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【発明の名称】 分子診断支援装置及び分子診断支援プログラム
【発明者】 【氏名】藤本 克彦

【氏名】高田 洋一

【要約】 【課題】疾病の原因追跡や将来起こりうる症状を予測するために必要な情報を提示し、正確且つ効率的な分子診断を可能とする分子診断支援装置等を提供すること。

【構成】検索情報に基づいて、疾病の原因特定を支援するための情報、及び疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報の少なくとも一方を含む分子診断支援情報を生成し提示する。この分子診断支援情報は、疾病の原因として予想される疾病フロー、疾病フローの中で生成される機能・生理・形態表現の原因となる特定分子を標識する分子標識薬剤、標準的なモレキュラーイメージング診断法、疾病フローに関する治療法・治療薬等は含み、また、例えば相関値に基づく優先順、疾病フロー間の内容比較を容易にする対照表、現在の機能・生理・形態表現に関連する疾病フロー及びその前段及び後段の疾病フローを一連の流れで示すフローマップ等の所定の形態で表示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検索情報を取得する取得手段と、
疾病動態の因果関係を示す複数の疾病フローを格納する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースを検索し、前記検索情報に関連する少なくとも一つの疾病フローを抽出する検索手段と、
検索された前記少なくとも一つの疾病フローを含む分子診断支援情報を生成する情報処理制御手段と、
前記分子診断支援情報を提示する提示手段と、
を具備することを特徴とする分子診断支援装置。
【請求項2】
前記検索手段が複数の疾病フローを抽出した場合には、前記情報処理制御手段は、前記複数の疾病フローが所定の基準で配列された前記分子診断支援情報を生成することを特徴とする請求項1記載の分子診断支援装置。
【請求項3】
疾病フローと検索情報との組み合わせ毎に重み係数を定義したテーブルを格納する第2のデータベースをさらに具備し、
前記検索手段が複数の疾病フローを抽出した場合には、前記情報処理制御手段は、前記テーブルに基づいて疾病フロー毎の評価値を計算し、当該評価値に基づいて順位付けされた前記複数の疾病フローを含む分子診断支援情報を生成すること、
を特徴とする請求項2記載の分子診断支援装置。
【請求項4】
疾病フローと検索情報との組み合わせ毎に重み係数を定義したテーブルを格納する第2のデータベースをさらに具備し、
前記情報処理制御手段は、前記テーブルに基づいて疾病フロー毎の評価値を計算し、当該評価値を含む前記分子診断支援情報を生成すること、
を特徴とする請求項1記載の分子診断支援装置。
【請求項5】
前記情報処理制御手段は、ある疾病の機能表現、生理表現、形態表現のいずれかに関連すると推定される疾病フロー、及びその前段及び後段の疾病フローを含む分子診断支援情報を生成することを特徴とする請求項4記載の分子診断支援装置。
【請求項6】
疾病フローを特定するための分子診断法に関する情報を格納する第3のデータベースをさらに具備し、
前記検索手段は、前記第3のデータベースを検索し、抽出された前記少なくとも一つの疾病フローを特定するための分子診断法に関する情報を抽出し、
前記情報処理制御手段は、抽出された前記分子診断法に関する情報を含む前記分子診断支援情報を生成すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の分子診断支援装置。
【請求項7】
前記分子診断法に関する情報は、疾病フローの中で生成される機能表現、生理表現、形態表現のいずれかの原因となる特定分子を標識するための標識薬、造影剤、検査法、疾病フローの中で生成される機能表現、生理表現、形態表現のいずれかの原因となる特定分子を検出するためのモレキュラーイメージング診断法のいずれかを含むことを特徴とする請求項6記載の分子診断支援装置。
【請求項8】
疾病フローを阻止又は抑制するための治療に関する情報を格納する第4のデータベースをさらに具備し、
前記検索手段は、前記第4のデータベースを検索し、抽出された前記少なくとも一つの疾病フローを阻止又は抑制するための前記治療に関する情報を抽出し、
前記情報処理制御手段は、抽出された前記治療に関する情報を含む前記分子診断支援情報を生成すること、
を特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の分子診断支援装置。
【請求項9】
前記治療に関する情報は、疾病フローに関する治療法、治療薬、既に発現している機能表現、生理表現、形態表現のいずれかに引き続き起こることが予想される疾病フロー、疾病フォローに関する情報、注意事項のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項8記載の分子診断支援装置。
