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【発明の名称】 医療用長尺体
【発明者】 【氏名】関戸 文

【氏名】金丸 武司

【要約】 【課題】患者の負担を軽減しつつ、塞栓コイルを所望の位置に留置することができる医療用ワイヤを提供すること。

【構成】医療用ワイヤ1は、螺旋状をなす塞栓コイル5を血管の動脈瘤に供給するためのものであって、可撓性を有するワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の先端部21に設けられた電磁石3とを有し、電磁石3は、電磁石3へ通電することにより、先端部21に磁界を発生し得るものであり、電磁石3への通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な基端部56を有する螺旋状の塞栓コイル5を先端部21に着脱させるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状をなす塞栓コイルを血管の動脈瘤に供給するための医療用長尺体であって、
可撓性を有する長尺体本体と、
前記長尺体本体の先端部に設けられた電磁石とを有し、
前記電磁石は、前記電磁石へ通電することにより、前記先端部に磁界を発生し得るものであり、前記電磁石への通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な基端部を有する螺旋状の塞栓コイルを前記先端部に着脱させるように構成されていることを特徴とする医療用長尺体。
【請求項2】
前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の磁力により前記先端部に前記塞栓コイルを吸着させ、前記電磁石への通電を遮断することにより、前記先端部に対する前記塞栓コイルの前記吸着を解除するように構成されている請求項1に記載の医療用長尺体。
【請求項3】
前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、着磁された強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石へ通電することで、前記塞栓コイルの磁力と前記電磁石の磁力との作用により、前記塞栓コイルを前記先端部に吸着させ、当該吸着時と逆方向の電流を前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の極性を前記吸着時と逆極性とし、前記塞栓コイルの磁力と前記電磁石の磁力との作用により、前記先端部に吸着された前記塞栓コイルを前記先端部から放出させるように構成されている請求項1に記載の医療用長尺体。
【請求項4】
前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、着磁された強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石への通電を遮断した状態で前記強磁性体の磁力により、前記塞栓コイルを前記先端部へ吸着させ、前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の磁力と前記強磁性体の磁力との作用により、前記先端部に吸着された前記塞栓コイルを前記先端部から放出させるように構成されている請求項1に記載の医療用長尺体。
【請求項5】
前記長尺体本体の先端部の少なくとも一部は、その外径が先端に向けて漸減するテーパ部を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項6】
前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部の少なくとも一部は、その一端から他端に向けコイル径が漸減している請求項5に記載の医療用長尺体。
【請求項7】
前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部の少なくとも一部は、その一端から他端に向けコイル径がほぼ同じである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項8】
前記塞栓コイルは、芯材と、該芯材の表面を覆うように形成された被覆層とを有し、前記芯材および前記被覆層のうちの少なくとも一方の一部または全部が強磁性体を主材料として構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項9】
前記芯材が前記強磁性体を主材料として構成され、前記被覆層が生体組織適合性を有する材料で構成されている請求項8に記載の医療用長尺体。
【請求項10】
前記電磁石は、前記長尺体本体の先端部の内部に設けられたコイルを備える請求項1ないし9のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項11】
前記コイルの内側に設けられた磁心を有する請求項10に記載の医療用長尺体。
【請求項12】
前記磁心は、前記長尺体本体と一体的に形成されている請求項11に記載の医療用長尺体。
【請求項13】
前記コイルの軸線は、前記長尺体本体の先端部の軸線とほぼ一致している請求項10ないし12のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項14】
前記長尺体本体は、ワイヤまたはチューブである請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用長尺体。
【請求項15】
螺旋状をなす塞栓コイルを血管の動脈瘤に供給するための医療用長尺体であって、
可撓性を有する長尺体本体と、
前記長尺体本体の先端部に設けられたコイルを備える電磁石とを有し、
前記電磁石は、前記コイルへ通電することにより、前記先端部に磁界を発生し得るものであり、前記コイルへの通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な螺旋状の塞栓コイルを前記先端部に着脱させるように構成されていることを特徴とする医療用長尺体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用長尺体、特に、血管の動脈瘤へ塞栓コイルを供給し得る医療用長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈瘤の治療にあたっては、外科的に動脈瘤を切除し、その部分に人工血管(人工的な材料で作製された管体)を移植するあるいは、バイパス手術と呼ばれる別の新たな血管流路を形成し、血液を確保するという治療法が行われていた。しかし、動脈瘤を発症する患者は一般的に高齢者が多く、このような大手術は、患者の負担が大きいため困難な場合が多く、また術中、術後の合併症も発生し易く、危険を伴うものであった。
