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【発明の名称】 対象の多重スペクトル画像を形成する方法及びシステム
【発明者】 【氏名】ブルーノ・クリスチャーン・バーナード・デ・マン

【氏名】サミット・クマール・バス

【要約】 【課題】物質におけるコンプトン散乱及び光電吸収の寄与に関する事前知識に基づいて画像のスペクトル依存性をモデル化する。加えて、この事前知識を用いて画質を高めた多重スペクトル画像を形成する。

【構成】対象(18)の多重スペクトル画像を形成する方法を提供する。この方法は、複数のX線エネルギ・レベルにおいて測定データを取得するステップ(70)と、対象を構成する1又は複数の領域において複数の画像ボクセルを画定するステップ(72)とを含んでいる。次いで、この方法は、対象を構成する複数の画像ボクセルに関連する事前情報を得るステップ(74)を含んでいる。事前情報は、複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。この方法はさらに、事前情報に基づいて対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように測定データを再構成するステップ(76)を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象(18)の多重スペクトル画像を形成する方法であって、
複数のX線エネルギ・レベルにおいて測定データを取得するステップ(70)と、
前記対象を構成する1又は複数の領域において複数の画像ボクセル(50、52)を画定するステップ(72)と、
前記複数の画像ボクセルに関連しており、複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)により定義される事前情報を得るステップ(74)と、
前記事前情報に基づいて前記対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように前記事前情報を用いて前記測定データを再構成するステップ(76)と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記事前情報は、前記対象の減弱係数における1又は複数の物質組成の組成及び密度情報を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定データは、密度線積分測定値、光電線積分測定値及びコンプトン線積分測定値の少なくとも一つを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の基底成分は、前記対象を構成する二次元(2D)空間の異なる領域に分布しており組織、水(56)又は骨(54)の少なくとも一つを含む1又は複数の物質組成を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の基底成分は、コンプトン成分及び光電成分の少なくとも一方を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結合確率密度関数(PDF)は、前記複数の画像ボクセルに関連するボクセル絶対値の範囲により表わされる前記基底成分の分布として定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記事前情報は、隣り合った画像ボクセル値の間の差の結合確率密度関数(PDF)により定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記事前情報は、前記複数の基底成分の間の比の結合確率密度関数(PDF)により定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記多重スペクトル再構成画像を形成するために、繰り返し式再構成手法を用いるステップをさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記再構成手法は、画像解析システムでの利用向けに構成されている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、画像再構成の分野に関する。具体的には、本発明は、多重スペクトル画像の事前情報を定義する手法に関する。さらに具体的には、本発明は、事前情報に基づいて多重スペクトル画像を形成する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージング・システムは典型的には、X線源から患者のような減弱性の対象を通してX線ビームを投影することにより動作する。X線ビームは、検出器での最適患者照射線量の構成又は他の要因に依存して線源と対象との間でファン(扇形)形状又はコーン(円錐)形状にコリメートされ得る。次いで、減弱されたビームは一組の検出器素子によって検出される。検出器素子は、X線ビームの強度に基づいて信号を発生する。次いで、測定されたデータは、射線経路に沿った対象の減弱の線積分を表わすように処理される。処理後のデータを典型的には投影と呼ぶ。フィルタ補正逆投影のような再構成手法を用いることにより、投影から断面画像が構築される。隣り合う断面画像を共に表示して、対象又は患者の撮像領域を表わす容積をレンダリングすることができる。