【請求項10】
前記検索情報は、患者情報、診断情報、病歴情報、患者家族の病歴情報、組織病理検査情報、電子顕微鏡診断情報、蛍光/近赤外スペクトロスコピー情報、血液検査情報、DNA検査情報、抗体/タンパク反応検査情報、マーカー検査情報、疾病名、疾病フロー、標識試薬名、治療法名、治療薬剤名の少なくともいずれかを含むこと特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の分子診断支援装置。
【請求項11】
前記情報処理制御手段は、前記分子診断支援情報に含まれるモレキュラーイメージング診断法を実行するための予約に関するオーダー、又は前記分子診断支援情報に含まれる薬剤の注文に関するオーダーを発行することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の分子診断支援装置。
【請求項12】
コンピュータに分子診断支援情報を生成させ提示させるためのプログラムであって、
前記コンピュータの制御手段に、
検索情報を取得させる取得機能と、
疾病動態の因果関係を示す複数の疾病フローを格納する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースを検索させ、前記検索情報に関連する少なくとも一つの疾病フローを抽出させる検索機能と、
検索された前記少なくとも一つの疾病フローを含む分子診断支援情報を生成させる情報生成機能と、
前記分子診断支援情報を提示させる提示機能と、
を実現させることを特徴とする分子診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、モレキュラーイメージング(分子イメージング)技術を応用した疾病の診断(分子診断)を支援するためのシステム等であって、疾病の原因を迅速に特定するために必要な情報を提示し、疾病原因等の特定をサポートするシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像診断技術の急速な進歩に伴い、生体における機能的・生理的・形態的表現の発現を、従来よりも遥かに初期の段階で捉えられるようになってきている。また、画像診断のみならず、ヒト遺伝子情報の解析完了に伴い、遺伝的な疾患に対する原因遺伝子の特定が進みつつある。これにより、多くの疾患が遺伝子の変化・発現やある特定のタンパクの生成・生体内物質の生成バランス異常に起因して生体内の機能的・生理的・形態的な変化を誘起し、疾病を引き起こすことが判明しつつある。さらに、近年のバイオテクノロジーの進歩は、このような遺伝子の発現やタンパク・生体内物質に起因する疾病において、例えば標識アンチセンスを用いたNorthern blot法や抗体標識によるWestern blot法、免疫組織染色、遺伝子チップなどのin vitroでの分子生物学的解析手法により、疾病の本来の原因を正確に特定して正しい治療法を提示したり、リスクの高い疾患を予測したりすることを徐々に可能にせしめつつある。
【0003】
この流れの中で、PET/SPECTやMRI・光等を用いたモレキュラーイメージング技術が、超早期診断を可能にする技術アイテムとして期待を浴びている(例えば、非特許文献1参照)。この技術は、mRNAやタンパク・抗体等を標識して生体内での分子動態を非侵襲にin vivo観測するものであり、従来in vitroでしか取得が困難であった分子生物学的変化を画像で捉えることができる。また、本技術では、対象となる組織・細胞をバイオプシ等により取り出して検査を行ったり、血液等を採取して検査を行ったりする必要が無く、しかもその変化がどの部位で起きているのかを3次元的に把握できるというメリットがあり、従来の組織病理検査や血液検査等の診断を一変させる可能性を秘めている。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【非特許文献1】Weissleder R, et al.: Molecular Imaging, Radiology, 219:pp316-333, 2001
【特許文献1】特開2004−267273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある機能的・生理的・形態的表現の発現には図8に示すように、時系列的な原因としての遺伝子の発現や、その結果としてのタンパクの生成が付随する。モレキュラーイメージングは、これらの表現(すなわち症状)が発生する以前の段階の現象を捉えることができる。1つの表現の発現は、1つの疾病フロー(疾病動態の因果関係)に1対1で対応しているわけではなく、通常はその症状に至るまでに複数の疾病フローが考えられる。また、ある症状が別の症状やフローの原因となっている場合も有り、これら様々な要因が密接に絡み合って疾病表現を形成している。これらの疾病動態を解析するために、従来、病理医や分子生物学者は、主に顕微鏡を中心とした光学的手法や蛍光光学的標識技術・分光技術により組織病理学的・分子生物学的評価をし、組織病理検査等を行っている。