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【発明の名称】 歯列矯正用金具
【発明者】 【氏名】下田 哲也

【要約】 【課題】歯列矯正具にワイヤを装着する際に、極めて容易に装着可能とすることによって、低コストであって、しかも被矯正者が不快感を覚えることがない歯列矯正具を提供する。

【構成】ワイヤの挿入溝11を前端に設け、接着剤を介して歯に接合される接合面12を後端に設けた角柱状の基台部10と、この基台部の前端に着脱自在に装着して挿入溝11に挿入されたワイヤの挿入溝からの脱落を防止するストッパー20を備え、ストッパーは、挿入溝に対向させて配置して挿入溝の少なくとも一部を閉塞する閉塞板21と、この閉塞板から突出させた第1の重合板24−1と第2の重合板24−2とにより門型状とするとともに、各重合板の先端には基台部と係合する係合爪25−1,25−2を設け、基台部には、側面に係合爪とそれぞれ係合する係合溝15−1,15−2を横断状に設けるとともに、この係合溝が形成された側面の少なくとも1つにスリット19を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが挿入される挿入溝を前端に横断状に設けるとともに、接着剤を介して歯の表面に接合される接合面を後端に設けた角柱状の基台部と、
この基台部の前端に着脱自在に装着して前記挿入溝に挿入された前記ワイヤの前記挿入溝からの脱落を防止するストッパーと
を備え、
前記ストッパーは、前記挿入溝に対向させて配置して前記挿入溝の少なくとも一部を閉塞する閉塞板と、この閉塞板から突出させて前記基台部の側面にそれぞれ重ね合わせる第1の重合板と第2の重合板とにより門型状とするとともに、前記第1の重合板及び前記第2の重合板の先端には前記基台部と係合する係合爪を設け、
前記基台部には、前記側面に前記係合爪とそれぞれ係合する係合溝を横断状に設けるとともに、この係合溝が形成された側面の少なくとも1つに、前記係合溝と交差して前記係合溝を2つに分断するスリットを設けた歯列矯正用金具。
【請求項2】
前記ストッパーは、前記挿入溝に挿入した前記ワイヤとの相互作用によって生じる力の大きさを、前記閉塞板の幅寸法で調整していることを特徴とする請求項1記載の歯列矯正用金具。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記閉塞板の幅寸法を前記基台部の前記側面の幅寸法よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の歯列矯正用金具。
【請求項4】
前記基台部には、前記係合溝よりも後端側の側面に、ゴム製チェーンを係合させて装着するためのチェーン用凹部を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯列矯正用金具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列矯正用金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯並びを矯正するための歯列矯正治療を行う場合には、各歯の表面に矯正用金具をそれぞれ装着し、隣接した各矯正用金具に矯正用のワイヤを架け渡しながら装着するとともに、ワイヤに所定のテンションを加えてワイヤと矯正用金具との間に摩擦力などの相互作用を生じさせて、矯正用金具を介して歯に矯正のための力を作用させて適正な歯列状態へと矯正している。
【0003】
矯正用金具には、矯正用のワイヤを挿入可能とした略U字状の溝を設けており、この溝内にワイヤを挿入した後に、溝内に接着剤を充填してワイヤを固定し、ワイヤに加えられているテンションに応じた力を矯正用金具に作用させ、この矯正用金具を介して歯に矯正のための力を作用させている。
【0004】
ただし、接着剤を介してワイヤを矯正用金具に固定した場合には、ワイヤが矯正用金具に対して変位しないことから、装着直後には十分な力を歯に作用させて矯正が行えるものの、歯列が矯正されるにつれて歯に作用する力が徐々に減少するので、このような力の減少を抑制するために、ワイヤは矯正用金具に対して変位可能に装着している方が望ましいことが知られている。
【0005】
そこで、矯正用金具は、ワイヤが挿入される溝が形成された基台部と、この基台部に装着して溝の挿入されたワイヤを係止して溝からのワイヤの脱落を防止する係止片とで構成し、特に、係止片を板バネとして機能させて、係止片に生じさせた付勢力でワイヤを基台部に対して変位可能な程度で溝内に保持する矯正用金具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−104340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、係止片を板バネとしてワイヤを保持する場合には、係止片に付勢力を生じさせておくために係止片が装着される基台部の構造が複雑化することとなって、矯正用金具を高コスト化させることとなっていた。