【0003】
近年、大腿部等から経皮的に血管の動脈瘤内に塞栓物質を供給・充填する治療法(動脈瘤塞栓術)が開発されている。この治療法によれば、手術の危険性および患者の負担が大幅に軽減するという利点がある。かかる治療法には、例えば、コイル状をなす塞栓物質(塞栓コイル)を長尺体本体の先端に接続した医療用長尺体が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1にかかる医療用長尺体の使用に際しては、医療用長尺体を経皮的に血管に導入し、X線透視下で当該医療用長尺体の先端部を目的部位である例えば脳内血管の動脈瘤の位置まで進め、長尺体本体を通じて高周波電流を供給し、長尺体本体と塞栓コイルとの接続部を加熱により切断し、動脈瘤内に塞栓コイルを供給・充填する。
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかる医療用長尺体にあっては、長尺体本体と塞栓コイルとの接続部を切断し塞栓コイルを一旦留置してしまうと、塞栓コイルの移動や回収をすることができない。そのため、塞栓コイルを所望の位置に留置できなかった場合、塞栓コイルを他の手段により回収し、新たな塞栓コイルを留置する必要があり、患者への負担が大きいものとなっていた。
【0006】
また、長尺体本体と塞栓コイルとの接続部の切断時に、微量ながら、当該接続部の溶解物質等が生体内へ流出してしまう。このような物質の流出をなくすことは、安全性の観点から、より好ましい。
【0007】
【特許文献1】特開平7−265431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、患者の負担を軽減しつつ、塞栓コイルを所望の位置に留置することができる医療用長尺体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(15)の本発明により達成される。
(1) 螺旋状をなす塞栓コイルを血管の動脈瘤に供給するための医療用長尺体であって、
可撓性を有する長尺体本体と、
前記長尺体本体の先端部に設けられた電磁石を備える電磁石とを有し、
前記電磁石は、前記電磁石へ通電することにより、前記先端部に磁界を発生し得るものであり、前記電磁石への通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な基端部を有する螺旋状の塞栓コイルを前記先端部に着脱させるように構成されていることを特徴とする医療用長尺体。
【0010】
(2) 前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の磁力により前記先端部に前記塞栓コイルを吸着させ、前記電磁石への通電を遮断することにより、前記先端部に対する前記塞栓コイルの前記吸着を解除するように構成されている上記(1)に記載の医療用長尺体。
【0011】
(3) 前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、着磁された強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石へ通電することで、前記塞栓コイルの磁力と前記電磁石の磁力との作用により、前記塞栓コイルを前記先端部に吸着させ、当該吸着時と逆方向の電流を前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の極性を前記吸着時と逆極性とし、前記塞栓コイルの磁力と前記電磁石の磁力との作用により、前記先端部に吸着された前記塞栓コイルを前記先端部から放出させるように構成されている上記(1)に記載の医療用長尺体。
【0012】
(4) 前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部は、着磁された強磁性体を主材料として構成されており、前記電磁石への通電を遮断した状態で前記強磁性体の磁力により、前記塞栓コイルを前記先端部へ吸着させ、前記電磁石へ通電することで、前記電磁石の磁力と前記強磁性体の磁力との作用により、前記先端部に吸着された前記塞栓コイルを前記先端部から放出させるように構成されている上記(1)記載の医療用長尺体。
【0013】
(5) 前記長尺体本体の先端部の少なくとも一部は、その外径が先端に向けて漸減するテーパ部を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0014】
(6) 前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部の少なくとも一部は、その一端から他端に向けコイル径が漸減している上記(5)に記載の医療用長尺体。
【0015】
(7) 前記塞栓コイルの前記磁気吸着可能な基端部の少なくとも一部は、その一端から他端に向けコイル径がほぼ同じである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0016】
(8) 前記塞栓コイルは、芯材と、該芯材の表面を覆うように形成された被覆層とを有し、前記芯材および前記被覆層のうちの少なくとも一方の一部または全部が強磁性体を主材料として構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0017】
(9) 前記芯材が前記強磁性体を主材料として構成され、前記被覆層が生体組織適合性を有する材料で構成されている上記(8)に記載の医療用長尺体。
【0018】
(10) 前記電磁石は、前記長尺体本体の先端部の内部に設けられたコイルを備える上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0019】
(11) 前記コイルの内側に設けられた磁心を有する上記(10)に記載の医療用長尺体。
【0020】
(12) 前記磁心は、前記長尺体本体と一体的に形成されている上記(11)に記載の医療用長尺体。
【0021】
(13) 前記コイルの軸線は、前記長尺体本体の先端部の軸線とほぼ一致している上記(10)ないし(12)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0022】
(14) 前記長尺体本体は、ワイヤまたはチューブである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の医療用長尺体。
【0023】
(15) 螺旋状をなす塞栓コイルを血管の動脈瘤に供給するための医療用長尺体であって、
可撓性を有する長尺体本体と、
前記長尺体本体の先端部に設けられたコイルを備える電磁石とを有し、
