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【発明の名称】 動物の創外固定装置
【発明者】 【氏名】原 利昭

【氏名】渡邊 優

【氏名】長部 善憲

【要約】 【課題】動物の後脚の可動域を確保しつつ骨盤を安定させることができる動物の創外固定装置を提供する。

【構成】左右の大腿骨にそれぞれ挿入される左右のピン3,3と、これら左右のピン3,3を保持する左右の保持部11,11と、これら左右の保持部11,11を連結するアーム21とを備える。左右の大腿骨に挿入したピン3,3が保持部11,11により保持され、左右の保持部11,11の間隔がアーム21により保持されているため、左右の大腿骨間に位置する骨盤に加わる荷重負荷を低減することができる。また、ピン3,3を体内の大腿骨に挿入し、その他の保持部11及びアーム21を体外に設置する構造により、治療時及び治癒後の装置着脱手術時には切開部が小さく低侵襲であり、細い大腿骨でも十分な初期固定性が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の大腿骨にそれぞれ挿入される左右のピンと、これら左右のピンを保持する左右の保持部と、これら左右の保持部を連結する連結部材とを備えることを特徴とする動物の創外固定装置。
【請求項2】
前記ピンが前記保持部に回動可能に保持されていることを特徴とする請求項1記載の動物の創外固定装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記連結部材に位置調整可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の動物の創外固定装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の後脚の可動域を確保しつつ骨盤を安定させる動物の創外固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物として多く飼われている犬や猫といった小動物を対象としたバイオメカニカル研究は極めて少なく、これら小動物においては、事故等により内蔵破裂を伴う場合、第一に生命維持の処理を優先し、骨折部の処理が後回しにされるため、小動物を対象とした骨折部の修復・矯正技術や装置の研究開発例は極めて少ない。
【0003】
したがって、これらの開発に対する臨床現場の要望は極めて強く、研究に取り組む機運は高まっているものの、顕著な成果は得られておらず、特に、小動物に適した専用の骨折部矯正・修復用の窓外固定装置は見当たらないので現状である。
【0004】
そして、小動物は、交通事故,机上やベランダの手摺に干した布団等と共に落下して内臓破裂を伴う骨盤骨折や大腿骨粉砕骨折に至る例が多い。このような場合、通常サイズの動物の骨折では、固定プレート(例えば特許文献1)や創外固定装置(例えば特許文献2)が使用されるが、小動物の場合には骨が細く、従来の処理法では二次的な骨折を招いたり、それらのサイズを単に小型化しても、小動物では機能的に対応できなかったりするなどの問題がある。
【特許文献1】特開2002-345836号公報
【特許文献2】特開2004-141403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、動物の後脚の可動域を確保しつつ骨盤を安定させることができる動物の創外固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、左右の大腿骨にそれぞれ挿入される左右のピンと、これら左右のピンを保持する左右の保持部と、これら左右の保持部を連結する連結部材とを備えるものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、前記ピンが前記保持部に回動可能に保持されているものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、前記保持部は、前記連結部材に位置調整可能に連結されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の構成によれば、左右の大腿骨に挿入したピンが保持部により保持され、左右の保持部の間隔が連結部材により保たれているため、左右の大腿骨間に位置する骨盤に加わる荷重負荷を低減することができる。また、ピンを体内の大腿骨に挿入し、その他の保持部及びアームを体外に設置する構造により、細い大腿骨でも十分な初期固定性が得られ、治療時及び治癒後の装置着脱手術時には切開部が小さく低侵襲である。
【0010】
また、請求項2記載の構成によれば、取付状態で、大腿骨の屈曲・伸展が可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の構成によれば、使用する動物の体形に合わせてピン位置などを調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な動物の創外固定装置を採用することにより、従来にない動物の創外固定装置が得られ、その動物の創外固定装置について記述する。
