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【発明の名称】 低い重合収縮率を有する歯科材料
【発明者】 【氏名】ノルベルト モズナー

【氏名】ヘルムート リッター

【氏名】ウルス−カール フィッシャー

【氏名】モニール タバタバイ

【氏名】マティアス シャウプ

【氏名】アンドレアス ウッターオット

【要約】 【課題】標準のメタクリレートをベースとする常用の材料と比較して低い重合収縮率および良好な機械的性質によって区別され、かつさらに付加的な有利な性質、例えば粘着性を得ることができる、使用可能な歯科材料を製造する。

【構成】次の成分:式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン、開始剤、カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下でおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマー、開環によって重合しうる(メタ)アクリレートまたは多官能価(メタ)アクリレート、充填剤および添加剤から構成されている歯科材料によって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料において、該歯科材料が
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン0.5〜90質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合可能でありおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー0〜90質量%、
(d)充填剤0〜85質量%、
(e)添加剤0.01〜5質量%および
(f)溶剤0〜70質量%を含有することを特徴とする、歯科材料。
【請求項2】
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜40質量%、
(b)開始剤0.01〜2質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合可能でありおよび/または開環によって重合可能である付加的なモノマー1〜70質量%、
(d)充填剤3〜80質量%および
(e)添加剤0.01〜3質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項1記載の歯科材料。
【請求項3】
一般式(I):
【化1】


〔式中、
nは、1〜5であり、
1〜R4は、互いに独立に、Hであるか、またはO、フェニル基またはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C15−アルキル基であり、
1は、構造式:
1−Ra1(Ya1−Rb1−PG1m
を有する基を表わし、
1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
a1は、1〜30個の炭素原子を有することができるm価の有機基であり、必要な場合には、0〜6個のヘテロ原子、例えばO、SまたはNを有することができ、
mは、1〜3であり、
a1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
b1は、存在しないかまたは酸素原子によって中断されていてよいC1〜C16アルキレン基であり、
PG1は、重合可能な基、例えばラジカル重合条件下で重合しうる基、例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基またはスチリル基;ラジカル重合条件下で開環によって重合しうる環状基、例えば基:
【化2】


またはカチオン重合条件下で重合しうる基、例えばビニルエーテル基またはグリシジル基、環状脂肪族エポキシドまたはオキセタン基、または重合可能なニトロン基であり、この場合
b1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
c1,Rd1は、互いに独立に、O、フェニル基またはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C15−アルキル基であり、
さらに、
2〜X4は、互いに独立に存在しないか、またはOH基またはC1〜C10−アルキル基であり、互いに独立にX1と同じ意味を有することができ、付加的に構造式:
(Ya2−Rb2−AG)p
を有する基を表わすことができ、
a2は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
b2は、1〜20個の炭素原子を有することができるp価の有機基であり、必要な場合には、0〜4個のヘテロ原子、例えばOまたはNを有することができ、
pは、1〜3であり、および
AGは、アンカー基、例えば−P=O(OH)2、−O−P=O(OH)2、−COOHまたは−O−SO2OHである〕で示されるカリックス[n]アレーンを含有する、請求項1記載の歯科材料。
【請求項4】
一般式(I):
【化3】


〔式中、
nは、1〜3であり、
1〜R4は、互いに独立に、Hであるか、またはOまたはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C10−アルキル基であり、
1は、構造式:
1−Ra1(Ya1−Rb1−PG1m
を有する基を表わし、
1は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
a1は、1〜15個の炭素原子を有することができるm価の有機基であり、必要な場合には、0〜3個の酸素原子を有することができ、
mは、1〜2であり、
a1は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
b1は、存在しないかまたは酸素原子によって中断されていてよいC1〜C16アルキレン基であり、
PG1は、重合可能な基、ラジカル重合条件下で重合しうる基、例えば(メタ)アクリレート基または(メタ)アクリルアミド基、ラジカル重合条件下で開環によって重合しうる環状基、例えば基:
【化4】


