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【発明の名称】 動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法
【発明者】 【氏名】セルジオ・ルメットル

【要約】 【課題】診断イメージング・システムにおいて、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくし得る方法を提供する。

【構成】一実施形態では、方法は、電子ビームを発生するステップ(402)と、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップ(404)と、電子ビームをアノードにおいて脱焦させるステップ(406)と、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップ(408)とを含んでいる。他の観点では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法が、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップと、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップと、電子ビームを少なくとも部分的に阻止するステップと、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップとを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法であって、
回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ(402)と、
前記電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップ(404)と、
前記電子ビームを前記アノードにおいて脱焦させるステップ(406)と、
前記電子ビームを前記アノードの第二の位置に再合焦させるステップ(408)と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記電子ビーム(108)を第一の位置(120)に合焦させるステップ(404)は、
第一のバイアス電圧(114)により第一の電極(112)にバイアスを加えるステップと、
第二のバイアス電圧(118)により第二の電極(116)にバイアスを加えるステップと、
をさらに含んでおり、前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の公称焦点スポット径(124)に位置する第一の位置(120)に向けるために、前記第二のバイアス電圧(118)は前記第一のバイアス電圧(114)よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子ビーム(108)を脱焦させるステップ(406)は、
前記電子ビーム(108)を脱焦させるために、第二の電極(116)のバイアス電圧(118)を上昇させるステップ
をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の第二の位置(122)に再合焦させるステップ(408)は、
前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の公称焦点スポット径(124)に位置する第二の位置(122)に向けて合焦させるために、第一の電極(112)の第一のバイアス電圧(114)を第二の電極(116)の第二のバイアス電圧(118)よりも低い電圧に低下させるステップ
をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子ビーム(108)を第一の位置(120)に合焦させるステップ(404)は、
前記電子ビーム(108)を第一の位置(120)に向けるために、1又は複数の磁場を印加するステップ
をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子ビーム(108)を脱焦させるステップ(406)は、
前記電子ビーム(108)を脱焦させるために、1又は複数の磁場を印加するステップ
をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の第二の位置(122)に再合焦させるステップ(408)は、
前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の前記第二の位置(122)に再合焦させるために、1又は複数の磁場を印加するステップ
をさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法であって、
回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ(402)と、
前記電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップ(404)と、
前記電子ビームの一部又は全てを阻止するステップ(602)と、
前記電子ビームを前記アノードの第二の位置に再合焦させるステップ(408)と、
を備えた方法。
【請求項9】
動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法であって、
