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【発明の名称】 ヒスタミン遊離抑制剤
【発明者】 【氏名】卯川 裕一

【氏名】高橋 徹成

【要約】 【課題】ヒスタミン遊離抑制効果に優れた安全性の高いヒスタミン遊離抑制剤を提供することである。

【構成】ハタケシメジ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤であり、前記ハタケシメジが、「亀山1号」を種菌とする人工栽培品であるのが好ましく、前記ハタケシメジ抽出物の活性成分が次の性質:
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハタケシメジ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤。
【請求項2】
前記ハタケシメジが「亀山1号」を種菌とする人工栽培品であることを特徴とする請求項1に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
【請求項3】
前記ハタケシメジ抽出物の活性成分が次の性質:
(イ)色と形態:黄褐色の粉末
(ロ)化学成分:糖含量10質量%〜80質量%、蛋白質含量5質量%〜50質量%
(ハ)溶解性:水溶性
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
【請求項4】
前記請求項1乃至3に記載のハタケシメジ抽出物がハタケシメジの子実体を水抽出して得られることを特徴とするヒスタミン遊離抑制剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品及び食品分野に於いて使用される新規なヒスタミン遊離抑制剤に関する。より詳細には、優れた生理活性を有し、しかも安全性の高いヒスタミン遊離抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息等のアレルギー疾患の大部分は、抗原が侵入して数分以内に発症する即時型アレルギーである。即時型アレルギーとは、好塩基球や肥満細胞上のIgE抗体への抗原の結合に続く、ヒスタミン等の炎症起因物質の連鎖的放出、遊離により惹起される上皮系組織の炎症反応である。
【0003】
即時型アレルギー症状に於けるかゆみ等の皮膚炎症、くしゃみや鼻水等の鼻炎等の症状軽減や予防を目的として、種々の薬剤が開発されてきた。それらの中で、炎症反応の直接的な原因となるヒスタミンの作用を抑える薬剤として、標的細胞上のレセプターへの結合を阻害する薬剤が多数見出されているが、効果が弱く、また、眠気、頭痛、倦怠感等の精神神経系の副作用も問題視されている。
【0004】
近年、より強い効果を期待して、ヒスタミンを放出、遊離する好塩基球や肥満細胞に直接的に働き、炎症を惹起するヒスタミン量を抑える作用を持つヒスタミン遊離抑制剤が開発されている(特許文献1参照)。しかしながら、これらのヒスタミン遊離抑制剤は、肝機能障害等の副作用の問題があり、安全性の高いヒスタミン遊離抑制剤が求められている。
【0005】
本発明のハタケシメジ抽出物は、食品由来の為、副作用がなく、安心して摂取できる利点がある。ハタケシメジの高収穫かつ効率的な人工栽培方法は、王子製紙株式会社森林資源研究所により既に確立されており、本法を用いてハタケシメジの「亀山1号」を種菌とする人工栽培品を安価に供給できるようになっている(特許文献2参照)。人工栽培品の担子菌の場合、培地成分や培養方法によって担子菌中の成分が大きく変わることが知られており、天然物品や栽培方法の違った人工栽培品と同様の生理活性効果が期待できるとは限らない。なお、ハタケシメジの「亀山1号」を種菌とする人工栽培品の抽出物にヒスタミン遊離抑制効果があることはこれまでに知られていない。
【特許文献1】特開2004−331618号公報
【特許文献2】特公平5−15404号公報
【特許文献3】特開平11−302191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ヒスタミン遊離抑制効果に優れた安全性の高いヒスタミン遊離抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)ハタケシメジ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤。
(2)前記ハタケシメジが「亀山1号」を種菌とする人工栽培品であることを特徴とする前記(1)に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
(3)前記ハタケシメジ抽出物の活性成分が次の性質:
(イ)色と形態:黄褐色の粉末
(ロ)化学成分:糖含量10質量%〜80質量%、蛋白質含量5質量%〜50質量%
(ハ)溶解性:水溶性
を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
