トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学

【発明の名称】 画像解析装置及び画像解析プログラム
【発明者】 【氏名】藤田 廣志

【氏名】中川 俊明

【氏名】林 佳典

【要約】 【課題】眼底画像に撮影されている血管を効率よく抽出し、精度高く解析する画像解析装置と画像解析プログラムを提供する。

【構成】画像解析装置は、眼底画像の中に、解析に適した血管が撮影されている解析対象領域と、解析に適した血管が撮影されていない解析対象外領域とを設定し、解析対象領域の中に位置する解析に適した血管の画像のみを用いて、血管の解析を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置であって、
当該画像解析装置は、前記眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段を含んでおり、
当該領域設定手段によって設定された前記解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析を行うことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
眼底画像を解析して、その眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置であって、当該画像解析装置は、
前記眼底画像の中の視神経乳頭部に相当する位置を検出する視神経乳頭位置検出手段と、
右眼と左眼のいずれか一方についての、解析対象となる血管が存在する位置情報を記憶している位置記憶手段と、
眼底画像が右眼と左眼のどちらを撮影した画像であるかを判定し、位置記憶手段に血管の位置情報が記憶されていない側の画像であると判定した場合に、眼底画像を左右反転させる画像左右反転処理手段と、
前記位置記憶手段の記憶している血管の位置情報と、視神経乳頭位置検出手段の検出結果とを用いて、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段とを含んでおり、
当該領域設定手段は、前記画像左右反転処理手段が眼底画像を左右反転する処理を行った場合には、反転処理後の画像に対して解析対象領域と解析対象外領域を設定しており、
前記領域設定手段によって設定された前記解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析を行うことを特徴とする画像解析装置。
【請求項3】
眼底画像を解析して、その眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置であって、当該画像解析装置は、
前記眼底画像の中の視神経乳頭部に相当する位置を検出する視神経乳頭位置検出手段と、
右眼と左眼のいずれか一方について、解析対象となる血管の位置情報を記憶している位置記憶手段と、
眼底画像が右眼と左眼のどちらを撮影した画像であるかを判定し、前記位置記憶手段に血管の位置情報が記憶されていない側の画像であると判定した場合に、前記位置記憶手段が記憶している血管の位置情報を左右反転させる位置情報左右反転処理手段と、
前記血管の位置情報と、前記視神経乳頭部に相当する位置の検出結果とを用いて、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段とを含んでおり、
当該領域設定手段は、前記位置情報左右反転処理手段が、血管の位置情報を左右反転する処理を行った場合には、反転処理後の血管の位置情報を用いて解析対象領域と解析対象外領域を設定しており、
前記領域設定手段によって設定された前記解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析を行うことを特徴とする画像解析装置。
【請求項4】
領域設定手段が、視神経乳頭部から耳側と鼻側の少なくとも一方に広がる領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項5】
領域設定手段が、視神経乳頭部から放射状に伸ばした2本以上の線分で挟まれた領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
領域設定手段が、視神経乳頭部付近に変極点を有する曲線で挟まれた領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項7】
