| 【発明の名称】 |
アンサマイシン系抗生物質の新規用途及び新規血管新生抑制物質のスクリーニング方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】七里 眞義
【氏名】田中 雄二郎
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| 【要約】 |
【課題】種々の疾病における血管新生抑制に有効で、かつ安全で実用性の高い新規血管新生抑制剤、及びそのスクリーニング方法を提供すること。
【構成】本発明の血管新生抑制剤の有効成分は、従来より結核治療やグラム陽性菌感染などの抗菌剤として広く使用されてきたリファンピシンやリファマイシンSV、或いは3−フォルミルリファマイシンのようなアンサマイシン系の抗生物質からなる。本発明の有功成分は、優れた血管新生抑制作用を有する。本発明の血管新生抑制剤は、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、網膜血管新生症、炎症性疾患における血管新生抑制、及び心血管リモデリングに伴う血管新生抑制等に有効で、それぞれの疾病の治療剤等として用いることができる。また、本発明のスクリーニング方法は、遺伝子発現に基づく血管新生抑制シグナルの検出により、血管新生抑制物質の効果的なスクリーニングを可能とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アンサマイシン系抗生物質又はその薬理的に許容し得る誘導体を有効成分として含有してなる血管新生抑制剤。 【請求項2】 アンサマイシン系抗生物質が、リファンピシン、リファマイシン−SV又は3−フォルミルリファマイシンであることを特徴とする請求項1記載の血管新生抑制剤。 【請求項3】 薬理的に許容し得る誘導体が、薬理的に許容し得る塩又はその水和物であることを特徴とする請求項1又は2記載の血管新生抑制剤。 【請求項4】 血管新生抑制が、悪性腫瘍における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤。 【請求項5】 血管新生抑制が、糖尿病性網膜症における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤。 【請求項6】 血管新生抑制が、網膜血管新生症における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤。 【請求項7】 血管新生抑制が、炎症性疾患における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤。 【請求項8】 血管新生抑制が、心血管リモデリングに伴う血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤。 【請求項9】 培養血管内皮細胞に被検物質を添加し、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出することを特徴とする血管新生抑制物質のスクリーニング方法。 【請求項10】 培養細胞系における遺伝子発現量の変化に基づく血管新生抑制シグナルが、腫瘍退縮効果を示す濃度のエンドスタチンを投与した場合に惹起される遺伝子発現変化と類似であることを特徴とする請求項9記載の血管新生抑制物質のスクリーニング方法。 【請求項11】 培養細胞系における遺伝子発現量の変化に基づく血管新生抑制シグナルが、血管内皮細胞に発現する初期応答遺伝子及びその関連遺伝子、増殖・細胞周期関連遺伝子、接着因子、血管作動性因子、及び血管作動性因子受容体遺伝子の1又は2以上の遺伝子の発現であることを特徴とする請求項9又は10記載の血管新生抑制物質のスクリーニング方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、血管新生抑制剤、更に詳しくは、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、網膜血管新生症、炎症性疾患、心血管リモデリングによる心血管疾患等における血管新生抑制に有効な新規血管新生抑制剤、及び血管新生抑制物質のスクリーニング方法に関する。 【背景技術】 【0002】 血管新生とは、既存の血管から新しい血管が形成される現象であり、悪性(固形)腫瘍や糖尿病性網膜症、或いは網膜血管新生症や炎症性疾患(リュウマチ等)においては、その発症や進展に血管新生が深く関わっていることが知られている。例えば、固形腫瘍が増殖するには、血管新生によって栄養や酸素の供給と老廃物の除去の道を確保することが必須であり、また、癌治療上、重要な問題となっている転移において、その道を確保するという意味で血管新生が重要なステップとなっている。