【0003】
当業者には認められるように、物質の線形減弱係数は、X線ビームが物質を透過するときに発生し得る二つの別個の事象の関数である。第一の事象はコンプトン散乱として知られ、物質を透過するX線フォトンが散乱されるか又は元のビーム経路から逸れて、結果としてエネルギの変化を伴う傾向を意味する。第二の事象は光電吸収として知られ、物質を透過するX線フォトンが物質によって吸収される傾向を意味する。
【0004】
予想されるように、異なる物質は散乱特性及び吸収特性が異なり、結果として異なる物質に異なる減弱係数が生ずる。具体的には、コンプトン散乱の確率は撮像される物質の電子密度に部分的に依存し、また光電吸収の確率は撮像される物質の原子番号に部分的に依存し、すなわち原始番号が大きいほど吸収の可能性が高い。さらに、コンプトン散乱効果及び光電吸収の両方が、X線ビームのエネルギに部分的に依存している。結果として、物質は、物質によるX線減弱における光電吸収効果とコンプトン散乱効果との相対的な重要性に基づいて互いに識別され得る。具体的には、物質によって発生される減弱について2以上のX線エネルギ・レベルでの測定又は2以上のエネルギ・スペクトルを用いた測定すなわち多重エネルギCT又は多重スペクトルCTによって、物質に対するコンプトン散乱及び光電吸収のそれぞれの寄与を定量化することを可能にすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減弱のコンプトン散乱寄与分及び光電吸収寄与分への分解は、十分に定義された過程でないので、物質におけるコンプトン散乱及び光電吸収の寄与に関する事前知識に基づいて画像のスペクトル依存性をモデル化することが望ましい。加えて、この事前知識を用いて画質を高めた多重スペクトル画像を形成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、対象の多重スペクトル画像を形成する方法を提供する。この方法は、複数のX線エネルギ・レベルにおいて測定データを取得するステップと、対象を構成する1又は複数の領域において複数の画像ボクセルを画定するステップとを含んでいる。次いで、この方法は、対象を構成する複数の画像ボクセルに関連する事前情報を得るステップを含んでいる。事前情報は、複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。この方法はさらに、事前情報に基づいて対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように測定データを再構成するステップを含んでいる。
【0007】
もう一つの実施形態では、画像解析システムを提供する。この画像解析システムは、放射線流を放出するように構成されているX線源と、放射線流を検出して放射線流に応答する1又は複数の信号を発生するように構成されている検出器とを含んでいる。検出器は複数の検出器素子を含んでいる。画像解析システムはさらに、システム制御器及びコンピュータを含んでいる。システム制御器は、X線源を制御して、データ取得システムを介して検出器素子の1又は複数から複数のX線エネルギ・レベルでの測定データを取得するように構成されている。コンピュータは、対象を構成する1又は複数の領域において複数の画像ボクセルを画定して、対象を構成する複数の画像ボクセルに関連する事前情報を得るように構成されている。事前情報は、複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。コンピュータはさらに、事前情報に基づいて対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように測定データを再構成するように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の上述の特徴、観点及び利点並びに他の特徴、観点及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面全体を通して類似の符号は類似の部分を表わす。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に従って画像データを取得して処理する画像解析システム10を線図で示す。図示の実施形態では、システム10は、本発明の手法に従って2以上のX線エネルギ・レベル又はスペクトルにおいて画像データを取得し、表示及び解析のために画像データを処理するように設計された多重エネルギ計算機式断層写真法(ME−CT)システムである。イメージング・システム10は、エネルギ分解能を有する検出器を用いて単一のX線源スペクトルにおいて画像データを取得するように設計されていてもよく、かかる画像データは、各々の検出されたフォトンのエネルギ・レベル又は検出されたフォトンの部分集合の平均エネルギ・レベルを評価することを可能にする。図1に示す実施形態では、イメージング・システム10は、コリメータ14に隣接して配置されたX線放射の線源12を含んでいる。この例示的な実施形態では、X線放射の線源12は典型的にはX線管である。
【0010】
