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【発明の名称】 X線CT装置
【発明者】 【氏名】大島 規志

【要約】 【課題】本スキャン開始のタイミングが与えられた時点から、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減させることが可能なX線CT装置を提供する。

【構成】X線CT装置は、プレップスキャンを実行することで得られた監視用画像上に設定された関心領域(ROI)内のCT値の変位に基づいて、本スキャンを開始するタイミングを計る。プレップスキャン時においては、寝台31を助走距離分ずらして配置し、X線コリメータ13のスリットの位置を、寝台31をずらした方向にずらして配置する。本スキャン時は、寝台31を、助走距離分ずらした位置から移動させて、ヘリカルスキャンを実行する。これにより、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点から、本スキャン開始までに要する時間を削減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、
前記X線源から曝射されたX線ビームを被検体に案内する所定幅のスリットが設けられたX線コリメータと、
前記被検体を載置する寝台と、
前記X線源と対向配置されたX線検出器と、
ヘリカルスキャンを行なうために前記X線検出器と前記被検体との位置関係を変える駆動機構と、
造影剤が投与された被検体に対して関心領域内のCT値を取得するプレップスキャンを実行し、前記CT値の変化に基づいて、本スキャンの開始タイミングを判定するスキャン制御手段と、
を有し、
前記スキャン制御手段は、
前記プレップスキャン実行時におけるX線検出器の位置が、前記本スキャンの開始位置から助走距離分離れるように前記駆動機構を制御し、かつ、プレップスキャン位置にX線ビームが曝射されるように前記X線コリメータの位置を制御することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
X線源と、
前記X線源から曝射されたX線ビームを被検体に案内する所定幅のスリットが設けられたX線コリメータと、
前記被検体を載置する寝台と、
前記X線源と対向配置されたX線検出器と、
ヘリカルスキャンを行なうために前記X線検出器と前記被検体との位置関係を変える駆動機構と、
造影剤が投与された被検体に対して関心領域内のCT値を取得するプレップスキャンを実行し、前記CT値の変化に基づいて、本スキャンの開始タイミングを判定するスキャン制御手段と、
を有し、
前記スキャン制御手段は、
前記プレップスキャンから前記本スキャンに移行する際の前記駆動機構による移動距離が短くなるように、前記X線コリメータのスリットの開口部を片側に寄せるように前記X線コリメータの位置を制御することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
前記本スキャン実行時には、前記スキャン制御手段は、前記X線源と前記X線検出器とを結ぶ軸を中心軸として、幅が対称となるように前記X線コリメータのスリットを配置することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明はX線CT装置に関し、特に、造影検査などの撮影において、所定のタイミングでスキャンすることで、造影材の陰影を含んだ画像を再構成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる造影検査において、点滴又は血管注射によって被検体の血管内に注入された造影剤は血流に乗って体内を移動し、目的臓器に達する。造影剤が浸透する際の造影効果の有無もしくは程度の違いの観察、造影部位の形状の観察などにより、病変又は臓器の異常を発見することが可能になる。しかしながら、造影剤は流動性を有しており、血流に乗って迅速に移動して拡散するので、経過時間とともに目的臓器から流れ去ってしまう。このため、造影剤の濃度が減少し、造影効果が減少するという欠点がある。また、造影剤が目的の臓器に到達するまでの所要時間や造影効果の程度には個人差がある。
【0003】
X線CT装置の造影剤撮影では、造影剤注入後に造影剤が目的臓器に流入しているタイミングを計ってスキャン(以下、「本スキャン」と称する場合がある)を開始することで撮影し、画像データを取得することが重要である。そのため、従来においては、次のような手法が採られている。
【0004】
