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【発明の名称】 骨粗鬆症診断支援装置および方法、骨粗鬆症診断支援プログラム、骨粗鬆症診断支援プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、骨粗鬆症診断支援用LSI
【発明者】 【氏名】浅野 晃

【氏名】田口 明

【氏名】中元 崇

【氏名】谷本 啓二

【氏名】アグス・ザイナル・アリフィン

【要約】 【課題】歯科用パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症スクリーニングの判定精度の向上を図る。

【構成】ファジィ論理に基づくしきい値処理で、各特徴量ごとに、仮に「低骨密度」か「正常」かを判別するしきい値を決定する。このしきい値をもとに、3つのファジィ集合を設定する。各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とする3層ニューラルネットワークの結合重みを決定する。ある未判別の画像の特徴量が与えられたとき、上記ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を上記ニューラルネットワークに入力し、「低骨密度」か「正常」かの出力を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行う装置であって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定するしきい値決定部と、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定するファジィ集合設定部と、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク部と、
前記ニューラルネットワーク部の結合重みを前記学習用データを用いて決定する結合重み決定部と、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する特徴量取得部と、
前記特徴量取得部により取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク部に入力する入力部とを備える、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記しきい値決定部は、
前記3つの特徴量の各々について、「低骨密度」のファジィ集合と「正常」のファジィ集合とを設定し、それらのメンバーシップ関数を、両メンバーシップ関数の交点を移動させるパラメータ(t)を用いて定義し、
前記学習用データについてファジィネスの合計を求め、このファジィネスを最小化する(t)を前記しきい値(T)とする、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ファジィ集合設定部は、
前記各特徴量に対して前記しきい値(T)をもとに3つのファジィ集合(L,M,H)を設定するものであり、
前記各特徴量について、前記学習用データを前記しきい値(T)で判別したときに誤って判別されたもののうち最小の値をT、最大の値をTとしたときに、
前記ファジィ集合(L)のメンバーシップ関数(μL)は、Tで最大、Tで最小となり、T〜Tの区間は単調減少となるものであり、
前記ファジィ集合(M)のメンバーシップ関数(μM)は、Tで最大、TおよびTで最小となり、T〜Tの区間は単調増加、T〜Tの区間は単調減少となるものであり、
前記ファジィ集合(H)のメンバーシップ関数(μH)は、Tで最小、Tで最大となり、T〜Tの区間は単調増加となるものである、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ファジィ集合設定部は、
前記メンバーシップ関数(μL,μM,μH)の交点で前記各特徴量を3区間(l,m,h)に分け、
前記学習用データの各々を、3つの特徴量がそれぞれ前記3区間(l,m,h)のいずれの区間に属するかによって27通りに分類し、
前記各分類に1つでも「低骨密度」の学習用データが含まれていればその分類に「低骨密度」のラベルを付け、それ以外の分類には「正常」のラベルを付け、
前記区間(l,m,h)を前記ファジィ集合(L,M,H)に対応づけることにより27通りのファジィルールを設定し、
前記27通りの各ルール中の各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク部へ入力する、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援装置。
【請求項5】
皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行う方法であって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定するステップと、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定するステップと、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定するステップと、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得するステップと、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力するステップとを備える、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援方法。
【請求項6】
皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行うためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段、
前記ニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定する手段、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する手段、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力する手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
骨粗鬆症診断支援プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記プログラムは、コンピュータを、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段、
前記ニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定する手段、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する手段、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力する手段、