コリメータ14は、患者18のような被検体が配置された領域に放射線流16が流入することを可能にする。放射線の一部20は、被検体を透過するか又は被検体の周囲を通過して、参照番号22に全体的に示す検出器アレイに衝突する。アレイの検出器素子は、入射X線ビームの強度を表わす電気信号を発生する。これらの信号が取得され処理されて、被検体の内部の特徴の画像を再構成する。
【0011】
システム制御器24は線源12を制御することができる。システム制御器24は典型的には、CT検査系列のための電力信号及び制御信号の両方を供給する。さらに、検出器22もシステム制御器24に結合されており、システム制御器24は検出器22において発生される信号の取得を制御する。システム制御器24はまた、ダイナミック・レンジの初期調節やディジタル画像データのインタリーブ処理等のような様々な信号処理作用及びフィルタ処理作用を実行することができる。一般的には、システム制御器24は、イメージング・システムの動作を指令して検査プロトコルを実行すると共に取得されたデータを処理する。ここでの文脈では、システム制御器24はまた、汎用又は特定応用向けディジタル・コンピュータを典型的に基本構成要素とした信号処理サーキットリと、コンピュータによって実行されるプログラム及びルーチン、並びに構成パラメータ及び画像データを記憶する付設のメモリ・サーキットリと、インタフェイス回路等とを含んでいる。
【0012】
図1に示す実施形態では、システム制御器24は、線形位置調節サブシステム26及び回転サブシステム28に結合されている。回転サブシステム28は、X線源12、コリメータ14及び検出器22を患者18の周りで1回又は多数回にわたり回転させることができる。尚、回転サブシステム28はガントリを含み得ることを特記しておく。このようにして、システム制御器24を利用してガントリを動作させることができる。線形位置調節サブシステム26は、患者18、さらに明確には患者テーブルを線形で変位させることができる。このようにして、患者テーブルをガントリ内部で線形移動させて、患者18の特定の区域の画像を形成することができる。
【0013】
加えて、当業者には認められるように、放射線源は、システム制御器24の内部に配設されているX線制御器30によって制御され得る。具体的には、X線制御器30は、X線源12に電力信号及びタイミング信号を供給するように構成されており、また線源12が如何なるX線エネルギ・レベル又はスペクトルを放出するかを決定することができる。モータ制御器32を利用して回転サブシステム28及び線形位置調節サブシステム26の移動を制御することができる。
【0014】
さらに、システム制御器24はまた、データ取得システム34を含むように図示されている。この例示的な実施形態では、検出器22がシステム制御器24に結合されており、さらに具体的にはデータ取得システム34に結合されている。データ取得システム34は、検出器22の読み出し電子回路によって収集されたデータを受け取る。データ取得システム34は典型的には、サンプリングされたアナログ信号を検出器22から受け取って、コンピュータ36による後続の処理のためにこれらのデータをディジタル信号へ変換する。
【0015】
コンピュータ36は典型的には、システム制御器24に結合されている。データ取得システム34によって収集された測定データは、後続の処理及び再構成のためにコンピュータ36へ送信され得る。コンピュータ36は、コンピュータ36によって処理されたデータ又はコンピュータ36によって処理されるべきデータを記憶することのできるメモリ38を含むか又はメモリ38と通信することができる。尚、所望の量のデータ及び/又はコードを記憶することが可能なコンピュータ・アクセス可能な任意の形式のメモリ装置をかかる例示的なシステム10によって利用し得ることを理解されたい。さらに、メモリ38は、同様の形式又は異なる形式の磁気装置又は光学装置のような1又は複数のメモリ装置を含んでいてよく、メモリ装置はシステム10に対してローカルに及び/又はリモートに位置していてよい。メモリ38は、データ、処理パラメータ、及び/又は本書に記載する工程を実行する1又は複数のルーチンを含むコンピュータ・プログラムを記憶することができる。
【0016】
特定的な一実施形態では、以下でさらに詳述するように、コンピュータ36は、対象を構成する複数の画像ボクセルに関連する事前情報を定義するように構成されている。事前情報は、対象における線形減弱係数の複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。コンピュータ36はさらに、測定データを再構成して、事前情報に基づいて対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように構成されている。測定データは、密度線積分測定値、光電線積分測定値及びコンプトン線積分測定値の少なくとも一つを含んでいる。
【0017】
コンピュータ36はまた、システム制御器24によって可能にされる特徴すなわち走査動作及びデータ取得を制御するように構成され得る。さらに、コンピュータ36は、キーボード及び他の入力装置(図示されていない)を典型的に装備した操作者ワークステーション40を介して操作者から命令及び走査パラメータを受け取るように構成され得る。これにより操作者は、入力装置を介してシステム10を制御することができる。このようにして、操作者は、再構成画像及びコンピュータ36からのシステムに関するその他データを観察したり、撮像を開始したりすることができる。
