| 【発明の名称】 |
低酸素応答促進剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】田中 廣壽
【氏名】竹鼻 健司
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| 【要約】 |
【課題】優れた低酸素応答促進活性を有する疾患治療/予防剤または食品を提供すること。
【構成】ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする低酸素応答促進剤、虚血性疾患治療剤/予防剤、高地生活低酸素起因障害治療剤、高地トレーニング補助剤、mTORを活性化剤、HIF-1α活性化剤又はVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)遺伝子及び/又はadrenomodullin(ADM)遺伝子発現誘導剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする低酸素応答促進剤。 【請求項2】 mTORを活性化する請求項1に記載の低酸素応答促進剤。 【請求項3】 HIF-1αを活性化する請求項1又は2記載の低酸素応答促進剤。 【請求項4】 Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)遺伝子及び/又はadrenomodullin(ADM)遺伝子を発現誘導する請求項1〜3のいずれか1項記載の低酸素応答促進剤。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載の低酸素応答促進剤を含有することを特徴とする虚血性疾患治療剤/予防剤。 【請求項6】 虚血性疾患が、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳溢血、糖尿病性血管障害、閉塞性動脈硬化症大腸炎、潰瘍、脊髄障害、視神経障害又は神経障害である請求項5記載の疾患治療/予防剤。 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか1項記載の低酸素応答促進剤を含有することを特徴とする免疫賦活剤。 【請求項8】 免疫が、腫瘍免疫、細菌感染免疫、寄生虫感染免疫及びウイルス感染免疫からなる群から選択される請求項7記載の免疫賦活剤。 【請求項9】 虚血性疾患治療剤または免疫賦活剤を調製するための請求項1〜4のいずれか1項記載の低酸素応答促進剤の使用。 【請求項10】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする高地生活低酸素起因障害治療剤。 【請求項11】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする高地トレーニング補助剤。 【請求項12】 (1)アミノ酸を含有しない培養液を用いて培養した培養細胞を準備する; (2)アミノ酸を含有する培養液を用いて培養した培養細胞を準備する; (3)被験物質を(1)及び(2)の培養細胞に添加する; (4)(1)及び(2)の培養細胞における正常酸素分圧下および低酸素分圧下でのVEGF遺伝子発現指標を測定し、同等以上のVEGF遺伝子発現指標が得られた被験物質を選択する、 各工程を含むことを特徴とする低酸素応答促進剤のスクリーニング方法。 【請求項13】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有し、高地トレーニング補助効果を記載したパッケージに包装されたアミノ酸含有薬剤又は食品。 【請求項14】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とするmTORを活性化剤。 【請求項15】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とするHIF-1α活性化剤。 【請求項16】 ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とするVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)遺伝子及び/又はadrenomodullin(ADM)遺伝子発現誘導剤。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、低酸素応答促進剤、及びこれを含有する医薬組成物に関し、特に医薬品および飲料品の形態で、或は飲食品に含まれた形態でこの薬剤を好適に使用することが出来る。 【背景技術】 【0002】 細胞は一般に低酸素下に曝されると、細胞内代謝や遺伝子発現の変化などを通じて低酸素に適応し、その障害に備える。