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【発明の名称】 X線グリッド
【発明者】 【氏名】武本 肇

【要約】 【課題】簡単かつ小型の構成でグリッドの焦点距離を変更できるようにする。

【構成】アルミニウム、カーボンファイバーなどのX線透過物質で形成されたX線透過部材10と鉛の箔などのX線吸収物質で形成されたX線吸収部材11とを交互に並べるとともに、それらを表板12と裏板13とで挟持してX線グリッド9を構成する。裏板13の上下方向の両端縁それぞれに、X線透過部材10とX線吸収部材11との並設方向で伸縮するようにピエゾ素子14を付設し、そのピエゾ素子14に、印加電圧を調整可能に電圧を印加する電圧印加手段を配線を介して接続する。胸部を撮影する場合に、被検体の体格などに対応させるとか、撮影部位に対応させるなどのために、X線管をX線検出器に対して遠近変位するに伴い、X線グリッド9を変形させて焦点距離を変更し、X線吸収部材11によるX線吸収率の変動を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線透過部材とX線吸収部材とを交互に並べるとともに、表板と裏板とで挟持したX線グリッドにおいて、
前記表板または裏板の少なくとも一方の一部に設けられて前記X線透過部材とX線吸収部材との並設方向で伸縮するピエゾ素子と、前記ピエゾ素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、印加電圧の大きさを変更することにより、グリッドの焦点距離を変更可能に構成したことを特徴とするX線グリッド。
【請求項2】
X線透過部材とX線吸収部材とを交互に並べるとともに、表板と裏板とで挟持したX線グリッドにおいて、
前記表板または裏板の少なくとも一方の一部に設けられて前記X線透過部材とX線吸収部材との並設方向で撓み変形するバイメタルと、前記バイメタルに電流を流す通電手段とを備え、流す電流の大きさを変更することにより、グリッドの焦点距離を変更可能に構成したことを特徴とするX線グリッド。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管により被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線をX線検出器などのX線受像機によって検出するX線撮影装置において、X線受像機のX線入射面の近傍に設けるX線グリッドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のX線グリッドとしては、従来、次のようなものが知られている。
すなわち、X線管を保持したX線管保持部がレール上を移動可能に設けられ、X線管から照射されるX線を受光するX線受像部が受像部保持部に昇降可能に保持され、被検体に対してX線管とX線受像部との距離を変更可能なX線撮影装置が構成されている。
【0003】
X線受像部は、X線像を記録する記録媒体と、記録媒体のX線入射面側に配置されるグリッド装置とを有している。
グリッド装置は、集束グリッドとグリッド駆動装置とを備えている。グリッド駆動装置は、集束グリッドをそのグリッドの延在方向を長手軸とした所定の曲率の円筒形状に変形させるとともに、グリッド並び方向に揺動させるように構成されている。
【0004】
集束グリッドは、X線吸収物質(例えば、鉛)からなるX線吸収部材と、X線透過物質(例えば、アルミニウム、炭素繊維強化物質、および合成樹脂)からなるX線透過部材を交互に、かつ、それらの部材がX線管の中心(集束点)を向くように並設して構成されている。
X線吸収部材とX線透過部材とは、アルミニウムなどの保護板で挟持されている。
グリッド駆動装置は、集束グリッドを円筒形状に変形させる左右一対の上下駆動装置と、集束グリッドを左右に揺動する揺動装置と、これらの装置を収容する枠体とを備えて構成されている。
【0005】
集束グリッドは、その左右両端をグリッド保持枠で保持され、上下両端部をその中心部でコロにより厚み方向に拘束されている。一対のグリッド保持枠は、支持金具を介して上下駆動装置と連結され、各支持金具を上下方向に移動させることにより、コロで中心部が拘束された集束グリッドがグリッド延在方向を長手軸心とする円筒形状に変形するように構成されている。また、グリッド保持枠は支持金具を介して揺動装置と連結され、支持金具を左右に移動させることにより、集束グリッドを左右に、すなわち、グリッド延在方向と直交する方向に揺動するように構成されている。これらの構成により、集束グリッドを円筒形状に変形させて集束距離を変更できるようになっている。
