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【発明の名称】 眼疲労測定装置
【発明者】 【氏名】東 洋邦

【氏名】篠田 博之

【氏名】山口 秀樹

【要約】 【課題】眼疲労を精度よく測定できる眼疲労測定装置11を提供する。

【構成】被験者が、視軸15上に位置する異なる屈折力のレンズ22,23のうちの一方を通じて視標16を視認し、焦点が合ったときにボタンスイッチ26を押す。ボタンスイッチ26を押すことで、レンズ22,23のうちの他方を視軸15上に移動させる。被験者が、視軸15上に移動したレンズ22,23のうちの他方を通じて視標16を視認し、焦点が合ったときにボタンスイッチ26を押す。このような作業を所定回数繰り返す。ボタンスイッチ26を押す間隔を計時し、つまり目の焦点の調節応答時間を計時し、調節応答時間に基づいて眼疲労を測定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視標と;
視標を視認する視軸上に配置される光学系、および光学系の屈折力を切り換える駆動部を有する光学系切換部と;
光学系を通じて視標を視認する焦点の合焦時に操作される操作部と;
操作部の操作毎に駆動部で光学系の屈折力を切り換えさせるとともに、操作部の操作間隔を計時する制御部と;
を具備していることを特徴とする眼疲労測定装置。
【請求項2】
視標と;
視標を視認する視軸上に配置される光学系、および光学系の屈折力を視標を視認する被験者の遠点と近点とに切り換える駆動部を有する光学系切換部と;
光学系を通じて視標を視認する被験者の遠点と近点とでの焦点の合焦時に操作される操作部と;
操作部の操作毎に駆動部で光学系の屈折力を被験者の遠点と近点とに対応して切り換えさせるとともに、操作部の操作間隔を計時する制御部と;
を具備していることを特徴とする眼疲労測定装置。
【請求項3】
制御部は、測定によって得られたデータを測定前に予め登録される被験者の測定前の状態と比較して眼疲労を判定する
ことを特徴とする請求項1または2記載の眼疲労測定装置。
【請求項4】
視標および光学系切換部が収容されるとともに明るさを制御可能とする照明部が収容されたカバー体を具備している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の眼疲労測定装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疲労を測定する眼疲労測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼疲労を測定する眼疲労測定装置としてフリッカー測定器がある。このフリッカー測定器は、被験者が見る発光素子を点滅させながら点滅の周波数を変化させ、その点滅する光が連続する光として見えたときの周波数を測定し、これをフリッカー値として評価している。このフリッカー値の値が小さいほど、被験者の視覚系の低下つまり疲労していることを示すもので、簡単に眼疲労を評価できるものとなっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−180664号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のフリッカー測定器では、光源の輝度、明暗比、大きさ、色等でフリッカー値が異なってくるので、測定値を比較する場合には、これらの条件が同じでなければならない。現在、日本ではフリッカー測定器の基本的機能が規格化されているが、フリッカー値は疲労以外の身体運動、精神的緊張、照明による網膜の明暗順応等の要因に影響されやすいので、眼疲労の測定にばらつきが生じやすい問題がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、眼疲労を精度よく測定できる眼疲労測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の眼疲労測定装置は、視標と;視標を視認する視軸上に配置される光学系、および光学系の屈折力を切り換える駆動部を有する光学系切換部と;光学系を通じて視標を視認する焦点の合焦時に操作される操作部と;操作部の操作毎に駆動部で光学系の屈折力を切り換えさせるとともに、操作部の操作間隔を計時する制御部と;を具備しているものである。
【0006】
視標には、例えば、文字や図柄等の視対象物を表示してもよい。
【0007】