この様な現状に加えて、将来的にはin vivoモレキュラーイメージング上での評価が可能になってくることが予想される。また、本技術の普及に伴って画像診断で分子生物学的情報が得られるようになると、放射線科医がその診断に必要な標識薬剤の選択や、診断法の選択を行うようになると予想される。しかしながら、現在も次々と新たな標識薬剤等が開発されつつあるため、分子生物学を専門としない放射線科医がその全てを把握し最適な診断薬・診断法を選択することは、困難であると言える。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、疾病の原因追跡や将来起こりうる症状を予測するために必要な情報を提示することで、正確且つ効率的な分子診断を可能とする分子診断支援装置及び分子診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、検索情報を取得する取得手段と、疾病動態の因果関係を示す複数の疾病フローを格納する第1のデータベースと、前記第1のデータベースを検索し、前記検索情報に関連する少なくとも一つの疾病フローを抽出する検索手段と、検索された前記少なくとも一つの疾病フローを含む分子診断支援情報を生成する情報処理制御手段と、前記分子診断支援情報を提示する提示手段と、を具備することを特徴とする分子診断支援装置である。
【0009】
請求項13に記載の発明は、コンピュータに分子診断支援情報を生成させ提示させるためのプログラムであって、前記コンピュータの制御手段に、検索情報を取得させる取得機能と、疾病動態の因果関係を示す複数の疾病フローを格納する第1のデータベースと、前記第1のデータベースを検索させ、前記検索情報に関連する少なくとも一つの疾病フローを抽出させる検索機能と、検索された前記少なくとも一つの疾病フローを含む分子診断支援情報を生成させる情報生成機能と、前記分子診断支援情報を提示させる提示機能と、を実現させることを特徴とする分子診断支援プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
以上本発明によれば、疾病の原因追跡や将来起こりうる症状を予測するために必要な情報を提示することで、正確且つ効率的な分子診断を可能とする分子診断支援装置及び分子診断支援プログラムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
図1は、本実施形態に係る分子診断支援システムを示した図である。同図に示すように、本分子診断支援システムは、分子診断支援装置1、電子カルテサーバ50、RIS/PACS(Radiology Information System(放射線部門情報管理システム)/Picture Archiving and Communication System(医用画像保管通信システム))サーバ51、PIS/LIS(Pathology Information System(病理情報システム)/ Laboratory Information System(実験・検査情報システム))サーバ52、外部データベース53を具備している。
【0013】
電子カルテサーバ50は、医用レポート作成装置等によって生成された電子カルテを格納する。格納された電子カルテは、患者ID、検査項目、時間情報に基づいて検索することができる。
【0014】
RIS/PACSサーバ51は、X線CT(Computed Tomography)装置(図1では「CT」と図示。)、MRI(Magnetic Resonance imaging)装置(図1では「MRI」と図示。)、X線診断装置(図1では「XR」(X-Ray imaging)と図示。)、乳房撮影装置(図1では「MG」(Mammography)と図示。)、ディジタルラジオグラフィ装置(図1では「DR」(Digital Radiography)と図示。)、コンピューテッドラジオグラフィ装置(図1では「CR」(Computed Radiography)と図示。)等の検査装置からの画像情報や診断情報をLAN経由で受信し、所定の保存領域(図示しない)に蓄積保存する。また、RIS/PACSサーバ51は、分子診断支援装置1等の各種装置からの要求に応答して、画像情報、診断情報等をLAN経由で送信する。さらに、RIS/PACSサーバ51は、画像データに限らず、検査関連情報、オーダー情報、レポート情報なども保存する場合があり、また、単独のサーバ又は複数のサーバの連携によって構成される。
【0015】
PIS/LISサーバ52は、付帯診断情報を所定の保存領域(図示せず)に蓄積保存する。ここで、付帯診断情報とは、診断情報の付帯情報として用いられるものであり、本人病歴情報や家族の病歴情報、組織病理検査情報、電子顕微鏡診断情報、蛍光・近赤外スペクトロスコピー情報、血液検査情報、DNA検査情報、抗体・タンパク反応検査情報、マーカー検査情報等の各種検査情報等の少なくとも一つを含む情報である。この付帯診断情報は、任意の患者ID、診断情報等に基づいて検索することができ、また、場合によっては、電子カルテサーバ50、RIS/PACSサーバ51、外部データベース53に含まれる場合もある。このPIS/LISサーバ52は、単独のサーバ又は複数のサーバの連携によって構成される。