【0006】
上下駆動装置は、モータと、モータの出力軸と一体に回転するベベル歯車と、このベベル歯車と噛合するベベル歯車とベベル歯車と一体に回転するネジ棒と、ネジ棒に螺合されている角ナットとを備え、ネジ棒がダイに回転可能に支承され、支持金具を介して集束グリッドの両端部を上下動して集束グリッドを円筒形状にするように構成されている。
【0007】
揺動装置は、モータと、モータの出力軸と一体に回転し、偏心ピンが植設されている円板とを有している。支持金具は円板の回転面内において上下方向に延在する長孔を有している。円板のピンは支持金具の長孔に嵌合し、モータを回転すると円板が回転し、偏心ピンが長孔内を上下動しながら回転し、支持金具を介して集束グリッドを左右に揺動するように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−313546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述従来例の場合、次のような課題があった。
グリッドの焦点距離の変更のために集束グリッドを所定の曲率の円筒形状に変形させるために、上下駆動装置において、モータやベベル歯車やネジ棒や角ナットなどを必要とするなど、グリッドの焦点距離を変更するための構成が大掛かりで大きなスペースを必要として装置全体が大型化する不都合があった。
【0009】
この発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであって、簡単かつ小型の構成でグリッドの焦点距離を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、X線透過部材とX線吸収部材とを交互に並べるとともに、表板と裏板とで挟持したX線グリッドにおいて、
前記表板または裏板の少なくとも一方の一部に設けられて前記X線透過部材とX線吸収部材との並設方向で伸縮するピエゾ素子と、前記ピエゾ素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、印加電圧の大きさを変更することにより、グリッドの焦点距離を変更可能に構成したことを特徴としている。
【0011】
(作用・効果)
請求項1に係る発明のX線グリッドの構成によれば、電圧を印加することによって伸縮する特性を有するピエゾ素子を利用し、そのピエゾ素子を表板または裏板の少なくとも一方の一部に設け、電圧の印加によってX線グリッドを曲げ変形させ、グリッドの焦点距離を変更することができる。
したがって、ピエゾ素子とそれに電圧を印加するための配線などを付設するだけで済み、モータやそれとグリッドとを連係するための構成を設ける従来例の場合に比べ、簡単かつ小型の構成でグリッドの焦点距離を変更できる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、X線透過部材とX線吸収部材とを交互に並べるとともに、表板と裏板とで挟持したX線グリッドにおいて、
前記表板または裏板の少なくとも一方の一部に設けられて前記X線透過部材とX線吸収部材との並設方向で撓み変形するバイメタルと、前記バイメタルに電流を流す通電手段とを備え、流す電流の大きさを変更することにより、グリッドの焦点距離を変更可能に構成したことを特徴としている。
【0013】
(作用・効果)
請求項1に係る発明のX線グリッドの構成によれば、電流を流すことによって反り変形する特性を有するバイメタルを利用し、そのバイメタルを表板または裏板の少なくとも一方の一部に設け、電流を流すことによってX線グリッドを曲げ変形させ、グリッドの焦点距離を変更することができる。
したがって、バイメタルとそれに電流を流すための配線などを付設するだけで済み、モータやそれとグリッドとを連係するための構成を設ける従来例の場合に比べ、簡単かつ小型の構成でグリッドの焦点距離を変更できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明のX線グリッドの構成によれば、電圧を印加することによって伸縮する特性を有するピエゾ素子を利用し、そのピエゾ素子を表板または裏板の少なくとも一方の一部に設け、電圧の印加によってX線グリッドを曲げ変形させ、グリッドの焦点距離を変更することができる。
