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【発明の名称】 間葉系に関連する細胞を含んでなる、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬およびこれを用いた治療方法
【発明者】 【氏名】本望 修

【氏名】辻 紀子

【氏名】宝金 清博

【要約】 【課題】本発明の課題は、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の治療に有効な安全性の高い治療薬、および該治療薬を用いた治療方法を提供することにある。

【構成】間葉系に関連する細胞を含んでなる、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬、およびこれを用いた治療方法により上記課題は解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系に関連する細胞を含んでなる、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬。
【請求項2】
間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞である、請求項1に記載の治療薬。
【請求項3】
間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞である、請求項1に記載の治療薬。
【請求項4】
間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞から分化誘導されたチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞である、請求項1に記載の治療薬。
【請求項5】
静脈内投与により有効な治療効果が得られる、請求項1〜4に記載の治療薬。
【請求項6】
脳内投与される、請求項1〜4に記載の治療薬。
【請求項7】
治療上有効量の請求項1〜6のいずれかに記載の治療薬を対象に投与することを含む、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療方法。
【請求項8】
間葉系に関連する細胞が、対象の自家細胞である、請求項7に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系に関連する細胞を含んでなるパーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬、およびこれを用いた治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、静止時の振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害といった錐体外路機能の異常を主症状とする基底核変性疾患であり、基底核の黒質−線条体ドパミン作動性神経の変性に基づくドパミンの欠乏により引き起こされることが知られている。現在、その治療法としては、レボドパなどのドパミン前駆物質を投与するドパミン補充療法が中心となっているが、このドパミン補充療法には、ジスキネジアや精神症状などの副作用が現れるといった問題があり、また、他にもドパミン前駆物質以外に抗コリン作用薬やドパミン受容体アゴニストなどが使用されているものの、いずれの薬物治療も対症療法でしかなく、患者にとって病気の進行やこれら薬物の長期服用による薬効低下は避けることができない状況にある。
【0003】
そのため、近年では、胎児黒質細胞などを黒質−線条体に移植する再生療法の試みがなされるとともに、胚性幹細胞、神経幹細胞、骨髄間質細胞といった分化能を有する細胞を分化させて移植に有用なドパミン作動性神経細胞をインビトロで作製する研究が進み、大きな注目を集めている(非特許文献1参照)。しかしながら、胎児黒質細胞を用いた移植は、移植後にレボドパの服用を中止した患者でジスキネジアが現れたり、免疫抑制剤の使用を継続しない場合には症状が悪化したりするケースがあり、さらにまた、中絶胎児から採取した黒質細胞を使用するため、倫理面からみても供給面からみても問題があることから、広く一般的に普及する治療法とはなっていない。その一方で、上記の分化能を有する細胞をドパミン作動性神経細胞に分化誘導する研究は広く進められており、GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)やBDNF(脳由来神経栄養因子)といった神経栄養因子やFGF(線維芽細胞増殖因子)といった増殖因子の添加、また、Nurr−1といった転写因子の導入など様々なアプローチによってより効率良く分化誘導する方法も開発されている。
しかしながら、この方法を用いた研究は、いずれも動物実験などの研究室レベルの段階であって、安全性の確保という観点からもさらなる基礎研究が必要であり、臨床応用に向けて、これらの分化誘導されたドパミン作動性神経細胞が実際に患者の脳への移植に使用できるだけの充分な細胞数で供給可能かどうかについて現在も検討が続けられているものの、実用的な臨床応用に至る目途は依然として立っていない。したがって、移植に必要な細胞の安定的供給の実現とともに、胎児の細胞や組織を使用する等の倫理的な問題のない、安全性の高い臨床応用可能な再生療法の確立が望まれている。
【0004】
一方、パーキンソン症候群は、パーキンソン病と同様の錐体外路症状を示す疾患のうち、パーキンソン病以外の疾患を指す概念で、薬剤や脳血管障害に起因するパーキンソン症候群の他、脳卒中、脳腫瘍や脳変性疾患等により惹起されるパーキンソン症候群が含まれる。これらのうち、薬剤性パーキンソン症候群については、原因となる薬剤の摂取を中止することにより、症状が消失する場合が多いが、他の疾患に起因して現れるパーキンソン症候群については、原因となる疾患の治療の根治療法が存在しない場合には、対症療法的な治療を行っても改善されないケースも多く、パーキンソン病と同様、決定的な治療法が未だに存在していないのが現状である。
【0005】
これに対し、本発明者らは、骨髄液や臍帯血に含まれる中胚葉幹細胞または胚性幹細胞を神経幹細胞や神経細胞に分化誘導する方法を開発し、これらの分化誘導された細胞を移植することによりラット脊髄損傷モデルにおいて脊髄損傷部位を修復することができることを見出し(特許文献1参照)、また一方で、間葉系幹細胞や骨髄細胞の単核球分画を静脈内投与することにより、ラット脳梗塞モデルにおいて梗塞巣体積を縮小させることに成功し、間葉系細胞の投与が脳梗塞により損傷された脳神経の保護効果および脳神経再生効果を得ることができることを見出す(特許文献2参照)など、骨髄由来の間葉系細胞等を使用した再生療法の開発を行ってきた。しかしながら、特許文献1および2においても、パーキンソン病を含む神経変性疾患について間葉系細胞の移植を用いた検討は未だ具体的にはなされていない。
【非特許文献1】Brian J. Snyder and C. Warren Olanow., Current Opinion in Neurology, 2005, 18:376-385
【特許文献1】WO2003/088075号公報
【特許文献2】WO2005/007176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の治療に有効な安全性の高い治療薬、および該治療薬を用いた治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行う中で、間葉系幹細胞や間葉系幹細胞から分化誘導させた細胞等の間葉系に関連する細胞をパーキンソン病/パーキンソン症候群モデルラットに投与することにより、脳内への局所投与のみならず、静脈内投与によっても極めて顕著な治療効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
したがって、本発明は、間葉系に関連する細胞を含んでなる、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬に関する。
また、本発明は、間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞である、前記治療薬に関する。
