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【発明の名称】 顎運動装置
【発明者】 【氏名】高西 淳夫

【氏名】大西 正俊

【氏名】▲高▼信 英明

【氏名】大月 佳代子

【氏名】沖野 晃久

【氏名】臼田 雄一

【氏名】斉藤 悠

【要約】 【課題】安全性を考慮しながら臨床現場における一般的な顎治療が行えるように必要最低限の構成とすることで、装置全体の小型化及び製造コストの大幅な低減を図ること。

【構成】患者Pの口腔内に装着される上顎マウスピースM1及び下顎マウスピースM2と、下顎マウスピースM2を支持する可動支持ユニット20と、下顎マウスピースM2が顎の開閉方向又は前後方向に動くように可動支持ユニット20を動作させるアクチュエータ24,53とを備えて顎運動装置10が構成されている。可動支持ユニット20は、アクチュエータ24,53により下顎マウスピースM2が動く方向を除く所定方向に当該下顎マウスピースM2が自由に動作可能にする可動支持体50を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔内に装着されるマウスピースと、このマウスピースを支持する支持手段と、前記マウスピースが顎の開閉方向又は前後方向に動くように前記支持手段を動作させる駆動手段とを備え、
前記支持手段は、前記駆動手段により前記マウスピースが動く方向を除く所定方向に当該マウスピースが自由に動作可能となる機構を備えたことを特徴とする顎運動装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記マウスピースに連なる軸部材と、当該軸部材に相対配置されたベース面と、当該ベース面上で前記軸部材を支持しながら動作可能な一対の可動支持体とを備え、
前記各可動支持体は、前記ベース面に対して前後左右方向に移動可能に設けられるとともに、前記軸部材をその軸線回り及び前記ベース面の法線回りに回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の顎運動装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、上下間に延びる湾曲ガイドと、前記支持手段を動作させるアクチュエータとを備え、
前記湾曲ガイドは、前記マウスピースを装着した患者の下顎頭を中心とした円弧状をなし、前記支持手段は、前記アクチュエータの駆動により、前記湾曲ガイドに沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の顎運動装置。
【請求項4】
前記湾曲ガイドを上下方向に延びる直線ガイドに交換可能に設けられていることを特徴とする請求項3記載の顎運動装置。
【請求項5】
前記マウスピースは、前記支持手段に対して上下方向に揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項4記載の顎運動装置。
【請求項6】
前記支持手段の自重による前記マウスピースの移動を規制する自重補償手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の顎運動装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、顎関節の治療に用いられる顎運動装置に係り、更に詳しくは、安全性を考慮しつつ治療に有用な動作が得られる必要最低限の構成にすることにより、小型化を促進できる顎運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開口障害や顎運動障害等をもたらす顎関節症の治療として、図14に示されるように、上顎J1に対して下顎J2を所定方向に強制的に動かす運動訓練がある。この運動訓練としては、下顎J2の付け根となる下顎頭Hを中心に下顎J2を強制的に円運動させる「開閉口訓練」(図14(A)参照)と、下顎頭Hを強制的に前方に引き出す「前方引き出し」(同図(B)参照)と、下顎頭Hを強制的に下方に引っ張る「顎間牽引」(同図(C)参照)とがある。そこで、本出願人らは、顎関節症の治療用として、主として「開閉口訓練」を行うことができる特許文献1の顎運動装置と、主として「顎間牽引」を行うことができる特許文献2の顎治療装置とを既に提案している。これら各装置は、患者Pの上下歯列に上顎マウスピースM1及び下顎マウスピースM2を装着した状態で、下顎マウスピースM2を治療に応じた所定の軌跡に沿って動作させるロボット構造となっている。このロボット構造は、下顎マウスピースM2を直交3軸方向に移動可能、且つ、当該直交3軸回りに回転可能に設けられており、これら6軸(6自由度)の動作制御を各軸で独立して行う6軸パラレル機構となっている。ここで、前記各装置での下顎マウスピースM2の動作制御は、次のように行われる。つまり、対象の運動訓練に関係のある方向については、その方向に下顎マウスピースM2を移動、回転させる他、対象の運動訓練に関係のない方向については、患者固有の顎の動きを阻害しないように、当該動きの方向をセンサ等で検出しながら下顎マウスピースM2を動作させるようになっている。また、これら各装置は、下顎マウスピースM2を所定の空間内で自由に動作制御できるため、その他の様々な顎治療訓練や、模擬的咀嚼による食品の評価等の他の用途にも利用可能となる。
【特許文献1】特開2001−29364号公報