光学系切換部の光学系は、例えば、屈折力の異なる2種類のレンズを視標を視認する視軸上に移動させたり、複数のレンズの組み合わせによって屈折力を可変するようにしてもよい。また、駆動部は、例えば、モータ、ソレノイド、シリンダ等が用いられ、光学系に屈折力の異なる2種類のレンズを用いた場合にはそれらレンズを移動させるようにする。
【0008】
操作部は、眼疲労を測定する被験者が操作するもので、例えば、ボタン、スイッチ等を用いることができる。
【0009】
制御部は、操作部の操作間隔を計時する計時機能を有するほか、操作間隔を記憶する記憶機能や、操作間隔に基づいて眼疲労の度合を判定する判定機能を備えていてもよい。
【0010】
そして、光学系を通じて視標を視認する焦点の合焦時に操作される操作部の操作毎に光学系の屈折力を切り換え、その操作部の操作間隔つまり被験者の焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて被験者の眼疲労を精度よく測定する。さらに、光学系の屈折力により焦点を切り換えるため、視標を移動させて焦点を切り換える場合に比べて、小形になる。
【0011】
請求項2記載の眼疲労測定装置は、視標と;視標を視認する視軸上に配置される光学系、および光学系の屈折力を視標を視認する被験者の遠点と近点とに切り換える駆動部を有する光学系切換部と;光学系を通じて視標を視認する被験者の遠点と近点とでの焦点の合焦時に操作される操作部と;操作部の操作毎に駆動部で光学系の屈折力を被験者の遠点と近点とに対応して切り換えさせるとともに、操作部の操作間隔を計時する制御部と;を具備しているものである。
【0012】
被験者の遠点、近点は、明瞭に視認できる最も遠い点、最も近い点であることが好ましいが、それらの付近でもよく、つまり遠点付近、近点付近が含まれる。また、被験者の遠点の測定は凸レンズを用いて擬似的に遠くを見るようにして視対象物を近付けたり遠ざけて測定し、近点はレンズなしあるいは凹レンズを用いて視対象物を近付けたり遠ざけて測定する。
【0013】
そして、光学系を通じて視標を視認する被験者の遠点と近点とでの焦点の合焦時に操作される操作部の操作毎に光学系の屈折力を被験者の遠点と近点とに対応して切り換え、その操作部の操作間隔つまり被験者の遠点と近点とでの焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて被験者の眼疲労を精度よく確実に測定する。さらに、光学系の屈折力により被験者の遠点と近点との焦点を切り換えるため、視標を移動させて被験者の遠点と近点との焦点を切り換える場合に比べて、視標を移動させるためのスペースを小さく、または必要としなくなるため、眼疲労測定装置を小形にすることができる。
【0014】
請求項3記載の眼疲労測定装置は、請求項1または2記載の眼疲労測定装置において、制御部は、測定によって得られたデータを測定前に予め登録される被験者の測定前の状態と比較して眼疲労を判定するものである。
【0015】
被験者の測定前の状態には、起床時間、就寝時間、目の疲労感、起床してからの視作業の有無と量と時間、実験開始時刻、生体情報等が含まれる。
【0016】
そして、測定によって得られたデータを、測定前に予め登録される被験者の測定前の状態と比較して眼疲労を判定することにより、例えば、視作業による眼疲労を測定する場合に被験者の測定前の状態を考慮して視作業による眼疲労なのかどうかの判定を可能とし、被験者の眼疲労を精度よく評価する。
【0017】
請求項4記載の眼疲労測定装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の眼疲労測定装置において、視標および光学系切換部が収容されるとともに明るさを制御可能とする照明部が収容されたカバー体を具備しているものである。
【0018】
カバー体は外光の影響を遮断可能な容器等で、このカバー体内に配置される照明部により視標を照明するとともに任意の明るさに制御可能とする。
【0019】
照明部には、蛍光ランプ、LED、放電ランプ、白熱ランプ等とこれらランプの明るさを制御する点灯制御装置等が用いられる。
【0020】
そして、視標および光学系切換部が収容されたカバー体内の明るさを制御することにより、任意の照明環境での眼疲労を精度よく測定する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の眼疲労測定装置によれば、光学系を通じて視標を視認する焦点の合焦時に操作される操作部の操作毎に光学系の屈折力を切り換え、その操作部の操作間隔つまり被験者の焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて被験者の眼疲労を精度よく測定できる。さらに、光学系の屈折力により焦点を切り換えるため、視標を移動させて焦点を切り換える場合に比べて、小形に構成できる。