領域設定手段が、視神経乳頭部から耳側と鼻側の少なくとも一方に広がる扇形の領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項8】
領域設定手段が、視神経乳頭部から耳側及び鼻側に広がる略三角形の領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項9】
眼底画像の中の黄斑部に相当する位置を検出する黄斑部検出手段を更に備えており、
領域設定手段が、視神経乳頭部の中心と黄斑部の中心を結んだ線に対して線対称となる形状を持つ領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項10】
血管の解析の内容が、動静脈口径比の算出であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項11】
眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析プログラムであって、
前記眼底画像の中に、血管の解析処理を行う解析対象領域と、血管の解析処理を行わない解析対象外領域とを設定する手順と、
前記解析対象領域内に位置する血管の画像を用いて血管を解析する手順をコンピュータに実行させるための画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像に撮影されている血管を効率よく抽出し、精度高く解析する画像解析装置と画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康状態や疾病の有無を診断するために、眼底画像に撮影されている血管の解析が有効であることが知られている。例えば、血管の交叉部の状態を解析することで、動脈硬化性変化の診断を行うことが可能であるし、眼底の動脈と静脈の太さの比率、即ち動静脈口径比を算出することで、高血圧性変化の有無を推定することが可能である。従来最も広く行われている眼底画像の解析法は、医師等の解析の熟練者による、手作業による解析である。しかし、検診等で得られた大量の眼底画像を解析するような場合には、手作業の解析では時間がかかりすぎるため、より効率のよい解析方法が求められてきた。
【0003】
解析の熟練者の負荷を減じ、より効率的に解析を行うための種々の試みが従来から開示されている。特許文献1には、血管の特性解析の一例として、動静脈口径比を定量的に算出するための計測方法が開示されている。特許文献1の計測方法は、視神経乳頭部から同心円内の領域に撮影されている全ての血管を抽出し、相対的な血管間距離の短い血管を対にして、複数の血管対を選択している。そして対となっている血管間の輝度データの差から、その血管が動脈であるか静脈であるかを判定して、動静脈口径比を計測している。
【0004】
しかし、眼底の血管はほとんどが視神経乳頭部から延びており、特許文献1の技術を適用した場合には、眼底画像内のほとんど全ての血管が、画像から識別されて抽出される。このため、特許文献1の血管の計測方法では、血管の識別と抽出に非常に時間を要するという問題が発生していた。特に、検診等で得られた大量の眼底写真を計測対象として、効率よく血管の特性を解析することは困難であった。
【0005】
又、特許文献1の計測方法においては、視神経乳頭部から黄斑部へ向かう方向に伸びる径の細い血管も一様に抽出されて、計測に用いられていた。このような径の細い血管は、画像の輝度データの解析による動脈か静脈かの判定が行いにくいために判定を誤る可能性があり、この判定を誤ることで動静脈口径比の計測結果が不正確になる恐れが潜在していた。
【特許文献1】特開平10−243924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、眼底画像に撮影されている血管を、実質的に全て抽出して解析を進めていた。そのため、解析に非常に時間を要しており、解析の効率を上げることが困難であった。また、本来解析に適さない血管の画像を用いて特性値の算出を行う恐れがあるため、得られる解析結果の精度が十分なものではない場合があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、眼底画像に撮影されている血管の中から、予め解析に適した血管が存在する可能性の高い領域を設定し、その領域から血管を抽出することで、血管の抽出にかかる処理速度を向上して、従来よりも効率的に解析を実施できる画像解析装置を提供するためになされたものである。それと同時に、解析に適さない血管を解析から除外することで、解析の精度を向上させた画像解析装置を提供するためになされたものである。
