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【発明の名称】 抗ウイルス剤
【発明者】 【氏名】村田 健臣

【氏名】左 一八

【氏名】碓氷 泰市

【氏名】鈴木 隆

【氏名】鈴木 康夫

【氏名】武田 聡

【氏名】山田 浩平

【氏名】野口 利忠

【要約】 【課題】ウイルスに対し、強い吸着阻害活性、感染阻害活性を有し、かつ安価に製造される抗ウイルス剤を提供する。

【構成】シアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチドのシアロ糖鎖部を改変した、シアリル−ポリN−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチド、シアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチドの骨格であるαポリグルタミン酸を天然物で安価なγポリグルタミン酸に変更し、かつリンカー部を変更したシアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチド、シアロ糖鎖部をシアリル−ポリN−アセチルラクトサミンに変換したシアリル−ポリN−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表され、γ−ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを有効成分とする抗ウイルス剤。
【化1】



(I)



(II)
(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Y及びYは水酸基又はN−アセチルノイラミン酸残基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素又はオリゴ糖、nは10以上の整数を示す。ただし、YとYは同一ではない。)
【請求項2】
Rで表されるオリゴ糖が、下記式(III)又は(IV)である、請求項1記載の抗ウイルス剤。
【化2】



(III)



(IV)
(式中、Lは炭化水素、X及びXは水酸基又はアセチルアミノ基を示す。ただし、XとXは同一であっても相違していてもよい)
【請求項3】
下記式(V)で表され、α−ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを有効成分とする抗ウイルス剤。
【化3】



(V)



(II´)
(式(V)中、Zは水酸基又は式(II´)で表されるシアロ糖鎖部であり、nは10以上の整数を示す。式(II´)中、Y及びYは水酸基又はN−アセチルノイラミン酸残基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、R’はオリゴ糖を示す。ただし、YとYは同一ではない。)
【請求項4】
R’で表されるオリゴ糖が、下記式(III)又は(IV)である、請求項3記載の抗ウイルス剤。
【化2】



(III)



(IV)
(式中、Lは炭化水素、X及びXは水酸基又はアセチルアミノ基を示す。ただし、XとXは同一であっても相違していてもよい)
【請求項5】
抗インフルエンザウイルス剤である、請求項1〜4いずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項6】
分子量が200〜500万である請求項1〜5いずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項7】
グルタミン酸単位重合度が10〜10,000である請求項1〜6いずれか1項に記載
の抗ウイルス剤。
【請求項8】
グルタミン酸残基に対するシアロ糖鎖の導入率が10〜80%である請求項1〜7いず
れか1項に記載抗ウイルス剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シアロ糖鎖含有ポリマーを有効成分として含有する抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、有効な治療法や感染防御法が見出されていない病原体の一つである。インフルエンザウイルスは、極めて感染性が強く、抗原変異を繰り返し、それまでの抗原性とは異なる新種が出現するため、ワクチンなどによる効果的な防御対策が立てにくい問題がある。
【0003】
最近では、トリインフルエンザウイルスを起源とした新たなヒトインフルエンザウイルスの発生が危惧されており、インフルエンザ予防・治療薬の開発が期待されている。
【0004】
インフルエンザウイルスの宿主細胞への感染は、ウイルス表面蛋白質であるヘマグルチニン(赤血球凝集素:HA)が細胞表面のシアル酸含有複合糖鎖を受容体として認識して結合することによると考えられている。たとえば、トリ類から単離したインフルエンザウイルスA型は末端にN−アセチルノイラミン酸α2,3ガラクトース(NeuAc(α2,3)Gal)を有する糖鎖に優先的に結合するが、このウイルスと非常に類似したヒトインフルエンザウイルスは末端のNeuAc(α2,6)Gal構造に高い結合親和性を示すことが報告されている。
【0005】
インフルエンザウイルスには変異により種々の亜型が存在するため、より有効な抗インフルエンザウイルス剤としてはウイルスの亜型に関係なく広く受容体の結合を阻害する抗インフルエンザウイルス剤の開発が望まれている。このような状況下、たとえば、シアル酸含有糖鎖(シアロ糖鎖)化合物が、インフルエンザウイルス感染の最初のステップであるウイルス受容体への結合を阻害する感染阻害剤として機能しうることが期待される。
【0006】
具体的には、赤血球凝集阻止活性を指標としたインフルエンザウイルスの付着阻止実験が種々のシアロ糖鎖化合物において行われたものの、ウイルスの付着阻止活性が低かったり、あるいはシアロ糖鎖化合物の合成法が複雑で実用的でないなどの理由から、シアロ糖鎖化合物を有効成分とするインフルエンザウイルスの感染阻害剤は未だに開発されていない(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0007】
その中で、小林らは、A型インフルエンザウイルスのレセプターであるシアリルラクトース(NeuAc(α2,6又はα2,3)Gal(β1,4)GlcNAc)は、インフルエンザウイルスに対する付着阻止効果は低いが、ポリスチレン誘導体にシアリルラクトースを結合させた高分子体が、インフルエンザウイルスと強い結合能を有することを見出した(特許文献4)。しかし、当該高分子体は、シアリルラクトースを乳から調製しなければならないといった製造上の問題があり、到底実用的な化合物と言えるものではなかった。
【0008】
また、戸谷らは、α−ポリグルタミン酸を骨格としてN−アセチルラクトサミンをαポリグルタミン酸の側鎖にp−アミノフェニル基をリンカーとして導入し、さらにオリゴ糖鎖の非還元末端にシアル酸を付与した、分子量2000〜100万のシアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチドを合成し、この化合物が広範囲なインフルエンザウイルス分離株に対し感染阻害活性を有することを見出した(特許文献5、非特許文献3)。
【0009】
【非特許文献1】Chemistry Letter,1259−1260(1999)
【非特許文献2】Glycoconj. J., 7,349−359(1990)
【非特許文献3】Glycobiology,13,315−326 (2003)
【特許文献1】特表2002−514186
【特許文献2】特表2003−535965
【特許文献3】WO2003/074570
【特許文献4】特開平10−310610
【特許文献5】特開2003-73397
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記シアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチドのインフルエンザウイルスに対する感染阻害活性は、必ずしも高いものとは言えず、また、ポリペプチドの原料であるαポリグルタミン酸やN-アセチルグルコサミン誘導体(P-ニトロフェニル配糖体)などが高価な上、製造法も煩雑であるという問題が指摘されていた。
【0011】
このため、インフルエンザウイルスに対し、吸着阻害活性、感染阻害活性などの強い抗ウイルス活性を有し、かつ安価な製造コストで製造されうる新規人工シアロ糖鎖ポリマーの開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、(1)戸谷らのシアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチドのシアロ糖鎖部を改変し、シアリル−ポリN−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチドとすることで、これまでの数十から数百倍のインフルエンザ感染阻害活性を有すること、(2)シアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工ポリペプチドの骨格であるαポリグルタミン酸を天然物で安価なγポリグルタミン酸に変更し、かつリンカー部を変更したシアリル−N−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチドが高いインフルエンザウイルス感染阻害活性を有すること、(3)そのシアロ糖鎖部をシアリル−ポリN−アセチルラクトサミンに変換したシアリル−ポリN−アセチルラクトサミン含有人工糖鎖ポリペプチドは、さらに高いインフルエンザウイルス感染阻害活性があること、及び(4)そのシアロ糖鎖部をシアリル−N−アセチルラクトサミンの還元末端とリンカー部の間にラクトースを導入したシアリル−N−アセチルラクトサミン−ラクトース含有人工糖鎖ポリペプチドにも高いインフルエンザウイルス感染阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。従って、本発明は以下の通りである。
【0013】
〔1〕式(I)で表され、γ−ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを有効成分とする抗ウイルス剤。
【化1】



(I)



(II)
(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖部であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Y及びYは水酸基又はN−アセチルノイラミン酸残基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素又はオリゴ糖を示す。ただし、YとYは同一ではない。)
【0014】
〔2〕Rで表されるオリゴ糖が、下記式(III)又は(IV)である、上記〔1〕記載の抗ウイルス剤。
【化2】



(III)



(IV)
(式中、Lは炭化水素、X及びXは水酸基又はアセチルアミノ基を示す。ただし、XとXは同一であっても相違していてもよい)
【0015】
〔3〕式(V)で表され、α−ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを有効成分とする抗ウイルス剤。
【化3】



(V)



(II´)
(式(V)中、Zは水酸基又は式(II´)で示されるシアロ糖鎖部であり、nは10以上の整数を示す。式(II´)中、Y及びYは水酸基又はN−アセチルノイラミン酸残基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、R’はオリゴ糖を示す。ただし、YとYは同一ではない。)
【0016】
〔4〕R’で表されるオリゴ糖が、下記式(III)又は(IV)である、上記〔3〕記載の抗ウイルス剤。
【化2】



(III)



(IV)
(式中、Lは炭化水素、X及びXは水酸基又はアセチルアミノ基を示す。ただし、XとXは同一でも相違していてもよい)
【0017】
〔5〕抗インフルエンザウイルス剤である、上記〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
〔6〕分子量が200〜500万である上記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
〔7〕グルタミン酸単位重合度が10〜10,000である上記〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載
の抗ウイルス剤。
〔8〕グルタミン酸残基に対するシアロ糖鎖の導入率が10〜80%である上記〔1〕〜〔7〕いずれか1項に記載抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来のシアロ糖鎖含有ポリペプチドのシアロ糖鎖部及びポリペプチド部のどちらか一部、もしくは両部を改変した化合物を有効成分とすることで、従来のシアロ糖鎖含有ポリペプチドの数十から数百倍のインフルエンザウイルス感染阻害活性を示す抗ウイルス剤を提供する。特に、本発明の有効成分の中で、γ−ポリグルタミン酸をポリペプチド部とするシアロ糖鎖含有ポリマーは、安価な原料から製造可能であり、安定な供給も可能である。
【0019】
このため、本発明の抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスの感染やインフルエンザの流行を防止する様々な手段・場所において適用可能である。具体的には、インフルエンザイウイルスの感染の予防・治療のための抗ウイルス剤としての点鼻薬、口腔スプレーなどへの適用はもとより、フィルターへ充填することによる空気中からのインフルエンザウイルス除去、マスクへ充填することによるウイルスの拡散防止や感染予防などにも利用でき、その適用範囲は極めて広い。
【0020】
さらに、糖鎖部の非還元末端のシアル酸の付与をα2,6型とすれば、ヒト感染型のインフルエンザウイルスに対する感染阻害のための抗ウイルス剤として利用でき、糖鎖部の非還元末端のシアル酸の付与をα2,3型とすれば、トリ感染型のインフルエンザウイルスに対する感染阻害のための抗ウイルス剤としての利用でき、また、α2,6型とα2,3型とを混合して使用することで、トリ感染型からヒト感染型への変異にも対応可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分は、下記(I)又は(V)で表されるシアロ糖鎖含有ポリマー化合物である。ただし式(I)及び(V)中、Zは、水酸基又は式(II)若しくは式(II´)で表されるシアロ糖鎖部であり、nは10以上の整数を示す。シアロ糖鎖含有ポリマー中、シアロ糖鎖置換グルタミン酸残基と未置換グルタミン酸残基とは、任意の比率で混在し、その比率は糖残基置換度(Degree of substitution(DS))で表す。
【0022】
【化1】