【0018】
操作者は入力装置を介してシステム10を制御することができる。このようにして、操作者は、再構成画像及びコンピュータ36からのシステムに関するその他データを観察したり、撮像を開始したりすることができる。同様に、操作者ワークステーション40に結合されている表示器42は、操作者が再構成画像を観察したり撮像を制御したりすることを可能にすることができる。加えて、操作者ワークステーション40に結合され得るプリンタ44によって再構成画像を印刷することもできる。表示器42及びプリンタ44はまた、コンピュータ36に直接接続されてもよいし操作者ワークステーション40を介して接続されていてもよい。さらに、操作者ワークステーション40は、画像保管通信システム(PACS)46にも結合され得る。尚、PACS46は、遠隔クライアント48、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、又は内部網若しくは外部網に結合することができ、異なる場所の第三者が画像及び画像データへのアクセスを獲得し得るようにしていることを特記しておく。
【0019】
さらに、コンピュータ36及び操作者ワークステーション40は、標準型又は特殊目的のコンピュータ・モニタ及び付設の処理サーキットリを含み得る他の出力装置に結合されていてもよいことを特記しておく。システム・パラメータを出力する、検査を依頼する、及び画像を観察する等のために、1又は複数の操作者ワークステーション40をシステムにさらに結合してもよい。一般的には、システム内に供給される表示器、プリンタ、ワークステーション及び同様の装置は、データ取得構成要素に対してローカルに位置していてもよいし、或いはインターネット及び仮想私設網等のような1又は複数の構成設可変型網を介して画像取得システムに連結されて、施設内若しくは病院内の別の場所に位置する又は全く異なる場所に位置する等のようにデータ取得構成要素に対してリモートに位置していてもよい。
【0020】
本発明の各実施形態は、2以上のX線エネルギ・レベル又はスペクトルにおいて取得される画像の事前情報を定義する手法を開示する。本書で用いる場合には、「事前情報」とは、撮像対象に存在する1又は複数の物質の組成及び密度の情報を指す。本書で用いる場合には、「組成」とは、撮像対象の物質のコンプトン散乱及び光電吸収の量を指し、「密度」とは、撮像対象のボクセルの平均減弱を指す。代替的には、「組成」とは、所与の物質又は所与の画像ボクセルの総減弱を構成する水の減弱及び骨の減弱のようなその他任意の基底成分の量を指す場合もある。加えて、本発明の実施形態は、事前情報に基づいて雑音を低減して物質分解を改善した多重スペクトル画像を形成する手法を開示する。以下でさらに詳述するように、雑音の低減は画像の選択的平滑化によって達成され、物質分解は既知の名目的な物質特性を各々の画像ボクセルの減弱係数に盛り込むことにより達成される。
【0021】
当業者には認められるように、画像ボクセルは一般的には、何らかの光電吸収密度/重み及びコンプトン散乱密度/重みによって特徴付けることができる。X線減弱は主に光電吸収及びコンプトン散乱によるものであるから、ボクセルの線形減弱は、所与の組織又はボクセルでの光電吸収の量を表わすφ、及び所与の組織又はボクセルでのコンプトン散乱を表わすθの二つのパラメータによって特徴表現することができる。
【0022】
光電吸収による効果のエネルギ依存性(Φ(E))及びコンプトン散乱による効果のエネルギ依存性(Θ(E))が既知であって物質に独立であるとすると、ボクセルの線形減弱は以下の式(1)に示すように表わすことができる。
【0023】
μ(E)=φ・Φ(E)+θ・Θ(E) (1)
あらゆる物質の減弱を二つの基底関数Φ(E)及びΘ(E)の線形結合として表わし得るので、φ及びθが線形独立であるような任意の二つの物質を選んで新たな一組の基底関数を定義することができる。物質組成の典型的な例としては、限定されないが水及び骨、又は骨及びヨウ素が挙げられる。例えば、水及び骨の分解は、以下に示すように、式(2)によって表わすことができる。
【0024】
μ(E)=w・W(E)+b・B(E) (2)
式中、wは水等価減弱W(E)の量を表わし、bは骨等価減弱B(E)の量を表わす。式(2)は、
W(E)=c1・Φ(E)+c2・Θ(E) (3)
B(E)=c3・Φ(E)+c4・Θ(E) (4)
を代入することにより式(1)に変形することができる(反対も可)。式中、c1、c2、c3及びc4は経験的に定義される係数であって、水及び骨の減弱におけるコンプトン散乱の寄与及び光電吸収の寄与をそれぞれ表わす。代替的には、理想的な物質を用いてもよく、例えば光電吸収を有せずコンプトン相互作用のみを有するような一つの理論的物質、及びコンプトン相互作用を有せず光電吸収のみを有するような第二の理論的物質を用いてよい。換言すると、任意の物理的物質を、これら二つの理想的な物質の線形結合として表わすことができる。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。特定的な一実施形態では、図2は、再構成されるべき対象又はボクセルのコンプトン散乱分布に関する事前情報の図である。