス中に前記消臭剤を噴霧する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、エチルアクリレート等の低級アルキル(メタ)アクリレートに起因する臭気を低減するための消臭剤および該消臭剤を用いた消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルアクリレート、メチルメタクリレート等の低級アルキル(メタ)アクリレート(低級アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルをいう。)は、合成樹脂、合成ゴム、塗料用バインダ等の各種化学製品を製造するためのモノマー等として極めて有用な化合物である。そのため、多量の低級アルキル(メタ)アクリレートが日々製造され、輸送され、貯留され、また各種製品(合成樹脂等)の製造に使用されている。
【0003】
一方、低級アルキル(メタ)アクリレートは特有の強い悪臭を有しており、その取り扱いに際しては十分な臭気対策をとることが望まれる。例えば、低級アルキル(メタ)アクリレートを輸送した後にその輸送タンクを洗浄する場合、該タンク内は通常、低級アルキル(メタ)アクリレート蒸気を高濃度で含む気体が充満し、さらにタンクの壁面に付着し或いはタンクから取り出し切れずタンク底部に溜まった液状の低級アルキル(メタ)アクリレートが存在する状況にある。このような状況下においてもタンク内の低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減することのできる高性能な消臭剤が提供されれば、作業環境の改善および作業場所周辺の環境保護等の観点から有益である。
【0004】
特許文献1には、乳化重合により得られたエマルジョンにヒドロキシルアミン水溶液を添加することにより、該重合物に残存するアクリル酸エステル等のモノマーに由来する悪臭を脱臭する方法が記載されている。しかし、この方法は乳化重合物に含まれる僅かな未反応モノマーの脱臭を対象としたものであって、高濃度の低級アルキル(メタ)アクリレート蒸気を含む気体等の消臭には適用できない。また、悪臭を含む空気の脱臭に関する従来技術文献として例えば特許文献2および3が挙げられるが、これらの文献に記載された技術によっても上述のような状況下で低級アルキル(メタ)アクリレート臭を満足に低減することはできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平06−073121号公報
【特許文献2】特開平11−090163号公報
【特許文献3】特開2005−199256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減する性能に優れた低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭剤を提供することである。本発明の他の一つの目的は、かかる消臭剤を用いた消臭方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、下記一般式(1)で表される化合物を有効成分として含む低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭剤が提供される。
2N(CH2CH2NH)nH ・・・(1)
ここで、上記式(1)中のnは2〜5の整数である。
かかる一般式で表される化合物(脂肪族ポリアミン)を有効成分とする消臭剤は、低級アルキル(メタ)アクリレートの臭い(すなわち低級アルキル(メタ)アクリレート臭)の低減に優れた効果を発揮し得る。例えば、上記式(1)中のnが3である化合物(トリエチレンテトラミン)を有効成分とする消臭剤が好ましい。
【0008】
ここに開示される消臭剤の好ましい一つの態様は、前記式(1)で表される化合物と水とを概ね1:0.5〜1:3の体積比で混合してなる消臭剤である。かかる組成の消臭剤によると、良好な消臭効果と好ましい原料コストおよび取扱性とがバランスよく実現され得る。
【0009】
ここに開示される消臭剤は、低級アルキル(メタ)アクリレートの輸送容器内の消臭、低級アルキル(メタ)アクリレートの貯留容器内の消臭、低級アルキル(メタ)アクリレート製造装置の反応容器内の消臭等に好ましく使用され得る。かかる容器内の気体は低級アルキル(メタ)アクリレートの蒸気を比較的高濃度で含むものであり得るところ、上記消臭剤は、このような低級アルキル(メタ)アクリレート臭の強い気体に対しても優れた消臭効果を発揮することができる。
【0010】
ここに開示される消臭剤は、例えば、エチルアクリレート用の消臭剤(すなわち、エチルアクリレート臭を低減するための消臭剤)として好適である。エチルアクリレートの臭気は人にとって特に不愉快に感じられる特徴的な悪臭であるところ、上記消臭剤によると該エチルアクリレート臭を効果的に低減する(消臭する)ことができる。