すなわち、本スキャンの前に、造影剤が注入された被検体の関心領域の造影剤濃度の変化を観察するためのスキャン(以下、「プレップスキャン」又は「準備スキャン」と称する場合がある)を実行する。このプレップスキャン(準備スキャン)は、被検体のX線投影データを収集しながら同時に画像再構成を行い、スキャンを行ないながら画像を表示するスキャン方法である。そして、このプレップスキャンにより得られた画像に基づいて、関心領域の造影剤の濃度を判断し、造影剤濃度がある程度高くなった時点で、プレップスキャンを中止して本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始することが行われている。関心領域の造影剤濃度は、撮影技師が判断する場合のほか、画像処理により自動的に判断することも行われている。
【0005】
また、造影剤濃度を自動的に判断する場合に、撮影技師などにより指定された関心領域内についてのCT値に基づいて造影剤濃度を判断することも行われている。さらには、自動的に判断した造影剤濃度が閾値以上になると、自動的に本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始する機能も実現されている。
【0006】
被検体に造影剤を注入した直後においては、関心領域には造影剤は流入しないため、関心領域内におけるCT値は低い。さらに時間が経過すると、造影剤が関心領域に流入してCT値が変化(増加)する。この関心領域のCT値が所定の閾値を超えると、目的臓器にも造影剤が流入していると考えられ、この時点で本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始するタイミング信号を発生するようにしている。これにより、自動的に本スキャンが開始され、造影剤が目的臓器に流入した時期に撮影を開始することが可能となる。
【0007】
ここで、プレップスキャンから本スキャン開始までに行われる、従来技術(例えば特許文献1)に係るX線CT装置の制御について図6を参照して説明する。図6は、従来技術に係るX線CT装置の制御を説明するための図である。
【0008】
図6(a)に示すように、寝台31に被検体Pを載置する。図中、撮影領域Sは、本スキャン(ヘリカルスキャン)によって撮影を行う領域である。また、プレップスキャン撮影位置Tは、プレップスキャンによって撮影を行って、造影剤の濃度の変化を観察する位置である。図6に示す例では、撮影領域Sの端部をプレップスキャン撮影位置Tとしている。
【0009】
まず、プレップスキャンを行なう場合、図6(a)に示すように、寝台31に被検体Pを載置し、プレップスキャン撮影位置TにX線ビームが曝射されるように、寝台31を移動させる。その状態でX線管球12からX線ビームを曝射する。X線管球12から曝射されたX線ビームは、所定幅のスリット(開口部)が設けられたX線コリメータ13によって、被検体Pのプレップスキャン撮影位置Tに案内される。そして、被検体を透過したX線ビームはX線検出器14によって検出される。
【0010】
そして、造影剤を被検体Pに注入し、プレップスキャンを行なうことで、プレップスキャン撮影位置Tにおける断層像画像を取得し、関心領域内の造影剤の濃度(CT値)の変化を監視する。そして、関心領域内のCT値が閾値以上になると、本スキャン(ヘリカルスキャン)の開始を示すタイミング信号を発生するようになっている。
【0011】
ヘリカルスキャンを行なう場合、寝台31の移動速度が一定になってからX線投影データを収集する必要がある。そのため、本スキャン開始のタイミング信号が発生すると、本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始するために、図6(b)に示すように、図示しない制御部の制御の下、寝台31を助走距離Lだけ、撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させる。この助走距離Lは、ヘリカルスキャンを実行するために寝台31を加速して、寝台31の移動速度を一定にするための距離である。
【0012】
寝台31を助走距離Lだけ移動させた後、制御部の制御の下、寝台31を折り返し、撮影方向X(スライス方向)に加速しながら移動させ、撮影領域Sから本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始し、撮影領域S内の画像データを取得する。
【0013】
【特許文献1】特開平10−127621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、従来技術に係るX線CT装置によると、本スキャン開始を示すタイミング信号が与えられた時点から本スキャンが開始されるまでの間に、寝台31を助走距離Lだけ、撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させ、その後、寝台31を撮影方向Xに加速しながら移動させ、撮影領域Sを撮影することになる。
【0015】
