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【発明の名称】 アイレス縫合針及びその製造方法
【発明者】 【氏名】阿久津 真一

【氏名】松谷 貫司

【氏名】増子 政樹

【要約】 【課題】簡単な方法で、針穴内にシリコーンが浸入することを防止できるシリコーンを塗布した縫合針の製造方法を提供する。

【構成】シリコーンを塗布したアイレス縫合針の製造方法において、アイレス縫合針10を、針元に形成された針穴12を下向きにし、把持具で支持する工程と、アイレス縫合針の外側全体にシリコーンを塗布し、前記針穴内壁はアイレス縫合針の母材の地肌とする工程とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイレス縫合針を把持具により支持する工程と、支持されたアイレス縫合針の元端の穴内にシリコーンが塗布されないように該穴を下向きにしてシリコーンを塗布する工程とを有することを特徴とする、アイレス縫合針の製造方法。
【請求項2】
シリコーンコーティングされたアイレス縫合針であって、該アイレス縫合針の針穴の外側部分と本体部の一部のコーティングが滑らかでなく、その他の部分のコーティングが滑らかであって、且つ前記針穴の内壁にシリコーンが塗布されていないことを特徴とする、アイレス縫合針。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はアイレス縫合針に関し、特に、シリコーンコーティングされたアイレス縫合針とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫合針は、患者の生体組織に刺通されるものであり、刺通抵抗が大きいと、患者に与える痛みも増すため、刺通抵抗を下げる処理が行われている。一般に、刺通抵抗を下げる方法としては、シリコーンの塗布が行われているが、これは、縫合針をかごの中にバラバラに入れて、シリコーン溶液に浸漬するものである。
【0003】
一方、アイレス縫合針は、縫合針の基端面に、縫合針の長さ方向に沿って針穴を穿け、ここに縫合糸の端部を差し込み、針穴を外側からかしめることで、固定している。このようなアイレス縫合針をシリコーン塗布する場合、前述のようにかごの中にバラバラにいれてシリコーン溶液内に浸漬すると、針穴内にシリコーン溶液が浸入し、針穴の内壁にシリコーンが塗布される。針穴の内壁にシリコーンが塗布されると、縫合糸をかしめても、内壁と縫合糸との間の滑りがよいので、簡単に抜けてしまうことになり、外科手術で使用する際に問題となっている。
【0004】
そのために、針穴内に水を入れてシリコーンが入らないようにする方法(例えば、特許文献1参照)や、溶剤により針穴内に入ったシリコーンを除去する方法(例えば、特許文献2)などが提案されている。また、特許文献3では、シリコーンを塗布してから針穴を穿設する方法を提案している。
【特許文献1】特開平4−317644号
【特許文献2】特許第3124564号
【特許文献3】特許第3471004号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の針穴内に水を入れてシリコーンが入らないようにする方法や、特許文献2の溶剤で針穴内に入ったシリコーンを除去する方法は、工程数が増えて煩雑な作業となってしまうという問題が起こる。
【0006】
本発明は、このような実情から考えられたもので、簡単な方法で、針穴内にシリコーンが浸入することを防止できるシリコーンを塗布した縫合針の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明のアイレス縫合針の製造方法は、アイレス縫合針を把持具により支持する工程と、支持されたアイレス縫合針の元端の穴内にシリコーンが塗布されないように該穴を下向きにしてシリコーンを塗布する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のアイレス縫合針は、シリコーンコーティングされたアイレス縫合針であって、該アイレス縫合針の針穴の外側部分と本体部の一部のコーティングが滑らかでなく、その他の部分のコーティングが滑らかであって、且つ前記針穴の内壁にシリコーンが塗布されていないことを特徴とする。
【0009】