【0011】
また本発明によると、ここに開示されるいずれかの消臭剤を低級アルキル(メタ)アクリレートに接触させることを要件とする、低級アルキル(メタ)アクリレートの消臭方法が提供される。かかる方法によると、上述のように優れた消臭効果を示す消臭剤を低級アルキル(メタ)アクリレートに接触させることによって、低級アルキル(メタ)アクリレート臭を効率よく低減することができる。
【0012】
ここに開示される消臭方法の好ましい一つの態様では、低級アルキル(メタ)アクリレートを含む被消臭ガス中に前記消臭剤を噴霧する。かかる態様によると、消臭剤と被消臭ガスとの接触面積が大きいので、該被消臭ガスを効率よく消臭することができる。また、大容積の被消臭ガスに効率よく消臭処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
ここに開示される消臭剤が消臭対象とする臭気成分は、低級アルキル(メタ)アクリレート(すなわち(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル。以下「LAE」と表記することがある。)であり、典型的にはアクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜4(例えば炭素数1〜2)のアルキルモノアルコールとのエステルである。なかでも、特徴的な強い臭気を有することから臭気低減の要請が多いエチルアクリレートを消臭する用途に好適である。
【0015】
ここに開示される消臭剤は、上記式(1)で表される化合物(脂肪族ポリアミン、より詳しくは直鎖状の脂肪族ポリアミン)を有効成分として含む。該式中のnが2である化合物(ジエチレントリアミン)、nが3である化合物(トリエチレンテトラミン)、nが4である化合物(テトラエチレンペンタミン)、nが5である化合物(ペンタエチレンヘキサミン)のいずれも使用可能である。これらの化合物の一種のみを含んであってもよく、二種以上の化合物を任意の割合で含んでもよい。例えば、トリエチレンテトラミンを有効成分とする消臭剤が好ましい。
【0016】
該消臭剤は、上記式(1)で表される化合物の一種または二種以上から実質的に構成されたものであり得る。該化合物が適当な液状媒体と混合された態様の消臭剤であってもよい。かかる態様の消臭剤は、体積当たりの原料コストが低減されたものであり得る。また、より取扱性(噴霧適性、皮膚刺激性等)のよい消臭剤であり得る。上記液状媒体としては、上記式(1)で表される化合物と均一に混合し得るものが好ましく、特に水系溶媒が好ましい。ここで「水系溶媒」とは、水、あるいは水を主成分とする混合溶媒を指す。該混合溶媒を構成する水以外の成分は、任意の割合で水と均一に混合し得る一種または二種以上の有機溶媒(例えば低級アルコール)であり得る。上記液状媒体の典型例は水である。上記式(1)で表される化合物(二種以上の化合物を含む場合にはそれらの合計量)1に対する上記水系媒体の混合割合(体積比)は、例えば概ね10以下(典型的には概ね0.1以上10以下)とすることができ、通常は概ね5以下(典型的には概ね0.2以上5以下)とすることが適当である。水系媒体の混合割合が多すぎると、所望の消臭効果を得るために要する消臭剤の分量が多くなったり、消臭効果が十分に発揮されるまでの時間が長くなったりする傾向がある。好ましい一つの態様では、上記式(1)で表される化合物と水系媒体(典型的には水)との混合割合を凡そ1:0.5〜1:3の体積比とする。かかる組成の消臭剤によると、良好な消臭効果と好ましい原料コストおよび取扱性とがバランスよく実現され得る。
【0017】
ここに開示される消臭剤は、典型的には液状を呈するものであって、低級アルキル(メタ)アクリレート(LAE)を含む気体(被消臭ガス)と前記消臭剤とを接触させる各種態様(消臭方法)で使用することができる。例えば、LAEを含む気体に消臭剤の液滴を供給(噴霧等)する態様、適当な槽内に貯留された消臭剤にLAEを含む気体をバブリングする態様等により好ましく使用され得る。被消臭ガスと消臭剤とを接触させる他の態様としては、例えば、該消臭剤を含浸させた支持体(無機多孔質体、ガラス繊維等)を適当な容器内に収容してフィルタを構成し、該フィルタに被消臭ガスを通過させる態様が挙げられる。また、上記消臭剤は、LAEを含む液体(LAEそれ自体、LAEを含む廃液等)に消臭剤を接触させる態様(例えば、該液体に消臭剤を添加する態様)でも使用され得る。
【0018】
