| 【発明の名称】 |
灌流吸引装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 信雄
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| 【要約】 |
【課題】より簡単な構造で急激な前房圧減少を抑える。
【構成】灌流瓶からハンドピースまでの灌流チューブの経路中に設けられた灌流液溜めのチャンバは、灌流液の導入口と、空気及び灌流液の流入口が導入口より上方に形成された流出管と、空気室と、流出管の側面に形成された幅の狭い開口であって、チャンバ内の灌流液が上昇するときには灌流液の表面張力によって塞がれるサイズを持ち、灌流液の水面の上昇により流入口より灌流液が流入された後には灌流液の通路とされる開口と、流入口より低い位置に設けられた流出口とを備える。空気室内の空気は灌流液の導入により圧縮される。流出口又は流出管の一方がハンドピース側の灌流チューブに接続され、他方が吸引チューブに灌流液を流入させるベントチューブに接続される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 灌流瓶からの灌流液を灌流チューブ及びハンドピースを通して患者眼に供給し、供給された灌流液を眼内の廃物とともにハンドピースに接続された吸引チューブを介して吸引する灌流吸引装置であって、灌流瓶からハンドピースまでの灌流チューブの経路中に設けられた灌流液溜めのチャンバと、ハンドピースの残留吸引圧を下げるために制御弁の開放により灌流液を吸引チューブに流入させるベントチューブと、を備える灌流吸引装置において、 前記チャンバは、灌流瓶側の灌流チューブから灌流液がチャンバ内に導入される導入口と、上下に延びる流出管であって、チャンバ内の空気及び灌流液が流入される流入口が前記導入口より上方に形成された流出管と、前記流入口より上方に設けられた空気室となる空間と、前記流出管の側面に形成された幅の狭い開口であって、チャンバ内の灌流液が上昇するときには灌流液の表面張力によって塞がれるサイズを持ち、灌流液の水面の上昇により前記流入口より灌流液が流入された後には灌流液の通路とされる開口と、前記流入口より低い位置に設けられた流出口と、を備え、 前記流出口又は前記流出管の一方がハンドピース側の灌流チューブに接続され、他方が前記ベントチューブに接続され、前記ハンドピースの吸引孔が閉塞されたときに灌流瓶からの灌流液の導入により前記空気室内の空気が圧縮される構成としたことを特徴とする灌流吸引装置。 【請求項2】 請求項1の灌流吸引装置において、前記開口は前記流出管の側面の上下方向に連続的又は複数に分散して形成され、前記開口の面積の総和が前記流入口の面積より広く形成されていることを特徴とする灌流吸引装置。 【請求項3】 請求項1又は2の灌流吸引装置において、前記開口は前記導入口より上に形成されていることを特徴とする灌流吸引装置。 【請求項4】 請求項1の灌流吸引装置は、前記吸引チューブに吸引圧を与える吸引ポンプが配置された装置本体を備え、前記チャンバは前記本体に着脱自在に取り付けられるディスポタイプのカセットに設けられていることを特徴とする灌流吸引装置。 【請求項5】 灌流瓶からの灌流液を灌流チューブ及びハンドピースを通して患者眼に供給し、供給された灌流液を眼内の廃物とともにハンドピースに接続された吸引チューブを介して吸引する灌流吸引装置であって、灌流瓶からハンドピースまでの灌流チューブの経路中に設けられた灌流液溜めのチャンバを備える灌流吸引装置において、 前記チャンバは、灌流瓶側の灌流チューブから灌流液がチャンバ内に導入される導入口と、上下に延びる流出管であって、チャンバ内の空気及び灌流液が流入される流入口が前記導入口より上方に形成された流出管と、前記流入口より上方に設けられた空気室となる空間と、前記流出管の側面に形成された幅の狭い開口であって、チャンバ内の灌流液が上昇するときには灌流液の表面張力によって塞がれるサイズを持ち、前記流入口より灌流液が流入された後には灌流液が流入される開口と、を備え、 前記流出管がハンドピース側の吸引チューブに接続され、前記ハンドピースの吸引孔が閉塞されたときに灌流瓶からの灌流液の導入により前記空気室内の空気が圧縮される構成としたことを特徴とする灌流吸引装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、白濁した水晶体を摘出する白内障手術等に使用される灌流吸引装置に関する。 