回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ(402)と、
前記電子ビームを前記アノードの第一の位置に合焦させるステップ(404)と、
前記電子ビームを前記アノードの公称焦点スポット径から離隔するように操舵するステップ(702)と、
前記電子ビームを前記アノードの第二の位置に再合焦させるステップ(408)と、
を備えた方法。
【請求項10】
前記電子ビームを前記公称焦点スポット域から離隔するように操舵するステップは、
前記電子ビーム(108)を前記アノード(110)の前記公称焦点スポット径(124)から外れるように偏向させるために、1又は複数の磁場を印加するステップ
をさらに含んでいる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、X線管に関し、さらに具体的には、計算機式断層写真法に用いられるX線管に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機式断層写真法(CT)のような診断イメージング・システムは、高出力及び高分解能を必要とする。X線管が高出力であるほどイメージャはさらに高密度の対象をさらに短い照射時間で撮像することが可能となり、このことは撮像工程時に静止していなければならない傷病者にとって極めて有益であり得る。また、イメージャが高分解能であるほど撮像対象のさらに詳細な特徴を得ることができ、患者の診断を助けることができる。従って、高出力及び高分解能の両方を提供するX線管が、低出力低分解能の代替品よりも望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、X線管の出力が高まるとX線管のアノードの温度が上昇し、この温度上昇のため、損傷が起こる前に緩和手法を利用して熱を低減しない限りX線管の破損を招き得る。アノードの発熱を低減する一つの方法は、X線管内でアノードを回転させて、アノードの表面に電子ビームが衝突することにより発生する熱をアノードの表面全体に拡散させるものである。アノードの局所的な発熱を低減することにより、さらに高いX線管出力を達成することができる。
【0004】
ディジタル検出器を用いるイメージング・システムの分解能を高める一般的な一つの方法は、オーバサンプリングによるものである。オーバサンプリングを達成するためには、静電的手段又は静磁気的手段を用いて、焦点スポットをアノードについて二つの連続したビューの間で移動させる。電子ビームが、焦点スポットの位置においてターゲット・アノードの方向に沿って又は反して偏向される場合に、この偏向をx揺動(wobble)又はx偏向と呼ぶ。+x方向への焦点スポット移動はターゲット表面移動の方向と一致し、−x方向への焦点スポット移動はターゲット表面移動の方向と反対である。
【0005】
図1は、焦点スポット偏向を利用した典型的なX線管の内部の構成要素の遠近図である。典型的には、高圧電源102がX線管のフィラメント106にフィラメント電圧104を供給し、フィラメント106を加熱して電子流108を放出させる。電子ビーム108は、正電荷を帯びたアノード110によってX線管を横断して吸引される。電子ビーム108は、アノード110のターゲット表面の焦点スポットと呼ばれる小面積に衝突する。ターゲット材料との相互作用によってX線ビームが生ずる。
【0006】
静電的手段を用いた電子ビームの操舵(ステアリング)は典型的には、幾つかの電極112、116、126、128を電子ビーム108に極く近接して配置することにより達成される。典型的には、電極112、116に電圧が印加されて電子ビーム108を成形して偏向させ、すると電子ビーム108はカソード106から発して、特定の電極に印加されるバイアスに依存してアノードの2以上の別個の位置120、122へ向かう。図1で、第一の電極112及び第二の電極116に特定のバイアス電位を印加すると、電子ビーム108がアノード110の別個の位置へ移動する。ビーム移動の大きさは、電極に印加されたバイアスの大きさに直接関係する。第一の電極112の第一のバイアス電圧114が第二の電極116の第二のバイアス電圧118よりも高い場合には、電子ビーム108は左又は−x方向に移動して第一の焦点スポット位置120に達する。代替的には、第二の電極116のバイアス電圧が第一の電極112のバイアス電圧よりも高い場合には、ビームは右又は+x方向に移動して、すなわち第二の焦点スポット位置122に達する。電極バイアス電圧の大きさ及び電子ビームに対する電極の位置によって焦点スポット位置が決まる。
【0007】
加えて、静磁気的手段を用いて、電子ビームの経路の近くに磁石を載置することにより電子ビームを操舵することもおできる。静磁気式焦点スポット制御を用いる場合には、電子ビームに対して磁石の強さ、極性及び位置を変化させるとアノードでの焦点スポットの位置が決まる。
【0008】
図2は、焦点スポット偏向を行なわない場合のアノードでの焦点スポットの特定の点の発熱及び冷却サイクルを示すグラフである。回転アノード管の特定の位置が電子ビーム衝突領域に入ると、この位置での衝突温度が急速に上昇し始める。このターゲット位置が回転して電子ビームの衝突領域から外れるか又は電子ビームがオフになった後に、この位置の熱が冷却し始めるにつれて局所温度は低下する。
【0009】