【0016】
外部データベース53は、当該院外のネットワークに存在するデータベースであり、画像データ等の種々の情報を格納する。
【0017】
分子診断支援装置1は、分子診断を支援するための情報(分子診断支援情報)を生成し、所定の形態にて表示する。この分子診断支援情報の生成については、後で詳しく説明する。
【0018】
図2は、本分子診断支援装置1の構成を示したブロック図である。同図に示す様に、情報処理制御部10、操作部12、レポート作成部13、オーダー作成部14、表示部15、通信I/F20、検索情報取得部21、評価処理部22、検索制御部30、検索部31、データベース部32を具備している。
【0019】
情報処理制御部10は、本分子診断支援装置1の各構成要素を静的、動的に統括制御する。特に、情報処理制御部10は、後述する分子診断支援処理において、検索制御部30から受け取った情報を用いて分子診断支援情報を生成する。
【0020】
操作部12は、オペレータからの各種指示、条件設定、種々の検索情報等を本分子診断支援装置1にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0021】
レポート作成部13は、例えば、分子診断の結果等に基づいて、操作部12からの入力に従って診断レポートを作成する。
【0022】
オーダー作成部14は、分子診断支援情報に含まれる所定の試薬等に関するオーダー、又は画像検査オーダー等を、必要に応じて作成する。作成されたオーダーは、自動的に又はユーザからの指示に従って、通信I/F20を介して専用業者サーバやRIS/PACSサーバ51に送信される。
【0023】
表示部15は、各種情報の入力画面、各種画像、電子カルテ、後述する分子診断支援情報等を所定の形態で表示する。
【0024】
通信I/F20は、入力装置11や、キーボード12等からの操作者による指示入力に従って、電子カルテ50、RIS/PACS51、PIS/LIS52、外部データベース53等から各種情報を送受信し、これを診断結果取得部21に提供する。
【0025】
検索情報取得部21は、電子カルテサーバ50、RIS/PACSサーバ51、PIS/LISサーバ52、外部データベース53等から、通信I/F20を介して検索情報を取得し、検索制御部30に送り出す。ここで、検索情報とは、データベース部32を検索するために用いられる情報である。具体例としては、患者情報、診断情報、付帯診断情報、疾病名、疾病フロー、標識試薬名、治療法名、治療薬剤名等が挙げられる。
【0026】
評価処理部22は、機能・生理・形態表現と検索された疾病フローとの相関値等を計算することで、分子診断支援情報を構成するコンテンツを評価する。この評価は、テーブルDB32dに格納されている重み係数テーブルに従って実行される。
【0027】
検索制御部30は、情報処理制御部10からの指示に従って検索部31を制御する。また、検索制御部30は、データベース部32を検索することで抽出された各種情報を情報処理制御部11に送り出す。
【0028】
データベース部32は、疾病フローDB32a、診断DB32b、治療DB32c、テーブルDB32dを有している。疾病フローDB32aは種々の疾病フローを、診断DB32bは種々の診断法、検査・標識薬等を、治療DB32cは種々の治療法、治療薬を、テーブルDB32dは評価処理部22が実行する評価処理において利用される重み係数テーブル(疾病フロー及び表現と付帯診断情報との関係毎(組み合わせ毎)に重み係数を定義したテーブル)を、それぞれ格納している。各DBにおいては、任意の検索情報に基づいて、その検索情報に関連する情報を検索し、抽出することが可能である。
【0029】
検索部31は、疾病検索部31a、診断検索部31b、治療検索部31cを有しており、検索情報に基づいてデータベース部32を前方検索(原因方向の検索)又は後方検索(結果方向の検索)し、所定の情報を抽出する。すなわち、疾病検索部31aは、疾病フローDB32aを検索し、検索情報と関連のある疾病フローを抽出する。診断検索部31bは、診断DB32bを検索し、検索情報と関連のある診断方法等を抽出する。治療検索部31cは、治療DB32bを検索し、検索情報と関連のある治療方法等を抽出する。抽出された疾病フロー等は、情報処理制御部11に送信され、分子診断支援情報の生成に利用される。
【0030】
(分子診断支援機能)