ここに開示される消臭剤は、LAEの輸送容器または貯留容器(コンテナ、タンク等)、あるいはLAE製造装置に具備される反応容器の内部を消臭する用途に好ましく使用され得る。特に、これらの容器から内容物(すなわち、輸送、貯留または製造の目的たるLAE)を取り出した後の空容器内を消臭する用途に好適である。このような空容器(例えば、エチルアクリレートの輸送に用いられた後の輸送タンク等)の内部にある気体は、輸送、貯留または製造中のLAEから揮発した蒸気、容器から取り出しきれずに残留したLAEから揮発した蒸気等により、LAE蒸気を比較的高濃度で(場合によっては飽和蒸気圧に近い濃度で)含むものであり得る。ここに開示される消臭剤は、このようにLAE蒸気濃度の高い(したがってLAE臭の強い)気体を消臭する用途に対して特に有益である。例えば、上記空容器内に消臭剤を噴霧することにより、該容器内のLAE臭を効果的に低減することができる。該消臭剤は、工業用の大型容器(例えば容量5000m3以上、さらには10000m3以上)の内部を消臭する用途にも好適に使用され、優れたLAE臭低減効果(消臭効果)を発揮することができる。
【0019】
かかる消臭操作(消臭方法)は、当該容器内を洗浄する際の前処理として、または洗浄作業の一環として実施することができる。このことによって、容器洗浄時の作業環境が改善され、また作業場所周辺の環境への影響が軽減され得る。
ここに開示される消臭剤を利用して空のLAE輸送タンクの内部を消臭および洗浄する手順を例示すれば以下のとおりである。まず、洗浄対象たるLAE輸送タンクの内部(通常は密閉状態で作業場所に搬入され、取り出しきれなかったLAE等から揮発したLAE蒸気を高濃度で含む。)に消臭剤を噴霧する。これにより該タンク内のLAE臭を消臭する。かかる洗浄剤の噴霧により、タンク内の気体に含まれるLAE蒸気の消臭およびタンク内に液体の状態で存在するLAEの消臭の双方が実現され得る。次いで、上記消臭操作(消臭方法)により消臭処理されたタンク内を任意の洗浄液(例えば水)で洗浄する。上記で噴霧された消臭剤および/または該消臭剤に由来する生成物等は、この洗浄液によりタンク内から除去する(洗い流す)ことができる。かかる洗浄液による洗浄自体は従来の輸送タンクの洗浄と同様の操作により行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【0020】
なお、上記洗浄方法(消臭方法)においてタンク内に消臭剤を噴霧する際の好適な噴霧量および噴霧時間は特に限定されず、使用する消臭剤の組成(有効成分の濃度等)、消臭剤の噴霧条件(液滴の細かさ等)、タンクの容量、タンク内に存在するLAEの量(LAE蒸気の濃度等)、目標とする消臭レベル等に応じて、適切な噴霧条件を適宜選択することができる。作業効率の観点から、通常は、2時間以内(より好ましくは1時間以内)の噴霧により目標の消臭レベルが達成されるように、使用する消臭剤の組成や噴霧条件等を設定することが好ましい。また、ここではLAEの輸送タンクを例として好ましい消臭方法および洗浄方法を説明したが、かかる方法はLAEの貯留タンクや反応容器の(典型的には空容器内の)消臭または洗浄にも好ましく適用することができる。
【0021】
上記で説明した消臭方法および洗浄方法は、さらに、LAEを含む組成物(例えば、LAEを乳化重合して得られたエマルジョンまたはLAEと他のモノマーとを乳化重合して得られたエマルジョンであって、該エマルジョン中に未反応のLAEが残存するもの)の輸送容器、貯留容器、製造用容器等の(典型的には空容器内の)消臭または洗浄にも好ましく適用され得る。かかる容器内の気体は、LAEを含む組成物から揮発したLAE蒸気を含むことによりLAE臭を有するものであり得るところ、上記消臭剤によるとそのLAE臭を効果的に消臭することができる。
【0022】
ここに開示される消臭剤は、LAEまたはLAEを含む組成物(例えば、未反応のLAEが残留する上記エマルジョン)を取り扱う設備から生じた排ガスのLAE臭を消臭する用途にも好ましく使用され得る。かかる排ガスは、例えば、(a)LAEを含むモノマーを重合させる際、その反応容器(重合容器)内を不活性ガス雰囲気(例えば窒素ガス雰囲気)に維持するため該容器に流通された不活性ガス、(b)未反応のLAEが残留する上記エマルジョンを用いて調製された組成物(塗料組成物等)を被処理物に塗布して乾燥させる際、該乾燥に使用される乾燥機から出る排ガス、等であり得る。これらの排ガスは、LAEまたはLAEを含む組成物から生じたLAE蒸気を含むものであり得る。かかる排ガスを上記消臭剤で処理する(典型的には、該排ガスと該消臭剤とを接触させる)ことにより、該排ガスのLAE臭を効果的に低減することができる。
【0023】
なお、本明細書により開示される発明には以下のものが含まれる。