糖尿病性網膜症は、血管新生そのものが病態であり、放置すると失明に至る。したがって、血管新生を抑制することがこの疾患の予防・治療に結びつくと考えられ、その予防・治療薬の開発が行われている。 【0003】 このように、血管新生は、上記のような種々の病変において観察され、それぞれの病態の進展を助長するので、この血管新生の抑制がこれらの病態の予防・治療の観点から注目されている。血管新生に関わる疾患の予防または治療に向けて、血管新生を阻害する物質を探索すべく鋭意研究が推進されている。その結果、現在では、多くの血管新生抑制物質が開発され、その中のいくつかの物質については、臨床上での有効性が検討されている。 【0004】 例えば、エンドスタチンやアンジオスタチンなどの血管新生抑制因子は最も有用な腫瘍休眠療法薬と位置づけられ、実験動物の固形腫瘍を顕著に退縮させ(Cell, 88, 277-285, 1997)、反復投与を行っても従来の抗癌剤のような薬剤耐性を示さないため(Nature, 390, 404-407, 1997)、副作用の少ない理想的な抗癌剤となる可能性が指摘されていた。しかし、これらの因子は実用化されても抗腫瘍効果を示す有効な投与量の合成は容易ではなく、かつ製造コストも高くなることから、分子量50000に及ぶアンジオスタチンの臨床応用を既に断念した企業もある。 そこで、アンジオスタチンより低分子量のエンドスタチン(約20000)が期待を集め、最近、末期悪性腫瘍患者に対する臨床治験が米国で開始されたが、その受容体はもちろん、そのメカニズムも不明であった。 【0005】 エンドスタチンは、低血清培養下において内皮細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを生ずる(J. Biol. Chem., 274, 11721-11726, 1999)が、その程度は軽微であり、それだけで癌の原発巣・転移巣を退縮させる効果を説明するのは困難であった。なぜなら腫瘍細胞は、遺伝子変異のみらず遺伝子発現調節異常によっても増殖能が亢進するうえ、多くの増殖因子や血管新生促進因子を盛んに産生・分泌し、オートクリン/パラクリンとして自己の増殖を促進させることに加え、更に、新生された血管が豊富な血流を供給するからである。エンドスタチンがこうした環境下にあっても、現在報告されているような腫瘍血管新生を抑制するためには、内皮細胞に特異的に作用する、強力な細胞内シグナルを惹起しなければならない。これらの作用メカニズムは長く不明であった。 【0006】 一方、1957年イタリアLepetit社研究所のP. Sensiらは、地中海沿岸で採集した土壌よりStreptomyces mediterranei(後に、Nocardio mediterraneiと分類された)を分離し、その培養液よりグラム陽性菌、抗酸性菌に抗菌力を示す抗生物質、リファマイシンを得た。培養液中のリファマイシンは、リファマイシンA,B,C,D,Eなどからなる混合物で、リファマイシンOはリファマイシンBのの酸化型である。リファマイシンB及びリファマイシンOは、リファマイシンSに誘導され、リファマイシンSはアスコルビン酸で還元するとリファマイシンSVとなる。3−フォルミルリファマイシンは、リファマイシンSVを3−フォルミル化したものである。リファンピシンは、リファマイシンSVを3−フォルミル(3-formyl)化したものから誘導されたものである。リファマイシンは、芳香環系をもち、これにアンサ環(ansa ring)と呼ばれる脂肪族架橋が張られているので、アンサマイシン系抗生物質と総称される。 【0007】 また、上記リファンピシン(Rifampicin)は、Ciba-Geigy社(スイス)とLepetit社(イタリア)の共同研究によって開発されたアンサマイシン系抗生物質であり、リファマイシンSVの3−フォルミル(3-formyl)化したものから誘導されたものである。即ち、リファンピシンは、3−〔[(4−メチル−1−ピペラジニル)イミノ]メチル〕リファマイシン(3-〔[(4-methyl-1-piperazinyl)imino]methyl〕rifamycin)の構造を持つ、アンサマイシン系の半合成抗生物質であり、優れた抗結核作用を有し、結核治療剤として広く使用されてきた物質である。リファンピシンは、グラム陽性菌群のみならず、グラム陰性桿菌などにも抗菌活性を有し、結核以外にも、ブルセラ症、クラミジア感染、特にブドウ球菌などのグラム陽性菌感染などに使用されてきた。 【0008】 リファンピシンは、3−ホルミルリファマイシンSVをテトラヒドロフラン中で、1−アミノ−4−メチルピペラジンと反応させて合成されるが、工業的合成法を含めて、多くの合成法が開示されている(特公昭42−26800号公報、特公昭47−23303号公報、特公昭53−39400号公報、特公昭57−40155号公報、特公昭62−41671号公報、特公昭62−41672号公報、特公昭62−41673号公報)。 