| 【発明の名称】 |
腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】稲田 全規
【氏名】宮浦 千里
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| 【要約】 |
【課題】副作用が少なくかつ治療効果が高い腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤を提供する。
【構成】腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、カプサイシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩、オルバニルおよび/またはその薬学的に許容しうる塩、ならびにレシニフェラトキシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カプサイシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤。 【請求項2】 オルバニルおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤。 【請求項3】 レシニフェラトキシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤に関する。 【背景技術】 【0002】 癌疾患は日本において最も多い死亡原因であるが、近年、癌治療の高度化および多様化により、癌患者の生存率は年々上昇している。 【0003】 一方、癌患者の生存率の上昇に伴い、骨転移癌の症例が増加している。骨転移癌の症例の主な特徴は、(i)骨破壊とそれに伴う骨折と寝たきり、(ii)免疫作用や造血作用の低下と易感染症の拡大、(iii)激しい疼痛、である。 【0004】 骨転移癌は癌疾患の中でも難治性であり、根治的な治療が難しいといわれている。骨転移癌の治療は、外科的除去、放射線療法、および化学療法による治療に大別されるが、このうち最も侵襲性が低い化学療法による治療が汎用されている。しかしながら、現在までに、副作用が少なくかつ治療効果が高い治療薬の開発には至っていない。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、副作用が少なくかつ治療効果が高い腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤を提供することである。 【0006】 本発明の一態様にかかる腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、カプサイシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。 【0007】 本発明の一態様にかかる腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、オルバニルおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。 【0008】 本発明の一態様にかかる腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、レシニフェラトキシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。 【発明の効果】 【0009】 上記腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は腫瘍の骨転移抑制および/または予防効果を有するため、骨転移癌の治療および/または予防に有用であり、副作用が少なくかつ治療効果が高い。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下、本発明の一実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤について詳細に説明する。 【0011】 1.腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤 1.1.カプサイシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩 本発明の一実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、カプサイシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。カプサイシン(Capsaicin, (6E)-N-[(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-8-methyl-6-nonenamide, CAS登録番号:404-86-4)は、下記式(1)で表される化合物である。 【化1】
・・・・・(1) 【0012】 1.2.オルバニルおよび/またはその薬学的に許容しうる塩 また、本発明の一実施形態にかかる腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、オルバニルおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。オルニバル(Ol vanil, N-[(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-9Z-octadeceamide, CAS登録番号:58493-49-5)は、下記式(2)で表される化合物である。 【化2】
・・・・・(2) 【0013】 1.3.レシニフェラトキシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩 さらに、本発明の一実施形態にかかる腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、レシニフェラトキシンおよび/またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む。レシニフェラトキシン(Resiniferatoxin, [(2S,3aR,3bS,6aR,9aR,9bR,10R,11aR)-3a,3b,6,6a,9a,10,11,11a-octahydro-6a-hydroxy-8,10-dimethyl-11a-(1-methylethenyl)-7-oxo-2-(phenylmethyl)-7H-2,9b-epoxyazuleno[5,4-e]-1,3-benzodioxol-5-yl]-4-hydroxy-5-methoxy-benzeneacetic acid methyl ester, CAS登録番号:57444-62-9)は、下記式(3)で表される化合物である。 【化3】
