| 【発明の名称】 |
医療用具及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】塙 隆夫
【氏名】田中 勇太
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| 【要約】 |
【課題】表面電荷を有する医療用具において、その表面が薄い親水性有機化合物で強固に被覆されて、優れた潤滑性を有し、血管などへ挿入するときの操作性が良好であり、血管内皮などを傷つけるおそれのない医療用具、及び該医療用具を簡単な工程によって製造することができる医療用具の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。さらに、本発明では、抗菌性に優れ、さらには、抗菌性が長期に渡って安定的に維持されるような医療用具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【構成】表面電荷を有する医療用具材料を、極性基を有する親水性有機化合物が溶解した溶液に浸漬することで、親水性有機化合物を医療用具材料の表面に固定する医療用具の製造方法である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面電荷を有する医療用具材料を、極性基を有する親水性有機化合物が溶解した溶液に浸漬することで、親水性有機化合物を医療用具材料の表面に固定する医療用具の製造方法。 【請求項2】 請求項1記載の医療用具の製造方法において、医療用具材料が金属またはイオン結合性セラミックスであることを特徴とする医療用具の製造方法。 【請求項3】 請求項1又は2記載の医療用具の製造方法において、親水性有機化合物が、窒素又はリンを含む極性基を有する化合物であることを特徴とする医療用具の製造方法。 【請求項4】 請求項3記載の医療用具の製造方法において、窒素を含む極性基が、アミノ基、イミノ基、及びイミド基から選ばれる1種であることを特徴とする医療用具の製造方法。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか記載の医療用具の製造方法によって、表面に極性基を有する親水性有機化合物が直接的に固定されたことを特徴とする医療用具。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、医療用具及びその製造方法に関する。具体的には、ガイドワイヤ、ガイディングカテーテル、ステント、人工弁、歯科補綴物などの医療用具及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、カテーテル挿入のために用いるガイドワイヤなどの医療用具の表面に潤滑性を付与するために、ガイドワイヤの表面を親水性高分子、例えば、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドなどで被覆することが行われる。しかし、金属製のガイドワイヤと親水性高分子の間の親和力は小さいため、ガイドワイヤの表面に中間層を設け、その上を親水性高分子で被覆することが行われている。 【0003】 例えば、(特許文献1)には、摩擦係数を小さくし、人体管状器官への挿入操作が容易なガイドワイヤ製造方法として、芯線の外周にイソシアネート基と反応可能な合成樹脂を被覆し、この製造方法として、芯線の外周にイソシアネート基と反応可能な合成樹脂を被覆し、この合成樹脂膜の表面にイソシアネート基を有する化合物を結合させて未反応のイソシアネート基を形成し、合成樹脂膜の表面にイソシアネート基を介してポリエチレングリコールを結合させ、親水性被膜を形成するガイドワイヤの製造方法が提案されている。 【0004】 また、(特許文献2)には、ガイドワイヤの表面に平滑で、膜厚が均一な親水性高分子の被膜を形成する方法として、ガイドワイヤの端部を把持して垂直に吊り下げ、ポリイソシアネート化合物の溶液を満たした移動セルとポリエチレンオキサイドとジシクロアミジン化合物の溶液を満たした移動セルをガイドワイヤに挿通して下降させ、ポリウレタンの被覆層を有するガイドワイヤの表面にポリエチレンオキサイド被膜を形成する方法が提案されている。 【0005】 さらに、(特許文献3)には、表面に容易にかつ簡単に潤滑性を発現することができ、操作性の向上と患者の苦痛の軽減に有効な医療用体内挿入具として、基質表面をジイソシアネートで部分架橋させた無水マレイン酸ハーフエステルで被覆した医療用体内挿入具が提案されている。 