(I)



(II)
【化3】



(V)



(II´)
【0023】
式(I)又は式(V)中、Zは水酸基又は式(II)若しくは(II´)で表されるシアロ糖鎖部であり、Zが水酸基の場合は未置換グルタミン酸残基、式(II)若しくは式(II´)で表されるシアロ酸糖鎖部であればシアロ糖鎖置換グルタミン酸残基である。式(I)又は式(V)に示すように、ポリグルタミン酸ポリマー中のシアロ糖鎖置換グルタミンの数及び位置は特に限定されない。
【0024】
また、式(II)又は式(II´)中、Y及びYは水酸基又はN−アセチルノイラミン酸残基を示す。ただし、YとYは同一ではなく、一方が水酸基であれば、他方はN−アセチルノイラミン酸残基である。具体的に、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基であるα2,6型とすれば、ヒト感染型のインフルエンザウイルスに対する感染阻害のための抗ウイルス剤となり、Yが水酸基でYがN−アセチルノイラミン酸残基であるα2,3型とすれば、トリ感染型のインフルエンザウイルスに対する感染阻害のための抗ウイルス剤とすることができる。なお、N−アセチルノイラミン酸残基は、その水酸基、カルボキシル基およびアミド基が、同一または別異にハロゲン基、アルキル基、アシル基等で化学的に修飾されていてもかまわない。
【0025】
式中、Rで表される炭化水素としては、炭素数1〜20のものが好ましく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよく、具体的にはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル置換アルキル基等が挙げられる。
【0026】
ここで、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分枝鎖のものが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の分枝鎖アルキル基が挙げられる。
【0027】
アルケニル基の具体例としてはビニル基、プロペニル基、アリル基等が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜10のものが挙げられ、特に炭素数3〜8のもの、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が好ましい。
【0028】
アリール基としては炭素数6〜14のもの、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜14のアラルキル基、具体的にはベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。シクロアルキル置換アルキル基としてはC3−C8シクロアルキル置換C1−C10アルキル基、例えばシクロプロピルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0029】
また、当該炭化水素は置換基を有していても良く、そのような置換基としては、ヒドロキシル基、アジド基、シアノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基等が挙げられる。
【0030】
式中、R又はR’で表されるオリゴ糖としては、二糖〜六糖からなるオリゴ糖を指し、具体的には、下記式(III)又は(IV)で表されるものを例示することができる。
【化2】



(III)