として機能させるためのプログラムである、
ことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行うLSIであって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する回路と、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する回路と、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク回路と、
前記ニューラルネットワーク回路の結合重みを前記学習用データを用いて決定する回路と、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する回路と、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク回路に入力する回路とを備える、
ことを特徴とする骨粗鬆症診断支援用LSI。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症スクリーニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
骨密度が低下して骨がもろくなり骨折しやすくなる骨粗鬆症が近年問題になっている。今後の社会のさらなる高齢化に伴い、骨粗鬆症に起因した骨折による患者の生活の質の低下、死亡率の上昇、国民医療費の増大などが予想されている。しかしながら骨粗鬆症患者の大多数を占める閉経後女性のほとんどは自覚症状がないまま骨折リスクの高い生活を送っており、できるだけ早い時期にこの疾患を見つけ骨折の発症を防止することが重要視されている。
【0003】
骨粗鬆症の診断は大腿骨の骨密度測定によるものが一般的である。ところが自覚症状のない人がわざわざ大腿骨の骨密度測定を受診する例は少なく、そのため、骨折等の大事に至るまで骨粗鬆症が発見されないのが実情である。その一方、自覚症状のない潜在的な骨粗鬆症患者が歯科疾患の治療のために歯科を受診する機会は多いと考えられる。今日歯科では、顎全体が総覧できるパノラマX線写真により、歯やその周囲の歯槽骨を診断し、歯科疾患の治療に役立てている。これまでの研究により、歯科用パノラマX線写真で観察される下顎の皮質骨の厚さ測定および形態解析が閉経後骨粗鬆症患者のスクリーニングに極めて有用であることが明らかとなっている。これらの研究では、皮質骨の厚さが特定のしきい値以下の場合は骨密度が低下しており骨粗鬆症の疑いが高く、それ以外は骨密度が正常であり骨粗鬆症の疑いが低いことが示されている。また、皮質骨が粗鬆化している場合は通常の皮質骨の場合よりも骨密度が低く骨粗鬆症の疑いが高いことが示されている。パノラマX線写真撮影装置はどこの歯科医院にでもあるため、これを骨粗鬆症患者のスクリーニングに活用すれば、歯科医・整形外科医の連携による骨粗鬆症の早期発見・早期治療に役立ち、コストの面でも有用である。また、歯科用パノラマX線写真を用いることができれば、大量のX線写真を簡単に収集することができるので、骨粗鬆症についての疫学的な調査も行える。
【0004】
上述の歯科用パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症診断を支援する装置としては、パノラマX線写真上での下顎骨下縁皮質骨の粗鬆化の程度をスケルトン(数理形態学的画像処理手法の1つ)を用いて識別し骨粗鬆症患者をスクリーニングするもの[特許文献1、非特許文献9]、パノラマX線写真上の下顎骨下縁皮質骨の厚さをセミオートで正確に測定できるコンピュータシステム[特許文献2、非特許文献6]が存在する。これらを利用すれば、骨粗鬆症診断に関わる術者の特別な技能や経験等を要することなく、簡便な方法で骨粗鬆症の診断を正確に行うことができる。
【特許文献1】特開2004−209089号公報
【特許文献2】国際公開第2006/043523号パンフレット
【非特許文献1】Bone health and osteoporosis: a surgeon general’s report. (2004).Available: http://www.surgeongeneral.gov/reportspublications.html
【非特許文献2】J. A. Kanis, “Requirement for DXA for the management of osteoporosisin Europe”. OsteoporosisInternational, vol. 16, pp. 229-238, 2005.
【非特許文献3】A. Taguchi, M. Tsuda, M. Ohtsuka, I. Kodama, M. Sanada, T. Nakamoto,K. Inagaki, T. Noguchi, Y. Kudo, Y. Suei, K. Tanimoto, and A. M. Bollen, “Useof dental panoramic radiographs in identifying younger postmenopausal womenwith osteoporosis”, Osteoporosis International vol. 17, no. 3, pp. 387-394,2006
【非特許文献4】K. Lee, A. Taguchi, K. Ishii, Y. Suei, M. Fujita, T. Nakamoto, M. Ohtsuka,M. Sanada, M. Tsuda, K. Ohama, K. Tanimoto, and S. C. White, “Visual estimationof mandibular cortex on panoramic radiographs in identifying postmenopausalwomen with low bone mineral densities”, Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral RadiolEndod vol. 100, pp. 226-231, 2005.
【非特許文献5】A. Taguchi, Y. Suei, M. Sanada, M. Ohtsuka, T. Nakamoto, H. Sumida,K. Ohama, and K. Tanimoto, “Validation of dental panoramic radiography measuresfor identifying postmenopausal women with spinal osteoporosis”, AmericanJournal of Roentgenology, vol. 183, pp. 1755-1760, 2004.
【非特許文献6】A. Z. Arifin, A. Asano, A. Taguchi, T. Nakamoto, M. Ohtsuka, and K. Tanimoto,“Computer-aided system for measuring the mandibular cortical width on panoramicradiographs in osteoporosis diagnosis”, in Proc. SPIE Med Imaging 2005 -ImageProcessing Conference, San Diego, 2005, pp. 813-821