当業者には認められるように、物質は、物質によるX線減弱における光電吸収効果とコンプトン散乱効果との相対的な重要性に基づいて互いに識別され得る。従って、画像ボクセルを一次元実効減弱(μeff)空間へ写像するのではなく現実的な二次元(2D)φ−θ空間において特徴表現することができる。換言すると、特定の物理的な物質(例えば骨又は水)に対応することが判明している撮像対象の2D空間での画像ボクセルの位置を、何らかの量のコンプトン散乱及び何らかの量の光電吸収によって特徴表現することができる。ここで図2を参照すると、参照番号50及び52は、例えば骨54及び水56のような異なる物質組成を含む撮像対象の2D空間における2個の画像ボクセルに対応している。参照番号58は実効減弱軸を表わす。領域60は、何らかの量のコンプトン散乱によって特徴表現される撮像対象の2D空間における特定の位置に対応している。当業者には認められるように、図2は再構成されるべき対象又はボクセルのコンプトン散乱分布の図である。
【0026】
図3は、本発明のもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。特定的な一実施形態では、図3は、再構成されるべき対象又はボクセルの光電吸収に関する事前情報の図である。上述のように、特定の物理的物質(例えば骨又は水)に対応することが判明している撮像対象の2D空間での画像ボクセルの位置を、何らかの量のコンプトン散乱及び何らかの量の光電吸収によって特徴表現することができる。図3に示す特定的な例では、参照番号50及び52は、例えば骨54及び水56のような異なる物質組成を含む2D空間における撮像対象の2個の画像ボクセルに対応している。領域62は、何らかの量の光電吸収によって特徴表現される撮像対象の2D空間における特定の位置に対応している。
【0027】
図4は、本発明のさらにもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。特定的な一実施形態では、図4は、再構成されるべき対象又はボクセルの実効減弱に関する事前情報の図である。参照番号50及び52は、例えば骨54及び水56のような異なる物質組成を含む2D空間における撮像対象の2個の画像ボクセルに対応している。参照番号58は実効減弱軸を表わす。領域64は、物質の実効減弱を示す撮像対象の2D空間における特定の位置に対応している。図4のグラフから認められ得るように、画像ボクセルの平均実効減弱は領域64に沿って一定である。しかしながら、この領域に沿ったコンプトン散乱及び光電吸収による画像ボクセルの実効減弱は未知であり、これにより、雑音を含む分解による画像が得られる。
【0028】
図5は、本発明のさらにもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。特定的な一実施形態では、図5は、相異なる基底成分の間の関係に関する事前情報の図である。参照番号50及び52は、例えば骨54及び水56のような異なる物質組成を含む2D空間における撮像対象の2個の画像ボクセルに対応している。参照番号58は実効減弱軸を表わす。領域68は画像ボクセルの実効減弱に対応している。領域66は、画像ボクセルに関連する事前情報に対応している。以下でさらに詳述するように、事前情報を画像ボクセルの実効減弱に関する情報と共に用いて、画質が高められ雑音が低減された対象の多重スペクトル画像を形成することができる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、画像ボクセルiの基底成分jの重みは(xi,j)によって表わされる。従って、各々の画像ボクセルxi,jに関連する事前情報を一般化して、各成分jにわたって依存性を表わすことができる。具体的には、(xi,1)が一つの物質(例えば水又は組織)に関する画像ボクセルの重み/密度を表わし、(xi,2)がもう一つの物質(例えば骨)に関する画像ボクセルの重み/密度を表わし得る。他の特徴表現としては例えば、コンプトン成分(xi,1)及び光電成分(xi,2)等が挙げられる。再び式(2)を参照して、特定のボクセルiについて、式(2)をμ=xi,1・Φ(E)+xi,2・Θ(E)と表わすことができる。さらに具体的には、(xi,1)が物質のコンプトン成分を表わし、(xi,2)が光電成分を表わすとすると、異なる物質組成を(xi,1)及び(xi,2)によって画定される撮像対象の二次元(2D)空間の異なる領域によって表わすことができる。
【0030】
当業者には認められるように、画像ボクセルxi,jの事前情報は、ボクセルが取る値の実距離によって表わされるガンマ事前分布と一般に呼ばれるxi,jの分布、又は空間的に近接した異なるボクセルの間の関係によって表わされるマルコフ確率場(MRF)事前分布と一般に呼ばれるxi,jの分布のいずれに注目したものであってもよい。ガンマ事前分布は、例えばxi,1が非常に大きくxi,2が非常に小さい又はその反対であり得るxi,1とxi,2との可能な組み合わせに関する情報を含み得る。MRF事前分布は典型的には、関数xi,j−x1,jと表わすことができ、近傍の画像ボクセル値が類似していると期待されることを意味する。特定的な一実施形態では、MRF事前分布は、以下の式(5)に示すように二次の事前分布として表わすことができる。
【0031】
【数1】