しかしながら、上記のようにX線管球12の曝射や寝台31の移動を制御すると、助走距離Lだけ寝台31を撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させるための時間が必要になる。その結果、その時間分、撮影領域Sをスキャンする本スキャン開始のタイミングが与えられた時点から、実際に本スキャンが開始されるまでの間に、ずれが生じるという問題がある。そのため、本スキャンの開始が遅れてしまい、造影撮影のタイミングが遅れてしまう問題がある。
【0016】
この発明は上記の問題を解決するものであり、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点から、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、X線源と、前記X線源から曝射されたX線ビームを被検体に案内する所定幅のスリットが設けられたX線コリメータと、前記被検体を載置する寝台と、前記X線源と対向配置されたX線検出器と、ヘリカルスキャンを行なうために前記X線検出器と前記被検体との位置関係を変える駆動機構と、造影剤が投与された被検体に対して関心領域内のCT値を取得するプレップスキャンを実行し、前記CT値の変化に基づいて、本スキャンの開始タイミングを判定するスキャン制御手段と、を有し、前記スキャン制御手段は、前記プレップスキャン実行時におけるX線検出器の位置が、前記本スキャンの開始位置から助走距離分離れるように前記駆動機構を制御し、かつ、プレップスキャン位置にX線ビームが曝射されるように前記X線コリメータの位置を制御することを特徴とするX線CT装置である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、X線源と、前記X線源から曝射されたX線ビームを被検体に案内する所定幅のスリットが設けられたX線コリメータと、前記被検体を載置する寝台と、前記X線源と対向配置されたX線検出器と、ヘリカルスキャンを行なうために前記X線検出器と前記被検体との位置関係を変える駆動機構と、造影剤が投与された被検体に対して関心領域内のCT値を取得するプレップスキャンを実行し、前記CT値の変化に基づいて、本スキャンの開始タイミングを判定するスキャン制御手段と、を有し、前記スキャン制御手段は、前記プレップスキャンから前記本スキャンに移行する際の前記駆動機構による移動距離が短くなるように、前記X線コリメータのスリットの開口部を片側に寄せるように前記X線コリメータの位置を制御することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、プレップスキャン実行時におけるX線検出器の位置が、本スキャンの開始位置から助走距離分離れるように駆動機構を制御し、かつ、プレップスキャン位置にX線ビームが曝射されるようにX線コリメータの位置を制御することで、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点で、寝台を助走距離分ずらす必要がないため、その分、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施形態に係るX線CT装置の構成について図1から図3を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示すブロック図である。図2及び図3は、この発明の実施形態に係るX線コリメータの設置位置を示す図である。まず、図1を参照して第1の実施形態に係るX線CT装置の全体の構成を説明し、次に、図2及び図3を参照してX線コリメータの設置位置について説明する。
【0021】
この実施形態に係るX線CT装置は、プレップスキャンを実行することで得られた監視用画像上に設定された関心領域(ROI)内のCT値の変位に基づいて、本スキャンを開始するタイミングを計る。そして、この実施形態に係るX線CT装置は、所定幅のスリットが形成されたX線コリメータの配置位置と、寝台の配置位置の制御に特徴がある。プレップスキャン時においては、寝台を助走距離分ずらして配置しておく。さらに、プレップスキャン時と本スキャン時とで、X線コリメータのスリット(開口部)の配置位置を変えることで、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点から、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することができる。以下、この実施形態に係るX線CT装置の各部について説明する。
【0022】
第1の実施形態に係るX線CT装置は、架台装置1、コンソール部2、及び寝台装置3を備えて構成されている。架台装置1は、X線管球及びX線検出器を格納した回転架台(ガントリ)を備え、被検体に関するX線投影データを収集する。そのX線投影データはコンソール部2に出力され、画像再構成処理などの処理に供される。また、寝台装置3は、被検体を載置するための寝台31を備えている。
【0023】