【0008】
更に本発明は、眼底画像に撮影されている血管の中から解析に適した血管を抽出することで、効率的に精度高く解析を行う画像解析プログラムを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置に関する。この発明の画像解析装置は、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段とを含んでおり、領域設定手段によって設定された解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析を行うことを特徴とする。
【0010】
発明者らは、多くの眼底画像を解析して検討した結果、眼底には、解析に適した血管が存在する確率の高い領域と、解析に適した血管がほとんど存在しない領域があり、解析に適した血管がほとんど存在しない領域には、径やその形状といった諸特性が解析に適さない血管が存在することを見いだした。そして、解析に適した血管がほとんど存在しない領域を解析対象外領域として、そこに含まれる血管の識別と抽出を行わない一方で、解析に適した血管が存在する確率の高い領域を解析対象領域に設定し、解析対象領域に含まれる血管の画像を用いて、効率よくしかも高精度に血管を解析することを可能とした。
【0011】
請求項2の発明は、眼底画像を解析して、その眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置に関する。本発明の画像解析装置は、眼底画像の中の視神経乳頭部に相当する位置を検出する視神経乳頭位置検出手段と、右眼と左眼のいずれか一方についての、解析対象となる血管が存在する位置情報を記憶している位置記憶手段と、眼底画像が右眼と左眼のどちらを撮影した画像であるかを判定し、位置記憶手段に血管の位置情報が記憶されていない側の画像であると判定した場合に、眼底画像を左右反転させる画像左右反転処理手段と、位置記憶手段の記憶している血管の位置情報と、視神経乳頭位置検出手段の検出結果とを用いて、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段とを備えている。本発明の領域設定手段は、画像左右反転処理手段が眼底画像を左右反転する処理を行った場合には、反転処理後の画像に対して解析対象領域と解析対象外領域を設定しており、この領域設定手段によって設定された解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析が行われる。
【0012】
本発明の画像解析装置は、視神経乳頭位置検出手段を備えている。眼底の血管はほとんどが視神経乳頭部から延びているため、視神経乳頭部の位置を基準とすることで、解析対象となる血管が存在する位置の情報に基づいて、解析対象領域と解析対象外領域を効率よく決定することができる。
【0013】
又、本発明の画像解析装置は、解析に適した血管の位置情報を、右眼と左眼のいずれか一方について記憶する位置記憶手段と、眼底画像が右眼と左眼のどちらを撮影した画像であるかを判定し、位置記憶手段に血管の位置情報が記憶されていない側の画像であると判定した場合に、眼底画像を左右反転させる画像左右反転処理手段を備えている。発明者らは、種々の検討の結果、解析対象となる血管が存在する位置は、右眼と左眼でほぼ左右対称であることを見いだし、この知見に基づいて本発明の画像左右反転処理手段を構成した。位置記憶手段が血管の位置情報を記憶していない側の眼の画像を解析する場合には、画像左右反転手段で画像を反転させ、反転後の画像を用いることにより、血管の位置情報を記憶している側の眼底画像に対する場合と同じように、解析対象領域と解析対象外領域の設定が可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、眼底画像を解析して、その眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析装置に関する。