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【発明の名称】 椎弓根プローブのナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法
【発明者】 【氏名】長宗 高樹

【氏名】下村 隆敏

【要約】 【課題】椎弓根スクリューの簡便かつ正確な挿入・設置方法の確立を提供する。

【構成】本発明の椎弓根プローブ11のナビゲーションシステムは、脊柱再建術における椎弓根プローブ11の挿入をナビゲーションするシステムであって、前記椎弓根プローブ11の先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサ12と、前記椎弓根プローブ11が椎弓根の海綿骨2内に挿入された際に、前記超音波トランスデューサ12を用いて、海綿骨2と皮質骨3との境界における超音波エコーを信号計測する計測手段と、前記計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段13と、リアルタイムに前記計測手段の結果及び/又は前記解析手段の結果を表示する表示手段14とを備えた構成とされたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションするシステムであって、前記椎弓根プローブの先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサと、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、前記超音波トランスデューサを用いて、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測する計測手段と、前記計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段と、リアルタイムに前記計測手段の結果及び/又は前記解析手段の結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする椎弓根プローブのナビゲーションシステム。
【請求項2】
脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションするシステムであって、前記椎弓根プローブの後方部に設けられた送受信用超音波トランスデューサが、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、前記送受信用超音波トランスデューサから送出された超音波が前記椎弓根プローブの長手方向に伝播し、前記椎弓根プローブの先端部から超音波が送出され、前記送受信用超音波トランスデューサを用いて、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測する計測手段と、前記計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段と、リアルタイムに前記計測手段の結果及び/又は前記解析手段の結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする椎弓根プローブのナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記解析手段において、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を進行している状態と認識し、超音波エコーが1回乃至2回ある状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を皮質骨に向かって進行している状態と認識し、超音波エコーが1回ある状態を前記椎弓根プローブが皮質骨内を進行している状態と認識し、その後に超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが皮質骨の外に表出した状態と認識することを特徴とする請求項1又は2に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記解析手段において、脊柱再建術を受ける患者の骨硬度および骨密度を少なくとも含む知識データベースを参照して、超音波エコーの受信感度を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記表示手段において、前記解析手段が、超音波エコーが無い状態からある状態と認識した場合に、アラーム告知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステム。
【請求項6】
脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションする方法であって、前記椎弓根プローブの先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサを用いて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測するステップと、計測された超音波エコーの信号波形を解析するステップと、リアルタイムに超音波エコーの信号計測の結果及び/又は解析結果を表示するステップとを備えたことを特徴とする椎弓根プローブのナビゲーション方法。
【請求項7】
脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションする方法であって、前記椎弓根プローブの後方部に設けられた送受信用超音波トランスデューサを用いて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、前記送受信用超音波トランスデューサから送出された超音波が前記椎弓根プローブの長手方向に伝播し、前記椎弓根プローブの先端部から超音波が送出され、海綿骨と皮質骨との境界において前記送受信用超音波トランスデューサで超音波エコーを信号計測するステップと、計測された超音波エコーの信号波形を解析するステップと、リアルタイムに超音波エコーの信号計測の結果及び/又は解析結果を表示するステップとを備えたことを特徴とする椎弓根プローブのナビゲーション方法。
【請求項8】
前記超音波エコーの信号波形を解析するステップにおいて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を進行している状態と認識し、超音波エコーが1回乃至2回ある状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を皮質骨に向かって進行している状態と認識し、超音波エコーが1回ある状態を前記椎弓根プローブが皮質骨内を進行している状態と認識し、その後に超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが皮質骨の外に表出した状態と認識することを特徴とする請求項6又は7に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法。
【請求項9】
前記超音波エコーの信号波形を解析するステップにおいて、脊柱再建術を受ける患者の骨硬度および骨密度を少なくとも含む知識データベースを参照して、超音波エコーの受信感度を調整することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法。
【請求項10】
前記解析結果を表示するステップにおいて、超音波エコーが無い状態からある状態と認識した場合に、アラーム告知することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱再建術における脊椎椎弓根スクリュー設置などのための術中超音波モニタリングシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、脊柱再建術においては、CT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)のMPR(Multi Planer Reconstruction;多断面再構成法により得られた断面)像により椎弓根径、刺入点、刺入角度などを正確に把握できるため、術前に椎弓根スクリュー設置可能部位の評価は可能となっている。しかしながら、これらのMPR像の画像情報だけでは、実際に手術中に安全かつ正確にスクリューを椎弓根に設置することは困難であるといった問題がある。
【0003】
すなわち、脊柱再建術における椎弓根スクリューにおいては、脊椎椎弓根内に椎弓根スクリューを挿入・設置するために、脊椎椎弓根に骨孔を作成する必要がある。脊椎椎弓根は骨組織であり、その骨構造は主に外部の皮質骨とそれに内包される海綿骨とに二分されている。脊椎椎弓根内に椎弓根スクリューを挿入する際に、海綿骨側から挿入した椎弓根スクリューが周囲の薄い皮質骨を穿破すると、脊髄、椎骨動脈および神経根などの重要臓器を損傷してしまうリスクがある。
【0004】
特に、頚椎においては解剖学的にサイズが小さいだけでなく、脊髄、椎骨動脈、神経根をその中に含有しており椎弓根スクリューの挿入・設置には常に神経血管損傷の可能性を伴う。頚椎においては、一度、脊髄損傷あるいは椎骨動脈損傷による脳幹梗塞や小脳梗塞などの損傷が生じると、もたらされる障害は甚大であり、頚椎椎弓根スクリューは全ての脊椎固定用術において最も正確な設置手技を要求されている。
【0005】
一方で、脊柱再建術においては、固定用プレートの脊柱への固定強度はスクリューの挿入深度と相関することから、固定強度を高くするために椎弓根スクリューの椎弓根への挿入深度が大きいことが望まれる。しかし、椎弓根内では、海綿骨および周囲の皮質骨を合せても、直径4〜5mm程度しか、椎弓根スクリューを挿入できないという危険部位が存在する。このような危険部位があるため、より挿入深度が大きくするためには、椎弓根スクリューを正確に挿入する方法が要求されている。
【0006】
このような状況下、不安定頚椎病変に対する脊柱再建術において、椎弓根スクリューの簡便かつ正確な挿入・設置方法の確立が、必要不可欠となっているのである。
【0007】
また、脊柱再建術において、術中にX線透過装置等を使用しているケースもあるが、2次元の画像情報だけでは熟練した脊椎外科医といえども誤刺入の可能性は否定できないという指摘がある。高度に熟練した脊椎外科医でも約5%以上の誤刺入ありとの報告がある。
すなわち、椎弓根スクリューを用いた手技では、1回の手術で4〜6本、多い場合は10本以上の椎弓根スクリューの刺入を行う。従って、約5%以上の誤刺入は患者にとって負担が大きいものと言える。
さらに、X線透視法ベースの脊椎ナビゲーションシステムなど先進的な医療機器の登場によりその設置手技の正確さが期待されたが椎弓根スクリューの誤刺入率は徒手的方法と変わらなかったと報告されている。
このような背景の下、簡便でコストパフォーマンスに優れた椎弓根スクリューの挿入・設置する方法が望まれている。
【0008】
ここで、従来から、骨診断装置として、少なくとも海綿骨を有する骨試料に出力したパルス状の超音波を入射させて海綿骨内を透過させる超音波発信部と、海綿骨内のある経路をそれぞれ透過した速度の速い第1波と遅い第2波を受信する超音波受信部と、この第1波と第2波の振幅比を測定して骨量の割合、または、骨質部分の体積比を測定する手段とからなる骨の超音波測定装置が知られている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照。)。