【0009】 【特許文献1】特公昭42−26800号公報。 【特許文献2】特公昭47−23303号公報。 【特許文献3】特公昭62−41671号公報。 【特許文献4】特公昭62−41672号公報。 【特許文献5】特公昭62−41673号公報。 【非特許文献1】Cell, 88, 277-285, 1997。 【非特許文献2】Nature, 390, 404-407, 1997。 【非特許文献3】J. Biol. Chem., 274, 11721-11726, 1999。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明の課題は、安全で実用性の高い新規血管新生抑制剤、更に詳しくは、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、網膜血管新生症及び炎症性疾患等、種々の疾病における血管新生抑制に有効で、かつ安全で実用性の高い新規血管新生抑制剤を提供することにある。また、本発明は血管新生抑制剤の有功成分となる新規血管新生抑制物質のスクリーニング方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意探索の結果、従来より優れた抗結核作用を有し、結核治療剤として広く使用されてきた物質であり、グラム陽性菌群のみならず、グラム陰性桿菌などにも抗菌活性を有し、結核以外にも、ブルセラ症、クラミジア感染、特にブドウ球菌などのグラム陽性菌感染などに使用されてきたリファンピシンが、優れた血管新生抑制作用を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。また、本発明においては、リファマイシン−SV又は3−フォルミルリファマイシンなどのアンサマイシン系抗生物質が、血管新生抑制作用を有することを確認し、本発明をなした。 【0012】 本発明において、リファンピシン等のアンサマイシン系抗生物質が、優れた血管新生抑制作用を有することを見い出したのは、本発明者がエンドスタチンの分子シグナルを明らかにしたことに始まる。本発明者は、最近、エンドスタチンによる血管新生抑制に関わる分子機構を発見した(FASEB Journal, 15, 1044-1053, 2001)。実験動物において腫瘍退縮効果を示す濃度のエンドスタチンを投与すると、血清・増殖因子・血管新生因子刺激下の培養血管内皮細胞に発現する種々の初期応答遺伝子、アポトーシス・細胞周期・細胞遊走関連遺伝子は著明に抑制される。 【0013】 こうした遺伝子発現量の低下の結果、内皮細胞増殖抑制作用は軽微だが、顕著な内皮遊走阻止作用をきたす。このようなエンドスタチンによる強力かつ広範囲にわたる遺伝子発現の抑制という細胞内応答を本発明者は「血管新生抑制シグナル」と命名したが、real-time定量的PCR法にてmRNA量の変化を検出することにより、短期間に数多くの因子の中からエンドスタチンと類似で、かつ作用が強力なシグナルを示すものを捜し出し、内皮細胞遊走阻止作用・増殖抑制作用をあわせて検討することが可能となった。 【0014】 従来、これらの血管新生抑制因子を発見、取得するまでのプロセスは、悪性腫瘍自身が血管新生抑制因子を産生しているであろうとのデータをもとに、腫瘍に対する退縮効果を指標として、目的とする物質が含まれる大量の体液・細胞培養上清などの濃縮を繰り返して蛋白を精製したため、遺伝子クローニングに至るまでには長い経過を要した。更に、例えば、分子量の大きいエンドスタチンやアンジオスタチンなどの血管新生抑制因子は、抗腫瘍作用を示す投与量の血管新生抑制因子を得るための合成は容易ではなかった。 【0015】 本発明者の構築した「血管新生抑制シグナル」を検出する血管新生抑制物質のスクリーニング方法により、多くの作用未知の物質の中からエンドスタチン型のシグナルを示す因子を検出することが可能となり、その中から、腫瘍退縮作用、新生血管抑制作用を検討することにより、新規の血管新生抑制因子を発見することが可能となった。このスクリーニング方法により、従来のプロセスは大幅に短縮され、また、エンドスタチンと同等の効果を発現するために必要なペプチド・蛋白・薬剤の投与量はどの程度かもあらかじめ推測することが可能となった。 【0016】 本法は腫瘍新生血管標的療法などの目的で臨床的に応用可能な新規因子の発見をめざすことを可能とし、更に、エンドスタチンの作用に基づく、血管新生抑制シグナルが普遍的に腫瘍退縮効果に相関することが確認されれば、これを指標に多くの合成ペプチドや化合物の生理活性を効率的にスクリーニングできる。