本発明の画像解析装置は、眼底画像の中の視神経乳頭部に相当する位置を検出する視神経乳頭位置検出手段と、右眼と左眼のいずれか一方について、解析対象となる血管の位置情報を記憶している位置記憶手段と、眼底画像が右眼と左眼のどちらを撮影した画像であるかを判定し、位置記憶手段に血管の位置情報が記憶されていない側の眼底画像であると判定した場合に、位置記憶手段が記憶している血管の位置情報を左右反転させる位置情報左右反転処理手段と、血管の位置情報と、前記視神経乳頭部に相当する位置の検出結果とを用いて、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定手段とを備えている。本発明の領域設定手段は、位置情報左右反転処理手段が、血管の位置情報を左右反転する処理を行った場合には、反転処理後の血管の位置情報を用いて解析対象領域と解析対象外領域を設定しており、この領域設定手段によって設定された前記解析対象領域の中に位置する血管の画像を用いて、血管の解析が行われる。
【0015】
本発明の画像解析装置は、視神経乳頭位置検出手段が検出した視神経乳頭部の位置を基準として、解析対象領域と解析対象外領域を効率よく決定することができる。又、本発明の画像解析装置は、右眼と左眼のいずれか一方について解析に適した血管の位置情報を記憶しており、この位置情報の記憶されていない側の眼の眼底画像を解析する場合には、血管の位置情報を左右反転させて解析に用いている。これにより、血管の位置情報を片側のみ記憶している画像解析装置であっても、血管の位置情報を記憶していない側の眼底画像を、位置情報を記憶している画像と同じように解析することが可能となる。
【0016】
請求項4の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、眼底画像の中の、視神経乳頭部から耳側と鼻側の少なくとも一方に広がる領域を解析対象外領域とすることを特徴とする。前記の領域に、解析に適した血管が存在する可能性が低いことは、発明者らが多くの眼底画像を解析した結果明らかになったものであり、本発明の解析対象外領域の形状は、この知見に基づいて決定されている。解析対象外領域は、曲線で囲まれた領域のほか、多角形で囲まれた領域、円の内部等で定義することができる。
【0017】
請求項5の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、視神経乳頭部から放射状に伸ばした2本以上の線分で挟まれた領域を解析対象外領域とすることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、視神経乳頭部付近に変極点を有する曲線で挟まれた領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする。尚、ここでいう曲線は、2次曲線、楕円の周、ベジエ曲線等の、数値化が可能な任意の曲線で定義することができる。
【0019】
請求項7の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、視神経乳頭部から耳側と鼻側の少なくとも一方に広がる扇形の領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、視神経乳頭部から耳側及び鼻側に広がる略三角形の領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする。
【0021】
請求項9の発明は、画像解析装置の領域設定手段に関する。本発明の領域設定手段は、眼底画像の中の黄斑部に相当する位置を検出する黄斑部検出手段を更に備えている。そして、領域設定手段が、視神経乳頭部の中心と黄斑部の中心を結んだ線に対して線対称となる形状を持つ領域を、解析対象外領域とすることを特徴とする。
【0022】
請求項10の画像解析装置は、血管の解析の内容が、動静脈口径比の算出であることを特徴とする。
【0023】
請求項11の発明は、眼底画像に撮影されている血管の解析を行う画像解析プログラムに関する。本発明の画像解析プログラムは、眼底画像の中に、血管の解析処理を行う解析対象領域と、血管の解析処理を行わない解析対象外領域とを設定する手順と、解析対象領域内に位置する血管の画像を用いて血管を解析する手順をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の画像解析装置及び画像解析プログラムは、解析に適した血管が存在する確率の低い領域を解析対象外領域として、そこに含まれる血管の識別と抽出を行わない一方で、解析に適した血管が存在する確率の高い領域を解析対象領域に設定し、そこに含まれる血管の画像だけを抽出することにより、効率よくより短い解析時間で、血管の解析を行うことができる。