この装置は、骨にパルス状の超音波を入射させると、海綿骨内のある経路をそれぞれ透過した2つのパルス波(先行する第1波と後進する第2波)に分かれ、この第1波と第2波は海綿骨内の骨質の割合によって振幅が変化するということを利用して、その比率を求めることによって骨量の割合を間接的に算出し、骨強度との相関関係を探索して、骨粗鬆症など骨の状態の診断を行うものである。
【0009】
また一方で、安全な穿刺治療を実行可能な超音波診断装置として、被検体の体表面から体内の所定部位にかけての領域に挿入される穿刺針を使用する穿刺治療において領域のモニタリングに利用される超音波診断装置であって、領域に超音波を送信し被検体からの反射波を受信する超音波プローブと、反射波に基づいて組織を含む形態画像と血管構造を含む構造物画像とを合成した合成画像を生成する画像生成手段と、穿刺針の挿入の際に穿刺針が通過する経路又は穿刺針を擬似的に示す穿刺針ガイドマーカを生成し制御するマーカ制御手段と、合成画像と穿刺針ガイドマーカとを同時に画面に表示する表示手段と、表示手段の画面上において、少なくとも領域において穿刺針ガイドマーカが血管と接触しない穿刺ルートを指定する指定手段とを備え、マーカ制御手段は、指定手段からの指定に応答して、穿刺ルートに穿刺針ガイドマーカを移動させることができる装置が知られている(特許文献3)。
上記装置によれば、血管を避けた安全な穿刺ルートを穿刺針挿入前に決定することができ、操作者は、当該穿刺ルートを通過するように穿刺針を挿入することで、血管等を傷つけることなく穿刺羽針を腫瘍にまで到達させることができ、出血や転移を誘発させない安全な穿刺治療を実現し、操作者の負担を軽減させることができるものである。
【0010】
【特許文献1】特許第2863886号公報
【特許文献2】特開2005−204831号公報
【特許文献3】特開2004−298476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の脊柱再建術における椎弓根スクリューの挿入・設置方法は、高度に熟練した脊椎外科医においても、誤刺入のリスクがあるといった問題があった。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、椎弓根スクリューの簡便かつ正確な挿入・設置方法の確立を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションするシステムであって、前記椎弓根プローブの先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサと、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、前記超音波トランスデューサを用いて、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測する計測手段と、前記計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段と、リアルタイムに前記計測手段の結果及び/又は前記解析手段の結果を表示する表示手段とを備えた構成とされたことを特徴としたものである。
【0014】
椎弓根スクリューを通すための骨孔を生成するために、挿入する椎弓根プローブの先端部に送受信用の超音波トランスデューサを設けることで、先端から数ミリ先の骨状態をリアルタイムに計測することで、脊髄、椎骨動脈および神経根などの重要臓器を損傷することなく直径約4〜5ミリの椎弓根内に骨孔を形成して椎弓根スクリューの設置を可能にすることができる。
【0015】
次に、本発明の請求項2に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションするシステムであって、前記椎弓根プローブの後方部に設けられた送受信用超音波トランスデューサが、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、前記送受信用超音波トランスデューサから送出された超音波が前記椎弓根プローブの長手方向に伝播し、前記椎弓根プローブの先端部から超音波が送出され、前記受信用超音波トランスデューサを用いて、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測する計測手段と、前記計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段と、リアルタイムに前記計測手段の結果及び/又は前記解析手段の結果を表示する表示手段とを備えた構成とされたことを特徴とする。
【0016】
上記請求項1に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの構成と異なり、送受信用の超音波トランスデューサを堆弓根プローブの先端部ではなく、堆弓根プローブの後方部に配置する。具体的には、椎弓根プローブの後方部に送受信用超音波トランスデューサを設け、椎弓根プローブの形状を後方部直径を先端部直系よりも拡張し、しぼりをつける事で堆弓根プローブの挿入サイズよりもより大きなサイズの送受信用超音波トランスデューサを配置する。椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、送受信用超音波トランスデューサから送出された超音波が前記椎弓根プローブの長手方向に伝播し、椎弓根プローブの先端部から超音波が送出され、前記送受信用超音波トランスデューサを用いて、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測する計測するものである。
