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【発明の名称】 内視鏡
【発明者】 【氏名】高橋 雅矢

【要約】 【課題】実際の使用状態におけるアクチュエータの状態頻度に対して構成を最適化することによって、比較的大きなレンズの変位を得ながら長期間にわたって安定したレンズ動作が可能な内視鏡を提供すること。

【構成】変位する可動レンズ34を変位させる駆動機構は、加熱によって変位する形状記憶素子41を駆動源としており、可動レンズ34の変位可能な範囲は第1の位置と第2の位置の間に制限されていることと、形状記憶素子41に所定の熱量を与えて加熱した状態では可動レンズ34は第1の位置に変位し、形状記憶素子41を非加熱の状態としたときは可動レンズ34は前記第2の位置に変位することと、通常の観察時において可動レンズ34の位置は第1の位置に変位している時間よりも第2の位置に変位している時間のほうが長いことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ群の少なくとも一部を変位させることによって合焦する結像範囲を変化させる光学系を有する撮像装置が配置された先端部を有する内視鏡において、
前記変位するレンズ群を変位させる駆動機構は、加熱によって変位する形状記憶素子を駆動源としており、前記レンズ群の変位可能な範囲は第1の位置と第2の位置の間に制限されていることと、
前記形状記憶素子に所定の熱量を与えて加熱した状態では前記変位するレンズ群は前記第1の位置に変位し、前記形状記憶素子を非加熱の状態としたときは前記変位するレンズ群は前記第2の位置に変位することと、
通常の観察時において前記変位するレンズ群の位置は前記第1の位置に変位している時間よりも前記第2の位置に変位している時間のほうが長いことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記変位するレンズ群の位置が前記第2の位置の時に合焦する結像範囲が、前記変位するレンズ群の位置が前記第1の位置の時に合焦する結像範囲よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記変位するレンズ群の位置は前記第1の位置と前記第2の位置の間に機械的拘束によって制限されていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記変位するレンズ群を変位させる駆動機構に、前記変位するレンズ群を前記第2の位置に向かって付勢するバイアスバネが組み込まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記先端部に連結された湾曲可能な湾曲管を具備し、
前記形状記憶素子が湾曲可能なチューブ状部材に内挿されて、前記形状記憶素子と前記チューブ状部材が前記湾曲部に延在し、前記チューブ状部材の前記湾曲管側の端部において前記チューブ状部材と前記形状記憶素子が結合し、前記チューブ状部材の他端が前記先端部の所定の部位に固定され、前記形状記憶素子の他端が前記変位するレンズ群に対して固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端部に撮像ユニットを備え、湾曲部を有する可撓管を具備している内視鏡において、一般に、内視鏡像を最適な状態で観察するために、焦点レンズや撮像素子を移動して焦点調節を行う必要がある。
【0003】
この問題を解決させるための内視鏡装置として、例えば特許文献1に記載の内視鏡用撮像装置が提案されている。この提案による内視鏡用撮像装置は、内視鏡先端部内にて、形状記憶合金を光学素子と撮像素子の相対位置の可変手段としている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−129950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のようにレンズを駆動するアクチュエータに形状記憶合金を用いている場合、一般的に形状記憶合金は加熱した状態で負荷をかけて長時間保持すると内部に格子欠陥が生じてアクチュエータとしての性能が劣化する。
【0006】
この現象は加熱による変位が大きな形状記憶処理を施した場合に特に顕著となるので、安定して長期間使用するためには大きな変位量を得ることが困難であるといった問題がある。
【0007】
また、レンズの可動範囲を正確に制限するためにはレンズの可動範囲を機械的に拘束することが望ましいが、動作マージンを考慮するとこのような構成では加熱時に形状記憶合金に大きなストレスがかかるため、上記の問題は特に顕著となる。