前記電磁石は、前記コイルへ通電することにより、前記先端部に磁界を発生し得るものであり、前記コイルへの通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な螺旋状の塞栓コイルを前記先端部に着脱させるように構成されていることを特徴とする医療用長尺体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の医療用長尺体について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の医療用長尺体の実施形態を示す側面図、図2は、図1に示す医療用長尺体の縦断面図、図3は、図1に示す医療用長尺体に用いられる塞栓コイルの一例を示す拡大側面図、図4は、図3に示す塞栓コイルの基端部の第1の例を示す拡大側面図、図5は、図3に示す塞栓コイルの基端部の第2の例を示す拡大断面図、図6は、図1に示す医療用長尺体の使用方法を説明するための図、図7は、本発明の医療用長尺体の他の実施形態を示す側面図である。なお、説明の都合上、図1〜図7中の右側を「先端」、左側を「基端」という。また、図1〜図7では、理解を容易にするため、医療用長尺体の長さ方向を短縮し、医療用長尺体の太さ方向を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは異なる。なお、医療用長尺体としては、長尺体本体としてワイヤを備える医療用ワイヤや、長尺体本体としてチューブを備える医療用チューブなどが挙げられる。
【0026】
以下、本発明の医療用長尺体の一具体例として、医療用ワイヤに本発明を適用した例を説明する。
【0027】
本実施形態の医療用ワイヤ1は、例えばカテーテル(内視鏡も含む)の内腔に挿入して用いられ、螺旋状をなす塞栓コイル5を血管の動脈瘤に供給するためのものである。かかる医療用ワイヤ1は、図1および図2に示すように、長尺体本体であるワイヤ本体2と、このワイヤ本体2の先端部21に設けられた電磁石3と、電磁石3に電力を供給する電源回路4とを有し、電源回路4の電力により電磁石3による磁界をワイヤ本体2の先端部21に発生し得るものである。なお、後述するように本実施形態にかかる塞栓コイル5は小径の1次螺旋をなすワイヤで構成されて長尺形状をなしているとともに、その先端側の部分が大径の2次螺旋を形成しているが、図1、図2、図4、図5、および図7では、塞栓コイル5の基端部(磁気吸着部)のみを図示し、塞栓コイル5の基端部以外の部分(磁気吸着部よりも先端側の部分)の図示を省略している。
【0028】
そして、かかる医療用ワイヤ1にあっては、電源回路4の電力供給状態を切り換えることにより、螺旋状の塞栓コイル5の磁気吸着可能な基端部56を先端部21に着脱させる。
【0029】
このような医療用ワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。
【0030】
ワイヤ本体2は、可撓性(柔軟性または弾性)を有するものであり、線材22と、この線材22の外表面を覆うように形成された被覆層23とを有している。
【0031】
線材22は、その横断面が円形をなしている。なお、これに限らず、線材22は、横断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
【0032】
線材22の構成材料は、特に限定されないが、柔軟性または弾性を有する材料が好適に用いられる。例えば、線材22の構成材料としては、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)などの各種金属材料や樹脂材料を使用することができるが、そのなかでも特に、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)が好ましく、より好ましくは超弾性合金である。
【0033】
超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに、復元性があり、曲がり癖が付き難いので、線材22を超弾性合金で構成することにより、医療用ワイヤ1は、十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管等に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、湾曲・屈曲変形を繰り返しても、線材22に備わる復元性により曲がり癖が付かないので、医療用ワイヤ1の使用中にワイヤ本体2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0034】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0035】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。
【0036】
コバルト系合金は、ワイヤとしたときの弾性率が高く、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成されたワイヤは、トルク伝達性に優れ、座屈等の問題が極めて生じ難い。コバルト系合金としては、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものを用いてもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金を用いるのがより好ましい。このような組成の合金を用いることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、弾性係数が高く、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度であることにより、座屈の発生を十分に防止しつつ、小径化することができ、所定部位に挿入するのに十分な柔軟性と剛性を備えるものとすることができる。
【0037】
Co−Ni−Cr系合金としては、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等が好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種を含むことにより、ワイヤ本体2の強度のさらなる向上等を図ることができる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素を含む場合、その(置換元素全体の)含有量は30wt%以下であるのが好ましい。
【0038】