把持具が金属製で、弾性体の付勢力によりアイレス縫合針を保持するようにしたり、金属製の把持具がアイレス縫合針の針穴の外側を支持し、アイレス縫合針の本体部の中間を保持具で保持する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーン塗布されたアイレス縫合針の製造方法によれば、簡単な工程でアイレス縫合針の外表面に滑らかにシリコーンが塗布され、針穴内には塗布されていないアイレス縫合針を得ることができる。
【0011】
そして、本発明のアイレス縫合針は、該アイレス縫合針の針穴の外側部分と本体部の一部のコーティングが滑らかでなく、その他の部分のコーティングが滑らかであるので、刺通抵抗を下げ、患者への負担を軽くすることができる。つまり、針先部を確実にコーティングすることと、縫合針の外表面を可及的にコーティングするために、かしめ部となる針穴の外側部分と本体部の一部で支えてコーティングしたため、滑らかにコーティングされていないものである。
【0012】
また、針穴の内壁にはシリコーンが塗布されていない状態で、縫合糸をかしめるので、縫合糸をしっかりと把持することができ、生体組織を縫合中に縫合糸が抜けるということを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明のアイレス縫合針の斜視図である。このアイレス縫合針10は、従来から公知の方法のいずれかにより製造されたもので、本発明は、シリコーンの塗布方法に特徴を有するものである。
【0015】
図1に示すように、アイレス縫合針10は本体部11の一方の端部には基端面11aがあり、この基端面11aにレーザー加工法、電子ビーム加工法、放電加工法、ドリリング等の加工法によって針穴12が形成されている。またアイレス縫合針10の先端には鋭利な針先14が形成されており、この針先14と連続して複数の切刃15が形成された角錐が形成されている。
【0016】
アイレス縫合針10としては、図1に示すような切刃15の断面を多角形状に形成した刃付縫合針、及び断面を略円形状に形成して切刃15を無くした丸針(図示せず)等があり、これ等の縫合針を縫合すべき生体組織及び縫合部位に応じて選択して用いている。
【0017】
縫合糸20としては、太さ、材質(ナイロン、シルク等)、モノフィラメントかマルチフィラメントか、等の構造等、多数の異なる種類のものが提供されている。そして縫合すべき生体組織及び縫合部位に応じて適切な種類の縫合糸を選択して用いている。縫合糸20は、その先端が針穴12に挿入され、プレス機などで針穴12を潰してかしめることによってアイレス縫合針10の基端部に固定される。アイレス縫合針10は、縫合に必要な長さの糸が最初から固定され、アイド針のように糸を孔に挿通する手間が不要であるという利点を有する。
【0018】
縫合手術中には、アイレス縫合針10に付けた縫合糸20が糸抜け、糸切れにより分離しないようにすることが要求される。アイド針の場合は、縫合糸を弾機孔に貫通させるので、弾機孔の両側から2本の糸が並ぶことになるが、糸の一方にのみ張力を加えないかぎり、糸が分離することがない。
【0019】
しかし、アイレス縫合針の場合は、針と糸との結合は、かしめ部における針と糸との接触摩擦に依存しており、かしめが緩いか、又は穴の内壁が滑り易いと、糸が生体組織を通過中に縫合針から離脱してしまうおそれがある。逆にかしめが強すぎると、かしめによって糸が部分的に破断されて強度が低下し、糸が生体組織を通過中に切れてしまうおそれがある。そのため、アイレス縫合針10については、予め使用する縫合糸20のサイズに応じて許容糸抜け力が設定され、引抜きテストを行って許容糸抜け力を満足しているかどうかを確認するようにしている。
【0020】
図2は、図1のアイレス縫合針10の基端部を拡大した断面図である。本体部11の基端面11aには、レーザにより針穴12が穿設されている。針穴12は、縫合糸20が挿入できるように縫合糸20の径よりやや太くてほぼ真直ぐな部分12aがあり、底の部分12bは、だんだんと径が細くなり最後は行き止まりになっている。縫合糸20を挿入できるのは、ほぼ真直ぐな部分12aである。針穴12の径はアイレス縫合針10の径(加工を受けていない本体部11の径)の20〜80%程度で、ほぼ真直ぐな部分12aの深さは径の1.1〜10倍程度である。
【0021】