【特許文献2】特開2005−87656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の顎運動装置と特許文献2の顎治療装置にあっては、下顎マウスピースM2に対する動作制御を6軸独立して行う構成となっているため、少なくとも6組のサーボ機構が必要で、また、6軸の座標計算を常に行わなければならない。その結果、装置内の機構及び制御系統が複雑になってしまい、装置全体の大型化を招来するとともに、装置が高価になってしまう。
【0004】
また、下顎マウスピースM2が空間6自由度を自由に動くことができるため、万一の暴走時に対する安全装置の設定が複雑となる。
【0005】
更に、顎に障害のある患者は、顎の動きに伴う受動的(付加的)な動作、例えば、開閉口時における下顎J2の左右方向の傾きや動き等があり、これら受動的な動作があった際に、そのままの状態では、下顎マウスピースM2によって下顎J2に大きな力が付与され、顎に別の障害を与える虞がある。そこで、このような受動的な動作があっても、下顎マウスピースM2により下顎J2に負荷を掛けないように、当該負荷が軽減する方向にマウスピースM2を移動させる逃げ動作を行う必要がある。従って、このような逃げ動作を前記各装置で行うには、下顎マウスピースM2が6自由度の動作制御がなされているため、当該動作制御時に、6軸全ての方向に対して下顎マウスピースM2に作用する力とモーメントをセンサで測定することが不可欠となる。ところが、このような多種の力データを制御ループ内に取り込むと、種々の要因で下顎マウスピースM2の動作制御が不安定になる場合がある。例えば、各マウスピースM1,M2が不意に接触した場合に、下顎マウスピースM2に振動が発生し、また、一部のセンサが万一動作不良となった場合に、下顎マウスピースM2の正確な動作制御が困難になる。また、各センサでの測定に応じて各アクチュエータを制御するため、当該制御に時間遅れが発生する場合があり、下顎マウスピースM2における瞬時の逃げ動作を確実に行うことができない。更に、6軸方向の力データを取得可能なセンサは高価であり、このことも装置の製造コストの上昇に繋がる。
【0006】
ところで、本発明者らは、従来の顎治療用の装置を使った研究及び調査から、顎運動治療の多くは、図14(A)の「開閉口訓練」のみであり、更に、同図(B)の「前方引き出し」も可能となれば、臨床現場における一般的な治療としては十分であることが判明した。
【0007】
本発明は、このような課題及び知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、安全性を考慮しながら臨床現場における一般的な顎治療が行えるように必要最低限の構成とすることで、装置全体の小型化を図り、製造コストの大幅な低減に寄与することができる顎運動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、患者の口腔内に装着されるマウスピースと、このマウスピースを支持する支持手段と、前記マウスピースが顎の開閉方向又は前後方向に動くように前記支持手段を動作させる駆動手段とを備え、
前記支持手段は、前記駆動手段により前記マウスピースが動く方向を除く所定方向に当該マウスピースが自由に動作可能となる機構を備える、という構成を採っている。
【0009】
(2)ここで、前記支持手段は、前記マウスピースに連なる軸部材と、当該軸部材に相対配置されたベース面と、当該ベース面上で前記軸部材を支持しながら動作可能な一対の可動支持体とを備え、
前記各可動支持体は、前記ベース面に対して前後左右方向に移動可能に設けられるとともに、前記軸部材をその軸線回り及び前記ベース面の法線回りに回転可能に設けられる、という構成を採ることができる。
【0010】
(3)また、前記駆動手段は、上下間に延びる湾曲ガイドと、前記支持手段を動作させるアクチュエータとを備え、
前記湾曲ガイドは、前記マウスピースを装着した患者の下顎頭を中心とした円弧状をなし、前記支持手段は、前記アクチュエータの駆動により、前記湾曲ガイドに沿って移動可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0011】
(4)ここで、前記湾曲ガイドを上下方向に延びる直線ガイドに交換可能に設けるとよい。
【0012】
(5)更に、前記マウスピースは、前記支持手段に対して上下方向に揺動可能に支持される、という構成も併せて採用することができる。
【0013】
(6)また、前記支持手段の自重による前記マウスピースの移動を規制する自重補償手段を更に備える、という構成を採ることが好ましい。
【0014】
なお、本特許請求の範囲及び明細書において、顎運動装置の説明に用いられる位置的用語或いは方向的用語は、特に明記しない限り、図3に示されるように、装置を正面から見たときの位置及び方向を意味する。具体的に「前」は、装置を使用する患者側となる図3中紙面直交方向の前側を意味し、「後」は、同図中紙面直交方向の後側を意味する。また、「左」は、同図中左側を意味し、「右」は、同図中右側を意味する。更に、「上」は、同図中上側を意味し、「下」は、同図中下側を意味する。
【発明の効果】
【0015】