【0006】 しかし、これらの(特許文献1〜3)に記載の方法は、中間層の形成と、表面の親水性被膜の形成のために少なくとも2工程を要して手間がかかるのみならず、本来直径が小さいことが好ましいガイドワイヤが太くなるという問題がある。また、イソシアネート化合物を用いた場合、未反応物が残留すると生体に対して毒性を示すおそれがある。 【0007】 また、(特許文献4)には、湿潤時に表面潤滑性を発現し、摩擦耐久性に優れ、持続的な潤滑性を有する医療用ガイドワイヤの製造方法として、内芯部の表面に、親水性高分子物質と、カルボキシル基含有高分子物質と、水酸基、アミノ基またはイソシアネート基を有する化合物との混合物の溶液を被覆し、加熱処理を施す方法が提案されている。さらに、(特許文献5)には、潤滑性、柔軟性、抗血栓性、電気絶縁性に優れた被膜を備えた医療用具として、親水性高分子と増粘剤と保水剤とを含有した潤滑被膜剤を塗布し、加熱乾燥した医療用具が提案されている。 【0008】 しかしながら、これら(特許文献4及び5)記載の発明は、加熱処理を行うと、製造上工程数が増加し、熱処理炉などの装置が必要になる。 【0009】 さらに、(特許文献6)には、基材表面に対する密着性に優れ、しかも厚さの小さな蒸着重合被膜を有し、この蒸着重合被膜に対して化学的に固定されて容易に剥離、脱離、分離することがなく、潤滑性に優れた親水性高分子被膜を有する潤滑性医療器具の製造方法として、基材表面に蒸着重合によりポリイミドなどの活性水素を有する蒸着重合被膜を形成し、蒸着重合被膜上に活性水と反応可能なイソシアネート化合物及び活性水素含有水溶性高分子を塗工し、反応させる方法が提案されている。 【0010】 しかしながら、この方法では中間層に想到する蒸着重合被膜の厚さは小さいが、蒸着重合被膜の形成には高価で複雑な装置を要し、また、高温で処理するために金属部品にしか適用できず、蒸着重合被膜を形成した後に金属以外の部品を加えて医療用具を組み立てる必要がある場合があった。 【0011】 【特許文献1】特開平5−18466号公報 【特許文献2】特開2004−49722号公報 【特許文献3】特開平3−236854号公報 【特許文献4】特開9−154951号公報 【特許文献5】特開2004−215710号公報 【特許文献6】特開2002−95735号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 そこで、本発明は上記従来の状況に鑑み、表面電荷を有する医療用具において、その表面が薄い親水性有機化合物で強固に被覆されて、優れた潤滑性を有し、血管などへ挿入するときの操作性が良好であり、血管内皮などを傷つけるおそれのない医療用具、及び該医療用具を簡単な工程によって製造することができる医療用具の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。さらに、本発明では、抗菌性に優れ、さらには、抗菌性が長期に渡って安定的に維持されるような医療用具及びその製造方法を提供することを目的とする。 【0013】 本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、極性基を有する親水性有機化合物を溶解した溶液に表面電荷を有する材料を浸漬することにより、材料の金属表面に対して親水性有機化合物を中間層なしで直接的に固定しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 【0014】 すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の(1)〜(4)の構成を採用する。 (1) 表面電荷を有する医療用具材料を、極性基を有する親水性有機化合物が溶解した溶液に浸漬することで、親水性有機化合物を医療用具材料の表面に固定する医療用具の製造方法。 (2) (1)記載の医療用具の製造方法において、医療用具材料が金属またはイオン結合性セラミックスであることを特徴とする医療用具の製造方法。 (3) (1)又は(2)記載の医療用具の製造方法において、親水性有機化合物が、窒素又はリンを含む極性基を有する化合物であることを特徴とする医療用具の製造方法。 (4) (3)記載の医療用具の製造方法において、窒素を含む極性基が、アミノ基、イミノ基、及びイミド基から選ばれる1種であることを特徴とする医療用具の製造方法。 (5) (1)〜(4)のいずれか記載の医療用具の製造方法によって、表面に極性基を有する親水性有機化合物が直接的に固定されたことを特徴とする医療用具。 【発明の効果】 【0015】 本発明の医療用具の製造方法によれば、医療用具材料の表面に親水性有機化合物が中間層なしで直接的に固定することが可能となる。