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換してもよい。例えば、Niの一部をMnで置換してもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等を図ることができる。また、Crの一部をMoおよび/またはWで置換してもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等を図ることができる。Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金が特に好ましい。
【0039】
Co−Ni−Cr系合金の具体的な組成としては、例えば、(1)40wt%Co−22wt%Ni−25wt%Cr−2wt%Mn−0.17wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(2)40wt%Co−15wt%Ni−20wt%Cr−2wt%Mn−7wt%Mo−0.15wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(3)42wt%Co−13wt%Ni−20wt%Cr−1.6wt%Mn−2wt%Mo−2.8wt%W−0.2wt%C−0.04wt%Be−残部Fe、(4)45wt%Co−21wt%Ni−18wt%Cr−1wt%Mn−4wt%Mo−1wt%Ti−0.02wt%C−0.3wt%Be−残部Fe、(5)34wt%Co−21wt%Ni−14wt%Cr−0.5wt%Mn−6wt%Mo−2.5wt%Nb−0.5wt%Ta−残部Fe等が挙げられる。本発明でいうCo−Ni−Cr系合金とはこれらの合金を包含する概念である。
【0040】
また、線材22の平均外径は、特に限定されないが、0.1〜0.3mm程度であるのが好ましい。
【0041】
そして、このような線材22の外周面および電磁石3の外表面のそれぞれを覆うように、被覆層23が形成されている。
【0042】
被覆層23の構成材料は、特に限定されず、樹脂材料や金属材料を用いることができ、特に、生体組織適合性を有する材料が好適に用いられる。
【0043】
被覆層23は、種々の目的で形成することができるが、その一例として、医療用ワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)を低減し、摺動性を向上させることによって医療用ワイヤ1の操作性を向上させることがある。
【0044】
医療用ワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)の低減を図るためには、被覆層23は、以下に述べるような摩擦を低減し得る材料で構成されているのが好ましい。これにより、塞栓コイル5とワイヤ本体2との摩擦抵抗が低減されて摺動性が向上し、塞栓コイル5がワイヤ本体2の先端部21に固着するのを防止し、また、先端部21に対する塞栓コイル5の着脱を容易にすることができる。また、医療用ワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内での医療用ワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、医療用ワイヤ1の摺動抵抗が低くなることで、医療用ワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、医療用ワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれをより確実に防止することができる。
【0045】
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料が挙げられる。
【0046】
その中でも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、塞栓コイル5とワイヤ本体2との摩擦抵抗が低減されて摺動性が向上し、塞栓コイル5がワイヤ本体2の先端部21に固着するのを防止し、また、先端部21に対する塞栓コイル5の着脱を容易にすることができる。また、医療用ワイヤ1とカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)をより効果的に低減し、摺動性を向上させることができ、カテーテル内での医療用ワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、これにより、医療用ワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、医療用ワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれをより確実に防止することができる。
【0047】
また、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、焼きつけ、吹きつけ等の方法により、樹脂材料を加熱した状態で、線材22への被覆を行うことができる。これにより、被覆層23の密着性は特に優れたものとなる。
【0048】
また、被覆層23がシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものであると、被覆層23を形成する(電磁石3や線材22に被覆する)際に、加熱しなくても、確実かつ強固に密着した被覆層23を形成することができる。すなわち、被覆層23をシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものとする場合、反応硬化型の材料等を用いることができるため、被覆層23の形成を室温にて行うことができる。このように、室温にて被覆層23を形成することにより、簡便にコーティングができる。
【0049】
また、被覆層23(特に先端側の部分)は、医療用ワイヤ1を血管等に挿入する際の安全性の向上を目的として設けることもできる。この目的のためには、被覆層23は柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で構成されているのが好ましい。
【0050】
このような柔軟性に富む材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、またはこれらのうちに2以上を組み合わせた複合材料が挙げられる。
【0051】
特に、被覆層23が前述した熱可塑性エラストマーや各種ゴム材料で構成されたものである場合には、医療用ワイヤ1の先端部の柔軟性がより向上するため、血管等への挿入時に、血管内壁等を傷つけることをより確実に防止することができ、安全性が極めて高い。
【0052】