【背景技術】 【0002】 眼球内に灌流液を供給し、供給した灌流液を眼球内の廃棄組織とともに吸引除去する灌流吸引装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この灌流吸引装置は白濁した水晶体を摘出する白内障手術等において使用される。白内障手術では、切開創が小さくすむ等の理由により、超音波乳化吸引法と呼ばれる術式の超音波振動を利用した破砕用ハンドピース(以下、US(Ultra Sound)ハンドピースという)を用いた手術方法が普及するに至っている。 【0003】 超音波乳化吸引法では、USハンドピースの先端に取り付けられたUSチップに超音波振動を伝達して水晶体の核を破砕乳化する。この破砕乳化の際、灌流液は灌流チューブを通してUSチップの先端付近から眼球内に供給される。USハンドピースに接続された吸引チューブに吸引ポンプ等により吸引圧が付与され、灌流液とともに破砕された核は、ハンドピース(USチップ)の吸引孔を経て吸引チューブの他端から排出される。 【特許文献1】特開平10−43229号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 超音波乳化吸引法では、チップで水晶体の核を破砕して吸引する時、白内障核等がチップの吸引孔を塞いだ状態で吸引ポンプによる吸引圧の付与が続けられると、吸引ポンプ内の吸引圧は増加する。しかし、この状態でハンドピースの水晶核等の栓塞物が急に除去(吸引)されると、その直後に一時的に急激な前房圧減少(サージ現象)が生じることがある。前房圧が大きく減少した場合、前房が潰されやすくなる。さらには前房が潰されることにより、チップ先端等に角膜内皮が接触した場合、角膜内皮が損傷される懸念がある。 【0005】 この対策として、特許文献1では、灌流液を供給する灌流チューブの経路中に、空気室を有し灌流液を蓄えることのできる灌流液溜めチャンバを設けることが提案されている。特許文献1の技術により急激な前房圧減少を抑えることができるが、術者の手間の軽減、取り扱いの容易化、構造の簡素化、経済性等のさらなる改善が望まれる。 【0006】 本発明は、従来技術に鑑み、術者の手間の軽減、取り扱いの容易化を図り、より簡単な構造で急激な前房圧減少を抑えることができる灌流吸引装置を提供することを技術課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。 【0008】 (1) 灌流瓶からの灌流液を灌流チューブ及びハンドピースを通して患者眼に供給し、供給された灌流液を眼内の廃物とともにハンドピースに接続された吸引チューブを介して吸引する灌流吸引装置であって、灌流瓶からハンドピースまでの灌流チューブの経路中に設けられた灌流液溜めのチャンバと、ハンドピースの残留吸引圧を下げるために制御弁の開放により灌流液を吸引チューブに流入させるベントチューブと、を備える灌流吸引装置において、 前記チャンバは、灌流瓶側の灌流チューブから灌流液がチャンバ内に導入される導入口と、上下に延びる流出管であって、チャンバ内の空気及び灌流液が流入される流入口が前記導入口より上方に形成された流出管と、前記流入口より上方に設けられた空気室となる空間と、前記流出管の側面に形成された幅の狭い開口であって、チャンバ内の灌流液が上昇するときには灌流液の表面張力によって塞がれるサイズを持ち、灌流液の水面の上昇により前記流入口より灌流液が流入された後には灌流液の通路とされる開口と、前記流入口より低い位置に設けられた流出口と、を備え、 前記流出口又は前記流出管の一方がハンドピース側の灌流チューブに接続され、他方が前記ベントチューブに接続され、前記ハンドピースの吸引孔が閉塞されたときに灌流瓶からの灌流液の導入により前記空気室内の空気が圧縮される構成としたことを特徴とする。 (2) (1)の灌流吸引装置において、前記開口は前記流出管の側面の上下方向に連続的又は複数に分散して形成され、前記開口の面積の総和が前記流入口の面積より広く形成されていることを特徴とする。 (3) (1)又は(2)の灌流吸引装置において、前記開口は前記導入口より上に形成されていることを特徴とする。 (4) (1)の灌流吸引装置は、前記吸引チューブに吸引圧を与える吸引ポンプが配置された装置本体を備え、前記チャンバは前記本体に着脱自在に取り付けられるディスポタイプのカセットに設けられていることを特徴とする。 (5) 灌流瓶からの灌流液を灌流チューブ及びハンドピースを通して患者眼に供給し、供給された灌流液を眼内の廃物とともにハンドピースに接続された吸引チューブを介して吸引する灌流吸引装置であって、灌流瓶からハンドピースまでの灌流チューブの経路中に設けられた灌流液溜めのチャンバを備える灌流吸引装置において、 前記チャンバは、灌流瓶側の灌流チューブから灌流液がチャンバ内に導入される導入口と、上下に延びる流出管であって、チャンバ内の空気及び灌流液が流入される流入口が前記導入口より上方に形成された流出管と、前記流入口より上方に設けられた空気室となる空間と、前記流出管の側面に形成された幅の狭い開口であって、チャンバ内の灌流液が上昇するときには灌流液の表面張力によって塞がれるサイズを持ち、前記流入口より灌流液が流入された後には灌流液が流入される開口と、を備え、 前記流出管がハンドピース側の吸引チューブに接続され、前記ハンドピースの吸引孔が閉塞されたときに灌流瓶からの灌流液の導入により前記空気室内の空気が圧縮される構成としたことを特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、術者の手間の軽減、取り扱いの容易化、より簡単の構造を図りつつ、急激な前房圧減少を抑えることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、白内障手術に使用される眼科用の灌流吸引装置の外観略図であり、図2は主要な要素の概略構成図である。 【0011】 装置本体1には制御部40が収納され、装置本体1の前面には手術条件等の設定信号を入力する入力部としての操作部3が配置されている。10は患者眼に供給する生理食塩水等の灌流液を入れる灌流瓶であり、灌流瓶10はポール12に吊り下げられている。ポール12は上下駆動装置14により上下動され、灌流瓶10の高さを可変できるようになっている。灌流瓶10が設定される高さによって、灌流液を適度の流圧(=流量または灌流速度)で患者眼Eに供給するように灌流圧が調整される。15a,15bは灌流瓶10から落下する灌流液を患者眼Eに導くための灌流チューブである。灌流チューブ15aと灌流チューブ15bの間は、カセット30内に形成された灌流液溜めチャンバ50に接続されている。なお、カセット30は、樹脂等で形成されたディスポーザブル(使い捨て)タイプ(以下、ディスポタイプ)であり、灌流/吸引の経路が形成され、装置本体1に着脱自在とされている。 【0012】 灌流液溜めチャンバ50に接続された灌流チューブ15bの途中には、ピンチバルブ等の制御弁16が配設されており、制御弁16の開閉により灌流液の流出が制御される。灌流チューブ15bの他端は、破砕用のUSハンドピース6や灌流吸引用のI/Aハンドピース7等の各種のハンドピースに接続される。USハンドピース6は、超音波振動を利用して先端に取付けられた吸引孔を有するUSチップ6aにより水晶体の核を破砕乳化するとともに、破砕した核を灌流液と一緒にUSチップ6aの吸引孔を介して吸引する。USハンドピース6やI/Aハンドピース7等の各種ハンドピースは、手術段階や術式等により選択され、繋ぎ換えて使用される。 【0013】 USハンドピース6には、USチップ6aの先端から吸引された灌流液や破砕した核を排出する吸引チューブ17が接続されている。吸引チューブ17の後方はカセット30内に配管され、後方端は廃液袋18まで延ばされている。カセット30に配管された吸引チューブ17の途中には、吸引圧を発生するための吸引ポンプ19が配設されている。吸引ポンプ19は制御部40により駆動制御され、その吸引流量が調整される。吸引された廃液は廃液袋18に排出投入される。 【0014】 吸引チューブ17の途中の吸引ポンプ19よりハンドピース6側で、カセット30内の位置に圧力センサ41が設けられている。また、カセット30内に配管された吸引チューブ17の途中にはベントチューブ20が接続され、ベントチューブ20の他端は灌流液溜めチャンバ50に接続さている。