すなわち、培養血管内皮細胞を用いて被検物質を添加し、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出すれば、多くの新規な血管新生抑制物質の効率的なスクリーニングが可能となる。そして、ペプチド・蛋白については分子量が比較的小さく、容易に臨床応用しやすい物にターゲットを絞って開発することが可能であり、また、薬剤や食品の成分についてもヒトに対する副作用などをスクリーニングの段階であらかじめ推測することも可能となる。 【0017】 本発明においては、上記スクリーニング方法によるアプローチにより、多くの候補物質の中から、リファンピシンのようなアンサマイシン系抗生物質が、強力な血管新生抑制作用を有することを見い出した。リファンピシンのようなアンサマイシン系抗生物質は、抗菌性の医薬として利用されていたものであるから、その安全性は確認されているものであり、その製造方法や投与方法も確立されているものであるから、実用性の高い血管新生抑制剤としての利用が期待できるものである。 【0018】 すなわち本発明は、アンサマイシン系抗生物質又はその薬理的に許容し得る誘導体を有効成分として含有してなる血管新生抑制剤(請求項1)や、アンサマイシン系抗生物質が、リファンピシン、リファマイシン−SV又は3−フォルミルリファマイシンであることを特徴とする請求項1記載の血管新生抑制剤(請求項2)や、薬理的に許容し得る誘導体が、薬理的に許容し得る塩又はその水和物であることを特徴とする請求項1又は2記載の血管新生抑制剤(請求項3)や、血管新生抑制が、悪性腫瘍における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤(請求項4)や、血管新生抑制が、糖尿病性網膜症における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤(請求項5)や、血管新生抑制が、網膜血管新生症における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤(請求項6)や、血管新生抑制が、炎症性疾患における血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤(請求項7)や、血管新生抑制が、心血管リモデリングに伴う血管新生抑制であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の血管新生抑制剤(請求項8)からなる。 【0019】 また本発明は、培養血管内皮細胞に被検物質を添加し、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出することを特徴とする血管新生抑制物質のスクリーニング方法(請求項9)や、培養細胞系における遺伝子発現量の変化に基づく血管新生抑制シグナルが、腫瘍退縮効果を示す濃度のエンドスタチンを投与した場合に惹起される遺伝子発現変化と類似であることを特徴とする請求項9記載の血管新生抑制物質のスクリーニング方法(請求項10)や、培養細胞系における遺伝子発現量の変化に基づく血管新生抑制シグナルが、血管内皮細胞に発現する初期応答遺伝子及びその関連遺伝子、増殖・細胞周期関連遺伝子、接着因子、血管作動性因子、及び血管作動性因子受容体遺伝子の1又は2以上の遺伝子の発現であることを特徴とする請求項9又は10記載の血管新生抑制物質のスクリーニング方法(請求項11)からなる。 【発明の効果】 【0020】 本発明により、強力な血管新生抑制作用を有し、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、網膜血管新生症、炎症性疾患、及び心血管疾患等、広い範囲の疾病における血管新生抑制に使用して、それぞれ抗腫瘍剤、糖尿病性網膜症治療剤、網膜血管新生症治療剤、炎症性疾患治療剤、又は心血管疾患治療剤等として用いることが可能な血管新生抑制剤を提供することができる。本発明の有効成分であるリファンピシンは、抗菌性の医薬として利用されていたものであるから、その安全性は確認されているものであり、その製造方法や投与方法も確立されているものであるから、本発明の血管新生抑制剤は、実用性の高い血管新生抑制剤として期待できるものである。また、本発明は、血管新生抑制剤の有功成分となる新規血管新生抑制物質のスクリーニング方法を提供する。本発明の遺伝子の発現に基づく「血管新生抑制シグナル」を検出する血管新生抑制物質のスクリーニング方法により、多くの作用未知の物質の中から、血管新生抑制作用を有する物質を効果的に検出することが可能となり、このスクリーニング方法により、従来のプロセスは大幅に短縮され、また、既存の薬剤であるエンドスタチンと同等の効果を発現するために必要なペプチド・蛋白・薬剤の投与量はどの程度かを予め推測するようなことも可能となった。 