【非特許文献7】A. Z. Arifin, A. Asano, A. Taguchi, T. Nakamoto, M. Ohtsuka, M. Tsuda,Y.Kudo, and K. Tanimoto, “Computer-aided system for measuring the mandibularcortical width on panoramic radiographs in identifying postmenopausal womenwith low bone mineral density”. Osteoporosis International, vol. 17, pp.753-759, 2006.
【非特許文献8】A. Taguchi, M. Sanada, E. Krall, T. Nakamoto, M. Ohtsuka, Y. Suei,K. Tanimoto, I. Kodama, M. Tsuda, and K. Ohama, “Relationship between dentalpanoramic radiographic findings and biochemical markers of bone turnover”, J.Bone Miner Res., vol. 18, pp. 1689-169, 2003.
【非特許文献9】T. Nakamoto, A. Taguchi, A. Asano, M. Ohtsuka, Y. Suei, M. Fujita,M. Sanada, K. Ohama, and K. Tanimoto, "Computer-aided diagnosis oflow skeletal bone mass on panoramic radiographs," presented at the82nd General Session & Exhibition of the International Association forDental Research no. 1953, Hawaii, 2004.
【非特許文献10】L. X. Wang, “The WM method completed: a flexible fuzzy systemapproach to data mining”, IEEE Transaction on fuzzy system, vol. 11, no. 6, pp.768-780, 2003.
【非特許文献11】S. Horikawa, T. Furuhashi, and Y. Uchikawa, "On fuzzy modelingusing fuzzy neural network with the back-propagation algorithm". IEEETransaction on Neural Network, vol. 3, no. 5, pp. 801-806, 1992.
【非特許文献12】Y. Lin, G.A. Cunningham III, S.V. Coggeshall, "Using fuzzypartitions to create fuzzy systems from input-output data and set the initialweights in a fuzzy neural network", IEEE Transaction on Fuzzy Systems,vol. 5, no. 4, pp. 614-621, 1997.
【非特許文献13】M. Sezgin and B. Sankur, “Survey over image thresholding techniquesand quantitative performance evaluation”, Journal of Electronic Imaging, vol.13, no. 1, pp. 146-165, 2004.
【非特許文献14】L. K. Huang and M. J. J. Wang , “ Image thresholding by minimizingthe measures of fuzziness”, Patter Recognition, vo. 28, no. 1, pp. 41-51, 1995.
【非特許文献15】A.Z. Arifin and A. Asano, "Image thresholding by measuring thefuzzy sets similarity," Proc. Information and Communication TechnologySeminar 2005, pp. 189-194, 2005.
【非特許文献16】A.Z. Arifin and A. Asano, "Image Segmentation by Histogram ThresholdingUsing Hierarchical Cluster Analysis," Pattern Recognition Letters, inpress, available online 3 May 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、歯科用パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症スクリーニングの判定精度の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による骨粗鬆症診断支援装置は、皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行う装置であって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定するしきい値決定部と、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定するファジィ集合設定部と、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク部と、
前記ニューラルネットワーク部の結合重みを前記学習用データを用いて決定する結合重み決定部と、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する特徴量取得部と、
前記特徴量取得部により取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク部に入力する入力部とを備える、
ことを特徴とする。
【0007】
上記骨粗鬆症診断支援装置において、
前記しきい値決定部は、
前記3つの特徴量の各々について、「低骨密度」のファジィ集合と「正常」のファジィ集合とを設定し、それらのメンバーシップ関数を、両メンバーシップ関数の交点を移動させるパラメータ(t)を用いて定義し、
