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【発明の名称】 歯科用セラミックス焼結体およびその製造方法
【発明者】 【氏名】澤瀬 隆

【氏名】鎌田 幸治

【氏名】尾立 哲郎

【要約】 【課題】強度に優れた新規な歯科用セラミックス焼結体の製造方法を提供し、さらに、オールセラミックス歯冠修復において複数の歯冠修復物間の連結部材を提供すること。

【構成】歯科用セラミックス原料を加熱してセラミックス焼結体を得る工程、該セラミックス焼結体の表面にガラス成分含有材料を塗布する工程、その後に、ガラス成分含有材料の少なくとも一部が上記セラミックス焼結体中に浸透する温度に加熱する工程を有し、上記歯科用セラミックス原料が、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子および/または酸化チタン粒子を所定量含み、残部が酸化アルミニウム粒子および不可避不純物からなる、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。この焼結体は2つ以上のセラミックス性の歯冠修復物3を連結する連結部材2として好適に用い得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用セラミックス原料を加熱してセラミックス焼結体を得る工程、該セラミックス焼結体の表面にガラス成分含有材料を塗布する工程、その後に、ガラス成分含有材料の少なくとも一部が上記セラミックス焼結体中に浸透する温度に加熱する工程を有し、
上記歯科用セラミックス原料が、0〜1重量%の酸化マグネシウム粒子、0〜1重量%の酸化亜鉛粒子および0〜1重量%の酸化チタン粒子を含み(但し、これらの粒子の合計量は0.01〜1重量%である。)、残部が酸化アルミニウム粒子および不可避不純物からなる、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
【請求項2】
歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化マグネシウム粒子を含み、酸化亜鉛粒子を実質的に含まず、酸化チタン粒子を実質的に含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化亜鉛粒子を含み、酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、酸化チタン粒子を実質的に含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化チタン粒子を含み、酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、酸化亜鉛粒子を実質的に含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
2つ以上のセラミックス製の歯冠修復物を連結する連結部材であって、該連結部材が請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された歯科用セラミックス焼結体からなる、連結部材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製歯冠修復物どうしの連結部材として好適な歯科用セラミックス焼結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスは耐摩耗性や審美性には優れるが、脆性な材料である。このため、歯冠修復物に関して、日常臨床においてはセラミックスは、金属コーピング(フレーム)との併用(陶材焼付け鋳造冠)により、噛み合わせの力に耐えうる歯冠修復物を作製してきた。しかし近年、高強度アルミナセラミックスの開発により、金属を用いない歯冠修復法(オールセラミックス歯冠修復)が大きな注目を集めている。陶材焼付け鋳造冠は、内部に金属が裏装されているため光を遮断し、天然歯の透明感を再現できないのに対し、オールセラミックス歯冠修復では自然な色調を再現することが可能となる。
【0003】
VITA In-Ceram ALUMINA(Germany)は、世界中で頻用されている高強度セラミックスシステムの一つで、スリップキャストテクニック(slip cast technique、築盛法)あるいはCAD/CAM法により、きわめて高い強度のアルミナセラミックスコーピング(フレーム)を作製することができる。スリップキャストテクニックでは3ユニットまでのブリッジフレームを作製することができるものの、人の手による重ね築盛のためアーチファクトが危惧されていたところ、CAD/CAM法では均質なフレームの作製が可能となった。
【特許文献1】特許第3609110号公報
【特許文献2】特表2005−514305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CAD/CAM法では、単冠の作製しかできないという問題がある。一般歯科臨床では、複数の冠の連結や3ユニット以上のブリッジを必要とする場合も多く、このような症例に対して、現時点ではVITA In-Ceram ALUMINAの適応は困難である。さらに日常臨床においては、一旦作製したセラミックスフレームに若干の修正が必要なことがまれではない。そのため本システムではオプティマイザーという修正材料が用意されている。これはセラミックスに各種の賦形材を混合したものであり、それら不純物のため必然的に強度が劣り、耐久性が危惧されている。また、一般歯科治療においてルーチンな手法である、冠と冠の連結が困難であるため、適応に制限がある。
