| 【発明の名称】 |
アンギオテンシンI変換酵素阻害剤並びに血圧降下作用を有する食品素材および食品 |
| 【発明者】 |
【氏名】小澤 友裕
【氏名】原 耕三
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| 【要約】 |
【課題】未利用海洋資源としてのホタテ貝外套膜の有効な利用法を提供すること、および高血圧症の予防や改善に有用なアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を安全性の高い食品より安価に提供すること。
【構成】ホタテ貝外套膜またはその加工製品を蛋白質分解酵素により処理して得られる蛋白質分解物を含むアンギオテンシンI変換酵素阻害剤。この阻害剤を含有する食品素材および食品は血圧低下作用を有し、高血圧の予防、改善に利用できる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物を含むアンギオテンシンI変換酵素阻害剤。 【請求項2】 ホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物が、ホタテ貝外套膜またはホタテ貝外套膜を原料とする加工製品を蛋白質分解酵素で処理して得られるものである、請求項1記載の阻害剤。 【請求項3】 蛋白質分解酵素がペプシン、トリプシン、キモトリプシンおよびサーモライシンからなる群より選ばれる1種または2種以上の酵素である、請求項2記載の阻害剤。 【請求項4】 蛋白質分解酵素がサーモライシンまたはサーモライシンを含む2種以上の酵素である、請求項2記載の阻害剤。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの項記載のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を含む、血圧降下作用を有する食品素材。 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかの項記載のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を含む、高血圧症の予防または改善用の食品。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、アンギオテンシンI変換酵素阻害剤、並びにこの酵素阻害剤を含有する食品素材および食品に関する。この食品素材および食品はアンギオテンシンI変換酵素阻害活性により血圧降下作用を有し、高血圧の予防や改善に有用である。 【背景技術】 【0002】 ホタテ貝柱加工の際には中腸腺、生殖巣などの内臓と共に多量の外套膜が副産物として得られる。一部は珍味として用いられるものの、そのほとんどが廃棄されているのが現状であり、未利用海洋資源の有効利用の観点からホタテ貝外套膜の有効利用開発が求められている。 【0003】 一方、高血圧は我が国では三大生活習慣病に挙げられ、脳卒中、虚血性心疾患、動脈硬化のリスクファクターとして知られている。高血圧の発症にはレニン−アンギオテンシン系が関連しており、特にこの系中で、アンギノテンシンIがアンギオテンシンI変換酵素により、強い昇圧作用を有するアンギオテンシンIIに変換されることが重要な役割を果たしている。そこでこの酵素活性を阻害することにより血圧の上昇を抑制して血圧降下作用を示すアンギオテンシンI変換酵素阻害剤の開発が行われている。食品中にもアンギオテンシンI変換酵素の阻害物質が各種見出されているが、これまでホタテ貝外套膜由来のタンパク質分解物については検討されていない。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、ホタテ貝貝柱製造時に廃棄されていたホタテ貝外套膜を有効利用することである。また、本発明の別の目的は、高血圧症の予防や改善に有効なアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を安全性の確認された食品より安価に提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、ホタテ貝外套膜を有用利用するための検討を行った結果、ホタテ貝外套膜の蛋白質分解物について優れたアンギオテンシンI変換酵素阻害活性があることを初めて見出し、本発明の完成に至ったものである。 【0006】 即ち、本発明はホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物を含むアンギオテンシンI変換酵素阻害剤に関する。この阻害剤に用いるホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物は、ホタテ貝外套膜またはホタテ貝外套膜を原料とする加工製品を蛋白質分解酵素で処理して得られるものである。また、使用する蛋白質分解酵素はペプシン、トリプシン、キモトリプシンおよびサーモライシンからなる群より選ばれる1種または2種以上の酵素であるのが好ましい。 【0007】 本発明はさらに、上記のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を含む、血圧降下作用を有する食品素材、および上記アンギオテンシンI変換酵素阻害剤を含む、高血圧症の予防または改善用の食品も提供する。 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、ホタテ貝外套膜から低価格で大量にアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を提供できる。この阻害剤は食品由来であるため安全性が高く、副作用の問題はないので、そのままで、あるいは適宜添加剤や他の食品成分と混合したり、また通常の食品中に含有させて、血圧降下作用を有する食品素材や食品として利用できる。