またはカチオン重合条件下で重合しうる基、例えば環状脂肪族エポキシドまたはオキセタン基、またはポリ反応性ニトロン基であり、この場合
b1は、存在しないかまたはO、エステルまたはウレタンであり、
c1、Rd1は、互いに独立に、C1〜C5−アルキル基、フェニル基またはベンジル基であり、
さらに、
2〜X4は、互いに独立に存在しないか、またはC1〜C10−アルキル基であり、互いに独立にX1と同じ意味を有することができ、付加的に:
(Ya2−Rb2−AG)p
を有する基を表わすことができ、この場合
a2は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
b2は、1〜10個の炭素原子を有することができるp価の有機基であり、必要な場合には、0〜2個の酸素原子を有することができ、
pは、1〜2であり、および
AGは、アンカー基、例えば−P=O(OH)2、−O−P=O(OH)2、−COOHまたは−O−SO2OHである〕で示されるカリックス[n]アレーンを含有する、請求項2記載の歯科材料。
【請求項5】
歯科材料は、式(I)のカリックス[n]アレーン0.5〜90質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項6】
歯科材料は、付加的に開始剤、カチオン重合条件下で重合しうる付加的なモノマー、ラジカル重合条件下で重合しうるモノマー、充填剤および添加剤または1つ以上の前記物質を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項7】
歯科材料は、ラジカル重合条件下で重合しうるモノマーとして開環によって重合しうるモノマー、殊に一官能価または多官能価ビニルシクロプロパンまたは二環式シクロプロパンアクリレートまたは環状アリルスルフィドおよび多官能価(メタ)アクリレートまたは前記モノマーの混合物を含有する、請求項6記載の歯科材料。
【請求項8】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜30質量%、
(b)開始剤0.01〜2質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合可能でありおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー1〜30質量%、
(d)充填剤5〜70質量%および
(e)添加剤0.01〜5質量%を含有するセメントであり、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項9】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜20質量%、
(b)開始剤0.01〜1.5質量%、
(c)ラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜20質量%、
(d)充填剤10〜60質量%および
(e)添加剤0.01〜3質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項8記載の歯科材料。
【請求項10】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜30質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、
(c)イオン重合条件下またはラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー1〜30質量%、
(d)充填剤5〜85質量%および
(e)添加剤0.01〜5質量%を含有する充填用複合材であり、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項11】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜20質量%、
(b)開始剤0.01〜2質量%、
(c)ラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜20質量%、
(d)充填剤10〜80質量%および
(e)添加剤0.01〜3質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項10記載の歯科材料。
【請求項12】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜70質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、
(c)イオン重合条件下またはラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜60質量%、
(d)充填剤1〜30質量%、
(e)添加剤0.01〜5質量%および
(f)溶剤0〜70質量%を含有するコーティング材料であり、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項13】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン1〜50質量%、
(b)開始剤0.01〜1.5質量%、
(c)ラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜60質量%、
(d)充填剤3〜20質量%、
(e)添加剤0.01〜3質量%および
(f)溶剤0〜30質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項12記載の歯科材料。
【請求項14】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン0.5〜50質量%、
(b)少なくとも1つの開始剤0.01〜5質量%、
(c)ラジカル重合条件下で重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜70質量%、
(d)充填剤0〜30質量%、
(e)添加剤0.01〜5質量%および
(f)溶剤0〜50質量%を含有する歯科用接着剤であり、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項15】
歯科材料は、
(a)式(I)による少なくとも1つのカリックス[n]アレーン1〜30質量%、
(b)少なくとも1つの開始剤0.01〜2質量%、
(c)カチオン重合条件下で重合可能でありおよび/またはラジカル重合条件下で重合可能でありおよび/または開環によって重合可能である少なくとも1つの付加的なモノマー5〜60質量%、
(d)充填剤3〜20質量%、
(e)添加剤0.01〜3質量%および
(f)溶剤0〜20質量%を含有し、この場合百分率は、100%になるまで添加される、請求項14記載の歯科材料。
【請求項16】
歯科分野におけるセメント、複合材、接着剤およびコーティング材料のための請求項1から15までのいずれか1項に記載の歯科材料の使用。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、低い重合収縮率および比較可能な機械的性質を有するカリックス[n]アレーンを含有する歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カリックス[n]アレーンは、p−アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合(図式1、式2)またはレソルシノールとアルデヒドとの縮合(図式1、式3)によって得ることができるln−メタシクロファン(図式1、式1)として公知である環状オリゴマーであり、この場合フェノール系OH基は、エンド位置(環内)またはエキソ位置(環外)に配置されている。これに関連して、カリックス[n]アレーンの特殊な皿状またはカップ状の配座は、触媒技術、クロマトグラフィー技術、分析技術またはセンサー技術において数多くの用途を生じた(V. Bohmer Angew. Chem., 107 (1995), 785-818)。
【0003】
【化1】