また、電極を用いて電圧を加えて電気化学反応を起こすことなく、医療用具の表面に親水性有機化合物を固定することが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、このような医療用具を、常温の温和な条件で、短時間に効率よく製造することができる。 【0016】 また、本発明の医療用具の製造方法によって得られた医療用具によれば、表面に親水性有機化合物が中間層なしで直接的に固定されているので、親水性被膜の厚さを小さくすることが可能となる。また、表面に親水性有機化合物が直接的に固定されており、医療用具の表面に潤滑性、及び抗菌性が付与される。さらに、本発明の医療用具は、親水性有機化合物が一分子ずつ表面に固定されているために、医療用具の使用中に親水性被膜が剥離、脱落することがなく、長期にわたって抗菌性が維持される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明の医療用具は、表面電荷を有する医療用具において、医療用具表面に親水性有機化合物を中間層なしで直接的に固定してなる医療用具である。 【0018】 なお、本発明に用いる親水性有機化合物としては、例えば、ポリエチレングリコ−ル、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロ−ス、メチルセルロース、アルギン酸、たんぱく質、糖類などを挙げることができる。本発明に用いる親水性有機化合物は、数平均分子量が200〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましい。親水性有機化合物の数平均分子量が200未満であると、歯科補綴物及び骨接合術用具に十分な抗菌性が発現しないおそれがある。一方、親水性有機化合物の数平均分子量が1,000,000を超えると、親水性有機化合物の医療用具材料表面への固定化における取り扱いが容易でなくなる場合がある。 【0019】 本発明において、親水性有機化合物が有する極性基は、炭素原子と異なる電気陰性度を有する原子を含む基であり、例えば、アミノ基(−NH2)、イミノ基(=NH)、アミド基(−CONH2)、イミド基(−CONHCO−)、エポキシ基、イソシアネート基(−NCO)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2)、メルカプト基(−SH)、チオ基(−S−)、ホスフィノ基(−PH2)などを拳げることができる。親水性有機化合物は、これらの極性基の1種を有することができ、あるいは、2種以上を組み合わせて有することもできる。また、1種の極性基は、1個を有することができ、複数個を有することもできる。これらの極性基の中で、蛮素又はリンを含む極性基を有する親水性有機化合物を好適に用いることができ、アミノ基、イミノ基、アミド基又はイミド基を有する親水性有機化合物を特に好適に用いることができる。 【0020】 本発明に用いる極性基を有する親水性有機化合物としては、例えば、両末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール、両末端にエポキシ基を有するポリエチレングリコールなどを挙げることができる。両末端にアミノ基を有するポリエチレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコールと塩化アリルとの反応によりポリエチレングリコールジアリルエーテルとしたのち、二重緒合にアンモニアを付加することにより、両末端にアミノプロピル基を有するポリエチレングリコールを製造することができる。両末端にエポキシ基を有するポリエチレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール(化1)とエピクロロヒドリンとの反応により両末端に2−ヒドロキシー3−クロロプロピル基を有するポリエチレングリコールとしたのち、脱塩化水素して閉環することにより、両末端にグリシジル基を有するポリエチレングリコール(化2)を製造することができる. 【0021】 【化1】
【0022】 【化2】