【0025】
更に、本発明の画像解析装置及び画像解析プログラムは、解析に適した血管のみを選択して画像から抽出し、解析することができるために、解析精度を向上させることができる。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の画像解析装置を、眼底画像に撮影されている血管の動静脈口径比の解析装置に適用した実施例を、図1〜図18を参照しつつ詳細に説明する。
(実施例1) 本実施例の画像解析装置41のブロック構成図を、図8に示す。本実施例の画像解析装置41は、眼底画像の中に、血管の解析を行う解析対象領域と、血管の解析を行わない解析対象外領域とを設定する領域設定処理部52を含んでいる。又、血管抽出処理部56と、解析対象血管決定処理部54と、動静脈口径比算出処理部58とを含んでいる。本実施例におけるこれらの処理部52〜58は、コンピュータ42の内部記憶手段48に、CPU(中央演算装置)46で実行可能な形式のプログラムとして記憶されており、順次実行されて画像解析が行われる。コンピュータ42には、内部記憶手段48とCPU46の他、入出力部44とメインメモリ、あるいは図示されない撮影手段を備えた、通常のパーソナルコンピュータ又はワークステーションを適用することができる。
【0027】
更に、画像解析装置41は、右眼と左眼のそれぞれについて動静脈口径比の解析対象となる血管が存在する位置情報を記憶してデータベース化した、位置記憶手段として機能する、解析対象血管位置データベース60を内部記憶手段48に記憶している。本実施例の解析対象血管位置データベース60には、多数の眼底画像の解析結果から得られた血管の位置と諸特性の数値データが記憶されている。又、これらの数値データに基づいて算出された、解析血管分布データが記憶されている。解析血管分布データは、解析に適した特性を備えており、動静脈口径比の解析対象となる血管の、眼底画像上の分布を数値化したデータが記憶されている。
【0028】
この解析対象血管位置データベース60の解析血管分布データの中で、動静脈口径比の解析に適した太い血管は、視神経乳頭部の中心から上方は10時の方向から2時の方向、下方は8時の方向から4時の方向の間に位置することが特定されている。
【0029】
解析対象血管位置データベース60には、必要に応じて、太い血管から分岐した血管が存在する可能性の高い位置のデータや、解析に適した血管の画素値の特性や、解析に用いる血管の位置の基準に用いている視神経乳頭部の位置と大きさ等も記憶されている。
【0030】
以下、本実施例の画像解析装置41によって実行される、眼底画像に撮影された血管の動静脈口径比の解析の処理の内容を、図1のフロー図に従って説明する。最初に、ステップS2で、眼底画像が撮影される。眼底画像は、画像解析装置41に備えられている撮影部による撮影で得られる他、任意の撮影装置で撮影された眼底画像を外部から入力して利用することができる。
【0031】
本実施例で解析される眼底画像は、黄斑部がほぼ画像の中央に来るように調整された状態で撮影されている。画像には、撮影された眼が右眼か左眼かを識別する識別情報が記録されている。ただし、解析される全ての眼底画像が、右眼か左眼のいずれか一方であることが予め明らかな場合には、識別情報の記録は省略することもできる。
【0032】
解析される眼底画像は、カラーのデジタル画像であって、画素の位置に対応する2次元の座標データと、色調の情報である画素値データが含まれている。もし、アナログで撮影された眼底画像を外部から入力して解析する場合は、予め画像に2次元の座標系を設定してデジタル処理を施し、座標値データと、座標値に対応する画像の画素値データとを得て解析を進めることができる。
【0033】