【0013】
まず、固定装置を作製する以前に、予備実験として、6自由度電気角度計(ゴニオメータ)を新鮮イヌ屍体に取り付け、健常である後脚の可動域の測定を行った。
【0014】
その結果として、固体A(プードル:体重5.26kg)からは左右平均で約133deg,固体B(マルチーズ:体重1.19kg)からは左右平均で約169degの可動域を得た。この結果と獣医従事者の意見を踏まえ、固定装置を挿着した後の可動域を90deg以上となるよう目標を設定した。
【0015】
設計においては、治療段階にある骨盤を安定させることを前提として、後脚の可動域の確保などバイオメカニクス的観点に重点を置き、生態適合性や負担軽減のための小型化を考慮して行った。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図4は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、創外固定装置1は、左右一対のコ字形ワイヤ2,2を備え、このコ字形ワイヤ2は、大腿骨101に挿入するピン3と、このピン3とほぼ平行に設けた被保持部4と、前記ピン3と被保持部4とを連結する連結部5と一体に備え、この連結部5は前記ピン3と交差する方向をなし、この例ではピン3と連結部5は、略90度の角度をなし、連結部5と被保持部4は、略90度の角度をなす。すなわちワイヤを略コ字形に屈曲してピン3と連結部5と被保持部4とを一体に備えたコ字形ワイヤ2が得られる。
【0017】
前記左右のピン3,3は、左右の保持部11,11により保持される。この保持部11は、保持部本体12と、この保持部本体12に設けた軸受13により回動可能に設けた回転軸14と、この回転軸14と略直交方向をなし前記保持部本体12から突出された連結用軸15とを備えている。この連結用軸15は断面円形をなす。そして、左右の保持部11,11は、左右の回転軸14,14を対向して使用される。尚、軸受13には、自動調心玉軸受が用いられる。
【0018】
前記回転軸14には、前記コ字形ワイヤ2の被保持部4を取り付ける取付孔16が穿設され、この取付孔16は前記回転軸14の軸心の直交方向に貫通形成されている。そして、前記取付孔16に被保持部4を挿通して位置決めした状態で、図示しない固定手段により取付孔16に被保持部4を固定できるようになっている。
【0019】
前記左右の保持部11,11は、連結部材たるアーム21により連結され、このアーム21は、断面円形であって、動物の背部から骨盤を包み込むように湾曲形状をなす。前記アーム21と前記保持部11とは、連結具22により連結される。この連結具22は、前記連結用軸15を挟持固定可能な第1の挟持ブロック23と、前記アーム21を挟持固定可能な第2の挟持ブロック24とを備える。前記第1の挟持ブロック23は、切欠き状の挟持溝23Aを備え、この挟持溝23Aの長さ方向に前記連結用軸15がスライド可能であり、ボルトなどの締め具25を操作して挟持溝23Aを締めることにより、第1の挟持ブロック23に連結用軸15を固定できる。また、前記第2の挟持ブロック24は、切欠き状の挟持溝24Aを備え、この挟持溝24Aの長さ方向に前記アーム21がスライド可能であり、前記締め具25を操作して挟持溝24Aを締めることにより、第2の挟持ブロック24にアーム21を固定できる。
【0020】
また、前記締め具25は、第1及び第2の挟持ブロック23,24に挿通され、締め付ける前において、該締め具25を中心に第1及び第2の挟持ブロック23,24同士の角度を調整することができ、これにより、アーム21に対する連結用軸15の向きを調整することができる。
【0021】
次に、前記創外固定装置1の使用方法について説明する。動物の大きさに合わせて左右のピン3,3の位置を調整し、図3に示すように、背中側から骨盤102を挟んだ左右の大腿骨101,101にピン3,3を打ち込む。尚、図中103は、大腿骨頭と寛骨臼とからなる股関節である。
【0022】
装着中のピン3の抜け落ちやゆるみを防止するためにピン3の先端にネジ状の溝加工を施し、その先端を大腿骨101の遠位端の膝関節部近傍まで刺入する。これによってピン先端の溝部に骨組織が食い込み、ピン3と大腿骨101の固定が十分となる。ピン3の基端側は皮膚の外側に位置し、図2に示すように、回転軸14が股関節103の回転中心の延長上になるように配置する。
【0023】
そして、創外固定装置1は、背部から骨盤を包み込むような形状をしており、体外のアーム21,保持部11,11及び大腿骨101に挿入したピン3,3により、左右の股関節103,103の間隔を一定に保つことができ、間にある骨盤102への負荷を低減することができる。また、左右の股関節103,103の回転軸の延長上に設置された軸受13,13によって股関節103,103の屈曲,伸展が可能となる。
【0024】
実験例
図2に示したように、イヌの屍体111に創外固定装置1を取り付け、その後脚112の可動域の測定を行った。測定は6自由度電気角度計及び静止画像からの読み取りによって行った。その結果を表1に示す。固体A,Bで行った実験で、いずれも100deg以上の可動域を確保できることが確認された。
【0025】
【表1】