【0022】
請求項2記載の眼疲労測定装置によれば、光学系を通じて視標を視認する被験者の遠点と近点とでの焦点の合焦時に操作される操作部の操作毎に光学系の屈折力を被験者の遠点と近点とに対応して切り換え、その操作部の操作間隔つまり被験者の遠点と近点とでの焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて被験者の眼疲労を精度よく確実に測定できる。さらに、光学系の屈折力により被験者の遠点と近点との焦点を切り換えるため、視標を移動させて被験者の遠点と近点との焦点を切り換える場合に比べて、視標を移動させるためのスペースを小さく、または必要としなくなるため、眼疲労測定装置を小形にすることができる。
【0023】
請求項3記載の眼疲労測定装置によれば、請求項1または2記載の眼疲労測定装置の効果に加えて、測定によって得られたデータを測定前に予め登録される被験者の測定前の状態と比較して眼疲労を判定することにより、被験者の眼疲労を精度よく評価できる。
【0024】
請求項4記載の眼疲労測定装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の眼疲労測定装置の効果に加えて、視標および光学系切換部が収容されたカバー体内の明るさを制御することにより、任意の照明環境での眼疲労を精度よく測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は眼疲労測定装置の構成図、図2は経過時間に対する疲労度と調節応答時間との関係を示すグラフ、図3は視作業前の順序回数と調節応答時間との関係を示すグラフ、図4は屈折力の差が3.0Dと8.0Dとにおける被験者の視作業の前後での調節応答時間の関係を示すグラフである。
【0027】
図1に示すように、眼疲労測定装置11は、内部空間12への外光の影響を遮断するカバー体13を備え、このカバー体13の一側面には被験者が両目で覗き込む窓部14が形成されている。窓部14の周辺には被験者の額等をあてがう位置決めパッド等が配設され、被験者の目の位置が規定される。
【0028】
カバー体13内には、窓部14を通じて被験者が視認する視軸(あるいは光軸、または視線)15上に対向配置された視標16、視軸15上で光学系17の屈折力を切り換える光学系切換部18、カバー体13内を照明する照明部19が配置されている。
【0029】
視標16は、窓部14に対向する面に例えば文字や図柄等の視対象物が表示されており、カバー体13内に配設されるレール20によって視軸15に平行な方向に沿って移動可能としている。レール20には、窓部14を覗く被験者の目の角膜からの距離を示す目盛21が表示されている。
【0030】
光学系切換部18は、光学系17として屈折力の異なる2つのレンズ22,23を有し、これらレンズ22,23が視軸15と交差する上下方向に配列されるとともに上下方向に移動可能としている。レンズ22は遠焦点用で凸レンズが用いられ、レンズ23は近焦点用で凹レンズが用いられる。そして、モータ、ソレノイド、シリンダ等を用いた駆動部24により、レンズ22,23の一方が視軸15上に配置されるように切換駆動される。
【0031】
照明部19は、例えば、直線状の蛍光ランプや放電ランプなどのランプ25が用いられ、このランプ25の長手方向が視軸15と平行になるように視標16の移動領域にわたって照明するように配設されている。そして、ランプ25は、例えばインバータ回路を用いた点灯回路によって点灯されるとともに明るさが制御される。
【0032】
また、カバー体13の外部には、被験者が光学系17を通じて視標16を視認する焦点の合焦時に操作する操作部としてのボタンスイッチ26が配置されている。
【0033】
また、光学系切換部18の駆動部24、照明部19の点灯回路、ボタンスイッチ26等が接続され、眼疲労測定装置11を制御する制御部27を備えている。この制御部27は、ボタンスイッチ26の操作毎に駆動部24で光学系17の異なる屈折力のレンズ22,23に切り換えさせるとともに、ボタンスイッチ26の操作間隔を計時、記憶し、さらに眼疲労の度合を判定する機能を有している。
【0034】
すなわち、制御部27は、ボタンスイッチ26の操作間隔を計時する計時部28、この計時部28で計時した操作間隔や測定前に予め入力される被験者の測定前の状態を記憶する記憶部29、測定によって得られたデータを測定前に予め登録された被験者の測定前の状態と比較して眼疲労の度合を判定する判定部30を有している。
