| 【発明の名称】 |
アルギン酸又はその塩を含有するソフトコンタクトレンズ用組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】有田 治正
【氏名】春名 健一
【氏名】喜多 亜希子
|
| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、ソフトコンタクトレンズに対するアルギン酸及び/又はその塩の吸着が抑制されているソフトコンタクトレンズ用組成物を提供することを目的とする。
【構成】ソフトコンタクトレンズ用組成物において、(A)アルギン酸及び/又はその塩と共に、(B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて配合する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の(A)成分及び(B)成分を含有することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ用組成物: (A)アルギン酸及び/又はその塩、 (B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種。 【請求項2】 (A)成分100重量部に対して、(B)成分が1〜50000重量部の比率で含まれる、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 【請求項3】 点眼剤である、請求項1又は2に記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 【請求項4】 両性イオン性ソフトコンタクトレンズ用である、請求項1乃至3のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物と、コンタクトレンズを接触させることを特徴とする、アルギン酸及び/又はその塩のコンタクトレンズへの吸着抑制方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ソフトコンタクトレンズ(以下、「SCL」と表記する)へのアルギン酸及び/又はその塩の吸着が抑制されているSCL用組成物に関する。更に、本発明は、SCLへのアルギン酸の吸着を抑制する方法に関する。 【背景技術】 【0002】 SCLは、含水率が高く柔軟性を有する素材で構成されており、ハードコンタクトレンズに比べて、異物感が少ないことから、広く普及している。このSCL使用者の拡大に伴って、SCL用組成物(SCL装用中に使用可能な点眼剤又は洗眼剤、SCL装着液、SCLケア用剤等)の処方の検討が精力的に行われている。 【0003】 一方、アルギン酸は、Ca2+イオン等の二価以上の陽イオンによって部分的に架橋されてゲル化(高粘度化)する作用を有しており、眼科分野で使用可能な成分であることが既に知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、アルギン酸を含む点眼剤を眼に適用すると、眼粘膜に存在するCa2+イオンとアルギン酸が接触することにより、眼粘膜上で点眼剤がゲル化(高粘度化)し、眼粘膜上での点眼剤の滞留性を高めたり、有効成分の効果を持続させるために有用であることも分かっている。更に、アルギン酸には、抗アレルギー作用があることも報告されている(特許文献2参照)。そこで、アルギン酸やその塩を含むSCL用組成物によれば、アルギン酸に基づく有用効果が期待されるが、アルギン酸のSCLに対する影響は、これまであまり検討されていない。 【0004】 また、現代社会では、アレルギー症状に罹患している人が増大すると共に、その症状の程度も深刻化している。このような背景の下、近年のSCLの普及に相まって、SCL装用者のアレルギーが問題となっている。そこで、抗アレルギー作用の観点からも、アルギン酸を配合したSCL用組成物において、より優れた抗アレルギー作用を発揮させる処方の開発が望まれている。 【0005】 一方、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸等の成分は疲れ目の回復作用等を有しており、眼科分野で使用されている。また、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の成分も、眼科分野において、保湿作用の付加等を目的として使用されている。しかしながら、これらの成分が、アルギン酸のSCLへの吸着に如何なる影響を及ぼすか、またアルギン酸の抗アレルギー作用の増減に影響し得るか、については一切分かっていない。 【特許文献1】特開2002−332248号公報 【特許文献2】特開平9−208475号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明者等は、アルギン酸を含むSCL用組成物について、研究を重ねたところ、アルギン酸を単に配合したに過ぎないSCL用組成物では、SCLに対する吸着が懸念されることを確認した。特に、コンタクトレンズのフィッティング(コンタクトレンズのデザインと使用者の角膜のベースカーブの適合性)が悪い場合には、SCLへのアルギン酸の吸着は、SCL使用時に異物感や不快感を招いたりすることにもなるため、SCL用組成物にアルギン酸を配合するには、アルギン酸の吸着を回避することが重要である。アルギン酸のSCLへの吸着の機序等については、未だ十分に解明されておらず、限定的な解釈を望むものではないが、アルギン酸のSCLへの吸着は、アルギン酸がSCLに他の成分を介在させて吸着する場合と、アルギン酸がSCLに直接的に吸着する場合の2つが推定される。具体的には、前者のアルギン酸の吸着の場合では、次のような機序に基づいてアルギン酸が吸着すると考えられる:SCLには、タンパク質等の特定成分(以下、吸着成分と表記する)を吸着するという特有の性質があり、SCLの装用時や取り扱い時に、主に涙液成分や手指の汚れなどとして、SCLと接触機会のある上記吸着成分が、SCLに吸着して蓄積する。このように吸着成分が吸着したSCLにアルギン酸が接触すると、アルギン酸が吸着成分に対して非共有結合により結合する。その結果として、アルギン酸がSCLに吸着成分を介在させて吸着する。このようなアルギン酸の吸着は全てのSCLに対して起こり得る。一方、後者のアルギン酸の吸着の場合については、本発明者等の検討によって、SCLの素材の種類に大きく依存し、特に両性イオン性のポリマーを構成素材とするSCLに対しては、アルギン酸の吸着傾向が高まることを確認した。 