前記(1)の構成によれば、駆動手段によりマウスピースが顎の開閉方向又は前後方向に動くため、臨床現場で一般的な顎治療である「開閉口訓練」及び「前方引き出し」に特化して行われることになり、それ以外の方向のマウスピースの移動や回転はフリーになる。このため、治療中に患者の顎の動きに伴う受動的な動作があった場合、アクチュエータ等を使ったマウスピースの動作制御を行わずに、安全性を考慮して顎に負荷がかからない方向に自然にマウスピースを瞬時に逃がすことができ、運動訓練に関係のない方向の顎の動きがマウスピースで阻害されることを確実に防止できる。また、装置内のセンサやアクチュエータの全体数を大幅に減らすことができ、複雑な制御系統が不要になることから、装置全体の小型化及び装置の低価格化を促進することができる。
【0016】
前記(2)のように構成することで、ロボット等に使用される多関節アーム構造等を使わずに、比較的簡単な構成により、顎の受動的な動作に応じた4自由度のマウスピースの動作をさせることができる。
【0017】
前記(3)の構成によれば、顎の動きとアクチュエータとの動きを直結或いは直感的に分かり易い関係とすることができる。このため、アクチュエータの駆動制御に際し複雑な座標計算が不要になり、アクチュエータの駆動制御は、オペレータによって、対象となるアクチュエータのスイッチをON−OFFする操作と所望速度の変更や切換を行う操作とに直接応答させればよい。従って、アクチュエータを含む駆動機構としてサーボ機構を使用する必要がなくなり、制御系統の簡素化を図ることができる他、エンコーダ等の位置検出装置等が不要になって部品点数を減少させることもできる。また、アクチュエータの動きがそのままエンドエフェクタであるマウスピースの動きと直結しているため、安全上の動作制限ストッパを顎の動作範囲から簡単に設定することができる。例えば、マウスピースの動作制限は、アクチュエータの動作範囲の制限のみで簡単に設定できる。
【0018】
前記(4)の構成により、マウスピースを鉛直方向の下方に移動させることができ、顎治療の運動訓練のうち「顎間牽引」も行うことができ、簡単な構成でより汎用的な顎治療用の運動訓練が可能となる。
【0019】
前記(5)の構成により、直線ガイドによるマウスピースの下方移動時に、当該マウスピースが上方に回転することになり、「開閉口訓練」を行うことができる。従って、直線ガイドを湾曲ガイドに交換しなくても、マウスピースの交換のみで、「開閉口訓練」及び「顎間牽引」が可能となり、手間を掛けずに異なる訓練を迅速に始めることができる。
【0020】
前記(6)の構成によれば、支持手段の自重の影響を受けずに、マウスピースを所望の方向に確実に動かすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
【0022】
図1には、第1実施形態に係る顎運動装置の概略斜視図が示されている。この図において、顎運動装置10は、患者が顎治療の運動訓練を行えるように所定の動力で動作する訓練機11と、訓練機11の動作を制御する制御装置12と、当該制御装置12に繋がって訓練機11を操作するためのコントローラ13及びタッチパネル14とを備えて構成されている。
【0023】
前記訓練機11は、図1〜図3に示されるように、患者P(図2参照)の口腔内における上下両顎J1,J2側に固定される上顎マウスピースM1及び下顎マウスピースM2と、前後方向に貫通する門型のケース16と、ケース16の上端側に取り付けられて上顎マウスピースM1を固定支持する上側アーム18と、ケース16の内側部分に取り付けられて下顎マウスピースM2を可動支持する支持手段としての可動支持ユニット20と、当該可動支持ユニット20を下方から支持するガススプリング22及び開閉口アクチュエータ24とを備えて構成されている。
【0024】
前記各マウスピースM1,M2は、ほぼU字状をなす金属プレートの上面側に、患者Pの歯形に嵌合する樹脂製の装着部分(図示省略)が固定されており、当該装着部分が患者Pの歯列に嵌合することで、各マウスピースM1,M2が上下歯列に装着される。
【0025】
前記ケース16は、設置面となるほぼ方形状の底板27と、この底板27の左右両端側から起立するほぼ台形状の側板28,28と、これら側板28,28の上端間に掛け渡されたほぼ方形状の上板30とを備えている。
【0026】
前記各側板28,28の内面側には、上下間に延びる湾曲溝32と、当該湾曲溝32の後側で上下間に延びる湾曲ガイド33とがそれぞれ設けられている。また、各側板28,28の外面側には、訓練機11の持ち運び用の取っ手35,35と、取っ手35,35の下方位置に設けられ、訓練時に患者Pが把持する把持部36,36とがそれぞれ設けられている。これら湾曲溝32、湾曲ガイド33、取っ手35及び把持部36は、それぞれ左右一対設けられ、それぞれ左右対称となる相対位置に設けられている。なお、湾曲溝32は、少なくとも左右何れか一方に設けられていればよい。
【0027】
前記湾曲溝32は、各マウスピースM1,M2を装着した患者Pの下顎頭H(図2参照)を中心とした円弧状に設けられており、溝内には、外側に貫通する貫通穴38(図1参照)が複数点在するように形成されている。湾曲溝32には、ブロック状のストッパ39が嵌合するようになっており、当該ストッパ39は、ケース16の外側から貫通穴38に挿入されたねじ40(図1参照)によって固定される。従って、ねじ40を挿入する貫通穴38の位置を変えることで、ストッパ39の固定位置を湾曲溝32内で任意に変えることができる。
【0028】
前記各湾曲ガイド33は、縦断面視でほぼ角状をなすレールにより構成されており、湾曲溝32に対して半径の大きな同心の円弧状に設けられている。
【0029】
前記各取っ手35は、平面視略コ字状に設けられており、端部がそれぞれ側板28に固定されている。