したがって、ピエゾ素子とそれに電圧を印加するための配線を付設するだけで済み、モータやそれとグリッドとを連係するための構成を設ける従来例の場合に比べ、簡単かつ小型の構成でグリッドの焦点距離を変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、この発明の実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、この発明に係る実施例1のX線グリッドを用いたX線撮影装置の全体正面図、図2は全体平面図であり、支柱1に昇降可能にキャリッジ2が設けられるとともに、キャリッジ2に水平方向の軸心周りで回転可能に支持アーム3が設けられている。
支持アーム3の長手方向の一端側に、被検者にX線を照射するX線管4が設けられるとともに、他端側に、X線管4から照射されて被検者を透過したX線を受光するX線検出器5が固定されている。
【0017】
支持アーム3の回転軸心よりX線検出器5とは反対側部分に、その長手方向に平行に直線状のガイドレール6が設けられ、そのガイドレール6に、X線管4を保持したX線管保持部材7に取り付けた一対のリニアガイド8が設けられ、そのリニアガイド8がガイドレール6に摺動移動可能に設けられ、手動操作によってX線管4をX線検出器5に対して遠近変位できるように構成されている。
【0018】
X線検出器5のX線入射面側に、散乱光を吸収するX線グリッド9が付設され、その外面側がX線を透過する材料で形成されたカバー9aで覆われている。
X線グリッド9は、図3の全体斜視図、および、図4の断面図に示すように、アルミニウム、カーボンファイバーなどのX線透過物質で形成されたX線透過部材10と鉛の箔などのX線吸収物質で形成されたX線吸収部材11とを交互に並べるとともに、それらを表板12と裏板13とで挟持して構成されている。
【0019】
裏板13の上下方向の両端縁それぞれに、X線透過部材10とX線吸収部材11との並設方向で伸縮するようにピエゾ素子14が付設され、そのピエゾ素子14に、印加電圧を調整可能に電圧を印加する電圧印加手段15が配線16を介して接続されている。
【0020】
図5の要部の一部省略正面図に示すように、支持アーム3の上面に、X線管4の移動範囲にわたる状態でラックギア17が取り付けられている。一方、X線管保持部材7に支持ブラケット18を介してポテンショメータ19(図2参照)が設けられるとともに、そのポテンショメータ19の回転ギア20がラックギア17に咬合され、X線管4の移動量、すなわち、X線検出器5との焦点距離を測定できるように構成されている。
【0021】
ポテンショメータ19がコントローラ21に接続され、そのコントローラ21と電圧印加手段15とが接続されている。
コントローラ21には、電圧抽出手段22、焦点距離―電圧相関テーブル23および電圧信号出力手段24が備えられている。
【0022】
焦点距離―電圧相関テーブル23では、電圧とピエゾ素子14の歪み、ピエゾ素子14の歪みと焦点距離それぞれの関係から予め求めた電圧と焦点距離との相関関係が記憶されている。
詳述すると、ピエゾ素子14に印加する電圧(V)と、ピエゾ素子14を設けたX線グリッド9の電圧印加に伴う歪み(%)の関係は、図6の(a)のグラフに示すように、印加電圧の増加に比例して歪みが大きくなる関係を有している。
また、ピエゾ素子14を設けたX線グリッド9の電圧印加に伴う歪み(%)と、焦点距離(cm)との関係は、図6の(b)のグラフに示すように、歪みが大きくなる程焦点距離が長くなる関係を有している。
これらの関係から、図6の(c)のグラフに示すように、印加電圧と焦点距離を求めることができ、この関係に基づいて、求めた電圧と焦点距離との相関関係が焦点距離―電圧相関テーブル23に記憶されている。
【0023】
電圧抽出手段22では、ポテンショメータ19で計測される移動量に基づき、その移動に伴うX線管4tX線検出器5間の焦点距離に対応するピエゾ素子9に印加すべき電圧を焦点距離―電圧相関テーブル23から抽出するようになっている。
電圧信号出力手段24では、電圧抽出手段22で抽出された電圧に基づいて、その電圧を電圧印加手段15で印加させるように電圧信号を出力するようになっている。
【0024】
上記構成により、胸部を撮影する場合に、被検体の体格などに対応させるとか、撮影部位に対応させるなどのために、X線管4をX線検出器5に対して遠近変位するに伴い、X線グリッド9を変形させて焦点距離を変更し、X線吸収部材11によるX線吸収率の変動を抑制するようになっている。
すなわち、通常の状態[図4の(a)]よりも焦点位置をX線検出器5側に近づけて(a→b)焦点距離を短くした場合には、図4の(b)に示すように、印加電圧を調整することにより、焦点位置bに対して凹状になるようにX線グリッド9を変形させる。