架台装置1には、X線管球12と、そのX線管球12と対になるX線検出部14が設けられている。X線検出器14は、検出素子を互いに直交する2方向(スライス方向(体軸方向)とチャンネル方向(円周方向))それぞれにアレイ状に複数子配列し、これにより2次元のX線検出器を構成している。このようなX線検出器14を用い、1回のスキャンで複数スライスのX線投影データを同時に収集するようなスキャン方法を、「マルチスライススキャン」と称する。
【0024】
また、高電圧発生部11は、スキャン制御部21からの制御信号に従って、X線を照射させるための高電圧をX線管球12に供給する。
【0025】
X線検出器14にはデータ収集部(DAS)15が設けられている。データ収集部15は、X線検出器14の各検出素子と同様にアレイ状に配列されたデータ収集素子を有し、X線検出器14により検出されたX線(検出信号)を、スキャン制御部21から出力されたデータ収集制御信号に対応させて収集する。この収集されたデータがX線投影データとなる。そして、データ収集部15は、X線検出器14の各チャンネルの電流信号を電圧に変換し、増幅し、デジタル信号に変換する。
【0026】
そして、X線管球12から曝射されたX線ビームは、所定幅のスリット(開口部)が設けられたX線コリメータ13を介して被検体に照射される。そして、被検体を透過したX線ビームはX線検出器14で検出され、その検出信号はデータ収集部15で増幅され、デジタル信号に変換されてX線投影データとして収集される。X線管球12、X線コリメータ13、X線検出器14、及びデータ収集部15は、回転架台(図示しない)に一体的に固定されている。
【0027】
架台駆動部4は、スキャン制御部21から出力された架台制御信号に基づいて、回転架台(図示しない)を回転させる。これにより、回転架台は回転中心を中心として回転させられる。
【0028】
前処理部22は、データ収集部15で検出されたデータに対して、感度補正やX線強度補正などを施す。前処理部22にて感度補正などの処理が施されたX線投影データは、再構成処理部23に出力される。
【0029】
再構成処理部23は、前処理部22にて補正処理が施されたX線投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。これにより、被検体の断層像データが生成される。再構成処理部23から出力された画像データは、画像記憶部24にて一時的に保持される。また、X線投影データに対して補間処理を行う場合は、360度補間法又は180度補間法(対向データ補間法)などの公知の補間法により、目的のスライス位置におけるX線投影データを求める。
【0030】
画像処理部25は、入力装置(図示しない)にて入力された操作者の指示に従って、画像データに対して様々な画像処理を施す。画像処理部25は、例えば、ボリュームレンダリング処理やMPR処理などを施して3次元画像データやMPR画像データ(任意断面の画像データ)を生成して表示制御部26に出力する。表示制御部26は、画像処理部25から出力された画像データに基づく画像を、液晶ディスプレイやCRTなどの表示部27に表示させる。
【0031】
スキャン制御部21は、スキャンに際して、回転架台を一定の速度で安定的に回転させるために架台制御部4に回転制御信号を供給する。また、スキャン制御部21は、X線発生を制御するX線発生制御信号を高電圧発生部11に出力し、X線の検出のタイミングを示す検出制御信号をデータ収集部15に出力する。
【0032】
寝台31は、被検体を載置するための寝台天板と、寝台天板を支持する寝台基台とを備えている。寝台天板は、寝台駆動部32により被検体の体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。寝台基台は、寝台駆動部32により寝台天板を上下方向に移動させることが可能となっている。なお、この実施形態では、寝台駆動部32がこの発明の「駆動機構」に相当する。
【0033】
また、入力装置(図示しない)は、操作者が例えば本スキャン条件やプレップスキャン条件(準備スキャン条件)などの様々な情報や各種の指示を入力するために設けられている。
【0034】
以上のように構成されたX線CT装置は、スキャン制御部21の制御の下で、回転架台を回転させながらX線投影データを収集する。そして、この実施形態に係るX線CT装置は、プレップスキャンを実行することで本スキャンを開始するタイミングを計り、適切なタイミングで本スキャンを実行する。
【0035】
なお、プレップスキャンに先だって、撮影スライスの位置決めや、プレップスキャン条件(管電圧、管電流、スキャン時間、ヘリカルピッチなど)、本スキャン条件(ヘリカルスキャン条件)、CT値の閾値の設定が行われる。これらの条件は、図示しない記憶部に記憶される。これらの条件は、図示しない入力装置を用いて操作者によって入力される。本スキャン条件(ヘリカルスキャン条件)には、管電圧、管電流、スキャン時間、ヘリカルピッチ、被検体に対して断層像を得たい撮影領域の範囲を示す情報などが含まれる。