こうした遺伝子発現の制御において中心を担うのがHIF-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)と呼ばれる転写因子であり、HIF-1αが効率的に活性化されることが、低酸素ストレス応答においてはきわめて重要である(非特許文献1)。酸素分圧が低下すると構成的に発現しているHIF-1αタンパク質の安定性が増し、細胞内のHIF-1αタンパク質量が増加する。核に移行したHIF-1αは、応答遺伝子群の低酸素応答領域に結合し、遺伝子発現を転写レベルで誘導する。HIF-1αタンパク質量の増加は安定性の増加だけでなく翻訳を促進することでも調節されており、そのシグナルカスケードの上流にはmTOR(mammalian target of rapamycin)が関与していると考えられている。例えばインスリン、PDGF(platelet-derived growth factor)、FGF(fibroblast growth factor)などの成長因子は酸素分圧低下に影響なく、HIF-1αのタンパク質分解をともなわないタンパク質量増加を誘導し(非特許文献2、非特許文献3)、その作用はmTOR活性化阻害薬であるラパマイシンによって抑制される。HIF-1αは赤血球産生を調節するエリスロポエチンの転写活性化因子として見出されてきたが、その後、血管内皮細胞増殖因子VEGF、エノラーゼ1、トランスフェリン、アルドラーゼAなどのプロモーター領域にHIF-1αの結合部位が見つかった(非特許文献4)。また、グルコーストランスポーターや解糖系代謝酵素などのエネルギー産生に関わる遺伝子群の発現制御にも関わることが知られている。ラパマイシンはmTORを阻害することにより、HIF-1αの活性化を抑制し、ある種の癌細胞で発現するVEGFなどの発現を抑制することにより、癌細胞への栄養補給を絶ち、抗腫瘍効果を示すことが報告されている(非特許文献5)。アミノ酸は蛋白質の基質となるだけでなく、シグナルとしてmTORを活性化することにより細胞内で蛋白質合成を促進することが広く知られている(非特許文献6など)。ところが、細胞レベルの実験においては、細胞培養液中のアミノ酸濃度を低下させ、mTORの活性が低下するような条件でVEGFの発現が上昇するという報告がなされている(非特許文献7)。一方で、アミノ酸などのmTORを活性化する低分子化合物が、細胞内のHIF-1αの活性化を介して、VEGFなどHIF-1αの標的遺伝子の発現を亢進するかどうかについては知られていない。 【0003】 生体において、動脈硬化や血栓などの原因により虚血状態に陥った臓器、組織において生理的な低酸素応答の結果として血管新生が認められ、虚血状態からの回避を図ろうとするが、一般的にはその効果は不十分なことが多く、何らかの薬剤を用いて血管新生を誘導することが虚血などの低酸素障害における治療法になると考えられている。例えば、VEGFなどの血管新生を誘導する蛋白質製剤による治療やVEGF、HIF-1αの遺伝子治療が検討されている(非特許文献8)。また、血管新生には、HIF-1αを調節した疾患治療法が求められてきている。例えばHIF-1αを高発現させることにより、VEGFやその他の種々の因子が反応して、VEGF単独の因子のみを作用する場合よりも多くの正常な血管系が形成されることが報告されている。このとき、血管新生因子を単独で直接投与した場合に見られる浮腫や炎症、潰瘍や腫瘍は発生せず、HIF-1αの活性化を上げることは生理的な血管新生を誘導できるとされている(非特許文献9)。 【0004】 平地生活をしてきた人が低酸素状態である高地生活を始めると、毛細血管の発達、赤血球の増加など低酸素環境における生理変化が起き、高地生活への適応現象が起こる。しかし、短期間で高地に上る、または海抜5000m以上の高地生活になると低酸素による様々な身体障害が現れる。高地の低酸素状態における身体障害を回避するには、高度順化や酸素を供給するなどの対策が採られているが、時間がかかることや酸素ボンベが必要であるなど画期的な解決策がない状況である。また、運動競技において競技者が高地トレーニングを行うことがしばしば見られるが、これは体の各組織への酸素供給量の増加を目的としたトレーニングである。平地においても高地の低酸素を類似する状態に生体を誘導できれば、高地トレーニングや高度順化と同様な効果が期待できると考えられる。 【0005】 上記のような虚血性疾患などの治療や、高地生活への適応、高地トレーニングの効果増強には、低酸素に応答し種々の遺伝子発現を調節するHIF-1αの活性を高めることが必要と考えられる。こうした状況の中で、経口投与が可能で、かつ安全性の高い薬剤により、内在性のHIF-1α遺伝子の活性を上昇させ、VEGFなどの産生を高めることができれば、医療上のメリットは大きいが、これまでに、そのような薬物は知られていない。 