【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 本発明は、アンサマイシン系抗生物質又はその薬理的に許容し得る誘導体を有効成分として含有してなる血管新生抑制剤からなる。本発明における血管新生抑制剤の適用対象としては、特に制限はないが、悪性腫瘍における血管新生抑制、糖尿病性網膜症における血管新生抑制、網膜血管新生症における血管新生抑制、炎症性疾患における血管新生抑制、心血管リモデリングに伴う血管新生抑制等に用いて、それぞれ抗腫瘍剤、糖尿病性網膜症治療剤、網膜血管新生症治療剤、炎症性疾患治療剤、又は動脈硬化、血管障害治療剤等として用いることが出来る。 【0022】 本発明の有効成分は、リファンピシン、リファマイシン−SV、3−フォルミルリファマイシン等のアンサマイシン系抗生物質からなる。本発明の有功成分は、その投与のために、例えば、水に対する溶解度を増すために適宜、薬理的に許容し得る誘導体に変換することができる(特公平5−44467号公報)。その薬理的に許容し得る誘導体の一つとして、通常医薬の製剤化において用いられている薬理的に許容し得る塩又はその水和物等の形に変換することが出来る。リファンピシン等の本発明の有功成分の調製には、前記したように、既に公知のいずれの製造方法をも用いることが出来る。 【0023】 本発明の血管新生抑制剤の投与に当たっては、その対象に応じて、経口投与又は非経口投与(静脈内、筋肉内、皮下或いは点眼など)の適宜の投与方法を用いることが出来る。経口投与の場合は、本発明の有効成分を、固体又は液体の調剤として、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル、粉末、トローチ、溶液、懸濁液或いは乳液のような形態で、製剤化することができる。非経口投与の場合は、本発明の有効成分を適当な溶媒を用いた、例えば注射可能な調剤に調製することが出来る。そのような溶媒としては、例えば、水、水性溶媒(塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖溶液など)、水混和性溶媒(エチルアルコール、ポリエチレングルコール、プロピレングリコールなど)、及び非−水性溶媒(トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油など)が挙げられる。糖尿病性網膜症のような疾病への適用に際しては、本発明の有効成分を、点眼薬の製剤形態として投与することが出来る。 【0024】 本発明有効成分の投与量は、投与対象、投与形態によって、適宜定められるものであるが、経口投与のための単位投薬量は、例えば約50〜1000mgの活性成分、好ましくは約150〜500mgの活性成分が含まれる量を挙げることができる。 本発明の有効成分であるリファンピシンは、既に結核患者等、極めて多くの患者に使用されてきた薬剤であり、その用法や副作用も熟知されているところから、本発明の薬剤の使用に当たっては、それらの経験に基づいた、投薬形態、投薬方法を用いることが出来る。 【0025】 また、本発明は、新規血管新生抑制物質のスクリーニング方法を包含する。該本発明の血管新生抑制物質のスクリーニングを実施するには、培養血管内皮細胞を用いて被検物質を添加し、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出することにより行う。該遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルとしては、腫瘍退縮効果を示す濃度のエンドスタチンを投与した場合の遺伝子の発現シグナルを用いることができる。かかる遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルとしては、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルが、血管内皮細胞に発現する初期応答遺伝子及びその関連遺伝子、増殖・細胞周期関連遺伝子、接着因子、血管作動性因子、及び血管作動性因子受容体遺伝子の1又は2以上の遺伝子の発現を挙げることができる。 【0026】 該血管新生抑制シグナル遺伝子を具体的に例示すると、血管内皮細胞に発現する初期応答遺伝子としては、c−myc、c−fosが、その関連遺伝子としては、max、mad、mxi1が、増殖・細胞周期関連遺伝子としては、mitogen activated protein kinase-1, mitogen activated protein kinase-2が、接着因子としては、インテグリン−αv(integrin alpha v)、インテグリン−β3(integrin beta 3)が、血管作動性因子としては、エンドセリン−1(endothelin-1)の遺伝子が、及び血管作動性因子受容体の遺伝子としては、ET−A、AT1、AT2の各遺伝子が挙げられる。 