【0036】
(プレップスキャン)
プレップスキャン(準備スキャン)を実行する場合、スキャン制御部21の制御の下、プレップスキャン条件に従って、プレップスキャンが行なわれる。つまり、位置決めされたスライスに関してX線管球12及びX線検出器14が被検体の周囲を連続的に回転しながら、プレップスキャン条件に従ってX線管球12からX線が発生され、データ収集が繰り返される。
【0037】
ここで、プレップスキャン時における寝台31とX線コリメータ13の配置位置について図2を参照して説明する。図2(a)には、プレップスキャン実行時における寝台31とX線コリメータ13の配置位置を示している。なお、X線コリメータ13のスリット(開口部)は、X線ビームを曝射するX線管球12の焦点を含むX線パスを中心軸Oとして、左右非対称に運動可能なように構成されている。プレップスキャンを実行する場合、X線検出器14の撮影方向X(スライス方向)における中心を通る中心軸Oから、寝台31の助走距離L分、寝台31を撮影方向Xとの逆の方向に配置する。この助走距離Lは、ヘリカルスキャンを実行するために寝台31を加速して、寝台31の移動速度を一定にするための距離である。
【0038】
そして、スキャン制御部21の制御の下、所定幅のスリット(開口部)が形成されたX線コリメータ13のスリットの位置を変えることで、スリットを、寝台31をずらした方向(撮影方向Xの逆方向)に配置する。図2(a)に示す例では、X線コリメータ13のスリットを矢印Y1の方向に移動させる。この移動量は、寝台31の助走距離Lに相当する。
【0039】
X線コリメータ13のスリット(開口部)の位置を矢印Y1の方向に移動させたことにより、X線管球12から曝射されたX線ビームは、X線コリメータ13のスリットを通って被検体Pのプレップスキャン撮影位置Tに照射される。これにより、プレップスキャン撮影位置Tの断層像画像が得られる。
【0040】
なお、プレップスキャン撮影位置Tは、操作者によって指定される位置である。この実施形態では、プレップスキャン撮影位置Tは、本スキャンが行われる撮影領域Sの端部に設定されているが、本スキャンが行なわれる領域とは異なる位置に設定してもよい。
【0041】
このように、プレップスキャン時において寝台31の位置をずらし、X線コリメータ13のスリット(開口部)の配置位置をずらしておくことで、本スキャンのタイミング信号が与えられると、そのタイミングで、寝台31を加速することができるため、本スキャンのタイミング信号が与えられた時点から、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することができる。
【0042】
ただし、プレップスキャン時において、撮影方向X(スライス方向)の逆方向に予め寝台31を移動させておくことが可能な距離には限界がある。この移動可能な距離について、図2(b)を参照して説明する。
【0043】
撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させることが可能な距離は、X線検出器14の撮影方向X(スライス方向)における幅と、X線管球12とX線検出器14との間の距離に依存する。
【0044】
例えば、被検体Pが、X線管球12とX線検出器14との中間に載置されている場合、予め移動可能な距離は、以下の式で表される。
予め移動可能な距離=幅A÷(A/2)÷(B/2)=4/B
但し、
幅A:X線検出器14の撮影方向X(スライス方向)における幅
幅(A/2):X線検出器14の半分の幅
距離B:X線管球12とX線検出器14との間の距離
距離(B/2):X線管球12とX線検出器14との中心位置から、X線管球12又はX線検出器14までの距離
【0045】
なお、本スキャン(ヘリカルスキャン)を行うことで、撮影領域Sの端部であるプレップスキャン撮影位置Tから断層像画像データを生成する場合は、そのプレップスキャン撮影位置Tにおける断層像画像データを再構成するために必要なX線投影データを取得するための距離αだけ余分に、寝台31を撮影方向Xの逆方向に移動させる。例えば、360度補間法や180度補間法によって、プレップスキャン撮影位置Tの断層像画像データを生成する場合は、その補間に必要なX線投影データを取得するための距離だけ余分に、寝台31を撮影方向Xの逆方向に移動させる。
【0046】
そして、プレップスキャンと並行して、スキャン制御部21は、再構成処理部23を制御して、プレップスキャンにより得られたX線投影データから断層像画像データ(以下、「監視用画像データ」と称する場合がある)を再構成させる。スキャン制御部21は、このプレップスキャンによって得られた監視用画像を表示部27に表示させる。
【0047】