【0006】 【非特許文献1】Semenza GL. Hypoxia-inducible factor 1: oxygen homeostasis and disease pathophysiology.Trends Mol Med. 2001 Aug;7(8):345-50 【非特許文献2】Humar R, Kiefer FN, Berns H, Resink TJ, Battegay EJ. Hypoxia enhances vascular cell proliferation and angiogenesis in vitro via rapamycin (mTOR)-dependent signaling.FASEB J. 2002 Jun;16(8):771-80 【非特許文献3】Treins C, Giorgetti-Peraldi S, Murdaca J, Semenza GL, Van Obberghen E. Insulin stimulates hypoxia-inducible factor 1 through a phosphatidylinositol 3-kinase/target of rapamycin-dependent signaling pathway.J Biol Chem. 2002 Aug 2;277(31):27975-81. 【非特許文献4】Wenger RH, Gassmann M. Oxygen(es) and the hypoxia-inducible factor-1.Biol Chem. 1997 Jul;378(7):609-16 【非特許文献5】Nat Med. 2004 ;10(6):594-601 【非特許文献6】Biochem Biophys Res Commun. 2004 Jan 9;313(2):429-36 【非特許文献7】Earle KA, Pancholi S, Vernon P, Yudkin JS. Amino acid depletion modulates vascular endothelial growth factor production during the life span of human vascular smooth muscle cells. J Cell Physiol. 1998 Aug; 176(2): 359-64 【非特許文献8】Nature Reviews Drug Discovery 2, 863 -872 (2003), Curr Opin Mol Ther. 2004 Apr;6(2):151-9. 【非特許文献9】Elson DA, Thurston G, Huang LE, Ginzinger DG, McDonald DM, Johnson RS, Arbeit JM. Induction of hypervascularity without leakage or inflammation in transgenic mice over expressing hypoxia-inducible factor-1alpha. Genes Dev. 2001 Oct 1;15(19):2520-32 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、優れた低酸素応答促進活性を有する疾患治療/予防剤または食品を提供することを目的とする。 本発明は、又、虚血性疾患や貧血症の治療及び/または予防剤、及び/又は免疫賦活剤を提供することを目的とする。 本発明は、又、低酸素障害の予防/または治療に用いる医薬品又は食品の有効成分をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアミノ酸、望ましくは特定の分岐鎖アミノ酸が優れた低酸素応答の促進活性、特に転写因子HIF-1α活性化作用を有することを見出し、さらに低酸素応答遺伝子のひとつでありHIF-1αによって活性化されることの知られるVEGFやADMの遺伝子発現を誘導することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする低酸素応答促進剤を提供する。 本発明は、又、上記低酸素応答促進剤を含有することを特徴とする虚血性疾患の治療及び/または予防剤、及び/又は免疫賦活剤を提供する。 【0009】 本発明は、又、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とする高地生活低酸素起因障害治療剤又は高地トレーニング補助剤を提供する。。 本発明は、又、下記の各工程を含むことを特徴とする低酸素応答促進剤のスクリーニング方法を提供する。 (1)アミノ酸を含有しない培養液を用いて培養した培養細胞を準備する; (2)アミノ酸を含有する培養液を用いて培養した培養細胞を準備する; (3)被験物質を(1)及び(2)の培養細胞に添加する; (4)(1)及び(2)の培養細胞における正常酸素分圧下および低酸素分圧下でのVEGF遺伝子発現指標を測定し、同等以上のVEGF遺伝子発現指標が得られた被験物質を選択する。 本発明は、又、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有し、高地トレーニング補助効果を記載したパッケージに包装されたアミノ酸含有薬剤又は食品を提供する。 本発明は、又、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含有することを特徴とするmTORを活性化剤、HIF-1α活性化剤又はVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)遺伝子及び/又はadrenomodullin(ADM)遺伝子発現誘導剤を提供する。 【発明の効果】 【0010】 本発明の低酸素応答促進剤は、低酸素が原因となる虚血性疾患やその合併症を、低酸素応答の主要な制御因子であるHIF-1αの活性化を介して改善、緩和、回復することができる。また、本発明の薬剤を医薬品として使用できるが、食品として使用することもできる。従って、特に医薬品、食品等の分野において広く本発明を使用することができ、故に本発明はきわめて有用である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本発明の低酸素応答促進剤を含有する虚血性疾患治療剤及び/又は、貧血治療剤及び/又は、免疫賦活剤及び/又は、高地生活低酸素起因障害治療剤及び/又は、高地トレーニング補助剤、又は他の医薬組成物や食品組成物の場合、1製剤あたりではmTOR活性化剤、例えば、ロイシン、イソロイシン、バリンまたはそれらの混合物から選択されるアミノ酸、特にロイシンに代表されるアミノ酸などを、例えば、0.000001〜50g程度含有することが好ましい。より好ましくは、1〜10g程度含有するのがよい。ここで、上記アミノ酸として、L-体を用いるのが好ましい。本発明の疾患治療・予防用医薬品又は食品を使用する場合、経口投与、静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与することができるが、簡便性から経口投与が好ましい。投与量は投与する患者の症状、年齢、投与方法によって異なるが、通常0.1〜30g/kg/日である。 【0012】 本発明の治療・予防用医薬品又は食品は常法により製剤化することができる。製剤の形としては注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、クリーム剤、座剤などが挙げられ、製剤用担体としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、D-マンニトール、澱粉、結晶セルロース、炭酸カルシウム、カオリン、デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エタノール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アセチルセルロース、白糖、酸化チタン、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、メチルセルロース、卵黄、界面活性剤、白糖、単シロップ、クエン酸、蒸留水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、ブドウ糖、塩化ナトリウム、フェノール、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等があり、製剤の形に応じて、本発明の化合物と混合して使用される。また、必ずしも遊離アミノ酸として用いられる必要はなく、無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体などの形態で用いてもよい。また、2個以上のロイシンまたは他の分岐鎖アミノ酸、あるいはアミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で用いてもよい。ロイシンは、L-体、D-体、及びDL-体何れも使用可能であるが、天然に存在するという観点からL-体が望ましい。また、本発明の低酸素応答促進剤におけるアミノ酸は、服用に際しての体内のアミノ酸インバランスを回避する点から、ロイシン単独よりも、ロイシン、イソロイシン、バリンを適当な配合比で、例えば、ロイシン100質量部あたり、イソロイシンを10〜100質量部、バリンを10〜100質量部混合した分岐鎖アミノ酸が望ましい。