アノード発熱を低減するためにアノードを回転させると共に、分解能を高めるための焦点スポット偏向を併用すると、付加的な発熱サイクルを生成することが可能になる。電極112、116のバイアス電圧114、118を同時に切り替えることにより焦点スポットがアノード110の回転と同じ方向である+x方向に偏向される場合に、ターゲット表面と電子ビーム衝突域との間の相対速度が十分に小さくなるように移行時間、アノード回転数、偏向距離及びターゲット範囲を選択すれば図3に示す増大したアノード発熱を生ずることが可能である。電子ビームに衝突されるターゲットの領域は、図3の実線の間の面積によって特徴を表現される。移行時間tには実線の傾きは破線の傾きと等しい。このことは、ターゲット表面と電子ビーム衝突域との間の相対速度がゼロである場合に相当する。このことは、移行時間が数マイクロ秒程度であるような典型的な状況を表わす。異なる移行時間は、到達する最終アノード温度に影響を及ぼす。但し、1マイクロ秒よりも大幅に短い移行時間は、電圧切り替え回路の設計制限のため非現実的であり、また大幅に長い移行時間は、単位時間当たりの画像情報の損失のため適用の観点から望ましくない。
【0010】
アノード108の点302は、第一の位置120での焦点スポットの静止時間tS1と、移行時間tを介して第二の位置122での静止時間tS2との間に公称焦点スポット径124の衝突域内に留まる軌跡を有している。偏向が存在しない場合には、ターゲットの任意の点が電子ビーム下に留まる合計時間はtS1+tS2となる。衝突域がtS1にわたって第一の位置120において衝突されるのに伴いアノードの点302は発熱し、次いで点302は移行時間tの間にさらに加熱され、最後に点302は静止時間tS2に第二の位置122において発熱サイクル304にわたって加熱される。
【0011】
点302の移行時間tでの付加的な発熱サイクルは、電子ビームが担うことを許される最大出力を制限しており、衝突温度がX線管製造者によるX線管の最大定格衝突温度を下回るように利用者がX線管の出力を低下させることを余儀なくさせる。X線管の出力を減定格して最大許容動作温度を超えるのを防がなければ、アノード温度が製品の推奨最大限度を超えてアノードの損傷が発生し、X線管の破損に至る場合がある。
【0012】
上で述べた理由、及び本明細書を精読して理解すると当業者には明らかとなる以下に述べるその他の理由から、当業界では、アノード発熱に起因する動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本書では以上に述べた短所、欠点及び問題点を扱い、これらのことについては、以下の明細書を精読して検討することにより理解されよう。
【0014】
以下に記載する方法は、動的焦点スポット偏向を回転アノードと共に用いてX線管システムにおいてアノード温度を低下させるのに適している。移行時間に電子ビーム焦点スポットを操作することにより、アノード温度を低下させて、利用者がさらに高いX線管出力を達成することを可能にする。
【0015】
一観点では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法が記載され、この方法は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップと、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させる(focusing)ステップと、電子ビームをアノードにおいて脱焦させる(defocusing)ステップと、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップとを含んでいる。
【0016】
もう一つの観点では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法が記載され、この方法は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップと、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップと、電子ビームを少なくとも部分的に阻止するステップと、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップとを含んでいる。
【0017】
さらにもう一つの観点では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法が記載され、この方法は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップと、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップと、電子ビームをアノードの公称焦点スポット径から離隔するように操舵するステップと、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップとを含んでいる。
【0018】
様々な観点の装置、システム及び方法について本書で説明する。この概要に記載した観点及び利点に加えて、図面を参照して以下の詳細な説明を精読することによりさらに他の観点及び利点が明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の詳細な説明では、説明の一部を成す添付図面を参照し、図面では、実施可能な特定の実施形態が説明のために図示されている。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするように十分に詳細に記載されており、他の実施形態を利用することも可能であり、実施形態の範囲から逸脱せずに論理的変形、機械的変形、電気的変形及び他の変形を施してよいことを理解されたい。従って、以下の詳細な説明は、制限のためのものと解釈すべきではない。