【0004】
図式1:1:ln−メタシクロファン、2:p−置換フェノールのカリックス[n]アレーンおよび3:カリックス[4]レソルカレーン
【0005】
重合可能なカリックス[n]アレーンの合成および重合に関する夥しい数の論文は、科学文献から公知である。この合成および重合の例は、ラジカル重合可能な5−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]−25,26,27,28−テトラブトキシ−カリックス[4]アレーンの合成(D.M. Gravett and J.E. Guillet, Macromolecules, 29 (1996), 617-724)または5−(1−(アクリロイルオキシプロピルオキシメチル)−25,26,27,28−テトラ(2−エトキシエチル)カリックス[4]アレーンの合成(M.T. Blanda and E. Adou, Polymer, 39 (1998), 3821-3826)、(メタ)アクリル基を有するp−アルキルカリックス[6]アレーン、例えばp−メチルカリックス[6]アレーンまたはp−第三ブチルカリックス[6]アレーンのヘキサ(メタ)アクリレートの合成およびラジカル重合(M. Iyo, K. Tsutsui, A. Kameyama and T. Nishikubo, J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 37 (1999), 3071-3078)またはカチオン重合可能なカリックス[n]アレーン、例えば5,11,17,23,29,35−ヘキサメチルー37,38,39,40,41,42−ヘキサキス(アリルオキシ)カリックス[6]アレーンの合成(T. Nishikubo, A. Kameyama, K. Tsutsui and M. Iyo, J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 37 (1999), 1805-1814)である。
【0006】
重合可能な調製物と組み合わせたカリックス[n]アレーンの使用は、特許文献から公知である。即ち、例えば米国特許第4636539号明細書、米国特許第4718966号明細書、米国特許第4912183号明細書、欧州特許第235935号明細書およびフランス国特許第2795077号明細書には、シアノアクリレート接着剤のための促進剤としての、反応により変性されていないカリックス[n]アレーンの使用が記載されている。
【0007】
米国特許第4699966号明細書には、金属イオンのための金属イオン封鎖剤としての、アクリレート基またはメタクリレート基で官能化されたカリックス[n]アレーンおよびそのポリマーが記載されている。更に、詳述すれば、重合可能なカリックス[n]アレーンおよび少なくとも1個のフェノール側基を有するオキサカリックスアレーン誘導体は、米国特許第5216185号明細書中に記載されている。特開平09−263560号公報には、(メタ)アクリレート基、ビニル基またはプロペニル基で官能化されておりかつ熱的または光化学的に重合されうるカリックス[n]アレーン誘導体が記載されている。特開平11−043524号公報には、類似しているが、しかし、付加的にポリアルキレンオキシド基で変性されている系が記載されている。
【0008】
WO 2005/075398A1および特開2002−088007号公報には、硬化可能なフォトレジスト中で熱に対して改善された耐性を生じる、重合可能なカリックス[n]アレーン誘導体が記載されている。特開2004−137395号公報には、改善された機械的性質および光学的性質の利点を有する、重合可能なカリックス[n]アレーン誘導体を含有するセルロースアクリレートの特許保護が請求されている。
【0009】
特開2002−003563号公報および特開平09−263560号公報には、重合可能な基(アクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルエーテルおよび類似物)および酸基または無水物基を含有するカリックス[n]アレーン誘導体が記載されている。前記誘導体は、エッチングレジスト、接着剤、ラッカーまたは塗料として使用される。
【0010】
英国特許第2185261号明細書には、カリックス[n]アレーン誘導体を含有する、接着剤充填剤としてのラジカル重合可能な組成物が記載されている。特開平02−124850号公報には、p−第三ブチルカリックス[6]アレーンをグリシジルメタクリレートおよびトリ(n−ブチル)アミンと一緒に加熱することによるカリックス[n]アレーンの製造が記載されている。米国特許第4617336号明細書およびカナダ国特許第1273954号明細書には、有機材料、殊にポリマーを安定化するための、アクリレート基を有するカリックスアレーンが記載されている。
【0011】
特開2000−256362号公報には、スピロオルトエステル基で官能化されている重合可能なカリックス[n]アレーン誘導体が記載されている。体積中の収縮なしに重合によって区別される前記化合物は、特に塗装材料としての使用に適している。
【0012】
特開2000−264953号公報には、最終的に、カリックス[n]アレーンの添加によって有利な性質、例えば高い架橋密度、高い耐熱性および良好な機械的性質が獲得される硬化可能なエポキシ樹脂が記載されている。
【0013】
WO 2005/120229には、テルペンおよび/または芳香族アルコールを放出する物質が記載されている。記載された物質および組成物は、特にカリックス[n]アレーンを含有することもでき、先ず第一に微生物が表面に付着することを回避するために使用される。例示的に、接着コンパウンドにおける微生物の発達を回避させる組成物が記載されている。同様に、義歯の清浄化のためにカリックス[n]アレーン含有組成物を使用することが記載されている。
【0014】
米国特許第4699966号明細書には、カリックス[n]アレーンおよび該カリックス[n]アレーンから製造されたポリマーが記載されており、この場合このカリックス[n]アレーンは、開始剤と混合され、光を用いて重合される。充填剤含有歯科材料またはこのような材料中の成分としての使用は、記載されていない。
【0015】
米国特許第6117944号明細書には、充填剤不含組成物を含有する種々のカリックスアレーンの製造および反応性の測定が記載されている。歯科材料中への使用は、この米国特許明細書の対象ではない。
【0016】
欧州特許出願公開第1712537号明細書A1には、異なる組成物中の数多くの異なるカリックス[n]アレーンが記載されている。しかし、前記カリックス[n]アレーンは、充填剤も付加的なラジカル重合可能な成分も含有していない。
【0017】
欧州特許出願公開第432990号明細書A2には、金属をマスキングしかつ塗装するための充填剤不含の組成物が記載されている。前記材料は、化学線を用いて溶液から硬化される。カリックス[n]アレーンを有する、充填剤含有歯科材料は、開示されていない。
【0018】
欧州特許第196895号明細書B1には、充填剤を含有しない、充填剤不含の接着剤配合物が記載されている。生じたポリマーは、順番付けされたカリックス[n]アレーンを含有する。
【0019】
WO 2005/056741 A1には、非粘着性組成物が記載されている。この非粘着性組成物は、充填剤を欠いており、コーティングとして、義歯および歯科用ケア製品または口腔ケア製品のためでさえ、歯科材料に関して直接に言及していないが、咀嚼器の保全または再構成のための材料に関連する。歯科の用途のための充填剤含有組成物は、開示されていない。
【0020】
WO 94/15907A1には、充填剤なしに使用され、かつ僅かな収縮が観察される、シアノ基を含有するカリックス[n]アレーンが記載されている。充填剤含有歯科材料は、開示されていない。
【特許文献1】米国特許第4636539号明細書
【特許文献2】米国特許第4718966号明細書
【特許文献3】米国特許第4912183号明細書
【特許文献4】欧州特許第235935号明細書
【特許文献5】フランス国特許第2795077号明細書
【特許文献6】米国特許第4699966号明細書
【特許文献7】米国特許第5216185号明細書
【特許文献8】特開平09−263560号公報
【特許文献9】特開平11−043524号公報
【特許文献10】WO 2005/075398A1
【特許文献11】特開2002−088007号公報
【特許文献12】特開2004−137395号公報
【特許文献13】特開2002−003563号公報
【特許文献14】特開平09−263560号公報
【特許文献15】英国特許第2185261号明細書
【特許文献16】特開平02−124850号公報
【特許文献17】米国特許第4617336号明細書
【特許文献18】カナダ国特許第1273954号明細書
【特許文献19】特開2000−256362号公報
【特許文献20】特開2000−264953号公報
【特許文献21】WO 2005/120229
【特許文献22】米国特許第4699966号明細書
【特許文献23】米国特許第6117944号明細書
【特許文献24】欧州特許出願公開第1712537号明細書A1
【特許文献25】欧州特許出願公開第432990号明細書A2
【特許文献26】欧州特許第196895号明細書B1
【特許文献27】WO 2005/056741 A1
【特許文献28】WO 94/15907A1
【非特許文献1】V. Bohmer Angew. Chem., 107 (1995), 785-818
【非特許文献2】D.M. Gravett and J.E. Guillet, Macromolecules, 29 (1996), 617-724)
【非特許文献3】M.T. Blanda and E. Adou, Polymer, 39 (1998), 3821-3826)
【非特許文献4】M. Iyo, K. Tsutsui, A. Kameyama and T. Nishikubo
【非特許文献5】J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 37 (1999), 3071-3078
【非特許文献6】T. Nishikubo, A. Kameyama, K. Tsutsui and M. Iyo, J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 37 (1999), 1805-1814
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、標準のメタクリレートをベースとする常用の材料と比較して低い重合収縮率および良好な機械的性質によって区別され、かつさらに付加的な有利な性質、例えば粘着性を得ることができる、使用可能な歯科材料を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、次の成分を示すかまたは次の成分から構成されている歯科材料によって達成される:
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン0.5〜90質量%、特に有利に0.5〜40質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、特に有利に0.01〜2質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマー、開環によって重合しうる(メタ)アクリレートまたは好ましくは多官能価の(メタ)アクリレート0〜90質量%、特に有利に1〜70質量%、
(d)充填剤0〜85質量%、特に有利に3〜80質量%および
(e)添加剤0.01〜5質量%、特に有利に0.01〜3質量%、
この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される。
【0023】
好ましくは、本発明によれば、一般式(I):
【化2】