本発明の低酸素応答促進剤は、アミノ酸単独であってもよいが、一般的な食品と共に含有していてもよい。 【0013】 上記本発明で使用する有効成分であるアミノ酸の投与量(摂取量)について算出する際、本発明で目的とする各種の疾患異常の治療、予防等の目的で使用される薬剤の有効成分として前記の算定範囲が決められているので、これとは別目的で、例えば通常の食生活の必要から、或は別の疾患の治療目的で、摂取または投与されるアミノ酸についてはこれを前記算定に含める必要はない。 例えば、通常の食生活から摂取される一日あたりのアミノ酸量を前記本発明における有効成分の一日あたりの投与量から控除して算定する必要はない。 次に、実施例により本発明をさらに詳細に述べる。なお、以下の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明をこれに限定するものではない。 【実施例】 【0014】 実施例1:ロイシン及びBCAAによるVEGF遺伝子の発現誘導 <細胞培養及びアミノ酸成分変更培地(RPMI-AA)> Cell LineはH4IIEを用い、10%牛胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン添加RPMI1640で継代培養を行った細胞を使用した。実験時に作用させる培地はRPMI1640をベースに全てのアミノ酸を除きグルコース濃度を4.5g/Lに調整した培地(以下PRMI-AAと記す)を用いた。PRMI-AA培地の調整は以下のように行った。予め4XInorganic Slats Soln.と100Xvitamin Soln.を以下のように調整して保存しておき、2段蒸留水にOther Componentと4X Inorganic Salts Soln.を最終濃度1Xになるように添加した。実験条件により、PRMI-AA培地に最終濃度800μMのロイシンを添加した培地を用いた。 【0015】 4XRPMI base Medium (glucose concentration :4.5g/l) AA作成 (components) Inorganic Salts 4X(500ml分) Ca(NO3)2・4H2O 200mg KCl 800mg MgSO4(anhyd.) 97.68mg NaCl 12g NaHCO3 4g Na2HPO4 (anhyd.) 1.6g (Other components) 2L分 D-glucose 9g Glutathione (reduced) 2mg HEPES 4.76g Phenol Red 10mg 【0016】 (vitamins) 100X(500ml) Biotin 10mg D-Ca Pantothenate 12.5mg Choline Chloride 150mg Folic Acid 50mg i-Inositol 1.75g Niaciamide 50mg Para-aminobenzoic acid 50mg Pyridoxine HCl 50mg Riboflavin 10mg Thiamine HCl 50mg Vitamine B12(100X) 2.5ml Total 500ml 【0017】 <細胞への作用> H4IIE細胞を10cm細胞培養シャーレに80%Confluentになるまで培養し、被検物質であるアミノ酸を添加する15時間前から無血清培地のRPMI1640培地で培養し、更にアミノ酸添加の2時間前よりアミノ酸不含RPMI-AA培地にて培養した。O時間に、ロイシン(800μM:図1)または、BCAA(最終濃度800μMロイシン、400μMイソロイシン、480μMバリン:図2)、またはBCAA以外の必須アミノ酸(リジン、ヒスチジン、アルギニン、トリプトファン、スレオニン、フェニルアラニン、メチオニンを各々の最終濃度が800μM:図3)を添加したRPMI-AA培地に培地交換し、2時間と8時間後に全RNAの抽出を行った。また、ラパマイシン(和光純薬工業)を添加する場合には、ロイシン含有のRPMI-AA培地に交換する30分前に最終濃度100μMとなるように培地中に添加した(図4)。全ての実験はN=4で行い、下記に示す方法によってVEGF遺伝子発現を検討した。 【0018】 <全RNAの精製> 10cm培養シャーレ1枚に対し、1mlのISOGEN(日本ジーン)を加え、ホモジナイズした。次に、200μlのクロロホルムを添加し、軽く攪拌した。室温に2分静置後、15000回転、4℃で10分間遠心し、水槽を回収した。水槽とそれと同等容量のイソプロパノールを加え、室温5分静値後、15000回転、4℃で10分間遠心した。上清を捨て、沈殿したペレットに70%エタノールを加え、 15000回転、4℃で10分間遠心し、ペレットを回収した。