【実施例2】
【0025】
図7は、この発明に係る実施例2のX線グリッドの全体斜視図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
すなわち、裏板13の上下方向の両端縁それぞれに、X線グリッド9の厚み方向に、熱膨張率が異なる2種の第1および第2の金属板31a,31bを貼り合わせたバイメタル32が付設され、そのバイメタル32に、流す電流の大きさを調整可能に通電する通電手段33が配線34を介して接続されている。
【0026】
第1および第2の金属板31a,31bそれぞれとしては、鉄とニッケルの合金に、マンガン、クロム、銅などを添加して所定の熱膨張率に調整したものが用いられ、熱膨張率の小さい側の合金としては、インバーが用いられる。
【0027】
この実施例2の構成によれば、バイメタル32に電流を流すとともに、その電流の大きさを変えることによって発熱量を変え、その温度を変更することでバイメタル32の曲率を変え、前述実施例1と同様にX線グリッド9を直線平板状の状態から、凹状の状態または凸状の状態へと変形させ、焦点距離を変更できる。
【0028】
また、この実施例2においても、バイメタル32に流す電流の大きさと焦点距離との関係を予め求め、それを電流―焦点距離相関テーブルに記憶させておき、ポテンショメータ19で求めたX線管4の位置に基づき、対応する電流の大きさを抽出し、その電流を通電手段33に流させるように構成されるものである。
【0029】
図8は、この発明に係るX線グリッドを用いた別のX線撮影装置の全体正面図であり、天井に設けたガイドレール41に沿って水平方向に移動可能に第1の支持部材42が設けられるとともに、その第1の支持部材42に上下方向に固定位置変更可能に第2の支持部材43が設けられ、その第2の支持部材43に、被検体にX線を照射するX線管4が保持されている。
【0030】
一方、支柱44に昇降可能に、X線管4から照射されて被検体を透過したX線を受光するX線検出器5が設けられ、そのX線検出器5のX線入射面側に、散乱光を吸収するX線グリッド9が付設され、その外面側がX線を透過する材料で形成されたカバー9aで覆われている。図中45は、X線撮影装置の各種制御を司る制御装置を示している。
図示しないが、ガイドレール41にラックギアが形成され、一方、第1の支持部材42にポテンショメータが設けられるとともに、そのポテンショメータの回転ギアがラックギアに咬合され、X線管4とX線検出器5との距離、すなわち、焦点距離を測定できるように構成されている。
【0031】
上記実施例では、ピエゾ素子14またはバイメタル32を裏板13の上下方向両端縁に付設しているが、この発明としては、表板12側の一部に付設するとか、あるいは、表板
12と裏板13の両方それぞれの一部に付設するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係るX線グリッドを用いたX線撮影装置の全体正面図である。
【図2】X線撮影装置の全体平面図である。
【図3】この発明に係る実施例1のX線グリッドの全体斜視図である。
【図4】実施例1のX線グリッドの断面図であり、(a)は通常の状態を、(b)は焦点距離を短くした状態をそれぞれ示している。
【図5】要部の一部省略正面図である。
【図6】(a)は、印加電圧とX線グリッドの歪みとの相関関係を示すグラフ、(b)は、X線グリッドの歪みとの相関関係を示すグラフ、(c)は、印加電圧と焦点距離との相関関係を示すグラフである。
【図7】この発明に係る実施例2のX線グリッドの全体斜視図である。
【図8】この発明に係るX線グリッドを用いた別のX線撮影装置の全体正面図である。
【符号の説明】
【0033】
9…X線グリッド
10…X線透過部材
11…X線吸収部材
12…表板
13…裏板
14…ピエゾ素子
15…電圧印加手段
32…バイメタル
33…通電手段
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成18年8月24日(2006.8.24)
【代理人】 【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉


【公開番号】 特開2008−48910(P2008−48910A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−228255(P2006−228255)