前記学習用データについてファジィネスの合計を求め、このファジィネスを最小化する(t)を前記しきい値(T)とする、
ことが好ましい。
【0008】
上記骨粗鬆症診断支援装置において、
前記ファジィ集合設定部は、
前記各特徴量に対して前記しきい値(T)をもとに3つのファジィ集合(L,M,H)を設定するものであり、
前記各特徴量について、前記学習用データを前記しきい値(T)で判別したときに誤って判別されたもののうち最小の値をT、最大の値をTとしたときに、
前記ファジィ集合(L)のメンバーシップ関数(μL)は、Tで最大、Tで最小となり、T〜Tの区間は単調減少となるものであり、
前記ファジィ集合(M)のメンバーシップ関数(μM)は、Tで最大、TおよびTで最小となり、T〜Tの区間は単調増加、T〜Tの区間は単調減少となるものであり、
前記ファジィ集合(H)のメンバーシップ関数(μH)は、Tで最小、Tで最大となり、T〜Tの区間は単調増加となるものである、
ことが好ましい。
【0009】
上記骨粗鬆症診断支援装置において、
前記ファジィ集合設定部は、
前記メンバーシップ関数(μL,μM,μH)の交点で前記各特徴量を3区間(l,m,h)に分け、
前記学習用データの各々を、3つの特徴量がそれぞれ前記3区間(l,m,h)のいずれの区間に属するかによって27通りに分類し、
前記各分類に1つでも「低骨密度」の学習用データが含まれていればその分類に「低骨密度」のラベルを付け、それ以外の分類には「正常」のラベルを付け、
前記区間(l,m,h)を前記ファジィ集合(L,M,H)に対応づけることにより27通りのファジィルールを設定し、
前記27通りの各ルール中の各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク部へ入力する、
ことが好ましい。
【0010】
本発明による骨粗鬆症診断支援方法は、皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行う方法であって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定するステップと、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定するステップと、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定するステップと、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得するステップと、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力するステップとを備える、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明による骨粗鬆症診断支援プログラムは、皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行うためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段、
前記ニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定する手段、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する手段、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力する手段、
として機能させることを特徴とする。
【0012】
本発明による記録媒体は、骨粗鬆症診断支援プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記プログラムは、コンピュータを、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する手段、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク手段、
前記ニューラルネットワーク手段の結合重みを前記学習用データを用いて決定する手段、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する手段、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク手段に入力する手段、
として機能させるためのプログラムである、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明による骨粗鬆症診断支援用LSIは、皮質骨に関する特徴量を用いて骨粗鬆症の判定を行うLSIであって、
皮質骨に関する3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について「低骨密度」か「正常」かを判別するためのしきい値を、学習用データを用いて、ファジィ論理に基づくしきい値処理により決定する回路と、
前記3つの特徴量の各々に対して複数のファジィ集合を設定し、当該ファジィ集合のメンバーシップ関数を前記しきい値に基づいて設定する回路と、
前記3つの特徴量の各々に対して設定された各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を入力とし、「低骨密度」または「正常」を出力とするニューラルネットワーク回路と、
前記ニューラルネットワーク回路の結合重みを前記学習用データを用いて決定する回路と、
皮質骨部分を含むパノラマX線写真から「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を取得する回路と、
前記パノラマX線写真から取得された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の前記各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を前記ニューラルネットワーク回路に入力する回路とを備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、歯科用パノラマX線写真から抽出された3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を用いて「低骨密度」か「正常」かの判定をファジィニューラルネットワークにより行うものである。このように3つの特徴量を組み合わせることには以下のような利点がある。
【0015】
皮質骨形態と皮質骨厚みにはそれぞれ、「皮質骨形態は、女性の閉経後の骨吸収速度を示す」「皮質骨厚みは、若年時に獲得した最大骨量を主に表す」という医学的根拠があり、こららの組合せには、最大骨量から吸収された骨量の結果を表すという点で、骨粗鬆症の判別に有用となるという背景がある。上記の分析には、本来は、「皮質骨厚み」の他には「最小セグメント長」または「平均セグメント長」のどちらかの特徴量があれば十分なはずである。しかしながら、スケルトンを求める画像演算は皮質骨形態の微妙な変化の影響を受けやすく、これらの特徴量にはしばしばエラーが入るため、本発明では両方の特徴量を用いることによりこれを抑制し判定精度を向上させている。