〔式中、
nは、1〜5であり、
1〜R4は、互いに独立に、Hであるか、またはO、フェニル基またはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C15−アルキル基であり、
1は、構造式:
1−Ra1(Ya1−Rb1−PG1m
を有する基を表わし、
1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
a1は、1〜30個の炭素原子を有することができるm価の有機基であり、必要な場合には、0〜6個のヘテロ原子、例えばO、SまたはNを有することができ、
mは、1〜3であり、
a1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
b1は、存在しないかまたは酸素原子によって中断されていてよいC1〜C16アルキレン基であり、
PG1は、重合可能な基、例えばラジカル重合条件下で重合しうる基、例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基またはスチリル基;ラジカル重合条件下で開環によって重合しうる環状基、例えば基:
【化3】


またはカチオン重合条件下で重合しうる基、例えばビニルエーテル基またはグリシジル基、環状脂肪族エポキシドまたはオキセタン基、または重合可能なニトロン基であり、この場合
b1は、存在しないかまたはO、エステル、アミドまたはウレタンであり、
c1/Rd1は、互いに独立に、O、フェニル基またはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C15−アルキル基であり、
さらに、
2〜X4は、互いに独立に存在しないか、またはOH基またはC1〜C10−アルキル基であり、互いに独立にX1と同じ意味を有することができ、付加的に構造式:
(Ya2−Rb2−AG)p
を有する基を表わすことができ、
a2は、存在しないかまたは必要な場合には、O、エステル、アミドまたはウレタンであり、
b2は、1〜20個の炭素原子を有することができるp価の有機基であり、必要な場合には、0〜4個のヘテロ原子、例えばOまたはNを有することができ、
pは、1〜3であり、および
AGは、アンカー基、例えば−P=O(OH)2、−O−P=O(OH)2、−COOHまたは−O−SO2OHである〕で示されるカリックス[n]アレーンが使用される。
【0024】
一般式(I)に相当する重合可能なカリックス[n]アレーンは、特に好ましく、この場合には、上記基の変形は、次の意味を有し、その際、前記意味は、互いに独立に選択することができる:
nは、1〜3であり、
1〜R4は、互いに独立に、Hであるか、またはOまたはベンジル基によって中断されていてよいC1〜C10−アルキル基であり、
1は、構造式:
1−Ra1(Ya1−Rb1−PG1m
を有する基を表わし、
1は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
a1は、1〜15個の炭素原子を有することができるm価の有機基であり、必要な場合には、0〜3個の酸素原子を有することができ、
mは、1〜2であり、
1は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
b1は、存在しないかまたは酸素原子によって中断されていてよいC1〜C16アルキレン基であり、
PG1は、重合可能な基、例えばラジカル重合条件下で重合しうる基、例えば(メタ)アクリレート基または(メタ)アクリルアミド基、ラジカル重合条件下で開環によって重合しうる環状基、例えば基:
【化4】