【0027】 本発明の新規血管新生抑制物質のスクリーニング方法により、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出するには、血管内皮細胞を用いて、それ自体公知の検出方法により実施することができる。例えば、スクリーニングに用いる細胞としては、血管内皮細胞、特にヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞や、ヒト網膜血管由来内皮細胞を用いることができる。遺伝子の発現の検出もそれ自体公知の遺伝子の発現検出手段によって行うことができる。その手段の1つとして、real-time定量的PCR法を用いて、mRNAの変化を検出することにより、遺伝子の発現に基づく血管新生抑制シグナルを検出することができる。 【実施例】 【0028】 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 実施例1.リファンピシンによる血管新生抑制シグナル ヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞を、血清・増殖因子・血管新生促進因子の存在下で指数関数的増殖状態にし、各濃度のリファンピシンを添加し4時間後にRNAを抽出し、LightCyclerによる高感度real-time定量的PCR法(FASEB J., 15, 1044-1053, 2001)にて種々の遺伝子のmRNA量を定量した。結果を、図1に示す。図中Aは、focal adhesion kinase遺伝子を、Bはplatelet endothelial cell adhesion molecule −1(PECAM−1)遺伝子を、Cは接着因子であるインテグリン−αv遺伝子を、Dは接着因子であるインテグリン−β3遺伝子を、Eは血管収縮性ペプチドであるエンドセリン−1遺伝子を、Fはエンドセリン受容体サブタイプB(ETB)遺伝子を、Gは初期応答遺伝子であるc−myc遺伝子を、Hはvascular endothelial growth factor(VEGF)受容体のサブタイプであるFlt遺伝子をそれぞれ定量した結果をあらわす。 図に示されるように、各濃度のリファンピシンの添加は、エンドスタチン類似のスペクトルを示す血管新生抑制シグナルを惹起した。 【0029】 実施例2.リファンピシンによる血管内皮細胞増殖抑制作用 72時間増殖アッセイ(Cell, 88, 277-85, 1997)変法にてリファンピシンの内皮細胞の増殖に対する作用を検討した。 即ち、10%牛胎児血清含有増殖培地培養下において指数関数的増殖状態にあるヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞に対して、各濃度のリファンピシンを添加48〜72時間後に細胞数を自動血球計測装置にて測定した。 結果を、図2に示す。リファンピシンは濃度依存性にヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞の増殖を抑制した。 【0030】 実施例3.リファンピシンによる血管内皮細胞遊走抑制作用 Monolayer wounding法(FASEB J., 15, 1044-1053, 2001)により、リファンピシンの細胞遊走抑制作用を検討した。 即ち、10%牛胎児血清含有増殖培地培養下でコンフルエントに達したヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞に対して、あらかじめ40μg/mlのリファンピシンを添加し、24時間後にMonolayer wounding法でdenudingを行い、顕微鏡写真を経時的に撮影して、wounding edgeの前進距離を計測した。 結果を、図3に示す。リファンピシン40μg/ml添加によって血管内皮細胞の前進距離は著明に減少した。 図に示されるように、リファンピシンはヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞のchemotacticな遊走を抑制した。 【0031】 実施例4.実験動物移植腫瘍における抗腫瘍効果 ヌードマウスにヒト大腸癌由来細胞株(CW−2)を移植して作成した固形腫瘍に対し、リファンピシンを経口的に摂取させ、腫瘍退縮効果・転移巣退縮効果を示すかどうかをO' Raillyらの原法(Cell, 79, 315-28, 1994、Cell, 88, 277-85, 1997)に従って検討した。結果を、図4に示す。 固形腫瘍のサイズが200mm3に達した段階でリファンピシンを経口摂取させると、図4に示されるように、リファンピシン非摂取群に比較して有意に腫瘍増大は抑制された。 