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【発明の名称】 矯正装具
【発明者】 【氏名】戸田 佳孝

【要約】 【課題】指節間関節の変形性関節症を有効に治療しうる矯正装具2の提供。

【構成】この矯正装具2は、その末節骨が遠位指節間関節で一方の側に橈尺偏位している指に装着される。この矯正装具2は、第一のベースプレート4と、第二のベースプレート6と、第一のサポートプレート8と、第二のサポートプレート10と、第三のサポートプレート12とを備える。この第一のベースプレート4及び第二のベースプレート6は、末節骨を中節骨に対して背屈しうるように構成されている。この第一のサポートプレート8、この第二のサポートプレート10及びこの第三のサポートプレート12は、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成される。平面視において、この第一のベースプレート4の長手方向は、この第二のベースプレート6の長手方向に対して他方の側に傾斜している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その末節骨が遠位指節間関節で一方の側に橈尺偏位している指の、末骨節付近に配置されている第一のベースプレートと、この第一のベースプレートに連接しておりこの指の中節骨付近に配置されている第二のベースプレートと、この第一のベースプレートの一方の縁から起立する第一のサポートプレートと、この第一のベースプレートの他方の縁から起立する第二のサポートプレートと、この第二のベースプレートの他方の縁から起立する第三のサポートプレートとを備えており、
この第一のベースプレート及び第二のベースプレートが、末節骨を中節骨に対して背屈しうるように構成されており、
この第一のサポートプレートが、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されており、
この第二のサポートプレートが、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されており、
この第三のサポートプレートが、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されており、
平面視において、この第一のベースプレートの長手方向が、この第二のベースプレートの長手方向に対して他方の側に傾斜している矯正装具。
【請求項2】
上記第一のベースプレートが、塑性変形しうるように構成されており、
上記第二のベースプレートが、塑性変形しうるように構成されている請求項1に記載の矯正装具。
【請求項3】
金属からなる請求項1又は2に記載の矯正装具。
【請求項4】
錫又は錫合金からなる請求項3に記載の矯正装具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主として変形性関節症による指の変形を治療するために用いられる矯正装具に関する。
【背景技術】
【0002】
人の指の遠位指節間関節(DIP関節)における変形性関節症(osteoarthritis、以下OA)は、中高年に非常に高い頻度で発生する。この発症頻度は、男性よりも女性の方が高い。
【0003】
このDIP関節の変形としては、関節裂隙の狭小化及び骨棘形成が例示される。このOAを発症した女性は、変形した指を人前にさらすことに抵抗を感じてしまう。この変形には、激しい痛みが伴われる場合が多い。痛みを感じつつ、家事をする女性がいる。DIP関節に変形が認められているにも関わらず、痛みが伴われない場合もある。
【0004】
本発明者は、指節間関節の、加齢性変化の範囲を超えた橈尺偏位が、痛みの原因の一つであるとの仮説を立て、その年齢が20歳以上80歳未満にある女性の、指節間関節の橈尺偏位について検討している。この検討では、指節間関節に痛みがない女性(以下、コントロール群)と、指節間関節に痛みがありこの指節間関節にOAによる変化が認められた女性(以下、症候性OA群)とが対象とされている。このコントロール群に含まれる女性は151例であり、症候性OA群に含まれる女性は65例である。なお、症候性OA群の年齢範囲が40歳から78歳であるので、このコントロール群は40歳以上の中高年群(92例)と40歳未満の若年群(59例)とに分けられている。若年群の平均年齢は、32.1±5.6歳である。中高年群の平均年齢は、56.4±10.9歳である。症候性OA群の平均年齢は、55.4±9.4歳である。これらの対象に対して、指節間関節の、橈尺偏位の角度が計測されている。なお、この検討では、統計学的検定に一元配置分散分析法が用いられている。
【0005】
図8は、示指のDIP関節の橈尺偏位の計測結果が示されたグラフである。この図8において、縦軸は橈尺偏位の角度を表している。この角度が180°であるとき、DIP関節に橈尺偏位がないことが示される。この角度が180°未満であるとき、末節骨が中節骨に対して尺側に偏位していることが示される。この角度が180°を超えるとき、末節骨が中節骨に対して橈側に偏位していることが示される。図示されているように、中高年群の末節骨は、若年群の末節骨に比べて、有意に尺側に偏位している(有意確率P=0.043)。症候性OA群の末節骨は、中高年群の末節骨に比べて有意に尺側に偏位している(有意確率P<0.0001)。この結果から、症候性OA群の指節間関節(特に、DIP関節)に、加齢性変化の範囲を超えた橈尺偏位が認められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DIP関節の変形性関節症には、罹患人口が多いにも関わらず、有効な治療方法が少ないという問題がある。