画像解析装置の領域設定処理部52は、解析を行う眼底画像に記憶されている右眼か左眼かを示す識別情報に基づいて、解析対象血管位置データベース60を参照し、解析を行う眼に対応する解析血管分布データを取り出す。あるいは、解析する眼底画像が右眼か左眼かが予め明らかな場合には、その識別情報をオペレーターが画像解析システムに手入力し、領域設定処理部が入力された情報に基づいて解析対象血管位置データベース60から対応する解析血管分布データを取り出すこともできる。そして、領域設定処理部52は、取り出された解析血管分布データを元に、解析する眼底画像に、解析対象となる血管が分布する確率の高い領域を解析対象領域に設定し、解析対象となる血管が分布する確率の低い領域領域を解析対象外領域と設定する。(ステップS4)。このとき、領域設定処理部は、予め定義された形状を適用して、解析対象外領域の輪郭形状を数値化することにより、解析対象領域と解析対象外領域の境界を定めている。画像解析装置は、設定された解析対象外領域に含まれる血管の抽出処理を行わない。その一方で、解析対象領域に含まれる血管は、解析に適している可能性が高いため、引き続き以下のステップで画像から抽出する処理を行って、解析の対象とする。
【0034】
図5に、本実施例の領域設定処理部52が、右眼の眼底画像1に設定した、解析対象外領域6と解析対象領域7を示す。領域設定処理部52は、解析対象血管位置データベース60から取り出した血管分布データを、眼底画像1の解像度に合わせて調整した後に、解析対象領域7と、解析対象外領域6とを設定している。解析対象外領域6は、画像中央部から耳側、即ち9時の方向に広がる領域であって、途中、解析対象となる血管4から分岐した血管5が存在する確率の高い領域を避けるように設定されている。領域設定処理部52は、解析対象領域7と解析対象外領域6の境界を、曲線を連ねた形状で定義している。
【0035】
画像解析装置の血管抽出処理部56は、解析対象外領域6と解析対象領域7が設定された眼底画像1を用いて、解析対象領域7に撮影されている血管の抽出を行う(ステップS6)。血管の抽出は、眼底画像1の解析対象領域7に対して、血管部に固有の色調の画素値を有する領域と、血管部以外の色調の画素値を有する領域を識別することで行われる。又、血管の抽出を、血管部とその周囲との画素値の変化に着目し、画素値の変化量が大きな位置を、血管部と周囲の境界であると定義して行うこともできる。
【0036】
解析対象領域7から、画素値の解析によって識別可能な血管が全て抽出されると、解析対象血管決定処理部54は、抽出された全ての血管部の太さを判定する。そして、基準値以上の十分な太さを備えた血管を解析対象血管として決定する(ステップS8)。解析対象血管が決定されると、動静脈口径比算出処理部58が、解析対象血管の画素値と血管径の特徴量を更に詳細に解析し、血管が動脈であるのか静脈であるのかを識別する。そして、得られた動脈と静脈の血管の太さの比から、動静脈口径比を算出し(ステップS10)、処理を終了する。
【0037】
本実施例の画像解析装置41は、多数の眼底画像の解析結果から得られた血管の位置と諸特性の数値データと、これらの数値データに基づいて算出された解析血管分布データが記憶されている、解析対象血管位置データベース60を備えている。そして、解析血管分布データを用いて、領域設定処理部52が、眼底画像1に、解析対象外領域6と解析対象領域7を設定する。血管抽出処理部56は、解析対象外領域6の血管の識別と抽出を行わない一方で、解析対象領域7に含まれる血管の画像だけを抽出することにより、効率よく、より短い解析時間で、血管の解析を行うことができる。しかも、この画像解析装置は、解析に適した特性を有する血管のみ抽出することができるため、その血管を用いた動静脈口径比の値は非常に正確である。
【0038】
(実施例2) 本実施例の画像解析装置の領域設定処理部は、解析対象となる眼底の血管が存在する位置の情報を記憶している解析対象血管位置データベースの解析血管分布データの情報に基づいて、血管の解析対象外領域8の境界の形状を、円で定義する。図6に、本実施例の画像解析装置が右眼の眼底画像1に設定した、解析対象外領域8と解析対象領域9を示す。解析対象外領域は、解析血管分布データの内容により若干その半径と位置が変動するものの、常に眼底画像の中央から耳側寄りの位置を中心とする円形の領域で定義される。本実施例に関する解析対象の画像、装置の構成、解析対象血管位置データベースのデータの内容、及び処理のフローについては、実施例1と同様であり、重複説明を省略する。
【0039】
(実施例3) 本実施例の画像解析装置は、領域設定処理部と、血管抽出処理部と、解析対象血管決定処理部と、動静脈口径比算出処理部と、解析対象となる眼底の血管が存在する位置の情報を記憶している解析対象血管位置データベースに加えて、視神経乳頭位置検出処理部と、画像左右反転処理部とを含んでいる。これらの処理部も又、実施例1及び実施例2の各処理部と同様に、CPU(中央演算装置)で実行可能な形式のプログラムとして記憶されており、順次実行されて画像解析が行われる。