ベントチューブ20の途中には、ピンチバルブ等の制御弁21が配置されている。制御弁21の開閉により、ベントチューブ20から吸引チューブ17に流出される灌流液が制御される。ベントチューブ20は、吸引ポンプ19による吸引を止めたときに吸引チューブ17の残留吸引圧を下げるために使用される。圧力センサ41により吸引チューブ17内の吸引圧が常時検出され、吸引圧が設定値より上昇したときには、制御部40の制御により吸引ポンプ19の駆動が停止される。吸引圧の上限(最大吸引圧)は、操作パネル3のスイッチ操作で設定される。 【0015】 患者眼Eの眼内の灌流液及び除去組織は、ハンドピース6の破砕用チップ6aに設けられた吸引孔から吸引され、吸引チューブ17を介して廃液袋18に排出投入される。制御部40はフットスイッチ42の踏み込みポジションによる位置信号、又は操作パネル3による設定値を基に吸引ポンプ19を駆動制御することで、吸引流量及び吸引圧を制御する。 【0016】 次に、灌流液溜めチャンバ50の構成を説明する。図3(a)は、チャンバ50の水平方向の中心を通る垂直断面図であり、図3(b)はチャンバ50の上下方向の中心を水平に切断したときの断面図である。図3(a)において、灌流液の導入管51は、チャンバ50の上部からチャンバ内の下に向かって延びるように形成されている。導入管51の上端口51aは、灌流瓶10から延びる灌流チューブ15aに接続される。導入管51の下端の導入口51bは、チャンバ50の底面付近まで延ばされている。図3(a)上におけるチャンバ50の右側下方には、灌流液の流出口52aを持つ流出管52が形成されている。この流出管52にはハンドピース6側に延びる灌流チューブ15bが接続される。流出管52は、チャンバ50内に蓄えられる灌流液を無駄なく流出させるために、チャンバ50の最下部に形成されることが好ましい。 【0017】 また、チャンバ50には、上下に延びる流出管53が形成されている。流出管53の下端の流出口53bにベントチューブ20が接続される。流出管53の上端面の流入口53aは、導入管51の下端の導入口51bよりも高い位置で、且つチャンバ50内の上部に空間を残す位置とされている。本実施形態では、チャンバ50内に約10ccの容積を確保し、流入口53aより上部の空間50aに約5ccの容積を確保する位置に形成されている。 【0018】 流出管53において、チャンバ50内に上下に形成された流出管53の側壁には、狭い隙間を持つ開口54が上下に延びるように形成されている。図3の実施形態では、開口54は、流入口53aまで連続して延びるように切り欠き状に形成されている。開口54の最下端の位置は、導入管51の下端の導入口51bよりもやや高い位置とされている。開口54の横幅54Wは、灌流液が導入管51から導入され、チャンバ50内の水位が上げられるときに(詳細は後述する)、灌流液の表面張力で形成される水膜により塞がれる大きさ(言い換えると、灌流液の表面張力により流出管53の内部に流入されない大きさ)を持つサイズとされている。本実施形態では、開口54の幅54Wは約1mmであり、ベントチューブ20及び灌流チューブ15bの内径より小さいサイズとされている。なお、流出管53の内径は、直径2mm程とされている。 【0019】 また、図3においては、製作を容易にするために、流出管53は真っ直ぐに上下方向に形成されているが、斜め上下方向に延びる構成も含まれる。流出管53の流入口53aに対して開口54が下に位置する関係であれば良い。また、流出管53は、チャンバ50の側壁と一体的に形成されても良い。 【0020】 以上のような構成を備える灌流吸引装置において、その動作を説明する。本実施形態では白濁した水晶体をUSハンドピース6により超音波乳化し、吸引除去するという白内障手術に灌流吸引装置を利用した場合について説明する。 【0021】 手術に際し、灌流瓶10、カセット30の本体1への装着、チャンバ50の導入管51、流出管52,53及びUSハンドピース6への各チューブ類の取付けやその他必要な準備を行う。灌流瓶10は操作パネル3に配置されたスイッチによる灌流流量の設定に基づき上下駆動装置14の駆動が制御され、ポール12の上下動により適切な高さに配置される。 