また、使用したコ字形ワイヤ2の力学強度を評価するため、圧縮試験及び引張試験を行った。コ字形ワイヤ2は、直径2.0mmのkワイヤ(瑞穂医科工業株式会社製)を用い、連結部5の長さを20mmとした。そして、図4に示すような静的材料試験機(EZGraph:島津製作所株式会社製)を用いた。この試験機は、上下のアタッチメント121,122を備え、アタッチメント121,122の移動により被測定物の圧縮と引張とを行い、その値を測定するものあり、それら上下のアタッチメント121,122に、ピン3と被保持部4と固定し、アタッチメント121,122から側方に突出したピン3と被保持部4の突出寸法Sが、3mmと5mmの場合とで実験を行った。この突出寸法Sは、ピン3を実際に取り付けたときの値を参考とした。
【0026】
この試験結果を下記の表2に示す。
【0027】
【表2】


図4の状態で、コ字形ワイヤ2に、51.6N(5.26kgf)が加わった際に、ワイヤ2で発生する変位は、最大で1.1mm程度であり、11.7N(1.19kgf)が加わった際に、ワイヤ2で発生する変位は、最大で0.4mm程度であるという結果を得た。
【0028】
以上のような創外固定装置1の設計においては、バイオメカニクス的観点に重点をおき、力学強度や可動域の確保に重点をおき、骨折などの治療中の骨盤102を安定させつつ、創外固定装置1の左右両側に設置した軸受13によって、治療中の患畜の股関節103,103の屈曲,伸展運動が可能となった。
【0029】
実験結果より、測定を行ったいずれの固体でも100deg以上の屈曲,伸展可動域を確保されることが確認され、これは患畜が歩行するために十分な量であると言える。そして、歩行を可能にすることは、治療中の患畜のストレス低減に直結し、治療への好影響が期待できる。また、この創外固定装置1の構造的な利点として、体内への侵入が非常に細いピン3であり、その直径は例えば2.5mm以下であり、手術創も極めて小さく抑えられる。これは一般的な外科手術と異なる点であり、患畜に対して大きなメリットとなり得る。
【0030】
また、使用したコ字形ワイヤ2の力学強度の試験結果から、荷重による変位は荷重が加わり始めた直後に大きく表れ、その後は傾きが略一定(111.1N/mm)となった。このことから保持部11とコ字形ワイヤ2との連結部分の固定を強固にすることによって、荷重に対する変位を減らせると予想できる。また、表2にかかわる実験結果で、51.6Nという負荷荷重はこの創外固定装置1が想定する対象の中でも最大級に分類されるものであり、加えて、患畜の全体重が片側のコ字形ワイヤ2に加わることも考え難く、また、コ字形ワイヤ2の材質を更に強固な金属などに変更することも容易である。したがって、この創外固定装置1の設計適正化や各部の材料を吟味することで、臨床応用に対して十分な強度を持ちえる。
【0031】
このように、本創外固定装置1による骨折骨盤の固定方法は、今まで治療が難しかった小動物の骨盤骨折に対して有効な治療方法となり、小動物の骨盤骨折用創外固定装置として優れた効果を有し、骨盤を骨折した動物の後脚の可動域を確保しつつ骨盤を安定させることができる。
【0032】
このように本実施例では、左右の大腿骨101,101にそれぞれ挿入される左右のピン3,3と、これら左右のピン3,3を保持する左右の保持部11,11と、これら左右の保持部11,11を連結する連結部材たるアーム21とを備えるから、左右の大腿骨101,101に挿入したピン3,3が保持部11,11により保持され、左右の保持部11,11の間隔がアーム21により保たれているため、左右の大腿骨101,101間に位置する骨盤102に加わる荷重負荷を低減することができる。また、ピン3,3を体内の大腿骨101に挿入し、その他の保持部11及びアーム21を体外に設置する構造により、治療時及び治癒後の装置着脱手術時には切開部が小さく低侵襲であり、細い大腿骨101でも十分な初期固定性が得られる。
【0033】
また、このように本実施例では、ピン3が保持部11に回動可能に保持されているから、取付状態で、大腿骨101の屈曲・伸展が可能となる。
【0034】
また、このように本実施例では、保持部11は、連結部材たるアーム21に位置調整可能に連結されているから、使用する動物の体形に合わせてピン位置などを調整できる。
【0035】
また、実施例上の効果として、ピン3と、このピン3と交差方向の線材たる連結部5を有する被保持部4とを一体に備え、この被保持部4を保持部11に保持したから、ピン3の先端側を体内に位置させ、他の部分を体外に位置させ、被保持部4を回動可能に保持することにより、ピン3を挿入した大腿骨101の屈曲・伸展を自由に行うことができる。
【実施例2】
【0036】
図5は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、回転軸14の基端に球状部14Aを設け、この球状部14Aを、この部分の受け部を有する軸受13Aが支持し、これにより回転軸14が軸心を中心とした回転及び揺動可能に設けられており、ピン3が大腿骨101の動きに倣って動くことができる。
【0037】
尚、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、コ字形をワイヤを示したが、ワイヤはU字形でもよいし、ピンと連結部からなるL字形でもよいし、L字形のワイヤの場合は、連結部を保持部により保持すればよい。また、装置のコ字形ワイヤ以外の部分には主としてアルミニウム合金を用いたが、装置の各部材の材質は適宜選定可能である。さらに、左右の保持部の一方がアームに位置調整可能に連結されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1を示す斜視図である。
【図2】同上、大腿骨へのピンの挿入状態を示す説明図である。
【図3】同上、使用状態を示す斜視図である。
【図4】同上、コ字形ワイヤの試験装置の要部の正面図である。
【図5】本発明の実施例2における大腿骨へのピンの挿入状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 創外固定装置
3 ピン
4 被保持部
5 連結部
11 保持部
21 アーム
101 大腿骨
102 骨盤
103 股関節
【出願人】 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】506314313
【氏名又は名称】長部 善憲
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護

【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義

【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次

【識別番号】100119312
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 栄松


【公開番号】 特開2008−67966(P2008−67966A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−250552(P2006−250552)