【0035】
被験者の測定前の状態には、起床時間、就寝時間、目の疲労感、起床してからの視作業の有無と量と時間、実験開始時刻、生体情報等が含まれる。
【0036】
また、制御部27で測定した操作時間や判定結果を表示するディスプレイや印刷するプリンタなどの図示しない出力手段を備えている。
【0037】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0038】
眼疲労測定装置11は、遠近2つの視対象物を交互に見るときに各視対象物に視線を移して焦点が合うまでの調節応答時間に基づいて眼疲労を測定するものである。
【0039】
まず、眼疲労測定装置11で、眼疲労を測定するのに調節応答時間を用いる理由について説明する。主観の眼疲労に対する簡易的な客観的測定方法を導出するために、疲労を促進する照明環境で被験者が視作業を行い、被験者の主観的な眼疲労と、被験者の近点距離、CFF(Critical Fusion Frequency)、調節応答時間との関係について測定し、評価した。この場合、視作業には、漫画鑑賞を採用した。これは文字書き写しや単純作業のような視作業では、精神的な疲労を引き起こし、真に取り出したい主観や客観的な眼疲労が結果に埋もれやすい可能性が危惧されたためである。つまり、視作業に漫画鑑賞を採用することにより、真に取り出したい主観的な眼疲労を測定することが可能となる。
【0040】
測定の結果を図2に示す。横軸は経過時間であり、折れ線グラフは被験者の主観的な疲労度であり、棒グラフは調節応答時間である。この結果、疲労度が高いときには調節応答時間が長いという関係があることが判明した。したがって、主観的な眼疲労に対応した客観的測定方法は、調節応答時間が適切であることが推測された。
【0041】
そして、眼疲労測定装置11による眼疲労の測定方法の一例について説明する。
【0042】
窓部14を覗く被験者の目の角膜からの視標16の距離を評価したい環境に応じた任意に距離、例えば400mmに設定し、照明部19のランプ25を点灯させてカバー体13内の明るさを評価したい明るさの照明環境となるように設定する。
【0043】
被験者は、窓部14から覗き、視軸15上に予め位置しているレンズ22,23のうちの一方を通じて視標16を視認し、焦点が合ったらボタンスイッチ26を押す。
【0044】
ボタンスイッチ26が押されることで、制御部27は、光学系切換部18の駆動部24を制御し、レンズ22,23のうちの他方を視軸15上に移動させる。さらに、制御部27は、最初にボタンスイッチ26が押されたときから計時を開始する。
【0045】
被験者は、レンズ22,23のうちの一方から他方に切り換わることにより、その切り換わった瞬間には視標16の焦点が合わなくなるが、その後に焦点が合ったらボタンスイッチ26を押す。
【0046】
ボタンスイッチ26が押されることで、制御部27は、光学系切換部18の駆動部24を制御し、レンズ22,23のうちの一方を視軸15上に移動させる。さらに、制御部27は、ボタンスイッチ26が1回目に押されたときから2回目に押されたときまでの時間である操作間隔つまり調節応答時間を記憶し、2回目に押されたときからの計時を開始する。
【0047】
被験者は、レンズ22,23のうちの他方から一方に切り換わることにより、その切り換わった瞬間には視標16の焦点が合わなくなるが、その後に焦点が合ったらボタンスイッチ26を押す。
【0048】
このような測定作業を例えば5回繰り返し、5回分の調節応答時間を測定し、制御部27が調節応答時間の平均値を求める。
【0049】
この眼疲労測定装置11は、例えば、オフィスなどで、省エネルギのために部屋の照明を落とし、手元照明で補助するような照明環境を評価するのに用いることができる。被験者が照明環境に入る前と後とでそれぞれ調節応答時間を測定し、比較することにより、被験者が照明環境に入る前より後の調節応答時間が長ければ眼疲労が発生していることが判定できるとともに、前と後での調節応答時間の差が眼疲労の度合として判定できる。この場合、制御部27により、被験者が照明環境に入る前と後とでそれぞれ測定した調節応答時間を記憶し、比較することにより、自動的に判定できる。
【0050】
このとき、測定前に、起床時間、就寝時間、目の疲労感、起床してからの視作業の有無と量と時間、実験開始時刻、生体情報等の被験者の測定前の状態を予め登録しておくことにより、制御部27は、被験者の測定前の状態を考慮して、視作業の前と後とでの調節応答時間の差が視作業によるものなのかどうかを判定することができる。これにより、被験者の測定前の状態を考慮して、眼疲労を高精度に測定することができる。