ペレットを室温で5分間乾燥させ、DEPC(ジエチルピロガネート)処理水を添加し、ペレットを溶解させた。 <テンプレートの合成> Taqman PCRに用いるテンプレートのcDNA合成はSuperScript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(GIBCO BRL社製)を使用し、実施した。全RNA 500ng、0.5μg/μl Oligo(dT)12-18 1μl、10mMdNTPmix1μlをDEPC処理水に溶解し、全量を10μlとした。65℃で5分間反応後、冷却し、10XRT Buffer 2μl、25mM MgCl2 4μl、0.1M DTT 2μl、RNase inhibitor 1μlを加えて混合した後、42℃、2分間保温し、逆転写酵素SUPERSCRIPT II RT 1μl (50units) を添加した。42℃、50分間、更に70℃、15分間反応させた。 <プライマーの設計> ヒトVEGF遺伝子、コントロールとしてハウスキーピング遺伝子であるヒトβアクチンについてプライマーを設計した。設計には下記に示す外部データベースPrimer3を用いた。 http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi 【0019】 表1にヒトVEGF遺伝子とヒトβアクチンの遺伝子のGenBank番号、遺伝子名、及びプライマー塩基配列を示す。
表1
【0020】 <Taqman PCR (CYBR Green法)反応> 表2に示す組成の反応液をTaqman用PCRチューブ内で混合し、ABI7700 Prism Sequence Dtector においてPCR反応を行った。反応条件は以下の通り行った。 反応条件:50℃2分→95℃10分→(95℃15秒→60℃1分)を40サイクル。 表2 PCR反応液組成(per tube) テンプレートcDNA(totel RNA 2.5ng相当) 0.1μl primer soln. (5'-プライマー) 1μl primer soln. (3'-プライマー) 1μl dH2O total 10μl 【0021】 <データ解析> Taqman PCR反応はそれぞれN=3で行い、その蛍光値からmRNA量のVEGF mRNAの相対量を求めた。その平均値と同サンプルで求めた内部標準コントロールのβアクチン遺伝子のmRNAの相対量との比を比較し、図1〜図4に示した。 <結果> VEGFの遺伝子発現はロイシンによって誘導され、8時間で約3倍にVEGFのmRNA量の増加が認められた(図1)。ロイシン、イソロイシン、バリンのアミノ酸配合においてもロイシン単独と同様な結果が得られた(図2)。ロイシンを含まないアミノ酸組成では、こうしたVEGF発現の上昇は認められなかった(図3)。また、ロイシンによるVEGF発現の上昇はmTOR阻害剤ラパマイシンの処理により阻害された(図4)。 本実施例により、ロイシンが細胞におけるVEGFのmRNAの発現を上昇させ、また、ロイシン、イソロイシン、バリンを含む配合アミノ酸(BCAA)にも同様な効果が得られることが明確である。また、この作用は、BCAAを除く他の必須アミノ酸には見られず、ロイシンまたはBCAAに特異的な作用であることが示された。更に、ロイシンによるVEGF mRNA量の増加はラパマイシンを作用させることで抑制され、ロイシンによるVEGF発現誘導がmTORの活性化を介した作用であると考えられた。このことから、ロイシンなどのmTORの活性化を引き起こす物質が、VEGFの遺伝子発現を上昇させることは明確である。 【0022】 蛋白質製剤としてのVEGFの投与やVEGF遺伝子の遺伝子治療により生体内でVEGFの産生を高める試みが、閉塞性動脈硬化症や心不全などの各種の虚血性疾患で試みられており、高い治療効果が得られているため(Nature Reviews Drug Discovery 2, 863 -872 (2003), Curr Opin Mol Ther. 2004 Apr;6(2):151-9.)、アミノ酸のように安全性が高く、経口吸収性の優れた薬剤により生体内で内在性のVEGFの発現を上昇することができれば、低酸素ストレス応答を促進させることにより、細胞死を防ぎ、エネルギー代謝を改善することによって、各種疾患に対する治療効果が得られることは明らかである。 【0023】 実施例2:アミノ酸による低酸素ストレス下におけるHIF-1α蛋白質量の増加 健常人ボランティアの血液中の末梢血単核球細胞(PBMC)よりT細胞を単離培養し、通常酸素濃度下及び低酸素濃度での培養において培地中のアミノ酸が及ぼす、HIF-1α蛋白質量及び、各種mRNAの発現量に及ぼす効果を検討した。