【0016】
また、本発明では、ファジィ論理に基づくしきい値処理により3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々についてしきい値を決定し、各特徴量ごとに設定した複数のファジィ集合のメンバーシップ関数を上記しきい値に基づいて定義することにより、利用可能な学習用データに応じた適切なメンバーシップ関数を得ることができ、これによってもシステムの判定精度を向上させている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<骨粗鬆症診断支援システム>
近年、歯科用パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症患者のスクリーニングが注目されている。本実施形態による骨粗鬆症診断支援システムはこれを支援するものである。このシステムの全体構成を図1に示す。このシステムは、X線画像入力部100と、皮質骨厚抽出部200と、セグメント抽出部300と、学習用データベース400と、ファジィ演算部500と、ニューラルネットワーク600とを備えている。このシステムは、歯科用パノラマX線写真から抽出された3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を用いて「低骨密度(低BMD)」か「正常」かの判定をファジィニューラルネットワークにより行うものである。このシステムにより行われる処理は「学習フェーズ」と「判定フェーズ」とに大きく分けられる。「学習フェーズ」では、「低BMD」か「正常」かの判定が既になされている学習用患者のパノラマX線写真を用いて本システムを最適化する。「判定フェーズ」では、学習フェーズにより最適化されたシステムを用いて、未判定のパノラマX線写真について「低BMD」か「正常」かの判定を行う。
【0018】
<学習フェーズ>
学習フェーズにおいて行われる処理の流れを図2に示す。以下、各ステップにおける処理について具体的に説明する。
【0019】
≪ST200≫
本システムで使用した学習用データは、本願発明者らが関与するクリニックを骨密度(BMD)評価のために1996〜2001年の間に訪れた50歳以上で同意を得た100人の閉経後女性から得た下顎体皮質骨のパノラマX線写真に基づいている。この学習用患者100人は、本願発明者らが関与するクリニックをDXA測定のために1996〜2001年の間に訪れた531人の閉経後女性からランダムに集めた。すなわち、この100人については、DXA法を用いた腰椎の骨密度データに基づく当該クリニックの判定結果(「低BMD」あるいは「正常」)と、下顎体皮質骨のパノラマX線写真とが得られている。なお、上記学習用データはあくまで一例であり、本システムで使用可能な学習用データは上記のものに限定されない。学習用患者の下顎体皮質骨のパノラマX線写真と、その学習用患者について本システム以外の診断方法により得られた骨密度の判定結果(「低BMD」あるいは「正常」)とがあれば学習用データとして使用可能である。
【0020】
学習用患者100人のパノラマX線写真はX線画像入力部100によりデジタル画像化されて皮質骨厚抽出部200に供給される。皮質骨厚抽出部200は、デジタル化されたパノラマX線画像から皮質骨厚を抽出する。この皮質骨厚抽出部200は、[特許文献2、非特許文献6]に開示された技術を用いて実現されている。皮質骨厚抽出部200は、パノラマX線写真上の左右の各オトガイ孔と下顎底を含む下顎体の一部を対象領域画像として切り出し(図3(a)参照)、各対象領域画像についてオトガイ孔を基準とした所定の演算処理により皮質骨厚を取得する(図3(b)(c)参照)。この処理の詳細については[特許文献2、非特許文献6]に開示されている。皮質骨厚抽出部200は、左右の各対象領域画像について得られた皮質骨厚の平均値を算出し、この平均値を当該パノラマX線写真についての皮質骨厚として学習用データベース400に蓄積する。
【0021】
一方、学習用患者100人のパノラマX線写真はX線画像入力部100によりデジタル画像化されてセグメント抽出部300にも供給される。セグメント抽出部300は、デジタル化されたパノラマX線写真画像から最小セグメントサイズ(最小SEG)および平均セグメントサイズ(平均SEG)を抽出する。このセグメント抽出部300は、[特許文献1、非特許文献9]に開示された技術を用いて実現されている。パノラマX線写真上の下顎骨臼歯部下縁皮質骨(図4(a)の点線部分)の内面は、骨密度の低下が起こっていない人では、その形態がスムーズであり、一定の厚さを有している(図4(b)参照)。しかし、骨密度が低下すると、その内面が線状に吸収を起こし、粗造な構造となることが明らかになっている(図4(c)参照)。このような形態の違いは、パノラマX線画像の皮質骨部分にスケルトン処理(数理形態学的画像処理手法の1つ)を施すことにより識別できる。皮質骨のパノラマX線画像(図5(a1),(a2)参照)にスケルトン処理を施すと、細かい線がいろいろな方向に走っている画像が得られる(図5(b1),(b2)参照)。このスケルトン画像から下顎骨下縁と平行な成分のみ取り出して2値化処理した後の画像に現れる線素(セグメント)のサイズ(画素数)や数の解析により、皮質骨の形態の違いを識別できる(図5(c1),(c2)参照)。上記スケルトン処理等の詳細については[特許文献1、非特許文献9]に開示されている。
【0022】
セグメント抽出部300は、皮質骨厚抽出部200と同様に左右の対象領域画像を切り出し(図3(a)参照)、各対象領域画像の皮質骨部分から上記一連の処理によりセグメントを抽出する。セグメント抽出部300は、左右の各対象領域画像のぞれぞれについて、得られたセグメントのサイズの最小値(最小セグメントサイズ)と平均値(平均セグメントサイズ)を算出する。セグメント抽出部300は、最小セグメントサイズ,平均セグメントサイズの左右の平均値をそれぞれ算出し、この平均値をそれぞれ当該パノラマX線写真についての最小セグメントサイズ(最小SEG),平均セグメントサイズ(平均SEG)として学習用データベース400に蓄積する。
【0023】
以上の処理により学習用データベース400には学習用患者100人についての各種データが図6に示すように蓄積される。学習用データベース400には、学習用患者の各々について、パノラマX線画像のID,DXA法による判定結果,皮質骨厚抽出部200により得られた皮質骨厚,セグメント抽出部300により得られた最小セグメントサイズ(最小SEG)および平均セグメントサイズ(平均SEG)が対応づけて記憶される。
【0024】
≪ST210≫
ファジィ演算部500は、ファジィ推論に基づくしきい値処理により、3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々について、仮に「低BMD」か「正常」かを判別するしきい値を決定する。この処理は以下のように行われる。
【0025】
まず、各特徴量について、「低BMD」に対応するファジィ集合(L)および「正常」に対応するファジィ集合(N)の2つのファジィ集合を考え、メンバシップ関数を[数1]に示す2次関数で定義する。
【0026】
【数1】