(IV)
(式中、Lは炭化水素、X1及びX2は水酸基又はアセチルアミノ基を示す。ただし、X1とX2は同一であっても相違していてもよい)
【0031】
上記式(III)又は(IV)におけるX及びLは上記定義の通りであり、Lで表される炭化水素としては、Rの炭化水素と同じものを例示することができる。
【0032】
本発明の有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマーは、塩型、遊離酸型のいずれであってもよく、塩型としては、例えは、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等);有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)等が挙げられる。また、水和物あるいはアルコール等との溶媒和物であってもよい。
【0033】
また、本発明の有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマーの分子量は、例えば、2000〜500万の範囲であり、グルタミン酸単位重合度(n)は、例えば、10〜10000、好ましくは100〜6000の範囲であり、グルタミン酸残基に対するシアリルオリゴ糖の導入率である糖残基置換度(DS)は、10〜80%、好ましくは30〜70%の範囲である。
【0034】
このような本発明の有効成分の中で、好ましいものとしては、以下の条件にあてはまるものを挙げることができる。
(a)式(I)に属する化合物。
(b)式(I)に属する化合物で、Rがアミノアルキルである化合物。
(c)式(I)に属する化合物で、Rがアミノアルキルで、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基である化合物。
(d)式(I)に属する化合物で、Rがアミノアルキルで、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、Xがアセチルアミノである化合物。
【0035】
(e)式(I)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖である化合物。
(f)式(I)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基である化合物。
(g)式(I)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、X及びXがアセチルアミノである化合物。
(h)式(I)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、Xがアセチルアミノで、Xが水酸基である化合物。
【0036】
(i)式(I)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖である化合物。
(j)式(I)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基である化合物。
(k)式(I)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、X、X及びXがアセチルアミノである化合物。
(l)式(I)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、X及びXがアセチルアミノで、Xが水酸基である化合物。
【0037】
(m)式(V)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖である化合物。
(n)式(V)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基である化合物。
(o)式(V)に属する化合物で、Rが式(III)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、X及びX1がアセチルアミノである化合物。
【0038】
(p)式(V)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖である化合物。
(q)式(V)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基でYが水酸基である化合物。
(r)式(V)に属する化合物で、Rが式(IV)のオリゴ糖で、YがN−アセチルノイラミン酸残基で、Yが水酸基で、X、X及びXがアセチルアミノである化合物。
【0039】
本発明の有効成分として使用するシアロ糖鎖含有ポリマーは、アシアロ糖鎖を合成する工程1、アシアロ糖鎖とポリグルタミン酸を縮合する工程2、及びアシアロ糖鎖ポリマーのシアル化を行う工程3により調製することが可能である。工程1〜工程3について、以下、詳細に説明する。
【0040】
(工程1)アシアロ糖鎖の合成
工程1は、糖受容体(たとえは、糖−パラニトロフェノール、5−アミノアルキル化糖など)と糖供与体である糖ヌクレオチド(たとえば、ウリジン5’−ジリン酸ガラクトース、ウリジン5’−ジリン酸N−アセチルグルコサミンなど)を含有する反応系に合目的性な糖転移酵素(たとえば、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼなど)を添加して、目的とするアシアロ糖鎖部を合成する工程である。
【0041】
反応系に添加する糖転移酵素としては、目的とする酵素活性を有する限りどのような形態であってもよい。酵素調製の簡便さと共に調製効率を高めるため、該酵素遺伝子をクローン化し、微生物菌体内で大量発現させ、該酵素の大量調製を行う、いわゆるDNA組換え技術を用いた酵素生産により生産された酵素が最も都合がよい。
【0042】
酵素標品としては具体的には、微生物の菌体、該菌体の処理物または該処理物から得られる酵素調製物などを例示することができる。微生物の菌体の調製は、当該微生物が生育可能な培地を用い、常法により培養後、遠心分離等で集菌する方法で行うことができる。具体的に、大腸菌(Escherichia coli)に属する細菌を例に挙げ説明すれば、培地としてはブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%食塩)などを使用することができ、当該培地に種菌を接種後、30〜50℃で10〜50時間程度必要により撹拌しながら培養し、得られた培養液を遠心分離して微生物菌体を集菌することにより、目的の酵素活性を有する微生物菌体を調製することができる。
【0043】
微生物の菌体処理物としては、上記微生物菌体を機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理して得られる菌体の破壊物または菌体の細胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
【0044】
酵素調製物としては、上記菌体処理物から当該酵素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵素または精製酵素を例示することができる。
【0045】
反応に使用する糖ヌクレオチドおよび糖受容体は、それぞれ市販の製品を使用することができる。使用濃度としては1〜200mM、好ましくは5〜50mMの範囲から適宜設定できる。なお、糖受容体として5−アミノアルキル化糖を使用する場合には、後述実施例に示すように、セルラーゼの逆反応を利用して、糖類の水酸基をアルキルアミノ化することも可能である。
【0046】
アシアロ糖鎖の合成は、上記の糖受容体及び糖ヌクレオチドを含有する反応系に、糖転移酵素を0.001ユニット/ml以上、好ましくは、0.01〜10ユニット/ml程度になるようにそれぞれ添加し、5〜50℃、好ましくは10〜40℃で1〜100時間程度、必要により撹拌しながら反応させることにより実施できる。
【0047】
このようにして製造したアシアロ糖鎖は、オリゴ糖の通常の分離精製手段を用いればよく、例えば、逆相ODSカラムクロマトグラフィーやイオン交換カラムクロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることで単離精製できる。
【0048】
(工程2)アシアロ糖鎖とポリグルタミン酸の縮合
工程2は、工程1で合成したアシアロ糖鎖をポリグルタミン酸のカルボキシル基側鎖に化学的に縮合する工程である。
【0049】
工程1で、糖受容体としてp−ニトロフェニル基を有する糖受容体を使用した場合には、ニトロ基を還元してアミノ基へと変換後、糖受容体として5−アミノアルキル化糖を使用した場合には、アミノ基の保護基を常法により脱保護した後、トリエチルアミンやトリブチルアミンなどの塩基存在下、ポリグルタミン酸を縮合剤と処理して、アシアロ糖鎖含有ポリマーを製造する。
【0050】
p−ニトロフェニル基の還元反応に用いる条件としては、通常、芳香族ニトロ基の還元に適用する条件であればよく、具体例としては、水やメタノール、エタノールなどの有機溶媒中、水素あるいはギ酸アンモニウム、シクロヘキセンなどの水素供与剤存在下、パラジウム炭素と処理することで実施できる。
【0051】
原料ポリマーとして用いるポリグルタミン酸は、α−型、γ−型のいずれであってもよい。
【0052】
縮合工程は、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中で、原料ポリマーをトリエチルアミンやトリブチルアミンなどの塩基存在下、クロロギ酸p−ニトロフェニルやジスクシミジルカーボネート、カルボニルジイミダゾールなどのカルボキシル基の活性エステル化剤で処理した後、5−アミノアルキル化糖叉は上記還元反応の生成物と反応処理することで実施される。
【0053】
5−アミノアルキル化糖又は上記還元反応の生成物の使用量は、目的とするシアロ糖鎖含有ポリマーの糖置換率に応じて添加すればよく、通常、ポリグルタミン酸のグルタミン酸単位に対して0.1当量以上あればよい。また、縮合反応に用いる塩基の使用量は、ポリグルタミン酸のグルタミン酸単位に対して1当量以上あればよい。
【0054】
縮合反応は−10℃〜100℃で実施することができる。また、必要に応じて4−N,N−ジメチルアミノピリジンや1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールなどの一般的なアシル化反応の触媒を添加してもかまわない。
【0055】
合成されたアシアロ糖鎖含有ポリマーの精製は、通常、タンパクの精製に用いる方法で行えばよく、例えば、透析やゲルろ過などを適宜組み合わせることで単離精製することができる。
【0056】
(工程3)アシアロ糖鎖ポリマーのシアル化
工程3は、工程2で合成したアシアロ糖鎖ポリマーの糖鎖部の非還元末端を糖ヌクレオチドであるシチジン5’−モノリン酸N−アセチルノイラミン酸(CMP−NeuAc)を基質としてシアル酸転移酵素を用いてシアル化する工程である。
【0057】
シアル酸転移酵素としては、ヒト感染型のインフルエンザウイルスに対する感染阻害用ポリマーの製造のためにはα2,6−シアル酸転移酵素を、またトリ感染型のインフルエンザウイルス感染阻害用ポリマーの製造のためにはα2,3−シアル酸転移酵素を使用する。反応に使用するシアル酸転移酵素は、工程1と同様の方法で調製可能であり、また反応も工程1と同様の方法で実施できる。
【0058】
合成されたシアロ糖鎖含有ポリマーの精製は、通常、タンパクの精製に用いる方法で行えばよく、例えば、透析やゲルろ過などを適宜組み合わせることで単離精製することができる。なお、上記した工程以外にも、あらかじめシアロ糖鎖を合成し、シアロ糖鎖とポリグルタミン酸を縮合することによりシアロ糖鎖含有ポリマーを調製することも可能である。
【0059】
本発明の抗ウイルス剤は、ウイルス感染、ならびにウイルスの流行を防止する各種の手段に適用でき、例えば、医薬品はもとより、マスクや空気清浄機、エアコンなどのフィルターにおけるウイルス吸着剤としての利用もあげられる。
【0060】
対象となるウイルスとしては、インフルエンザウイルスが好適なウイルスであり、具体的には、高病原性A型トリインフルエンザウイルス、ヒトA型インフルエンザウイルスおよびヒトB型インフルエンザウイルス等が挙げられる。
【0061】
また、有効成分として用いるシアロ糖鎖含有ポリマーに対応し、インフルエンザウイルス以外の様々なウイルスにも適用可能である。そのようなウイルスとしては、例えば、パラミクソウイルス群、パラインフルエンザウイルス群、ロタウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、ポリオーマウイルス等が例示される。
【0062】
本発明の抗ウイルス剤を医薬品として利用する場合、特にその剤型に制限されるものではないが、点鼻用の液剤及びゲル剤、口腔スプレーなどのエアロゾルなどの鼻腔や咽頭に直接適用する点鼻適用製剤、あるいは軟膏剤、乳剤及びクリーム剤などの経皮吸収用製剤が好ましい剤型として例示され、それらは常法により調製することができる。
【0063】
たとえば、点鼻適用製剤としては、液剤、ゲル剤、懸濁剤、エアゾール剤等の剤形として用いることが好ましい。上記剤形を製造するための基剤成分について説明すると、液剤、ゲル剤、懸濁剤及びエアゾール剤を製造する場合の基剤成分としては、オクチルドデカノール等の高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル及びパルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;ポリソルベート80及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の懸濁化剤;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びヒアルロン酸ナトリウム等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素ナトリウム等のpH調節剤;リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤等が挙げられる。
【0064】
液剤、ゲル剤、懸濁剤及びエアゾール剤を製造する場合、本発明の有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマー及び水等の媒体を混合して製造するが、その配合割合に特に制限はなく、たとえば水(媒体)50〜99重量%、高級アルコール0〜25重量%、脂肪酸エステル0〜20重量%、懸濁化剤0〜5重量%、高分子化合物0〜10重量%、多価アルコール0〜30重量%、pH調節剤0〜10重量%、安定化剤0〜10重量%及び防腐剤0〜5重量%である。
【0065】
軟膏剤、乳剤及びクリーム剤を製造する場合の基剤成分としては、白色ワセリン、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン及びプラスチベース等の炭化水素;セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸及びオレイン酸等の高級脂肪酸;中鎖脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル及びパルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;ポリソルベート80及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びヒアルロン酸ナトリウム等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素ナトリウム等のpH調節剤;リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤等が挙げられる。
【0066】
軟膏剤、乳剤及びクリーム剤を製造する場合、本発明の有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマー及び水等の媒体を混合して製造するが、その配合割合に特に制限はなく、たとえば水(媒体)0〜80重量%、炭化水素0〜90重量%、高級アルコール0〜25重量%、高級脂肪酸0〜25重量%、脂肪酸エステル0〜20重量%、界面活性剤0.01〜10重量%、高分子化合物0〜10重量%、多価アルコール0〜30重量%、pH調節剤0〜10重量%、安定化剤0〜10重量%及び防腐剤0〜5重量%である。
【0067】
また、本発明の抗ウイルス剤をウイルスの拡散防止や感染予防のためにフィルターやマスクへ充填して利用する場合、たとえば、本発明の抗ウイルス剤をシートに担持させることにより実施することができる。
【0068】
用いられるシートとしては、合成繊維または天然繊維からなる不織布または織布で、材質としてはポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリプロピレン、レーヨン、木綿、木材パルプ等が挙げられる。特にメルトブローン不織布は繊維径を細くでき、ポアサイズを小さくできることから、マスクや空気清浄機用並びにエアコン用フィルターとして好ましい。また、シートに有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマーを担持させる方法は任意であるが、たとえば接着剤を用いて担持させる方法を採用することができる。
【実施例】
【0069】
つぎに、本発明の実施例(合成例、試験例、製剤例)について説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって、なんら制限されない。
【0070】
<材料調製法および分析方法>
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
サンプルはすべて0.45μlのフィルター濾過した後、分析した。分析条件は下記に示したものを用いた。
カラム :Mightysil Si60(φ4.6×250mm)
カラム温度 :40℃
流速 :1.0ml/min
検出波長 :210nm
溶媒 :90% CHCN
あるいは、
カラム :YMC Pro C18RS(φ6.0×150mm)
カラム温度 :40℃
流速 :1.0ml/min
検出波長 :300nm
溶媒 :20% MeOH−50mM TEAA
【0071】
(2)核磁気共鳴装置(NMR)
分析機器:JEOL EX−270 NMR spectrometer,
JEOL lamda 500FT NMR spectrometer
Bruker AV−500 NMR spectrometer
外部標準:TPS[sodium3−(trimethylsilyl)−propionate]
溶媒 :D
温度 :25℃あるいは60℃
サンプル管:φ3または5mm
【0072】
(3)酵素の調製
(3−1)β1,4−ガラクトース転移酵素(β1,4−GalT)の調製
β1,4−GalTの調製は、野口らの方法(特開2002−335988)に記載されている発現プラスミドpTGF−Aを用いて行った。pGTF−Aを保持する大腸菌JM109菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地50mlに植菌し、30℃で振とう培養した。4×10個/mlに達した時点で、培養液に最終濃度0.1mMになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で16時間振とう培養を続けた。培養終了後、遠心分離(9,000×g,20分)により菌体を回収し、5mlの緩衝液(10mMトリス塩酸(pH8.0)、1mM EDTA)に懸濁した。超音波処理を行って菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000×g、10分)により菌体残さを除去し、得られた上清画分を酵素液とした。酵素液におけるβ1,4−GalT活性は特開2005−335988号公報に記載されている方法で測定した。
【0073】
(3−2)Neisseria meningitidis β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素(β1,3−GlcNAcT)の調製
(3−2−1)β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素をコードするlgtA遺伝子のクローニング
【0074】
Neisseria meningitidis MC58の染色体DNA(ATCC BAA−335D)を鋳型として、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法によりNeisseria meningitidis lgtA遺伝子(EMBL/GENEBANK/DDBJ DATA BANKS、Accession No.AF536817)を増幅した。
【0075】
プライマー(A):5’−ttccatggcgtctgaagccttcagacggcatcg−3’
プライマー(B):5’−ttaagcttaacggtttttcagcaatcggtgcaaa−3’
【0076】
PCRによるlgtA遺伝子の増幅は、反応液50μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dATP、0.2mM dGTP、0.2mM dCTP、0.2mM dTTP、鋳型DNA 0.1μg、プライマーDNA(A)(B)各々0.2mM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ2.5ユニット(タカラバイオ社製)、DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(55℃、45秒)、伸長反応(72℃、2分30秒)のステップを30回繰り返すことにより行った。
【0077】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular cloning、(Maniatisら編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York(1982))の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.0kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素NcoI及びHindIIIで切断し、同じく制限酵素NcoI及びHindIIIで消化したプラスミドpTrc99A(現アマシャムバイオサイエンス社より入手)とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌(E.coli)JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−NMGnTを単離した。
【0078】
pTrc−NMGnTは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のNcoI−HindIII切断部位にNeisseria meningitidis lgtA構造遺伝子を含有するNcoI−HindIIIDNA断片が挿入されたものである。
【0079】
(3−2−2)β1,3−N−アセチルグルコサミン転移活性を有する酵素液の調製
プラスミドpTrc−NMGnTを保持する大腸菌K12株JM109を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2xYT培地50mlに植菌し、37℃で振とう培養した。2×10個/mlに達した時点で、培養液に最終濃度0.5mMになるようにIPTGを添加し、さらに20℃で20時間振とう培養を続けた。培養終了後、遠心分離(9,000×g,10分)により菌体を回収し、5mlの緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.5)、0.5M塩化ナトリウム、5mM2−メルカプとエタノール、10%(w/v)グリセロール、0.2%(v/v)TritonX−100を含む)に懸濁した。超音波処理を行って菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000×g、10分)により菌体残さを除去した。
【0080】
このように得られた上清画分を酵素液とし、酵素液におけるβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移活性を測定した結果を対照菌(pTrc99Aを保持する大腸菌K12株JM109)と共に下記表1に示す。なお、本発明におけるβ1,3−アセチルグルコサミン転移酵素活性の単位(ユニット)は、以下に示す方法でUDP−N−アセチルグルコサミンとラクトースからのラクトーN−トリオース(LNT−2)の合成活性を測定、算出したものである。
【0081】
N.meningitidis N−アセチルグルコサミン転移酵素活性の測定と単位の算出法;
10mM塩化マグネシウム、10mM塩化マンガン、20mMラクトース、UDP−N−アセチルグルコサミンを含有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素を添加して30℃で30分間反応させた。また、β1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素の代わりにpTrc99Aを保持する大腸JM109株の菌体破砕液を用い同様の反応を行い、これをコントロールとした。
【0082】
反応液に1/10容量の1M水酸化ナトリウムを添加することにより反応を停止し、これを希釈した後、Dionex DX−500装置による分析を行った。分離には日本ダイオネクス社製のCarboPacPA1カラムを用い、溶出液として脱イオン水、0.2M水酸化ナトリウム水溶液および1M酢酸ナトリウム水溶液を用いた。DX−500分析結果から反応液中のLNT−2量をラクトース換算で算出し,30℃で1分間に1μmoleのN−アセチルラクトサミンを合成する活性を1単位(ユニット)としてβ1,3−N−アセチルグルコサミン転移酵素活性を算出した。
【0083】
【表1】