【0007】
前述の、発明者による検討において、症候性OA群の指節間関節(特に、DIP関節)に、加齢性変化の範囲を超えた橈尺偏位が認められている。この指節間関節は、側副靱帯を有するという点で、荷重関節である膝関節に類似している。DIP関節には通常、荷重はかからない。手が握り動作を行うとき及び手が物を掴むときに、このDIP関節には荷重がかかる。膝関節のOAでは、前額面でのアライメントの矯正がなされる。DIP関節の変形性関節症を治療するために、アライメントの矯正が考慮された矯正装具はない。
【0008】
本発明の目的は、指節間関節の変形性関節症を有効に治療しうる矯正装具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る矯正装具は、その末節骨が遠位指節間関節で一方の側に橈尺偏位している指の、末骨節付近に配置されている第一のベースプレートと、この第一のベースプレートに連接しておりこの指の中節骨付近に配置されている第二のベースプレートと、この第一のベースプレートの一方の縁から起立する第一のサポートプレートと、この第一のベースプレートの他方の縁から起立する第二のサポートプレートと、この第二のベースプレートの他方の縁から起立する第三のサポートプレートとを備えている。この第一のベースプレート及び第二のベースプレートは、末節骨を中節骨に対して背屈しうるように構成されている。この第一のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。この第二のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。この第三のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。平面視において、この第一のベースプレートの長手方向は、この第二のベースプレートの長手方向に対して他方の側に傾斜している。
【0010】
好ましくは、この矯正装具では、上記第一のベースプレートは、塑性変形しうるように構成されている。上記第二のベースプレートは、塑性変形しうるように構成されている。好ましくは、この矯正装具は、金属からなる。好ましくは、この矯正装具は、錫又は錫合金からなる。
【発明の効果】
【0011】
この矯正装具は、平面視において、第一のベースプレートの長手方向は、この第二のベースプレートの長手方向に対して他方の側に傾斜している。この第一のベースプレート及び第二のベースプレートは、末節骨を中節骨に対して背屈しうるように構成されている。この第一のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。この第二のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。この第三のサポートプレートは、塑性変形してこの指の側面を押圧しうるように構成されている。従って、その末節骨がDIP関節で一方の側に橈尺偏位している指にこの矯正装具が装着されることにより、DIP関節の変形が効果的に抑えられる。この矯正装具は、DIP関節の変形性関節症を有効に治療しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る矯正装具2が示された斜視図である。図2は、図1の矯正装具2が示された平面図である。この矯正装具2は、その末節骨が遠位指節間関節(以下、DIP関節)で一方の側に橈尺偏位している指に装着される。この矯正装具2は、第一のベースプレート4と、第二のベースプレート6と、第一のサポートプレート8と、第二のサポートプレート10と、第三のサポートプレート12とを備えている。図示されているように、この矯正装具2には、複数の開口14が設けられている。なお、この図2において、左側が一方の側であり、右側が他方の側である。
【0014】
第一のベースプレート4は、図2において、他方の側から一方の側に向かって斜めに延在している。この第一のベースプレート4は、細長い形状を呈する。この第一のベースプレート4は、塑性変形しうる。
【0015】
第二のベースプレート6は、第一のベースプレート4から他方の側に向かって斜めに延在している。この第二のベースプレート6は、細長い形状を呈する。この第二のベースプレート6は、塑性変形しうる。この第二のベースプレート6は、第一のベースプレート4に連接している。この矯正装具2では、この第二のベースプレート6とこの第一のベースプレート4とは、一体である。第一のベースプレート4の長手方向は、平面視において、この第二のベースプレート6の長手方向に対して他方の側に傾斜している。
【0016】