さらに、本発明は、間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞である、前記の治療薬に関する。
【0009】
本発明はまた、間葉系に関連する細胞が、間葉系幹細胞から分化誘導されたチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞である、前記の治療薬にも関する。
本発明はさらに、静脈内投与により有効な治療効果が得られる、前記の治療薬に関する。
また、本発明は、脳内投与される、前記の治療薬にも関する。
そしてまた、本発明は、治療上有効量の前記の治療薬を対象に投与することを含む、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療方法にも関する。
さらに、本発明は、間葉系に関連する細胞が対象の自家細胞である、前記治療方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の治療に極めて優れた効果を奏するものであり、かかる効果は、投与した間葉系に関連する細胞が、ドパミン作動性神経細胞が変性・脱落した黒質−線条体の病変部位に遊走・定着し、変性・脱落したドパミン作動性神経細胞に代わって機能不全に陥った神経組織を再生することによって達成されるものと考えられる。
したがって、従来の治療薬が、主として欠乏したドパミンを補充することにより症状の進行を遅延させることができるにすぎないのに対し、本発明の治療薬は、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の進行を遅延させるだけでなく、失われた神経組織を再建し、その機能の回復を達成し得るという、従来の対症療法では実現不可能であった優れた治療効果を奏するものである。
【0011】
本発明によれば、投与した間葉系に関連する細胞やこれから分化誘導された神経幹細胞は、ドパミン作動性神経細胞のマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼを発現する神経細胞に分化した状態で病変部位に定着することができるため、従来技術のように分化能を有する細胞をインビトロでチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞にまで分化させる工程を必要としない、簡便な再生療法を提供することができる。そしてまた、本発明によれば、分化能を有する細胞(例えば、間葉系幹細胞やそれから分化誘導された神経幹細胞)を一定数以上の適切な細胞数で投与することにより、病変部位の快復に充分に足りるだけの数の細胞がチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞に分化して病変部位に定着し、有効な治療効果を得ることができる。
【0012】
さらに、驚くべきことに、本発明の治療薬とこれを用いた治療方法は、間葉系に関連する細胞の静脈内投与によっても、病変部位である黒質−線条体への直接投与と同等の優れた治療効果が得られることから、インビトロでのドパミン作動性神経細胞への分化誘導を行う必要がないだけでなく、個体の脳への直接投与といった煩雑で危険を伴う外科手術を行う必要がない、簡便性と安全性に極めて優れた画期的なものである。
【0013】
本発明の治療薬の投与により、これまで根治療法が存在しないと考えられてきたパーキンソン病またはパーキンソン症候群の治療が可能となるので、医学および獣医学領域において多大な貢献が期待できる。しかも、本発明の治療薬に用いる間葉系に関連する細胞は、骨髄、臍帯血または末梢血等から得ることができるので、胚性幹細胞や胎児黒質細胞を用いる場合のように倫理的な問題が生じることもなく、また、各患者自身の自家細胞から容易に調製することもできるので、投与の際も拒絶反応等の好ましくない生体反応の惹起を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書中に別記のない限り、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に通常理解されている意味を有するものとする。一般的に、本明細書中に記載された細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸化学に関して用いられる用語、およびその技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものとする。一般的に、別記のない限り、本発明の方法および技術は、当該技術分野においてよく知られた慣用の方法に従って、本明細書中で引用され、議論されている種々の一般的な、およびより専門的な参考文献に記載されたとおりに行われる。かかる文献としては、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press(2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates(1992,および2000の補遺); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology - 4th Ed., Wiley & Sons(1999);Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990);およびHarlow andLane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor LaboratoryPress(1999)などが挙げられる。
【0015】
本明細書中に記載された分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学に関して用いられる用語、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、薬剤の製造、製剤および送達、ならびに対象の処置に用いるものとする。
なお、本発明における用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の処置が企図される場合には、該疾患に罹患している対象または実験的に罹患させた対象、例えばマウス、ラット、スナネズミ、モルモットなどの齧歯類、ネコ、ピューマ、トラなどのネコ科動物、シカ、オオシカなどのシカ科動物、ミンク、ヒツジ、ヤギ、ウシ、サル、ヒトなどであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、間葉系に関連する細胞を含んでなる、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬が提供される。
本発明において、パーキンソン病とは、静止時の振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害といった錐体外路機能の異常を主症状とする基底核変性疾患をいう。
また、本発明において、パーキンソン症候群は、パーキンソン病の特徴である前記錐体外路症状を示す、パーキンソン病以外の疾患全般を意味し、薬剤性パーキンソン症候群、脳血管障害性パーキンソン症候群の他、脳腫瘍、大脳基底核変性症、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺等に起因するパーキンソン症候群などを含む。
【0017】
本発明において、間葉系に関連する細胞とは、間葉系幹細胞(MSC(mesenchymal stem cell))、間葉系細胞、間葉系細胞の前駆細胞、間葉系細胞から由来する細胞、間葉系幹細胞から分化誘導された細胞を意味する。
間葉系幹細胞とは、例えば、骨髄、末梢血、皮膚、脂肪、毛根、筋組織、子宮内膜、血管、血液、臍帯血等の、種々の間葉系組織の初期培養物から得ることができる幹細胞のことである。
間葉系細胞の前駆細胞とは、間葉系幹細胞から分化し、間葉系細胞への分化の途上にある細胞のことを意味する。