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みて成されたもので、実際の使用状態におけるアクチュエータの状態頻度に対して構成を最適化することによって、比較的大きなレンズの変位を得ながら長期間にわたって安定したレンズ動作が可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、レンズ群の少なくとも一部を変位させることによって合焦する結像範囲を変化させる光学系を有する撮像装置が配置された先端部を有する内視鏡において、変位するレンズ群を変位させる駆動機構は、加熱によって変位する形状記憶素子を駆動源としており、前記レンズ群の変位可能な範囲は第1の位置と第2の位置の間に制限されていることと、前記形状記憶素子に所定の熱量を与えて加熱した状態では前記変位するレンズ群は前記第1の位置に変位し、前記形状記憶素子を非加熱の状態としたときは前記変位するレンズ群は前記第2の位置に変位することと、通常の観察時において前記変位するレンズ群の位置は前記第1の位置に変位している時間よりも前記第2の位置に変位している時間のほうが長いことを特徴とする内視鏡を提供できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記変位するレンズ群の位置が前記第2の位置の時に合焦する結像範囲が、前記変位するレンズ群の位置が前記第1の位置の時に合焦する結像範囲よりも広いことが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記変位するレンズ群の位置は前記第1の位置と前記第2の位置の間に機械的拘束によって制限されていることが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記変位するレンズ群を変位させる駆動機構に、前記変位するレンズ群を前記第2の位置に向かって付勢するバイアスバネが組み込まれていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記先端部に連結された湾曲可能な湾曲管を具備し、前記形状記憶素子が湾曲可能なチューブ状部材に内挿されて、前記形状記憶素子と前記チューブ状部材が前記湾曲部に延在し、前記チューブ状部材の前記湾曲管側の端部において前記チューブ状部材と前記形状記憶素子が結合し、前記チューブ状部材の他端が前記先端部の所定の部位に固定され、前記形状記憶素子の他端が前記変位するレンズ群に対して固定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際の使用状態におけるアクチュエータの状態頻度に対して構成を最適化することによって、比較的大きなレンズの変位を得ながら長期間にわたって安定したレンズ動作が可能な内視鏡を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる内視鏡の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
図1は内視鏡1の概略構成を示している。図1に示すように内視鏡1は、湾曲操作や管路系の制御を行う操作部2と、その基端側が操作部2に接続されて被検体の体腔内に挿入される挿入部3を有する。
【0017】
挿入部3は、軟性を有する可撓管部4と、その可撓管部4の先端側に設けられた湾曲可能な湾曲部5と、その湾曲部5の先端側に設けられた硬性な先端部6とを有して構成されている。先端部6には、体腔内の観察部位を撮像する後述の撮像素子ユニット32が内蔵されている。
【0018】
図2は図1の内視鏡の挿入先端部の正面図を示している。図2に示すように先端部6の先端面21には、後述の撮像ユニット32を構成しているレンズとしての観察窓22と、ライトガイドユニットをそれぞれ構成しているレンズとしての照明窓23と、処置具挿通用チャンネルの開口部である処置具挿通用チャンネル開口部24と、観察窓22を洗滌するための送気送水チャンネル25aの開口部である送気送水ノズル25と、被検者等の患部の血液、粘液等の体液を洗浄するための前方送水チャンネルの開口部である前方送水チャンネル開口部26が配設されている。
【0019】
図3、図4は図2のA−A線に沿った先端部の断面図を示している。図4に示すように、先端部6には、記述していないが硬質な先端部本体が設けられている。先端部本体には、観察窓22に対応する撮像ユニット32や、照明窓23に対応するライトガイドユニット33等の内蔵物が配設されている。また、先端部本体は先端カバー31によって被覆されている。
【0020】
撮像ユニット32は、観察窓22と、その観察窓22の基端側に設けられ、複数のレンズ群により形成される対物光学系32aと、その対物光学系32aの基端側にはCCD(電荷結合素子)等の固体撮像素子である撮像素子32cと、その撮像素子32cが接続されて信号増幅などの各種処理を行う回路基板32dと、を有して構成され、鏡筒7によって保持されている。
【0021】
撮像ユニット32には、回路基板32dから延出する信号ケーブル32eが挿入部3内を挿通している。対物光学系32aは移動可能な可動レンズ34を含んでいる。可動レンズ34は、移動可能な可動レンズ鏡枠35によって支持されている。
【0022】
ワイヤ状の形状記憶素子41の一端が可動レンズ鏡枠35に固定され、形状記憶素子41は鏡筒7が有するチューブ固定部材36に固定された湾曲可能なチューブ51に内包されている。
【0023】
形状記憶素子41を内包したチューブ51は、先端部6内から先端部6側が太くなるテーパ状に形成された湾曲部4内を挿通し、可撓管部5内にて、チューブ51の一端が固定用カシメ52により形状記憶素子41の一端ごと圧着され、形状記憶素子41の一端を固定する構成となっている。
【0024】