〔方法の実施形態〕
図4は、一実施形態による動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法の流れ図である。方法400は、X線管出力を製造者による制限を下回るように低下させてオーバサンプリング時の過熱を防ぐという当技術分野における必要性を解決する。
【0020】
一実施形態では、方法400は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ402と、電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップ404と、電子ビームをアノードにおいて脱焦させるステップ406と、電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップ408とを含んでいる。
【0021】
図5に関して述べると、電子ビーム108が第一の位置120に合焦すると、衝突域は図示のように急速に発熱し始める。電子ビーム108を+x方向に第二の位置122まで偏向させる前に、電子ビーム108を脱焦させる。ビームが相対的に広い面積に拡散されるため、脱焦したビームの線束密度は減少する。線束密度が減少するのに伴い衝突温度が低下する。次いで、電子ビームはアノード110の第二の位置122に再合焦し、衝突温度が上昇し始めて二度目のピークに達するが、この移行の間に電子ビーム108を脱焦させたことにより得られる付加的な冷却のため、全発熱量は最小化される。
【0022】
一実施形態では、電子ビーム108は、バイアス電圧114を第一の電極112に印加し、第一のバイアス電圧114よりも小さい第二のバイアス電圧118を第二の電極116に印加することにより、アノード110の第一の焦点スポット位置120に合焦させられる。もう一つの実施形態では、電極112、116にバイアスを加える代わりに又はバイアスを加えるのと共に、磁石を電子ビーム108の極く近傍に載置して電子ビーム108をアノード110の第一の位置120に合焦させる。
【0023】
もう一つの実施形態では、電子ビーム108は、アノード110の第二の位置122への移行の前に、第二の電極116の第二のバイアス電圧118を上昇させることにより静電的手段を用いて脱焦させられる。第二のバイアス電圧118を第一のバイアス電圧114に近付くように上昇させると、電子ビーム108は移行域にわたって拡散し、これによりアノード110の移行域の任意の特定の点の線束密度及び最高温度を低減する。
【0024】
もう一つの実施形態では、電子ビーム108は、電子ビーム108の近くに磁場を印加することにより脱焦させられ、磁極が電子ビームを拡散させてアノード110の衝突域の任意の特定の点について線束密度を減少させる。
【0025】
もう一つの実施形態では、電子ビーム108は、第一の電極112の第一のバイアス電圧114を第二の電極116の第二のバイアス電圧118よりも低い電圧に低下させることにより、アノード110の第二の位置122に再合焦させられる。この電圧差が電子ビーム108を+x方向に移動させて、アノード110の公称焦点スポット径124に位置しているアノードの第二の位置122に合焦させる。もう一つの実施形態では、磁場を用いて電子ビーム108を+x方向に移動させて、第二の位置122に合焦させる。
【0026】
もう一つの実施形態では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ402と、次いで電子ビームをアノードの第一の位置120に合焦させるステップ404と、次いで電子ビームを少なくとも部分的に阻止するステップ602と、電子ビーム108をアノードの第二の位置122に再合焦させるステップ408とを含んでいる。
【0027】
もう一つの実施形態では、電子ビーム108は、アノード110の第一の位置120から第二の位置122への移行時に電子ビーム108を偏向させてアノード110の表面に電子ビーム108が衝突するのを防ぐのに十分に強い逆バイアスを少なくとも一つの電極112、116、126、128に印加することにより、阻止される。電子ビームがアノードに衝突することを防いでいるためアノードの温度は低下する。
【0028】
もう一つの実施形態では、電子ビーム108は、アノード110の第一の位置120から第二の位置122への移行時に電子ビーム108を抑制してアノード110の表面に電子ビーム108が衝突するのを少なくとも部分的に防ぐのに十分に強い逆バイアスを専用ビーム抑制電極(図示されていない)に印加することにより、阻止される。電子ビームの幾分か又は全てがアノードに衝突することを防いでいるためアノードの温度は低下する。
【0029】