間葉系細胞とは、間葉系幹細胞の分化により生じ、幹細胞のように多方面に分化する能力はないが、ある方向への分化能力と増殖能力を有している細胞である。正常の状態ではG0期に止まっているが、刺激によりG1期(分裂開始)に移行できる細胞である。間葉系細胞は、例えば、間質細胞、間質細胞の性質を有する細胞をも包含している。間葉系細胞は、皮下組織、肺、肝等あらゆる臓器に存在しており、骨、軟骨、脂肪、腱、骨格筋、骨随間質といった間葉系組織に存在している。
【0018】
本発明における間葉系細胞から由来する細胞とは、(1)内皮細胞又は心筋細胞等の心血管系の細胞又は心血管系の細胞の前駆細胞、並びにこれら細胞としての性質を持つ細胞、(2)骨、軟骨、腱、又は骨格筋のいずれかの細胞、並びに骨、軟骨、腱、骨格筋、又は脂肪組織のいずれかの細胞の前駆細胞、更にはこれら細胞としての性質を持つ細胞、(3)神経系の細胞又は神経系細胞の前駆細胞、更にはこれら細胞としての性質を持つ細胞、(4)内分泌細胞又は内分泌細胞の前駆細胞、更にはこれら細胞としての性質を持つ細胞、(5)造血細胞又は造血細胞の前駆細胞、更にはこれら細胞としての性質を持つ細胞、(6)肝細胞又は肝細胞の前駆細胞、更にはこれら細胞としての性質を持つ細胞を包含している。
【0019】
また、本発明に用いられる間葉系幹細胞から分化誘導された細胞には、間葉系幹細胞から、既知の種々の方法により分化誘導されたあらゆる種類の細胞が含まれ、例えば、前述の間葉系細胞や間葉系細胞の前駆細胞の他、神経幹細胞、チロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、骨格筋細胞、靭帯細胞、心筋細胞等が挙げられる。本発明におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞は、カテコラミン産生細胞のマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼを発現している神経細胞を意味し、ドパミン作動性神経細胞、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)作動性神経細胞、アドレナリン(エピネフリン)作動性神経細胞等が含まれる。本発明に用いられる、間葉系幹細胞から分化誘導された細胞として好ましいのは、神経幹細胞(特にneurosphereを形成している神経幹細胞)、チロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞(特にドパミン作動性神経細胞)である。
【0020】
本発明に用いられる間葉系に関連する細胞の好ましい例としては、骨髄細胞(特に、骨髄細胞の単核球分画成分)、臍帯血細胞、末梢血細胞、胎仔肝細胞、子宮内膜細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、羊膜、骨格筋細胞等が挙げられ、さらに好ましい例としては、骨髄細胞(特に、骨髄細胞の単核球分画成分)から得られた間葉系幹細胞、かかる間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞(特にneurosphereを形成している神経幹細胞)もしくはチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞(特にドパミン作動性神経細胞)等が挙げられる。なお、間葉系幹細胞から分化誘導されたチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞は、間葉系幹細胞からの分化誘導の過程において神経幹細胞を経て分化誘導されたものであることが望ましい。
【0021】
骨髄中には幹細胞として、造血幹細胞と間葉系幹細胞とが存在している。ここで「幹細胞」とは、一般に、生体を構成する細胞の生理的な増殖・分化などの過程において、自己増殖能と、特定の機能を持つ細胞に分化する能力とをあわせ有する未分化細胞のことである。造血幹細胞は、赤血球、白血球、あるいは血小板に分化する幹細胞である。間葉系幹細胞は、神経幹細胞を経て神経に分化する場合、神経幹細胞を経ないで直接的に神経系細胞に分化する場合、間質細胞を経て神経系細胞に分化する場合、内臓に分化する場合、血管系に分化する場合、または骨、軟骨、脂肪、あるいは筋肉に分化する場合等があることが知られている。
【0022】
本発明では、主として間葉系幹細胞とこれから分化誘導された細胞を用いるが、造血幹細胞や、体内の他の幹細胞や前駆細胞を用いることも可能である。間葉系幹細胞は、例えば、骨髄より採取された骨髄細胞から分離して得ることができる。なお、間葉系幹細胞を分離していない骨髄細胞も、有効性は若干劣るものの、間葉系幹細胞と同じように本発明に用いることができる。
また、間葉系幹細胞は、末梢血中から調製することも可能である。実際、本発明者らは、末梢血のなかに存在する細胞から培養してきた細胞を、神経幹細胞や神経系細胞(神経細胞、グリア細胞)のマーカーを出現する細胞へ誘導できることに成功している。一方、本発明者らは既に、骨髄液または臍帯血から分離される単核球分画から調製した中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)、または胚性幹細胞を、基礎的培養液で培養すると、該中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)または該胚性幹細胞が神経幹細胞、神経細胞またはグリア細胞へ分化誘導することを見出している(特許文献1参照)。したがって、末梢血中の細胞を培養することにより、間葉系幹細胞やそれと同等の機能を有する細胞を調製し、本発明に利用することも可能である。
【0023】
本発明において、中胚葉幹細胞は、自己増殖能と、発生学的に中胚葉と分類される組織を構成している全ての細胞へ分化し得る能力とを有する細胞を意味しており、これには血液幹細胞、骨髄幹細胞も含まれる。中胚葉幹細胞は、例えば、SH2(+)、SH3(+)、SH4(+)、CD29(+)、CD44(+)、CD11b(−)、CD14(−)、CD34(−)、CD45(−)の特徴を有する細胞であるが、これらマーカーに特に制限されない。また、いわゆる間葉系に関連する細胞のうち幹細胞であるものも、本発明の中胚葉幹細胞に含まれる。
【0024】
本発明において用いられる骨髄細胞、臍帯血細胞、末梢血細胞、胎仔肝細胞の好ましい態様としては、骨髄、臍帯血、末梢血、または胎仔肝より分離して得た細胞の一分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得る細胞を含む細胞分画を挙げることができる。
一つの態様において、該細胞分画は、SH2(+)、SH3(+)、SH4(+)、CD29(+)、CD44(+)、CD14(−)、CD34(−)、CD45(−)の特徴を有する中胚葉幹細胞を含む細胞分画である。
本発明において、上記以外の細胞分画としては、Lin(−)、Sca−1(+)、CD10(+)、CD11D(+)、CD44(+)、CD45(+)、CD71(+)、CD90(+)、CD105(+)、CDW123(+)、CD127(+)、CD164(+)、フィブロネクチン(+)、ALPH(+)、コラーゲナーゼ−1(+)の特徴を有する間質細胞を含む細胞分画、あるいはAC133(+)の特徴を有する細胞を含む細胞分画等を用いることができる。
また、本発明においては、上記細胞分画に含まれる細胞は、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得る細胞であることが特に好ましい。
【0025】
本発明において用いられる細胞分画には、骨髄細胞より分離して得た単核球細胞分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得ることを特徴とする細胞が含まれる。その他の態様として、例えば臍帯血細胞、末梢血細胞、または胎仔肝細胞より分離して得た単核球細胞分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得ることを特徴とする細胞が含まれる。また、その他の態様として、例えば活性物質や薬剤を用いて末梢血中に放出させられた骨髄中の間葉系幹細胞であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得ることを特徴とする細胞も含まれる。本発明において用いられる細胞分画に含まれる細胞の神経系細胞への分化は、いわゆる血液系細胞の神経系細胞への形質転換により生じるのか、それとも骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞などの中に存在する神経細胞に分化できる未熟な細胞の分化によるものであるかは明確ではないが、神経系細胞へ分化する細胞は、主として、幹細胞、すなわち、自己増殖能と多分化能を有する細胞であると考えられる。また、神経系細胞へ分化する細胞は、ある程度他の胚葉へ分化している幹細胞であり得る。