【0084】
(3−3)ヒトβ1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(β3GnTII)の調製
文献(Protein Expr.Purif.,35,54−61(2004))に従って調製した。
【0085】
(3−4)シアル酸転移酵素
α2,3−シアリルトランスフェラーゼ(Rat,Recombinant,Spodoptera frugiperda)、α2,6−シアリルトランスフェラーゼ(Rat,Recombinant,Spodoptera frugiperda)は、Calbiochem社より購入した。
【0086】
(3−5)Trichoderma reesei由来セルラーゼの調製
Trichoderma reesei由来セルラーゼ(cellulase XL−522)は、ナガセケムテックスより購入し、以下に記載する部分精製後、使用に供した。
【0087】
T.reesei由来セルラーゼの粗酵素溶液(1000ml,875kU)を25%飽和硫安で処理後、高速微量遠心機(KUBOTA 1720;RA−200J ローター使用、KUBOTA製)を用いて4℃で遠心分離を行い(6010g×20min)上清を回収した。これを、75%飽和硫安で処理し、同様の条件で遠心分離後、生じた沈殿を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した。分画分子量30000の限外ろ過膜(PM−30,Millipore Corp.)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、7.8gの酵素粉末を得た。そのうち1.0gを10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶解し、予め同緩衝液で平衡化したDEAE−Sepharose Fast Flowカラムクロマトグラフィー(φ2.6×18cm)に供した。カラムを1000mlの同緩衝液で洗浄後、600mlの500mM NaClを含む同緩衝液でステップワイズ溶出を行った。カラム吸着部を限外ろ過により脱塩、濃縮後、凍結乾燥を行い、部分精製酵素(0.7g,0.7U/mg)を得た。
【0088】
さらに得られた部分精製酵素(50mg,Lacβ−pNP加水分解活性35U,Galβ−pNP加水分解活性19U)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0(1.0ml)に溶解し、予め同溶媒で平衡化しておいたGal−amidineアフィニティーカラムクロマトグラフィー(φ1.2×1.7cm)に供した。流速10ml/hにおいて各エッペンドルフチューブに1mlずつ分取して、非吸着部を50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0(30ml)で洗浄した。吸着部を1.0M NaClを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0(20ml)で溶出し、さらに0.5M methyl β−Galを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4.0(10ml)で溶出した。タンパク質の検出は280nmの吸光度を測定することで行い、Lacβ−pNPおよびGalβ−pNPの加水分解活性を測定した。それぞれの画分を分画分子量30000の限外ろ過膜(PM−30,Millipore Corp.)を用いて濃縮後、凍結乾燥を行い、非吸着部よりβ−D−ガラクトシダーゼを除去した部分精製酵素(Lacβ−pNP加水分解活性32U,Galβ−pNP加水分解活性0.3U)を得た。なお、以後の反応には全てβ−D−ガラクトシダーゼを除去した部分精製酵素を用いた。Lacβ−pNPおよびGalβ−pNPの加水分解活性を測定法は以下の通りである。
【0089】
(Lacβ−pNP加水分解活性)
T.reesei由来セルラーゼの酵素活性測定法はLacβ−pNPからのpNPの遊離量を定量して行った。10mM Lacβ−pNP(25μl)と50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0(70μl)とを混合し、適当量の酵素を加えて全量を100μlとし、40℃で20分間反応を行った。経時的に反応液から10μlとり、予め96穴マイクロプレートに分注しておいた1.0M炭酸ナトリウム溶液(190μl)と混合し、反応停止後、直ちにプレートリーダーを用い405nmにおける吸光度を測定し、遊離したpNPを定量した。酵素活性1Uは、1分間に1μmolのpNPを遊離させる酵素量と定義した。
【0090】
(Galβ−pNP加水分解活性)
T.reesei由来セルラーゼ中に夾雑するβ−D−ガラクトシダーゼ活性測定法はGalβ−pNPからのpNPの遊離量を定量して行った。10mM Galβ−pNP(25μl)と50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0(25μl)とを混合し、適当量の酵素を加えて全量を100μlとし、40℃で20分間反応を行った。経時的に反応液から10μlとり、予め96穴マイクロプレートに分注しておいた1.0M炭酸ナトリウム溶液(190μl)と混合し、反応停止後、直ちにプレートリーダーを用い405nmにおける吸光度を測定し、遊離したpNPを定量した。酵素活性1Uは、1分間に1μmolのpNPを遊離させる酵素量と定義した。
【0091】
(4)材料:反応基質および試薬
Lactose Monohydrate、5−amino−1−pentanolは、和光純薬(株)より購入した。γ−PGAは、明治製菓(株)より、糖ヌクレオチド(UDP−GlcNAc,UDP−Gal,CMP−NeuAc)はヤマサ醤油(株)より、LacNAcは焼津水産(株)より購入した。Trifluoroacetic Anhydride、MnCl・4HOは、和光純薬(株)より購入した。α−PGA、BOP、HOBt、およびBSAは、Sigma−Aldrich社より購入した。
【0092】
なお、使用材料の略語は以下の通りである。
UDP−GlcNAc:UDP−Glucose N−acetylglucosamine
UDP−Gal:UDP−Galactose
CMP−NeuAc:CMP−N−acetylneuraminic acid
pNP:p−nitrophenol
pAP:p−aminophenol
Lac:Lactose(Gal(β1,4)Glc)
LacNAc:N−acetyllactosamine(Gal(β1,4)GlcNAc)
NeuAc:N−acetylneuraminic acid
α−PGA:α−polyglutamic acids
γ−PGA:γ−polyglutamic acids
BOP:Benzotriazol−1−yloxytris−(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate
HOBt:1−Hydroxybenzotriazole hydrate
PBS:10 mM Phosphate buffered saline(pH7.4)
TPS:Sodium 3−(trimethylsilyl)−propionate
BSA:Bovine Serum Albumin
【0093】
(5)合成例
[合成例1]
3’−SialylLacNAc/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))、および6’−SialylLacNAc/α−PGA(Poly(NeuAc(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))の調製
【0094】
[1−1]3’−SialylLacNAc/α−PGAの調製
文献(Glycobiology,13,315−326(2003))の方法に従い、糖置換度40%、シアル化率97%の3’−SialylLacNAc/α−PGAを9.4mgの収量で得た。
【0095】
[1−2]6’−SialylLacNAc/α−PGAの調製
文献(Glycobiology,13,315−326(2003))の方法に従い、糖置換度40%、シアル化率90%の6’−SialylLacNAc/α−PGAを13.2mgの収量で得た。
【0096】
[合成例2]
3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))、および6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))の調製
【0097】
[2−1](LacNAc) β−pNPの調製
150mM Tris−HCl buffer(pH6.8,9.2ml)に受容体基質となるLacNAcβ−pNPを101mg(0.2mmol)、供与体基質としてUDP−GlcNAc,2Naを260mg(0.4mmol)、補因子としてMnCl・4HOを32mg(0.16mmol)溶解させ、防腐剤として1%(w/v)NaNを0.3ml加えた後、66mUのβ3GnTIIを添加して反応を行った。435時間後、GlcNAc転移が83%進んだところで反応液を5分間煮沸することにより反応を停止した。次に、反応液にUDP−Gal,2Naを238mg(0.4mmol)加え、β1,4−GalT400mUを添加してGal転移反応を行った。GlcNAc転移反応の時と同様に、反応をHPLCで追跡した。483時間後、HPLC上でGlcNAc(β1−3)LacNAc β−pNPのピークが消失したことを確認し、反応液を5分間煮沸することによって反応を停止した。
【0098】
反応液に150mMTris−HCl buffer(pH6.8)を10.7ml、1%(w/v)NaNを0.3ml加えた。そこにUDP−GlcNAc,2Na 130mg(0.2mmol)溶解し、最後にβ3GnTIIを472mU添加しGlcNAc転移反応を開始させた。反応をHPLCで追い、反応が進まなくなった556時間後、さらにβ3GnTII 472mUを添加した。再び反応が進まなくなった648時間後、反応液を10分間煮沸することによって反応を停止した。続いて、反応液にUDP−Gal,2Naを119mg(0.2mmol)加え、β1、4−GalT 400mUを添加してGal転移反応を行った。813時間後、GlcNAc(β1−3)(LacNAc) β−pNPのピークがほぼ消失したことを確認して、反応液を10分間煮沸することにより反応を停止した。
【0099】
次に、反応液を、あらかじめ25%MeOHで平衡化したToyopearl HW−40Sカラムに供した(φ6.0x100 cm;Flow rate, 1.0ml/ml;25%MeOH;Fraction size, 10ml/tube;Detection、260nm&300nm)。その結果、260nmおよび300nmの吸収を示す3つのピークが現れ、F−1(No.28−46),F−2(No.52−70),F−3(No.71−91),F−4(No.92−124)とした。ロータリーエバポレイターで濃縮、凍結乾燥後、H−NMRおよびHPLCで分析した。F−1は(LacNAc) β−pNP、F−2は(LacNAc) β−pNP、F−3はGlcNAc(β1−3)(LacNAc) β−pNPと(LacNAc) β−pNPをそれぞれ含んでいた。F−4は(LacNAc) β−pNPであり、収量30mgであった。
【0100】
[2−2](LacNAc) β−pAPの調製
O30mlに、上記(1)の方法で調製された(LacNAc) β−pNP 105mg(0.12mmol)、ギ酸アンモニウム210mg(3.3mmol)を完全に溶解させた。そこに10%Pd/Cを13.6mg添加し、ソニケーション(ULTRASONIC TRANSDUCER)を行ないながら反応させた。HPLCにより反応を追跡し、(LacNAc) β−pNPのピークが消失したことを確認した後、8,000×gで20分間遠心分離した。上清を回収し、残存するPd/Cを0.45μmのフィルターでさらに除去した。次に、この反応液をロータリーエバポレイターで濃縮(30℃)し、乾固させないようにHOで置換した。そして、あらかじめ100%MeOHで洗浄し、HOで平衡化したSep−pak C18カラム(φ2.5×5.5cm,Waters社)に供した。HOを流しながら、カラムを通過してきた液をときどきサンプリングし、ギ酸アンモニウムに由来する210nmの吸光度を測定した。ギ酸アンモニウムが溶出しきったことを確認後、溶媒を10%MeOHに換えて、p−アミノフェニル基に由来する300nmの吸光度を確認しながら、(LacNAc) β−pAPを溶出させた。溶出液はロータリーエバポレイターで濃縮(30℃)、HOに置換し、凍結乾燥し、(LacNAc)β−pAPを83.3mg得ることができた。
【0101】
[2−3](LacNAc)/α−PGA(Poly((LacNAc)β−pAP/α−PGA))の調製
α−PGA(MW:11,000)6.5mg、BOP74.5mg、HOBt8.4mgを500μlのDMSOに溶解後、最後に(LacNAc)β−pAP 52.5mgを溶解し、室温で一昼夜(20時間)攪拌しながら反応を行なった。反応終了後、1.4mlとなるようにPBSを加え、6,500×gで15分間遠心分離して上清を回収した。その後、沈殿を約500μlのPBSに懸濁し、再び遠心して上清を回収した。同様の操作を再度行った後、上清を合わせ、全量が2.5mlになるようにPBSを添加した。
【0102】
その後、あらかじめPBSで平衡化したPD−10(Sephadex G−25,Pharmacia社)に供し、3.5mlのPBSで(LacNAc)/α−PGAを溶出した。次に、この画分を、煮沸してグリセリンを除いたセルロースチューブに入れ、HOで6日間透析した。その間、HOの交換は5回行った。透析後、ロータリーエバポレイターで濃縮、凍結乾燥し、H−NMR構造解析を行った。糖残基置換度は、H−NMRより、糖鎖由来pAPのプロトンの積分比(a)と、ポリグルタミン酸のβ位とγ位のプロトンおよびGlcNAcのN−アセチル基由来メチルプロトンの積分比の和(b)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、糖置換度37%の(LacNAc)/α−PGAを収量20.3mgで得た。
【0103】
糖残基置換度(%)=((a/4)/((b−6a/4)/4))x100
【0104】
[2−4]3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)(LacNAc)β−pAP/α−PGA))の合成
上記[2−3]で合成した(LacNAc)/α−PGA 6.1mgとCMP−NeuAc・ナトリウム塩をそれぞれ終濃度8mM,16mMとなるように50mM MOPS buffer(pH7.4)に溶解した。そこに、MnCl、BSA、アルカリフォスファターゼをそれぞれ終濃度が2.5mM,1.0mg/ml,10U/mlになるように加え、最後に2,3−シアリルトランスフェラーゼを40mU/mlとなるように添加し、37℃で48時間反応を行った。この反応液を5分間煮沸し反応を停止させ、5,500×gで5分間遠心分離し、上清を回収した。
【0105】