・・・・・(3) 【0014】 本発明において、「薬学的に許容しうる塩」とは、薬学の分野で通常用いられる塩をいう。薬学的に許容しうる塩としては、限定されないが例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、塩酸、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。 【0015】 カプサイシンおよびオルバニルのそれぞれの薬学的に許容しうる塩では、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方が塩の形態であればよく、およびレシニフェラトキシンの薬学的に許容しうる塩では、2つの水酸基のうち少なくとも一方が塩の形態であればよい。 【0016】 1.4.投与形態および剤形 本実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤の投与形態は特に限定されないが、経口投与および非経口投与(例えば、局所投与、皮下注射、筋肉内注射、ワンショット静注、点滴静注、持続点滴静注、動注、腔内投与、腹腔内投与)のいずれであってもよい。 【0017】 また、本実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤の剤型は特に限定されないが、経口剤および非経口剤であることができる。 【0018】 経口剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、ドリンク剤などの内服剤が挙げられる。この場合、経口剤には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等が含まれていてもよい。ここで、錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。また、カプセル剤は、上記の材料にさらに油脂などの液体担体を含有させることができる。シロップ剤およびドリンク剤には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤などを含有させてもよい。 【0019】 非経口剤としては、例えば、軟膏剤、クリーム剤、水剤などの外用剤、注射剤、坐剤などが挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールドなどが用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤などとすることができる。注射剤としては、液剤、凍結乾燥剤などが挙げられる。凍結乾燥剤は、使用時に注射用蒸留水や生理食塩液などに無菌的に溶解して用いられる。 【0020】 また、本実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、食品製剤(機能性食品製剤)であってもよい。この場合、種々の食品素材または飲料品素材を添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、カプセル状、ゼリー状、液状(ドリンク剤等)等の形態の食品製剤とすることができる。また、この食品製剤には、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤などを適宜添加してもよい。また、前記食品製剤は、飴、せんべい、クッキー、飲料等の食品の形態にしてもよい。前記食品製剤は、1日数回に分けて経口摂取されるのが好ましい。 【0021】 1.5.作用効果 本実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、上記式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物およびその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含むことにより、骨転移癌の骨抑制および/または予防効果を有する。 【0022】 本実施形態に係る腫瘍の骨転移抑制および/または予防剤は、ヒトまたはヒト以外の動物の腫瘍の骨転移抑制および/または予防に有用であり、例えば、骨転移癌の治療または予防、乳癌や前立腺癌等の腫瘍を外科的除去した後や放射線療法した後の腫瘍細胞の骨転移抑制に用いることができる。 【0023】 2.実施例 次に、本発明を以下の実施例、比較例および試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0024】 2.1.実施例1(培養および観察) 本実施例においては、カプサイシン、オルバニル、およびレシニフェラトキシンの腫瘍の骨転移抑制および/または予防作用の評価を行った。 【0025】 本実施例においては、被験物質としてカプサイシン(WAKO社)、オルバニル(SIGMA社)、およびレシニフェラトキシン(SIGMA社)を用い、マウス(SLC社)の皮質骨、長官骨から採取して0.5時間以内の生骨片(2mm×3mm×厚さ0.01−2mm)を使用して、生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した。 【0026】 まず、底面に台座が配置された6−48個の溝を有するプレートの各穴に、生骨片1片および培地(DMEM)500−1000μLを加えた。ここで、生骨片の表面が台座の上面とほぼ平行になるように生骨片を配置した。次いで、腫瘍細胞(ヒト癌患者及びマウス癌由来の悪性黒色腫瘍細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞)(10,000〜1,000,000個)および3−5については被験物質1uM−100uMを各穴に添加して、37℃で24−120時間培養した。 【0027】 次いで、得られた生骨片を穴から取り出して、肉眼および顕微鏡による観察を行った。図1は、生骨片の画像(肉眼像(A)および顕微鏡像(B))を示す。 【0028】 図1において、「1」は腫瘍細胞の非存在下で生骨片を培養した結果を示し(コントロール)、「2」は腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した結果を示し(被験物質なし)、「3」は被験物質(カプサイシン)および腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した結果を示し、「4」は被験物質(オルバニル)および腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した結果を示し、「5」は被験物質(レシニフェラトキシン)および腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した結果を示す。 【0029】 図1を参照すると、「2」では増殖した腫瘍細胞が肉眼像(A)で認められ、顕微鏡像(B)では、腫瘍細胞の存在により破骨細胞(矢印)の増殖が亢進し、骨吸収した形跡(骨吸収窩)が増加した。また、「3」では、カプサイシンの添加により腫瘍細胞の増殖低下(腫瘍細胞の骨定着)が抑制され(A,B)、破骨細胞数の顕著な減少が認められた(B)。さらに、「4」では、オルバニルの添加により腫瘍細胞の定着が完全に抑制され、破骨細胞は消失した(A,B)。