【0026】
本発明に用いられる細胞分画に含まれる細胞は、栄養因子によって増殖することは要せず(栄養因子によって増殖することは可能である)、神経自己移植技術の開発という点では簡便で、かつ現実性の高いものであり、その医療産業上の有益性は多大なものであるといえる。本発明において用いられる骨髄細胞、臍帯血細胞もしくは末梢血細胞、またはこれらの細胞分画は、一般的には、脊椎動物に由来する。好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ミンク、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、シカ、ブタ、イヌ、サル、ヒトなど)由来であるが、特に制限されない。
【0027】
本発明において用いられる細胞分画は、例えば、脊椎動物から採取した骨髄細胞を、2000回転で比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07g/mlから1.1g/mlの範囲に含まれる一定の比重の細胞分画を回収することにより得ることができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味する。通常、10〜30分間程度である。回収する細胞分画の比重は、好ましくは1.07g/mlから1.08g/mlの範囲(例えば、1.077g/ml)である。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。また、脊椎動物から採取した臍帯血細胞や末梢血細胞を上記と同様に調製し、細胞分画として利用することもできる。
【0028】
具体例を示せば、まず、脊椎動物より採取した骨髄液(5〜10μl)を溶液(培養液L−15(2ml)+Ficol(3ml))に混合し、遠心(2000回転で15分間)し、単核球細胞分画(約1ml)を抽出する。この単核球細胞分画を細胞の洗浄のために培養液(NPBM 2ml)に混合して、再度、遠心(2000回転で15分間)する。次いで、上澄みを除去した後、沈降した細胞を回収する。本発明に用いられるかかる細胞分画の採取源としては、大腿骨以外にも、胸骨や、骨盤を形成している腸骨から採取することもできる。これらの骨以外でも大きい骨であれば骨髄液が採取可能である。また、骨髄液は、骨髄バンクに保存されている骨髄液や臍帯血から採取してもよい。
【0029】
本発明に用いられる細胞分画の他の態様は、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞より単離・精製して得た単核球細胞分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得る中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)を含む細胞分画である。中胚葉幹細胞を含む細胞分画は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞から遠心分離して得た上記の細胞分画の中から、上記SH2等の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。
【0030】
また、神経系細胞へ分化し得る中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)を含む細胞分画は、脊椎動物から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞、末梢血細胞を、900gで比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07g/mlから1.1g/mlの範囲に含まれる一定の比重の細胞分画を回収することにより調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味する。通常、10〜30分間程度である。回収する細胞分画の比重は、細胞の由来する動物の種類(例えば、ヒト、ラット、マウス)により変動し得る。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるが、これらに制限されない。
【0031】
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した骨髄液(25ml)、臍帯血、もしくは末梢血を同量のPBS溶液に混合し、遠心(900gで10分間)し、沈降細胞をPBSに混合して回収(細胞密度は4×10細胞/ml程度)することにより、血液成分を除去する。次いで、そのうち5mlをPercol液(1.073g/ml)と混合し、遠心(900gで30分間)し、単核球細胞分画を抽出する。細胞の洗浄のために、抽出した単核球細胞分画を培養液(10%FBSおよび1%anti-biotic-antimycotic solutionを含むDMEM)に混合し、遠心(2000回転で15分間)する。次いで、遠心後の上澄みを除去し、沈降した細胞を回収し、培養する(37℃、5%CO in air)。
【0032】
本発明において用いられる細胞分画の他の態様は、骨髄細胞、臍帯血細胞より分離して得た単核球細胞分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化しうる間質細胞を含む細胞分画である。間質細胞は、例えば、Lin(−)、Sca−1(+)、CD10(+)、CD11D(+)、CD44(+)、CD45(+)、CD71(+)、CD90(+)、CD105(+)、CDW123(+)、CD127(+)、CD164(+)、フィブロネクチン(+)、ALPH(+)、コラーゲナーゼ−1(+)の特徴を有する細胞である。間質細胞を含む細胞分画は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞から遠心分離して得た上記の細胞分画の中から、上記Lin等の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。
【0033】
また、本発明において用いられる細胞分画は、脊椎動物から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞を、800gで比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07g/mlから1.1g/mlの範囲に含まれる一定の比重の細胞分画を回収することにより調製することもできる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味する。通常、10〜30分間程度である。回収する細胞分画の比重は、好ましくは1.07g/mlから1.08g/mlの範囲(例えば、1.077g/ml)である。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
【0034】
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した骨髄液または臍帯血を同量のPBS溶液(2%BSA、0.6%クエン酸ナトリウムおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するPBS)に混合し、そのうちの5mlをFicol+Paque液(1.077g/ml)と混合し、遠心(800gで20分間)し、単核球細胞分画を抽出する。この単核球細胞分画を細胞の洗浄のために培養液(12.5%FBS、12.5%ウマ血清、0.2%i−イノシトール、20mM葉酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、1μM ヒドロコルチゾンおよび1%anti-biotic-antimycotic solutionを含むαMEM)に混合し、遠心(2000回転、15分間)する。次いで、遠心後の上澄みを除去した後、沈降した細胞を回収し、培養する(37℃、5%CO in air)。