【0030】
前記各把持部36は、側板28から外側に延びる丸棒状をなし、側板28に対して一端側が取り付けられた片持状に設けられている。当該一端側は、図示省略したヒンジによって、下向きに回転可能に側板28に連結されており、これによって、図1中二点鎖線で示されるように、側板38に添った状態とすることができる。つまり、使用時には、図1中実線で示されるように、把持部36が左右方向に延びた使用状態にされる。一方、不使用時には、図1中二点鎖線で示されるように、把持部36が側板38に添って上下方向に延びた折り畳み状態にされる。
【0031】
前記上側アーム18は、ほぼ角棒状をなし、上板30から前方に延びる片持状に設けられており、その先端側に上顎マウスピースM1が着脱自在に取り付けられている。また、図示省略しているが、上側アーム18は、上顎マウスピースM1の固定位置を上下方向及び前後方向に変えた状態で装着できる構造となっており、これにより、上顎マウスピースM1を固定する際には、運動訓練する患者Pに合わせて、上顎マウスピースM1を前後方向及び上下方向に位置調整可能となる。
【0032】
前記可動支持ユニット20は、後述するように姿勢が変わるため、以下、可動支持ユニット20の位置及び方向を述べる際には、特に明示しない限り、図4に示されるほぼ水平状態の姿勢時における位置及び方向を使って説明する。
【0033】
可動支持ユニット20は、ケース16の内部から後方に突出するサイズに設けられている。この可動支持ユニット20は、図2〜図4に示されるように、下顎マウスピースM2が先端側に取り付けられたほぼ角棒状の下側アーム43と、下側アーム43の下方に設けられた第1のロードセル45と、第1のロードセル45を支持するロードセル支持部材46と、下側アームの43の後端側に連なって後方に延びるほぼ丸棒状の軸部材48と、当該軸部材48を支持しながら動作可能な前後一対の可動支持体50と、これら可動支持体50が取り付けられた平面視ほぼ方形板状のベース51と、このベース51の下面側に取り付けられた前方引き出しアクチュエータ53と、後側の可動支持体50及び前方引き出しアクチュエータ53を連結する連結部55と、ベース51の左右両側に連なって、左右両側の前記湾曲ガイド33,33に係合する側部57,57とを備えて構成されている。
【0034】
前記下側アーム43は、軸部材48及び可動支持体50によって片持状に支持されており、上側アーム18の下方位置で当該上側アーム18にほぼ沿って前方に延びている。また、下側アーム43の先端側には、下顎マウスピースM2が着脱自在に取り付けられている。
【0035】
前記第1のロードセル45は、下側アーム43の下面に接触するように取り付けられており、下顎マウスピースM2の上下方向すなわち下顎J2の開閉方向の顎反力を測定できるようになっている。この第1のロードセル45の測定値は、前記制御装置12(図1参照)に入力され、タッチパネル14に表示される。
【0036】
前記ロードセル支持部材46は、下側アーム43と軸部材48との取り付け部分から垂下するように設けられ、当該取り付け部分で片持状に支持されており、ベース51に接触しない高さに設けられている。
【0037】
なお、以下の説明において、「X軸」とは、図4に示されるように、直交三軸のうち前後方向に延びる軸線を意味し、「Y軸」とは、同左右方向に延びる軸線を意味し、「Z軸」とは、同上下方向に延びる軸線を意味する。また、X軸回りを「ロール軸」と称し、Y軸回りを「ピッチ軸」と称し、Z軸回りを「ヨー軸」と称する。更に、これら「X軸」、「Y軸」、「Z軸」、「ロール軸」、「ピッチ軸」及び「ヨー軸」を「6軸」と総称する。
【0038】
前記各可動支持体50,50は、同一の構造となっており、軸部材48に相対配置されるベース51の上面(ベース面)に沿って軸部材48を4自由度で動作可能に支持する機構が採用されている。つまり、各可動支持体50,50は、軸部材48と一体的にベース51の上面に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられるとともに、軸部材48をその軸線回りとなるロール軸方向に回転可能に設けられ、且つ、軸部材48をベース51の上面の法線回りとなるヨー軸方向に回転可能に設けられている。
【0039】
具体的に、可動支持体50は、図5に示されるように、ベース51の上面に固定され前後方向(X軸方向)に延びるX軸レール59と、当該X軸レール59に係合して前後方向に摺動可能なブロック状のX軸摺動部材60と、このX軸摺動部材60の上面に固定されて、X軸摺動部材60と一体的に前後方向に移動可能なX軸テーブル62と、X軸テーブル62上に固定され左右方向(Y軸方向)に延びるY軸レール64と、当該Y軸レール64に係合して左右方向に摺動可能なブロック状のY軸摺動部材65と、このY軸摺動部材65の上面に固定されて、Y軸摺動部材65と一体的に左右方向に移動可能なY軸テーブル67と、軸部材48をロール軸方向に回転可能に支持する軸受部材69と、軸受部材69をヨー軸方向に回転可能に支持するとともに、Y軸テーブル67の上面に固定された回転支持部材70とからなる。
【0040】
前記前方引き出しアクチュエータ53は、図2及び図4に示されるように、そのロッド72がベース51の前後方向に進退可能となるリニアアクチュエータであり、前記制御装置12(図1参照)によってその駆動が制御される。
【0041】