【0051】
例えば、本装置で測定を複数回繰り返すと調節応答時間がある一定値に近付くことがわかった。
【0052】
図3は、ある被験者に対して視作業を行う前に調節応答時間の計測を5回行い、調節応答時間の変化を調べたものである。図中の縦軸は調節応答時間、横軸は順序回数(以下、回数という)を示す。
【0053】
図3からわかるように1回目の調節応答時間が最も長く、回数が増えるに従って調節応答時間が減少し、ある一定の値を示すようになる。これは、1回目の測定は測定前の被験者の眼疲労を反映しているためと考えられる。つまり、視作業の前と後との変化から眼疲労を評価する場合、被験者の測定前の眼疲労状態を予め把握しておく必要がある。
【0054】
例えば、予め調節応答時間の判定を複数回行っておき、ある一定値になったときの基準の調節応答時間を記憶部29に記憶しておく。そして、制御部27は実際に測定を行う場合に、視作業前の調節応答時間として計測した値と予め記憶した基準の調節応答時間とを比較し、一致しているときには測定前の眼疲労は無しと判定し、差があれば眼疲労有りとして判定する。また、制御部27は眼疲労の有無の判定をもとに、眼疲労の有無を得られたデータとともに記憶するか、あるいは不要なデータとして得られたデータを破棄することができる。
【0055】
上記説明では、予め基準の調節応答時間を記憶させて判定したが、調節応答時間の計測を複数回行い、制御部27で調節応答時間がある一定値になったことを判定してもよい。
【0056】
また、調節応答時間を測定する際の遠近の焦点調節範囲に関して考察し、実験を試みた結果を図4に示す。縦軸は調節応答時間であり、横軸には被験者の焦点調節範囲つまり遠焦点と近焦点との屈折力の差が3.0D(diopter)程度の場合と遠焦点と近焦点との屈折力の差が8.0D程度に大きくなるように焦点を遠点と近点とに設定した場合とを示す。各場合の左側の棒グラフが視作業前、右側の棒グラフが視作業後である。
【0057】
被験者の焦点調節範囲が小さい3.0Dの場合には、視作業によって主観的な眼の疲労感は大きくなっても、視作業の前と後とで調節応答時間の変化があまり表れなかった。この理由を検討したところ、被験者の焦点調節範囲が小さいと眼疲労による視角系の生理的な機能低下を正確に判定することができないのではないかと予想された。
【0058】
被験者の焦点調節範囲を大きい8.0Dの場合には、視作業前に対して視作業後の調節応答時間が増加した。このことから、調節応答時間を測定するには、被験者毎の焦点調節範囲が最大となる遠点と近点とに設定すると、高い精度で視角系の生理的な機能低下である眼疲労を測定できることが推測された。
【0059】
そして、被験者毎の焦点調節範囲が最大となる遠点と近点とに設定した場合での眼疲労測定装置11による眼疲労の測定方法の一例を説明する。
【0060】
まず、凸レンズであるレンズ22を用いて被験者の遠点を測定し、凹レンズであるレンズ23を用いて被験者の近点を測定し、これらの測定を複数回繰り返して平均値を算出する。その測定によって得られた被験者の遠点と近点とから、窓部14を覗く被験者の目の角膜からの視標16を配置する距離を算出する。この算出方法としては、1/(提示距離)=(1/近点−1/遠点)/2+1/遠点、もくしは1/(提示距離)=1/近点−(1/近点−1/遠点)/2を用いる。ただし、これらの算出方法は、測定に使用するレンズ22,23の屈折力の絶対値が同じ場合に限る。このようにして算出された距離位置に視標16を配置する。また、照明部19のランプ25を点灯させてカバー体13内の明るさを評価したい明るさの照明環境となるように設定する。
【0061】
そして、測定前の準備が完了したら、被験者は、窓部14から覗き、視軸15上に予め位置しているレンズ22,23のうちの一方を通じて視標16を視認し、遠点または近点で焦点が合ったらボタンスイッチ26を押す。
【0062】
ボタンスイッチ26が押されることで、制御部27は、光学系切換部18の駆動部24を制御し、レンズ22,23のうちの他方を視軸15上に移動させる。さらに、制御部27は、最初にボタンスイッチ26が押されたときから計時を開始する。
【0063】
被験者は、レンズ22,23のうちの一方から他方に切り換わることにより、その切り換わった瞬間には視標16の焦点が合わなくなるが、その後に遠点または近点で焦点が合ったらボタンスイッチ26を押す。
【0064】