このような被覆層23は、それぞれ、2層以上の積層体でもよい。また、被覆層23は、先端側と基端側とで、同一の材料で構成されていても、異なる材料で構成されていてもよい。例えば、被覆層23は、医療用ワイヤ1の先端側では、前述した柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で構成し、医療用ワイヤ1の基端側では、前述した摩擦を低減し得る材料で構成することができる。これにより、摺動性(操作性)の向上と安全性の向上の両立を図ることができる。
【0053】
なお、線材22等の外周面(表面)に、被覆層23の密着性を向上するための処理(粗面加工、化学処理、熱処理等)を施したり、被覆層23の密着性を向上し得る中間層を設けたりすることもできる。
【0054】
また、被覆層23中には、造影性を有する材料(前記X線不透過材料等)によるフィラー(粒子)が分散され、これにより造影部を構成するようにしてもよい。
【0055】
医療用ワイヤ1の少なくとも先端部の外面には、親水性材料がコーティングされているのが好ましい。本実施形態では、医療用ワイヤ1の先端から基端付近に至るまでの領域における医療用ワイヤ1の外周面に、親水性材料がコーティングされている。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、塞栓コイル5とワイヤ本体2との摩擦抵抗が低減されて摺動性が向上し、塞栓コイル5がワイヤ本体2の先端部21に固着するのを防止し、また、先端部21に対する塞栓コイル5の着脱を容易にすることができる。また、医療用ワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)が低減し、摺動性が向上する。従って、医療用ワイヤ1の操作性が向上する。
【0056】
親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0057】
また、被覆層23の平均厚さは、被覆層23の形成目的や構成材料、形成方法等を考慮して適宜され、特に限定されないが、通常は、1〜100μm程度であるのが好ましい。被覆層23の厚さが薄すぎると、被覆層23の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、被覆層23の剥離が生じるおそれがある。また、被覆層23の厚さが厚すぎると、医療用ワイヤ1の物理的特性に影響を与えるおそれがあり、また被覆層23の剥離が生じるおそれがある。
【0058】
このようなワイヤ本体2の先端部21は、その外径が先端に向けて漸減するテーパ部を有している。これにより、ワイヤ本体2の先端部21に塞栓コイル5を吸着させた状態で、先端部21を血管内で押し進めたときに、塞栓コイル5が不本意に基端側へずれるのを防止することができる。また、先端部21から塞栓コイル5を円滑に離脱させることができ、患者への負担を極めて低いものとしつつ、塞栓コイル5を動脈瘤内の所望位置に簡単に留置することができる。
このテーパ部の長さは、特に限定されないが、2〜3mm程度であるのが好ましい。
【0059】
また、ワイヤ本体2の先端部21(テーパ部)のテーパ角度(外径の減少率)は、後述する塞栓コイル5のテーパ角度と異なっているのが好ましい。これにより、先端部21と塞栓コイル5との係合時(吸着時)に、これらの接触面積が低減され、塞栓コイル5がワイヤ本体2の先端部21に固着するのを防止することができる。この場合、さらに、ワイヤ本体2の先端部21(テーパ部)のテーパ角度(外径の減少率)は、後述する塞栓コイル5のテーパ角度よりも大きいのが好ましい。これにより、先端部21に対する塞栓コイル5の着脱を容易にしつつ、塞栓コイル5がワイヤ本体2の先端部21に固着するのをより確実に防止することができる。また、吸着時に磁力により塞栓コイル5の基端部56をその軸線方向に縮めた状態とし、これを開放する(伸ばす)ことで、塞栓コイル5を放出させることができる。
【0060】
なお、ワイヤ本体2の先端部21(テーパ部)のテーパ角度(外径の減少率)は、ワイヤ本体2の長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化する部位があってもよい。例えば、テーパ角度(外径の減少率)が比較的大きい箇所と比較的小さい箇所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。
【0061】
また、先端部21は、塞栓コイル5を安定的に吸着することができれば、先端部21の先端のテーパ角度がゼロになる(外径が減少しない)ように、先端部21の長さや外径などが設定されていてもよい。
【0062】
また、先端部21の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。これにより、塞栓コイル5が先端部21に吸着されていない状態であっても、先端部21による血管内壁の損傷を防止することができる。
【0063】
また、ワイヤ本体2(先端部21を除く部分)の平均外径は、特に限定されないが、0.3〜0.4mm程度であるのが好ましい。
【0064】
電磁石3は、電源回路4からの通電により磁界を発生する機能を有する。
本実施形態では、電磁石3は、前述した線材22の先端側に設けられた磁心31と、この磁心31の外周に巻回されたコイル32とを有している。
【0065】
磁心31は、強磁性体を主材料として構成されている。このように構成された磁心31がコイル32の内側に設けられていると、電磁石3による磁界を強めることができる。
【0066】
また、磁心31は、その先端に向け外径が漸減するテーパ形状をなしている。これにより、後述する塞栓コイル5の操作(吸着または放出)に適した磁界を発生させることができる。
【0067】
また、磁心31は、ワイヤ本体2(より具体的には被覆層23や線材22)と一体的に形成されているのが好ましい。これにより、医療用ワイヤ1の機械的強度を向上させることができる。
【0068】
このような形状をなす磁心31の外周に巻回されたコイル32も、そのコイル径が先端に向けて漸減している。すなわち、コイル32は、磁心31の外周面に沿って螺旋状に巻回されている。これにより、電磁石3による磁界を強めるとともに、後述する塞栓コイル5の操作(吸着または放出)に適した磁界を発生させることができる。
【0069】
前述したようにコイル32は、ワイヤ本体2の先端部21において、被覆層23により覆われている。すなわち、コイル32は、ワイヤ本体2の先端部21の内部に設けられている。これにより、医療用ワイヤ1の先端部の寸法を小さいものとし、患者への負担を軽減することができる。
【0070】
また、コイル32の軸線は、ワイヤ本体2の先端部21の軸線とほぼ一致している。これにより、医療用ワイヤ1の周方向で均一な磁界を発生させることができる。その結果、医療用ワイヤ1の操作性を向上させることができる。
【0071】