もう一つの実施形態では、動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法は、回転アノードX線管において電子ビームを発生するステップ402と、次いで電子ビームをアノードの第一の位置に合焦させるステップ404と、次いで電子ビームをアノードの公称焦点スポット径から離隔するように操舵するステップ702と、次いで電子ビームをアノードの第二の位置に再合焦させるステップ408とを含んでいる。操舵は、静電的手段又は静磁気的手段を用いて達成することができる。典型的には、電子ビームは相対的に大きい焦点スポット径まで操舵され、衝突温度は焦点スポット径に反比例して低下する。次いで、ビームは+x方向に新たなx位置まで進められる。最後に、電子ビームを公称焦点スポット径まで半径方向に移動することにより、焦点スポットは第二の位置に再合焦させられる。
【0030】
さらにもう一つの実施形態では、電子ビーム108は、アノード110の第一の位置120及びアノード110の第二の位置122からの移行時に、1又は複数の電極112、116、126、128にバイアスを加えて電子ビーム108をアノード110の第一の位置120から偏向させ且つ/又は脱焦させることにより、公称焦点スポット域124から離隔するように操舵される。電子ビームは、ビーム衝突域がアノードの公称焦点スポット径124の外部に位置するように電極112、116を用いて+x方向若しくは−x方向に操舵することができ、又は電極126、128を用いて電子ビームをアノードの異なる径まで操舵してもよい。電子ビームは、様々な電極及びバイアスを用いて電子ビーム108を吸引して偏向させて、アノード108の実質的に任意の区域に操舵することができる。
【0031】
電子ビーム108がアノード110の公称焦点スポット径124の外部に移動した後に、衝突域の第一の位置120での温度は急速に低下する。ビームが+x方向に第二の位置122まで偏向され、オーバサンプリングのために第二の位置122に再合焦させられるのに伴って、アノード110は再び熱し始めるが公称焦点スポットにある任意のスポットの最高温度は低くなっている。
【0032】
さらにもう一つの実施形態では、電子ビームは磁場を用いて操舵される。
【0033】
図8は、様々な実施形態を実施することのできるハードウェア及び動作環境800のブロック図である。移行の間のビーム操舵、ビームの阻止又はビームの脱焦によって、電子ビーム108がアノード110の第二の位置112に再合焦するときの付加的な発熱サイクルが最小化される。第一の位置120から第二の位置122への移行時の電子ビームの精密操作を介して達成されるアノード温度の低下によって、X線管出力を製造者の最大定格以内に留まるように減定格する必要なしにさらに高い管出力の利用が可能となる。
【0034】
幾つかの実施形態では、方法400、600〜700は、図8のプロセッサ804のようなプロセッサによって実行されるとプロセッサにそれぞれの方法を実行させる一連の命令を表わす搬送波に実装されたコンピュータ・データ信号として具現化される。他の実施形態では、方法400、600〜700は、図8のプロセッサ804等のプロセッサにそれぞれの方法を実行するように指示することが可能な実行可能な命令を有するコンピュータによるアクセスが可能な媒体として具現化される。様々な実施形態において、媒体は磁気媒体、電子式媒体、又は光学式媒体である。
〔ハードウェア及び動作環境〕
図8は様々な実施形態を実施することのできるハードウェア及び動作環境800のブロック図である。図8の説明は、幾つかの実施形態を具現化し得る場合に共に用いられるコンピュータ・ハードウェア及び適当な計算環境の全体像を掲げている。コンピュータで実行可能な命令を実行するコンピュータに関して実施形態を説明する。しかしながら、幾つかの実施形態は、コンピュータで実行可能な命令が読み出し専用メモリに実装されているようなコンピュータ・ハードウェアで専ら具現化することができる。また、幾つかの実施形態は、タスクを実行する遠隔装置が通信網を介して連結されているようなクライアント/サーバ型計算環境において具現化することができる。プログラム・モジュールは、分散型計算環境ではローカルのメモリ記憶装置及び遠隔のメモリ記憶装置の両方に位置していてよい。
【0035】
コンピュータ802は、Intel社、Motorola社、Cyrix社その他から市販されているプロセッサ804を含んでいる。コンピュータ802はまた、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)806、読み出し専用メモリ(ROM)808、1又は複数の大容量記憶装置810、及び様々なシステム構成要素を処理ユニット804に結合して動作させるシステム・バス812を含んでいる。メモリ806、808、及び大容量記憶装置810は、コンピュータによるアクセスが可能な媒体の形式である。大容量記憶装置810はさらに明確に述べると、コンピュータによるアクセスが可能な不揮発性の媒体の形式であり、1又は複数のハード・ディスク・ドライブ、フレキシブル・ディスク・ドライブ、光ディスク・ドライブ、及びテープ・カートリッジ・ドライブを含み得る。プロセッサ804は、コンピュータによるアクセスが可能な媒体に記憶されているコンピュータ・プログラムを実行する。
【0036】
コンピュータ802は、通信装置816を介してインターネット814に接続されて通信することができる。インターネット814への接続性については当技術分野では周知である。一実施形態では、通信装置816は、当技術分野で「ダイヤル・アップ接続」として公知のものを介してインターネットに接続する通信ドライバに応答するモデムである。もう一つの実施形態では、通信装置816は、閉域網(LAN)に接続されているEthernet(商標)又は類似のハードウェア・ネットワーク・カードであり、LAN自体は当技術分野で「直接接続」(例えばT1回線等)として公知のものを介してインターネットに接続される。