【0007】
しかも、係止片には付勢力が作用しているために、基台部へのワイヤの装着時に係止片の付勢力に抗しながら作業する必要があり、基台部が装着された歯に余計な力が作用することによって、ワイヤの装着時に被矯正者が不快感を覚えるおそれがあった。
【0008】
本発明者は、このような現状に鑑み、歯列矯正具にワイヤを装着する際に、極めて容易に装着可能とすることによって、低コストであって、しかも被矯正者が不快感を覚えることがない歯列矯正具を提供するために研究を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の歯列矯正用金具では、ワイヤが挿入される挿入溝を前端に横断状に設けるとともに、接着剤を介して歯の表面に接合される接合面を後端に設けた角柱状の基台部と、この基台部の前端に着脱自在に装着して挿入溝に挿入されたワイヤの挿入溝からの脱落を防止するストッパーとを備え、ストッパーは、挿入溝に対向させて配置して挿入溝の少なくとも一部を閉塞する閉塞板と、この閉塞板から突出させて基台部の側面にそれぞれ重ね合わせる第1の重合板と第2の重合板とにより門型状とするとともに、第1の重合板及び第2の重合板の先端には基台部と係合する係合爪を設け、基台部には、側面に係合爪とそれぞれ係合する係合溝を横断状に設けるとともに、この係合溝が形成された側面の少なくとも1つに、係合溝と交差して係合溝を2つに分断するスリットを設けた。
【0010】
さらに、本発明の歯列矯正用金具では、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)ストッパーは、挿入溝に挿入したワイヤとの相互作用によって生じる力の大きさを、閉塞板の幅寸法で調整していること。
(2)ストッパーは、閉塞板の幅寸法を基台部の側面の幅寸法よりも大きくしたこと。
(3)基台部には、係合溝よりも後端側の側面に、ゴム製チェーンを係合させて装着するためのチェーン用凹部を設けていること。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ワイヤが挿入される挿入溝を前端に横断状に設けるとともに、接着剤を介して歯の表面に接合される接合面を後端に設けた角柱状の基台部と、この基台部の前端に着脱自在に装着して挿入溝に挿入されたワイヤの挿入溝からの脱落を防止するストッパーとを備え、ストッパーは、挿入溝に対向させて配置して挿入溝の少なくとも一部を閉塞する閉塞板と、この閉塞板から突出させて基台部の側面にそれぞれ重ね合わせる第1の重合板と第2の重合板とにより門型状とするとともに、第1の重合板及び第2の重合板の先端には基台部と係合する係合爪を設け、基台部には、側面に係合爪とそれぞれ係合する係合溝を横断状に設けるとともに、この係合溝が形成された側面の少なくとも1つに、係合溝と交差して係合溝を2つに分断するスリットを設けたことによって、極めて安価な歯列矯正用金具とすることができるとともに、基台部へのストッパーの装着時にワンタッチでストッパーを装着でき、極めて短時間でストッパーを装着できるので、ワイヤの装着時に被矯正者が不快感を覚えるおそれを解消できる。
【0012】
しかも、基台部からストッパーを取り外す場合には、基台部の側面にスリット設けておくことにより、このスリット部分に探針などの器具を差し込むことができ、探針をスリット部分に差し込みながら係合爪に引っ掛けて、探針で重合板を変形させることによって係合溝から係合爪を離脱させることができ、極めて容易に取り外すことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の歯列矯正用金具において、ストッパーは、挿入溝に挿入したワイヤとの相互作用によって生じる力の大きさを、閉塞板の幅寸法で調整していることによって、ワイヤの取り替えでなくサイズの異なる閉塞板を有するストッパーへの交換によって、相互作用によって生じる力の大きさを極めて容易に調整できる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の歯列矯正用金具において、ストッパーは、閉塞板の幅寸法を基台部の側面の幅寸法よりも大きくしたことによって、基台部の大きさをできるだけ小さくしながらも、ワイヤとの相互作用によって生じる力の大きさを大きくすることができ、基台部を小型化して低コスト化できる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯列矯正用金具において、基台部には、係合溝よりも後端側の側面に、ゴム製チェーンを係合させて装着するためのチェーン用凹部を設けていることによって、基台部に装着されたゴム製チェーンが、基台部に装着されたワイヤと接触することを防止でき、ゴム製チェーンとワイヤとの接触によるワイヤの変位の抑制が生じることを防止して、矯正が阻害されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の歯列矯正用金具は、図1〜3に示すように、基台部10と、この基台部10に装着するストッパー20とで構成している。図1(a)は基台部10の左側面図、図1(b)は基台部10の平面図、図1(c)は基台部10の正面図、図1(d)は基台部10の底面図、図1(e)は図(d)のX−X断面図、図1(f)は基台部10の右側面図である。