【0005】
こういった事情に鑑みて、本発明では、強度に優れた新規な歯科用セラミックス焼結体の製造方法を提供し、さらに、オールセラミックス歯冠修復において複数の冠間の連結部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の酸化物粒子を微量に含む酸化アルミニウム粒子が連結強度の高い連結部材を提供するセラミックス原料になり得ることを見出して、以下の特徴をもつ本発明を完成した。
(1)歯科用セラミックス原料を加熱してセラミックス焼結体を得る工程、該セラミックス焼結体の表面にガラス成分含有材料を塗布する工程、その後に、ガラス成分含有材料の少なくとも一部が上記セラミックス焼結体中に浸透する温度に加熱する工程を有し、
上記歯科用セラミックス原料が、0〜1重量%の酸化マグネシウム粒子、0〜1重量%の酸化亜鉛粒子および0〜1重量%の酸化チタン粒子を含み(但し、これらの粒子の合計量は0.01〜1重量%である。)、残部が酸化アルミニウム粒子および不可避不純物からなる、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
(2)歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化マグネシウム粒子を含み、酸化亜鉛粒子を実質的に含まず、酸化チタン粒子を実質的に含まない、(1)の製造方法。
(3)歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化亜鉛粒子を含み、酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、酸化チタン粒子を実質的に含まない、(1)の製造方法。
(4)歯科用セラミックス原料が、0.05〜1重量%の酸化チタン粒子を含み、酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、酸化亜鉛粒子を実質的に含まない、(1)の製造方法。
(5)2つ以上のセラミックス製の歯冠修復物を連結する連結部材であって、該連結部材が(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法によって製造された歯科用セラミックス焼結体からなる、連結部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、CAD/CAM法により作製された均質な一つずつの冠を任意に連結する連結部材に好適に用いられるセラミックス焼結体が提供される。この焼結体は十分な強度を有する。本発明によれば、フレームの修正を行うことができる。本発明によれば、高強度アルミナセラミックスを用いた審美補綴の適応症の拡大に大きく寄与するものと考えられる。本発明で得られる焼結体は、連結冠(歯同士の連結)の連結部材、ブリッジ(歯がない)の連結素材、コーピング及びコーピング修正のための素材として用いることができる。本発明によれば、高強度の連結部材が提供されるから、連結のやり直しが可能になる。つまり、試適後何らかの修正が必要な場合に、従来の方法では修復物全体を作りかえなければならなかったところ、本発明で得られる焼結体を用いれば、具合の悪い部分を切断し、再連結が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、「歯科用セラミックス原料」は、歯科分野で用いるためのセラミックスを得るための未焼結の材料である。歯科用セラミックス原料は好ましくはガラス成分を実質的に含まない。歯科用セラミックス原料は通常は粉末状であるが、焼結してセラミックスを得ることができる限りにおいて形態は特に限定されない。本発明において、「歯科用セラミックス焼結体」は、歯科分野で用いるための焼結したセラミックスである。本発明において、「ガラス成分」は、セラミックス焼結体の製造において流動性を有する程度に液化または軟化する成分である。本発明において、加熱処理によって歯科用セラミックス焼結体を得ることができれば、「粒子」の大きさは特に限定はなく、所謂、粉末と称されるものも包含する概念である。
【0009】
本発明では、大部分を酸化アルミニウム粒子が占め、さらに特定の酸化物粒子を特定範囲の割合で含む歯科用セラミックス原料が用いられる。特定の酸化物は、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子および酸化チタン粒子のうちの少なくとも1種である。本発明では、歯科用セラミックス原料は、上記特定の酸化物以外、酸化アルミニウム粒子および不可避不純物で全てが占められることが好ましい。不可避不純物の量は少なければ少ないほどよく、好ましくは0.05重量%以下であり、より好ましくはICP発光分析によって存在が有意に認められないことである。
【0010】