【0037】
利用者は、キーボード818又はポインティング・デバイス820のような入力装置を介してコンピュータ802に命令及び情報を入力する。キーボード818は、当技術分野で公知のようにコンピュータ802へのテキスト情報の入力を可能にし、実施形態は如何なる特定の形式のキーボードにも限定されない。ポインティング・デバイス820は、Microsoft Windows(商標)の各バージョンのようなオペレーティング・システムのグラフィック・ユーザ・インタフェイス(GUI)によって提供される画面ポインタの制御を可能にする。実施形態は、如何なる特定のポインティング・デバイス820にも限定されない。かかるポインティング・デバイスとしては、マウス、指触パッド、トラックボール、遠隔制御及びポイント・スティック等がある。他の入力装置(図示されていない)としては、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲーム・パッド、衛星放送用パラボラ・アンテナ又はスキャナ等がある。
【0038】
幾つかの実施形態では、コンピュータ802は表示装置822に結合されて動作する。表示装置822はシステム・バス812に接続されている。表示装置822は、コンピュータの利用者による観察に供するためにコンピュータ情報、ビデオ情報及び他の情報を含めた情報の表示を可能にする。実施形態は如何なる特定の表示装置822にも限定されない。かかる表示装置としては、陰極線管(CRT)表示器(モニタ)、及び液晶表示器(LCD)のようなフラット・パネル表示器等がある。モニタに加えて、コンピュータは典型的には、プリンタのような他の周辺入出力装置(図示されていない)を含んでいる。スピーカ824及び826が、信号の音響出力を提供する。スピーカ824及び826もシステム・バス812に接続されている。
【0039】
コンピュータ802はまた、コンピュータによるアクセスが可能な媒体であるRAM806、ROM808及び大容量記憶装置810に記憶されてプロセッサ804によって実行されるオペレーティング・システム(図示されていない)を含んでいる。オペレーティング・システムの例としては、Microsoft Windows(商標)、Apple MacOS(商標)、Linux(商標)、UNIX(商標)等がある。但し、実施例は如何なる特定のオペレーティング・システムにも限定されず、またかかるオペレーティング・システムの構築及び用法は当技術分野で周知である。
【0040】
コンピュータ802の実施形態は、如何なる形式のコンピュータ802にも限定されない。様々な実施形態において、コンピュータ802は、PC互換コンピュータ、MacOS(商標)互換コンピュータ、Linux(商標)互換コンピュータ、又はUNIX(商標)互換コンピュータを含む。かかるコンピュータの構築及び動作は当技術分野で周知である。
【0041】
コンピュータ802は、利用者による制御が可能なポインタを含むグラフィック・ユーザ・インタフェイス(GUI)を提供する少なくとも一つのオペレーティング・システムを用いて動作させることができる。コンピュータ802は、少なくとも一つのオペレーティング・システムの内部で走行する少なくとも一つのウェブ・ブラウザ・アプリケーション・プログラムを有することができ、コンピュータ802の利用者が構内網、又はユニバーサル・リソース・ロケータ(URL)のアドレスによって指定されるようなインターネットのワールド・ワイド・ウェブ・ページにアクセスすることを可能にする。ブラウザ・アプリケーション・プログラムの実例としては、Netscape Navigator(商標)及びMicrosoft Internet Explorer(商標)等がある。
【0042】
コンピュータ802は、遠隔のコンピュータ828のような1又は複数の遠隔のコンピュータに対する論理的な接続を用いたネットワーク化された環境で動作することができる。これらの論理的接続は、コンピュータ802に結合されている通信装置又はコンピュータ802の一部によって達成される。実施形態は、特定の形式の通信装置に限定されない。遠隔のコンピュータ828は、もう1台のコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、クライアント、ピア装置又は他の共通ネットワーク・ノードであってよい。図8に示す論理的接続は、閉域網(LAN)830及び広域網(WAN)832を含んでいる。かかる網構築環境は、オフィス、企業内コンピュータ網、構内網及びインターネットとして広く普及している。
【0043】
LAN型網構築環境で用いる場合には、コンピュータ802及び遠隔のコンピュータ828は、通信装置816の一形式であるネットワーク・インタフェイス又はアダプタ834を介して閉域網830に接続される。遠隔のコンピュータ828もまた、ネットワーク装置836を含んでいる。従来のWAN型網構築環境で用いる場合には、コンピュータ802及び遠隔のコンピュータ828は、モデム(図示されていない)を介してWAN832と通信する。モデムは内部モデムであっても外部モデムであってもよく、システム・バス812に接続される。ネットワーク化された環境では、コンピュータ802に対して図示されているプログラム・モジュール又はプログラム・モジュールの各部分を遠隔のコンピュータ828に記憶させることもできる。
【0044】