【0022】 また、準備として、操作者は灌流液をチャンバ50及び各チューブに注入する。初めに、操作者は操作パネル3のスイッチ操作により、灌流制御弁16を閉じた状態で制御弁21を開いた後、吸引ポンプ19を駆動させる。吸引ポンプ19の駆動により、ベントチューブ20から吸引ポンプ19に至る経路で吸引圧が発生され、チャンバ50内の空気が流出管53の流入口53a及び開口54から吸い込まれ、廃液袋18まで延びた吸引チューブ17の先から排出される。これにより、灌流瓶10の灌流液がチャンバ50内に徐々に溜められていく。さらに吸引ポンプ19により空気が吸引されると、チャンバ50内の灌流液の水位は導入管51の下端の導入口51bよりも徐々に上昇し、流出管53の開口54よりも上昇していく。このとき、開口54が灌流液の表面張力で形成される水膜により塞がれていることにより、チャンバ50内の灌流液の水位は、さらに上昇し続け、最終的に流出管53の上端の流入口53aまで達するようになる。 【0023】 灌流液の水位が流入口53aを超えるようになると、チャンバ50内の空気の吸引が終了し、流入口53aから灌流液が初めて流入されるようになる。灌流液が流出管53内に流入されるようになると、開口54の位置にて灌流液の表面張力により流出管53の内外を隔てていた水膜が無くなり、開口54からも流出管53内に灌流液が流入されるようになる(開口54も灌流液の通路とされる)。そして、ベントチューブ20から吸引ポンプ19に至る吸引チューブ17まで灌流液が満たされるようになり、吸引チューブ17の先から灌流液が流出されるようになったら、チャンバ50内への灌流液の注入が完了する。このとき、チャンバ50内の灌流液の水位は流出管53の流入口53aとほぼ同じ位置まで上昇し、チャンバ50内の上部にできた空間50aは空気室とされる。空気室の内部の空気は、灌流瓶10の高さ位置に対応して圧縮された形になる。 【0024】 次に、操作者は操作パネル3のスイッチ操作により、今度は、灌流制御弁21を閉じた状態で制御弁16を開き、流出管52に接続された灌流チューブ15b、ハンドピース6及び吸引チューブ17に灌流液を注入する。ハンドピース6のチップ6aにはテストチャンバと呼ばれる周知の密閉キャップを被せ、チップ6aの吸引孔から灌流液が吸引チューブ17に入り込むようにする。吸引ポンプ19が駆動されると、吸引チューブ17内の空気、ハンドピース6の経路内の空気、及び灌流チューブ15b内の空気が吸引され、廃液袋18側の吸引チューブ17の端から排出される。これにより、チャンバ50内の灌流液が流出管52から流出され、灌流チューブ15b内から吸引チューブ17内までの全ての流路に灌流液が注入されるようになる。 【0025】 吸引ポンプ19を停止し、制御弁16を閉じて灌流液の排出を停止する。チャンバ50内には灌流瓶10から灌流液が補充されるので、チャンバ50の灌流液の水位は流出管53の流入口53aとほぼ同じ位置で維持され、空間50aの空気室の空気は灌流瓶10の高さ位置に対応した圧で圧縮されたままとなる。 【0026】 手術時の動作を説明する。術者は図示なき手術顕微鏡で患者眼Eを観察しながら、強膜の切開、前嚢切開した後、USハンドピース6のUSチップ6aを切開創から眼内に挿入する。チップ6aの眼内への挿入は、フットスイッチ42を灌流動作のみが行われるポジションまで踏み込み、ベントチューブ20側の制御弁21を閉じ、灌流チューブ15b側の制御弁16は開放することにより、灌流液をハンドピース6から流出させながら行う。灌流液が眼球内に供給されると、灌流瓶1の高さに応じた圧力で眼球の前房圧が確保される。 【0027】 灌流液の供給により前房深度を確保した後、術者は吸引を行うために灌流動作に加えて吸引動作を行うポジションまでフットスイッチ42を踏込む。制御部40はフットスイッチ42からの信号を基に吸引ポンプ19を駆動し、設定された吸引流量で灌流液を吸引する。吸引孔が開放された状態において、設定された吸引流量分の灌流液を吸引することにより発生する吸引圧(以下、基礎吸引圧という)は、吸引チューブ17、ハンドピース6を介して吸引孔に至り、破砕用チップ6aの吸引孔から前房内の灌流液を吸引する。 【0028】 さらに、術者が水晶体核を乳化破砕するために、灌流及び吸引動作に加えて超音波振動動作を行うポジションまでフットスイッチ42を踏み込むと、制御部40はハンドピース6の破砕用チップ6aに超音波振動を発生させる。 