【0035】
本発明に用いられる細胞分画の他の態様は、骨髄細胞、臍帯血細胞、末梢血細胞、または胎仔肝細胞より分離して得た単核球細胞分画であって、神経系細胞(特に、神経幹細胞やチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)へ分化し得るAC133(+)の特徴を有する細胞を含む細胞分画である。
この細胞分画は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞から遠心分離して得た上記の細胞分画の中から、上記AC133(+)の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。また、その他の態様として、脊椎動物から採取した胎仔肝細胞を、2000回転で比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07g/mlから1.1g/mlの範囲に含まれる細胞分画を回収し、この細胞分画から、AC133(+)の特徴を有する細胞を回収することにより調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味する。通常、10〜30分間程度である。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
【0036】
具体例を示せば、まず、脊椎動物の胎仔から採取した肝臓組織をL−15培養液内で洗浄し、酵素処理(0.01%DnaseI、0.25%トリプシンおよび0.1%コラーゲナーゼを含むL−15培養液中で、37度で30分間インキュベート)し、ピペッティングにより単一細胞にする。この単一細胞となった胎仔肝細胞を遠心分離する。これにより得られた細胞を洗浄し、洗浄後の細胞からAC133抗体を利用してAC133(+)細胞を回収する。これにより胎仔肝細胞から神経系細胞へ分化しうる細胞を調製することができる。抗体を利用したAC133(+)細胞の回収は、マグネットビーズを利用して、または、セルソーター(FACSなど)を利用して行うことができる。
【0037】
これら中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)、間質細胞、あるいはAC133陽性細胞を含む細胞分画は、黒質−線条体への直接移植後もしくは静脈内投与後に、効率よく黒質−線条体でチロシンヒドロキシラーゼ陽性のドパミン作動性神経細胞に分化する。特に、上記中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)を含む細胞分画は、パーキンソン病/パーキンソン症候群モデル動物へ投与しても、良好に生着し、ドパミン作動性神経細胞に分化することができる。
また、上記細胞分画に含まれる神経系細胞に分化し得る細胞として、例えば、上記細胞分画に含まれる神経幹細胞、中胚葉幹細胞(間葉系幹細胞)、間質細胞、およびAC133陽性細胞が含まれるが、神経系細胞(特に、チロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞)に分化し得る限り、これらに制限されない。
したがって、本発明の治療薬には、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞だけでなく、上記細胞分画が含まれてもよい。
【0038】
本発明の治療薬に用いられる間葉系に関連する細胞、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞もしくは末梢血細胞、また、間葉系幹細胞や間葉系幹細胞から分化誘導された細胞は、そのまま投与に用いることも可能であるが、治療効率を向上させるために、種々の改変が加えられていてもよい。したがって、本発明の別の側面では、かかる改変を受けた間葉系に関連する細胞を含む、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬が提供されてもよい。
上記改変の例としては、上記細胞のドパミン産生能を向上させるような遺伝子の導入が挙げられる。
【0039】
また、本発明の治療薬の調製においては、例えば、(1)上記の間葉系に関連する細胞またはこれから分化誘導された細胞の増殖率もしくは生存率を向上させる、または神経系細胞へのさらなる分化を促進する物質の添加、あるいはこのような効果を有する遺伝子の導入、(2)投与される細胞の寿命を延長させる物質の添加、あるいはこのような効果を有する遺伝子(テロメラーゼ遺伝子や癌遺伝子等の不死化遺伝子を含む)の導入、(3)免疫反応の抑制を目的とした物質の添加、あるいはこのような効果を発現する遺伝子の導入、(4)間葉系に関連する細胞を、パーキンソン病もしくはパーキンソン症候群の病変部位に特異的に送達するための物質の添加、あるいはこのような効果を有する遺伝子の導入、(5)神経保護作用を有する物質の添加、あるいはこのような効果を発現する遺伝子の導入、(6)病変部位におけるアポトーシス抑制効果を有する物質の添加、あるいはこのような効果を発現する遺伝子の導入、等のパーキンソン病もしくはパーキンソン症候群の治療効果を高める効果を有する物質の添加や遺伝子の導入を行ってもよい。その他、本発明の治療薬には、色素、酵素、蛍光物質、放射性同位体などの標識物質といったパーキンソン病もしくはパーキンソン症候群の研究、診断などにも有用なものが添加されてもよい。
【0040】
本発明の好ましい態様においては、「間葉系幹細胞から分化誘導された細胞」は、間葉系幹細胞を基礎的培養液中で、33℃〜38℃、好ましくは37℃の条件で培養することにより調製することができる。かかる基礎的培養液としては、細胞培養に使用される通常の培養液であれば特に制限はないが、好ましくは、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium))またはNPBM(神経前駆細胞基本培地(Neural progenitor basal medium))(Cambrex)である。上記基礎的培養液のその他の成分としては、特に制限はないが、好ましくは、F−12、FBS、神経細胞生存因子(neural cell survival factor)(Cambrex)等が挙げられる。これらの培養液中の濃度としては、例えば、F−12は50%、FBSは10%である。また、培養液におけるCO濃度は好ましくは5%であるが、特に制限されない。その他の条件としては、細胞は、浮遊した状態(例えばneurosphere状態)で培養されてもよく、培養容器に付着した状態で培養されてもよい。培養容器としては、コーティングしていないディッシュ(non-coated dish)を用いてもよく、また、コーティングしたディッシュを用いてもよい。
【0041】
また、本発明の好ましい態様においては、上記基礎的培養液に、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor))またはEGF(上皮増殖因子(epidermal growth factor))を添加する。この場合、これらは単独で添加しても、両方添加してもよい。上記bFGFまたはEGFの濃度としては、1ng/ml〜100ng/mlが挙げられるが、好ましくは、10ng/mlである。添加時期や添加方法としては、特に制限はないが、好ましくは、上記間葉系幹細胞を該基礎的培養液で培養しながら、連日添加する方法が挙げられる。また、間葉系幹細胞を神経幹細胞へ分化誘導を行う際には、上記基礎的培養液にbFGFおよびEGFを添加することが好ましい。
【0042】
本発明においては、上記の条件により、上記のとおり、間葉系幹細胞を培養することで、最終的にチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞(特に、ドパミン作動性神経細胞)に分化することが可能な種々の細胞へと誘導することができる。該細胞としては、具体的には、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞等を例示することができる。