送受信用超音波トランスデューサが、椎弓根プローブの後方部に設けられるために、堆弓根プローブの形状を工夫する事で、送受信用超音波トランスデューサのサイズ等の制約が解放され、音波出力が増大でき、これにより感度を向上させることができる。
【0017】
次に、本発明の請求項3に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、上記請求項1又は2に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの解析手段において、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を進行している状態と認識し、超音波エコーが2回ある状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を皮質骨に向かって進行している状態と認識し、超音波エコーが1回ある状態を前記椎弓根プローブが皮質骨内を進行している状態と認識し、その後に超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが皮質骨の外に表出した状態と認識することを特徴とする。
【0018】
上記アルゴリズムにより、椎弓根プローブの先端部の位置状態を把握することができるのである。
【0019】
次に、本発明の請求項4に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、上記請求項1〜3のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの解析手段において、脊柱再建術を受ける患者の骨硬度および骨密度を少なくとも含む知識データベースを参照して、超音波エコーの受信感度を調整することを特徴とする。
【0020】
上記構成により、患者の状態に応じた骨診断情報から、より精度よく椎弓根プローブの先端部の位置状態を把握することができるのである。
【0021】
次に、本発明の請求項5に記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、上記請求項1〜4のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの表示手段において、解析手段が、超音波エコーが無い状態からある状態と認識した場合に、アラーム告知することを特徴とする。
【0022】
上記構成により、安全に正確に椎弓根プローブを挿入することができる。
【0023】
また、本発明の請求項6に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法は、脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションする方法であって、前記椎弓根プローブの先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサを用いて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーを信号計測するステップと、計測された超音波エコーの信号波形を解析するステップと、リアルタイムに超音波エコーの信号計測の結果及び/又は解析結果を表示するステップとを備えたことを特徴とする。
【0024】
次に、本発明の請求項7に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法は、脊柱再建術における椎弓根プローブの挿入をナビゲーションする方法であって、前記椎弓根プローブの先端部に設けられた受信用超音波トランスデューサと前記椎弓根プローブの後方部に設けられた送信用超音波トランスデューサを用いて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、送信用超音波トランスデューサから送出された超音波が前記椎弓根プローブの長手方向に伝播し、前記椎弓根プローブの先端部から超音波が送出され、海綿骨と皮質骨との境界において受信用超音波トランスデューサで超音波エコーを信号計測するステップと、計測された超音波エコーの信号波形を解析するステップと、リアルタイムに超音波エコーの信号計測の結果及び/又は解析結果を表示するステップとを備えたことを特徴とする。
【0025】
次に、本発明の請求項8に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法は、上記請求項6又は7に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法の超音波エコーの信号波形を解析するステップにおいて、前記椎弓根プローブが椎弓根の海綿骨内に挿入された際に、超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を進行している状態と認識し、超音波エコーが2回ある状態を前記椎弓根プローブが海綿骨内を皮質骨に向かって進行している状態と認識し、超音波エコーが1回ある状態を前記椎弓根プローブが皮質骨内を進行している状態と認識し、その後に超音波エコーが無い状態を前記椎弓根プローブが皮質骨の外に表出した状態と認識することを特徴とする。
【0026】
次に、本発明の請求項9に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法は、上記請求項6〜8のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法の超音波エコーの信号波形を解析するステップにおいて、脊柱再建術を受ける患者の骨硬度および骨密度を少なくとも含む知識データベースを参照して、超音波エコーの受信感度を調整することを特徴とする。
【0027】