第一のサポートプレート8は、第一のベースプレート4の一方の縁16から起立している。この第一のサポートプレート8は、その長手方向において第一のベースプレート4の上側に配置されている。この第一のサポートプレート8は、第一のベースプレート4と連接している。この矯正装具2では、この第一のサポートプレート8と第一のベースプレート4とは、一体である。この第一のサポートプレート8は、塑性変形しうる。この矯正装具2では、この第一のサポートプレート8と第一のベースプレート4との境界は、湾曲している。
【0017】
第二のサポートプレート10は、第一のベースプレート4の他方の縁18から起立している。この第二のサポートプレート10は、その長手方向において第一のベースプレート4の上側に配置されている。この第二のサポートプレート10は、第一のベースプレート4と連接している。この矯正装具2では、この第二のサポートプレート10と第一のベースプレート4とは、一体である。この第二のサポートプレート10は、塑性変形しうる。この矯正装具2では、この第二のサポートプレート10と第一のベースプレート4との境界は、湾曲している。
【0018】
第三のサポートプレート12は、第二のベースプレート6の他方の縁20から起立している。この第三のサポートプレート12は、その長手方向において第二のベースプレート6の下側に配置されている。この第三のサポートプレート12は、第二のベースプレート6と連接している。この矯正装具2では、この第三のサポートプレート12と第二のベースプレート6とは、一体である。この第三のサポートプレート12は、塑性変形しうる。この矯正装具2では、この第三のサポートプレート12と第二のベースプレート6との境界は、湾曲している。
【0019】
図3は、図1の矯正装具2が指22に装着されている状況が示されている正面図である。この指22は、左手の示指である。図4は、図3の左側面図である。図5は、図3の背面図である。なお、この図3において、左側が尺側(一方の側)であり、右側が橈側(他方の側)である。従って、この図5では、右側が尺側であり、左側が橈側である。この指22には、変形性関節症(osteoarthritis、以下OA)が発生している。図示されていないが、この指22のDIP関節24において、末節骨は尺側に偏位している。なお、この矯正装具2の開口14は、この矯正装具2の内側と外側との間の通気を促す。
【0020】
この矯正装具2では、第一のベースプレート4は指22の末節骨付近26に配置される。この第一のベースプレート4は、掌側において指22に沿って延在している。第二のベースプレート6は、指22の中末節骨付近26に配置される。この第二のベースプレート6は、掌側において指22に沿って配置されている。
【0021】
前述したように、第一のベースプレート4及び第二のベースプレート6は塑性変形しうる。従って、この矯正装具2が指22に装着されたとき、この第一のベースプレート4及び第二のベースプレート6の塑性変形により、末節骨が中節骨に対して背屈されうる。これにより、DIP関節24が伸展位で保持されうる。
【0022】
この矯正装具2では、第一のサポートプレート8及び第二のサポートプレート10は、DIP関節24の上側に位置している。この第一のサポートプレート8は、指22の尺側に位置している。この第二のサポートプレート10は、指22の橈側に位置している。第三のサポートプレート12は、DIP関節24の下側に位置している。この第三のサポートプレート12は、指22の橈側に位置している。
【0023】
前述したように、この矯正装具2では、平面視において、第二のベースプレート6の長手方向は、この第一のベースプレート4の長手方向に対して橈側(他方の側)に傾斜している。この指22は、末節骨が尺側に偏位している。この矯正装具2では、指22の偏位の方向と、第二のベースプレート6の長手方向の、第一のベースプレート4の長手方向に対する傾斜方向とは逆である。この矯正装具2がこの指22に装着されると、第一のサポートプレート8は、塑性変形して指22の側面を橈側に向かって押圧する。第二のサポートプレート10は、塑性変形して指22の側面を尺側に向かって押圧する。第三のサポートプレート12は、塑性変形して指22の側面を尺側に向かって押圧する。これにより、この指22のDIP関節24の上側には橈側に向かって力が作用し、その下側には尺側に向かって力が作用する。換言すれば、中節骨に対して尺側に偏位している末節骨が橈側に変位するように、この指22に力が作用する。この矯正装具2は、この指22の尺側への偏位を効果的に矯正する。
【0024】
この矯正装具2の装着方法は、次の通りである。まず、第一のベースプレート4が末節骨付近26に配置されて、第二のベースプレート6が中節骨付近28に配置されるようにして、この矯正装具2が指22の掌側にあてがわれる。第一のベースプレート4と第二のベースプレート6との境界は、DIP関節24の位置にある。このとき、第一のサポートプレート8は、指22の尺側の側面に沿うようにして起立している。第二のサポートプレート10及び第三のサポートプレート12は、指22の橈側の側面に沿うようして起立している。次に、第一のサポートプレート8及び第二のサポートプレート10の塑性変形により、この矯正装具2が指22に仮留めされる。次に、第三のサポートプレート12が指22の橈側の側面に接触されて、この矯正装具2が指22に固定される。最後に、この第一のサポートプレート8とこの第三のサポートプレート12とによる指22の締め付けが、調整される。このようにして、この矯正装具2は指22に装着される。