【0043】
また、本発明の好ましい態様においては、「間葉系幹細胞から分化誘導されたチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞」は、分化効率を高めるという観点から、上記のように培養することにより間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞を、さらに、ポリ−D−リジン/ラミニン等でコートしたディッシュで、DMEMとF−12との混合培地に、FBS、L−グルタミン、IL−1、ペニシリン−ストレプトマイシン等を添加して数日〜1週間程度培養することにより調製する。この場合、混合培地中のF−12の含有率は、好ましくは45%〜55%、より好ましくは50%である。また、培地中のL−グルタミンの濃度は、好ましくは1mM〜5mM、より好ましくは2mMであり、FBSの濃度は、好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%である。IL−1の濃度は、好ましくは10pg/mL〜200pg/mL、より好ましくは100pg/mLであり、ペニシリン−ストレプトマイシンの濃度は、好ましくは0.1%〜2%、より好ましくは1%である。
【0044】
本発明の治療薬の調製には、前記のようにして作製した間葉系に関連する細胞(改変されたものを含む)をそのまま用いることもできるが、作製した細胞を、必要に応じて増殖させた後、これを凍結保存し、用事に解凍して治療薬の調製に用いることもできる。
本発明の治療薬は、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、必要に応じて水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。そしてまた、例えば、生理学的に許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般的な単位用量形態で混和することにより製剤化することが可能である。
【0045】
また、注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなビヒクルを用いて通常の製剤方法に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水や、生理学的に許容される物質(例えば、ブドウ糖、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液等を使用することができ、適当な溶解補助剤として、エタノール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール等のアルコール、ポリソルベート80もしくはHCO−50等の非イオン性界面活性剤などを適宜併用してもよい。
注射用の油性液として処方する場合には、ゴマ油、大豆油などを使用することができ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを適宜併用してもよい。また、リン酸塩緩衝液などの緩衝剤、塩酸プロカインなどの麻酔剤などの他、安定剤、酸化防止剤等をさらに配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルなどの容器に充填される。
【0046】
本発明の治療薬の対象への投与は、いずれの経路により行ってもよいが、好ましくは、静脈内投与、動脈内投与、選択的動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、脳内投与、髄液腔内投与などの非経口投与であり、より好ましくは、静脈内投与または黒質−線条体への脳内局所投与であり、最も好ましくは、静脈内投与である。
投与回数は1回が好ましいが、状況に応じて複数回投与することもできる。また、投与時間は短時間でも長時間持続投与でもよい。静脈内投与の場合は、通常の輸血の要領での投与が可能となり、対象に対して外科手術をする必要がなく、さらに局所麻酔も必要ないため、対象および治療者双方の負担を軽減することができる。また手術室以外での投与操作が可能である点でも有利である。
【0047】
さらに本発明は、対象へ治療上有効量の本発明の治療薬を投与(好ましくは、静脈内投与)することを含む、パーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療方法にも関する。
上記治療方法に用いられる治療薬に含まれる、骨髄細胞、臍帯血細胞、もしくは末梢血細胞、また、間葉系幹細胞もしくはこれから誘導された細胞等の、間葉系に関連する細胞は、投与による拒絶反応を防止するために、免疫抑制処置などの特殊な操作を行わない限りは、対象自身の体内から採取されたもの(自家細胞)、あるいはそれに由来するもの(対象由来の自家細胞)であることが好ましい(自家移植療法)。かかる自家移植療法は、免疫抑制剤の併用が回避できる点で好ましいが、自家細胞の使用が困難な場合には、免疫抑制処置を行うことにより、他の対象または他の医療用動物由来の細胞(他家細胞)を利用することも可能である。治療効果としては、自家細胞を用いる方が他家細胞を用いるよりも圧倒的に良好な結果が期待できる。
【0048】
本発明の治療方法に用いられる細胞は冷凍保存したものであってもよい。
また、前記自家細胞は、対象の体内から未分化の状態で採取されたもの、対象の体内から未分化の状態で採取された細胞に遺伝子操作を加えたもの、または対象の体内から未分化の状態で採取された細胞を分化誘導させたもののいずれであってもよい。
本発明の治療方法において、本発明の治療薬の対象への投与は、例えば、上述の方法に従って、好適に実施することができる。また、医師もしくは獣医師においては、上記方法を適宜改変して、本発明の治療薬を対象へ投与することが可能である。なお、本発明の治療方法において、対象に投与される間葉系に関連する細胞の数は、良好な治療効果が得られる限りにおいて特に限定されないが、少なくとも1×10〜10個以上であることが好ましく、例えば、脳内投与の場合は少なくとも1×10〜10個以上、静脈内投与の場合は少なくとも1×10〜10個以上であることが好ましい。また、具体例として、対象がヒトである場合、間葉系幹細胞を脳内投与するときには少なくとも1×10個以上、間葉系幹細胞を静脈内投与するときには少なくとも1×10個以上、間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞もしくはチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞を脳内投与するときには少なくとも1×10個以上の細胞が本発明の治療薬に含まれていることが好ましい。
【0049】
また、本発明の上記治療方法の対象は、ヒトのみに限定されず、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、スナネズミ、モルモットなどの齧歯類、ネコ、ピューマ、トラなどのネコ科動物、シカ、オオシカなどのシカ科動物、ミンク、ヒツジ、ヤギ、ウシ、サルなど)においても間葉系に関連する細胞を用いて、同様に本発明の方法を実施することが可能である。
【実施例】
【0050】
本発明を、以下の実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.ヒト間葉系幹細胞の培養と分化誘導
(1)ヒト間葉系幹細胞の培養
ヒト間葉系幹細胞は、ヒト骨髄から得た単核球細胞分画を、10%MCGM(Mesenchymal Cell Growth Supplement)、2mM L−グルタミンおよび0.1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するSCBM(間葉系幹細胞基本培地(Mesenchymal Stem Cell Basal Medium))(Cambrex社製, USA)により組織培養ディッシュ中で培養した。ディッシュ面積の7〜8割ほど成育の後、継代培養した。