次に、本発明の請求項10に記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法は、上記請求項6〜9のいずれかに記載の椎弓根プローブのナビゲーション方法の解析結果を表示するステップにおいて、超音波エコーが無い状態からある状態と認識した場合に、アラーム告知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る椎弓根プローブのナビゲーションシステムおよび方法は、脊柱再建術の手術中にリアルタイムで計測できることから、高い安全性と正確性を保障することができるといった効果を有する。
また、本システムおよび方法自体は、超音波を利用するため、X線透過装置などを使用した際に生じる被爆リスクは一切ないという効果も有する。従来のX線透過装置等を併用すればより高い安全性が確保され得ることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の椎弓根プローブのナビゲーションシステムおよび方法の実施例について、以下、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0030】
図1は、頚椎椎弓根スクリューを使用した頚椎再建術において、椎弓根スクリューを椎弓根内に刺入する様子を示している。椎弓根スクリューを刺入する箇所は、椎弓根の海綿骨の部位であり、その海綿骨は周囲が硬い皮質骨で覆われている。この海綿骨の部分に椎弓根スクリューを刺入していく。頚椎再建術においては、図1に示すように、椎弓根スクリューの刺入角度が15〜25度と狭角範囲であり、かつ、最も狭い通路部分は図中の矢印で示した箇所であり幅が4〜5mmと狭くなっている。また、狭い通路部分の近傍には椎骨動脈が存在しており、椎骨動脈損傷による脳幹梗塞などの重篤な手術合併症を回避しなければならないといった手技の困難さがある。そのため、かかる頚椎再建術を行うためには、熟練した脊椎外科医すら最も高度な技術を要求されている。
【0031】
図2は、実施例1の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの概略システム構成を示す模式図を示している。
実施例1の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、椎弓根プローブ11の先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサ12と、椎弓根プローブ11が椎弓根の海綿骨2内に挿入された際に、超音波トランスデューサ12を用いて、海綿骨2と皮質骨3との境界における超音波(図中では模式的に超音波の波紋4で示している)のエコーを信号計測する計測手段(椎弓根プローブ11と超音波トランスデューサ12及びその信号を取扱う図示しない電源系統や信号系統の付帯回路をいう)と、計測手段により計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段13と、リアルタイムに解析手段の結果を表示する表示手段14を備えている。
【0032】
図2では、椎弓根プローブ11が、海綿骨2の内部に刺入されている様子を表している。椎弓根プローブ11は、椎弓根内に椎弓根スクリュー(図示せず)を挿入するための骨孔を形成するためのものである。椎弓根は骨組織であり、主に外部の皮質骨とそれに内包される海綿骨とに二分される。骨孔はこの海綿骨部分に設ける。
海綿骨側から挿入した椎弓根スクリューが薄い皮質骨を穿破すると、脊髄、椎骨動脈および神経根などの重要臓器を損傷してしまう恐れがあるので回避する必要がある。このため、実施例1の椎弓根プローブのナビゲーションシステムでは、椎弓根プローブ11の先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサ12を用いて、椎弓根プローブ11が椎弓根の海綿骨2内に挿入された際に、海綿骨2と皮質骨3との境界における超音波のエコー(反射波)を信号計測することで、椎弓根プローブ11の進路が海綿骨2を真っ直ぐになっているかを判断することにしている。
【0033】
例えば、図2の場合、上記図1の説明で示したような椎弓根の最も狭い部分を椎弓根プローブ11が通過する際に、海綿骨2側から挿入した椎弓根プローブ11が薄い皮質骨3を穿破しないような海綿骨2内部を真っ直ぐに進行(刺入)する場合、椎弓根プローブ11の先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサ12から発信される超音波からのエコーは計測されない。
しかし、図3の(a)〜(c)に示すように、椎弓根の最も狭い部分を椎弓根プローブ11が通過する際に、海綿骨2側から挿入された椎弓根プローブ11が薄い皮質骨3を穿破する角度で刺入される場合、椎弓根プローブ11の先端部に設けられた送受信用の超音波トランスデューサ12から発信される超音波からのエコーが計測されることとなる。
【0034】
この様子を以下に、より詳細に説明する。先ず、図3(a)では、海綿骨2側から挿入した椎弓根プローブ11が図2と異なり、海綿骨2と皮質骨3の境界壁に向かう角度で進行(刺入)している。この状態では、未だ超音波エコーは超音波トランスデューサ12で捉えることができていない。次に、図3(b)の状態になると、椎弓根プローブが、海綿骨2と皮質骨3の境界壁に接近し、超音波トランスデューサ12は、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からのエコー(反射波)を捉える。
そして、図3(c)の状態になると、椎弓根プローブ11の先端部が、薄い皮質骨3の中に進入し、超音波トランスデューサ12は、皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からのエコー(反射波)を捉えることとなる。