【0017】
基台部10は、角柱状の金属体であって、前端にはワイヤが挿入される挿入溝11を横断状に設け、後端には接着剤を介して歯の表面に接合するための接合面12を設けている。基台部10に用いる金属体は、医療的に安全性を確認されている金属であれば何であってもよい。
【0018】
接合面12は、角柱状とした基台部10の前後方向に対して傾斜した傾斜面としており、接合面12の傾斜角度は、基台部10を歯に装着した際に、基台部10の前後方向が水平方向となるように調整している。特に、接合面12は、被矯正者への装着前に研削処理などによって傾斜角度を調整可能としている。
【0019】
また、基台部10は、接合面12の傾斜角度を調整して前後方向を水平方向に合わせることによって、基台部10を口の外側に向いた歯の面に装着した際には、基台部10の前方方向への投影面積を最小とすることができ、基台部10を目立たなくすることができるので、外観を向上させることができる。
【0020】
基台部10は、接合面12の傾斜角度の調整を考慮して、前後方向に調整代分だけ長く形成しておくことが望ましい。あるいは、調整作業の手間を削減するために、接合面12の傾斜角度を異ならせた複数種類の基台部10をあらかじめ準備しておいてもよい。
【0021】
挿入溝11は、基台部10の前端側の端面13に横断状に設けており、特に、四角柱状とした基台部10の1組の互いに平行な第1側面14-1と第2側面14-2とに平行に設けている。
【0022】
第1側面14-1には、挿入溝11と平行に横断状に配置した凹状の第1係合溝15-1を設けるとともに、この第1係合溝15-1よりも基台部10の後端側に挿入溝11と平行に凹状の第1チェーン用凹部16-1を設けている。第1係合溝15-1は、後述する第1係合爪25-1と係合可能なスリット状の溝としており、第1チェーン用凹部16-1は、後述するゴム製チェーンと係合可能な半円弧状の溝としている。
【0023】
また、第1側面14-1には、第1係合溝15-1と端面13との間に、基台部10の前後方向に沿って凹状に窪ませた第1凹部17-1を設けており、この第1凹部17-1の配設にともなって、第1側面14-1には、第1凹部17-1の底面に対して相対的に突出状となった2つの第1凸部18-1,18-1を第1側面14-1の側縁に沿って設けている。
【0024】
第2側面14-2には、挿入溝11と平行に横断状に配置した凹状の第2係合溝15-2を設けるとともに、この第2係合溝15-2よりも基台部10の後端側に挿入溝11と平行に凹状の第2チェーン用凹部16-2を設けている。第2係合溝15-2は、後述する第2係合爪25-2と係合可能なスリット状の溝としており、第2チェーン用凹部16-2は、後述するゴム製チェーンと係合可能な半円弧状の溝としている。
【0025】
また、第2側面14-2には、第2係合溝15-2と端面13との間に、基台部10の前後方向に沿って凹状に窪ませた第2凹部17-2を設けており、この第2凹部17-2の配設にともなって、第2側面14-2には、第2凹部17-2の底面に対して相対的に突出状となった2つの第2凸部18-2,18-2を第2側面14-2の側縁に沿って設けている。
【0026】
さらに、第1側面14-1には、基台部10の前後方向に沿ってスリット19を設けて、このスリット19と交差する第1係合溝15-1を2つに分断している。
【0027】
ストッパー20は、図2及び図3に示すように、挿入溝11が設けられた基台部10の端面13と対向させる平板状の閉塞板21と、この閉塞板21から突出させて基台部10の第1側面14-1に重ね合わせる第1重合板24-1と、基台部10の第2側面14-2に重ね合わせる第2重合板24-2とで門型状とした金属体で構成している。ストッパー20に用いる金属体も、医療的に安全性を確認されている金属であれば何であってもよい。
【0028】
第1重合板24-1の先端には、基台部10に設けた第1係合溝15-1と係合する第1係合爪25-1を突設し、第2重合板24-2の先端には、基台部10に設けた第2係合溝15-2と係合する第2係合爪25-2を突設している。
【0029】