【0040】
本実施例の解析対象血管位置データベースは、多数の右眼の眼底の血管の位置に関する数値データと、多数の左眼の眼底の血管の位置に関する数値データの両方を記憶している。更に、右眼に関して解析に適した特性を備えている血管の分布を数値化した解析血管分布データと、左眼に関して解析に適した特性を備えている血管の分布を数値化した解析血管分布データを統合した、解析血管分布データを備えている。多くの眼底画像の解析の結果から、左眼と右眼の解析対象となる血管の位置は、ほぼ左右対称であることが明らかとなっており、左眼の解析血管分布データを反転させることで、右眼の解析血管分布データの統合が可能である。このような統合を行うことで、本実施例の解析対象血管位置データベースは、一方の側の眼底についてのデータ数を増やして位置の情報の精度を向上させることが可能となっており、非常に信頼性の高いデータを提供している。
【0041】
以下、本実施例の画像解析装置によって実行される、眼底画像に撮影された血管の動静脈口径比の解析の処理の内容を、図2のフロー図に従って説明する。最初に、ステップS22で、眼底画像が撮影される。本実施例の画像解析装置は、実施例1及び実施例2で解析したものと同様の眼底画像を撮影し、解析することができる。
【0042】
ステップS24で、本実施例の画像左右反転処理部は、眼底画像に記録されている識別情報を認識して、眼底画像が左右どちらの眼を撮影した画像であるかを判定する。そして、眼底画像が左眼の画像であると判定した場合には、ステップS26で、画像を左右反転させる。画像反転処理部が判定を行った左眼の画像の一例を図4(a)に示し、左右反転処理後の左眼の画像を図4(b)に示す。画像の左右反転処理は、画素毎の画素値データの配列を左右逆順となるように並べ替えることで行われる。
【0043】
ステップS28で、画像解析装置の視神経乳頭位置検出処理部は、眼底画像の画素値を解析して、画像に撮影されている視神経乳頭部を検出する。視神経乳頭部は、血管と同様に固有の画素値を有しており、またその形状はほぼ円形をしているので、眼底画像から容易に識別することができる。眼底の血管のほとんどは、視神経乳頭部から延びて網膜を走行するため、視神経乳頭部の位置は、血管の位置を把握し、解析に適した血管であるか否かを特定する上で重要な情報となる。
【0044】
ステップS30で、領域設定処理部は、解析対象血管位置データベースの解析血管分布データを取り出す。そして、取り出したデータを元に、解析する眼底画像に、解析対象となる血管が分布する確率の高い領域を解析対象領域に設定し、解析対象となる血管が分布する確率の低い領域を解析対象外領域と設定する。このとき、領域設定処理部は、解析する画像が右眼を撮影した眼底画像である場合は、撮影されて入力されたままの画像を用いて、解析対象外領域と解析対象領域を設定する。左眼を撮影した眼底画像を解析する場合は、反転処理後の画像に対して解析対象領域と解析対象外領域を設定する。
【0045】
本実施例の領域設定処理部は、解析対象外領域の形状を、視神経乳頭部から耳側に広がる多角形で近似された閉じた形状と、視神経乳頭から鼻側に広がる多角形で近似された閉じた形状で定義し、眼底画像1の上に設定することができる。この多角形の辺の数は、解析血管分布データが示す領域の大きさと形状の情報に基づいて決定される。本実施例の領域設定処理部は、領域設定の際に、視神経乳頭位置検出処理部が検出した視神経乳頭部の位置を、領域設定の基準として用いている。又、領域設定処理部は、検出された視神経乳頭部の大きさを用いて、解析血管分布データが示す解析対象となる血管が存在する領域の面積とその形状を拡大若しくは縮小する処理をした後に、眼底画像1の上に領域の設定を行うことも可能である。
【0046】
本実施例の領域設定処理部は、図7に示すような、解析対象外領域10と、解析対象領域11を眼底画像1に設定することができる。又、図8に示すように、2箇所の解析対象外領域10,10’を設定することも可能である。2箇所の解析対象外領域10,10’の設定により、解析に適さない血管が更に解析対象から除外される確率が高くなるので、解析時間が一層効率化され、より少ない時間で解析に適した血管が抽出される。
【0047】