次に、HOで沈殿を数回洗浄して上清をさらに回収し、全量を2.5mlとした。これを、あらかじめHOで平衡化したSephadex G−25Mカラム(PD−10)に対して2.5mlチャージし、3.5mlのHOで目的物を含む画分を溶出させた。この画分をHOに対し透析後、イオン交換樹脂であるDowex AG 50W−X8(Na form)カラムに供した。その後、濃縮、凍結乾燥を行い、H−NMRにより構造を確認した(図1)。シアリル化率は、H−NMRより、糖鎖由来のpAPのプロトンの積分比(a)、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルプロトンの積分比(c)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率が、94%の3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAを、5.5mgの収量で得た。
【0106】
なお、図中、シアロ糖鎖含有ポリマーの構造式は、ポリマー中の未置換グルタミン酸残基及びシアロ糖鎖置換グルタミン酸残基の構造のみを示しており、未置換グルタミン酸残基とシアロ糖鎖置換グルタミン酸残基の数及び位置は図に示すものに限定されない。また、図中の波線部分は未置換グルタミン酸残基とシアロ糖鎖置換グルタミン酸残基とが任意の比率で混在していることを意味している。以下、他の合成例で合成されたシアロ糖鎖含有ポリマーについても同様とする。
【0107】
シアリル化率(%)=((c/1)/(a/4))×100
【0108】
[2−5]6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(NeuAc(α2,6)(LacNAc) β−pAP/α−PGA)の合成
上記[2−3]で合成した(LacNAc)/α−PGA 6.0mgとCMP−NeuAc・ナトリウム塩をそれぞれ終濃度8mM,16mMとなるように50mM MOPS buffer(pH7.4)に溶解した。そこに、MnCl、BSA、アルカリフォスファターゼをそれぞれ終濃度が2.5mM,1.0mg/ml,10U/mlになるように加え、最後に2,6−シアリルトランスフェラーゼを50mU/mlとなるように添加し、37℃で48時間反応を行った。この反応液を上記[2−3]と同様の方法で処理し、その構造はH−NMRにより確認した(図2)。シアリル化率は、H−NMRより、糖鎖由来のpAPのプロトンの積分比(a)、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルプロトンの積分比(c)と3位アキシアルプロトンの積分比(d)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率が、100%の6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAを、6.3mgの収量で得た。
【0109】
シアリル化率 =(((c+d)/2)/(a/4))×100
【0110】
[合成例3]
3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))、および6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−p−aminophenyl/α−ポリグルタミン酸))の調製
【0111】
[3−1](LacNAc) β−pNPの調製
合成例2[2−1]のToyoperal HW−40Sカラムで回収された画分(F−3)をToyopearl HW−50Sカラムに供し、(LacNAc)β−pNPを含む画分を回収し、(LacNAc) β−pNPを88mg得ることができた。
[3−2](LacNAc) β−pAPの調製
O 55mlに、上記[3−1]の方法で調製した(LacNAc) β−pNP 180mg(0.15mmol)、ギ酸アンモニウム360mg(5.7mmol)を完全に溶解させた。そこに10%Pd/Cを23.4mg添加し、ソニケーション(ULTRASONIC TRANSDUCER)を行ないながら反応させた。HPLCにより反応を追跡し、(LacNAc) β−pNPのピークが消失したことを確認した後、8,000×gで20分間遠心分離した。上清を回収し、残存するPd/Cを0.45μmのフィルターでさらに除去した。次に、この反応液をロータリーエバポレイターで濃縮(30℃)し、乾固させないようにHOで置換した。そして、あらかじめ100%MeOHで洗浄し、HOで平衡化したSep−pak C18カラム(φ2.5×5.5cm,Waters社)に供した。HOを流しながら、カラムを通過してきた液をときどきサンプリングし、ギ酸アンモニウムに由来する210nmの吸光度を測定した。ギ酸アンモニウムが溶出しきったことを確認後、溶媒を20%MeOHに換えて、p−アミノフェニル基に由来する300nmの吸光度を確認しながら、(LacNAc)β−pAPを溶出させた。溶出液はロータリーエバポレイターで濃縮(30℃)、HOに置換し、凍結乾燥し、(LacNAc)β−pAPを152.3mg得ることができた。
【0112】
[3−3](LacNAc)/α−PGA(Poly((LacNAc)β−pAP/α−PGA))の調製
α−PGA(MW:11,000)5.2mg、BOP59.6mg、HOBt6.8mgを600μlのDMSOに溶解後、最後に(LacNAc) β−pAP 60.3mgを溶解し、室温で一昼夜(20時間)攪拌しながら反応を行なった。反応終了後、1.4mlとなるようにPBSを加え、6,500×gで15分間遠心分離して上清を回収した。その後、沈殿を約500μlのPBSに懸濁し、再び遠心して上清を回収した。同様の操作を再度行った後、上清を合わせ、全量が2.5mlになるようにPBSを添加した。
【0113】
あらかじめPBSで平衡化したPD−10(Sephadex G−25,Pharmacia社)に供し、3.5mlのPBSでPoly(LacNAc) β−pAP/α−PGA)を溶出した。次に、この画分を、煮沸してグリセリンを除いたセルロースチューブに入れ、HOで6日間透析した。その間、HOの交換は5回行った。透析後、ロータリーエバポレイターで濃縮、凍結乾燥し、H−NMR構造解析を行った。糖残基置換度は、H−NMRより、糖鎖由来pAPのプロトンの積分比(a)と、ポリグルタミン酸のβ位とγ位のプロトンおよびGlcNAcのN−アセチル基由来メチルプロトンの積分比の和(b)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、糖残基置換度36%の(LacNAc) /α−PGAを収量20.9mgで得た。
【0114】
糖残基置換度(%)=((a/4)/((b−9a/4)/4))x100
【0115】
[3−4]3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAの合成
上記[3−3]で合成した(LacNAc)/α−PGA 6.0mgとCMP−NeuAc・ナトリウム塩をそれぞれ終濃度8mM,16mMとなるように50mM MOPS buffer(pH7.4)に溶解した。そこに、MnCl、BSA、アルカリフォスファターゼをそれぞれ終濃度が2.5mM,1.0mg/ml,10U/mlになるように加え、最後に2,3−シアリルトランスフェラーゼを40mU/mlとなるように添加し、37℃で48時間反応を行った。この反応液を5分間煮沸し反応を停止させ、5,500×gで5分間遠心分離し、上清を回収した。
【0116】
次にHOで沈殿を数回洗浄して上清をさらに回収し、全量を2.5mlとした。これを、あらかじめHOで平衡化したSephadex G−25Mカラム(PD−10)に対して2.5mlチャージし、3.5mlのHOで目的物を含む画分を溶出させた。この画分をHOに対し透析後、イオン交換樹脂であるDowex AG 50W−X8(Na form)カラムに供した。その後、濃縮、凍結乾燥を行い、H−NMRにより構造を確認した(図3)。シアリル化率は、H−NMRより、糖鎖由来のpAPのプロトンの積分比(a)、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルプロトンの積分比(c)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率が、100%の3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAを6.0mgの収量で得た。
【0117】
シアリル化率(%)=((c/1)/(a/4))×100
【0118】
[3−5]6’−Sialyl(LacNAc)3 /α−PGA(Poly(NeuAc(α2,6)(LacNAc)β−pAP/α−PGA)の合成
上記[3−3]で合成した(LacNAc)/α−PGA 6.9mgとCMP−NeuAc・ナトリウム塩をそれぞれ終濃度8mM,16mMとなるように50mM MOPS buffer(pH7.4)に溶解した。そこに、MnCl、BSA、アルカリフォスファターゼをそれぞれ終濃度が2.5mM,1.0mg/ml,10U/mlになるように加え、最後に2,6−シアリルトランスフェラーゼを50mU/mlとなるように添加し、37℃で48時間反応を行った。この反応液を上記[3−3]と同様の方法で処理し、その構造はH−NMRにより確認した(図4)。シアリル化率は、H−NMRより、糖鎖由来のpAPのプロトンの積分比(a)、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルプロトンの積分比(c)と3位アキシアルプロトンの積分比(d)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率が100%の6’−Sialyl(LacNAc)3 /α−PGAを6.9mgの収量で得た。
【0119】
シアリル化率 =(((c+d)/2)/(a/4))×100
【0120】
[合成例4]
3’−SialylLacNAc/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−PGA))および6’−SialylLacNAc/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−PGA))の調製
【0121】
[4−1]5−Trifluoroacetamido−1−pentanolの化学合成
はじめに、5−amino−1−pentanol(10g,97mmol)をピリジン(20ml)を加えて溶解した。これを氷冷、攪拌し、そこへ無水トリフルオロ酢酸(25ml,180mmol)を滴下しながら添加し反応を開始した。反応開始から5分おきにTLC(展開溶媒 クロロホルム:アセトン=8:2)で、リンモリブデン酸発色を用い反応を確認した。1時間後、TLCで原料が消失したのを確認した後、クラッシュアイスを反応液と同量程度加えて反応を停止させ、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を200mlを加えて反応液を中和した。
【0122】
反応液を濃縮後、アセトンを適量加え再び濃縮を行った。この操作を3回程度繰り返したのち、反応液をアセトンで溶解し、多量に存在する炭酸水素ナトリウムを析出させた。これをろ過後、濃縮し、クロロホルム:アセトン=8:2で平衡化(10ml/min)したシリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ4.5×35cm)に供した。約25mlごとにカラムを通過してきた移動層をサンプリングした。溶出画分はTLC(展開溶媒 クロロホルム:アセトン=8:2)で、リンモリブデン酸発色を用い生成物を確認した。目的物を含む画分を濃縮し、目的物である5−Trifluoroacetamido−1−pentanolを収量18g、収率94%で得た。
【0123】
[4−2]5−Trifluoroacetamidopentyl β−N−acetyllactosaminideの合成
基質としてN−acetyllactosamine(20.0g,52.2mmol)と5−Trifluoroacetamido−1−pentanol(15.6g,78.4mmol)とを100mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4.0(52.2ml)に溶解し、そこへガラクトシダーゼを除去したT.reesei由来セルラーゼ(6200U)を加えて反応を開始した。反応を追跡するために反応液10μlを経時的に採取し、190μlの脱塩水を加えた後、100℃で10分間煮沸して反応を停止させ、0.45μmフィルターでろ過した後、HPLCにより分析した。反応液を激しく振とう(200rpm)し、40℃で144時間反応を行った。その後、100℃、10分間の煮沸により反応を停止した。
【0124】
反応液を濃縮後、水で平衡化(5.0ml/min)した活性炭−セライトクロマトグラフィー(φ4.5×100cm)に供した。まず、0%(5.0L)−25%(5.0L)のエタノール直線濃度勾配法により、基質として用いたLacNAcを溶出した。60ml/tubeずつ分取後、各フラクションをN−アセチル基に由来する210nmの吸光度で測定した。LacNAcを含む画分を濃縮することで、LacNAcを回収量17.2g、回収率86%で得た。次に80%エタノール(5.0L)に切り換え吸着部を溶出した。60ml/tubeずつ分取後、各フラクションを210nmの吸光度で測定した。続いて、目的画分を含む画分を濃縮し、クロロホルム:メタノール:水=7:3:0.5で平衡化(10ml/min)したSilica Gel 60N カラムクロマトグラフィー(φ4.5×50cm)に供し同溶媒で溶出し、28ml/tubeずつ分取してTLC(クロロホルム:メタノール:水=7:3:0.5)で分析した。目的画分を含む画分を濃縮し、5−Trifluoroacetamidopentyl β−N−acetyllactosaminideを収量322mg、収率1.1%で得た。
【0125】
[4−3]5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminideの合成
5−Trifluoroacetamidopentyl β−N−acetyllactosaminide(100mg,0.18mmol)に1.0M NaOH(1.2ml)を加えて溶解し、室温で反応を開始した。反応開始から30分おきにTLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)で、オルシノール硫酸発色とリンモリブデン酸発色とを用い反応を確認した。1時間後、TLCで原料が消失したのを確認したのち反応液を、水で平衡化(1.0ml/min)したSephadex G−25カラムクロマトグラフィー(φ2.5×55cm)に供した。約2.0mlごとにカラムを通過してきた移動層をサンプリングした。溶出画分はN−アセチル基に由来する210nmの吸光度と、TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)でリンモリブデン酸発色とを用い生成物を確認した。目的物を含む画分を濃縮し、目的物である5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminideを収量82mg、収率99%で得た。
【0126】
[4−4]Poly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)の合成