細胞の撮影は倒立顕微鏡(CKX41, OLYMPUS)にデジタルカメラ(C-5060 Wide Zoom OLYMPUS)を装着して行った。ヒト間葉系幹細胞の撮影画像を図1Aに示す(撮影倍率は40倍)。
【0051】
(2)ヒト間葉系幹細胞から神経幹細胞(neurosphere)への分化誘導
ヒト間葉系幹細胞(1×10細胞)をコーティングしていないディッシュ(non-coated dish)中で、2% NSF−1(神経細胞生存因子(Neural Cell Survival Factor))および0.2% GA(硫酸ゲンタマイシン・アムホテリシン−B)を含有するNPBM (神経前駆細胞基本培地(Neural Progenitor Basal Medium))(Cambrex社製,USA)により3日間培養し、連日、栄養因子(EGFおよびbFGF、各10ng/ml)を添加した。
細胞の撮影は倒立顕微鏡(CKX41, OLYMPUS)にデジタルカメラ(C-5060 Wide Zoom, OLYMPUS)を装着して行った。ヒト間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞(neurosphere)の撮影画像を図1Bに示す(撮影倍率は40倍)。
【0052】
(3)神経幹細胞(neurosphere)からチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞への分化誘導
上記(2)で得られた神経幹細胞(neurosphere)(0.2×10細胞)をPDL(ポリ−D−リジン)/ラミニンでコートしたディッシュで、10% FBS、2mM L−グルタミン、1% ペニシリン−ストレプトマイシンおよびIL−1(100pg/mL)を添加したDMEM:F−12(1:1)により1週間培養した。得られた細胞を、PDL/ラミニンコートした2ウェルチャンバーに播種し、さらに2日間培養した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、1次抗体としてウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼポリクローナル抗体(Rabbit Anti-Tyrosine hydroxylase, Polyclonal Antibody;Chemicon、Cat.# AB151)(1000倍希釈)、2次抗体としてAlexa Fluor 594 goat anti-Rabbit IgG(Molecular Probes、Cat.# Z25307)を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 Pascal, Carl Zeiss)により染色像を観察した。図1Cに結果を示す(撮影倍率は630倍)。
【0053】
実施例2.パーキンソン病/パーキンソン症候群モデルラットへの間葉系に関連する細胞の移植
(1)パーキンソン病/パーキンソン症候群モデルラットの作製
Sprague-Dawley雌性ラット(体重200〜230g、8〜9週齢)に、6−ヒドロキシドパミン(6-OHDA, Sigma)を12μg/4μl(0.2%アスコルビン酸を含む生理食塩水)で脳内に直打した(Coordinates of Injection;ブレグマよりAP−4.5 L−1.5 V−7.8)。脳内への注入は0.5μl/分の速度でゆっくり行い、注入後5分以上針を抜かずに放置し、その後ゆっくり針を抜いた。
6−ヒドロキシドパミン投与から2週間後、D−メタンフェタミン(大日本住友製薬)を5mg/kgで腹腔内に投与し、Roto−Rat(MED社製、USA)を用いて回転運動テストを2時間行い、平均回転数が360回(時計回り)/時間を超えたものを以下の実験に使用した。
【0054】
(2)間葉系に関連する細胞へのLacZ遺伝子の導入
実施例1で作製したヒト間葉系幹細胞(継代数(passage no.)4〜6のものを使用)、ヒト間葉系幹細胞から分化誘導した神経幹細胞(neurosphere)、およびさらに分化誘導したチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞に、上記(1)で作製したモデルラットへ移植する前にLacZ遺伝子を導入した。これらの細胞へのLacZ遺伝子の導入には、組み換えアデノウイルスAdex1CAlacZを用いた。構築手順の詳細は以下の文献に記載されている(I. Nakagawa, M. Murakami, K. Ijima, S. Chikuma, I. Saito, Y. Kanegae, H. Ishikura, T. Yoshiki, H. Okamoto, A. Kitabatake, T. Uede, Persistent and secondary adenovirus-mediated hepatic gene expression using adenovirus vector containing CTLA4IgG, Hum. Gene Ther. 9(1998)1739-1745. Y. Nakamura, H. Wakimoto, J. Abe, Y. Kanegae, I. Saito, M. Aoyagi, K. Hirakawa, H. Hamada, Adoptive immunotherapy with murine tumor-specific T lymphocytes engineered to secrete interleukin 2, Cancer Res. 54(1994)5757-5760. M. Takiguchi, M. Murakami, I. Nakagawa, I. Saito, A. Hashimoto, T. Uede, CTLA4IgG gene delivery prevents autoantibody production and lupus nephritis in MRL/lpr mice, Life Sci. 66(2000)991-1001.)。
【0055】
この組み換えアデノウイルスは、ウイルス複製を防ぐためにE1A、E1BおよびE3各領域が欠失したアデノウイルス血清型−5のゲノムを有し、E1A領域およびE1B領域の代わりに、大腸菌のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子であるlacZ遺伝子が、サイトメガロウイルスエンハンサーおよびニワトリβ−アクチンプロモーターから構成されるCAGプロモーター(H. Niwa, K. Yamamura, J. Miyazaki, Efficient selection for high-expression transfectants with a novel eukaryotic vector, Gene 108(1991)193-199.)とウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナルとの間に含まれている。この組換えアデノウイルスを293細胞内で増殖させて単離し、ウイルス溶液は使用時まで−80℃で保存した。上記3種類の細胞にそれぞれ3000OPU/細胞となるようにウイルス溶液を加えて、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM中で37℃にて3時間静置し、組み換えアデノウイルスをインビトロで感染させた。
【0056】
(3)間葉系幹細胞およびこれから誘導された細胞の線条体への移植
前記組み換えアデノウイルスの感染から24時間以内に、上記3種類の細胞を、上記(1)の回転運動テストから1週間が経過したモデルラットの線条体にそれぞれ直接投与により移植した。移植は、いずれの細胞も1.5×10細胞/6μlで、2箇所(Coordinates of Injection:AP 0.5 L−3.2 V−6.5〜−4.5およびAP 0.5 L−2.5 V−6.5〜−4.5)に各3μlずつ(計6μl)、細胞注入速度は0.5μl/分、Vは−6.5〜−4.5まで、1mm/μl/2分の割合で針をゆっくりと引き上げながら行い、細胞注入後5分以上針を抜かずに放置し、その後ゆっくり針を抜いた。なお、コントロールとして、培地(DMEM)のみ(6μl)を同様の方法で線条体へ直接投与したラットも作製した。