(A)ここに開示されるいずれかの消臭剤を貯留するタンクと、低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体が存在する容器内に該タンク内の消臭剤を噴霧するノズルと、を備える低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置。図1に示す低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置1は、かかる構成を備える消臭装置の一例であって、消臭剤32を貯留する消臭剤貯留タンク30と、低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体(被処理ガス)Gが存在する容器10内に貯留タンク30内の消臭剤32を噴霧する噴霧装置20と、を備える。噴霧装置20のノズル22から容器10内に消臭剤32を噴霧することにより、該容器内の気体Gの低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減する(消臭処理する)ことができる。
【0024】
(B)ここに開示されるいずれかの消臭剤を貯留するタンクと、低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体が流通するガス通路に前記タンク内の消臭剤を噴霧するノズルと、を備える低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置。図2に示す低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置2は、かかる構成を備える消臭装置の一例であって、消臭剤42を貯留する消臭剤貯留タンク30と、低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体(被処理ガス)Gが流通するガス通路16に貯留タンク30内の消臭剤32を噴霧する噴霧装置44と、を備える。噴霧装置44のノズル46からガス通路16内に消臭剤32を噴霧することにより、該ガス通路内の気体Gの低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減する(消臭処理する)ことができる。
【0025】
(C)ここに開示されるいずれかの消臭剤を貯留する貯留槽と、該槽内に貯留された消臭剤内に低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体をバブリングする(気泡として導入する)ガス導入管と、を備える低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置。図3に示す低級アルキル(メタ)アクリレート用消臭装置3は、かかる構成を備える消臭装置の一例であって、消臭剤32を貯留する消臭剤貯留槽50と、該槽50内に貯留された消臭剤32内に低級アルキル(メタ)アクリレートを含む気体(被処理ガス)Gをバブリングする(気泡として導入する)ガス導入装置54と、を備える。ガス導入装置54のヘッド56から消臭剤32内に気体Gをバブリングすることにより、該気体Gの低級アルキル(メタ)アクリレート臭を低減する(消臭処理する)ことができる。
【0026】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体的実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0027】
<実施例1>
エチルアクリレートの輸送に使用された後の化学薬品輸送用タンク(容量33,000m3)を用意した。このタンクの内容物(すなわちエチルアクリレート)は、該タンクの通常の使用態様により空になるまで排出されているが、その後特に洗浄処理等は行われていない。したがって該タンクは、輸送中または輸送後に生じたエチルアクリレート蒸気がタンク内の空間に充満し、さらにタンクの底部に排出し切れなかったエチルアクリレート(液状)が少量溜まった状態にあった。そのため、タンク内の気体(被消臭ガス)は強烈なエチルアクリレート臭のするものであった。
【0028】
一方、トリエチレンテトラミン(N,N’−ビス(2−アミノエチル)エチレンジアミン)と水とを1:2.5の体積比で混合して消臭剤を調製した。そして、該消臭剤を上記タンク内に高圧スプレーガンで噴霧した。より具体的には、図1に模式的に示すように、低級アルキル(メタ)アクリレート輸送タンク10(エチレンアクリレート蒸気を含む被処理ガスGが充満している。)の上部にある蓋部12から噴霧装置(ここでは高圧スプレーガンを使用した。)20のノズル22を挿入した。そして、消臭剤貯留タンク30内の消臭剤32をノズル22からタンク10内に噴霧した。ここでは、凡そ20リットルの消臭剤32を約1時間かけて噴霧した。その間、ノズル22の向きを適宜変更してタンク10内の各所に消臭剤32がなるべくよく行き渡るようにした。