コンピュータ802はまた、電源838を含んでいる。各々の電源はバッテリであってよい。
〔結論〕
動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法について説明した。本書では特定の実施形態を図示して説明したが、当業者は、同じ目的を達成するために考案された任意の構成を図示の特定の実施形態に代えて置換し得ることを認められよう。本出願は、あらゆる適応構成又は変形を網羅するものとする。例えば、CTシステムにおいて用いられるX線管に関するものとして説明したが、当業者には、X線発生が望まれるような任意の用法又は所要の作用を提供する他の任意のX線システムにおいて具現化形態を形成し得ることが認められよう。
【0045】
具体的には、当業者は、方法及び装置の名称が実施形態を限定するものではないことを容易に認められよう。さらに、実施形態の範囲から逸脱せずに、付加的な方法及び装置を各構成要素に追加したり、構成要素間で作用を再構成したり、将来の機能拡張や実施形態で用いられている物理的装置に対応する新たな構成要素を導入したりすることができる。当業者は、各実施形態が電子ビームを発生する様々な態様に応用可能であることを容易に認められよう。また、電子ビームの発生は加熱されたフィラメントから電子を放出させるものとして説明したが、任意の形態の電子銃を置換することが可能であり、所要の作用を依然として提供することができる。また、四つの電極を備えたX線管について説明したが、本方法は少なくとも二つの電極で実施することができる。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】焦点スポット偏向を利用した典型的なX線管の内部の構成要素の遠近図である。
【図2】焦点スポット偏向を行なわない場合のアノードの焦点スポットの特定の点についての発熱及び冷却サイクルを示すグラフである。
【図3】動的焦点スポット偏向を行なった場合のX線管の回転アノードの特定の点についての発熱及び冷却サイクルを示すグラフであって、ターゲット表面と電子ビーム衝突域との間の相対速度がゼロとなるように移行時間、アノード回転数、偏向距離及びターゲット径が選択されている場合のグラフである。
【図4】一実施形態による動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法の流れ図である。
【図5】動的焦点スポット偏向を行なった場合の回転アノードX線管の特定の点についての発熱及び冷却サイクルを示すグラフであって、ビーム操作を用いてアノード発熱を低減し、ターゲット表面と電子ビーム衝突域との間の相対速度がゼロとなるように移行時間、アノード回転数、偏向距離及びターゲット径が選択されている場合のグラフである。
【図6】一実施形態による動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法の流れ図である。
【図7】一実施形態による動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法の流れ図である。
【図8】様々な実施形態を実施することのできるハードウェア及び動作環境のブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
102 高圧電源
104 フィラメント電圧
106 フィラメント
108 電子ビーム
110 アノード
112、116 電極
114、118 バイアス電圧
120 第一の焦点スポット位置
122 第二の焦点スポット位置
124 公称焦点径
126、128 電極
130、132 バイアス電圧
302 アノードの点
304 発熱サイクル
400、600、700 動的焦点スポット偏向時のX線管出力の減定格を少なくする方法
402 電子ビームを発生するステップ
404 電子ビームを合焦させるステップ
406 電子ビームを脱焦させるステップ
408 電子ビームを再合焦させるステップ
602 電子ビームを阻止するステップ
702 電子ビームを操舵するステップ
800 ハードウェア及び動作環境
802 コンピュータ
804 CPU
806 RAM
808 ROM
810 大容量記憶装置
812 システム・バス
814 インターネット
816 通信装置
818 キーボード
820 ポインティング・デバイス
822 表示器
824、826 スピーカ
828 遠隔のコンピュータ
830 LAN
832 WAN
834、836 NIC
838 電源
【出願人】 【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【出願日】 平成19年8月10日(2007.8.10)
【代理人】 【識別番号】100093908
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 研一

【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博

【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久

【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志


【公開番号】 特開2008−43762(P2008−43762A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2007−208753(P2007−208753)