歯列矯正用金具では、ストッパー20の第1重合板24-1を基台部10の第1側面14-1に重ね合わせるととともに、ストッパー20の第2重合板24-2を基台部10の第2側面14-2に重ね合わせながらストッパー20を基台部10の前端側から基台部10に押し込んで、第1係合爪25-1を第1係合溝15-1に係合させるとともに、第2係合爪25-2を第2係合溝15-2に係合させて、ストッパー20を基台部10に着脱自在に装着可能としている。
【0030】
特に、ストッパー20を基台部10に装着した状態では、ストッパー20の閉塞板21が基台部10の端面13と対向し、基台部10に設けられた挿入溝11の少なくとも一部を閉塞板21で閉塞して、後述するように挿入溝11に挿入されたワイヤの挿入溝11からの脱落を防止している。
【0031】
このように、歯列矯正用金具では、前端にワイヤが挿入される挿入溝11を設けた基台部10の前端に、ストッパー20を押し込みながら装着可能としてワンタッチでの装着を可能としていることにより、極めて短時間でストッパー20を装着できるので、被矯正者が不快感を覚えるおそれを解消できる。
【0032】
本実施形態では、第1係合爪25-1及び第2係合爪25-2は、第1重合板24-1及び第2重合板24-2の先端縁をそれぞれ折り返し状に折り曲げて形成しているが、第1係合爪25-1及び第2係合爪25-2はこの形態に限定されるものではなく、基台部10に設けられた第1係合溝15-1及び第2係合溝15-2にそれぞれ係合可能となっていればよい。
【0033】
なお、本実施形態では、ストッパー20は、所定の外形形状とした平板状の金属板に第1のプレス加工による折曲処理を行って第1係合爪25-1及び第2係合爪25-2を形成し、次いで、第2のプレス加工による折曲処理を行って閉塞板21に対して突出させた第1重合板24-1及び第2重合板24-2を形成している。
【0034】
スリット19が設けられた第1側面14-1と重なり合う第1重合板24-1には、スリット19と連通する開口26を形成しており、図4に示すように、この開口26に探針30を挿入して、探針30の先端を第1重合板24-1または第1係合爪25-1に引っ掛けて第1重合板24-1を撓ませることにより、第1係合爪25-1を第1係合溝15-1から極めて容易に離脱させることができ、ストッパー20を基台部10から取り外すことができる。
【0035】
このように、ストッパー20は基台部10から極めて容易に取り外すことができるので、ストッパー20の基台部10への装着時だけでなく、離脱時にも被矯正者に不快感を覚えさせるおそれを解消できる。
【0036】
スリット19は、探針30による第1重合板24-1との係合または第1係合爪25-1との係合を行いやすくするために設けたものであり、探針30の挿入部分だけを穿って探針30の挿入孔を設けてもよいが、基台部10自体が極めて小さいので、第1側面14-1を縦断させたスリット19とすることにより、容易に形成することができる。
【0037】
第1側面14-1に設けた第1凹部17-1は、底面を第1重合板24-1と接する平面状としており、第1重合板24-1の厚み寸法分だけ窪ませている。同様に、第2側面14-2に設けた第2凹部17-2は、底面を第2重合板24-2と接する平面状としており、第2重合板24-2の厚み寸法分だけ窪ませている。
【0038】
すなわち、第1凸部18-1,18-1は、第1重合板24-1の厚み寸法分だけ突出させており、第1凸部18-1,18-1の上面と第1重合板24-1の上面とを同一平面上に位置させて段差が生じないようにして、基台部10にストッパー20を装着した状態での外観を向上させている。同様に、第2凸部18-2,18-2は、第2重合板24-2の厚み寸法分だけ突出させており、第2凸部18-2,18-2の上面と第2重合板24-2の上面とを同一平面上に位置させて段差が生じないようにして、基台部10にストッパー20を装着した状態での外観を向上させている。
【0039】
しかも、第1凸部18-1,18-1及び第2凸部18-2,18-2が、それぞれ第1重合板24-1及び第2重合板24-2の第1係合溝15-1及び第2係合溝15-2の長手方向に沿った変位を規制して、基台部10に装着したストッパー20にズレが生じることを防止している。
【0040】
なお、重なり合った第1凹部17-1と第1重合板24-1との摩擦抵抗、及び重なり合った第2凹部17-2と第2重合板24-2との摩擦抵抗が十分に大きい場合には、この摩擦抵抗によって基台部10に対するストッパー20のズレを防止できるので、図5に示すように、第1凸部18-1,18-1及び第2凸部18-2,18-2は必ずしも設ける必要はない。
【0041】
閉塞板21は、図3に示すように基台部10の前端側の端面13に設けた挿入溝11と必ずしも同じ長さである必要はなく、図6に示すように、挿入溝11の長さ寸法よりも短い寸法の幅とした細幅状としてもよい。
【0042】
このように、閉塞板21を細幅とした場合には、図7に示すように、歯並びが極めて悪い状態において、隣り合った基台部10の挿入溝11にワイヤ40を挿入してストッパー20を基台部10に装着しながらワイヤ40の架け渡しを行う際に、作業を行いやすくすることができる。