【0029】
上記消臭剤の噴霧前および噴霧後について、タンク内のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、消臭剤の噴霧前には非常に強烈であったエチルアクリレート臭が、噴霧後にはほとんど感じられなくなった。すなわち、本実施例によりタンク内のエチルアクリレート臭が顕著に低減された。
【0030】
<実施例2>
トリエチレンテトラミンと水との混合割合を1:1(体積比)とした点以外は実施例1と同様にして消臭剤の調製およびエチレンアクリレート輸送タンク内の消臭を行い、同様にして噴霧前後のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、本実施例によってもタンク内のエチルアクリレート臭が顕著に低減された。
【0031】
<実施例3>
トリエチレンテトラミンと水との混合割合を1:4(体積比)とした点以外は実施例1と同様にして消臭剤の調製およびエチレンアクリレート輸送タンク内の消臭を行い、同様にして噴霧前後のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、実施例1,2に比べればやや効果は劣るものの、本実施例によってもタンク内のエチルアクリレート臭が大幅に低減された。また、同組成の消臭剤20リットルを1時間かけてさらに噴霧したところ、実施例1,2と同程度のレベルまでエチルアクリレート臭が低減された。
【0032】
<比較例1>
実施例1で用いた消臭剤の代わりに、トリエチルアミン(N(CH2CH33)と水とを1:1の体積比で混合した組成物をタンク内に噴霧した。その他の点については実施例1と同様にしてエチレンアクリレート輸送タンク内の消臭を行い、同様にして噴霧前後のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、上記組成物を噴霧してもエチルアクリレート臭の低減は認められなかった。
【0033】
<比較例2>
実施例1で用いた消臭剤の代わりに、アミノエタノール(H2NCH2CH2OH)と水とを1:1の体積比で混合した組成物をタンク内に噴霧した。その他の点については実施例1と同様にしてエチレンアクリレート輸送タンク内の消臭を行い、同様にして噴霧前後のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、上記組成物を噴霧してもエチルアクリレート臭の低減は認められなかった。
【0034】
<比較例3>
実施例1で用いた消臭剤の代わりに、30質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液をタンク内に噴霧した。その他の点については実施例1と同様にしてエチレンアクリレート輸送タンク内の消臭を行い、同様にして噴霧前後のエチルアクリレート臭の強さを官能評価した。その結果、上記水溶液の噴霧によるエチルアクリレート臭の低減は非常に僅かであり、満足できるレベルの消臭効果を得ることはできなかった。
【0035】
以上の結果を表1にまとめて示した。この表からわかるように、実施例1〜3ではいずれもエチレンアクリレート輸送タンク内のエチルアクリレート臭を極めて効果的に消臭することができた。一方、比較例1〜3ではいずれもエチルアクリレート臭の低減効果が認められず、あるいはその効果が不十分であった。
【0036】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施態様に係る消臭方法および消臭装置を示す模式図である。
【図2】他の実施態様に係る消臭方法および消臭装置を示す模式図である。
【図3】他の実施態様に係る消臭方法および消臭装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10:低級アルキル(メタ)アクリレート輸送タンク(輸送容器)
20:高圧スプレーガン(噴霧装置)
22:ノズル
32:消臭剤
G:被消臭ガス
【出願人】 【識別番号】505382113
【氏名又は名称】株式会社サシュウ産業
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠

【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子

【識別番号】100115510
【弁理士】
【氏名又は名称】手島 勝


【公開番号】 特開2008−29577(P2008−29577A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206091(P2006−206091)