まず、本分子診断支援装置が有する分子診断支援機能の前提となる考え方について説明する。図3は、ある疾病の症状−機能・生理・形態表現41に関連する前後の疾病フローを説明するための図である。同図に示すように、ある機能・生理・形態表現41には、その表現=症状に至るまでの過程として例えば遺伝子DNAの発現の結果としてmRNAに転写され(mRNA転写42)、リポソーム上での翻訳を経てタンパクが合成される(タンパク合成43)。翻訳されたタンパクは活性化や相互作用等の翻訳後修飾を経て目的とする生理活性を獲得する(目的生理活性の獲得44)。この生理活性の獲得は、通常は遺伝子発現の目的に合致した生理活性であり、最終的に目的に合致した機能・生理・形態表現41に収束する。この一連のフローにおいて、例えば予期しない遺伝子DNAの発現や、タンパクの異常産生、翻訳後の活性化や相互作用の修飾異常等により、異常な機能・生理・形態表現として現れたものが一般的に疾病とされる。
【0031】
しかしながら、ある機能・生理・形態表現41に至るフローは疾病フローαの1つだけとは限らず、疾病フローβや疾病フローγ等々の別のフローに起因して、もしくはその複数が有機的に複合して結果的に同じ機能・生理・形態表現41に収束している場合もあり、疾病の原因の解析を非常に困難なものとしている。
【0032】
また正常な生体では、様々な要因によって同様のフローに則り様々な表現が発現し、生体全体の恒常性を維持する機構が働いている。例えば、過剰な機能・生理・形態表現41が現れた場合にはそのフローにより産生されたタンパクの機能を抑制する別の抑制フローが働き、過剰な表現の発現を抑制する。この抑制機構の異常によっても同様に疾病が発現する。更に、ある機能・生理・形態表現41が1つもしくは複数の他の表現/フローA・・・を惹起することもある。この他の表現/フローが抑制機構である場合も有るし、別の疾病を引き起こすフローである場合もある。
【0033】
このように、生体における恒常性の維持及び疾病の発現は様々な要因が重なり合った非常に複雑なものである。この要因の正確かつ迅速な解明が、疾病の正しい原因の解明に繋がり、ひいてはその正しい治療法の提示に繋がる。
【0034】
そこで、本分子診断支援機能では、分子診断において有効な支援をするために、診断情報、付帯診断情報等に基づいて分子診断支援情報を生成し、これをユーザに提供する。
【0035】
ここで、分子診断支援情報とは、疾病の原因特定を支援するための情報、及び疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報の少なくとも一方を含むものである。疾病の原因特定を支援するための情報とは、疾病の原因として予想される疾病フロー、予測される疾病フローの結果として次段階で発生が予想される疾病/機能・生理・形態表現(一つである必要はない)、予測される疾病フローの中で生成される機能・生理・形態表現の原因となるmRNAやタンパク等の特定分子を標識する分子標識薬剤や造影剤、検査・標識薬、これらの標識薬を使用する(すなわち、特定分子を検出するための)標準的なモレキュラーイメージング診断法等の少なくともいずれかを含むものである。この疾病の原因特定を支援するための情報をユーザに提示することで、例えば図3に示す様に、ほぼ同じ機能・生理・形態表現=症状を示す原因と考えられる疾病フローα、β、γの経路の中で生成される複数の特定分子のうちで、どの分子の存在を特定すればどの疾病フローが原因であるかが特定できるか、また、その特定のために必要な標識薬剤の存在(有無)や最適なモレキュラーイメージング診断法等のサジェスチョンを検査者に与えることが可能となる。なお、疾病の原因特定を支援するための情報は、データベース部32を前方検索することによって抽出される。
【0036】
一方、疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報とは、モレキュラーイメージング診断法により疾病フローが確定した場合、当該疾病フローに関する治療法・治療薬等(又は予防法・予防薬)、既に発現している機能・生理・形態表現に引き続き起こることが予想される疾病フロー、疾病フォロー計画の提示、注意事項の通知等の少なくともいずれかを含むものである。この疾病の原因特定を支援するための情報をユーザに提示することで、疾病の進行抑制をサポートすることができるため、より上流段階でのDisease Managementが可能となる。なお、疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報は、データベース部32を後方検索することで抽出される。
【0037】
これらの各情報は、所定の表示形式で分子診断支援情報としてユーザに提示される。代表的な表示形式としては、対照表形式、フローマップ形式を挙げることができる。ここで、対照表形式とは、疾病の原因特定を支援するための情報、疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報を所定の基準で配列した対照表の形態で提示するものである。また、フローマップ形式とは、ある疾病の機能・生理・形態表現に関連すると推定される疾病フロー、及びその前段及び後段の疾病フローを、一連のフローマップとしての形態で提示するものである。
【0038】