そして、スキャン制御部21は、プレップスキャンを実行することで得られた監視用画像データから、事前に設定された監視用ROI内の複数画素のCT値を抽出する。例えば、スキャン制御部21は、監視用ROI内の複数画素のCT値の和を求めたり、その平均値を求めたりする。スキャン制御部21は、この監視用ROI内のCT値の変化に基づいて、本スキャンを開始するタイミングを求める。
【0048】
そして、スキャン制御部21は、プレップスキャンに先だって設定されたCT値の閾値と、監視用ROI内のCT値とを比較し、監視用ROI内のCT値が閾値以上となったか否かを判断する。
【0049】
監視用ROI内のCT値が閾値以上になった場合、造影剤が目的臓器内に流入してきたと考えられるため、スキャン制御部21は、プレップスキャンを中止し、本スキャン条件に従って本スキャンを実行する。
【0050】
一方、監視用ROI内のCT値が閾値未満の場合は、スキャン制御部21は、プレップスキャンを継続して実行する。そして、監視用ROI内のCT値が閾値以上になったと判断するまで、スキャン制御部21はプレップスキャンを継続して実行する。
【0051】
(本スキャン(ヘリカルスキャン))
ヘリカルスキャンによりスキャンを行なう場合、スキャン制御部21は、図示しない入力装置を用いて入力されたスライス厚、回転速度等のヘリカルスキャン条件のうち、回転速度、スライス厚、及びファン角度等を架台・寝台制御信号として架台駆動部4及び寝台駆動部32に対して出力する。また、スキャン制御部21は、X線ビーム発生を制御するX線ビーム発生制御信号を高電圧発生部11に対して出力する。さらに、スキャン制御部21は、X線ビームの検出のタイミングを示す検出制御信号をデータ収集部15に対して出力する。
【0052】
ここで、本スキャン時(ヘリカルスキャン時)におけるX線コリメータ13の配置位置について図3を参照して説明する。例えば、図3(a)に示すように、本スキャンを実行する場合、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリットを撮影方向X(スライス方向)と同じ方向(矢印Y2の方向)に移動させ、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置する。つまり、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリットを片側に寄せて、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置する。
【0053】
また、図3(b)に示すように、X線コリメータ13のスリット(開口部)の幅を広げて、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置してもよい。
【0054】
そして、寝台駆動部32は、スキャン制御部21から出力された寝台移動信号に基づいて、図示しない回転架台の1回転当たりの寝台31の移動量を求め、この移動量で寝台31を移動させる。そして、X線ビーム発生制御信号に対応させて、高電圧発生部11は高電圧を発生する。これにより、X線管球12からX線ビームが曝射されるとともに、寝台31が寝台駆動部32により移動させられ、X線管球12の被検体に対する相対的な軌跡が螺旋状となるような所謂ヘリカルスキャンにより撮像が開始される。そして、データ収集制御信号がスキャン制御部21により出力されると、データ収集部15は、このデータ収集制御信号に対応させてX線検出器14からX線ビームを検出し、この検出したX線ビーム(実際にはX線投影データ)を前処理部22に供給する。
【0055】
なお、寝台31を移動させてヘリカルスキャンを行なう他、X線管球12やX線検出器14などを備えた回転架台(図示しない)を被検体の体軸方向(スライス方向)に移動させることで、ヘリカルスキャンを実行してもよい。
【0056】
スキャン制御部21は、CPUなどの信号処理装置と、ROM、RAMなどの記憶装置とを備えて構成し、その記憶装置に記憶されている制御プログラムをCPUが実行することで、X線CT装置の動作を制御する。
【0057】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作について、図4を参照して説明する。図4は、この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0058】
(ステップS01)
まず、プレップスキャンを実行するために、スキャン制御部21の制御の下、寝台31を助走距離L分、撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させる。この助走距離Lは、上記式で表される移動可能な距離の制限を受ける。また、この実施形態では、図2(a)に示すように、撮影領域Sの端部(プレップスキャン撮影位置T)をプレップスキャンによって撮影する位置とする。