【0025】
この矯正装具2は、指22に装着されるとき、人の手の力で容易にその形状が調節されうる。この矯正装具2の材質としては、金属が例示される。この金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、錫、錫合金が例示される。
【0026】
図2において、実線L1は第一のベースプレート4の長手方向に延びる直線である。実線L2は、第二のベースプレート6の長手方向に延びる直線である。角度αは、実線L1が実線L2に対してなす角度である。従って、この角度αは、第一のベースプレート4の長手方向が第二のベースプレート6の長手方向に対してなす角度を表している。この角度αが大きくなると、末節骨が橈側に効果的に偏位されうる。この矯正装具2は、尺側に偏位している指22のDIP関節24のOAを有効に治療しうる。この観点から、この角度αは10°(degrees)以上がより好ましく、15°以上がさらに好ましく、20°以上が特に好ましい。この角度αが過大になると、装着時に患者が感じる違和感が大きくなる。患者が違和感を感じることなくこの矯正装具2を装着できるという観点から、この角度αは40°以下がより好ましく、35°以下がさらに好ましく、30°以下が特に好ましい。
【0027】
図4において、実線L3は第一のベースプレート4の指22との接触面の伸展方向を表す直線である。実線L4は、第二のベースプレート6の指22との接触面の伸展方向を表す直線である。角度βは、実線L3が実線L4に対してなす角度である。この角度βが大きくなると、末節骨が中節骨に対して効果的に背屈されうる。この矯正装具2は、DIP関節24のOAを有効に治療しうる。この観点から、この角度βは3°(degrees)以上がより好ましく、5°以上がさらに好ましく、10°以上が特に好ましい。この角度βが過大になると、装着時に患者が感じる違和感が大きくなる。患者が違和感を感じることなくこの矯正装具2を装着できるという観点から、この角度βは30°以下がより好ましく、25°以下がさらに好ましく、20°以下が特に好ましい。
【0028】
この矯正装具2は、一枚の板材のプレス加工により形成される。このプレス加工では、板材から所定形状の予備成形体が打ち抜かれて、この予備成形体に曲げ加工が施される。予め、第一のベースプレート4、第二のベースプレート6、第一のサポートプレート8、第二のサポートプレート10及び第三のサポートプレート12のそれぞれが成形された後、これらが所定の位置に溶接等のような接合手段で固定されてもよい。二つのバンジョピック(Dunlop社製のPATOENI 0.15)が、溶接で固定されて、この矯正装具2の構成と一致するように形成されてもよい。装着時の違和感が考慮されて、この矯正装具2の表面にゴムのような柔軟な素材からなる緩衝層が設けられてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0030】
[実施例]
図1に示された基本構成を備えた実施例の矯正装具を得た。この矯正装具は、二つのバンジョピック(Dunlop社製のPATOENI 0.15)が溶接で固定されて、図1の矯正装具の構成と一致するように形成されている。第一のベースプレートの長手方向が第二のベースプレートの長手方向に対してなす角度αは、20°である。第一のベースプレートの指との接触面の伸展方向が第二のベースプレートの指との接触面の伸展方向に対してなす角度βは、10°である。
【0031】
[比較例]
角度αを0°とし、角度βを0°とした他は実施例と同様にして、矯正装具を得た。この矯正装具は、指の変形を矯正するのではなく、この指を安静に固定する。なお、このような矯正装具は、プラセボ装具と称される。
【0032】
[評価対象の選定]
評価対象を選定するために、まず単純X線像の評価が実施された。この評価において、DIP関節の状態がOsteoarthritis Research Society International(OARSI)の手部OA専門委員会によって示された分類表に基づき分類された。この分類で2度以上の変化がありかつ、この変化に一致した関節に一ヶ月間、指の痛み、ズキズキ感及びこわばりがある症例が選択された。なお、この分類表が用いられることにより、小さな骨棘を除いては正常な状態である場合は1度、小さな軟骨下骨の硬化及び軟骨下骨の骨嚢種を伴う二部位での明白な骨棘形成はあるが、関節裂隙は保たれており、変形は無い場合は2度、中程度の骨棘と骨端部のいくつかの変形と関節裂隙の狭小化がある場合は3度、大きな骨棘と関節裂隙の消失を伴う骨末端の変形と骨硬化や骨嚢種がある場合は4度として、単純X線像が分類される。次に、この選択された症例から、次の条件を満たす症例が抽出された。この条件は、(1)先天的な指の変形がないこと、(2)最近10年間に手指の骨折の既往がないこと、(3)最近一ヶ月間にステロイド関節内注射を受けたことがないこと及び(4)Visual analogue scale(視覚疼痛指数、以下VAS)で指関節の痛みが30%以上であることである。なお、VASは、100mmの線上で「左端が全然痛くない、右端が最高に痛いとした場合、今の貴方の痛みを見た目で示して下さい。」と問い、左端から患者が示した位置までのmm数を%表示したものである。選定された症例の内、矯正装具装着に同意をいただいた31例が評価対象の症例として選定した。この31例が、実施例の矯正装具を装着した矯正装具装着群(15例)と、比較例のプラセボ装具を装着したプラセボ装着群(16例)とに分けられた。