【0057】
(4)間葉系幹細胞の静脈内投与
組み換えアデノウイルスの感染から24時間以内に、上記のヒト間葉系幹細胞を上記(1)の回転運動テストから1週間が経過したモデルラットの左大腿静脈へ1×10細胞/500μlで、投与した。
【0058】
(5)線条体切片の免疫組織化学染色
上記(3)または(4)に記載のとおり細胞を投与してから約1週間後、ラットを麻酔して4%パラホルムアルデヒドにより灌流固定し、摘出した脳を一晩、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。翌日、固定した脳を、ショ糖を含有するPBSにより4℃で脱水処理し(10%ショ糖溶液で4時間、次いで20%ショ糖溶液で4時間、さらに30%ショ糖溶液で一晩)、その翌日、20μmの厚さの凍結切片を作製した。
【0059】
作製した切片について、1次抗体としてウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼポリクローナル抗体(Rabbit Anti-Tyrosine hydroxylase, Polyclonal Antibody)(Chemicon、Cat.# AB151)(1000倍希釈)および抗βガラクトシダーゼモノクローナル抗体(Anti-β-galactosidase, Purified Monoclonal Antibody)(Promega、Cat.# Z3781)(2000倍希釈)を用い、2次抗体としてそれぞれAlexa Fluor 488 Anti-Rabbit IgG(Molecular Probes、Cat.# Z25302)およびAlexa Fluor 594 Anti-Mouse IgG2a(Molecular Probes、Cat.# Z25107)を使用して、二重染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 Pascal, Carl Zeiss)により染色像を観察した。ヒト間葉系幹細胞、神経幹細胞(neurosphere)およびチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞を線条体へ直接移植した場合の線条体染色像を図2に、ヒト間葉系幹細胞を静脈内投与した場合の線条体染色像を図3にそれぞれ示す(撮影倍率はいずれも200倍)。
【0060】
図2の結果から、線条体に直接移植された、lacZ遺伝子を導入されたヒト間葉系幹細胞、神経幹細胞(neurosphere)およびチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞のいずれも線条体に定着していることが理解される。また特に、ヒト間葉系幹細胞および神経幹細胞(neurosphere)を移植したラットの線条体において、lacZを発現する細胞はチロシンヒドロキシラーゼをも発現していることから、これらの細胞も線条体に定着した後、チロシンヒドロキシラーゼを発現する神経細胞に分化することが示された。
図3の結果からも同様に、lacZを発現する細胞がチロシンヒドロキシラーゼをも発現していることから、静脈内投与された間葉系幹細胞も線条体に定着し、チロシンヒドロキシラーゼを発現する神経細胞に分化することが示された。
【0061】
(6)モデルラットにおける細胞治療効果の評価
上記(3)または(4)に記載のとおり細胞を投与してから1、2、4、6、8、10および12週間後に、D−メタンフェタミン(大日本住友製薬)を5mg/kgで腹腔内投与し、Roto−Rat(MED社製,USA)を用いて回転運動テストを2時間行い、回転運動に対する抑制作用を評価した。結果を図4および5に示す。
【0062】
図4から、いずれの細胞を投与した群でも、細胞投与を行う前は、メタンフェタミン投与により、回転運動(時計回り)が誘導されたのに対し、細胞投与を行ってから6週間後では、メタンフェタミン投与後の回転運動数が細胞投与前に比べて減少していることが理解される。(図4における▲はメタンフェタミン投与後の反時計回りの回転数、■はメタンフェタミン投与後の時計回りの回転数を示す)
また、図5から、コントロール群と比較して、細胞投与を行った群ではいずれも投与1週間後から回転運動数が減少し始め、6週間後には細胞投与前の20〜50%程度にまで回転運動数が減少することが明らかになった。さらに、静脈内投与では、脳内への直接投与よりも数十倍多い細胞数を投与することにより、脳内への直接投与と同様の効果を得られることが示された。
【0063】
以上のとおり、ヒト間葉系幹細胞、神経幹細胞(neurosphere)もしくはチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞を脳内に直接投与することにより、また、ヒト間葉系幹細胞を静脈内投与することにより、投与された細胞がチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞として線条体に定着し、パーキンソン病/パーキンソン症候群の症状を改善することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のとおり、本願発明によれば、間葉系に関連する細胞を含んでなるパーキンソン病またはパーキンソン症候群のための治療薬およびこれを用いた治療方法を提供することができる。本願発明は、従来、根本的な治療方法がなく対症療法的な薬物療法しか存在していなかったパーキンソン病に対して、間葉系幹細胞や間葉系幹細胞から分化誘導された細胞等の、間葉系に関連する細胞を体内に投与することにより線条体の再生を可能にする極めて有効な治療薬および治療方法を提供するものであり、しかも、脳内投与のみならず、より処置が容易な静脈内投与によっても良好な治癒効果を得ることができることから、実際の臨床現場での利用が期待される極めて画期的なものである。したがって、同様に、パーキンソン病と同様の症状を呈するパーキンソン症候群に対しても臨床応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】ヒト間葉系幹細胞の画像を示す図である。
【図1B】ヒト間葉系幹細胞から分化誘導された神経幹細胞(neurosphere)の画像を示す図である。
【図1C】ヒト間葉系幹細胞から分化誘導されたチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞を示す図である。
【図2】ラット線条体に直接移植された、lacZ遺伝子が導入されたヒト間葉系幹細胞(左から1列目)、神経幹細胞(neurosphere)(左から2列目)およびチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経細胞(左から3列目)の線条体における染色像(上から1列目:抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体による染色像、上から2列目:抗βガラクトシダーゼ抗体による染色像、上から3列目:前記2つの染色像の重ね合わせ)を示す図である。
【図3】ラットに静脈内投与された、lacZ遺伝子が導入されたヒト間葉系幹細胞の線条体における染色像(左:抗βガラクトシダーゼ抗体による染色像、右:抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体による染色像)を示す図である。
【図4】各種細胞投与前と投与6週間後の回転運動数を示す図である。
【図5】各種細胞投与後1週間後、2週間後、4週間後、6週間後の回転率の経過を示す図である。
【出願人】 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】506100495
【氏名又は名称】NCメディカルリサーチ株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司

【識別番号】100133134
【弁理士】
【氏名又は名称】高河原 芳子


【公開番号】 特開2008−63290(P2008−63290A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244415(P2006−244415)