図4は、対照表形式としての分子診断支援情報の一例を示した図である。同図では、検索情報に基づいて抽出された分子診断支援情報(例えば、疾病フロー、相関値、分子診断法、治療法/治療薬等)が、評価処理部22において計算される相関値の大きい順(優先順)に並べられた対照表形式で表示されている。
【0039】
図5は、フローマップ形式としての分子診断支援情報の一例を示した図である。同図では、現在の疾病に関連すると推定される疾病フロー等、及びその前段及び後段の疾病フローを結ぶ矢印上に、相互の因果関係の度合いを示す相関値が表示される。また、各ステージや各疾病フローに対応する分子診断法、治療法は、当該マップフローの各疾病フロー等をポインタ等で指示することで、ウィンドウ表示されるようになっている。
【0040】
ユーザは、各表形式で提示される分子診断支援情報を検討することで、当該疾病と相関値の高いフロー(すなわち、当該疾病の原因と予想される確率が高いフロー)、及びそのフローにおいて生成される特定分子等を確認するための分子診断法、治療法等を選択することができる。なお、図4、図5においては、複数の疾病フロー等が含まれる分子診断支援情報の例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、例えば検索の結果、単一の疾病フローのみが抽出される場合或いは該当する疾病フローが存在しない場合には、抽出された単一の疾病フローのみを表示或いは該当する疾病フローが存在しない旨を表示するようにしてもよい。
【0041】
(動作)
次に、本分子診断支援装置1の分子診断支援処理における動作について説明する。
【0042】
図6は、疾病の原因特定を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する場合における処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、検索情報取得部21は、操作部12から入力される患者情報等に基づいて、電子カルテサーバ50、RIS/PACSサーバ51、PIS/LISサーバ52、外部データベース53等から、通信I/F20を介して検索情報を取得する(ステップS1)。取得した検索情報は、自動的に検索制御部30に送り出される。
【0043】
次に、検索部31は、検索制御部30から受け取った検索情報に基づいてデータベース部32を前方検索し、当該検索情報に関連する情報を抽出する(ステップS2)。抽出された情報は、検索制御部30を介して情報処理制御部30に送り出される。
【0044】
次に、情報処理制御部30は、前方検索によって得られた情報が複数の疾病フローを含むか否かを判定する(ステップS3)。判定の結果、含まれる疾病フローが一つである場合には、前方検索によって得られた情報に含まれる疾病フロー、当該疾病フローにおいて生成される特定分子を標識するための薬剤等、当該薬剤を使用する分子診断法等を所定の形態(例えば、対照表形式、フローマップ形式等)で提示するための分子診断支援情報を生成する(ステップS4)。
【0045】
一方、判定の結果、含まれる疾病フローが複数である場合には、評価処理部21は、重み係数テーブルに基づいて、各フローと機能・生理・形態表現との相関値を計算する(ステップS5)。情報処理制御部10は、計算された相関値等に従って、前方検索によって得られた情報を例えば優先順に配列し、疾病の原因特定を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する(ステップS6)。
【0046】
表示部15は、情報処理制御部10の制御に従って、ステップS4又はステップS6において生成された分子診断支援情報を表示する(ステップS7)。ユーザは、表示された分子診断支援情報を参照しながら、今回の機能・生理・形態表現の原因として蓋然性の高い疾病フローを選択する。オーダー作成部14は、選択された疾病フローに対応する分子診断において用いられる標識試薬等のオーダーを専用業者のサーバに送信する。また、オーダー作成部14は、選択された疾病フローに対応する分子診断予約のための(すなわち、画像検査予約のための)オーダー作成し、RIS/PACSサーバ51に送信する(ステップS8)。
【0047】
次に、レポート作成部14は、ステップS6において生成された分子診断支援情報、及び当該分子診断支援情報の中からユーザがいずれの疾病フローや分子診断法を選択したか等の情報を含むレポートを作成し、電子カルテサーバ50に送信する(ステップS9)。
【0048】
図7は、疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する場合における処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、検索情報取得部21は、操作部12から入力される患者情報等に基づいて、電子カルテサーバ50、RIS/PACSサーバ51、PIS/LISサーバ52、外部データベース53等から、通信I/F20を介して検索情報を取得する(ステップS11)。検索部31は、検索制御部30から受け取った検索情報に基づいてデータベース部32を後方検索し、当該検索情報に関連する情報を抽出する(ステップS12)。