【0059】
(ステップS02)
次に、寝台31の移動に対応させて、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリット(開口部)を撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に配置する。例えば、図2(a)に示すように、X線コリメータ13のスリットを矢印Y1の方向(撮影方向Xとは逆の方向)に移動させる。X線コリメータ13のスリットの位置を移動させる距離は、寝台31の移動距離に相当する。
【0060】
(ステップS03)
次に、スキャン制御部21の制御の下、プレップスキャン条件に従って、プレップスキャンを実行する。X線コリメータ13のスリットは、図2(a)に示すように、寝台31が移動させられた方向(矢印Y1の方向)にずらされて配置しているため、X線管球12から曝射されたX線ビームは、そのずらされた位置に配置されたX線コリメータ13のスリットを通過して、被検体Pのプレップスキャン撮影位置Tに照射される。そして、被検体Pを透過したX線ビームはX線検出器14によって検出される。
【0061】
そして、プレップスキャンと並行して、スキャン制御部21は、再構成処理部23を制御して、プレップスキャンにより得られたX線投影データから監視用画像データを再構成させる。
【0062】
(ステップS04)
そして、スキャン制御部21は、プレップスキャンにより得られた監視用画像を表示部27に表示させる。
【0063】
(ステップS05)
そして、スキャン制御部21は、監視用画像に設定された監視用ROI内のCT値を監視する。
【0064】
(ステップS06、ステップS07)
そして、スキャン制御部21が、監視用ROI内のCT値が閾値以上になったと判断した場合(ステップS06、Yes)、スキャン制御部21は、プレップスキャンを終了する(ステップS07)。
【0065】
(ステップS08)
そして、本スキャン(ヘリカルスキャン)を実行するために、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリット(開口部)を撮影方向X(スライス方向)と同じ方向に移動させる。例えば、図3(a)に示すように、X線コリメータ13のスリットを矢印Y2の方向(撮影方向Xと同じ方向)に移動させ、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置する。つまり、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリットを片側に寄せて、中心軸Oを軸として対象となるようにスリットを配置する。
【0066】
また、図3(b)に示すように、X線コリメータ13のスリット(開口部)の幅を広げて、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置してもよい。
【0067】
(ステップS09)
そして、スキャン制御部21は、本スキャン条件(ヘリカルスキャン条件)に従って本スキャン(ヘリカルスキャン)を開始し、撮影領域SのX線投影データを取得する。
【0068】
具体的には、スキャン制御部21は、このヘリカルスキャン条件のうち、回転速度、スライス厚、及びファン角等を架台・寝台制御信号として架台駆動部4及び寝台駆動部32に出力する。そして、架台駆動部4は、スキャン制御部21から出力された制御信号に基づいて回転架台を所定の回転速度で回転させる。寝台駆動部32はスキャン制御部21から出力された制御信号に基づいて回転架台の1回転あたりの寝台31の移動量を求め、この移動量で寝台31を移動させる。
【0069】
寝台31は、助走距離L分、撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に配置されているため、監視用ROI内のCT値が閾値以上になると、その位置から寝台31を加速して撮影方向Xに移動させることができる。
【0070】
そして、スキャン制御部21は、架台駆動部4及び寝台駆動部32に対して診断開始を指示するとともに、X線ビーム発生を制御するX線ビーム発生制御信号を高電圧発生部11に対して出力する。そして、X線ビーム発生制御信号に対応させて、高電圧発生部11は高電圧を発生する。
【0071】
これにより、X線管球12からX線ビームが曝射されるとともに、寝台31が寝台駆動部32により移動させられ、X線管球12の被検体に対する相対的な軌跡がらせん状となるような所謂ヘリカルスキャンによる診断が開始される。そして、データ収集制御信号がスキャン制御部21により出力されると、データ収集部15は、このデータ収集制御信号に対応させてX線検出器14からX線ビームを検出し、この検出したX線ビーム(実際にはX線投影データ)を前処理部22に供給する。
【0072】