従って、高血圧症の予防、改善に有効な食品素材および食品を提供できる。また、本発明はこれまであまり利用されていなかったホタテ貝外套膜の有効な利用法を提供する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 本発明のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤は、ホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物を含む。この分解物は、ホタテ貝外套膜またはホタテ貝外套膜を原料とする加工製品を蛋白質分解酵素で処理して得られる。 【0010】 原料となるホタテ貝外套膜としては、ホタテ貝または貝柱を取り除いた後のホタテ貝から得られる外套膜、ボイル加工品から得られる外套膜、外套膜乾燥品およびその粉末状のもの等、ホタテ貝外套膜由来の蛋白質が含まれているものが使用できる。 【0011】 使用する蛋白質分解酵素は特に限定されないが、アンギオテンシンI変換酵素阻害活性の優れた蛋白質分解物が得られる点で、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンおよびサーモライシンからなる群より選ばれる1種または2種以上の酵素であるのが好ましく、サーモライシンまたはサーモライシンを含む2種以上の酵素であるのが特に好ましい。蛋白質分解酵素としては市販の製品を使用することができる。 【0012】 蛋白質分解酵素での処理は、水洗し脱水したホタテ貝外套膜に、脱イオン水などを加え、粉砕して得られた懸濁液に、蛋白質分解酵素を加え、使用する酵素の至適温度、至適pHに調整して反応を行わせる。例えば、ペプシンではpH1.2 、温度37℃、トリプシンではpH6.8 、温度37℃、キモトリプシンではpH6.8 、温度37℃、サーモライシンではpH7.5 温度70℃が適当である。酵素の添加量は、使用する酵素の力価などによっても異なるが、外套膜湿重量に対して0.5 〜3%、好ましくは0.5 %程度である。反応時間は、使用する酵素の種類、添加量、反応温度、pHなどにより変動するが、通常18〜30時間、好ましくは18〜24時間である。 【0013】 ホタテ貝外套膜を上記のような反応条件で、多少の残留物や砂は残るがほとんど外套膜由来の蛋白質が分解されて水に溶解するまで蛋白質分解処理する。酵素反応の停止は加熱により行うことができ、例えば98℃で15分間程度加熱する。サーモライシンではオートクレーブで110 ℃、15分間程度の加熱により酵素反応を停止するのが好ましい。 【0014】 酵素反応液はそのままでもアンギオテンシンI変換酵素阻害活性を有するので、それを使用することもできるが、遠心分離、濾過などの分離手段によりにより固形分を除去して得られる上清を用いてもよい。さらに、この蛋白質分解物溶液を噴霧乾燥や凍結乾燥法などの乾燥法により粉末状とすることもできる。 【0015】 上記のようにして得られるホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物は、以下の試験例で実証されるように、優れたアンギオテンシンI変換酵素阻害活性を有する。さらに高血圧自然発症ラットを用いたin vivo 薬理効果試験において血圧降下作用が確認された。 【0016】 本発明のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤は、上記のようにして得られたホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物を単独で、または適宜担体や添加剤と混合したものからなる。このアンギオテンシンI変換酵素阻害剤は、そのままで、あるいは各種賦形剤、食品添加物などを添加するか、または通常の食品中に含有させて、血圧低下作用を有する食品素材や食品として利用できる。例えば、高血圧の改善または予防のための機能性食品や健康食品などとして摂取することができる。 【0017】 本発明のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤の投与量は、ホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物として5〜500 mg/kg/日、好ましくは10〜300 mg/kg/日である。 本発明のアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を配合する食品や食品素材としては、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、緑茶などの嗜好飲料、ジュース、ミネラルウォーター、清涼飲料水などの飲料、ビスケット類、スナック菓子、米菓、チョコレート、ココア、チューインガム、キャンデー類、洋菓子類、和菓子類、中華饅頭、パン類、麺類、即席麺、水産練り製品、珍味、寒天、バター、チーズ、アイスクリーム、氷菓、マーガリン、ショートニング、ラード、惣菜、佃煮、スープ、冷凍食品、缶瓶食品、レトルト食品、マヨネーズ、ドレッシング、調味料などがある。 【0018】 以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。 【実施例1】 【0019】 水道水にて水洗し、脱水したホタテ貝外套膜100 gに脱イオン水1000mlを加え、次いでジューサーミキサーにて粉砕し懸濁液を得た。この懸濁液にペプシンを500mg 加え、37℃、pH1.2 に調整後18時間反応させた。98℃で10分間加熱することにより酵素反応を停止させた。酵素反応を停止した溶液を遠心分離(2700×g 、20分間)、濾過し上清を得た。