【0029】 吸引中に破砕用チップ6a先端の吸引孔が水晶体核により閉塞されてしまうと、吸引孔の閉塞によって吸引チューブ17内の吸引圧が上昇し、基礎吸引圧よりも高くなる。圧力センサ41により検出される吸引圧が設定値に達すると、吸引ポンプ19が停止され、ハンドピース6の吸引圧は設定値で固定される。この状態で破砕用チップ6aの閉塞が解かれると、設定吸引流量より多い灌流液が前房から一時的に吸引される。 【0030】 ここでチャンバ50を設けていないときは、吸引の立上がりにより一瞬増加する吸引流量に対して灌流液の供給が追いつかないので、一過性の前房圧の減少(サージ現象)が生じることになる。これに対して、本装置では灌流液を供給する灌流チューブ15aと灌流チューブ15bとの間にチャンバ50が設けられており、ハンドピース6が持つチップ6aの吸引孔が閉塞されたときは、チャンバ50の内部には灌流瓶10の高さに対応した灌流圧と同等の圧力を持つ灌流液が、空間50a(空気室)内の空気が圧縮された状態で蓄えられている。チップ6aの吸引孔から栓塞物が除去されて前房圧が減少すると、これに連動して空間50a(空気室)内の圧縮空気が膨張し、チャンバ50内の灌流液を押し下げる力が働く。この灌流液を押し下げる灌流圧の大きさは灌流瓶10の位置での灌流圧と同等であるが、灌流瓶10から直接ハンドピース6に灌流液を導くのに比べて、チャンバ50からハンドピース6まで導く方が、灌流チューブの経路長さが短くなっているので、灌流液の粘性等による管路抵抗が小さくて済み、灌流液はスムーズに眼球に供給される。したがって、急激な吸引が行われても灌流液の供給を素早く行うことができ、一過性の前房圧の減少(サージ現象)が小さく抑えられる。 【0031】 眼内の前房圧が元の定常状態になり、灌流瓶10からの灌流液の流入が間に合うようになると、チャンバ50内の灌流液の水面は初期状態に復帰し、空間50a(空気室)内の空気は再び圧縮状態とされる。 【0032】 また、フットスイッチ42の踏み込みによりハンドピース6の吸引圧をキャンセルさせる信号が入力されると、制御部40の制御によりベントチューブ20側の制御弁21が開かれ、灌流瓶10及びチャンバ50内の灌流液がベントチューブ20を介して吸引チューブ17内に流入されるようになる。これにより、ハンドピース6の吸引圧が下げられる。このとき、チャンバ50内の灌流液は流出管53の側面に形成された開口54から流入されるので、灌流液の水位が流入口53aより下回っても十分にベントチューブ20側に供給される。また、ハンドピース6の閉塞がとかれたときと同様に、制御弁21の開放に連動して空間50a(空気室)内の圧縮空気が膨張し、チャンバ50内の灌流液がベントチューブ20側に供給されやすくなる。このため、チャンバ50にベントチューブ20が接続されない場合に比べて、吸引圧を下げる応答性が早くなる。吸引圧が定常状態に戻り、灌流瓶10からの灌流液の供給が間に合うようになれば、チャンバ50内の灌流液の水位は元に戻される。 【0033】 以上のようなチャンバ50は、特開平10−43229号公報のものに対して、チャンバ50内への灌流液を注入するための専用の駆動機構や可動部が無く、より簡単に構成されているため、経済的に有利である。特に、本実施形態のようにディスポタイプのカセット30内にチャンバ50を一体的に組み込んだ構成においては、経済的であることは特に有利である。また、本装置のチャンバ50は、専用の駆動系や可動部を持たない構成であるので、取り扱いも容易である。また、操作者の手間も軽減される。 【0034】 チャンバ50の構成は、図3に示したものに限定されない。流出管53の側壁に形成される開口54の幅54Wは、灌流液の注入時に灌流液の表面張力が維持される大きさであれば良く、1mmより多少広くても維持され得る。また、灌流液の表面張力は、開口54の幅54Wが1mmよりも狭い分には十分維持されるが、あまり狭すぎると、灌流液の流入量が少なくなるので、不利である。また、開口54は、上端の流入口53aまで連続して形成されている必要は無く、途中まででも良い。あるいは、複数個に分散されていても良い。また、開口54の下方の位置は、チャンバ50の底面付近まで位置しても良い。