【0007】 そこで、本発明は、SCLに対するアルギン酸及び/又はその塩の吸着が抑制されているSCL用組成物を提供することを主な目的とする。また、本発明は、アレルギー症状の罹患率が高いSCL使用者に対して、抗アレルギー目的で好適に使用できるSCL用組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は、アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着を抑制する方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、SCL用組成物において、アルギン酸及び/又はその塩に加えて、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される1種以上を配合することによって、アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着を抑制できることを見出した。特に、SCL用組成物において、アルギン酸及び/又はその塩と共に、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及び/又はこれらの塩を配合した場合には、アルギン酸及び/又はその塩に基づく抗アレルギー作用が飛躍的に増強されることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に改良を重ねることにより完成したものである。 【0009】 即ち、本発明は、下記に掲げるコンタクトレンズ用組成物である: 項1. 次の(A)成分及び(B)成分を含有することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ用組成物: (A)アルギン酸及び/又はその塩、 (B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種。 項2. (A)成分100重量部に対して、(B)成分が1〜50000重量部の比率で含まれる、項1に記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 項3. 点眼剤である、項1又は2に記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 項4. ソフトコンタクトレンズ分類:グループIVに属するソフトコンタクトレンズ用である、項1乃至3のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 項5. 両性イオン性ソフトコンタクトレンズ用である、項1乃至4のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 項6. アルギン酸のM/G比が0.3〜4.0である、項1乃至5のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物。 【0010】 更に、本発明は、下記に掲げる方法である: 項7. 項1乃至6のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用組成物と、ソフトコンタクトレンズを接触させることを特徴とする、アルギン酸及び/又はその塩のソフトコンタクトレンズへの吸着抑制方法。 項8. アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着を抑制する作用をSCL用組成物に付与する方法であって、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有するSCL用組成物に、(B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、方法。 項9. SCL用組成物においてアルギン酸及び/又はその塩の抗アレルギー作用を増強する方法であって、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有するSCL用組成物に、(B')アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、抗アレルギー作用の増強方法。 【0011】 そして更に、本発明は、下記に掲げるハードコンタクトレンズ用組成物である: 項10. 次の(A)成分及び(B)成分を含有することを特徴とする、ハードコンタクトレンズ用組成物: (A)アルギン酸及び/又はその塩、 (B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種。 項11. 酸素透過性ハードコンタクトレンズ用である、項10に記載のハードコンタクトレンズ用組成物。 【発明の効果】 【0012】 本発明のSCL用組成物によれば、SCLに対するアルギン酸及び/又はその塩の吸着がアスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及び/又はこれらの塩により抑制されており、これによって、SCLの装用感が良くなり、使用時の異物感や不快感が改善される。さらに、本発明のSCL用組成物によれば、SCLに蛋白汚れ等が吸着している場合においても、同様の効果が期待できる。 【0013】 また、本発明のSCL用組成物に含まれるアルギン酸及び/又はその塩は、眼粘膜に適用されると、眼粘膜に存在するCa2+イオンと接触してゲル化する性質を有している。従って、本発明のSCL用組成物によれば、アルギン酸及び/又はその塩のゲル化作用によって、眼粘膜においてアスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及び/又はこれらの塩を長時間滞留させることができ、これらの成分に基づく有用作用を一層効果的に享受にすることが可能になる。 【0014】 更に、本発明のSCL用組成物において、アルギン酸及び/又はその塩と共に、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及び/又はこれらの塩を配合する場合には、アルギン酸及び/又はその塩に基づく抗アレルギー作用が増強して発現するので、該SCL用組成物は、アレルギー症状に罹患しているSCL使用者にとって特に好適である。 