(4)前記(1)乃至(3)に記載のハタケシメジ抽出物がハタケシメジの子実体を水抽出して得られることを特徴とするヒスタミン遊離抑制剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚炎や花粉症などのアレルギーに対する効果に優れ、かつ、人体に対して安全性の高いヒスタミン遊離抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のヒスタミン遊離抑制剤は、ハタケシメジ抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0010】
ハタケシメジ(Lyophyllum decastes(Fr.)Sing.)は、ハラタケ目キシメジ科シメジ属のキノコで、香りマツタケ味シメジと呼ばれ珍重されるホンシメジに最も近縁のキノコであり、ホンシメジと同様に歯ごたえが良く美味である。天然品は、庭先や畑などの比較的身近な場所に株状に発生する(今関六也、本郷次雄:原色日本菌類図鑑(1)、保育社、1987年)。また、免疫賦活作用による抗腫瘍効果も高いことが報告されている(特許文献3参照)。ハタケシメジの水抽出物がヒスタミン遊離抑制効果を有することは全く知られていない。
本発明で用いられるハタケシメジは、天然品または人工栽培品のいずれでもよい。ハタケシメジが人工栽培品である場合、種菌に特に制限はないが、特に「亀山1号」が好ましい。公知の方法により、「亀山1号」を種菌からハタケシメジを人工栽培できる(特許文献2参照)。
【0011】
ハタケシメジからの抽出は、ハタケシメジの子実体を生のまま、あるいは乾燥して粉砕後、水(熱水を含む)を用いて行われ、必要に応じて有機溶媒と水とを組み合わせて用いてもよい。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、n−ブタノール、酢酸エチル等が用いられる。加熱する場合は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでもよいが、抽出効率は加圧下で高温処理する方がよい。抽出時の圧力は、100〜350kPa、加熱温度は60〜260℃の範囲で実施可能である。抽出時間としては、10分〜24時間であるのが好ましい。抽出処理後のハタケシメジ抽出物は濃縮・乾燥工程を経て0.5%〜10%の抽出エキスとして得られる。抽出エキスの濃縮方法は加熱濃縮法、減圧濃縮法、エタノール沈殿による濃縮方法のいずれでもよい。また、濃縮された抽出エキスの乾燥は、風乾法、加熱乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法のいずれ、あるいはこれらの複数の組み合わせでもよい。このようにして得られるハタケシメジ抽出物は、次の性質を有する。
(イ)色と形態:黄褐色の粉末
(ロ)化学成分:糖含量10質量%〜80質量%、蛋白質含量5質量%〜50質量%
(ハ)溶解性:水溶性
【0012】
本発明のハタケシメジ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤は、そのまま使用してもよく、また賦形剤あるいはその他の健康食品、医薬品等の他成分と混合しても用いても良い。他成分と混合する場合には、ヒスタミン遊離抑制剤を30〜90質量%の割合で混合することが望ましい。
【0013】
本発明で得られるハタケシメジ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤は、医薬品、健康食品、ペット用食品、食品として提供することができる。医薬品として用いる場合には、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、液剤などの形態で提供することができる。健康食品として用いられる場合には、前述の散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、液剤などの形態のうち、医薬品と混同しない前提で使用が許可された形態で提供することができる。また、ペット用食品、食品として用いられる場合には、粉末、液体等の形態で提供することができ、また、例えば、顆粒(スープ)、ガム、キャンディ、ゼリー、錠菓、飲料等に含有させて用いることができる。投与方法としては、医薬品として用いられる場合には、経口投与、非経口投与(皮下注射、静脈内投与、筋肉内投与、鼻孔内投与または注入など)、吸入、経直腸投与、局所投与などが挙げられる。ヒトや動物に対する投与量(1回当たり)としては、一般に、体重1kg当り0.1〜200mgであるのが好ましく、更に10〜100mgであるのが好ましい。又、通常1日に1〜5回の範囲で投与することができる。ただし、適切な投与量は、患者の年令、体重、症状、投与経路などを考慮して、前記範囲内から決めることができる。
【実施例】
【0014】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、下記の実施例になんら制限されることはない。
【0015】
(実施例1)
<ハタケシメジの人工栽培>