【0035】
ここで、海綿骨と皮質骨との境界における超音波エコーには、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からの反射波と、さらにその境界部分を越え皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からの反射波の2種類存在する。
図3(b)の超音波トランスデューサ12が捉えたエコーは、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からの反射波であり、図3(c)の超音波トランスデューサ12が捉えたエコーは、皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からの反射波である。
【0036】
なお、エコー(反射波)の様子は、椎弓根プローブ11の刺入角度や海綿骨や皮質骨の状態によって異なってくる。
椎弓根プローブ11の刺入角度によっては、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界面に対して直角方向に近い状態となる場合、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からの反射波と、さらにその境界部分を越え皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からの反射波の2種類を計測できることになる。
従って、超音波エコーのパターンを解析することで、椎弓根プローブ11の位置、進行状態を推定し把握することができるのである。
【0037】
次に、計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段13について説明する。
解析手段13は、マイクロプロセッサを搭載した演算回路であり、その解析ロジックとしては、椎弓根プローブ11が椎弓根の海綿骨2内に挿入された際に、超音波エコーが無い状態を、椎弓根プローブ11が海綿骨2内を真っ直ぐに進行している状態と認識し、超音波エコーが1回乃至は2回ある状態を、椎弓根プローブ11が海綿骨2内を皮質骨3に向かって進行している状態と認識し、超音波エコーが1回ある状態を、椎弓根プローブ11が皮質骨3内を進行している状態と認識し、その後に超音波エコーが無い状態を椎弓根プローブ11が皮質骨3の外に表出した状態と認識するものである。
【0038】
また、表示手段14は、上記の超音波エコーの解析結果を術者に伝達するものであり、最もシンプルな形では、正常、注意、危険の3通りの表示ランプで表示する。ここで、正常とは、超音波エコーが無い状態(椎弓根プローブが海綿骨内を真っ直ぐに進行している状態)をいい、また注意とは、超音波エコーが1回乃至は2回ある状態(椎弓根プローブが海綿骨内を皮質骨に向かって進行している状態、若しくは椎弓根プローブが皮質骨内を進行している状態)をいい、危険とは超音波エコーが1回ある状態からその後に超音波エコーが無い状態(椎弓根プローブが皮質骨の外に表出した状態)を表すものである。
また、超音波エコーの計測信号グラフイメージとして表示したり、さらにはCT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)のMPR(Multi Planer Reconstruction;多断面再構成法により得られた断面)画像を利用したイメージング表示にしてもよい。
【0039】
上記の超音波エコーの一例として、牛の骨を用いて、海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からの反射波と、さらにその境界部分を越え皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からの反射波の分離ができることの基礎データを得たので、これについて以下に説明を行う。
図4は、牛の骨を分断し、内側の海綿骨から外側の皮質骨に向かって、超音波探傷を行ったときの様子を模式的に示した図である。
また、図5は、牛の骨を分断し、内側の海綿骨から外側の皮質骨に向かって、超音波探傷を行ったときの超音波エコーをグラフで示したものである。
図5のグラフの横軸は時間、縦軸は感度(送信超音波の振幅に対する超音波エコーの振幅の比率)である。図5のグラフの右横のパラメータについて説明する。RANGEは1目盛の距離で、MTLEBELは対象としている媒体の音速である。また、D-DELAYは送信波形からギャップを意味する。
【0040】
ここで、超音波探触子は、1−3コンポジット5MHz 10Φ球形探触子(型番:USM25S,製造メーカ:GEインスペクション・テクノロジーズ)を用いた。
図5のグラフにおいて、矢印(A)で示す部分が海綿骨とその周囲を取り巻く皮質骨との境界部分からの反射波(図4において、海綿骨2を通して得た皮質骨3の表面からの反射波)であり、矢印(B)で示す部分が皮質骨の外側と皮質骨との境界部分からの反射波(図4において、皮質骨3の底面からの反射波)である。
ここでは、1目盛りが5mmであるので、約2mmの厚さの皮質骨の表面からと底面からの反射波を分離したことになる。
実験に用いたのは、牛の特定部位の骨であり、人間の椎弓根の骨とは異なるが、図5のグラフから、骨部において海綿骨と皮質骨からの超音波反射波の分離が可能であることが理解されるであろう。
【0041】
また、図5のグラフにおいて、矢印(A)および矢印(B)部分以外のピークは、測定ノイズと考えられる。これらの測定ノイズについては、さらに骨の材質による超音波反射波の特性の知識データベース化を図ることにより、適切なノイズカットフィルタを設けることが可能となる。当該ノイズカットフィルタを設けることで、より明確に海綿骨と皮質骨からの超音波反射波の分離が計測できることとなるだろう。