γ−PGA(MW:990000,15.0mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(1.3ml、pH10.0)に溶解後、予めDMSO(3.5ml)に溶解しておいたBOP(119mg)、HOBt(15mg)を加えスターラーで攪拌した。最後に5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide(140mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(0.9ml、pH10.0)に溶解後、攪拌しながら室温で24時間反応を行った。反応終了後、反応液が7.5mlになるようにPBSを添加した。その後、PD−10カラム1本あたり2.5mlの反応液をPBSで平衡化したPD−10(φ1.7×5.0cm,Sephadex G−25)カラムに供し、3.5mlのPBSでPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)を溶出した。
【0127】
次に、この画分を2.5Lの超純水に対して3日間透析した。その間、超純水の交換を6回行った。透析後、濃縮し、凍結乾燥した。糖残基置換度(%)の計算はH−NMRより、γ−PGAのβおよびγ位プロトンとN−アセチル基の積分比(A)と5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminideのアグリコン部位のプロトン6個分の積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、糖残基置換度43%のPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)を収量20.7mgで得た。
【0128】
糖残基置換度(%)=(4×100)/(A−(B/6x3))
【0129】
[4−5]3’−SialylLacNAc/γ−PGAの合成
受容体基質としてPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)[43%, 2200kDa] 5.2mgをLacNAc−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼ(Boehringer Mannheim社)および40mU/mlのα2,3−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例2の「2−4」と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminideのアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の3’−SialylLacNAc/γ−PGAを収量6.2mgで得た(図5)。
【0130】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0131】
[4−6]6’−SialylLacNAc/γ−PGAの合成
受容体基質としてPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)[43 %, 2200 kDa] 5.7mgをLacNAc−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼおよび40mU/mlのα2,6−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例2の[2−5]と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminideのアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の6’−SialylLacNAc/γ−PGAを収量6.8mgで得た(図6)。
【0132】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0133】
[合成例5]
3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−ポリグルタミン酸))、および6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−ポリグルタミン酸))の調製
【0134】
[5−1]5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)の合成
150mM Tris−HCl buffer(pH6.8,44.6ml)に合成例4の「4−2」で調製した5−Trifluoroacetamidopentyl β−N−acetyllactosaminideを300mg(0.53mmol)、供与体基質としてUDP−GlcNAc・2Naを692mg(1.06mmol)、補因子としてMnCl・4HOを84.1mg(0.42mmol)溶解させ、防腐剤として1%(w/v)NaNを0.53ml加えた後、7.9ml(600mU)の精製β3GnTIIを添加して37℃で反応を行った。97時間後、GlcNAc転移が100%進んだところで反応液を5分間煮沸することにより反応を停止した。
【0135】
次に、反応液にUDP−Gal・2Naを671mg(1.10mmol)加え、β4GalTI300μl(6000mU)を添加してGal転移反応を行った。162時間後、反応液を5分間煮沸することにより反応を停止した。反応液を濃縮後、10% MeOHで平衡化(1.5ml/min)したODSカラムクロマトグラフィー(φ2.5×50cm)に供した。22ml/tubeずつ分取後、各フラクションを210nmの吸光度で測定した。原料等が完全に溶出しきった後、溶媒を20%MeOHに切り替えて目的画分を含む画分を濃縮し、5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)を収量355mg、収率72%で得た。
【0136】
[5−2]5−aminopentyl β−(LacNAc)の合成
5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)(154mg,0.17mmol)に1.0M NaOH(1.0ml)を加えて溶解し、室温で1時間反応した。TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)で、オルシノール硫酸発色とリンモリブデン酸発色とを用い、原料が消失したのを確認したのち反応液を、水で平衡化(0.5ml/min)したSephadex G−25カラムクロマトグラフィー(φ2.5×55cm)に供した。溶出画分はN−アセチル基に由来する210nmの吸光度と、TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)でリンモリブデン酸発色とを用い生成物を確認した。目的物を含む画分を濃縮し、目的物である5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)を収量136mg、収率98%で得た。
【0137】
[5−3]Poly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)の合成
γ−PGA(M.W.:990000,15.0mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(2.0ml、pH10.0)に溶解後、予めDMSO(5.5ml)に溶解しておいたBOP(118mg)、HOBt(15mg)を加えスターラーで攪拌した。最後に5−aminopentyl β−(LacNAc)(83mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(1.0ml、pH10.0)に溶解後、添加し、攪拌しながら室温で24時間反応を行った。反応終了後、反応液が10.0mlになるようにPBSを添加した。
【0138】
その後、PD−10カラム1本あたり2.5mlの反応液をPBSで平衡化したPD−10(φ1.7×5.0cm,Sephadex G−25)カラムに供し、3.5mlのPBSでPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)を溶出した。次にこの画分を2.5Lの超純水に対して3日間透析した。その間、超純水の交換を6回行った。透析後、濃縮し、凍結乾燥した。糖残基置換度(%)の計算はH−NMRより、γ−PGAのβおよびγ位プロトンとN−アセチル基の積分比(A)と5−aminopentyl β−(LacNAc)のアグリコン部位のプロトン6個分の積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、糖残基置換度48%のPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)を収量31.8mgで得た。
【0139】
糖残基置換度(%)=(4×100)/(A−(B/6x6))
【0140】
[5−4]3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAの合成
上記「5−3」のPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)[48%, 3500kDa] 5.8mgを(LacNAc)−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼおよび40mU/mlのα2,3−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例2の[2−4]と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−(LacNAc)のアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを収量6.6mgで得た(図7)。
【0141】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0142】
[5−5]6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAの合成
前記「5−3」のPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)[48%, 3500kDa] 5.9mgを(LacNAc)−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼおよび40mU/mlのα2,6−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例2の[2−5]と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−(LacNAc)のアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを収量6.5mgで得た(図8)。
【0143】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0144】
[合成例6]
3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−ポリグルタミン酸))および6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc β−5−aminopentyl/γ−ポリグルタミン酸))の調製
【0145】
[6−1]5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)の合成
150mM Tris−HCl buffer(pH6.8,8.8ml)に合成例5の(1)の方法で調製した5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)を197mg(0.21mmol)、供与体基質としてUDP−GlcNAc・2Naを276mg(0.42mmol)、補因子としてMnCl・4HOを33.6mg(0.17mmol)溶解させ、防腐剤として1%(w/v)NaNを0.21ml加えた後、12.2ml(345mU)の精製β3GnTIIを添加して37℃で反応を行った。48時間後、GlcNAc転移が100%進んだところで反応液を5分間煮沸することにより反応を停止した。次に、反応液にUDP−Gal・2Naを259mg(0.42mmol)加え、β4GalTI 200μl(2000mU)を添加してGal転移反応を行った。288時間後、Gal転移が100%進んだところで反応液を5分間煮沸することにより反応を停止した。反応液を濃縮後、10%MeOHで平衡化(1.5ml/min)したODSカラムクロマトグラフィー(φ3.5×60cm)に供した。原料等が完全に溶出しきった後、溶媒を20%MeOHに切り替えて目的物質を含む画分を濃縮し、5−Trifluoroacetamidopentyl β−(LacNAc)を収量232mg、収率85%で得た。
【0146】
[6−2]5−aminopentylβ−(LacNAc)の合成
5−Trifluoroacetamidopentylβ−(LacNAc)(197mg,0.15mmol)に1.0M NaOH(1.3ml)を加えて溶解し、室温で1時間反応した。TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)で、オルシノール硫酸発色とリンモリブデン酸発色とを用い反応を確認し、原料が消失したのを確認したのち反応液を、水で平衡化(1.0ml/min)したSephadex G−25カラムクロマトグラフィー(φ2.5×55cm)に供した。溶出画分はN−アセチル基に由来する210nmの吸光度と、TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=6:4:1)でリンモリブデン酸発色とを用い生成物を確認した。目的物を含む画分を濃縮し、目的物である5−aminopentyl β−(LacNAc)を収量145mg、収率81%で得た。
【0147】
[6−3]Poly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)の合成
γ−PGA(MW:990,000、15.0mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(2.0ml、pH10.0)に溶解後、予めDMSO(5.5ml)に溶解しておいたBOP(118mg)、HOBt(15mg)を加えスターラーで攪拌した。最後に5−aminopentyl β−(LAcNAc)(119mg)を100mM NaCO/NaHCO水溶液(1.0ml、pH10.0)に溶解後、攪拌しながら室温で24時間反応を行った。反応終了後、反応液が10.0mlになるようにPBSを添加した。その後、PD−10カラム1本あたり2.5mlの反応液をPBSで平衡化したPD−10(φ1.7×5.0cm,Sephadex G−25)カラムに供し、3.5mlのPBSでPoly(5−aminopentyl β−N−acetyllactosaminide/γ−PGA)を溶出した。次にこの画分を2.5Lの超純水に対して3日間透析した。その間、超純水の交換を6回行った。透析後、濃縮し、凍結乾燥した。糖残基置換度(%)の計算はH−NMRより、γ−PGAのβおよびγ位プロトンとN−アセチル基の積分比(A)と5−aminopentyl β−(LAcNAc)のアグリコン部位のプロトン6個分の積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、糖残基置換度44%のPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)を収量38.6mgで得た。