式中、N(i)はボクセルiの近傍を構成する一組のボクセルであり、φ(x)はコスト関数である。具体的には、式(5)に示す事前分布表現を一般化して、スペクトル次元jにわたって依存性を表わすことができる。
【0032】
式(5)によって表わされているコスト関数φ(x)はさらに、以下の式(6)に示すように一般化することができる。
【0033】
【数2】


式中、ψは、画像ボクセルの間の差のエッジ保存正則化関数すなわち統計学的に言う確率密度関数(PDF)である。当業者には認められるように、「確率密度関数」とは所与の変数または数量の確率分布を表わす関数を指す。
【0034】
一実施形態では、事前情報は、対象の既知の物質に対応しない点にペナルティを課すように定義され得る。次いで、二次(又は他の)ペナルティを用いてこれら既知の物質組成及び密度からの逸脱にペナルティを課すことができる。二次ペナルティの単純和を以下の式(7)及び(8)に示すように書くことができる。
【0035】
【数3】


式中、al,1及びal,2は、撮像対象の第l(エル)の物質の名目的な成分分解を表わす。具体的には、目標画像ボクセルが主として骨、軟組織、造影剤及びカルシウムから成っている場合に、これらの物質を含む基底成分を「アンカー」al,jとして選択することができ、次いで、事前情報として設定してこれらの値からの大幅な逸脱にペナルティを課すことができる。
【0036】
本発明の実施形態による事前情報の利用は、各々のアンカー点の周囲の逸脱を小さく(すなわち雑音を少なく)して、非正則化解よりも良好な物質の区別を帰結する。本書で用いる場合には、非正則化解とは、事前情報を用いずに形成された解を指す。式(7)は、二次ペナルティを他のペナルティ関数によって置き換えることにより、さらに一般化され得る。もう一つの実施形態では、式(7)は、十分に定義された態様で基底成分の間の相関を表わすようにペナルティ関数の等高値(isocontour)を回転してスケーリングすることにより一般化され得る。この場合には、以下の式(9)に示すように、スケーリング係数と共に追加の交差項が必要とされる。
【0037】
【数4】