【0049】
情報処理制御部30は、前方検索によって得られた情報が複数の疾病フローを含むか否かを判定する(ステップS13)。判定の結果、含まれる疾病フローが一つである場合には、後方検索によって得られた情報に含まれる疾病フロー、当該フローに関する治療法・治療薬等、現在の表現に引き続いて発生すると予測される疾病フロー等を等を所定の形態(例えば、対照表形式、フローマップ形式等)で提示するための分子診断支援情報を生成する(ステップS14)。
【0050】
一方、判定の結果、含まれる疾病フローが複数である場合には、評価処理部21は、重み係数テーブルに基づいて、各フローと機能・生理・形態表現との相関値を計算する(ステップS15)。情報処理制御部10は、計算された相関値等に従って、前方検索によって得られた情報を例えば優先順位順に配列し、疾病の原因特定を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する(ステップS16)。
【0051】
表示部15は、情報処理制御部10の制御に従って、ステップS14又はステップS16において生成された分子診断支援情報を表示する(ステップS17)。ユーザは、表示された分子診断支援情報から所望する疾病フローを選択する。オーダー作成部14は、選択された疾病フローの治療に用いる治療薬等のオーダーを専用業者のサーバに送信する(ステップS18)。
【0052】
次に、レポート作成部14は、ステップS6において生成された分子診断支援情報、及び当該分子診断支援情報の中からユーザがいずれの疾病フローや分子診断法を選択したか等の情報を含むレポートを作成し、電子カルテサーバ50に送信する(ステップS19)。
【0053】
なお、図6のステップS9において生成されるレポート、図7のステップS19において生成されるレポート、分子診断において作成されるレポート等は、電子カルテサーバ50に逐次保存され管理される。従って、例えば図6(又は図7)に示す一連の分子診断支援処理を実行した後、再度分子診断支援処理を実行する場合には、過去の各種レポートを含む情報を用いて分子診断支援情報が生成されることになる。
【0054】
また、好ましい分診断支援情報が得られなければ、異なる検索情報により図6、図7に示すルーチンを繰り返す。なお、この場合ある1つの疾病フローが確定されても、例えば複合的な疾患では他のフローも少なからず影響を与えているということも考えられる。従って、全てのフローを確認するため、複数の検索情報より分子診断支援処理を複数回実施する方法も考えられる。
【0055】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
本分子診断支援装置は、検索情報に基づいて、疾病の原因特定を支援するための情報、及び疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報の少なくとも一方を含む分子診断支援情報を生成し、提示することができる。この分子診断支援情報には、疾病の原因として予想される疾病フロー、疾病フローの中で生成される機能・生理・形態表現の原因となる特定分子を標識する分子標識薬剤、これらの標識薬を使用する標準的なモレキュラーイメージング診断法、疾病フローに関する治療法・治療薬等が含まれる。従って、ユーザは、提示される情報を検討し、当該疾病と相関値の高いフロー及びそのフローにおいて生成される特定分子等を確認するための分子診断法、治療法等を選択することができる。その結果、疾病の根本原因の解析するためのモレキュラーイメージングによる医学的検査を支援することが可能となる。また、主にモレキュラーイメージング診断法に基づいて特定された疾病フローを遮断するための治療法や治療薬等の提示を効果的にサポートでき、効果的なDisease Managementを実現することができる。
【0057】
また、提示される分子診断支援情報は、例えば相関値に基づく優先順、疾病フロー間の内容比較を容易にする対照表、現在の機能・生理・形態表現に関連する疾病フロー及びその前段及び後段の疾病フローを一連の流れで示すフローマップ等の所定の形態で表示される。従って、ユーザは、現在の機能・生理・形態表現と疾病フローとの相関の程度を、例えば疾病フロー毎に計算される相関値によって定量的に、或いは提示される優先順序として認識することができる。従って、医師等のユーザは、複数の疾病フローや治療薬等の中から適切なものを迅速に選択することができる。
【0058】
また、本装置によって提供される分診断支援情報は、疾病フローのみならず、疾病フローを確定するための検査・診断に必要な標識薬や標識抗体、診断手法等の情報を検査者に提示することも可能である。この様な情報の提示は、バイオテクノロジーの進展に伴って増え続ける分子診断に関する情報を抜けなく検査者に提示し、病気の根本原因や今後予想される病気の進展に関する情報を確実にサジェスチョンするために大変有効であると考えられる。