PBMCはFicoll-Plaque Plus(アマシャムバイオサイエンス社)を用いた密度勾配遠心法にて単離し、10% heat-inactivated fetal calf serum(FCS)-RPMI1640培地に懸濁、37℃、1時間の培養によって接着細胞を除去した後に、ナイロンウールカラムにて、T細胞に富んだ細胞画分を得た。 種々の酸素濃度での培養は、J.Immunology, 171: 6534-6540(2003)に記載の方法で行い、T細胞刺激は6ウェル培養皿に2x106個/mlの濃度で調節したT細胞を各ウェル4ml加え、30分間静置した後、10nMのPMAあるいは、5ng/mlを抗CD3抗体(UCHT1、BD Pharmingen社)加えることにより行った。 【0024】 アミノ酸濃度とHIF-1αの発現を検討した実験において、1X培地の組成は100mg/L Ca(NO3)2・4H2O、400mg/L、48.84mg/L MgSO4、6000mg/L NaCl2、 800mg/L NaHPO4、2000mg/L D-Glucose、1mg/Lグルタチオン、にRPMI1640 100Xvitamine solution(Sigma Aldrich)を最終濃度1xに調整されるように加え、各アミノ酸を最終濃度0.40mM Glycine、0.40mM L-Alanine、0.40mM L-Serine、0.80mM L-Threonine、0.26mM L-Cystein 2HCL、0.20mM L-Methionine、8mM L-Glutamine、0.40mM L-Asparagine、0.40mM L-Glutamic Acid、0.80mM L-Aspartic Acid、0.80mM L-Valine、0.8mM L-leucine、0.80mM L-Isoleucine、0.80mM L-Phenylalanine、L-Tyrosine・2Na・2H2O 0.08mM L-Tryptophan、1.00mM L-Lysine-HCl、0.48mM L-Arginine-HCl、0.27mM L-Histidine HCl-H2O、0.4mM L-Prolineに加えたものである。この培地のアミノ酸濃度を1Xと定義し、1/2X、1/4X、2X、3X、4X培地を調整した。また、アミノ酸除去培地(-AA)は上記のすべてのアミノ酸を除いた培地である。BCAA除去培地(-BCAA)は上記の1X培地よりValine、Leucine、Isoleucineを、ロイシン除去培地(-LEU)は上記の1X培地よりLeucineを除いた培地である。実際の実験は、10% heat-inactivated fetal calf serum(FCS)、100 unit/mlペニシリンおよび100 μg/mlのストレプトマイシンを各培地に加えて行った。アミノ酸除去刺激はRPMI1640で2x106個/mlの濃度で培養したT細胞を回収し、遠心して上清を除去後、さらにPBSで1回洗浄し、各アミノ酸組成の異なる培地で調整した。 各種の条件で細胞を18時間培養後、全細胞抽出液を調整しHIF-1αに特異的抗体(Ab463:Abcam社)、リン酸化S6K特異的抗体、リン酸化eIF2α抗体、リン酸化Akt特異的抗体などの各種抗体(Cell Signaling Technology社)を用いてイムノブロットを行った。また、総RNA抽出液を調整しそれぞれのmRNAに特異的なプライマーを用いて、J.Immunology, 171: 6534-6540(2003)に記載の方法によりRT-PCR法で検出した。 【0025】 図5は低酸素濃度下におけるHIF-1α蛋白質の発現量に及ぼす培地中のアミノ酸濃度の影響を検討したものである。図5Aに示すように、通常酸素濃度から低酸素濃度下にすると、2時間後のHIF-1α蛋白質の増加が認められるが、この効果は培地中の全アミノ酸を除去すると失われた。このとき、アミノ酸によるシグナル伝達の下流に存在するS6K1のリン酸化は失われ、アミノ酸飢餓に応答するシグナル伝達の下流に存在するeIF2αのリン酸化が亢進した。さらに、培地中のアミノ酸濃度を様々に変化させると、アミノ酸濃度に依存してHIF-1αの蛋白質量の増加が認められた。このことから、HIF-1α蛋白質の発現にはアミノ酸が必須であることが分かる。 図6は、低酸素(1%酸素分圧)下に、全アミノ酸を含むRPMI1640培地中から、BCAAのみを除去した時(-BCAA)、2時間後のHIF-1α蛋白質量を検討したものである。BCAAのみの除去が、全アミノ酸除去と同等の効果を示したことから、HIF-1α蛋白質の発現には、アミノ酸の中でもBCAAがとりわけ重要あることが分かる。このときに、S6K1のリン酸化も低下したが、Aktのリン酸化には何の影響も与えなかった。 