【0015】 また、本発明のアルギン酸及び/又はその塩の吸着抑制方法によれば、簡便な方法で、アルギン酸及び/又はその塩がSCLに吸着するのを抑制できる。従って、本発明の方法は、例えばSCL使用者の点眼、洗眼、或いはSCLのケア等において、アルギン酸及び/又はその塩に基づく作用を有効に発現させるのに有用である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 (I) SCL用組成物 本発明のSCL用組成物は、(A)アルギン酸及び/又はその塩(本明細書において、単に(A)成分と表記することもある)を含有する。 【0017】 アルギン酸とは、マンヌロン酸(以下、単に「M」と表示することもある)とグルロン酸(以下、単に「G」と表示することもある)から構成される多糖類であり、マンヌロン酸のホモポリマー画分(MM画分)、グルロン酸のホモポリマー画分(GG画分)、及びマンヌロン酸とグルロン酸がランダムに配列した画分(MG画分)が任意に結合したブロック共重合体である。 【0018】 本発明に使用されるアルギン酸において、そのグルロン酸に対するマンヌロン酸の構成比率(M/G比;モル比)については、特に制限されず、例えばM/G比が0.4〜4.0の範囲に含まれるものが広く使用される。M/G比が小さい程、組成物のゲル化が開始し易い傾向があり、配合される他の薬理活性成分の適用部位における滞留性を向上させるという観点からは、M/G比が2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下であることが望ましい。特に、M/G比が、好ましくは0.4〜2.0、より好ましくは0.5〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.6の範囲に含まれるものを使用することが望ましい。なお、本発明において、M/G比は、アルギン酸をブロック単位で分解したものを分画し、それぞれを定量することにより算出される値であり、具体的には、A. Haug et al., Carbohyd. Res. 32(1974), p.217-225に記載の方法に従って測定される。 【0019】 また、本発明に使用されるアルギン酸において、MM画分、GG画分及びMG画分の比率についても、特に制限されず、SCL用組成物の用途や形状に応じて適宜選択することができる。 【0020】 また、本発明で使用されるアルギン酸は、低分子量のものから高分子量のものまで適宜使用することができる。 【0021】 更に、アルギン酸の塩としては、薬理学的に又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではない。アルギン酸の塩として、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらのアルギン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。 【0022】 本発明のSCL用組成物には、これらのアルギン酸及びその塩の中から、一種を選択して単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。特に、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムは水溶性であり、本発明において好適に使用される。 【0023】 本発明のSCL用組成物における上記(A)成分の配合割合は、特に制限されるものではなく、該(A)成分の種類、該組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。上記(A)成分の配合割合の一例として、SCL用組成物中に、該組成物の総量に対して、該(A)成分が総量で0.005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.25重量%;例えばSCL用組成物が点眼剤であれば、更に好ましくは0.02〜0.1重量%、特に好ましくは0.05〜0.1重量%;例えばSCL用組成物が洗眼剤であれば、更に好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.01〜0.05重量%となる割合が例示される。このような配合割合を満たす場合には、該(A)成分のゲル化作用と共に、抗アレルギー作用を効果的に発現させることができる。 【0024】 本発明のSCL用組成物は、上記(A)成分と共に、(B)アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、及びこれらの塩の中から1種又は2種以上の成分(本明細書において、単に(B)成分と表記することもある)を含有する。当該(B)成分を含有することによって、上記(A)成分のSCLへの吸着を効果的に抑制して、上記(A)成分の有用作用を効果的に発現させることが可能になる。 【0025】 上記(B)成分の内、アスパラギン酸及びその塩は、目の疲れの回復に効果を有するアミ ノ酸として公知の化合物である。アスパラギン酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩等が例示される。好ましくは、アスパラギン酸カリウムである。 【0026】 また、上記(B)成分の内、アミノエチルスルホン酸は、別名タウリンまたは2-アミノエタンスルホン酸と呼ばれる公知の化合物であり、新陳代謝を促進し、目の疲れの回復効果を有することも知られている。 【0027】 上記(B)成分の内、コンドロイチン硫酸及びその塩は、眼粘膜等において保湿作用を発揮するムコ多糖の一種として公知の高分子化合物である。本発明において使用されるコンドロイチン硫酸及びその塩は、その由来については特に制限されるものではなく、例えば、サケ等の動物から得られたものであっても、また微生物から得られたものであってもよい。本発明に使用されるコンドロイチン硫酸の平均分子量としては、特に制限されないが、例えば0.5万〜50万、好ましくは0.5万〜20万、更に好ましくは0.5万〜10万、特に好ましくは0.5〜5万、更に特に好ましくは1万〜4万、最も好ましくは1.5万〜3.5万の範囲にあるものが例示される。 【0028】 また、コンドロイチン硫酸の塩としては、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム等のその他金属との塩等が例示される。