【0027】
数1において、μは「低BMD」に対応するファジィメンバーシップ関数、μは「正常」に対応するメンバーシップ関数を示す。xは各特徴量の要素、xminは最小値、xmaxは最大値を示す。tはしきい値を示し、xminとxmaxの間の任意の値が割り当てられる。パラメータtは、2つのメンバシップ関数μ,μの交点を左右に動かすものである。ZはZ関数、SはS関数を示す。
【0028】
次に、各特徴量ごとに、学習用データベース400に蓄積されているデータを用いて[数2]によりファジィネス指標γ(t),γ(t)を求める。
【0029】
【数2】


【0030】
数2において、γ(t)はファジィ集合Lについてのファジィネス指標、γ(t)はファジィ集合Nについてのファジィネス指標を示す。Xは、学習用データベース400において「低BMD」の判定結果に対応づけられている各特徴量の集合を示し、Xは、学習用データベース400において「正常」の判定結果に対応づけられている各特徴量の集合を示す。|X|は集合Xのメンバー数、|X|は集合Xのメンバー数を示す。tの値の増加とともに、ファジィネス指標γ(t)は減少し、γ(t)は増加する傾向を示す。
【0031】
ファジィネス指標の一方(ここではγ(t))を[数3]に示す正規化係数αで正規化し、[数4]に示す基準関数J(t)を最小にするt(=T)を求め、これをしきい値とする。
【0032】
【数3】