このようなコイル32は、配線33を介して電源回路4に接続されている。この配線33は、ワイヤ本体22内において、前述した線材22と被覆層23との間に設けられている。
【0072】
このようなコイル32および配線33は、それぞれ、その表面付近に、絶縁性を有する材料で構成された被覆層(図示せず)が形成されている。これにより、コイル32や配線33が前述した線材22や被覆層23と絶縁されている。なお、線材22の外周面や被覆層23の内周面に、絶縁性を有する材料で構成された被覆層を設けた場合や、線材22や被覆層23の構成材料を絶縁性を有する材料で構成した場合などには、コイル32や配線33の表面に絶縁性を有する被覆層を形成しなくてもよい。
【0073】
電源回路4は、前述した電磁石3のコイル32への通電状態を切り換え可能に構成されえている。
【0074】
より具体的には、電源回路4は、コイル32へ通電する状態と、コイル32への通電を遮断する状態とを切り換え可能となっている。これにより、コイル32へ通電したときに、電磁石3による磁界を発生させることができる。また、コイル32への通電を遮断したときに、電磁石3による磁界の発生を停止させることができる。
【0075】
また、電源回路4は、コイル32への通電状態において、コイル32に流れる電流の方向を切り換え可能となっている。これにより、電磁石3による磁界の方向、すなわち電磁石3の極性を切り換えることができる。
【0076】
一方、前述したような先端部21に磁気吸着(係合)し得る塞栓コイル5は、磁気吸着可能に構成されている。より具体的には、塞栓コイル5は、図3に示すように、小径の1次螺旋をなすワイヤで構成されて長尺形状をなしているとともに、その先端側の部分が大径の二次螺旋部55を形成している。そして、塞栓コイル5の基端部56は、強磁性体を含んで構成され、磁気吸着可能になっている。これにより、塞栓コイル5は、ワイヤ本体2の先端部21に磁気吸着し得る。
【0077】
塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体としては、着磁されていない強磁性体と、着磁されている強磁性体とのいずれも用いることができる。
【0078】
塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されていない場合には、コイル32へ通電することで、電磁石3の磁力により先端部21に塞栓コイル5の基端部56を吸着させることができる。そして、コイル32への通電を遮断することにより、先端部21に対する塞栓コイル5の基端部56の前記吸着を解除することができる。
【0079】
一方、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されている場合には、コイル32へ通電することで、塞栓コイル5の基端部56の磁力と電磁石3の磁力との作用(吸引力)により、塞栓コイル5の基端部56を先端部21に吸着させることができる。そして、当該吸着時と逆方向の電流をコイル32へ通電することで、電磁石3の極性を当該吸着時と逆極性とし、塞栓コイル5の基端部56の磁力と電磁石3の磁力との作用(反発力)により、先端部21に吸着された塞栓コイル5を先端部21から放出させることができる。
【0080】
また、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されている場合には、コイル32への通電を遮断した状態で塞栓コイル5の基端部56(強磁性体)の磁力により、塞栓コイル5の基端部56を先端部21へ吸着させることができる。そして、コイル32へ通電することで、電磁石3の磁力と塞栓コイル5の基端部56(強磁性体)の磁力との作用(反発力)により、先端部21に吸着された塞栓コイル5を先端部21から放出させることができる。
【0081】
また、塞栓コイル5の基端部56は、その一端から他端に向けコイル径(1次螺旋の径)がほぼ同じであってもよいし、漸減していてもよい。このようにコイル径が漸減する部分を塞栓コイル5が有する場合、前述したようなテーパ部を有するワイヤ本体2の先端部21の外周面に沿って吸着させることができる。これにより、ワイヤ本体2の先端部21に塞栓コイル5を吸着させた状態で、先端部21を血管内を移動させたときに、塞栓コイル5と血管の壁面との不本意な接触を防止し、この点でも、患者への負担を軽減することができる。また、塞栓コイル5をワイヤ本体2の先端部21に吸着した状態でカテーテル内や血管内を移動させる際に、カテーテルの内壁や生体表面に対する塞栓コイル5の表面の接触面積が少なくなり、これにより、摺動抵抗を低減することができ、その結果、医療用ワイヤ1の操作性がより向上する。
【0082】
以下、塞栓コイル5の基端部56のより具体的な構成例として第1の例および第2の例を順次説明する。
【0083】
(第1の例)
塞栓コイル5の基端部56は、例えば、図4に示す第1の例のように、コイル本体51と、このコイル本体51上に担持または保持され、強磁性体を主材料として構成された多数の粒体52とを有している。これにより、塞栓コイル5を磁気吸着可能なものとすることができる。また、このような構成の塞栓コイル5は、コイル本体51上での粒体52の分布を適宜設定することで、塞栓コイル5に所望の磁気特性を付与し、電磁石3からの磁界による挙動を所望のものとすることができる。なお、図4では、塞栓コイル5の基端部56のみを図示し、基端部56よりも先端側の部分の図示を省略している。
【0084】
コイル本体51の構成材料としては、特に限定されないが、前述した線材22や被覆層23の構成材料と同様のものを用いることができる。この中でも、コイル本体51の構成材料としては、例えば、コバルト系合金、タンタル、タングステン、イリジウム、金、白金、タングステン等の金属(放射線不透過材料)またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等のような化学的に安定な材料を用いるのが好ましい。特に、X線等の放射線を実質的に透過しない放射線不透過材料でコイル本体51を構成した場合には、塞栓コイル5や医療用ワイヤ1の先端部に造影性が得られ、放射線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。
【0085】
粒体52の構成材料に用いる強磁性体としては、特に限定されないが、Fe、Co、Ni、Gdなどの金属のうちのいずれかまたはこれらのうちの1種以上を含む合金を用いることができる。
【0086】
(第2の例)
また、塞栓コイル5は、例えば、図5に示す第2の例のように、芯材53と、芯材53の表面を覆うように形成された被覆層54とを有している。なお、図5では、塞栓コイル5の基端部56のみを図示し、基端部56よりも先端側の部分の図示を省略している。
【0087】