【0043】
そして、歯並びが矯正されるにつれて、閉塞板21の幅寸法が大きいものへと逐次取り替えることにより、ワイヤ40を取り替えることなく適正な矯正状態とすることができる。
【0044】
すなわち、歯並びが少しでも矯正されると、ワイヤ40及び基台部10を介して各歯に作用する矯正の力が弱まることとなって、矯正の作用が低下することとなるので、通常では、ワイヤ40の再装着を行って適正な力が作用するようにしているが、本発明の歯列矯正用金具では、閉塞板21の幅寸法を大きくすることによってワイヤ40と閉塞板21との接触領域を大きくして、ワイヤ40と閉塞板21との間の相互作用によって生じる力の大きくすることにより、所要の矯正の力が得られるようにしているものである。
【0045】
したがって、ワイヤ40の取り替えが不要であることから、作業性を向上させることができ、短時間で作業を終了することができる。
【0046】
特に、矯正の程度が進んだ場合には、図8に示すように、閉塞板21の幅寸法を基台部10の第1側面14-1及び第2側面14-2の幅寸法よりも大きくしたストッパー20を用いることによって、基台部10の大きさをできるだけ小さくしながらも、ワイヤ40との相互作用によって生じる力の大きさを大きくすることができ、基台部10を小型化して低コスト化できる。
【0047】
このように構成した歯列矯正用金具では、ワイヤ40だけでなく、図9に示すように、所定間隔で金具挿入孔51を設けたゴム製チェーン50を図10に示すように隣り合った基台部10に架け渡して、このゴム製チェーン50の収縮力を利用した矯正も行えるようにしている。
【0048】
特に、前述したように、基台部10には、ゴム製チェーン50が係合される第1チェーン用凹部16-1及び第2チェーン用凹部16-2をそれぞれ設けていることにより、第1チェーン用凹部16-1及び第2チェーン用凹部16-2にゴム製チェーン50を係合させることによって、ゴム製チェーン50を安定的に保持することができる。
【0049】
しかも、第1チェーン用凹部16-1及び第2チェーン用凹部16-2は、第1係合溝15-1及び第2係合溝15-2よりも基台部10の後端側に設けているので、基台部10に装着したゴム製チェーン50と、基台部10に装着したワイヤ40とが接触することを防止でき、ゴム製チェーン50とワイヤ40との接触によるワイヤ40の変位の抑制が生じることを防止して、矯正が阻害されることを防止できる。
【0050】
なお、基台部10にゴム製チェーン50を装着する場合には、基台部10を歯に装着した後にゴム製チェーン50の各金具挿入孔51に基台部10を挿入させながらゴム製チェーン50の装着を行い、次いで、各基台部10の挿入溝11にワイヤ40を挿入してストッパー20を基台部10に装着してワイヤ40の架け渡しを行っている。
【0051】
図11は、本発明の他の実施形態の斜視図であり、この歯列矯正用金具も、前端に挿入溝11'が形成された基台部10'と、この基台部10'に装着して挿入溝11'に挿入したワイヤを挿入溝11'内に保持させるストッパー20'とで構成している。
【0052】
特に、基台部10'には後端にフランジ状の接合板12'を設けており、接合板12'の裏面を接合面として歯に装着する際の接合面積を大きくすることにより、基台部10'を安定的に歯に装着可能としている。
【0053】
接合板12'は、基台部10'とは別体の金属板で構成して、接合板12'に基台部10'を接合してもよいし、削りだしあるいは鋳造などによって基台部10'と接合板12'とを一体的に形成してもよい。
【0054】
挿入溝11'は、四角柱状とした基台部10'の1組の互いに平行な第1側面14-1'と第2側面14-2'とに平行に、基台部10'の前端側の端面13'に横断状に設けている。
【0055】
第1側面14-1'には、基台部10'の前後方向に沿って凹状に窪ませた第1凹部17-1'を設けており、この第1凹部17-1'の配設にともなって、第1側面14-1'には、第1凹部17-1'の底面に対して相対的に突出状となった2つの第1凸部18-1',18-1'を第1側面14-1'の側縁に沿って設けている。
【0056】
同様に、第2側面14-2'には、基台部10'の前後方向に沿って凹状に窪ませた第2凹部17-2'を設けており、この第2凹部17-2'の配設にともなって、第2側面14-2'には、第2凹部17-2'の底面に対して相対的に突出状となった2つの第2凸部18-2',18-2'を第2側面14-2'の側縁に沿って設けている。
【0057】