【0059】
また、本分子診断支援装置は、選択された疾病フローに対応する分子診断において用いられる標識試薬等のオーダー、及び選択された疾病フローに対応する画像検査予約のためのオーダーを、所定のサーバに自動的に送信する。従って、ユーザは、専門業者や画像撮影部門に別途オーダーを発行する必要はなく、その結果、分子診断における作業負担の軽減できると共に、試薬等の発注ミスや発注漏れを防止することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0061】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CDROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0062】
(2)上記実施形態においては、ある表現が出現した場合にその原因を検索する場合を例として説明した。これに対して、病後でなく、予め特定の原因を検索するための予防診断に利用する構成であってもよい。
【0063】
(3)上記実施形態では、診断結果は電子カルテ50、RIS/PACS51、PIS/LIS52より取得した。しかしながら、これに限定されず、例えばユーザが操作部12を介して入力した検索情報に基づいて同様の疾病フロー検索等を実施・表示することも可能である。この様な使い方は、疾病要因解析の教育にも役立つものと予想される。
【0064】
(4)上記実施形態では、同システム内の疾病フローDB32、診断DB34、治療DB36を使用して検索を行ったが、検索制御部30からの指示により通信I/Fを介して外部DB53を使用して検索を行うことも可能である。もしくは定期的に外部DB53にアクセスしてデータベース部32の内容をリファインしておき、最新の情報のみを使用して実施するようにすることも可能である。
【0065】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上本発明によれば、疾病の原因追跡や将来起こりうる症状を予測するために必要な情報を提示することで、正確且つ効率的な分子診断を可能とする分子診断支援装置及び分子診断支援プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本実施形態に係る分子診断支援システムを示した図である。
【図2】図2は、本分子診断支援装置1の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、ある疾病の症状−機能・生理・形態表現に関連する前後の疾病フローを説明するための図である。
【図4】図4は、対照表形式としての分子診断支援情報の一例を示した図である。
【図5】図5は、フローマップ形式としての分子診断支援情報の一例を示した図である。
【図6】図6は、疾病の原因特定を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する場合における処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、疾病の進行抑制のための治療を支援するための情報を含む分子診断支援情報を生成する場合における処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】図8は、分子診断に関する概略を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1…分子診断支援装置、10…情報処理制御部、12…操作部、13…レポート作成部、14…オーダー作成部、15…表示部、20…通信I/F、21…診断結果取得部、22…評価処理部、30…検索制御部、31…検索部、32…データベース部、50…電子カルテサーバ、51…RIS/PACSサーバ、52…PIS/LISサーバ、53…外部データベース
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
【出願日】 平成18年7月27日(2006.7.27)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠

【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊

【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司

【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎


【公開番号】 特開2008−29517(P2008−29517A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205115(P2006−205115)