前記連結部55は、後側の可動支持体50におけるX軸テーブル62の後端から一体的に後方に延びる第1の連結部材74と、前方引き出しアクチュエータ53のロッド72に取り付けられる第2のロードセル75と、この第2のロードセル75に連なる第2の連結部材77とを備えている。
【0042】
前記第1及び第2の連結部材74,77は、第2のロードセル75を介してねじ79,79で連結可能となっている。ここで、各連結部材74,77が連結された状態では、後側の可動支持体50のX軸テーブル62と前方引き出しアクチュエータ53のロッド72とが直結されることになり、当該ロッド72の進退によって、後側の可動支持体50がベース51の上面に対して前後方向に移動し、それに連動して前側の可動支持体50もベース51の上面に対して前後方向に移動する。これに伴い、軸部材48が前後方向に移動して、下側アーム43及び下顎マウスピースM2が前後方向に移動することになり、顎治療の運動訓練のうち図14(B)の「前方引き出し」が行えるようになる。従って、前方引き出しアクチュエータ53及び連結部55は、下顎マウスピースM2が前後方向に動くように前記支持手段を動作させる駆動手段を構成する。一方、この状態からねじ79,79を取り外すことで、後側の可動支持体50は、前方引き出しアクチュエータ53に連動しなくなり、各可動支持体50,50は、フリーの状態となって、前述した4軸方向(4自由度)について自由に動作可能になる。
【0043】
前記第2のロードセル75は、各連結部材74,77をねじ79,79によって締結することで、下顎マウスピースM2の前後方向の顎反力を測定できるようになっている。この第2のロードセル75の測定値も、前記制御装置12に入力され、タッチパネル14に表示される。
【0044】
前記側部57は、図2〜図4に示されるように、ベース51の左右両端側に連なる側板81,81と、これら側板81,81の外面側に固定されて前記湾曲ガイド33,33に係合し、当該湾曲ガイド33,33に沿って摺動可能な摺動体82とを備えている。従って、可動支持ユニット20は、湾曲ガイド33,33に沿って摺動体82,82が摺動することで昇降可能になる。この昇降時には、湾曲ガイド33,33が各マウスピースM1,M2を装着した患者Pの下顎頭Hを中心とした円弧状に設けられているため、当該下顎頭Hを中心として可動支持ユニット20が回転運動することになる。これに伴い、下顎マウスピースM2は、固定配置された上顎マウスピースM1に対して下顎頭Hを中心として上下方向に回転運動することになる。以上のように、可動支持ユニット20が湾曲ガイド33,33に沿って昇降する際には、下顎マウスピースM2が上顎マウスピースM1に対して下顎J2の開閉方向に回転運動することになる。
【0045】
前記ガススプリング22は、常時伸展する方向の力を発生しており、ケース16の底板27及びベース51の下面にそれぞれ前後回転可能に取り付けられ、可動支持ユニット20の自重により当該可動支持ユニット20が下降しないように、その自重をキャンセル可能に支持するようになっている。従って、このガススプリング22は、可動支持ユニット20の自重による下顎マウスピースM2の移動を規制する自重補償手段を構成する。
【0046】
前記開閉口アクチュエータ24は、底板27とベース51にそれぞれ前後回転可能に取り付けられている。この開閉口アクチュエータ24は、ロッド83が上下方向に進退するように配置されたリニアアクチュエータであり、前記制御装置12によってその駆動が制御される。このような構成の開閉口アクチュエータ24が駆動すると、可動支持ユニット20が湾曲ガイド33,33に沿って昇降し、これによって、下顎マウスピースM2が上顎マウスピースM1に対して開閉口方向に回転運動し、顎治療の運動訓練のうち図14(A)の「開閉口訓練」が行えるようになる。従って、開閉口アクチュエータ24及び湾曲ガイド33は、患者の下顎J2が開閉方向に動くように下顎マウスピースM2を動作させる駆動手段を構成する。
【0047】
前記制御装置12は、コントローラ13及びタッチパネル14に対する医師等のオペレータからの操作指令に応じて、開閉口アクチュエータ24及び前方引き出しアクチュエータ53の駆動を制御する他、安全性を考慮した以下の制御をも行うようになっている。すなわち、ケース16の側板28の湾曲溝32内における任意の上下二箇所位置に取り付けられたストッパ39は、可動支持ユニット20の昇降によってその側板81に接触可能なサイズになっており、ストッパ39の表面には、図示省略したリミットスイッチが取り付けられている。このため、可動支持ユニット20が昇降することで、ストッパ39に接触してリミットスイッチが投入されると、下顎マウスピースM2が更に移動しないように、開閉口アクチュエータ24の駆動が停止するようになっている。その他、各アクチュエータ24,53のロッド83,72の進退量が下顎マウスピースM2の移動量に直接対応するため、患者の下顎J2の可動域内で下顎マウスピースM2が動くように、直接、ロッド83,72の進退量を所定の範囲内に制御することもできる。以上のように、制御装置12は、安全性を考慮した簡単な機器制御系統で構成されることになる。なお、図2等に示される第1のロードセル45での測定値が所定の閾値を超え、「開閉口訓練」時における下顎J2の開閉方向の顎反力が正常の範囲から外れた場合、開閉口アクチュエータ53の駆動を停止させることもできる。また、第2のロードセル75での測定値が所定の閾値を超え、「前方引き出し」時における下顎J2の前方引き出し方向の顎反力が正常の範囲から外れた場合、前方引き出しアクチュエータ53の駆動を停止させることもできる。