一方、監視用ROI内のCT値が閾値未満の場合は(ステップS06、No)、スキャン制御部21は、プレップスキャンを継続して実行する。つまり、監視用ROI内のCT値が閾値以上になるまで、ステップS01からステップS06を繰り返して実行する。
【0073】
以上のように、プレップスキャン時に、寝台31を助走距離L分、撮影方向Xとは逆の方向に配置しておくことにより、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点で、そのずらした位置から寝台31を加速すれば良いことになる。これにより、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点で、寝台31を撮影方向Xとは逆の方向に助走距離L分、移動させ、それから、寝台31を加速しながら撮影方向Xに移動させる必要がなくなる。このように、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点で、寝台31を助走距離L分ずらす必要がないため、その分、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することが可能となる。これにより、遅滞なく本スキャンを開始することができ、所望のタイミングで造影撮影を行うことが可能となる。
【0074】
(変形例)
次に、上記実施形態に係るX線CT装置の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、変形例に係るX線コリメータの設置位置を示す図である。
【0075】
上記実施形態では、プレップスキャン時において、X線コリメータ13のスリット(開口部)を、寝台31をずらした方向(撮影方向Xとは逆の方向)に移動させたが、撮影方向Xと同じ方向に移動させてもよい。例えば、プレップスキャンにおいて、撮影領域Sとは異なる位置の断層像画像データを取得して、造影剤の濃度(CT値)を監視する場合などに、撮影方向Xと同じ方向にX線コリメータ13のスリットを移動させ、撮影領域Sとは異なる位置の断層像画像データを取得する。
【0076】
例えば、図5に示すように、プレップスキャン時において、寝台31を撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に助走距離L分、移動させ、X線コリメータ13のスリット(開口部)を撮影方向X(矢印Y2の方向)に移動させる。そして、プレップスキャンによってプレップスキャン撮影位置Tの断層像画像データを取得し、スキャン制御部21は、断層像画像に設定された関心領域(ROI)内の造影剤の濃度(CT値)を監視する。
【0077】
そして、本スキャン開始のタイミングが与えられると、スキャン制御部21の制御の下、X線コリメータ13のスリットを撮影方向X(スライス方向)とは逆の方向に移動させ、中心軸Oを軸として対称となるようにスリットを配置する。さらに、スキャン制御部21の制御の下、寝台31を加速して撮影方向X(スライス方向)に移動させながら、X線管球12からX線ビームを照射させることで、ヘリカルスキャンを実行する。
【0078】
以上のようにX線コリメータ13のスリットを配置した場合であっても、上記実施形態と同様に、本スキャン開始のタイミングが与えられた時点で、寝台31を助走距離L分ずらす必要がないため、その分、本スキャンを開始するまでに要する時間を削減することが可能となる。これにより、遅滞なく本スキャンを開始することができ、所望のタイミングで造影撮影を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態に係るX線コリメータの設置位置を示す図である。
【図3】この発明の実施形態に係るX線コリメータの設置位置を示す図である。
【図4】この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図5】変形例に係るX線コリメータの設置位置を示す図である。
【図6】従来技術に係るX線CT装置の制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
12 X線管球
13 X線コリメータ
14 X線検出器
21 スキャン制御部
31 寝台
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
【識別番号】594164531
【氏名又は名称】東芝医用システムエンジニアリング株式会社
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100081411
【弁理士】
【氏名又は名称】三澤 正義


【公開番号】 特開2008−36275(P2008−36275A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−216983(P2006−216983)