好ましくは、コンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩であり、更に好ましくコンドロイチン硫酸ナトリウムである。 【0029】 かかるコンドロイチン硫酸又はその塩は、市販のものを利用することができ、例えば、生化学工業株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム等が利用できる。 【0030】 また、上記(B)成分の内、ヒアルロン酸及びその塩は、眼粘膜等において保湿作用を発 揮するムコ多糖の一種として公知の高分子化合物である。本発明に使用されるヒアルロン酸及びその塩は、その由来については特に制限されるものではなく、例えば、鶏冠から得られたものであってもよく、また微生物由来のものであってよい。本発明に使用されるヒアルロン酸の平均分子量としては、特に制限されないが、例えば50〜500万、好ましくは50〜400万、更に好ましくは60万〜250万、特に好ましくは80万〜200万の範囲にあるものが例示される。ここで、本明細書においてヒアルロン酸の平均分子量とは、粘度平均分子量を意味する。粘度平均分子量は公知の測定方法により求めることができる。具体的には、ヒアルロン酸及び/又はその塩(乾燥物)を0.2M塩化ナトリウ ム溶液に溶解し、30℃における極限粘度(η)を求め、Laurentの式(η(極限粘度)=0.00036×Mv(粘度平均分子量)0.78)に基づいて粘度平均分子量が算出される。極限粘度(η)の測定は、第14改正日本薬局方の一般試験法、粘度測定法(毛細管粘度計法)に従って実施される。 【0031】 また、ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム等の金属との塩等が例示できる。このような塩の状態のものとして、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。また、ヒアルロン酸に比較して、塩の状態のヒアルロン酸を用いる方がより安定であることから好ましい。 【0032】 本発明に用いるヒアルロン酸及びその塩は、市販のものを用いることができる。かかる市販品として代表的には、商品名「バイオヒアルロン 酸ナトリウム」(資生堂株式会社製)、商品名「ヒアルロン サンHA−QA」(キューピー株式会社製)、商品名「ヒアルロン サンHA−AM」(キューピー株式会社製)等の市販品が例示できる。 【0033】 また、上記(B)成分の内、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(本明細書において、単に(B')成分と表記することもある)については、上記(A)成分の抗アレルギー作用を飛躍的に増強させることもできる点で利点があり、これらの(B')成分を採用した場合には、本発明のSCL用組成物は、抗アレルギー作用をも目的としたSCL用組成物(抗アレルギー用のSCL用組成物)としても有用である。 【0034】 これらの(B)成分は、1種単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(B)成分として、2種以上の成分を採用することにより、本発明の効果をより一層向上せしめることがある。 【0035】 本発明のSCL用組成物において、上記(A)成分のSCLへの吸着を一層効果的に抑制せしめるという観点からは、上記(A)成分の総量100重量部に対して、上記(B)成分が総量で1〜50000重量部、好ましくは10〜10000重量部、より好ましくは10〜5000重量部、更に好ましくは10〜2000重量部となる比率を充たしておくことが望ましい。特に、上記(B)成分が、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、及び/又はこれらの塩を使用する場合であれば、上記(A)成分の総量100重量部に対して、該(B)成分が総量で100〜2000重量部となる比率を満たすことが特に好ましい。また、上記(B)成分が、ヒアルロン酸及び/又はその塩を使用する場合であれば、上記(A)成分の総量100重量部に対して、該(B)成分が総量で100〜600重量部となる比率を満たすことが特に好ましい。 【0036】 また、本発明のSCL用組成物中の上記(B)成分の配合割合は、特に制限されるものではなく、使用される(A)成分や(B)成分の種類、上記(A)成分と(B)成分の比率、該組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。上記(B)成分の配合割合の一例として、SCL用組成物中に、該組成物の総量に対して、該(B)成分が総量で0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.001〜2.0重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%となる割合が例示される。より具体的には、(B)成分の配合割合として、以下の範囲が例示される。 (B)成分がアスパラギン酸及び/又はその塩の場合: これらが総量で、通常0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%;例えばSCL用組成物が点眼剤であれば、更に好ましくは0.1〜2.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%;例えばSCL用組成物が洗眼剤であれば、更に好ましくは0.01〜0.2重量%、特に好ましくは0.05〜0.1重量%。 (B)成分がアミノエチルスルホン酸の場合: 通常0.001〜3.0重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%;例えばSCL用組成物が点眼剤であれば、更に好ましくは0.1〜1.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%;例えばSCL用組成物が洗眼剤であれば、更に好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.02〜0.1重量%。 (B)成分がコンドロイチン硫酸及び/又はその塩の場合: これらが総量で、通常0.0005〜5.0重量%、好ましくは0.005〜3.0重量%;例えばSCL用組成物が点眼剤であれば、更に好ましくは0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%;例えばSCL用組成物が洗眼剤であれば、更に好ましくは0.005〜0.05重量%、特に好ましくは0.01〜0.05重量%。 (B)成分がヒアルロン酸及び/又はその塩の場合: これらが総量で、通常0.0001〜2.0重量%、好ましくは0.001〜0.3重量%;例えばSCL用組成物が点眼剤であれば、更に好ましくは0.01〜0.3重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%;例えばSCL用組成物が洗眼剤であれば、更に好ましくは0.001〜0.1重量%、特に好ましくは0.001〜0.01重量%。 【0037】 また、本発明のSCL用組成物には、更に緩衝剤を配合してもよい。緩衝剤を配合することによって、上記(A)成分のSCLへの吸着抑制をより効果的に発現させ得ることもある。本発明のSCL用組成物に配合できる緩衝剤としては、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤またはリン酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなど)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウムなど)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなど)酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなど)等が例示できる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。 【0038】 本発明のSCL用組成物に緩衝剤を配合する場合、該緩衝剤の配合割合については、使用 する緩衝剤の種類や期待される効果等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、該組成物の総量に対して該緩衝剤が総量で0.001〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%となるような割合を挙げることができる。より具体的には、組成物中の緩衝剤の割合が、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤を用いる場合であれば、例えば0.0001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%;炭酸緩衝剤を用いる場合であれば、例えば0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%;クエン酸緩衝剤を用いる場合であれば、例えば0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%;酢酸緩衝剤を用いる場合であれば、例えば0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%;イプシロン−アミノカプロン酸を用いる場合であれば、例えば0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるような割合が例示される。 【0039】 なお、本発明のSCL用組成物は、液状若しくはゲル状、好ましくは液状であり、該組成物の基材として、眼科的に許容される水、好ましくは精製水や超純水が使用される。 【0040】 本発明のSCL用組成物のpHについては、薬理学的に又は生理学的に許容できる範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明のSCL用組成物のpHの一例として5〜9、好ましくは5.5〜8.5、更に好ましくは6〜8となる範囲を挙げることができる。また、上記pH範囲内であれば、眼やレンズに適用しても安全であり、本発明の効果をより一層向上せしめることができ、眼科用の製剤として実用可能である。 【0041】 本発明のSCL用組成物は、更に必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は該組成物の用途や形態等により異なるが、通常0.2〜1.8、好ましくは0.3〜1.7、更に好ましくは0.4〜1.6、より好ましくは0.5〜1.5、特に好ましくは0.6〜1.4、更に特に好ましくは1.0〜1.2である。かかる浸透圧の範囲内であれば、本発明の効果をより一層向上せしめることができる。 【0042】 本発明のSCL用組成物において浸透圧比は、第十四改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に準じて測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。 【0043】 上記pH及び浸透圧比の調整は無機塩及び多価アルコール、糖アルコール、糖類などを用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。 【0044】 本発明のSCL用組成物は、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記成分の他に、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的に、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。 【0045】 エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、硝酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン等。 【0046】 更に、本発明のSCL用組成物を各種所望の形態に調製するために、本発明の効果を損なわない範囲で、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して配合することができる。それらの成分または添加物として、例えば、医薬品添加物事典2005(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。 