ボタンスイッチ26が押されることで、制御部27は、光学系切換部18の駆動部24を制御し、レンズ22,23のうちの一方を視軸15上に移動させる。さらに、制御部27は、ボタンスイッチ26が1回目に押されたときから2回目に押されたときまでの時間である操作間隔つまり調節応答時間を記憶し、2回目に押されたときからの計時を開始する。
【0065】
このような測定作業を複数回繰り返し、複数回分の調節応答時間を測定し、制御部27が調節応答時間の平均値を求める。
【0066】
この眼疲労測定装置11は、例えば、ある照明環境の2条件のうちどちらが眼疲労しやすいかを評価したい場合、測定環境の照明は30lx程度の明るさにして、照明環境の2条件でそれぞれ視作業の前と後で測定し、各条件毎に視作業の前と後とでの調節応答時間の差を比較する。差が大きい方が眼疲労のしやすい照明環境ということになる。
【0067】
このとき、測定前に、起床時間、就寝時間、目の疲労感、起床してからの視作業の有無と量と時間、実験開始時刻、生体情報等の被験者の測定前の状態を予め登録しておくことにより、制御部27は、被験者の測定前の状態を考慮して、視作業の前と後とでの調節応答時間の差が視作業によるものなのかどうかを判定することができる。これにより、被験者の測定前の状態を考慮して、眼疲労を高精度に測定することができる。
【0068】
このように、眼疲労測定装置11では、光学系17を通じて視標16を視認する焦点の合焦時に操作されるボタンスイッチ26の操作毎に光学系17の屈折力を切り換え、そのボタンスイッチ26の操作間隔つまり被験者の焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて眼疲労を精度よく測定できる。
【0069】
特に、光学系17を通じて視標16を視認する被験者の遠点と近点とでの焦点の合焦時に操作されるボタンスイッチ26の操作毎に光学系17の屈折力を被験者の遠点と近点とに対応して切り換え、そのボタンスイッチ26の操作間隔つまり被験者の遠点と近点とでの焦点の調節応答時間を計時することにより、その調節応答時間に基づいて被験者の眼疲労を精度よく確実に測定できる。
【0070】
さらに、光学系17の屈折力により焦点を切り換えるため、視標16を移動させて焦点を切り換える場合に比べて、視標16を移動させるためのスペースを小さく、または必要としなくなるため、眼疲労測定装置11を小形にすることができる。
【0071】
また、測定によって得られたデータを測定前に予め登録される被験者の測定前の状態と比較して眼疲労を判定することにより、被験者の眼疲労を精度よく評価できる。
【0072】
また、視標16および光学系切換部18が収容されたカバー体13内の明るさを制御できるため、照明による網膜の明暗順応性による影響を低減し、評価する照明環境での眼疲労を精度よく測定できる。
【0073】
なお、光学系17は、屈折力の異なる2種類のレンズ22,23を、視標16を視認する視軸15上に移動させたが、この構成に限らず、複数のレンズの組み合わせによって屈折力を可変するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態を示す眼疲労測定装置の構成図である。
【図2】経過時間に対する疲労度と調節応答時間との関係を示すグラフである。
【図3】視作業前の順序回数と調節応答時間との関係を示すグラフである。
【図4】屈折力の差が3.0Dと8.0Dとにおける被験者の視作業の前後での調節応答時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
11 眼疲労測定装置
13 カバー体
15 視軸
16 視標
17 光学系
18 光学系切換部
19 照明部
24 駆動部
26 操作部としてのボタンスイッチ
27 制御部
【出願人】 【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
【出願日】 平成19年6月18日(2007.6.18)
【代理人】 【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄

【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡

【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也


【公開番号】 特開2008−23323(P2008−23323A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2007−160403(P2007−160403)