本発明では、焼結体の強度向上の観点から、歯科用セラミックス原料には、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子および酸化チタン粒子が合計で0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%含まれる。歯科用セラミックス原料には、酸化アルミニウム粒子に加えて、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子および酸化チタン粒子の全てが含まれていてもよいし、任意の2種類のみが含まれていてもよいし、任意の1種類のみが含まれていてもよい。これらの粒子の粒子径は特に限定されず、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0011】
歯科用セラミックス原料に酸化マグネシウム粒子が含まれる場合、該粒子の含有量の下限は好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%であり、上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。歯科用セラミックス原料に酸化亜鉛粒子が含まれる場合、該粒子の含有量の下限は好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%であり、上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。歯科用セラミックス原料に酸化チタン粒子が含まれる場合、該粒子の含有量の下限は0.01重量%、好ましくは0.05重量%であり、上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。但し、歯科用セラミックス原料中の酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子および酸化チタン粒子の合計量は上述した範囲内である。これらの範囲内であれば、高強度の歯科用セラミックス焼結体を得ることができ、また、得られるスリップ材の稠度が好適であるため該スリップ材の操作性が向上する。
【0012】
歯科用セラミックス原料が酸化亜鉛粒子を実質的に含まず、さらに、酸化チタン粒子も実質的に含まない場合、酸化マグネシウム粒子の含有量の下限は0.01重量%、好ましくは0.05重量%であり、その上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。
【0013】
歯科用セラミックス原料が酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、さらに、酸化チタン粒子も実質的に含まない場合、酸化亜鉛粒子の含有量の下限は0.01重量%、好ましくは0.05重量%であり、その上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。
【0014】
歯科用セラミックス原料が酸化マグネシウム粒子を実質的に含まず、さらに、酸化亜鉛粒子も実質的に含まない場合、酸化チタン粒子の含有量の下限は0.01重量%、好ましくは0.05重量%であり、その上限は1重量%、好ましくは0.5重量%である。
【0015】
一つの好適態様では、歯科用セラミックス原料は酸化亜鉛粒子を実質的に含まずに、酸化マグネシウム粒子と酸化チタン粒子を含む。その場合、酸化マグネシウム粒子の含有量の下限は0.1重量%であり、その上限は0.3重量%であり、酸化チタン粒子の含有量の下限は0.1重量%であり、その上限は0.2重量%である。
【0016】
歯科用セラミックス原料に酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子または酸化チタン粒子をそれぞれ実質的に含まないことはICP発光分析の測定において対象とする粒子に対応する元素が有意に存在しているとは認められないという結果を得ることによって確かめられる。
【0017】
本発明では、歯科用セラミックス原料を焼結する。歯科用セラミックス原料の大部分は酸化アルミニウム粒子が占めるので、焼結条件などはアルミナセラミックスの一般的な製造方法における条件を適宜援用することができる。
【0018】
好ましくは、まず、歯科用セラミックス原料をガラス成分の不存在下で加熱して焼結させる。得られた焼結体を冷却してガラス成分含有材料を塗布して、しかる後に、再度加熱する。そのことによって、ガラス成分の少なくとも一部が焼結体に浸透する。ガラス成分含有材料を塗布する前の焼結体を得るためには、好ましくは1050〜1150℃にて、好ましくは100〜150分間加熱する。ガラス成分含有材料を加えた後は、好ましくは1050〜1150℃にて、好ましくは170〜220分間、ガラス成分の浸透が完了するまで加熱し、余剰のガラスを除去後好ましくは900〜1000℃にて、好ましくは5〜20分間、さらに加熱する。ガラス成分の浸透が完了したことは試料上面にガラス成分含有材料を塗布後加熱し、試料下面までガラス成分が浸透したことによって判断する。
【0019】
ガラス成分含有材料は、好ましくは、二酸化珪素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ホウ素粒子、酸化チタン粒子、酸化ランタン粒子、酸化セリウム粒子および酸化カルシウム粒子を含む。より好ましくは、ガラス成分含有材料は、SiOを14〜17重量%、Alを14〜17重量%、Bを12〜15重量%、TiOを3〜5重量%、Laを39〜48重量%、CeOを2〜5重量%およびCaOを2〜4重量%含み、さらに好ましくは、ガラス成分含有材料は前記以外の成分を実質的に含まない。