【0048】
前記コントローラ13は、図6に示されているように、手の平に収まるサイズの箱型に設けられており、図6中側面側に配置されたロック解除ボタン85と、同図中前面側に配置された開閉動作指示ボタン86及び前後動作指示ボタン87とを備えている。
【0049】
前記ロック解除ボタン85は、それを押している間だけ、開閉動作指示ボタン86及び前後動作指示ボタン87のボタン操作が有効になるように設定されている。
【0050】
前記開閉動作指示ボタン86は、図6中上下二箇所に配置され、同図中上側のボタンが、下顎マウスピースM2を開口方向に移動させるように開閉口アクチュエータ24に駆動指令するボタンであり、同図中下側のボタンが、下顎マウスピースM2を閉口方向に移動させるように開閉口アクチュエータ24に駆動指令するボタンである。
【0051】
前記前後動作指示ボタン87は、図6中左右二箇所に配置され、同図中左側のボタンが、下顎マウスピースM2を前方に移動させるように前方引き出しアクチュエータ53に駆動指令するボタンであり、同図中右側のボタンが、下顎マウスピースM2を後方に移動させるように前方引き出しアクチュエータ53に駆動指令するボタンである。
【0052】
前記タッチパネル14は、各アクチュエータ24,53の駆動速度等を指令可能に設けられているとともに、ロードセル45,75で測定された顎反力の大きさが表示されるようになっている。その他、タッチパネル14は、前記各ボタン86,87と同様の操作を行える等、他の機能を付加するように構成してもよい。
【0053】
次に、前記顎運動装置10による顎治療用の運動訓練の手順及び動作について説明する。
【0054】
先ず、上顎マウスピースM1及び下顎マウスピースM2を位置決めし、当該各マウスピースM1,M2を患者Pの口腔内の上下各歯列に装着する。そして、患者Pは両手で図1等に示される把持部36,36を持った状態で、医師等のオペレータにより、コントローラ13及びタッチパネル14が操作され、訓練が開始される。
【0055】
先ず、顎の「開閉口訓練」を行う場合には、図2に示されるように、第1及び第2の連結部材74,77の連結状態を解除した上で、開閉口アクチュエータ24を駆動させ、可動支持ユニット20を湾曲ガイド33,33に沿って昇降させる。このとき、前述したように、可動支持ユニット20が下顎頭Hを中心として図2中矢印A1方向に回転運動することで、下顎マウスピースM2が開閉口方向に回転する。この際、下顎マウスピースM2に連なる可動支持体50の構造により、下顎マウスピースM2は、前後左右方向に自由に移動可能となり、また、ロール軸及びヨー軸方向に自由に回転可能となる。従って、下顎マウスピースM2の上下方向の動作過程では、当該上下方向以外の方向の顎の動きに応じて、下顎マウスピースM2が4自由度でフリー動作可能になる。例えば、下顎マウスピースM2の上下動により患者Pが「開閉口訓練」をしている際に、患者Pの下顎J2が上顎J1に対して左右方向に動くような場合、下顎マウスピースM2は、下側アーム43及び軸部材48とともに、図7(A)の状態から同図(B)の状態に姿勢を変えることができる。このため、患者の下顎J2の左右方向の動きに合わせて、下顎マウスピースM2が下顎J2に負荷を与えない方向に逃げることができる。従って、「開閉口訓練」時における下顎J2の左右方向の傾きや動き等、顎の動きに伴う受動的な動作に応じて無理なく下顎マウスピースM2を動かすことができる。
【0056】
一方、顎の「前方引き出し」を行う場合には、図2等に示されたロードセル75を第1及び第2の連結部材74,77にねじ79,79で取り付けることで、可動支持体50と前方引き出しアクチュエータ53とを直結させて、当該前方引き出しアクチュエータ53を駆動させる。すると、可動支持体50がベース51上を前後方向(図2中矢印A2方向)に移動して、軸部材48に連なる下側アーム43及び下顎マウスピースM2は、前後方向に移動することになる。この際、可動支持体50は、前述した4自由度のうち、前方引き出しアクチュエータ53により動作される前後方向を除く方向に対してフリー動作が可能になる。従って、患者Pの前後方向以外の下顎J2の受動的な動作に逆らわずに、下顎マウスピースM2を前後方向に動かすことが可能となる。なお、この場合には、開閉口アクチュエータ24の駆動が停止しているため、可動支持ユニット20が湾曲ガイド33,33に沿って昇降することがなく、下顎マウスピースM2に対する下顎J1の開閉方向への動作はロックされることになる。
【0057】
従って、このような第1実施形態によれば、臨床現場での一般的な顎治療である「開閉口訓練」及び「前方引き出し」が、患者固有の顎の動きに合せながら二個のアクチュエータ24,53のみで効果的に行えることになる。その結果、装置の全体構成や制御アルゴリズムを簡単にすることができ、安全性を確保しながら、装置全体の小型化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
【0058】
次に、前記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、前記実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0059】
(第1変形例)