またはカチオン重合条件下で重合しうる基、例えば環状脂肪族エポキシドまたはオキセタン基、または重合可能なニトロン基であり、この場合
b1は、存在しないかまたはO、エステルまたはウレタンであり、
c1、Rd1は、互いに独立に、C1〜C5−アルキル基、フェニル基またはベンジル基であり、
さらに、
2〜X4は、互いに独立に存在しないか、またはC1〜C10−アルキル基であり、互いに独立にX1と同じ意味を有することができ、付加的に構造式:
(Ya2−Rb2−AG)p
を有する基を表わすことができ、
a2は、存在しないかまたはOまたはエステルであり、
b2は、1〜10個の炭素原子を有することができるp価の有機基であり、必要な場合には、0〜2個の酸素原子を有することができ、
pは、1〜2であり、および
AGは、アンカー基、例えば−P=O(OH)2、−O−P=O(OH)2、−COOHまたは−O−SO2OHである。
【0025】
本発明による使用される一般式(I)のカリックス[n]アレーンは、適当に官能化されたカリックス[n]アレーンから出発し、酸基を含有する適当に重合可能な化合物との反応によって得ることができる。即ち、例えば均一に置換された重合可能なカリックス[n]アレーンは、HO官能化されたカリックス[n]アレーンをメタクリロイルクロリドで変性することによって製造されることができる:
【化5】