【0020】
ガラス成分含有材料を焼結体に浸透するときには、ガラス成分含有材料を水などの分散媒体に分散させることによってスラリーまたはペーストを得て、そのスラリーやペーストを焼結体に塗布して焼結体に浸透する。100重量部の焼結体に対して、ガラス成分含有材料を25重量%以上塗布する。
【0021】
図1は本発明の一実施態様を示す。この図では、3本の歯冠修復物3が連結部材2によって連結されてなる、架工義歯1が開示されている。歯冠修復物3は、好ましくはセラミックス製であり、より好ましくは不可避不純物以外は全てアルミナからなる。連結部材2は上述した歯科用セラミックス焼結体からなる。こういった態様の他に、本発明で得られるセラミックス焼結体は、歯冠修復物の修正、好ましくはマージン部(歯冠修復物の辺縁)の修正やセラミックフレームの形態修正などにも用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、これらの例は本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
[評価試験1]曲げ強さの測定
人工歯冠のモデルとして、CAD/CAM用In-Ceram ALUMINAブロック(ブロック、VITA社製)からなる2本の棒状試験片を用意した。
【0024】
In-Ceram ALUMINAミキシングリキッド1アンプルにIn-Ceram ALUMINAアディティブ(いずれもVITA社製)を1滴加えた液に、後述する各種セラミックス原料38gを数回に分けて加え、超音波ユニットにて混和して、ペースト状のスリップ材を得た。
【0025】
実施例1〜7では、In-Ceram ALUMINAパウダースリップ(アルミナ100%、VITA社製)に、表1記載の量の純度99.9%、粒径0.2μmのMgO(和光純薬工業)を添加し、超音波ユニットにて混和したものをスリップ材として用いた。
【0026】
実施例8〜12では、In-Ceram ALUMINAパウダースリップ(アルミナ100%、VITA社製)に、表2記載の量の純度99.98%、粒径1.44μmのTiO(添川理化学)を添加し、超音波ユニットにて混和したものをスリップ材として用いた。
【0027】
実施例13〜16では、In-Ceram ALUMINAパウダースリップ(アルミナ100%、VITA社製)に、表3記載の量の純度99.9%、粒径1μmのZnO(添川理化学)を添加し、超音波ユニットにて混和したものをスリップ材として用いた。同様に、実施例17では、上述のMgOおよびTiOを添加した。
【0028】
比較例1では、In-Ceram ALUMINAパウダースリップ(アルミナ100%、VITA社製)をそのまま用いた(CJ)。
【0029】
上述の2本の棒状試験片を0.5mm離して配置してその間にスリップ材を填入した。その後、開始温度600℃、係留時間3分、上昇率20℃/分、係留温度1120℃、係留時間120分の条件で焼結し(COMMODORE75、JELENKO)、得られた焼結体を、耐水研磨紙#600で、幅4mm、厚さ1.2mm、長さ20mm(ISO 6872)へと研磨した。
【0030】
ガラス成分含有材料である、Vita In-Ceram ALUMINA infiltration glasses(VITA社製)を水に分散させてペースト状にして、試験片および焼結体の表面に塗布して、開始温度600℃、係留時間2分、上昇率51℃/分、係留温度1110℃、係留時間190分の条件で加熱してガラス浸透を行い、さらに、開始温度600℃、係留時間0.1分、上昇率80℃/分、係留温度960℃、係留時間10分の条件で加熱してガラスコントロールを行った。このようにして、棒状試験片を連結部材で繋いでなる歯科補綴物のモデルのサンプルを得た。
【0031】
それぞれの試料(n=8)について、支点間距離15mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minにて3点曲げ試験(オートグラフ、島津)を行い、連結強度を求めた。
【0032】
参考例1として、連結部材のない上記棒状試験片(CB)そのものの曲げ強さを測定した。各実施例、比較例においてセラミックス原料に含まれる微量酸化物の量と曲げ強さの測定結果を表1〜3にまとめる。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【表3】


【0036】
得られた測定値は分散分析後、Duncan’s new multiple range testにより危険率5%で有意差の検定を行った。
【0037】
MgO、ZnO、TiO、のいずれか一つを添加した連結部材は、添加していない試料(CJ)と比較して有意に高い曲げ強さを示した。0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%の割合でMgOを添加した試料、0.1wt%、0.2wt%の割合でZnOを添加した試料、0.2wt%の割合でMgO、0.1wt%の割合でTiOを添加した試料では、連結していないCBに相当する高強度の結果になった。
【0038】
[評価試験2]破壊靭性値の測定