【0148】
糖残基置換度(%)=(4×100)/(A−(B/6x9))
【0149】
[6−4]3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAの合成
受容体基質として上記[6−3]で合成したPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)[44%, 4300kDa] 5.6mgを(LacNAc)−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼおよび40mU/mlのα2,3−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例3の「3−4」と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−(LacNAc)のアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを収量6.0mgで得た(図9)。
【0150】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0151】
[6−5]6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAの合成
受容体基質として前記[6−3]で合成したPoly(5−aminopentyl β−(LacNAc)/γ−PGA)[44%, 4300kDa] 5.5mgを(LacNAc)−単位当たり8.0mM、供与体基質としてCMP−Neu5Ac 16.0mM、MnCl 2.5mM、BSA 0.1%、MOPS buffer(pH7.4)50mMとなるよう調整した。次に、反応液に対し10U/mlのアルカリフォスファターゼおよび40mU/mlのα2,6−シアリルトランスフェラーゼを添加し、37℃で48時間反応を行った。続いて、この反応液を合成例3の[3−5]と同様の方法で処理した。シアリル化率はH−NMRより、5−aminopentyl β−(LacNAc)のアグリコン部位のプロトン8個分の積分比(A)と、Neu5Acに特徴的な3位エクアトリアルとアキシアルプロトンの積分比(B)を以下に示す式にあてはめ算出した。その結果、シアリル化率100%の6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを収量5.4mgで得た(図10)。
【0152】
シアリル化率(%)=((B/2)×100)/(A/8)
【0153】
[合成例7]
6’−SialylLacNAc−Lac/γ−PGA(Poly(Neu5Ac(α2,6)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)Glc β−5−aminopentyl/γ−ポリグルタミン酸))の調製
【0154】
[7−1]5−Trifluoroacetamidopentyl β−lactoside(Lac−5AP−TFA)の合成
基質としてlactose(54.3g,151mmol)と5−Trifluoroacetamido−1−pentanol(30.0g,151mmol)とを50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0(151ml)に溶解し、そこへガラクトシダーゼを除去したT.reesei由来セルラーゼ(4500U)を加えて反応を開始した。反応液を激しく振とう(200rpm)し、40℃で120時間反応を行った後、100℃、10分間の煮沸により反応を停止した。反応液を濃縮後、クロロホルム:メタノール:水=7:3:0.5で平衡化(10ml/min)したSilica Gel 60N カラムクロマトグラフィー(φ4.5×50cm)に供し同溶媒で溶出し、23ml/tubeずつ分取してTLC(クロロホルム:メタノール:水=7:3:0.5)で分析した。目的画分を含む画分を濃縮し、重水に溶解してH−NMRにより構造解析した結果、5−Trifluoroacetamidopentyl β−lactosideを収量849mg、収率1.0%で得た。
【0155】
[7−2]LacNAc−Lac−5AP−TFAの合成
10mM Lac−5AP−TFA(100mg)、200mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)、20mM 塩化マンガン、15mM UDP−GlcNAc、3U/mL CIAP、0.3U/mL β1,3−GlcNAc転移酵素を含む溶液20mlを20℃、42時間インキュベーションした。3分間の煮沸により反応を停止した後、当該反応停止液に終濃度がそれぞれ20mM、12mMになるよう塩化マンガン、UDP−ガラクトースを添加し、0.1U/mL β1,4−ガラクトース転移酵素存在下、37℃、20時間の反応を行った。3分間の煮沸後、遠心分離(20,000xg、10分)により残さを取り除いた後、得られた上清を蒸留水で平衡化したクロマトレックスカラム(200ml、富士シリシア化学(株))にアプライした。400ml蒸留水で水洗後、20%メタノールで目的物質を溶出させ、これをエバポレーター濃縮、真空乾燥(50℃)行うことでLacNAc−Lac−5AP−TFA粉末108mgを取得した。
【0156】
[7−3]LacNAc−Lac−5APの調製
LacNAc−Lac−5AP−TFA 98.9mgを1M 水酸化ナトリウム400mlに溶解し、室温で30分間撹拌した。反応の終了をTLC(CHCl:MeOH:HO=4:5:1、アニスアルデヒドで呈色)で確認した後、0.5M 塩化水素でpH5.5に調整した。反応液を蒸留水で5mlにした後、蒸留水で平衡化したSephadex G−25カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)、150ml)を用いて精製を行った。目的物の溶出位置をTLC(CHCl:MeOH:HO=4:5:1、アニスアルデヒドで呈色)により確認した後、目的画分を回収し、エバポレーター濃縮、真空乾燥(50℃)を行うことでLacNAc−Lac−5AP粉末を103mg回収した。
【0157】
[7−4]LacNAc−Lac/γ−PGA(Poly(Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)Glc β−5―aminopentyl/γ−PGA)の合成
LacNAc−Lac−5AP 92.7mg、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール無水(HOBt) 15mg、γ−PGA 13mg、トリエチルアミン 15μlを蒸留水 1ml、DMF 0.8mlで完全に溶解させた後、この溶液に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC) 58mgを添加し、室温で一晩撹拌した。反応液に1mlの蒸留水を添加後、0.5M 水酸化ナトリウム溶液を1ml添加することでpH11に調整し、室温で1時間撹拌した。塩基処理液を透析チューブに入れ、400ml蒸留水で2回透析を行った。透析内液を回収後、蒸留水で平衡化したSephadexG−50カラム(8ml)にかけ、回収画分を更に400ml蒸留水で3回、400ml超純水で3回の透析を行った。透析内液を回収し、AG50W樹脂カラム(6ml、ナトリウム型、バイオラッド)を用いてナトリウム塩に置換した後、エバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥することでLacNAc−Lac−5AP/γ−PGAを44.4mg取得した。なお、H−NMR分析により、糖残基置換率(DS)は55%であった。
【0158】
[7−5]6’−SialylLacNAc−Lac/γ−PGAの合成
50mM カコジル酸緩衝液(pH6.0)、2.5mM 塩化マンガン、20mg LacNAc−Lac−5AP/γPGA、20mM CMP−NeuAc、0.1%(W/V)BSA,20U/mL CIAP、0.02U/mL α2,6−シアル酸転移酵素(カルビオケム社)を含む溶液2mlを37℃で44時間インキュベーションした後、1分間煮沸した。遠心分離(20,000xg,10分)により残さを取り除いた後、上清を超純水平衡化ゲル濾過カラム(Sephadex G−50,8ml)にかけた。目的画分を回収し、これを400ml蒸留水で3回、400ml超純水で3回の透析を行った。透析内液を回収後、AG50W樹脂カラム(6ml、ナトリウム型)を用いてナトリウム塩に置換した後、エバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥することで6’−SialylLacNAc−Lac/γPGAを22.1mg取得した。なお、H−NMR分析により、シアル酸化率は94%であった(図11)。
【0159】
試験例1
3’−SialylLacNAc/α−PGA、3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA、および3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA並びに6’−SialylLacNAc/α−PGA、6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA、および6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのin vitroにおけるインフルエンザウイルス感染阻害活性の測定
インフルエンザウイルスとして、Human strain A/WSN/33(H1N1)(感染価 2−6HAU)、Human strain A/Aichi/2/68 (H3N2)(感染価 2−6HAU)、Avian strain A/Duck/HongKong/313/4/76(H5N3)(感染価 2−3HAU)を、感染させる細胞としてMardin−Darby canine kidney cells(MDCK)を用いた。
【0160】
10%FCS含有MEM培地にて1.5x10cells/mlの細胞懸濁液に調製したMDCK細胞を96wellプレートに0.1mlずつまきこみ、37℃で一晩培養した。翌日、インフルエンザウイルス溶液を上記の感染価となるようにSerum free MEM(SF−MEM)で希釈した。希釈したウイルス溶液と段階希釈した阻害剤溶液を別のマイクロプレート上にて等量ずつ混合し、4℃にて1時間プレインキュベーションした。
【0161】
細胞培養wellをSF−MEMで3回リンスした後、プレインキュベーション溶液を細胞に感染させた。感染は34.5℃で30分間行った。ウイルス−阻害剤溶液を除いた後、SF−MEMで細胞を3回洗浄、Overlay medium(0.5%トラガガントガム、0.2%BSA含有MEM)をwellに加え、34.5℃で20〜24時間培養した。
【0162】
培養終了後、Overlay mediumを除き、100%MeOHで室温、10分間細胞を固定した。PBSで3回リンスした後、1次抗体としてマウス抗NP単クローン抗体(クローンH16:L10−4R5)を室温で1時間反応させた。PBSで3回リンスした後、2次抗体としてHRP標識ヤギ抗マウスIg抗体を室温で1時間反応させた。PBSで3回リンスした後、コニカイムノステイン(HRP−1000)試薬を加えて、感染細胞を検出した。光学顕微鏡下で感染細胞(青色の細胞集団、フォーカス)を計数した。各サンプル、各濃度において三重測定した。阻害剤を入れなかった場合のフォーカス数の平均を100%とした時の書く阻害剤濃度での相対的なフォーカス数の割合を求めた。
【0163】
Human strain A/WSN/33(H1N1)ウイルス感染阻害実験の結果を図12に、Human strain A/Aichi/2/68(H3N2)ウイルス感染阻害実験の結果を図13に、Avian strain A/Duck/HongKong/313/4/76(H5N3)の結果を図14に示す。なお、化合物であるシアロ糖鎖含有ポリマーの濃度は、ポリマー自体のモル濃度で示す。また、試験1ではコントロールとして、LacNAcの繰り返し単位が異なる3種類のアシアロ糖鎖含有αポリグルタミン酸ポリマー(LacNAc/α−PGA、(LacNAc)/α−PGA、α−PGA、(LacNAc)/α−PGA)を用いた。図12〜図14で明らかのように、α2,6−結合型のシアロ糖鎖含有ポリマーは、ヒトインフルエンザウイルスに対し特異的に感染阻害を起こし、一方、α2,3−結合型シアロ糖鎖含有ポリマーは、トリインフルエンザウイルスに対して特異的に感染阻害を起こすことが確認された。
【0164】
また、ポリラクトサミン型シアロ糖鎖含有ポリマー(Sialyl(LacNAc)/α−PGA、およびSialyl(LacNAc)/α−PGA)は、従来のSialylLacNAc型ポリマー(SialylLacNAc/α−PGA)の1/10あるいは1/100の濃度で感染阻害を起こしており、ポリラクトサミン型シアロ糖鎖含有ポリマーが従来のSialylLacNAc型ポリマーの10から100倍高い感染阻害活性を有すること確認された。
【0165】
試験例2
6’−SialylLacNAc/α−PGAおよび6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのインフルエンザウイルスのin vivoにおける動物感染阻害活性の測定
感染させるウイルスとしては、Human strain, A/WSN/33(H1N1)を、対象動物としてはBALB/cマウス(female、5weeks)を使用し、マウス6匹を一投与群とした。シアロ糖鎖含有ポリマー溶液とウイルス溶液を等量ずつよく混合した後(ウイルスタイターはfinalで2x10pfu/ml、最終シアロ糖鎖含有ポリマー濃度(糖鎖単位)は15μMとした)、マウスの鼻腔内に片側25μlずつ、マウス1匹当たり50μl投与した。
【0166】
コントロールであるアシアロ糖鎖含有ポリマー(LacNAc/α−PGAおよび(LacNAc)/α−PGA)および6’−SialylLacNAc/α−PGAを用いた場合、感染16日めで全てのマウスが死に至ったのに対し、6’−Sialyl(LacNAc)/α―PGAを投与したマウス群は、1匹のマウスが死亡したのみで、残りの5匹は生存した。
【0167】
試験例3
シアロ糖鎖含有ポリマーのin vitroにおける抗ヒトインフルエンザウイルス活性の測定
抗インフルエンザウイルス活性は、CPE抑制法(Antiviral Chemistry & Chemotherapy,2,243−248(1991))で試験した。ただし、感染させるウイルスはヒトインフルエンザウイルス(A strain Ishikawa(H3N2))を用い、感染させる細胞は前述のMDCK細胞を使用し、また感染させるウイルス量は50TCID50及び10TCID50の2系列で検討した。また、ポジティブコントロールとしてリバビリンを使用した。
【0168】
その結果、表2に示すように、従来の6’−SialylLacNAc/α−PGAの抗インフルエンザウイルス活性は弱く、それに対し本発明におけるα−PGA骨格ポリラクトサミン型シアロ糖鎖含有ポリマーおよびγ−PGA骨格シアロ糖鎖含有ポリマーは高い抗インフルエンザウイルス活性を有することが確認された。
【0169】
【表2】