そして、芯材53および被覆層54のうちの少なくとも一方が強磁性体を主材料として構成されている。これにより、塞栓コイル5を磁気吸着性を有するものとしつつ、芯材53の構成材料と被覆層54の構成材料とを適宜選択することで、塞栓コイル5に所望の特性を付与することができる。
【0088】
例えば、芯材53を前述したような強磁性体を主材料として構成し、被覆層54を生体組織適合性を有する材料で構成した場合、塞栓コイル5を磁気吸着性を有するものとしつつ、塞栓コイル5を生体組織適合性に優れたものとすることができる。
【0089】
ここで、生体組織適合性を有する材料としては、生体に対し安全性が高い材料であれば、特に限定されないが、例えば、コバルト系合金、タンタル、タングステン、イリジウム、金、白金、タングステン等の金属またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等のような化学的に安定な材料が好適に用いられる。また、貴金属のようなX線等の放射線を実質的に透過しない放射線不透過材料で芯材53または被覆層54を構成した場合には、塞栓コイル5や医療用ワイヤ1の先端部に造影性が得られ、放射線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。
【0090】
なお、芯材53と被覆層54との間には中間層が設けられていてもよい。この中間層は、例えば、芯材53および被覆層54をそれぞれ金属で構成した場合、これらの金属の合金層や傾斜合金層である。このような合金層や傾斜合金層は、芯材53上に被覆層54を形成した状態で熱処理により形成することができる。これにより、塞栓コイル5の耐久性を向上させることができる。
【0091】
また、塞栓コイル5は、芯材53の構成材料によっては、被覆層54を省略することができる。
【0092】
このような磁気吸着可能な基端部56の先端側に設けられた二次螺旋部55は、カテーテルに装着前など外力が付与されていない状態では、図3に示すように、大径の螺旋状をなしている。この二次螺旋部55は、マイクロカテーテル内に挿通することができるように変形可能であり、マイクロカテーテル内に挿通されているときに、マイクロカテーテルの内壁に沿って線状をなすように変形する。そして、二次螺旋部55は、マイクロカテーテルから放出されたとき、再び前述した大径の螺旋状に戻るか、あるいは、留置された動脈瘤の内部形状等に応じて三次元的に複雑な形状になるようになっている。これにより、塞栓コイル5を動脈瘤内に安定的に留置することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、二次螺旋部55は、その二次螺旋のコイル径が一定となっているが、先端側から基端側へ漸減または漸増する部分を有していてもよい。
【0094】
このような二次螺旋部55の構成材料は、特に限定されないが、例えば、前述した基端部56の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0095】
また、二次螺旋部55は磁気吸着可能に構成する必要がない。二次螺旋部55の構成材料は、基端部56の構成材料と同じであっても異なっていてもよいが、磁気吸着しない材料で構成されているのが好ましい。これにより、ワイヤ本体2の先端部21に塞栓コイル5の基端部56を簡単かつ確実に吸着させることができる。
【0096】
また、このような医療用ワイヤ1においては、放射線透視下でワイヤ本体2の先端部21と塞栓コイル5との位置関係を確認し得るように、ワイヤ本体2の先端部21(より具体的には線材22または被覆層23)と塞栓コイル5とのそれぞれの少なくとも一部を造影性を有する材料(例えば前述したような放射線不透過材料)で構成することができる。この場合、医療用ワイヤ1の操作性を向上させることができる。
【0097】
例えば、図7(a)に示すように、ワイヤ本体2の塞栓コイル5が吸着し得る部位(すなわち先端部21)にその軸線方向に互いに離間する少なくとも2つの造影部(放射線不透過マーカー)211、212を設けるとともに、この2つの造影部211、212に対応する間隔で軸線方向に互いに離間する少なくとも2つの造影部(放射線不透過マーカー)511、512を塞栓コイル5に設ける。これらの造影部211、212、511、512は、図7(b)に示すように、ワイヤ本体2の先端部21に対して塞栓コイル5が正しく装着されているときに、ワイヤ本体2の基端側の造影部211と塞栓コイル5の基端側の造影部511とが重なるとともに、ワイヤ本体2の先端側の造影部212と塞栓コイル5の先端側の造影部512とが重なるように設けられている。したがって、ワイヤ本体2の先端部21に対して塞栓コイル5が正しく装着されているか否かを放射線透視下にて確認することができる。そのため、簡単かつ確実に、ワイヤ本体2の先端部21に対して塞栓コイル5が正しく装着されている状態から塞栓コイル5を効率よく放出させることができる。その結果、医療用ワイヤ1の操作性を向上させることができる。
【0098】
以上説明したように医療用ワイヤ1は、コイル32への通電状態を切り換えることにより、磁気吸着可能な螺旋状の塞栓コイル5を先端部21に着脱させるように構成されている。
【0099】
ここで、このように構成された医療用ワイヤ1の使用方法の一例を説明する。
[A]
まず、ガイドワイヤー(図示せず)をマイクロカテーテル7に通した状態で、このガイドワイヤーを先行させて、マイクロカテーテル7をガイドワイヤーによって案内しながら血管60に挿入し、先端方向へ進め、図6(a)に示すように、マイクロカテーテル7の先端を動脈瘤61内に位置させる。その後、ガイドワイヤーをマイクロカテーテル7から抜去し、ワイヤ本体2の先端部21の外周に塞栓コイル5(より具体的には磁気吸着可能な基端部56)を吸着させた状態で、医療用ワイヤ1の先端(先端部21)を、図6(a)に示すように、マイクロカテーテル7内に挿通する。
このとき、塞栓コイル5はワイヤ本体2の先端部21に磁気吸着されている。
【0100】
より具体的に説明すると、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されていない場合には、コイル32へ通電することで、電磁石3が磁界を発生させる。その状態で、電磁石3の磁力により先端部21に塞栓コイル5の基端部56を吸着させる。
【0101】
また、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されている場合には、コイル32へ通電することで、電磁石3が磁界を発生させる。その状態で、塞栓コイル5の基端部56の磁力と電磁石3の磁力との作用(吸引力)により、塞栓コイル5の基端部56を先端部21に吸着させる。
【0102】