【0026】
1つの具体的な例は、p−第三ブチルカリックス[6]アレーンのヘキサメタクリレートの製造である:
【化6】


【0027】
不均一に置換された重合可能なカリックス[n]アレーンは、同様に、HO官能化されたカリックス[n]アレーンを重合可能な酸クロリド、例えばメタクリロイルとアクリロイルクロリドとの混合物で変性することによって製造されることができる。更に、付加的な酸基を有する重合可能なカリックス[n]アレーンは、順次の反応、例えば重合可能なカリックス[n]アレーンと燐酸二水素基と反応させ、部分的に塩化メタクリロイルと反応させ、引続き塩化ホスホリルでホスホリル化することによって合成させることができる。
【0028】
一般式(I)に相当する本発明による重合可能なカリックス[n]アレーンの合成に適した官能化されたカリックス[n]アレーンは、文献から公知であり;この文献の概要は、V. Bohmerによる論評(Angew. Chem., 107 (1995), 785-818)に見出すことができる。この論評によれば、一面で、例えば第三ブチルフェノールをホルムアルデヒドとアルカリ条件下で温度および塩基量に応じて反応させ、四量体、六量体または八量体を生じる一槽法の間で区別される。他面、種々に置換されたカリックスアレーンは、ヒドロメチル化工程と縮合工程との交互の工程およびその後に最終的にこうして得られた線状オリゴマーの環化によって段階的に合成することができる。
【0029】
ラジカル重合条件下で開環によって重合しうる一般式(I)のカリックス[n]アレーンの合成に適した官能化された環状モノマーは、文献から公知である。例えば、ビニルシクロプロパンおよび二環式シクロプロピルアクリレートの合成は、N. Moszner et al., Macromol. Rapid. Commun., 18 (1997), 775-780、またはA. de Meijere et al., Eur. J. Org. Chem., 2004, 3669-3678によって記載されている。官能化された環状アリルスルフィドの合成は、R. A. EvansおよびE. Rizzardo, J. Polym. Sci., Part A. Polym. Chem., 39 (2001), 202-215;Macromolecules, 33 (2000), 6722-6731によって刊行された。
【0030】
本発明により使用されるラジカル重合条件下で重合しうる一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンは、標準のジメタクリレートをベースとする常用の材料と比較して低い重合収縮率および良好な機械的性質によって区別される歯科材料の製造を可能にし、さらに、例えばラジカル重合条件下で重合可能でありかつ酸基を有する一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンの使用によって、付加的な性質、例えば粘着性を得ることを可能にする。
【0031】
従って、本発明による材料は、粘着性歯科材料、例えば充填用複合材、セメントおよびコーティング材料として使用される。同様に、本発明による歯科材料は、接着剤として使用されてよい。
【0032】
本発明による組成物の使用が歯科分野における使用に焦点を当てられる場合であっても、この材料は、幅広い使用範囲を有し、例えばこの材料は、光学工業、電子技術工業および自動車工業のために保護ラッカーおよびマスキングラッカーとして使用されることができる。
【0033】
本発明により使用されるラジカル重合条件下で重合しうる一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンは、ラジカル重合条件下で、殊に二官能性の(メタ)アクリレート架橋剤と重合しうる常用のモノマーとの混合物で使用されることができる。これに関連して適当なのは、殊に架橋性の二官能性または多官能性のアクリレートまたはメタクリレート、例えばビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノールAジグリシジルエーテルとの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリチルテトラ(メタ)アクリレートおよび1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートまたは1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0034】
ラジカル重合条件下で僅かな収縮率で開環によって重合しうる公知のモノマー、例えば一官能価または多官能価のビニルシクロプロパンまたは二環式シクロプロパンアクリレート誘導体(ドイツ連邦共和国特許第19616183号明細書C2または欧州特許第03022855号明細書参照)または環状アリルスルフィド(米国特許第6043361号明細書または米国特許第6344556号明細書参照)との混合物でラジカル重合条件下で重合しうる一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンの使用は、特に有利であり、この場合このカリックス[n]アレーンは、上記のジ(メタ)アクリレート架橋剤と組合せて使用されてもよい。開環によって重合しうる好ましいモノマーは、1,1−ジ(エトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパンまたは1,1−ジ(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパンのようなビニルシクロプロパン、または1−エトキシカルボニル−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸または1−メトキシカルボニル−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸とエチレングリコール、1,1,1−トリメトキシプロパン、1,4−シクロヘキサンジオールまたはレソルシノールとのエステルである。好ましい二環式シクロプロパン誘導体は、2−(ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸メチルエステルまたは2−(ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸エチルエステル、または該エステルの3位での二置換生成物、例えば(3,3−ビス(エトキシカルボニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸メチルエステルまたは(3,3−ビス(エトキシカルボニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸エチルエステルである。好ましい環状アリルスルフィドは、殊に2−(ヒドロキシメチル)−6−メチレン−1,4−ジチエパンまたは7−ヒドロキシ−3−メチレン−1,5−ジチアシクロオクタンと2,2,4−トリメチルヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートまたは不斉ヘキサメチレンジイソシアネート三量体 Bayer AG社からのDesmodur(登録商標)VP LS 2294との付加生成物である。
【0035】
カチオン重合条件下で低い収縮率で開環によって重合しうる公知のモノマー、例えばグリシジルエーテルまたは環状脂肪族エポキシド、環状ケテンアセタール、スピロオルトカーボネート、オキセタンまたは二環式オルトエステルとの混合物で本発明によるカチオン重合条件下で重合しうる一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンの使用は、特に好適である。例は、次の通りである:2−メチレン−1,4,6−トリオキサスピロ[2.2]ノナン、3,9−ジメチレン−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−メチレン−1,3−ジオキセパン、2−フェニル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、1,10−デカンジイルビス(オキシメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)または3,3−(4−キシリレンジオキシ)ビス(メチル−3−エチルオキセタン)、または欧州特許第0879257号明細書B1に記載された付加的なエポキシド。例えば、カチオン重合条件下で重合しうるシラン含有基、好ましくは例えばエポキシド基、オキセタン基またはスピロオルトエステル基の加水分解による縮合によって得ることができるシリカ重縮合物は、カチオン重合条件下で重合しうるマトリックス系としても適している。このようなシリカ重縮合物は、例えばドイツ連邦共和国特許第4133494号明細書C2または米国特許第6096903号明細書中に記載されている。
【0036】
ラジカル重合条件下で重合しうる一般式(I)に相当するカリックス[n]アレーンをベースとする本発明による歯科材料は、公知のラジカル重合開始剤を用いて重合されうる(Encyclopedia of Polymer Scinece and Engineering, Vol. 13, Wiley-Intersci. Pub., New York, ets., 1988, 第754頁以降参照)。UV領域または可視領域のための光開始剤(J.P. Fouassier and J.F. Rabek (編集), Rdiation Curing in Polymer Science and Technology, Vol. II, Elsevier Applied Science, London and New York, 1993)、例えばベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシド、またはα−ジケトン、例えば9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4′−ジクロロベンジルおよび4,4′−ジアルコキシベンジル、およびカンフルキノンは、特に好適である。
【0037】
更に、アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)またはアゾビス(4−シアノ吉草酸)、または過酸化物、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、第三ブチルペルオクトエート、第三ブチルペルベンゾエートまたはジ(第三ブチル)ペルオキシドは、使用されてもよい。
【0038】
ベンゾピナコールおよび2,2′−ジアルキルベンゾピナコールは、熱硬化のための開始剤として適している。
【0039】
また、芳香族アミンとの組合せは、しばしば過酸化物またはα−ジケトンを用いて開始を促進させるために好ましい。価値のあることが既に証明されたレドックス系は、次の通りである:過酸化ベンゾイルまたはカンフル−キノンとアミンとの組合せ、例えばN、N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、エチルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートまたは構造的に関連した系。更に、過酸化物およびこのような還元剤、例えばアスコルビン酸、バルビツル酸塩またはスルフィン酸から構成されているレドックス系も適している。
【0040】
カチオン重合条件下で重合しうる一般式(I)の相応するカリックス[n]アレーンをベースとする本発明による歯科材料は、公知の陽イオン性光開始剤、殊にジアリールヨードニウム塩またはトリアリールスルホニウム塩で、必要な場合には適当な増感剤、例えばカンフル−キノンの存在下で硬化されることができる。可視領域でカンフル−キノンまたはリオキサントンと一緒に使用されうる適当なジアリールヨードニウム塩の例は、商業的に入手可能な(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートまたは(イソプロピルフェニル)(メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0041】
更に、重合可能なカリックス[n]アレーンをベースとする本発明による歯科材料は、1つ以上の充填剤、好ましくは有機または無機の粒状充填剤を含有することができる。好ましい無機の粒状充填剤は、10〜200nmの平均粒径を有する、酸化物、例えば熱分解法シリカまたは沈降シリカ、ZrO2およびTiO2またはSiO2、ZrO2および/またはTiO2の混合酸化物をベースとする無定形の球状のナノ粒子状充填剤、ミニ充填剤、例えば0.2〜5μmの平均粒径を有する石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末、ならびにX線に対して不透明である充填剤、例えば三弗化イッテルビウム、またはナノ粒子状の酸化タンタル(V)または硫酸バリウムである。更に、繊維状充填剤、例えばガラス繊維、ポリアミド繊維または炭素原子は、使用されてもよい。
【0042】
最後に、付加的な添加剤、例えば安定剤、UV吸収剤、染料または顔料、ならびに溶剤、例えば水、エタノール、アセトンまたは酢酸エチル、または滑剤は、必要に応じて、重合可能なカリックス[n]アレーンをベースとする本発明による歯科材料に添加されてよい。
【0043】
これに関連して、本発明による歯科材料は、意図された目的に応じて、好ましくは次の成分から構成されている:
本発明によるセメントは、好ましくは次のもの:
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン0.5〜30質量%、特に有利に0.5〜20質量%、
(b)開始剤0.01〜2質量%、特に有利に0.01〜1.5質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマー、好ましくは多官能価(メタ)アクリレート1〜30質量%、特に有利に5〜20質量%、
(d)充填剤5〜70質量%、特に有利に10〜60質量%および
(e)添加剤0.01〜5質量%、有利に0.01〜2質量%、特に有利に0.01〜1質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される。
【0044】
本発明による充填用複合材は、好ましくは次のもの:
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン0.5〜30質量%、特に有利に0.5〜20質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、有利に0.01〜2質量%、特に有利に0.01〜1.5質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマー、好ましくは多官能価(メタ)アクリレート1〜30質量%、有利に5〜20質量%、特に有利に5〜15質量%、
(d)充填剤5〜85質量%、特に有利に10〜80質量%および
(e)添加剤0.01〜5質量%、有利に0.01〜3質量%、特に有利に0.01〜2質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される。
【0045】
本発明によるコーティング材料は、好ましくは次のもの:
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン1〜70質量%、特に有利に1〜50質量%、
(b)開始剤0.01〜5質量%、有利に0.01〜2質量%、特に有利に0.01〜1.5質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマー、特に好ましくは少なくとも1つの多官能価(メタ)アクリレート5〜70質量%、有利に5〜60質量%、特に有利に5〜50質量%、
(d)充填剤、有利にナノ粒子状充填剤1〜30質量%、有利に3〜20質量%、特に有利に3〜15質量%、
(e)添加剤0.01〜5質量%、有利に0.01〜3質量%、特に有利に0.01〜2質量%、殊に有利に0.01〜1質量%および
(f)溶剤0〜70質量%、特に有利に0〜30質量%を含有し、この場合百分率は、そのつど100%になるまで添加される。
【0046】
本発明による歯科用接着剤は、好ましくは次のもの:
(a)式(I)による少なくとも1つの重合可能なカリックス[n]アレーン0.5〜50質量%、特に有利に1.0〜30質量%、
(b)少なくとも1つの開始剤0.01〜5質量%、特に有利に0.01〜2質量%、
(c)カチオン重合条件下および/またはラジカル重合条件下で重合しうる少なくとも1つの付加的なモノマーおよび/または開環によって重合しうる少なくとも1つのモノマー、特に好ましくは少なくとも1つの多官能価(メタ)アクリレート5〜70質量%、特に有利に5〜60質量%、
(d)充填剤0〜30質量%、特に有利に3〜20質量%、
(e)添加剤0.01〜5質量%、特に有利に0.01〜3質量%および
(f)溶剤0〜50質量%、特に有利に0〜20質量%を含有し、この場合百分率は、100%になるまで添加される。
【0047】
本発明を実施例によりさらに詳細に下記に説明する。
【実施例】
【0048】
例1:カリックス[6]アレーンテトラメタクリレートV−9の合成
【化7】