第1凹部17-1'及び第2凹部17-2'内には、後述するようにストッパー20'に設けられた係合爪25と係合する係合溝15'を設けている。係合溝15は、挿入溝11'と平行に設けている。なお、本実施形態では、係合溝15'は、第1凸部18-1',18-1'間、及び第2凸部18-2',18-2'間に設けて、第1側面14-1'及び第2側面14-2'を完全には横断していないが、この状態も第1側面14-1'及び第2側面14-2'に係合溝15'を横断状に設けているものとみなしている。
【0058】
基台部10'には、係合溝15'よりも後端側に第2チェーン用凹部16'を設けており、さらに、基台部10'には、第1側面14-1'に前後方向に沿ったスリット19'を設けている。
【0059】
ストッパー20'は、挿入溝11'が設けられた基台部10'の端面13'と対向させる平板状の閉塞板21'と、この閉塞板21'から突出させて基台部10'の第1側面14-1'に重ね合わせる第1重合板24-1'と、基台部10'の第2側面14-2'に重ね合わせる第2重合板24-2'とで門型状とした金属体で構成している。
【0060】
第1重合板24-1'の先端には、基台部10'に設けた係合溝15'と係合する第1係合爪25-1'を突設し、第2重合板24-2'の先端には、基台部10'に設けた第2係合溝15-2'と係合する第2係合爪25-2'を突設している。
【0061】
さらに、第1重合板24-1'には、基台部10'に設けたスリット19'と連通する開口26'を設けている。
【0062】
本実施形態のストッパー20'では、基台部10'に設けられた挿入溝11'を閉塞する閉塞板21'を基台部10'の前端側の端面13'において偏在させており、挿入溝11'を部分的に閉塞するようにしている。
【0063】
このように、閉塞板21'は端面13'に対して偏在させて配置してもよく、隣り合った歯列矯正用金具間に架設されるワイヤとの相互作用を考慮して閉塞板21'を適宜の形状としたストッパー20'を用いることができる。
【0064】
また、図12に示すように、ストッパー20"には閉塞板21"に沿って第1重合板24-1"及び第2重合板24-2"よりも外方にそれぞれ突出させた摘み片29",29"を設けてもよい。
【0065】
この摘み片29",29"を介してストッパー20"をたとえば親指と人差し指とで摘み、閉塞板21"を反り返らせて第1重合板24-1"と第2重合板24-2"との間の間隔を広げることにより、探針を用いることなく基台部からストッパー20"を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態にかかる歯列矯正用金具の基台部の説明図であり、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は底面図、(e)は(d)のX−X断面図、(f)は右側面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる歯列矯正用金具の基台部とストッパーの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる歯列矯正用金具の基台部とストッパーの使用状態の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる歯列矯正用金具の説明図である。
【図5】変容例の基台部の説明図である。
【図6】他の実施形態のストッパーの説明図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる歯列矯正用金具の使用状態説明図である。
【図8】他の実施形態のストッパーの説明図である。
【図9】ゴム製チェーンの説明図である。
【図10】ゴム製チェーンの使用状態の説明図である。
【図11】他の実施形態にかかる歯列矯正用金具の斜視図である。
【図12】他の実施形態にかかるストッパーの斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 基台部
11 挿入溝
12 接合面
13 端面
14-1 第1側面
14-2 第2側面
15-1 第1係合溝
15-2 2係合溝
16-1 第1チェーン用凹部
16-2 第2チェーン用凹部
17-1 第1凹部
17-2 第2凹部
18-1 第1凸部
18-2 第2凸部
19 スリット
20 ストッパー
21 閉塞板
24-1 第1重合板
24-2 第2重合板
25-1 第1係合爪
25-2 第2係合爪
26 開口
30 探針
40 ワイヤ
50 ゴム製チェーン
51 金具挿入孔
【出願人】 【識別番号】505103460
【氏名又は名称】下田 哲也
【出願日】 平成18年9月7日(2006.9.7)
【代理人】 【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎


【公開番号】 特開2008−61805(P2008−61805A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−242686(P2006−242686)