式(9)の一つの一般化は、式(9)を、隣り合った画像ボクセルが同一の値を取ることを可能にする空間ペナルティに結合することに基づく。一例は、次の形式の事前項である。
【0038】
【数5】


式(10)によって表わされる事前項の一般化によって、さらに小さい雑音を有し十分に定義された物質特性を有する画像が得られる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、各々の画像ボクセルに関連する事前情報は、撮像対象の物質に含まれる複数の基底成分の間の結合確率密度(PDF)関数によって定義される。特定的な一実施形態では、PDFは、画像ボクセルに関連するボクセル絶対値の範囲によって表わされる基底成分の分布として定義される。前述のように、基底成分はコンプトン成分及び光電成分を含み得る。
【0040】
もう一つの実施形態では、各々の画像ボクセルxに関連する事前情報は、以下の式(11)に示すように二つの基底成分の間の比の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。
【0041】
=xi,1/xi,2 (11)
式中、rは、所与のボクセルiについて二つの基底成分に対応する重みの比を表わす。
【0042】
従って、事前項は、以下に示すように式(12)又は式(13)によって表わすことができる。
【0043】
【数6】


この場合には、事前情報は密度情報を補完する情報を提供する。換言すると,密度はボクセルの平均減弱に関する情報を提供し、事前項は撮像対象を構成する様々な構成成分の間の比に関する情報を提供する。
【0044】
代替的な一実施形態では、各々の画像ボクセルに関連する事前情報は、隣り合ったボクセル値の差の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。例えば、物理的な差は同じ物質の密度の変化又は物質組成の変化によって生ずるため、2個の画像ボクセルxとxの間の差は何らかの組み合わせが他の組み合わせよりも起こり易い。この形式の事前項は、以下に示すように式(14)又は(15)によって表わすことができる。
【0045】
【数7】


式中、δi,j,l=xi,l−xj,lは、ボクセルi対ボクセルjの成分lの重みの差を表わし、cは、事前情報を定義するペナルティ関数φの形状及び寸法を画定する係数を表わす。
【0046】
当業者には認められるように、式(14)及び式(15)は、近傍のボクセルの間の差の回転楕円型確率密度の重ね合わせを表わしている。
【0047】
本発明のもう一つの観点では、事前情報を繰り返し式再構成アルゴリズムのコスト関数に組み入れて、雑音の低減(画像の選択的平滑化の増大による)、及びさらに良好な物質分解(既知の名目的な物質特性を各々のボクセルのスペクトル係数に盛り込むことによる)を含めた画像の所望の特性を達成することができる。一実施形態では、繰り返し式再構成アルゴリズムは、最尤(ML)法及び最大事後(MAP)法から成る群から選択され得る。
【0048】
当業者には認められるように、繰り返し式再構成手法は一般的には、画像推定から開始される。この画像推定は、投影領域と画像領域との間を往復して更新され変換される。これらの領域の間での変換を実行する特定の態様が、様々な再構成手法を区別する。例えば、繰り返し式フィルタ補正逆投影(IFBP)法は、FBPを用いて画像への変換を行ない、ラドン変換又は順投影を用いてサイノグラムを算出する。
【0049】
さらに明確に述べると、繰り返し式再構成手法では、算出されたサイノグラム(すなわち一組の予測投影データ)が実測のサイノグラム・データと比較される。算出されたサイノグラムは、推定される再構成画像からの変換である。1回目の繰り返しでは、再構成画像は、任意の適当な既定の設定であってよい。算出されたサイノグラムと測定されたサイノグラムとの比較の結果として、サイノグラム誤差が発生される。次いで、サイノグラム誤差は、画像領域に戻すように変換されて、補正画像を形成する。このようにして、以降の繰り返しでは、補正画像を前回の再構成画像と共に用いて、次回の繰り返しのための更新された再構成画像を作成する。以後、工程を所望の繰り返し回数まで又は何らかの最適化停止規準が満たされるまで繰り返す。
【0050】
当業者には認められるように、撮像対象を表わす未知の分布と投影データとの間の順測定モデルは一般的には、以下に示すように式(16)によって表わすことができる。
【0051】
【数8】


式中、kは測定スペクトルの指数を表わし(各々のkはエネルギ・スペクトル又はkVpを表わす)、mはサイノグラム指数を表わし、am,iはサイノグラム要素mに対する画像ボクセルiの寄与であって系の幾何学的構成を捉えた系モデルを定義しており、μ(E)は成分jの減弱のエネルギ依存性を表わし、S(E)は対象が存在しない場合(空気走査)のエネルギEでのフォトン検出の確率分布を表わす。
【0052】
当業者には認められるように、繰り返し式再構成アルゴリズムは典型的には、コスト関数を最小にする一連の画像を形成することにより、雑音を含むI(m)の測定値が与えられたときのボクセル値xi,jを決定する。最小にされるべきコスト関数の選択及び一連の画像の形成が、繰り返し式再構成アルゴリズムの二つの主な構成要素を形成する。コスト関数の性質は、測定値の誤差の統計モデルに依存し得る。誤差が正規分布する場合には、重み付き最小自乗(WLS)コスト関数が、以下の式(17)に示すように得られる。
【0053】
【数9】