あるいは、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁され、かつ、ワイヤ本体2の先端部21や磁心31が磁気吸着可能な材料で構成されている場合には、コイル32への通電を遮断した状態、すなわち、電磁石3が磁界を発生しない状態とする。その状態で、塞栓コイル5の基端部56(強磁性体)の磁力により、塞栓コイル5の基端部56を先端部21へ吸着させる。
【0103】
また、マイクロカテーテル7内に挿通された塞栓コイル5の二次螺旋部55は、マイクロカテーテル7の内壁に形状を規制されて、マイクロカテーテル7に沿って1次螺旋からなる線状をなしている。
【0104】
[B]
そして、ワイヤ本体2の先端部21に塞栓コイル5の基端部56を吸着させた状態を維持したまま、先端部21をゆっくりと先端方向へ進め、図6(b)に示すように、ワイヤ本体2の先端部21を、マイクロカテーテル7の先端から突出させることにより、動脈瘤61内に突出させる。
【0105】
このとき、マイクロカテーテル7内から動脈瘤61内へ放出された塞栓コイル5の二次螺旋部55は、元の形状(螺旋形状)に復帰するように形状が変化する。なお、図6(b)では、二次螺旋部55は、元の螺旋形状には戻らずに、動脈瘤61の内壁の形状に応じた三次元的に複雑な形状になった状態を示している。
【0106】
[C]
次に、ワイヤ本体2の先端部21から塞栓コイル5を放出(または吸着を解除)し、マイクロカテーテル7内へワイヤ本体2を引き込む。これにより、図6(c)に示すように、動脈瘤61内に塞栓コイル5が供給・充填される。
【0107】
このとき、電源回路4の通電状態を切り換えることにより、先端部21に対する塞栓コイル5の吸着を解除する。
【0108】
より具体的に説明すると、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されていない場合には、コイル32への通電を遮断することにより、先端部21に対する塞栓コイル5の前記吸着を解除する。
【0109】
また、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁されている場合には、吸着時と逆方向の電流をコイル32へ通電することで、電磁石3の極性を当該吸着時と逆極性とし、塞栓コイル5の基端部56の磁力と電磁石3の磁力との作用(反発力)により、先端部21に吸着された塞栓コイル5を先端部21から放出させる。
【0110】
あるいは、塞栓コイル5の基端部56を構成する強磁性体が着磁され、かつ、ワイヤ本体2の先端部21や磁心31が磁気吸着可能な材料で構成されている場合には、コイル32へ通電することで、電磁石3の磁力と塞栓コイル5の基端部56(強磁性体)の磁力との作用(反発力)により、先端部21に吸着された塞栓コイル5を先端部21から放出させる。
【0111】
このように通電回路4の通電状態を切り換えることにより、先端部21に対する塞栓コイル5の吸着を解除することができる。
【0112】
特に、前述したように電磁石3の磁力と塞栓コイル5の基端部56(強磁性体)の磁力との作用(反発力)により、先端部21に吸着された塞栓コイル5の基端部56を先端部21から放出させると、先端部21よりもさらに先端側の位置へ塞栓コイル5を供給・留置することができる。したがって、動脈瘤61の奥行きが比較的広い等の理由から先端部21を動脈瘤61の途中までしか挿入することができない場合であっても、塞栓コイル5を動脈瘤61の所望の位置に供給することができる。
【0113】
また、前述したように、吸着時に磁力により塞栓コイル5の基端部56をその軸線方向に縮めた状態とし、これを開放することで、塞栓コイル5を放出させることによっても、先端部21よりもさらに先端側の位置へ塞栓コイル5を供給・留置することができる。
【0114】
以上説明したように医療用ワイヤ1は、塞栓コイル5を動脈瘤61内に供給・留置することができる。
【0115】
このような医療用ワイヤ1にあっては、電源回路4の通電状態に応じてワイヤ本体2と塞栓コイル5との着脱を自在に行うことができる。したがって、塞栓コイル5を一旦留置してしまった後でも、留置された塞栓コイル5の基端部56に先端部21を近づけ再度磁気吸着することで、塞栓コイル5の移動や回収を行うことができる。そのため、患者の負担を軽減しつつ、塞栓コイル5を所望の位置に留置することができる。
【0116】
また、ワイヤ本体2に対する塞栓コイル5の着脱に際し、人体に悪影響を及ぼす物質が流出することもないため、この点でも、患者の負担を軽減することができ、安全性の高い医療器具を提供することができる。
【0117】
以上、本発明の医療用長尺体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、医療用長尺体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0118】
例えば、長尺体本体や塞栓コイルの形状は、前述した実施形態のものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の医療用長尺体の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す医療用長尺体の縦断面図である。
【図3】図1に示す医療用長尺体に用いられる塞栓コイルの構成例を示す拡大側面図である。
【図4】図3に示す塞栓コイルの基端部の構成例(第1の例)を示す拡大側面図である。
【図5】図3に示す塞栓コイルの基端部の構成例(第2の例)を示す拡大断面図である。
【図6】図1に示す医療用長尺体の使用方法を説明するための図である。
【図7】本発明の医療用長尺体の他の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 医療用ワイヤ(医療用長尺体)
2 ワイヤ本体(長尺体本体)
21 先端部
211、212、511、512 造影部
22 線材
23 被覆層
3 電磁石
31 磁心
32 コイル
33 配線
4 電源回路
5 塞栓コイル
51 コイル本体
52 粒体
53 芯材
54 被覆層
55 二次螺旋部
56 基端部
60 血管
61 動脈瘤
7 マイクロカテーテル
【出願人】 【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
【出願日】 平成19年5月17日(2007.5.17)
【代理人】 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉


【公開番号】 特開2008−49118(P2008−49118A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−132187(P2007−132187)