しかし、導入管51の下端の導入口51bよりも下回るようになると、灌流瓶10から流入される灌流液に混入した空気の泡が、開口54から流出管53内に流入しやすくなる。このため、開口54の最下端の位置は、導入管51の下端の導入口51bよりも高い位置が好ましい。開口54が導入口51bよりも高い位置にあれば、導入管51から入る灌流液に混入していた泡は、チャンバ50の上部の空間50aに溜まり、流出管53内への流入が抑えられる。 【0035】 またさらに、開口54は、図4に示すように、水平断面において複数個所に形成されていても良い。また、開口54の総和の面積は、流入口53aの開口の面積よりも大きいことが好ましい。開口54の総和の面積が流入口53aの開口の面積に比して小さ過ぎると、制御弁21が開かれて灌流液が流出管53内に吸い込まれるときに、流入口53aの上部の空気室にある空気が流入口53aから吸い込まれやすくになり、結果的に吸引チューブ17内にも空気が混入されてしまう。これを避けるため、上記のような構成が好ましい。 【0036】 なお、流出管52の流出口52aの位置は、チャンバ50内の灌流液を無駄なく灌流チューブ15b側に供給されるために、チャンバ50の底付近にあることが好ましいが、灌流液の供給の点においては、少なくとも流出管53の流入口53aより下にあり、サージ現象が生じたときに灌流液の水面が下がる位置より下にあれば良い。 【0037】 また、流出管52及び流出管53に対する灌流チューブ15b及びベントチューブ20の接続は、図2の状態が好ましいが、これは逆であっても良い。すなわち、流出管52にベントチューブ20を接続し、流出管53に灌流チューブ15bを接続しても良い。 【0038】 図5は、灌流液溜めチャンバ50の変容例の構成図である。図5のチャンバ50においては、流出管53の流出口53bに流路分岐部材56が接続され、一方の分岐路56aに灌流チューブ15bが接続され、他方の分岐路56bにベントチューブ20が接続されている。このチャンバ50は、図3の例に対して、流出管52を省いた構成で、他の基本的要素は同一である。この例では、流出管53が灌流チューブ15bとベントチューブ20に接続される流出管として兼用される。そして、流出管53に形成された開口54が灌流液の流入口とされる。 【0039】 この構成例においては、灌流チューブ15bに接続されたハンドピース6をチャンバ50より下に位置にさせておけば、灌流瓶10の高さによる灌流液の自然落下により、チャンバ50内に灌流液が注入され、開口54が灌流液の表面張力で塞がれた状態で灌流液の水面が流入口53aまで自動的に上昇される。これにより、さらに術者の手間が軽減される。 【図面の簡単な説明】 【0040】 【図1】灌流吸引装置の外観略図である。 【図2】主要な要素の概略構成図である。 【図3】灌流液溜めチャンバの構成を説明する図である。 【図4】チャンバ内の流出管に形成される開口の変容例の図である。 【図5】灌流液溜めチャンバの変容例の構成図である。 【符号の説明】 【0041】 1 装置本体 3 操作部 6 ハンドピース 10 灌流瓶 15a,15b 灌流チューブ 16,21 制御弁 17 吸引チューブ 19 吸引ポンプ 20 ベントチューブ 40 制御部 50 灌流液溜めチャンバ 51b 導入口 52a 流出口 53 流出管 53a 流入口 54 開口
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| 【出願人】 |
【識別番号】000135184 【氏名又は名称】株式会社ニデック
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| 【出願日】 |
平成18年8月1日(2006.8.1) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−35922(P2008−35922A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月21日(2008.2.21) |
| 【出願番号】 |
特願2006−210320(P2006−210320) |
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