【0047】 マクロゴール、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリソルベート80、POE(60)硬化ヒマシ油、アルキルジアミノエチルグリシン、塩化ベンザルコニウム、パラベン類、ソルビン酸カリウム、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油、エデト酸ナトリウム、クエン酸、トロメタモール等。 【0048】 本発明のSCL用組成物は、SCLに接触されるように使用されるものであれば、その形態や用途については制限されない。例えば、SCL用点眼剤(SCLを装着したまま使用可能な点眼剤)、SCL用洗眼剤(SCLを装着したまま使用可能な洗眼剤)、SCL装着液、SCLケア用液剤(SCL消毒液、SCL用保存液、SCL用洗浄液、及びSCL用洗浄保存液等)等を挙げることができる。使用の簡便性、アルギン酸により付与される作用(滞留性向上)等の観点から、好ましくはSCL用点眼剤、SCL用洗眼剤、及びSCL装着液である。 【0049】 また、本発明のSCL用組成物の使用方法としては、該SCL用組成物をSCLに接触させる工程を有する公知の方法であれば、特に限定はない。例えば、点眼剤の場合、SCLの装着前、装着時、又は装用中に、該剤の適量を点眼すればよい。また、洗眼剤の場合も、SCLの装着前、装着時、又は装用中(SCLを装用したままで)、該剤の適量を洗眼に使用すればよい。なお、本発明のSCL用組成物が点眼剤又は洗眼剤である場合、SCLを装用している時はもちろん、装用していない時でも点眼や洗眼の目的で使用することができる。また、SCL装着液の場合、SCLの装着時にSCLと該液の適量を接触させることより使用される。更に、SCLケア用液剤の場合であれば、適量の該剤中にSCLを浸漬したり、該剤に接触させて擦り洗いすること等によって使用される。 【0050】 本発明のSCL用組成物は、あらゆるタイプのSCLに使用できる。アルギン酸及び/又はその塩は、特に、タンパク質の吸着し易い高含水イオン性SCL(ソフトコンタクトレンズ分類:グループIV)において、レンズがタンパク質汚れを吸着している際には(A)成分のレンズへの吸着が顕著になる傾向がある。また、両性イオン性のSCLに対しては、レンズ素材自体への吸着し易くなる傾向を示す。これに対して、本発明によれば、高含水イオン性SCL(ソフトコンタクトレンズ分類:グループIV)や、両性イオン性のSCLに対しても、効果的な吸着抑制効果を奏することができる。このような理由から、本発明のSCL用組成物の一実施態様として、高含水イオン性SCL(ソフトコンタクトレンズ分類:グループIV)や、両性イオン性のSCLを使用対象とするものが好適に例示される。なお、本明細書において、両性イオン性のSCLとは、両性イオン性のポリマー(例えば、四級アンモニウム基とカルボキシル基を有するポリマー)を素材として調製されたSCLのことを意味する。また、本明細書において、ソフトコンタクトレンズ分類とは、平成11年3月31日付医薬審第645号厚生労働省(当時の厚生省)医薬安全局審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」において規定された「ソフトコンタクトレンズの分類方法について」に基づくSCLの分類であり、該分類においてグループIVに属するSCLは、含水率が50%以上であり、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であることを共通の性質として有する。 【0051】 本発明のSCL用組成物は、公知の方法に従って製造される。例えば、精製水、生理食塩 水等の水性溶媒等に、上記(A)及び(B)成分、必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加し、常法に準じて調製すればよい。 【0052】 (II) アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着抑制方法 前述するように、アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着を、上記(B)成分を使用することによって抑制することができる。従って、本発明は、更に、前記(I)に記載のSCL用組成物と、SCLを接触させることを特徴とする、アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着抑制方法(但し、人体の治療方法に該当する方法を除く)を提供する。 【0053】 当該吸着抑制方法において、前記(I)のSCL用組成物とSCLとの接触は、使用する組成物の形態や用途に応じた通常の使用方法に従って行えばよい。具体的には、前記(I)に記載のSCL用組成物の使用方法に従って、該SCL用組成物を使用することにより、SCLと接触させる方法を挙げることができる。 【0054】 更に、本発明は、他の観点から、アルギン酸及び/又はその塩のSCLへの吸着を抑制する作用をSCL用組成物に付与する方法であって、上記(A)成分を含有するSCL用組成物に、上記(B)成分を配合することを特徴とする、SCL吸着抑制作用の付与方法をも提供する。 【0055】 これらの方法において、(A)成分と(B)成分の種類や配合割合、その他の配合成分等については、前記(I)のSCL用組成物の欄に記載する通りである。 【0056】 (III) アルギン酸及び/又はその塩の抗アレルギー作用の増強方法 また、前述するように、アルギン酸及び/又はその塩の抗アレルギー作用を、上記(B')成分を共存させることによって増強することができる。従って、本発明は、更に、SCL用組成物においてアルギン酸及び/又はその塩の抗アレルギー作用を増強する方法であって、上記(A)成分を含有するSCL用組成物に、上記(B')成分を配合することを特徴とする、抗アレルギー作用の増強方法をも提供する。当該方法において、(A)成分及び(B')成分の種類や配合割合、その他の配合成分等については、前記(I)のSCL用組成物の欄に記載の通りである。 【0057】 (IV)ハードコンタクトレンズ用組成物 ハードコンタクトレンズ(以下、HCLと表記する)は、装用時や取り扱い時に、涙液成分や手指の汚れに含まれるタンパク質等の成分を吸着することがある。このようにタンパク質が吸着したHCLに、アルギン酸及び/又はその塩が接触すると、当該タンパク質とアルギン酸が非共有結合により結合し、結果としてアルギン酸が当該タンパク質を介在させてHCLに吸着する。このようにして生じるアルギン酸のHCLへの吸着を、アルギン酸と共に上記(B)成分を共存させることによって抑制することができる。 