【0023】 また、表面電荷を有する医療用具としては、金属やイオン結合性セラミックスが挙げられる。金属としては、具体的にはチタン、チタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、白金、金等が挙げられる。また、イオン結合性セラミックスとしては、具体的には、アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。 【0024】 本発明の医療用具において、親水性有機化合物により形成される被膜の厚さは、乾燥状態において0.01nm〜20μmであることが好ましく、0.1nm〜10μmであることがより好ましい。被膜の厚さが0.01nm未満であると、歯科補綴物及び骨接合術用具に十分な抗菌性が発現しないおそれがある。一方、被膜の厚さが20μmを超えると、被膜の厚さが増加しても抗菌性が向上せず、低下する場合がある。 【0025】 本発明の医療用具の製造において、極性を有する親水性有機化合物を医療用具の表面に固定する際には、親水性有機化合物の水溶液中での電離、表面電荷を有する材料表面へ向かっての移動、材料表面への吸着、電荷同士の結合などの過程を経過する。図1は、本発明に用いる被膜形成の説明図である。ポリエチレングリコール鎖の末端のアミノ基にプロトンが付加して第四級アンモニウム基となる。続いて、親水性有機化合物の一部は、アミノ基とプロトンに電離して、正の電荷を示し、表面電荷を有する材料表面に向かって移動する。ポリエチレングリコール鎖の末端のアミノ基と金属あるいはイオン結合性セラミックスの間には強い結合が形成され、この強い結合が保持される。 【0026】 また、本発明の歯科補綴物の製造方法においては、極性基を有する親水性有機化合物を溶解した溶液に表面電荷を有する医療用具材料とを浸漬することにより、親水性有機化合物を医療用具材料の表面に固定する。 【0027】 図2は、本発明の製造方法の実施の一態様の説明図である。反応槽1に貯留した極性を有する親水性有機化合物の水溶液2の中に医療用具材料3が浸漬される。親水性有機化合物の濃度は、1〜30重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。親水性有機化合物の濃度が1重量%未満であると、被膜の厚さが薄く、十分な抗菌性が発現しないおそれがある。一方、親水性有機化合物の濃度が30重量%を超えると、被膜の厚さが増加しても抗菌性が向上せず、低下する場合がある。 【0028】 本発明の製造方法においては、親水性有機化合物の水溶液に、無機電解質を溶解しておくことが好ましい。溶解する無機電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを挙げることができる。無機電解質を溶解しておくことにより、水溶液が電気伝導性を有し、医療用具材料に向かって親水性有機化合物が移動することができる。無機電解質の濃度は、1〜5重量%であることが好ましく、2〜4重量%であることがより好ましい。無機電解質の濃度が1重量%未満であると、水溶液の電気伝導性が低下するおそれがある。無機電解質の濃度が5重量%を超えると、無機電解質中のイオンが金属表面に吸着するおそれがある。 【0029】 本発明の医療用具の製造方法における反応は、常温において、水溶液中で行うことができる.したがって、医療用具に金属以外の耐熱性や耐溶剤性に乏しい部品が用いられている場合であっても、それらの部品を組み込んだ中間製品として本発明の製造方法を行うことができる.また、親水性有機化合物による被覆は、電荷を有する金属及びイオン結合性セラミックスのような医療用具材料表面にのみ行われるので、薬剤を塗工する工程のように、不必要な部分にまで被膜がはみ出すおそれがない。 【0030】 極性基を有する親水性有機化合物を溶解した溶液に表面電荷を有する医療用具を浸漬し、親水性有機化合物を医療用具材料の表面に固定すると、初期段階では親水性有機化合物の付着の状態に部分的に差が生じても、親水性有機化合物の付着が多い部分は電流密度が小さく、親水性有機化合物の付着が少ない部分は電流密度が大きくなるので、親水性有機化合物の付着が少ない部分に選択的に親水性有機化合物が付着し、最終的に均一な厚さの親水性有機化合物の被膜を形成することができる。 【0031】 本発明の製造方法においては、親水性有機化合物の被膜の厚さは、親水性有機化合物の分子量により制御することができる。例えば、両末端にアミノ基を有するポリエチレングリコールを用いた場合、両末端のアミノ基が材料表面に結合するので、被膜の厚さはポリエチレングリコールの鎖長の約2分の1となる。したがって、厚い被膜が必要な揚合は、分子量の大きいポリエチレングリコールを用い、薄い被膜が必要な場合は、分子量の小さいポリエチレングリコ−ルを用いることにより、選択した厚さの親水性有機化合物の被膜を形成することができる。 【0032】 以上のようにして得られた医療用具は、ガイドワイヤ、カテーテル、ステント、インプラント、義歯、矯義歯(ブリッジ)、歯冠修復物(充填材、修復材)等に好適に用いられる。