【0042】
図6は、解析手段13において、脊柱再建術を受ける患者の骨硬度および骨密度を少なくとも含む知識データベース(知識DB)を参照して、超音波エコーの受信感度や解析パラメータ(椎骨動脈までの距離、皮質骨の厚さ、椎弓根プローブ近辺の物質の硬度など)を調整する様子を模式的に示している。
海綿骨・皮質骨の特徴パラメータ(硬度、密度、音速等)は、患者の性別、年齢、身長、体重、国籍、病歴、運動歴、生活習慣など(これらを参照情報と呼ぶ)の多くのパラメータと相互関係があると予想される。したがって、対象とする患者に最適な特徴パラメータを使用しないと、適切な情報提供(堆骨動脈等までの距離、椎弓根プローブ近辺の物質の硬度)ができなくなる。そこで、一定数のそれらの相互関係を格納した知識DBを構築することにより、新しい患者に対して、上記の参照情報より適切な特徴パラメータを推測し、それらを使用して適切な情報提供を目的とするものである。
【実施例2】
【0043】
実施例2の椎弓根プローブのナビゲーションシステムは、実施例1とは異なり、送受信用の超音波トランスデューサを一体化するのではなく、送信用超音波トランスデューサと受信用超音波トランスデューサを分離して配置し、送信用超音波トランスデューサが椎弓根プローブの後方部に設けられるために、サイズ等の制約がなく、音波出力が増大でき、これにより感度を向上させるものである。
【0044】
図7に、実施例2の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの概略システム構成図を示す。図7に示されるように、椎弓根プローブ11の後方部に設けられた送受信用超音波トランスデューサ21と、椎弓根プローブ11が椎弓根の海綿骨2内に挿入された際に、送受信用超音波トランスデューサ21から送出された超音波が椎弓根プローブ11の長手方向に伝播し、椎弓根プローブ11の先端部から超音波が送出され、送受信用超音波トランスデューサ21を用いて、海綿骨2と皮質骨3との境界における超音波エコーを信号計測する。そして、計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段13と、リアルタイムに解析手段の結果を表示する表示手段14を備えるものである。
【0045】
送信用超音波トランスデューサ21は、体内に入ることはなく、サイズ等の制約がなく、音波出力が増大できることになる。これにより超音波の出力パワーが上がり、海綿骨2と皮質骨3との境界における超音波エコーの感度を向上させることができるのである。
【0046】
計測された超音波エコーの信号波形を解析する解析手段13と、リアルタイムに解析手段の結果を表示する表示手段14は、実施例1と同様である。
【0047】
本実施例の場合は、椎弓根プローブの後方に配置された送受信用トランスデューサ21より超音波が椎弓根プローブ11を伝播し、先端部より対象物体に入射する。なんらかの物体よりの反射波があった場合、椎弓根プローブ11の先端より伝播された超音波エコーを椎弓根プローブ11の後方部に配置された送受信用トランスデューサ21が受信する。
ここで、送受信用トランスデューサ21は、一体型である必要はなく、内部を簡単に長方形で二つの送受信領域のものや、同心円状の二つの送受信領域のもの等にすることにより、送受信用トランスデューサを送信と受信のものに分離することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の椎弓根プローブのナビゲーションシステムおよび方法によれば、脊柱再建術における診断計測システムおよび診断計測方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】頚椎椎弓根スクリューを使用した頚椎再建術において、椎弓根スクリューを椎弓根内に刺入する様子を示す。
【図2】椎弓根プローブが海綿骨の内部に刺入されている様子を示す。
【図3】椎弓根の最も狭い部分を椎弓根プローブが通過する際に、海綿骨側から挿入された椎弓根プローブが薄い皮質骨を穿破する角度で刺入されている様子を示す。
【図4】牛の骨を分断し、内側の海綿骨から外側の皮質骨に向かって、超音波探傷を行ったときの様子を模式的に示した図である。
【図5】牛の骨を分断し、内側の海綿骨から外側の皮質骨に向かって、超音波探傷を行ったときの超音波エコーをグラフで表したものである。
【図6】解析手段において知識データベースを参照して解析パラメータ等を調整する様子を模式的に示している。
【図7】実施例2の椎弓根プローブのナビゲーションシステムの概略システム構成図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 椎弓根プローブのナビゲーションシステム
2 海綿骨
3 皮質骨
4 超音波の波紋
11 椎弓根プローブ
12 送受信用の超音波トランスデューサ
13 解析装置
14 表示装置
21 送受信用の超音波トランスデューサ

【出願人】 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100123504
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 啓七

【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲


【公開番号】 特開2008−36248(P2008−36248A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−216458(P2006−216458)