【0032】 実施例5.C型肝硬変による原発性肝癌患者における使用経験 肝臓病を専門とする本発明者は、偶然、肺結核を発症したC型肝硬変患者にリファンピシンを投与したところ、α−フェトプロテイン値が急激に低下することに気づいた。また、従来は頻回に肝癌を発症していたにもかかわらず、長期にわたって原発性肝癌の発症が見られなくなったことに気づいた。2例の患者の血中α−フェトプロテイン値の推移とリファンピシン投与との関係を図5に示す。 【0033】 実施例6.リファンピシン、リファマイシンSV、及び3−フォルミルリファマイシンの添加による血管新生抑制シグナル(遺伝子発現量の変化) ヒト網膜血管内皮細胞を、血清・増殖因子・血管新生促進因子の存在下で指数関数的増殖状態にし、各濃度のリファンピシン、リファマイシン−SV及び3−フォルミルリファマイシンを添加し、4時間後にRNAを抽出し、前述のLightCyclerによる高感度real-time定量的PCR法にて種々の遺伝子のmRNA量を定量した。その結果を図6に示す。A、B及びCはc−myc遺伝子を、D、E及びFはインテグリン−αv遺伝子を、G、H及びIはインテグリン−β3遺伝子を定量した結果を示す。また、A、D及びGはリファンピシン添加後の、B、E及びHはリファマイシン−SV添加後の、C、F及びIは3−フォルミルリファマイシン添加後の各mRNA量の変化を示したものである。図6に示されるように、リファンピシンによる血管新生抑制シグナル惹起作用は、糖尿病性網膜症の病態を形成するヒト網膜血管由来内皮細胞においても顕著に見られると同時に、リファンピシンの誘導体であるリファマイシン−SV及び3−フォルミルリファマイシンのいずれも強力な同様の作用を示すことが明らかとなった。 【図面の簡単な説明】 【0034】 【図1】本発明の実施例において、ヒト成人皮膚毛細血管内皮細胞に対して、各濃度のリファンピシンを添加した結果惹起された、リファンピシンによる血管新生抑制シグナルを示す図である。A:FAK遺伝子、B:PECAM−1遺伝子、C:インテグリン−αv遺伝子、D:インテグリン−β3遺伝子、E:エンドセリン−1遺伝子、F:ETB遺伝子、G:c−myc遺伝子、H:Flt遺伝子。 【図2】本発明の実施例において、72時間増殖アッセイ変法(10%牛胎児血清含有増殖培地培養下)を用いて、リファンピシンによるヒト成人毛細血管内皮細胞に対する増殖抑制作用を示す図である。 【図3】本発明の実施例において、コンフルエントに達した培養ヒト成人皮膚微小血管内皮細胞のdenudement後のwounding edgeの前進距離の時間経過を示す。細胞遊走は培養培地へのリファンピシン添加によって有意に抑制されている。 【図4】本発明の実施例において、ヌードマウスにヒト大腸癌由来細胞株(CW−2)を移植して作製した固形腫瘍に対し、リファンピシンを経口的に摂取させ、腫瘍増大抑制作用を示すかどうかを検討した結果を示す図である。腫瘍体積はリファンピシン経口摂取によって、有意に抑制されている。 【図5】本発明の実施例において、肺結核を発症したC型肝硬変患者に、リファンピシンを長期投与した際に得られたデータ、即ち、2例の患者の血中α−フェトプロテイン値の推移とリファンピシン投与との関係を示す図である。 【図6】本発明の実施例において、ヒト網膜血管内皮細胞に対して、各濃度のリファンピシン、リファマイシン−SV及び3−フォルミルリファマイシンを添加した結果惹起された、血管新生抑制シグナルを示す図である。c−myc、インテグリン−αv、インテグリン−β3の各mRNA量が、いずれも濃度依存的に抑制されていることを示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503360115 【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
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| 【出願日】 |
平成19年9月3日(2007.9.3) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100107984 【弁理士】 【氏名又は名称】廣田 雅紀
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| 【公開番号】 |
特開2008−1720(P2008−1720A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月10日(2008.1.10) |
| 【出願番号】 |
特願2007−228342(P2007−228342) |
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