式中、wk,mは、サイノグラム測定値I(m)の精度を特徴付ける加重関数であり、
【0054】
【数10】


は測定された強度を表わす。式(17)の最小化から形成される画像は典型的には、雑音を含む。加えて、撮像方程式(17)が、画像ボクセルの様々な成分を適正に分解するのに十分な情報を提供しない場合がある。両方の状況において、画像ボクセルについての事前情報を用いて解の品質を高めることができる。実際には、式(17)に示すようなデータ・フィッティング項、及び式(5)〜(15)に示すような事前項を含むコスト関数を用いることにより、総コスト=J(x)+φ(x)となる。
【0055】
本発明の手法の実施形態による事前情報の利用は、繰り返し式再構成において用いられるコスト関数の形式又は最適化の方法とは独立に適用され得る。例えば、正規分布に基づくコスト関数を用いて加重最小自乗コスト関数を導いてもよい。代替的には、ポアソン雑音モデルを測定誤差に対して用いて、(事前分布なしで)問題の最尤式の定式化を導いてもよい。最適化の方法はまた様々であってよく、共役勾配又は最尤伝達再構成のような同時更新解法を含んでいてもよいし繰り返し式座標降下法を用いてもよい。
【0056】
図6は、本発明の一実施形態による対象の多重スペクトル画像を形成する方法を示す。ステップ70では、複数のX線エネルギ・スペクトルにおいて測定データを取得する。一実施形態では、測定データは、密度線積分測定値、光電線積分測定値及びコンプトン線積分測定値の少なくとも一つを含んでいる。
【0057】
ステップ72では、対象を構成する1又は複数の領域において複数の画像ボクセルを画定する。ステップ74では、複数の画像ボクセルに関連する事前情報を得る。一実施形態では、前述のように、事前情報は、複数の基底成分の間の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。一実施形態では、複数の基底成分は、二次元(2D)空間の異なる領域に分布する1又は複数の物質組成を含んでいる。1又は複数の物質組成は、組織、水又は骨の少なくとも一つを含んでいる。もう一つの実施形態では、複数の基底成分は、コンプトン成分及び光電成分を含んでいる。
【0058】
一実施形態では、結合確率密度関数(PDF)は、複数の画像ボクセルに関連するボクセル絶対値の範囲によって表わされる基底成分の分布として定義される。もう一つの実施形態では、事前情報は、隣り合った画像ボクセル値の間の差の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。さらにもう一つの実施形態では、事前情報は、1又は複数の基底成分の間の比の結合確率密度関数(PDF)によって定義される。
【0059】
ステップ76では、事前情報に基づいて対象の多重スペクトル再構成画像を形成するように測定データを再構成する。一実施形態では、繰り返し式再構成手法を用いて対象の多重スペクトル再構成画像を形成する。
【0060】
本発明の幾つかの特徴のみを本書で図示して説明したが、当業者には多くの改変及び変更が想到されよう。従って、特許請求の範囲は、本発明の真意に含まれるような全ての改変及び変更を網羅するものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に従って画像データを取得して処理する画像解析システムの図である。
【図2】本発明の一実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。
【図3】本発明のもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。
【図4】本発明のさらにもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。
【図5】本発明のさらにもう一つの実施形態による撮像対象の画像ボクセルについての二次元(2D)空間での組成及び密度情報を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に従って対象の多重スペクトル画像を形成する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 画像解析システム
12 X線源
14 コリメータ
16 放射線
18 被検体
20 放射線の一部
22 検出器アレイ
24 システム制御器
26 線形位置調節サブシステム
28 回転サブシステム
30 X線制御器
32 モータ制御器
34 データ取得システム
36 コンピュータ
38 メモリ
40 操作者ワークステーション
42 表示器
44 プリンタ
46 PACS
48 遠隔クライアント
50、52 画像ボクセル
54 骨
56 水
58 実効減弱軸
60 コンプトン散乱領域
62 光電吸収領域
64、68 実効減弱領域
66 事前情報領域
70 測定データを取得するステップ
72 複数の画像ボクセルを画定するステップ
74 事前情報を得るステップ
76 測定データを再構成するステップ
【出願人】 【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【出願日】 平成19年8月2日(2007.8.2)
【代理人】 【識別番号】100093908
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 研一

【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博

【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久

【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志


【公開番号】 特開2008−62035(P2008−62035A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2007−201409(P2007−201409)