【0058】 このような知見に基づいて、本発明は、更に、アルギン酸及び/又はその塩のHCLへの吸着が抑制されているHCL用組成物として、上記(A)成分及び(B)成分を含有するHCL用組成物を提供する。当該HCL用組成物において、上記(A)成分、(B)成分、その他の配合成分、各配合成分の配合割合、HCL用組成物の用途や形態、HCL用組成物の使用方法等については、前記(I)のSCL用組成物の欄に記載と同様である。 【0059】 また、当該HCL用組成物は、あらゆるタイプのHCLに適用できる。中でも特に、酸素透過性HCLは汚れが付着し易いことが知られており、酸素透過性HCLは、当該HCL用組成物の好適な適用対象HCLである。 【実施例】 【0060】 以下に、試験例、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下で使用したアルギン酸は、M/G比の規格が1.0〜1.6のLessonia nigrescens由来のもの;ヒアルロン酸ナトリウムは、平均分子量110万〜160万のもの;及びコンドロイチン硫酸ナトリウムは、平均分子量1万〜2万のものである。 【0061】 試験例1 アルギン酸のSCLへの吸着抑制評価試験−1 アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、及びヒアルロン酸ナトリウムが、アルギン酸のSCLへの吸着に与える影響を検討するために、以下の試験を行った。 <試験材料> 下表1に示すSCL用組成物(実施例1−4及び比較例1)を常法に従って調製した。なお、本試験には、SCLは、商品名「シード 2ウィークピュア」(両性イオン性;シード社製;含水;構成モノマー:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、四級アンモニウム基含有メタクリレート系化合物、カルボキシル基含有メタクリレート系化合物、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA);ソフトコンタクトレンズ分類:グループIV)を使用した。 【0062】 <試験方法> 日本薬局方 生理食塩液5mL中に、SCLを各1枚浸漬し、約24時間室温(約25℃)にて放置した。次いで、生理食塩液からSCLを抜き取り、水分を軽くふき取った。密封性の高い透明ガラスバイアル瓶に実施例1−4及び比較例1のSCL用組成物を4mLずつ分注し、それぞれのSCL用組成物中に、上記で得られた2枚のSCLを浸漬して、34℃で振とう数120回/分にて約72時間振とうした後、SCLを抜き取った。次いで、SCL浸漬処理後の各SCL用組成物中に残存する各アルギン酸の濃度(以下、試験後Alg濃度と表記する)を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。尚、ブランクとして、SCLを浸漬しない以外は、上記と同様の工程を行い、SCLを浸漬しない場合におけるSCL用組成物中に残存するアルギン酸の濃度(以下、ブランクAlg濃度と表記する)を測定した。 【0063】 測定されたアルギン酸の濃度から、以下の式に従って、アルギン酸の吸着量(μg/SCL 1枚)を算出し、更にアルギン酸の吸着抑制率(%)を求めた。 【0064】 【数1】
【0065】 結果を表1に併せて示す。比較例1のSCL用組成物では、アルギン酸がSCLに吸着していた。これに対して、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、及びヒアルロン酸ナトリウムを配合した実施例1−4のSCL用組成 物では、アルギン酸のSCLへの吸着量が大幅に低減していた。特に、アルギン酸のSCLへの吸着抑制効果は、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、又はヒアルロン酸ナトリウムを配合した場合に顕著に認められた。 【0066】 【表1】
【0067】 試験例2 アルギン酸のSCLへの吸着抑制評価試験−2 下表2に示すSCL用組成物(実施例5−12及び比較例1)を使用し、上記試験例1と同様の方法で、SCLに対するアルギン酸の吸着抑制効果を評価した。 【0068】 その結果、上記試験例1の場合と同様に、実施例5−12のSCL用組成物では、アルギン酸のSCLへの吸着が顕著に抑制されているのが確認された。即ち、本試験例2の結果と上記試験例1の結果から、アルギン酸の総量100重量部に対して、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム又はアミノエチルスルホン酸を100〜2000重量部、或いはヒアルロン酸を10〜600重量部の比率で配合することによって、SCLに対するアルギン酸の良好な吸着抑制効果を獲得できることが確認された。 【0069】 【表2】
【0070】 試験例3 レンズの装用感に関する評価 SCLを使用している8名の被験者によって、表4に示す処方の点眼剤(実施例13−16及び比較例2)を用いて、以下の試験を行い、各点眼剤がSCLの装用感(ゴロゴロ感及び不快感)に与える影響を検討した。なお、被験者の内、4名は、SCLとして商品名「メダリストプラス」(ボシュロム社製、含水、主材料:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ソフトコンタクトレンズ分類:グループI)を使用し、他の4名は、SCLとして商品名「2ウィーク アキュビュー」(ジョンソン&ジョンソン社製、含水、主材料:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とメタクリル酸(MAA)の共重合体)を使用した。 【0071】 具体的には、各被験者に、各SCLの用法に従って1週間装用させ、SCLに蛋白等の汚れが吸着した状態とした後、SCLを装着した眼に、点眼剤を1日5〜6回の頻度で1週間点眼させた。最終日の最終点眼時における、各点眼剤のゴロゴロ感の評価の結果及び装用感の総合評価の結果について、以下の表3に示す評価基準に従って、スコア化した。 【0072】 【表3】
【0073】 得られた結果を表4に併せて示す。この結果、実施例13−16の点眼剤の方が、比較例2の点眼剤を使用した場合に比して、ゴロゴロ感、不快感が改善され、装用感が良好になっていることが明らかとなった。特に、実施例13−16の点眼剤では、グループIVに属するSCLを使用した被験者において、より優れた装用感が得られていた。 【0074】 【表4】