【0026】 図7は、低酸素(1%酸素分圧)下に、全アミノ酸を含むRPMI1640培地中から、ロイシンのみを除去した時(-LEU)、2時間後の細胞内のHIF-1α蛋白質量を検討したものである。BCAAのみの除去が、全アミノ酸除去と同等の効果を示したことから、HIF-1α蛋白質の発現には、アミノ酸の中でもBCAAが重要であり、さらにはロイシンが最も重要であることが分かる。また、このときに、低酸素処理後18時間にRNAを抽出し、各種mRNA量をRT-PCR法にて検討したところ、HIF-1αの標的遺伝子として知られるadrenomedullin(ADM)遺伝子の転写誘導が、ロイシン除去培地(-LEU)では損なわれていた。 本実施例により、ロイシン、或はロイシン、イソロイシン、バリンを含む配合アミノ酸(BCAA)が低酸素下における細胞でのHIF-1α蛋白質の発現に重要な役割を果たし、HIF-1αの標的遺伝子の発現調節を行うことは明確である。また、この作用は、BCAAを除く他のアミノ酸には見られず、ロイシンまたはBCAAに特異的な作用であることが示された。HIF-1αの標的遺伝子としては例えば、adrenomedullin(ADM)が上げられるが、ADMには強力な血管拡張作用と血圧降下作用が知られるため(Xitamula et a1:Biochem Biophys Res Commun 192,553-560,1993)、ロイシンがHIF-1αの発現増加とそれに引き続く、ADMの発現誘導を介して種々の虚血性疾患ならびに高血圧症の治療に有用であることは明確である。 【0027】 また、HIF-1αの活性化は、末梢組織における活性化T細胞の生存維持に極めて重要な役割を果たすと考えられる(J.Immunology, 171: 6534-6540(2003))。腫瘍免疫や細菌感染に対する免疫などの生体防御機能をT細胞が果たすためには、血管から組織に浸潤して、局所において一定期間にわたり生存することが必要と考えられる。このことから、ロイシン或は、BCAAが生体内でのT細胞機能、とりわけ組織局所における機能発揮に不可欠であることが明確である。したがって、ロイシン或は、BCAAは、HIF-1αの活性化を介して、T細胞免疫を賦活化し、腫瘍免疫、細菌感染免疫、寄生虫感染免疫、ウイルス感染免疫を高めることによって、種々の疾患ならびに病態を改善できる。 【図面の簡単な説明】 【0028】 【図1】VEGF発現におけるロイシンの影響を示す。 【図2】VEGF発現におけるBCAAの影響を示す。 【図3】VEGF発現におけるBCAAを抜いた必須アミノ酸の影響を示す。 【図4】ロイシン誘導VEGF発現におけるラパマイシンの影響を示す。 【図5】低酸素濃度下におけるHIF-1α蛋白質の発現量に及ぼす培地中のアミノ酸濃度の影響を示す。 【図6】低酸素(1%酸素分圧)下に、全アミノ酸を含むRPMI1640培地中から、BCAAのみを除去した時(-BCAA)、2時間後のHIF-1α蛋白質量を示す。 【図7】低酸素(1%酸素分圧)下に、全アミノ酸を含むRPMI1640培地中から、ロイシンのみを除去した時(-LEU)、2時間後の細胞内のHIF-1α蛋白質量を示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000024 【氏名又は名称】株式会社東京大学TLO 【識別番号】000000066 【氏名又は名称】味の素株式会社
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| 【出願日】 |
平成16年12月28日(2004.12.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082005 【弁理士】 【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100084009 【弁理士】 【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100084663 【弁理士】 【氏名又は名称】箱田 篤
【識別番号】100093300 【弁理士】 【氏名又は名称】浅井 賢治
【識別番号】100114007 【弁理士】 【氏名又は名称】平山 孝二
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| 【公開番号】 |
特開2008−56566(P2008−56566A) |
| 【公開日】 |
平成20年3月13日(2008.3.13) |
| 【出願番号】 |
特願2004−380680(P2004−380680) |
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