【0049】
ヘキサヒドロキシカリックス[6]アレーン9.6g(15mmol)およびシリコーン油中の60%NaH5.2g(130mmol)を、窒素用バルブを備えた250mlのフラスコ中で無水ジメチルホルムアミド80mlに添加し、周囲温度(AT)で5時間攪拌する。その後に、塩化オクタノイル5.2ml(30mmol)をこの懸濁液に徐々に添加し、付加的に36時間、周囲温度で攪拌する。その後に、塩化メタクリロイル5.8ml(60mmol)を徐々に添加し、さらに72時間攪拌する。この暗色に着色された懸濁液を水600mlに添加し、白色の固体の沈殿物を生じる。この沈殿物を濾別し、数回水で洗浄する。この生成物をトルエンおよびエタノールから再結晶させる。生成物のV−Pの収量は、8.1gである。この生成物のMALDI−TOF分析により、2個のオクタン酸基および2〜4個のメタクリレート基の置換パターンが生じた。
【0050】
例2:カリックス[6]アレーンドデカメタクリレートV−15の合成
【化8】


【0051】
p−第三ブチルカリックス[6]アレーン0.98g(1mmol)、第三ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.16g(1.8mmol)およびスパチュラ先端分のフェノチアジンをN−メチルピロリドン(NMP)15mlと混合し、50mlの丸底フラスコに入れる。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)4.3g(30mmol)を前記溶液に添加する。このバッチ量を120℃の温度で最大100ワットの出力で300分間、マイクロ波の場の中で攪拌する。得られた明褐色の溶液を水500mlから沈殿させ、濾過を実施し、最後に高真空下に乾燥を実施する。この生成物の収量は、1.5gである。この生成物のMALDI−TOF分析により、p−第三ブチルカリックス[6]アレーンとGMAとの1〜6回の反応による生成物の混合物を生じた。
【0052】
このカリックス[6]アレーン誘導体6gをCH2Cl2100ml中に溶解し、トリエチルアミン2.5g(25mmol)と混合し、20分間攪拌する。CH2Cl250ml中に溶解された塩化メタクリロイル3.1g(30mmol)を前記溶液に周囲温度で2時間、窒素雰囲気下に滴加する。その後に、この反応混合物をさらに4日間、攪拌する。次に、有機相を2回そのつど飽和NaHCO3溶液150mlで洗浄し、最後にH2O400mlで洗浄する。この有機相をNa2SO4で乾燥し、溶剤を除去する。生成物V−15の収量は、8.5gである。
【0053】
例3:p−プロピルオキシカリックス[4]アレーンニトロンV−10の合成
【化9】