前記可動支持ユニット20としては、前記実施形態で説明した構造に限定されるものではなく、前述したように、下顎マウスピースM2の4自由度のフリー動作が可能になる限り、種々の機構を採用することができる。例えば、前記実施形態の可動支持体50を図8に示される可動支持体88に代替し、軸部材48と下顎マウスピースM2との間に2自由度の回転機構89を設けるようにしてもよい。ここでの可動支持体88は、前記X軸レール59及び前記X軸摺動部材60と、このX軸摺動部材60の上面の前後二箇所に固定された前記軸受部材69,69とにより構成されている。そして、回転機構89は、軸部材48の先端側に連なって上下方向に延びる第1の円柱部材90と、第1の円柱部材90の前方に相対配置された第2の円柱部材91と、第2の円柱部材91から前方に突出し、下顎マウスピースM2が着脱自在に取り付けられる取付部92と、第1及び第2の円柱部材90,91の上下両端側間に掛け渡された連結プレート93,93とを備えている。各連結プレート93,93は、第1及び第2の円柱部材90,91の各軸線部分を支点として当該軸線回りにそれぞれ回転可能に連結されている。なお、前記第1実施形態と同様に、前記ロードセル45を下顎マウスピースM2の後方部分に取り付け、第1実施形態と同様の顎反力を測定できるようにしてもよい。
【0060】
(第2変形例)
可動支持ユニット20が湾曲ガイド33,33に沿って下降する際、可動支持ユニット20は、図2に示されるように、その前部よりも後部が下がった傾斜状態となり、その傾斜角度は、可動支持ユニット20の下降に応じて次第に大きくなる。すると、「開閉口訓練」時においては、前方引き出しモータ53が可動支持体50に直結しておらず、当該可動支持体50の前後方向の移動が拘束されないため、可動支持ユニット20の自重によって、可動支持体50が後方に移動し易くなる。そこで、可動支持ユニット20の後部にも、その自重による下顎マウスピースM2の移動を規制する自重補償手段を設けるとよい。ここでの自重補償手段としては、例えば、図9(A)に示されるリンク式カウンタウエイト94と、同図(B)に示されるベルト式カウンタウエイト95とがある。
【0061】
前記リンク式カウンタウエイト94は、ベース51の下面側で前後方向に延びるガイド96と、このガイド96に対して摺動可能に係合する重り部材97と、後側の可動支持体50のX軸テーブル62と重り部材97とをそれらの後側で連結するリンク機構99とにより構成されている。このリンク機構99は、X軸テーブル62に対して上下方向に回転可能に接続された第1のロッド100と、重り部材97に対して上下方向に回転可能に接続された第2のロッド101と、ベース51の後端側から後方に延びる延長部材102と、第1及び第2のロッド100,101の端部に回転可能に連結されるとともに、延長部材102に回転可能に連結された第3のロッド103とを備えて構成されている。このリンク機構99は、可動支持ユニット20の自重によって可動支持体50が後方に移動しようとすると、重り部材97を前方に移動させるように設定され、当該重り部材97は、可動支持体50の後方への移動を規制可能に釣り合う重さに設定されている。
【0062】
前記ベルト式カウンタウエイト95は、ベース51に対して回転可能に取り付けられた前後二箇所のプーリ105,105と、当該プーリに掛け回されたベルト106と、各プーリ105,105の下端間に延びるベルト106の下側部分に固定された重り部材107とを備えている。当該重り部材107の反対側となるベルト106の上側部分は、後側の可動支持体50のX軸テーブル62が固定されている。このベルト式カウンタウエイト95は、可動支持ユニット20の自重によって可動支持体50が後方に移動しようとすると、ベルト106によって重り部材107を前方に移動させなければならず、当該重り部材107は、可動支持体50の後方への移動を規制可能に釣り合う重さに設定されている。
【0063】
(第3変形例)
前記ケース16の側板28,28に取り付けられている湾曲ガイド33,33を着脱自在とし、当該湾曲ガイド33,33を、図10に示されるように、上下方向に延びる直線ガイド108,108に交換可能にするとよい。このように、直線ガイド108に交換した状態で、可動支持ユニット20の摺動体82を直線ガイド108に摺動可能に係合させると、可動支持ユニット20は、開閉口アクチュエータ24の駆動によって、直線ガイド108に沿ってほぼ鉛直方向に昇降することになり、顎運動装置10で図14(C)の「顎間牽引」を行うことも可能になる。なお、直線ガイド108を使用した場合でも、前記第1及び第2の連結部材74,77をねじ79で接続することで、湾曲ガイド33を使用した場合と同様、図14(B)の前方引き出しが可能になる。
【0064】
(第4変形例)
ここで、前記直線ガイド108を使用した場合でも、図11に示される揺動型マウスピースを用いると、湾曲ガイド33を使用しなくても、可動支持ユニット20の鉛直方向の昇降で「開閉口訓練」を行うこともできる。この揺動型マウスピースは、ほぼU字状のフレーム部材109の開放端側に、それぞれ下顎マウスピースM2が回転可能に取り付けられた構成となっている。つまり、ここでは、フレーム部材109が前記下側アーム43(図10参照)に取り付けられるため、下顎マウスピースM2は、下側アーム43及びフレーム部材109に対して上下方向に揺動可能に支持される。
【0065】
なお、以上の第1実施形態及び各変形例においては、下顎マウスピースM2による顎反力の測定に第1及び第2のロードセル45,75を用いたが、これに限定されるものではなく、各ロードセル45,75を6軸力センサ等に代替することも可能である。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