【0170】
試験例4
3’−SialylLacNAc/γ−PGA、3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA、3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA、並びに6’−SialylLacNAc/α−PGA、6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGA、および6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのin vitroにおけるインフルエンザウイルス感染阻害活性の測定
1.実験操作
フォーカスアッセイ法によるインフルエンザウイルス感染価の測定
培養用96ウェルマイクロプレートにMDCK細胞を1.5×10個/wellの細胞数となるように播き込み、コンフレントになるまで37℃で培養した。0.1μM zanamivir含有serum free(SF)−MEM培地で希釈したウイルス(ヒトA/WSN/33(H1N1)株)とポリマーを混合した溶液を4℃、1時間静置させた。MDCK細胞をserum free(SF)−MEM培地で100μl/wellずつ3回洗浄後、ウイルス−ポリマー混合溶液を50μl/wellとなるように加え、34.5℃、30分間、COインキュベーター内で感染させた。感染後、各ウェルをSF−MEM培地で100μl/wellずつ3回洗浄し、0.2%bovine serum alubmin(BSA)、0.5%tragacanth gum含有MEM培地を50μl/wellとなるように加え、34.5℃、COインキュベーターで約20時間培養した。培養終了後、培地を除き、ethanolを100μl/wellとなるように加え、室温で10分間静置し、細胞を固定化した。Phosphate−buffered saline(PBS)で100μl/wellずつ3回洗浄後、1%BSA含有PBS溶液で希釈した抗nucleoprotein単クローン抗体溶液を50μl/wellとなるように加えて室温、1時間静置した。PBSで100μl/wellずつ3回洗浄後、1%BSA含有PBS溶液で希釈したHRP標識ヤギ抗マウスイムノグロブリン抗体溶液を50μl/wellとなるように加えて、室温、1時間静置した。反応後、PBSで100μl/wellずつ3回洗浄し、OPD発色基質溶液(100mM Citrate−phosphate buffer,pH5.5、0.4mg/ml o−phenylenediamine、0.012%H)を50μl/wellとなるように加え、室温で静置した。発色後、反応停止液(1N HCl)を0μl/wellとなるように加えた。吸光度をマイクロプレートリーダーで、測定波長492nm、対照波長630nmにて測定した。ポリマーを反応させずにウイルス感染を行ったウェルの吸光度を100%とした時の各ポリマー反応時の吸光度を相対的感染価として求めた。グラフの横軸にポリマー自体のモル濃度を示した。
【0171】
2.実験結果
図15に示すように、いずれのポリマーおいても内部糖鎖(LacNAc)を伸長させることでインフルエンザウイルス感染阻害効果が増強されることが観察された。特に、(LacNAc)を3回繰り返し有するポリマーの効果が最大であった。なお、図中「3’SLN1」は3’−SialylLacNAc/γ−PGA、「3’SLN2」は3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA、「3’SLN3」は3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを示す。また、「6’SLN1」は6’−SialylLacNAc/γ−PGA、「6’SLN2」は6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGA、「6’SLN3」は6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAを示す。
【0172】
製剤例1
本発明の有効成分であるシアロ糖鎖含有ポリマーを精製水に溶解後、必要によりクエン酸、リン酸水素二ナトリウム等を加え、本発明の点鼻適用製剤(液剤)を得る。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は、3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのNMRチャートを示す。
【図2】図2は、6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのNMRチャートを示す。
【図3】図3は、3’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのNMRチャートを示す。
【図4】図4は、6’−Sialyl(LacNAc)/α−PGAのNMRチャートを示す。
【図5】図5は、3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図6】図6は、6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図7】図7は、3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図8】図8は、6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図9】図9は、3’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図10】図10は、6’−Sialyl(LacNAc)/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図11】図11は、6’−SialylLacNAc−Lac/γ−PGAのNMRチャートを示す。
【図12】図12は、試験例1のHuman strain A/WSN/33(H1N1)ウイルス感染阻害実験の結果を示す。
【図13】図13は、試験例1のHuman strain A/Aichi/2/68(H3N2)ウイルス感染阻害実験の結果を示す。
【図14】図14は、試験例1のAvian strain A/Duck/HongKong/313/4/76(H5N3)の結果を示す。
【図15】図15は、試験例4のフォーカスアッセイ法によるインフルエンザウイルス感染阻害活性測定の結果を示す。
【出願人】 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
【出願日】 平成19年6月19日(2007.6.19)
【代理人】 【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ


【公開番号】 特開2008−31156(P2008−31156A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−161257(P2007−161257)