【0033】
【数4】


【0034】
上記しきい値化手法により、「皮質骨厚」ついてしきい値Tcw、「最小セグメントサイズ」についてしきい値Tmin、「平均セグメントサイズ」についてしきい値Tavgがそれぞれ得られる。これらのしきい値は、図7に示すように、「皮質骨厚」,「最小セグメントサイズ」,「平均セグメントサイズ」の最適なカットオフしきい値に対応している。
【0035】
≪ST220≫
次にファジィ演算部500は、上記しきい値Tcw,Tmin,Tavgをもとに、「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各特徴量ごとに3つのファジィ集合L,M,Hを設定し、それらのメンバーシップ関数μL,μM,μHを定義する。この処理の詳細について「皮質骨厚」の場合を例に説明する。
【0036】
まず、学習用データベース400(図6)に格納されている各学習用データをしきい値Tcwで判別する。具体的には、学習用データベース400に格納されている皮質骨厚c〜c100の各々としきい値Tcwとを比較する。皮質骨厚cがしきい値Tcw以下のときは「低BMD」、それ以外のときは「正常」と判定する。次に、このしきい値Tによる判定結果と、その皮質骨厚cについてのDXA法による判定結果とを比較する。両者の判定結果が一致しない皮質骨厚のうち最小の値T、最大の値Tを求める。そしてファジィ集合Lcw,Mcw,Hcwのメンバーシップ関数μLcw,μMcw,μHcwを、上記Tcw,T,Tに基づいて、図8に示すような1次関数で設定する。ファジィ集合Lcwのメンバーシップ関数μLcwは、Tで最大(1)、Tcwで最小(0)となり、T〜Tcwの区間は単調減少となる。また、xmin〜Tの区間は最大値(1)をとり、xmin以下およびTcw以上の区間は最小値(0)をとる。ファジィ集合Mcwのメンバーシップ関数μMcwは、Tcwで最大(1)、TおよびTで最小(0)となり、T〜Tcwの区間は単調増加、Tcw〜Tの区間は単調減少となる。また、T以下およびT以上の区間は最小値(0)をとる。ファジィ集合Hcwのメンバーシップ関数μHcwは、Tcwで最小(0)、Tで最大(1)となり、Tcw〜Tの区間は単調増加となる。また、T〜xmaxの区間は最大値(1)をとり、Tcw以下およびxmax以上の区間は最小値(0)をとる。
【0037】
上述のとおり、Tcw,T,Tは、学習用データベース400に蓄積されている学習用データを用いて算出されているため、利用可能な学習用データに応じてこれらの値も変わってくる。その結果、メンバーシップ関数μLcw,μMcw,μHcwの形も、利用可能な学習用データに応じて、例えば図9に示すように変わってくる。このように本システムでは、利用可能な学習用データに応じて最適なメンバーシップ関数μLcw,μMcw,μHcwが設定される。
【0038】
しきい値Tminをもとに「最小セグメントサイズ」についてのファジィ集合Lmin,Mmin,Hminを設定しそれらのメンバーシップ関数μLmin,μMmin,μHminを定義する処理、および、しきい値Tavgをもとに「平均セグメントサイズ」についてのファジィ集合Lavg,Mavg,Havgを設定しそれらのメンバーシップ関数μLavg,μMavg,μHavgを定義する処理についても上記と同様に行われる。
【0039】
≪ST230≫
次にファジィ演算部500は、図10(a)に示すように、各特徴量を上記メンバーシップ関数μL,μM,μHの交点で3区間l,m,hに分ける。これにより、皮質骨厚、最小セグメントサイズ、平均セグメントサイズで構成される3次元特徴量空間が27(=3×3×3)個のサブ空間に分類される[(皮質骨厚,最小SEG,平均SEG)が(l,l,l),(l,l,m),…,(h,h,m),(h,h,h)の27個]。なお、利用可能な学習用データに応じてメンバーシップ関数μL,μM,μHの形が変わるのに伴い、上記3区間l,m,hも例えば図10(b)に示すように変わってくる。また、上記3区間l,m,hは特徴量ごとにも変わってくる。
【0040】
次にファジィ演算部500は、学習用データベース400(図6)に蓄積されている各学習用データを、3つの特徴量がそれぞれl,m,hのいずれの区間に属するかに応じて上記27個のサブ空間のうちの1つに分類する。この分類結果に基づいて上記各サブ空間に「低BMD」または「正常」のラベルを付ける。具体的には、DXA法による判定結果が「低BMD」である学習用データが1つでも含まれていればそのサブ空間に「低BMD」のラベルを付け、それ以外の場合には「正常」のラベルを付ける。
【0041】
次にファジィ演算部500は、3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」に対応する3つの入力と、「低BMD」あるいは「正常」に対応する1つの出力とを有するファジィルールを上記ラベル付けに基づいて設定する。具体的には、上記区間l,m,hをファジィ集合L,M,Hに対応づけ、たとえば、「皮質骨厚」がLcwかつ「最小セグメントサイズ」がMminかつ「平均セグメントサイズ」がHavgならばラベルは「正常」といったファジィルールを27通り設定する。
【0042】
次にファジィ演算部500は、学習用データベース400の各学習データについて、上記27通りの各ルールごとに、ルール中の各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積を求める。そして図11に示すように、この27個の積を、ニューラルネットワーク600の入力層にある27個のニューロンへの入力とする。ニューラルネットワーク600の中間層のニューロンは2個、出力層のニューロンは1個であり、出力層では「正常」を0、「低BMD」を1としている。このニューラルネットワーク600の重みをBPアルゴリズムにより学習する。なお、入力層から中間層への接続重みの初期値は、上記ファジィルールを用いて定める。すなわち、あるニューロンに対応するルールでのラベルが「正常」であれば、入力層のそのニューロンと中間層のニューロンとの接続重みを0、「低BMD」であれば重みを1とする。中間層のどちらのニューロンへの接続重みも初期値は同じである。
【0043】
<判定フェーズ>
「判定フェーズ」では、上述の学習フェーズにより最適化されたシステムを用いて、未判定のパノラマX線写真について「低BMD」か「正常」かの判定を以下のように行う。
【0044】
未判定のパノラマX線写真はX線画像入力部100によりデジタル画像化されて皮質骨厚抽出部200およびセグメント抽出部300に供給される。デジタル化されたパノラマX線画像から皮質骨厚抽出部200により皮質骨厚が抽出され、セグメント抽出部300により最小セグメントサイズおよび平均セグメントサイズが抽出される。皮質骨厚抽出部200およびセグメント抽出部300による抽出処理は上記学習フェーズにおける処理と同様である。抽出された「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」について、上述の27通りの各ルールごとに、ルール中の各ファジィ集合へのメンバーシップ値の積がファジィ演算部500において算出され、この27個の積が、ニューラルネットワーク600の入力層にある27個のニューロンへ入力され、出力層から「低BMD」あるいは「正常」の出力が得られる。