形状記憶素子41は、変態温度まで加熱すると変位、特に収縮し、また変態温度まで冷却すると弛緩する特性を有する、温度によって伸縮するワイヤ状の形状記憶合金を用いる。チューブ固定部材36にはバイアス用コイルばね61の一端も固定されている。バイアス用コイルばね61の他端は可動レンズ鏡枠35に固定されている。
【0025】
バイアス用コイルばね61の応力によって可動レンズ鏡枠35は押されている状態となっている。バイアス用コイルばね61の応力により形状記憶素子41が変形していない状態のときに可動レンズ34は一定の位置に保持された状態となる。可動レンズ34が形状記憶素子41からの力の影響を受けず、バイアス用コイルばね61の応力で位置が保持されている状態のときに、対物光学系32aが形成する結像範囲が広くなるように対物光学系32aは設定されている。
【0026】
バイアス用コイルばね61の応力により可動レンズ34の位置を保持するため、形状記憶素子41の影響を受けず、毎可動時、一定の位置に可動レンズ34が保持されるため、対物光学系32aが形成する結像範囲が一定となる。また、形状記憶素子41が湾曲部4内まで延設された構成であるため、可動レンズ34の変位量を大きく得ることが可能となる。
【0027】
図4は、図3に示す状態から形状記憶素子41を変形させて、可動レンズ34を駆動させた状態を示している。図示していない通電装置により、形状記憶素子41の両端に電圧を印加し、形状記憶素子41を変態温度が超えるまで加熱することによって、形状記憶素子41は収縮する。
【0028】
この収縮発生力がバイアス用コイルばね61の応力よりも大きいため、形状記憶素子41がチューブ51の一端と固定された一端と可動レンズ鏡枠35との接続点の距離よりも短くなったときに可動レンズ34は移動する。形状記憶素子41が収縮する量は形状記憶素子41の長さによって決まり、形状記憶素子41の収縮量により可動レンズ34は一定の位置に保持された状態となる。
【0029】
また、可動レンズ34の可動領域上に形状記憶素子41が収縮したときに可動レンズ34が突き当たり制止させる部材を設置し、機械的拘束により、可動レンズ34を一定の位置に保持しても良い。この場合は、加熱時の可動レンズ34の位置が内視鏡の湾曲や形状記憶合金素子41の収縮量のバラツキに依らず一定とすることができるので特に好ましい。
【0030】
形状記憶素子41の収縮力で可動レンズ34が保持されている状態のときに、対物光学系32aが形成する結像範囲が図3の結像範囲と比べて狭く、より拡大された像の観察が可能となるように対物光学系32aは設定されている。図3の状態は、第2の位置に対応する。図4の状態は、第1の位置に対応する。
【0031】
結像範囲を変化させることができる内視鏡の使用法としては、広視野の状態で診察対象を観察して、病変が疑われる部位を見つけた場合に一時的に狭視野の拡大観察を行うことが想定される。
【0032】
また、内視鏡を診察対象に挿入もしくは抜き取る際にも広視野の観察ができる状態が望ましいので、通常の使用法では狭視野の拡大観察よりも広視野の観察を行う時間の方が遙かに長いのが一般的である。
【0033】
このことから、形状記憶素子41が非加熱状態のとき、対物光学系32aが形成する像は形状記憶素子41の加熱状態のときの像と比べて結像範囲が広いため、内視鏡使用において、形状記憶素子41の非加熱状態の頻度が加熱状態と比べて非常に高くなる。このため、加熱されて形状記憶素子41にストレスがかかる時間が短くなることで形状記憶素子41の寿命が長くなるため、長期間にわたって安定したレンズ動作が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる内視鏡は、レンズを変位させる内視鏡に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡装置の全体の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係る内視鏡装置の正面構成を示す図である。
【図3】実施例に係る内視鏡装置の断面構成を示す図である。
【図4】実施例に係る内視鏡装置の断面構成を示す他の図である。
【符号の説明】
【0036】
1 内視鏡
2 操作部
3 挿入部
4 可撓管
5 湾曲部
6 先端部
7 鏡筒
22 観察窓
23 照明窓
24 処置具挿通用チャンネル開口部
25a 送気送水チャンネル
25c 送気送水チューブ
25 送気送水ノズル
26 前方送水チャンネル開口部
32 撮像素子ユニット
32a 対物光学系
32c 撮像素子
32d 回路基板
32e 信号ケーブル
33 ライトガイドユニット
34 可動レンズ
35 可動レンズ鏡枠
36 チューブ固定部材
41 形状記憶素子
51 チューブ
52 固定用カシメ
61 バイアス用コイルばね
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100123962
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 圭介


【公開番号】 特開2008−22939(P2008−22939A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196441(P2006−196441)