図3(a)は、アイレス縫合針10を支持した状態の図で、(b)は(a)のA−A線での断面図である。アイレス縫合針10は、針穴12を下に向けて把持具30により空間内に支持されている。把持具30は、V溝31aを有するVブロック31と、針押さえ32と、弾性体33とからなる。把持具30は、金属等、シリコーン溶液により影響を受けない材料が好ましい。針押さえ32は、ばねなどの弾性体33でV溝31a内のアイレス縫合針10を押圧し、その摩擦力によりアイレス縫合針10を保持する。本実施例ではまた、本体部11の中間を支える支持部材34を用いている。この支持部材34を用いる理由としては、上記の把持具30で針穴12の外側を把持する力を小さくすることができるからである。すなわち、把持具30のみで支える場合、ある程度強い力が必要になるが、針穴12の壁厚が薄いことや、また、かしめ作業の能率を向上させるため穴部になまし加工を施しているという理由から、強く把持することはできない。そこで、支持部材34を用いると、軽い力で支えることが可能となる。尚、本発明のアイレス縫合針10の製法では、この方法に限定されることなく、ロボットが姿勢を制御して浸漬、噴霧等によりコーティングすることも考えられる。この場合は、本体部を支える把持具等は必要ではない。
【0022】
本発明の実施例では、アイレス縫合針10は基端側を垂直にしており、針穴12の中心軸aと真直ぐ下方に向いている垂線bとは重なっているが、アイレス縫合針10を斜めにした場合は、針穴12の中心軸aと重力方向に下ろした垂線bとの成す角αが、0〜45゜の範囲であればよい。
【0023】
このようにアイレス縫合針10を支持したら、この状態でアイレス縫合針10の全体をシリコーンの液に浸漬する。こうすることによって、アイレス縫合針10の外側面全体にシリコーンが塗布される。
【0024】
針穴12は、下向きになっているが、針穴12内にある空気の圧力と、針穴12の径が小さいことから、針穴12の入口の表面張力が相対的に大きくなることによって、シリコーンは針穴12内には入ることができないか、或いは、シリコーンが針穴12の入口から極く僅かにしか浸入できず、そのため、針穴12の内壁は、その大部分がアイレス縫合針10の母材の地肌のままとなっている。
【0025】
塗布後のアイレス縫合針10は、その外側全体にシリコーンが滑らかにコーティングされているが、把持具30と接触した部分は、シリコーンの付着していない部分があったり、ざらついたりしていて滑らかではない。しかし、このような部分はアイレス縫合針10の全体から見れば、ごく一部であり、刺通抵抗を大きくするものではない。さらに、針穴の外側はかしめ加工がされるため、後工程で、もともとコーティングが滑らかでなくなる、ということがある。
【0026】
シリコーンの塗布は、上記の実施例のようにシリコーン液に浸漬する方法が最も簡単でかつ、短時間でできる。しかし、刷毛により塗布する方法や、スプレーガンの噴霧により塗布する方法としてもよい。ただし、いずれの方法でも、把持具30とアイレス縫合針10との接触部にもシリコーンが十分に届くように塗布すべきである。
【0027】
図4は、図3の角αと縫合糸20の糸抜け力との関係を示すグラフである。アイレス縫合針10として、針外径0.78mm、針穴径0.47mm、針長45mmの丸針を、図3に示す角αを変更して浸漬によりシリコーンを塗布して形成し、縫合糸20としてサイズ0号(0.35〜0.399mm)の縫合糸をかしめ結合し、その後糸引抜きテストをしたときの糸抜け力を、各角度について30本測定した平均値をプロットしている。
【0028】
図4から、角αが40゜までは、ほぼ同じ糸抜け力が保持されているのが分かるが、60゜以上になると、糸抜け力が低下している。また、USP規格では、このサイズの縫合糸の許容糸抜け力は1.5Kgであるため、2Kg以上あれば十分な糸抜け力であると判断したことから、45゜までは、十分な糸抜け力を備えていると判断できた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のアイレス縫合針の斜視図である。
【図2】図1のアイレス縫合針の基端部を拡大した断面図である。
【図3】(a)は、アイレス縫合針を支持した状態の図で、(b)は(a)のA−A線での断面図である。
【図4】図3の角αと縫合糸の糸抜け力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
10 アイレス縫合針
11 本体部
12 針穴
20 縫合糸
30 把持具
a 針穴の中心軸
b 重力方向の垂線
α 角
【出願人】 【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100099863
【弁理士】
【氏名又は名称】中倉 和彦


【公開番号】 特開2008−54886(P2008−54886A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−234726(P2006−234726)