この上清を、スプレードライヤーによる噴霧乾燥を行うことにより粉末状のホタテ貝外套膜蛋白質分解物を製造できる。 【実施例2】 【0020】 使用する蛋白質分解酵素および反応条件を以下のようにする以外は実施例1と同様の操作を行い粉末状のホタテ貝外套膜蛋白質分解物を得た。ただし、蛋白質分解酵素としてサーモライシンを使用した場合は、オートクレーブで110 ℃、15分間の加熱により反応を停止させた。 実施例2:トリプシン (pH6.8 、37℃、18時間) 実施例3:キモトリプシン (pH6.8 、37℃、18時間) 実施例4:トリプシン+キモトリプシン* (pH6.8 、37℃、18時間) 実施例5:サーモライシン (pH7.5 、70℃、18時間) 実施例6:ペプシン(pH1.2、37℃、6時間) ─→トリプシン**(pH6.8、37℃、18時間) 実施例7:ペプシン(pH1.2、37℃、6時間) ─→キモトリプシン**(pH6.8、37℃、18時間) 実施例8:ペプシン(pH1.2、37℃、6時間) ─→トリプシン+キモトリプシン**(pH6.8、37℃、18時間) 実施例9:サーモライシン(pH7.5、70℃、18時間) ─→ペプシン(pH1.2、37℃、6時間) →トリプシン*** (pH6.8、37℃、6時間) * トリプシンとキモトリプシンを混合して使用 ** ペプシン処理を施した後、ペプシンを失活させてから次の酵素を使用 *** サーモライシン処理を施した後、サーモライシンを失活させてからペプシン処理お よびトリプシン処理を施す 【0021】 (試験例1) 実施例1〜9で得られた上清(ホタテ貝外套膜蛋白質分解物溶液)について以下のようにしてアンギオテンシンI変換酵素阻害活性を測定した。 1.2 M NaCl 100μlに試料100 μlを添加した (対照としては脱イオン水100 μl添加) 。これに、10mUのアンギオテンシンI変換酵素を含む50mMホウ酸緩衝液 (pH8.3) 100μlを加え、37℃で10分間インキュベートした。10mMヒプリル-His-Leuを含む350 mMホウ酸緩衝液 (pH8.3) 100μlを加えて40分間反応させた。0.5N HCl 400μlを加えて反応を停止し、5分後に酢酸エチルを加えて生成する馬尿酸を抽出し、得られた溶液を濃縮乾燥した。乾燥後、1mlの脱イオン水にて溶解し、226nm における吸光度 (A226)を測定し、次式を用いてアンギオテンシンI変換酵素阻害率 (%) を算出した。 【0022】 阻害率 (%) = [1− (A−B) / (C−D)]×100 A:試料の吸光度 B:試料を先に酵素失活させた場合の吸光度 C:対照の吸光度 D:対照を予め酵素失活させた場合の吸光度 算出された阻害率から、50%のアンギオテンシンI変換酵素を阻害するときの検体の濃度 (IC50) を求めた。結果を表1に示す。 【0023】 【表1】
【0024】 表1に示す結果より、ホタテ貝外套膜蛋白質分解物がアンギオテンシンI変換酵素阻害活性を有することが確認された。 【0025】 (試験例2) in vivo における薬理薬効試験 (血圧降下試験) 実施例5で得られたサーモライシンによるホタテ貝外套膜蛋白質分解物を用いて以下のin vivo 試験を行った。 【0026】 9週齢の雄性高血圧自然発症ラット (SHR/HOSラット) にペントバルビタールナトリウム (30 mg/kg) を腹腔内投与して麻酔し、気管内チューブを挿管後、人工呼吸器に接続する。左頸動脈を剥離し、血圧を測定するためにカテーテルを挿入した。血行動態のパラメーターはポリグラフ上に記録する。手術後、少なくとも30分以上安定させた後、生理食塩水 (後に投与する被験物質の液量と同等の液量) を左大腿動脈より投与し、血圧に変化が起こらないことを確認した。次いで被験物質 (溶媒:生理食塩水) を左大腿静脈より投与し、血圧の変化を5分毎に1時間観察した。なお、群構成は表2の通りとした。 【0027】 【表2】
【0028】 結果を表3、表4および図1に示す。 【0029】 【表3】
【0030】 【表4】
【0031】 表3、4および図1に示す結果から、ホタテ貝外套膜蛋白質分解物は用量依存的にラットの血圧を低下させることが分かった。100mg/kgの投与量では収縮期血圧を約50%程度低下させ、拡張期血圧については約70%程度低下させる。 【0032】 このように本発明のホタテ貝外套膜蛋白質分解物は高血圧自然発症ラットの血圧を低下させることが確認された。 【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】SHR/HOS ラットを用いたホタテ貝外套膜蛋白質分解物の血圧降下作用を示すグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】391010460 【氏名又は名称】共成製薬株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年8月2日(2006.8.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081352 【弁理士】 【氏名又は名称】広瀬 章一
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| 【公開番号】 |
特開2008−37766(P2008−37766A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月21日(2008.2.21) |
| 【出願番号】 |
特願2006−211069(P2006−211069) |
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