また、得られた医療用具は、プレートやボルト等に好適に用いられる。そして、上述のような医療用具の中でも、本発明で得られる医療用具はガイドワイヤ、カテーテルなどの使用時間が比較的短時間である医療用具に特に好ましく用いられる。 【実施例】 【0033】 次に、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 (実施例1) 直径8mm、高さ2mmの円柱状のチタンを研磨、洗浄した後に基材として用いた。脱イオン水に、極性基を有する親水性有機化合物として両末端にアミノプロピル基を有するポリエチレングリコール(数平均分子量約1000)12重量%と塩化ナトリウム3.0重量%を溶解した溶液40mLを42mL容量のポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))反応槽に入れた。そして、基材を溶液中に浸漬して、24時間反応を行った。そして、基材表面にポリエチレングリコールの被膜が形成された試験片を得た。 (実施例2) 浸漬時間を2hとした以外は(実施例1)と同様に行った。 (比較例1) 基材を陰極とし、白金電極を陽極としてマグネスチックスターラーで攪拌子を回転して液を攪拌しながら、両極間に5.0Vの電圧を加えて通電し、電気化学反応を行って、基材表面にポリエチレングリコールの被膜を形成した以外は同様に行った。 (比較例2) 極性基を有する親水性有機化合物として両末端が修飾されていないポリエチレングリコールを用いた以外は、(実施例1)と同様に行った。 (比較例3) 基材であるチタンに対して、ポリエチレングリコールの被膜を形成しなかった以外は、(実施例1)と同様に行った。 (ポリエチレングリコールの被膜厚さ) (実施例1)及び(実施例2)で得られた試験片のポリエチレングリコールの被膜の厚さをエリプソメータ(DVA-36Ls, Mizojiri Optical Co. Ltd.)を用いて測定した。各試験片のポリエチレングリコールの被膜の厚さはそれぞれ3.9nm、0.5nmであり、電気化学反応により被膜を形成した(比較例1)の試験片の被膜厚さ(2.3nm)と比較しても十分な厚みを得ることができた。また、(実施例1)で得られた試験片のポリエチレングリコールの被膜の厚さは、同時間溶液中に浸漬した(比較例2)の試験片の被膜厚さ(1.5nm)と比較しても大きく、末端が修飾されたポリエチレングリコールを極性基を有する親水性有機化合物として用いることで被膜形成が促進されることがわかる。 (参考例1) また、(参考例1)として、チタンからなる基材を水晶発振子マイクロバランス(QCM:Quarts Crystal Microbalance)にセットして、両末端にアミノプロピル基を有するポリエチレングリコール(数平均分子量約1000)12重量%と塩化ナトリウム3.0重量%を溶解した溶液を注入した。 (参考例2) また、(参考例2)として、チタンからなる基材を水晶発振子マイクロバランス(QCM:Quarts Crystal Microbalance)にセットして、両末端が修飾されていないポリエチレングリコール(数平均分子量約1000)12重量%と塩化ナトリウム3.0重量%を溶解した溶液を注入した。 【0034】 (参考例1、2)において溶液を注入した際の試験片の質量変化を測定した。各試験片の質量の経時変化を図2に示す。図2に示すように、(参考例1、2)の結果より、極性基を有する親水性有機化合物として両末端にアミノプロピル基を有するポリエチレングリコールを用いることで、チタンからなる基材への被膜の形成が促進されることが分かる。 (試験片の表面観察) (実施例1、2)及び(比較例2)で得られた試験片の表面をX線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により観察した。そして、XPSによって得られたスペクトルから基材の金属チタン(Ti0)の割合を各試験片ごとに算出した結果を図3に示す。その結果、(実施例2)と(比較例2)とを比較すると、(実施例2)で得られた試験片のほうがTi0の割合が小さいことがわかる。この結果から、極性基を有する親水性有機化合物として両末端にアミノプロピル基を有するポリエチレングリコールを用いることで、基材への被膜の形成が均一に行われたと考えられる。 【0035】 また、(実施例1)で得られた試験片の表面をX線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により観察して得られたスペクトルを図4に示す。