【0075】 試験例4 抗アレルギー効果(ヒスタミン遊離抑制効果)の評価試験 1.5×105cells/mlの濃度になるように、ラット抗塩基球細胞株(RBL-2H3;ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲)をウシ胎児血清(10容量%)含有ダルベッコ変法イーグル培地(インビトロジェン製)(以下、増殖培地と表記する)に懸濁した。この細胞懸濁液を96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング製)に1ウェルあたり0.2mlずつ播種し24時間、37℃、5%CO2下で培養した。次いで、培養液を吸引除去し、表5に示す濃度となるよう被験物質を溶解した増殖培地を1ウェル当たり1mlずつ添加し、2時間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。その後、カルシウムイオノフォアA23187(シグマアルドリッチ製)を50μMになるように各ウェルに添加し、更に30分間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。各ウェルの上清を回収し、上清中に遊離したヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biomedical Research製)を用いて定量した。 【0076】 得られた結果を表5に示す。この結果から、アスパラギン酸カリウム及びアミノエチルスルホン酸には、アルギン酸ナトリウムのヒスタミン遊離抑制作用を増強する作用があることが確認された。 【0077】 【表5】
【0078】 試験例5 アルギン酸のSCLへの吸着抑制評価試験−3 アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、及びヒアルロン酸ナトリウムが、蛋白汚れの付着したSCLへのアルギン酸の吸着に与える影響を検討するために、以下の試験を行った。 <試験材料> 下表6に示すSCL用組成物(実施例17−20及び比較例3)を常法に従って調製した。なお、本試験には、SCLとして下記のレンズを使用した。 A.商品名「メダリストプラス」(ボシュロム社製、含水、主材料:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ソフトコンタクトレンズ分類:グループI)、 B.商品名「2ウィーク アキュビュー」(ジョンソン&ジョンソン社製、含水、主材料:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とメタクリル酸(MAA)の共重合体) <試験方法> 卵白アルブミン1.0g、塩化リゾチーム0.1g 、豚胃ムチン0.1gを量り取り、100mLのリン酸緩衝液(第15改正日本薬局方 一般試験法 リン酸塩緩衝液,pH7.2参照)に溶解してpH=7.2として人工汚れ液を作成し、この液5mLに未使用の上記試験コンタクトレンズを浸漬し、約8時間37℃で振とうした。その後、各レンズを人工汚れ液から取り出し、過剰な人工汚れ液を生理食塩水で軽くすすいだ後、水分を軽く拭き取った。次いで、密封性の高い透明ガラスバイアル瓶に実施例17−20及び比較例3のSCL用組成物を4mLずつ分注し、それぞれのSCL用組成物中に、上記で得られた2枚のSCLを浸漬して、34℃で振とう数120回/分にて約72時間振とうした後、SCLを抜き取った。次いで、SCL浸漬処理後の各SCL用組成物中に残存する各アルギン酸の濃度(試験後Alg濃度)を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。尚、ブランクとして、SCLを浸漬しない以外は、上記と同様の工程を行い、SCLを浸漬しない場合におけるSCL用組成物中に残存するアルギン酸の濃度(ブランクAlg濃度)を測定した。 【0079】 測定されたアルギン酸の濃度から、上記数1に示す式に従って、アルギン酸の吸着量(μg/SCL 1枚)を算出し、更にアルギン酸の吸着抑制率(%)を求めた。 【0080】 【表6】
【0081】 結果を表6に併せて示す。比較例3のSCL用組成物では、アルギン酸がSCLに吸着していた。これに対して、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、又はヒアルロン酸ナトリウムを配合した実施例17−20のSCL用組成物では、アルギン酸のSCLへの吸着抑制効果が顕著に認められた。 【0082】 処方例1−65 下表7−17に記載の処方で、SCL用点眼剤(処方例1−6、13−19、37−52、56−58及び61−65)、SCL用洗眼剤(処方例7−12、20−36)、及びSCL用装着液(処方例53−55及び59−60)を調製した。 【0083】 【表7】
【0084】 【表8】
【0085】 【表9】
【0086】 【表10】
【0087】 【表11】
【0088】 【表12】
【0089】 【表13】
【0090】 【表14】
【0091】 【表15】
【0092】 【表16】
【0093】 【表17】
【0094】 参考処方例1−10 下表18に記載の処方で、酸素透過性HCL用点眼剤(処方例1−10)を調製した。 【0095】 【表18】
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000115991 【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
|
| 【出願日】 |
平成19年6月21日(2007.6.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100065215 【弁理士】 【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510 【弁理士】 【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100124431 【弁理士】 【氏名又は名称】田中 順也
|
| 【公開番号】 |
特開2008−24701(P2008−24701A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月7日(2008.2.7) |
| 【出願番号】 |
特願2007−164430(P2007−164430) |
|