バーク堆肥(中日本農産(株)社製):米ぬか:カニ殻を絶乾重量比 100:20:4の割合で混合した後、含水率を62%にした培養基を850ml容のポリプロピレン製栽培ビンに620g充填した。ビン内の培養基全体に空気を補給し、菌糸の生育を良好にするために、ビン開口部から底部まで直径2cmの大きさの穴をあけ、高圧殺菌釜(120℃、1時間)で殺菌した。培養基の温度を25℃以下に冷却した後、クリーンルーム内でハタケシメジ「亀山1号」を植菌した。
次いで、室温23℃、湿度80%(RH)に調整した室内で50日培養し、培養基に菌糸を充分に蔓延させた。さらに、菌掻きを行い、水分を補給した後、前記のバーク堆肥で開口部を1〜2cmの厚さになるように被覆した。被覆した培養ビンを室温21℃、湿度80%(RH)の室内で7日培養した。次に、菌糸が侵入していない表層部の被覆部を除去し、室温17℃、湿度95%(RH)、照度150ルックスの条件に調整した室内で栽培を継続し、種菌接種後75日の培養で1ビン当り120gの子実体を収穫した。
【0016】
<ハタケシメジ抽出物の製造>
前記のように収穫した人工栽培のハタケシメジの子実体500gを抽出釜に入れ、5Lのイオン交換水を加え、1時間加熱抽出し、固液分離後、濃縮した。濃縮後、抽出液を凍結乾燥することにより黄褐色の粉末状抽出エキスを得た。得られた抽出エキスの糖含有量は、44.6質量%であり、蛋白質含有量は、33.8質量%であった。
【0017】
<ヒスタミン遊離抑制試験>
(試験動物)
6週〜13週齢のウイスター系雄性ラット(日本チャールズリバー)を7日間以上馴化した後、使用した。 温度23±1℃、湿度55±1%、照明12時間/日(7時点灯、19時消灯)の環境下で飼育した。飼育中は、固型飼料MF(オリエンタル酵母工業製)と水道水を自由摂取させた。
【0018】
(ラット腹腔肥満細胞の単離)
エーテルにより麻酔させたラットの腹腔内にタイロード液(124mM NaCl、4mM KCl、10mM NaHCO、0.64mM NaHPO、1.6mM CaCl、1mM MgCl、5.5mM glucose、10mM HEPES、0.05% BSA)を1匹あたり15ml注入し、90秒間腹部をマッサージしてから腹腔浸出液を回収し、遠心分離により肥満細胞を単離した。得られた細胞はタイロード液で2回洗浄後、2.5×10個/ml/チューブとなるようにタイロード液に懸濁させ、細胞浮遊液とした。
【0019】
(ヒスタミン遊離抑制試験)
細胞浮遊液を24穴プレートに400μlずつ播種し、37℃で10分間プレインキュベートした。その後、タイロード液に適当濃度で溶解させた被験試料液50μlを加えて37℃で10分間放置した。 これに、脱顆粒誘発剤としてコンパウンド48/80(10μg/ml)50μlを加えて37℃で10分間反応させた(コンパウンド48/80の最終濃度は0.5μg/ml)。反応後、反応を止めるため氷水中に放置し、遠心分離(200×g、15分、4℃)した。上清中に遊離されたヒスタミン量を、市販のELISAキット(Oxford Biochemical Research社)を用いて定量した。測定された遊離ヒスタミン量から次式によりヒスタミン遊離抑制率を算出した。
【0020】
(1)ヒスタミン遊離率(%)=(細胞から遊離されるヒスタミン量)/(細胞内の全ヒスタミン量)×100
(2)ヒスタミン遊離抑制率(%)=〔1−(A−C)/(B−C)〕×100
A:肥満細胞ヒスタミン遊離抑制剤と刺激剤とを添加したときのヒスタミン遊離率
B:刺激剤を添加したときのヒスタミン遊離率
C:肥満細胞ヒスタミン遊離抑制剤および刺激剤の双方を添加しないときのヒスタミン遊離率
【0021】
ハタケシメジ抽出物には、ヒスタミン遊離抑制効果が認められ、その効果は濃度依存的であった。本実施例で得られたハタケシメジ抽出物の含有率とヒスタミン遊離抑制率との関係を図1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明で得られるハタケシメジ抽出物を含有したヒスタミン遊離抑制剤は、安全性が高く且つ優れた薬理活性を有しており、アトピー性皮膚炎に於けるかゆみや花粉症に於ける鼻炎症状の改善及び予防等に利用することができる。
また、工業的に大量に安価に製造することができ、同一の製品が安定して生産でき、保存性が良いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ハタケシメジ抽出物の含有率とヒスタミン遊離抑制率との関係を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子製紙株式会社
【識別番号】503306113
【氏名又は名称】王子木材緑化株式会社
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−37809(P2008−37809A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215168(P2006−215168)