評価試験1の実施例4と同様にして、0.3wt%の割合でMgOを添加したスリップ材を作製し、以下の実験に供した。MgOを添加しない以外は全く同様にして作製したスリップ(CS)を、比較のために用いた。
【0039】
上記のスリップ材を築盛し、開始温度600℃、係留時間3分、上昇率20℃/分、係留温度1120℃、係留時間120分の条件で焼結し(COMMODORE75、JELENKO)、得られた焼結体を、耐水研磨紙#600で、幅4mm、厚さ1.5mm、長さ36mm(JIS R 1602)へと研磨した。
【0040】
ガラス成分含有材料である、Vita In-Ceram ALUMINA infiltration glasses(VITA社製)を水に分散させてペースト状にして、試験片の表面に塗布し、開始温度600℃、係留時間2分、上昇率51℃/分、係留温度1110℃、係留時間190分の条件で加熱してガラス浸透を行い、さらに開始温度600℃、係留時間0.1分、上昇率80℃/分、係留温度960℃、係留時間10分の条件で加熱してガラスコントロールを行った。
【0041】
このようにして作成した試料について、支点間距離30mm、クロスヘッドスピード0.1mm/minにて3点曲げ試験(5566S、インストロン)を行い、弾性率を求めた。
【0042】
曲げ試験後の試料を耐水研磨紙#1500で研削後、ダイヤモンドペースト(Dia-Glace、YETI Dentalprodukte)で研磨し、Vickers硬度計(MVK-HI、アカシ)にて圧痕を付け、デジタルマイクロスコープ(VHX-200/100F、KEYENCE)にて圧痕の対角線の長さと、伸展するクラックの長さを測定し、破壊靭性値を求めた(JIS R 1607)。
【0043】
得られた結果は分散分析を行い、Tukey’s Compromise testにより危険率5%で有意差の検定を行った。結果は、表4に示すとおりであり、MgOを添加したものは有意に高い値となった。
【0044】
【表4】


【0045】
[評価試験3]試験片破断面の走査型顕微鏡(SEM)による観察
【0046】
評価試験1において、連結した試料の中で最も曲げ強さの高かったものの1つである0.3wt%の割合でMgOを添加した試料(実施例4)と、CJ(比較例1)とについて、曲げ試験後の試料の破断面をSEM(S−3500N、日立)にて観察した。図2(A)はCJの破断面であり、図2(B)はMgOを0.3重量%添加したサンプルの破断面である。図2(B)では図2(A)と比較して粒径の細かいアルミナ粒子が減少している像が確認された。
さらに、アルミナの焼結状態を詳細に同定するため、評価試験2で作製したCSおよびMgOを0.3wt%添加したサンプルを用い、ガラスを浸透させない試料についても、同様に破断面のSEM観察を行った。図3(A)はガラスを浸透させずに作製したCSの破断面であり、図3(B)はガラスを浸透させずに作製したMgOを0.3重量%添加したサンプルの破断面である。MgOを添加した試料はCSと比較して粒径の細かい粒子が癒合し、焼結が促進されている像が確認された。
【0047】
[評価試験4]線収縮率測定
評価試験2と同様に作製したスリップ材を築盛する際に、2枚の白金箔でマーキングし、デジタルマイクロスコープにてその距離を測定した。その後、開始温度600℃、係留時間3分、上昇率20℃/分、係留温度1120℃、係留時間120分の条件でアルミナの焼結を行い、さらに開始温度600℃、係留時間2分、上昇率51℃/分、係留温度1110℃、係留時間190分の条件で加熱した。
【0048】
そして、再度白金箔の距離をデジタルマイクロスコープにて計測し、焼成前後の収縮率を測定した。得られた結果は分散分析を行い、Tukey’s Compromise testにより危険率5%で有意差の検定を行った。結果は、表5に示すとおりであり、両者に有意差は見られなかった。
【0049】
【表5】


【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、強度に非常に優れ、かつ寸法変化のない歯科用セラミックス焼結体を提供するので、歯科臨床応用において極めて有用であり、例えば、連結冠の連結部材、ブリッジの連結部材、コーピングやコーピング修正のための素材などとして用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施態様を示す。
【図2】(A)CJ(比較例1)および(B)MgOを0.3重量%添加したサンプル(実施例4)の破断面のSEM観察像である。
【図3】(A)ガラスを浸透させずに作製したCSおよび(B)ガラスを浸透させずに作製したMgOを0.3重量%添加したサンプルの破断面のSEM観察像である。
【符号の説明】
【0052】
1 架工義歯
2 連結部材
3 歯冠修復物
【出願人】 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
【出願日】 平成19年4月26日(2007.4.26)
【代理人】 【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一


【公開番号】 特開2008−6268(P2008−6268A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2007−117751(P2007−117751)