【0045】
<本システムの利点>
以上に説明したように、本実施形態による骨粗鬆症診断支援システムは、歯科用パノラマX線写真から抽出された3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」を用いて「低骨密度」か「正常」かの判定をファジィニューラルネットワークにより行うものである。このように3つの特徴量を組み合わせることには以下のような利点がある。
【0046】
皮質骨形態と皮質骨厚みにはそれぞれ、「皮質骨形態は、女性の閉経後の骨吸収速度を示す」「皮質骨厚みは、若年時に獲得した最大骨量を主に表す」という医学的根拠があり、こららの組合せには、最大骨量から吸収された骨量の結果を表すという点で、骨粗鬆症の判別に有用となるという背景がある。上記の分析には、本来は、「皮質骨厚み」の他には「最小セグメント長」または「平均セグメント長」のどちらかの特徴量があれば十分なはずである。しかしながら、スケルトンを求める画像演算は皮質骨形態の微妙な変化の影響を受けやすく、これらの特徴量にはしばしばエラーが入るため、本システムでは両方の特徴量を用いることによりこれを抑制し判定精度を向上させている。
【0047】
また、本システムでは、ファジィ論理に基づくしきい値処理により3つの特徴量「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」の各々についてしきい値を決定し(ST210)、各特徴量ごとに設定した3つのファジィ集合のメンバーシップ関数を上記しきい値に基づいて定義する(ST220)ことにより、利用可能な学習用データに応じた適切なメンバーシップ関数を得ることができ、これによってもシステムの判定精度を向上させている。
【0048】
<実験結果>
本システムを用いた実験結果を図12に示す。ここでは感度(Sensitivity)と特異度(Specificity)の項目でパフォーマンスを評価している。50人分の学習用データを用いてシステムを最適化し、50人の実験対象者のパノラマX線写真について「低BMD」か「正常」の判定を行った。学習用データおよび実験対象者はランダムに選択し、異なる組合せで10回繰り返した。図12に示す感度(Sensitivity)および特異度(Specificity)は10回の平均値である。比較として、しきい値化アルゴリズム(ST210)を用いないファジィニューラルネットワーク方法、および、ニューラルネットワーク(ST230)を用いないファジィ推論システム方法による結果を示す。しきい値化アルゴリズム、ファジィ推論システム、ニューラルネットワークを組み入れた本システムによる感度(Sensitivity)および特異度(Specificity)それぞれ90.92%、63.69%である。このパフォーマンスの優位性は、メンバーシップ関数を最適化する良いアルゴリズムを設計することの重要性およびニューラルネットワークを使用した学習ステップの重要性を示していると考えられる。
【0049】
<その他の実施形態>
本実施形態による骨粗鬆症診断支援システムはコンピュータシステムとして実現可能である他、コンピュータプログラムとして、また、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても実現可能である。さらには、本実施形態で説明した機能を実行する専用LSIとしても実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明を用いれば、歯科医と整形外科医が連携し、歯科医院で撮影される顎骨のパノラマX線写真を用いて骨粗鬆症患者を発見し整形外科医の受診を勧めることができ、適切な骨粗鬆症の治療を大事に至る前に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による骨粗鬆症診断支援システムの全体構成を示すブロック図
【図2】学習フェーズにおいて行われる処理の流れを示すフローチャート
【図3】(a)歯科用パノラマX線写真の一例、(b)(c)皮質骨厚の一例
【図4】パノラマX線写真上での皮質骨の形態変化の例
【図5】セグメント抽出処理過程を示す図
【図6】学習用データベースに蓄積されるデータ例
【図7】「皮質骨厚」「最小セグメントサイズ」「平均セグメントサイズ」についてのファジィ指標
【図8】「皮質骨厚」についてのファジィ集合Lcw,Mcw,Hcwのメンバーシップ関数の一例
【図9】「皮質骨厚」についてのファジィ集合Lcw,Mcw,Hcwのメンバーシップ関数の一例
【図10】各特徴量をメンバーシップ関数の交点で3区間l,m,hに分ける一例
【図11】ニューラルネットワークの構成例
【図12】本実施形態のシステムを用いた実験結果
【符号の説明】
【0052】
100 X線画像入力部
200 皮質骨厚抽出部
300 セグメント抽出部
400 学習用データベース
500 ファジィ演算部
600 ニューラルネットワーク
【出願人】 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
【出願日】 平成18年8月4日(2006.8.4)
【代理人】 【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘

【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏

【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久

【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二

【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実

【識別番号】100115691
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 篤史

【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也

【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄

【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守

【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓

【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也


【公開番号】 特開2008−36068(P2008−36068A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−213259(P2006−213259)