【0054】
5,11,17,23−テトラホルミル−25,26,27,28−テトラプロポキシ−カリックス[4]アレーン(4.5mmol)およびN−メチルヒドロキシアミン塩酸塩(27mmol)をエタノール性NaOH60ml(27mmol)溶液中に懸濁させ、周囲温度でN2雰囲気下で攪拌する。完全な反応が達成された後(FTIR)、この反応は、終結する。その後に、溶剤をロータリーエバポレーター上で除去する。粗製生成物を水/クロロホルム(それぞれ100ml)と一緒に振盪させることによって抽出する。混濁した有機相を分離し、濾過し、その後に溶剤をロータリーエバポレーター上で除去する。この生成物を油ポンプ真空下で乾燥させる。最少量の不純物をメタノールを用いてのカラムクロマトグラフィーによって分離する。生成物V−10の収率は、約100%である。
【0055】
例4:例2からの重合可能なカリックス[6]アレーンV−15をベースとする複合セメントの製造
メタクリレート混合物(材料A、比較)をベースとする複合定着用セメントを、例2(材料B)からのカリックス[6]アレーンV−15を練り込みながら、下記の第1表の記載により"イクザクト(Exact)"ローラーミル(Exact Apparatebau社, Norderstedt在)を用いて製造した。試験に相応して、試料を前記材料から製造し、この試料を歯科用光源(Spectramat(登録商標), Ivoclar Vivadent AG)に2回3分間晒し、こうして硬化させた。曲げ強さおよび曲げE弾性率をISO標準ISO−4049(歯科用ポリマーをベースとする充填材料、修復材料および装着材料)により測定した。
【0056】
【表1】


【0057】
第2表から、材料Bは、材料A(純粋に常用のメタクリレート混合物をベースとする)と比較して少なくとも1つの比較可能な機械的性質を生じることが明らかになる。
【0058】
【表2】


【0059】
例5:例2からの重合可能なカリックス[6]アレーンV−15をベースとする充填用複合材の製造
メタクリレート混合物(材料C、比較)をベースとする充填用複合材を、例2(材料D)からのカリックス[6]アレーンV−15を練り込みながら、下記の第3表の記載によりLPM 0.1SPニーダー(Linden社, Marienheide在)を用いて製造した。試験試料を製造し、例3と同様に前記材料から硬化させた。曲げ強さ、曲げE弾性率および重合収縮率をISO標準ISO−4049により測定した。
【0060】
【表3】


【0061】
【表4】


【0062】
第4表から、材料Dは、材料C(純粋に常用のメタクリレート混合物をベースとする)と比較して比較可能な機械的性質と共に、著しく減少された重合収縮率を生じることが明らかになる。
【0063】
例6:例1からの重合可能なカリックス[6]アレーンV−9をベースとする充填用複合材の製造
メタクリレート混合物(材料E、比較)をベースとする充填用複合材を、例1(材料F)からのカリックス[6]アレーンV−9を練り込みながら、下記の第5表中の成分を用いてVPL 1.5ニーダー(Grieser社, Lampertheim在)を使用することにより製造した。標準の規定に適合する試験試料を製造し、前記材料から硬化させた。曲げ強さ、曲げE弾性率および重合収縮率または重合収縮応力をISO標準ISO−4049により測定した。
【0064】
【表5】


【0065】
【表6】


【0066】
第6表から、材料Fは、材料E(純粋に常用のメタクリレート混合物をベースとする)と比較して比較可能な機械的性質と共に、著しく減少された重合収縮率を生じることが明らかになる。
【0067】
例7:例3からの架橋可能なカリックス[6]アレーンV−10をベースとする充填用複合材の製造
メタクリレート混合物(材料E、比較)をベースとする充填用複合材を、例3(材料G)からのカリックス[4]アレーンV−10を練り込みながら、下記の第6表中の成分を用いてVPL 1.5ニーダー(Grieser社, Lampertheim在)を使用することにより製造した。標準の規定に適合する試験試料を製造し、前記材料から硬化させた。曲げ強さ、曲げE弾性率および重合収縮率または重合収縮応力をISO標準ISO−4049により測定した。
【0068】
【表7】


【0069】
【表8】


【0070】
第8表から、材料Gは、材料E(純粋に常用のメタクリレート混合物をベースとする)と比較して僅かに減少された機械的性質と共に、著しく減少された重合収縮率を生じることが明らかになる。
【出願人】 【識別番号】506255658
【氏名又は名称】イボクラー ビバデント アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstrasse 2, CH−9494 Schaan, Liechtenstein
【出願日】 平成19年8月29日(2007.8.29)
【代理人】 【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄

【識別番号】100094798
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 利臣

【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也

【識別番号】100110593
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 博司

【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘

【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康

【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト

【識別番号】230100044
【弁護士】
【氏名又は名称】ラインハルト・アインゼル


【公開番号】 特開2008−56675(P2008−56675A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−222584(P2007−222584)