同様に、「5」では、レシニフェラトキシンの添加により、腫瘍細胞の定着が完全に抑制され、破骨細胞は消失した(A,B)。 【0030】 本実施例の結果から、カプサイシン、オルバニル、およびレシニフェラトキシンにより、腫瘍細胞の骨転移、接着、または増殖が抑制されたことが確認された。 【0031】 2.2.実施例2(カルシウムイオン濃度の測定) 本実施例においては、実施例1で用いた培地中のカルシウムイオンの濃度を測定した。 【0032】 腫瘍細胞が生骨片の表面で増殖すると、腫瘍細胞による骨吸収が起きる結果、骨中のカルシウムイオンが遊離して培地中に放出される。したがって、培地中のカルシウムイオンの濃度を測定することにより、腫瘍細胞による骨吸収作用を確認することができる。ここで、培地中のカルシウムイオンの濃度が高いほど腫瘍細胞による骨吸収作用が大きく、腫瘍細胞の骨吸収作用が大きいほど、腫瘍細胞の転移能、接着能、または増殖能が高いといえる。 【0033】 培地中のカルシウムイオン濃度の測定は、OCPC(オルトクレゾールフタレインコンプレクソン)法を用いて行った。その結果を図2に示す。 【0034】 図2において、濃度測定に用いた培地はそれぞれ、「1」:実施例1において腫瘍細胞の非存在下で生骨片を培養した場合の培地(コントロール)、「2」:実施例1において腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した場合の培地(被験物質なし)、「3」:実施例1において被験物質(カプサイシン)および生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した場合の培地、「4」は被験物質(オルバニル)および生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した場合の培地、「5」は被験物質(レシニフェラトキシン)および生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した場合の培地をそれぞれ示す。 【0035】 図2を参照すると、生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養して得られた培地「2」によれば、コントロールである「1」と比較して、骨吸収によるカルシウム遊離が認められたことから、腫瘍細胞の培養によりカルシウム遊離が生じたことが理解できる。また、被験物質なしの「2」と比較して「3」ではカルシウム濃度が低下したことから、腫瘍細胞による骨吸収はカプサイシンの添加により抑制されたことが確認された。「3」と比較して「4」および「5」ではカルシウム濃度がさらに低かったことから、「4」および「5」によれば、オルバニルまたはレシニフェラトキシンの添加により、カプサイシンよりもさらに強い骨吸収の抑制が示された。 【0036】 本実施例の結果から、カプサイシン、オルバニル、およびレシニフェラトキシンにより、腫瘍細胞の骨転移、接着、または増殖が抑制されたことが確認された。 【0037】 2.3.実施例3(組織分解酵素(マトリクスメタロプロテアーゼ(MMPs))の解析) 本実施例においては、実施例1で用いた培地中のゼラチナーゼ群(MMP−2、MMP−9)をゼラチンザイモグラフィーにより解析した。その結果を図3に示す。 【0038】 MMPsは血管周囲の基底膜を分解することにより血管新生を促進することが知られており、腫瘍細胞の増殖との関わりがあることが知られている(中島元夫:マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬.蛋白質核酸酵素 2000;45:1083−1089)。すなわち、培地中にMMPsが多く含まれるほど、腫瘍の増殖能が高いといえる。したがって、MMPsを分析対象物質とすることにより、腫瘍細胞の増殖能を評価することができる。特に、MMPsのうちゼラチナーゼ群(MMP−2(ゼラチナーゼA)、MMP−9(ゼラチナーゼB))は主に、腫瘍の血管新生に関与する。したがって、本実施例においては、培地中のゼラチナーゼ群(MMP−2、MMP−9)を解析することにより、腫瘍細胞の増殖能を評価した。 【0039】 図3において、濃度測定に用いた培地はそれぞれ、「1」:実施例1において腫瘍細胞の非存在下で生骨片を培養した場合の培地(コントロール)、「2」:実施例1において腫瘍細胞の存在下で生骨片を培養した場合の培地(被験物質なし)、「3」:実施例1において被験物質(カプサイシン)および生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した場合の培地、「4」は被験物質(オルバニル)および生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養した場合の培地をそれぞれ示す。 【0040】 図3を参照すると、生骨片の存在下で腫瘍細胞を培養して得られた培地「2」によれば、生骨片のみを培養した場合の培地「1」と比較して、MMP−2およびMMP−9産生の増加が認められた。また、「3」によれば、腫瘍細胞によるMMP−2およびMMP−9の産生がカプサイシンの添加により抑制されたことが確認された。さらに、「4」によれば、オルバニルの添加により、MMP−2およびMMP−9のさらに強い産生抑制が示された。 【0041】 本実施例の結果から、カプサイシンおよびオルバニルにより、腫瘍細胞の増殖が抑制されたことが確認された。 【図面の簡単な説明】 【0042】 【図1】図1は、実施例1で得られた生骨片の画像(肉眼像(A)および顕微鏡像(B))を示す。 【図2】図2は、実施例1で用いた培地中のカルシウムイオンの濃度の測定結果を示す。 【図3】図3は、実施例1で用いた培地中のMMP−2、MMP−9に関するゼラチンザイモグラフィーによる解析結果を示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504132881 【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
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| 【出願日】 |
平成18年9月12日(2006.9.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090398 【弁理士】 【氏名又は名称】大渕 美千栄
【識別番号】100090387 【弁理士】 【氏名又は名称】布施 行夫
【識別番号】100121278 【弁理士】 【氏名又は名称】都築 美奈
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| 【公開番号】 |
特開2008−69088(P2008−69088A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月27日(2008.3.27) |
| 【出願番号】 |
特願2006−247394(P2006−247394) |
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