図4に示すように、極性基を有する親水性有機化合物の末端はN−HO及びNH3+として結合していることが基材(Ti)表面に結合していることが分かった。 (耐久性に関する試験) (実施例1)及び(比較例2)で得られた試験片を純水中に24時間浸漬して得られた試験片の安定性を調べた。図5に試験片を純水に浸漬する前後の試験片のポリエチレングリコールの被膜の厚さを測定した結果を示す。図5に示すように純水中において(実施例1)で得られた試験片のポリエチレングリコール被膜の厚みが純水に浸漬することで増加していることが分かる。 【0036】 また、(実施例1)及び(比較例1)で得られた試験片を乾燥させデシケータ内で1日以上保管した後に、水晶発振子マイクロバランス(QCM:Quarts Crystal Microbalance)にセットして、純水を注入した際の試験片の質量変化を測定した。各試験片の質量の経時変化を図6に示す。図6に示すように、純水中において質量の増加が観察され、各試験片の厚みの増大は水分子を吸収したためと推察される。これらの結果から、末端が修飾されたポリエチレングリコールは水によってやや膨潤するが表面電荷を有する材料の表面からは容易に脱離ないことが明らかとなった。 (抗菌性に関する試験) (実施例)及び(比較例)で得られた試験片を可溶性タンパク質としてアルブミンを4.5g/L含むPBS(Phosphate Buffered Saline)中に30分間浸漬させた。そして、浸漬させた後の試験片の表面を蛍光顕微鏡(ニコン、E−600)を用いて観察した。なお観察は、フルオレセインを蛍光標識体として用いて行った。そして、図7及び図8にそれぞれ(実施例1)及び(比較例3)の結果を示す。図7及び図8からもわかるように、(実施例1)で得られた試験片は、アルブミンの付着がほとんどなく、抗菌性が高いことが分かる。また、(実施例1)で得られた試験片の表面は耐久性も良好であった。 【産業上の利用可能性】 【0037】 本発明の医療用具は、表面潤滑性が良好であり、ガイドワイヤ、ステントなどの体内に挿入する器具として公的に用いることができる。また、抗菌性を有しており、細菌の繁殖、プラークの蓄積などを防止することが可能となる。さらには、金属表面に親水性有機化合物が直接的に固定されているので、抗菌性が安定的に維持され、優れた医療用具として用いることが可能となる。また、本発明の医療用具の製造方法によれば、材料表面に親水性有機化合物が直接的に固定された医療用具を、温和な条件下に、短時間で、効率的に製造することが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【0038】 【図1】本発明における被膜形成の説明図である。 【図2】(参考例1、2)において溶液を注入した際の試験片の質量変化を測定した結果を示す図である。 【図3】(実施例1、2)及び(比較例2)で得られた試験片の表面における基材の金属チタン(Ti0)の割合を示す図である。 【図4】(実施例1)で得られた試験片の表面をX線光電子分光により観察して得られたスペクトル図である。 【図5】(実施例1)及び(比較例2)で得られた試験片のポリエチレングリコールの被膜の厚さを示す図である。 【図6】(実施例1)及び(比較例1)で得られた試験片を乾燥させた後、純水を注入した際の試験片の質量変化を測定した結果を示す図である。 【図7】(実施例1)で得られた試験片の表面を観察した図である。 【図8】(比較例3)で得られた試験片の表面を観察した図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504179255 【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
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| 【出願日】 |
平成18年6月20日(2006.6.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081271 【弁理士】 【氏名又は名称】吉田 芳春
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| 【公開番号】 |
特開2008−233(P2008−233A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月10日(2008.1.10) |
| 【出願番号】 |
特願2006−170771(P2006−170771) |
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