【0033】
[矯正装具による治療]
前述の選定された症例について、矯正装具又はプラセボ装具による治療が実施された。矯正装具は、1日8時間以上装着された。特に、夜間睡眠時には、必ずこの矯正装具が装着された。治療期間は、4週間とされた。併用療法として、非ステロイド系消炎鎮痛剤(第一製薬社製のモービック10mg)が1日1回服用された。
【0034】
[臨床的評価]
治療期間が完了した段階で、臨床的評価が行われた。この臨床的評価には、重症度指数の改善点数が用いられた。この重症度指数の改善点数は、この矯正装具装着の前後におけるAustralian/Canadian OA hand index(AUSCAN手部OA指数)の計測から得られる。具体的には、このAUSCAN手部OA指数は、動作をしたときの疼痛が5段階(0点簡単、4点不可能)に自己評価されて得られる。以下に示す9つの動作について行い、合計点が算出された。治療期間後に算出された合計点数から、治療期間前に算出された合計点数が引かれた値が、この重症度指数の改善点数である。この改善点数が負である場合、改善が認められたことが示される。この改善点数が正である場合、悪化していることが示される。この評価の統計学的検定には、カイ二乗検定及び一元配置分散分析が用いられた。なお、この9つの動作は、(1)水道の蛇口をひねる、(3)ドアのノブを開ける、(3)ワイシャツのボタンをはめる、(4)痛い指に指輪をはめる、(5)ペットボトルのふたを開ける、(6)ビールの大瓶を片手で運ぶ、(7)リンゴの皮をむく、(8)重いカバンを持ち上げる、(9)濡れたタオルを絞るである。
【0035】
図6は、図1の矯正装具を装着してOAの治療を行ったときの重症度指数の改善点数が示されたグラフである。図7は、プラセボ装具を装着してOAの治療を行ったときの重症度指数の改善点数が示されたグラフである。なお、矯正装具装着群と、プラセボ装着群との間に、年齢、治療前のAUSCAN手部OA指数、男女比、治療前の握力、治療対象関節の利き手と非利き手の割合、示指、中指、環指、小指の割合、レントゲン像でのgradeの分布に有意な差はない。図6に示されているように、矯正装具装着群では、−2.7±5.1点であり、この矯正装具によりOAが効果的に改善されていることが確認される。図7に示されているように、プラセボ装着群では、1.1±4.8点であり、このプラセボ装具はOAに有効に作用していないことが確認されうる。従って、この矯正装具は、OAの治療に有効である。この評価に併せて、治療前後における握力変化も計測されている。この握力変化では、矯正装着群は1.7±1.9kg増加し、プラセボ装着群は0.2±3.0kg減少することが認められている。従って、実施例の矯正装具は、DIP関節の変形性関節症を有効に治療しうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る矯正装具は、変形性関節症を有効に治療するために適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る矯正装具が示された斜視図である。
【図2】図2は、図1の矯正装具が示された平面図である。
【図3】図3は、図1の矯正装具が指に装着されている状況が示されている正面図である。
【図4】図4は、図3の左側面図である。
【図5】図5は、図3の背面図である。
【図6】図6は、図1の矯正装具を装着してOAの治療を行ったときの重症度指数の改善点数が示されたグラフである。
【図7】図7は、プラセボ装具を装着してOAの治療を行ったときの重症度指数の改善点数が示されたグラフである。
【図8】図8は、示指のDIP関節の橈尺偏位の計測結果が示されたグラフである。
【符号の説明】
【0038】
2・・・矯正装具
4・・・第一のベースプレート
6・・・第二のベースプレート
8・・・第一のサポートプレート
10・・・第二のサポートプレート
12・・・第三のサポートプレート
14・・・開口
16・・・一方の縁
18、20・・・他方の縁
22・・・指
24・・・DIP関節
26・・・末節骨付近
28・・・中節骨付近
【出願人】 【識別番号】396004648
【氏名又は名称】戸田 佳孝
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】 【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾

【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎


【公開番号】 特開2008−36329(P2008−36329A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−218033(P2006−218033)