(第2実施形態)
【0067】
本実施形態は、第1実施形態の顎運動装置10を更にコンパクト化した構成としたところに特徴を有する。
【0068】
すなわち、ここでの顎運動装置110は、図12に示されるように、ほぼU字状の上側バー112と、上側バー112の左右両端側に相対回転可能に連結されたU字状の下側バー113と、下側バー113を回転させて上側バー112に対して離間接近動作させる駆動手段としてのアクチュエータ115と、上側バー112の左右方向ほぼ中央から前方に延びる上側アーム117と、上側アーム117の先端側に着脱自在に取り付けられる上顎マウスピースM1と、下側バー113の左右方向ほぼ中央部分から前方に設けられた支持手段としての多関節型アーム118と、多関節型アーム118の先端側に着脱自在に取り付けられた下顎マウスピースM2とを備えて構成されている。
【0069】
前記多関節型アーム118は、図13に示されるように、下側バー113の上面に対してヨー軸方向に回転可能に取り付けられている。この多関節型アーム118は、ヨー軸方向に回転可能に連結された板状の第1、第2及び第3のアーム121,122,123と、最も前端側に位置する第3アーム123の前端側でロール軸方向に回転可能に取り付けられた円盤部材124とを備えており、この円盤部材124の前端部分に、下顎マウスピースM2が取り付けられることになる。
【0070】
図12に示される本実施形態の顎運動装置110は、次のように使用される。すなわち、上側バー112及び下側バー113の内側の空間に患者の顔部を配置し、上側バー112に対する下側バー113の回転支点126,126を患者の下顎頭H(図2等参照)の横になるように位置合せする。そして、各マウスピースM1,M2を患者の上下歯列に装着した上で、アクチュエータ115を駆動させると、下側バー113が上側バー112に対して離間接近するように上下方向に回転する。これに伴って、下顎マウスピースM2は、開閉口方向に動作することになり、「開閉口訓練」による顎治療が可能となる。この際、多関節アーム118は前述の構成によって4自由度の動作が可能となり、下顎マウスピースM2は、開閉口方向以外の方向に自由に動作可能となる。従って、第1実施形態の顎運動療装置10と同様に、患者Pの開閉口時における下顎J2の左右方向の傾きや動き等、顎の動きに伴う受動的な動作に応じて無理なく下顎マウスピースM2の逃げ動作を行うことができる。
【0071】
なお、本発明における装置各部の構成は、前述した各構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、形状、サイズ、機構等の種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態に係る顎運動装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】図1に対して可動支持ユニットの姿勢を変えた状態の訓練機の概略断面側面図。
【図3】可動支持ユニットがほぼ水平状態にあるときの訓練機の概略正面図。
【図4】図3の状態の訓練機の内部を示す一部断面斜視図。
【図5】可動支持体の拡大斜視図。
【図6】コントローラの概略正面図。
【図7】(A)は、可動支持ユニットの初期状態の概略平面図であり、(B)は、(A)の状態から可動支持ユニットが左に移動し、かつ、ヨー軸時計方向に回転した際の状態を示す概略平面図である。
【図8】第1変形例に係る可動支持ユニットの概略斜視図。
【図9】(A)は、第2変形例に係るリンク式カウンタウエイトの可動支持ユニットの概略側面図であり、(B)は、第2変形例に係るベルト式カウンタウエイトの可動支持ユニットの概略側面図である。
【図10】第3変形例に係る訓練機の概略断面側面図。
【図11】第4変形例に係る揺動型マウスピースの概略斜視図。
【図12】第2実施形態に係る顎運動装置の概略斜視図。
【図13】図12の顎運動装置の要部拡大斜視図。
【図14】(A)は、開閉口訓練による顎治療を説明するための図であり、(B)は、前方引き出しによる顎治療を説明するための図であり、(C)は、顎間牽引による顎治療を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
10 顎運動装置
20 可動支持ユニット(支持手段)
22 ガススプリング(自重補償手段)
24 開閉口アクチュエータ(駆動手段)
33 湾曲ガイド(駆動手段)
48 軸部材
50 可動支持体
51 ベース
53 前方引き出しアクチュエータ(駆動手段)
55 連結部(駆動手段)
94 リンク式カウンタウエイト(自重補償手段)
95 ベルト式カウンタウエイト(自重補償手段)
108 直線ガイド
110 顎運動装置
115 アクチュエータ(駆動手段)
118 多関節型アーム(支持手段)
H 下顎頭
J2 下顎
M1 上顎マウスピース
M2 下顎マウスピース
P 患者
【出願人】 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊


【公開番号】 特開2008−67836(P2008−67836A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−247970(P2006−247970)