画像解析装置の血管抽出処理部は、解析対象外領域10と解析対象領域11が設定された眼底画像1あるいは解析対象外領域10,10’と解析対象領域11’が設定された眼底画像1に対し、解析対象領域11あるいは解析対象領域11’の画素値の解析を行って、撮影されている血管の抽出を行う(ステップS32)。解析対象領域から識別可能な血管が全て抽出されると、解析対象血管決定処理部が、抽出された全ての血管部の太さを判定する。そして基準値以上の十分な太さを備えた血管を解析対象血管として決定する(ステップS34)。解析対象血管が決定されると、動静脈口径比算出処理部が、解析対象血管の画素値と血管径の特徴量を更に詳細に解析し、血管が動脈であるのか静脈であるのかを識別する。そして、得られた動脈と静脈の血管の太さの比から、動静脈口径比を算出し(ステップS36)、処理を終了する。
【0048】
本実施例の画像解析装置は、右眼の血管の位置に関する解析血管分布データと、左眼の血管の位置に関する解析血管分布データを、その左右対称性に着目することで、左右どちらの眼に対しても適用が可能な1個のデータとして統合している。左右どちらの眼に対しても適用可能な解析血管分布データを記憶していることで、左右それぞれを対象としたデータを記憶している場合と較べると、解析対象血管データベースの構造が単純化され、データベースへのアクセスを高速化することができ、左右いずれの眼も効率よく、高精度に解析することができる。
【0049】
そして、本実施例の画像解析装置は、左眼の眼底画像に対しては撮影時のデータを左右反転させることが可能な画像左右反転処理部を備えている。このため、領域設定処理部は、右眼を撮影した眼底画像の解析にはそのまま領域の設定が可能であり、左眼を撮影した眼底画像の解析には、反転処理後の画像に対して全く同一の処理を容易且つ迅速に適用可能である。
【0050】
更に、本実施例の画像解析装置は、視神経乳頭位置検出処理部を備えており、視神経乳頭部の位置を検出し、その位置に基づいて解析対象領域と解析対象外領域を設定することにより、より正確に領域設定を行って、解析に適した血管のみを確実に抽出して動静脈口径比を算出することができる。このため、解析の精度をより一層向上させることができる。
【0051】
(実施例4) 本発明の画像解析装置の領域設定処理部は、血管の解析対象外領域に相当する閉じた領域の形状を、視神経乳頭部の内部から画像端部まで、放射状に伸ばした4本の線分で挟まれた領域であり、且つ視神経乳頭部から耳側あるいは鼻側に延びる領域であると定義する。図9に、本実施例の画像解析装置が、この解析対象血管位置データベースのデータと、視神経乳頭部の位置のデータを用いて解析対象外領域12,12’と解析対象領域13を設定した右眼の眼底画像1を示す。本実施例に関する解析対象の画像、装置の構成、及び処理のフローについては、実施例3と同様であり、重複説明を省略する。
【0052】
(実施例5) 本実施例の画像解析装置が解析する眼底画像は、眼底が四角形で撮影されている。本実施例の画像解析装置の領域設定処理部は、血管の解析対象外領域に相当する閉じた領域の形状を、実施例4と同様に、視神経乳頭部から画像31の端部まで放射状に伸ばした4本の線分で挟まれた領域として定義している。図10に、本実施例の領域設定処理部が、この解析対象血管位置データベースのデータと、視神経乳頭部の位置のデータを用いて解析対象外領域14,14’と解析対象領域15を設定した右眼の眼底画像31を示す。本実施例に関する解析対象の画像、装置の構成、及び処理のフローについては、実施例3と同様であり、重複説明を省略する。
【0053】
(実施例6) 本実施例の画像解析装置は、解析結果から得られた血管の位置に関する多数の数値データが記憶されている解析対象血管位置データベースを備えており、これらのデータは、解析が行われる毎に新たなデータが追加されて更新されている。そして、解析対象血管位置データベースは、最新の数値データに基づいて解析血管分布データを常に最新の状態に更新して記憶している。
【0054】
図11に、本実施例の領域設定処理部が、解析対象血管位置データベースの解析血管分布データと、検出された視神経乳頭の位置を用いて、解析対象外領域16と解析対象領域17を設定した右眼の眼底画像1を示す。解析対象外領域16と解析対象領域17の境界は、2次曲線で定義されており、この2次曲線は、視神経乳頭付近に変極点を有している。実施例に関する解析対象の画像、装置の構成、及び処理のフローについては、実施例3と同様であり、重複説明を省略する。
【0055】
(実施例7) 本実施例の画像解析装置の解析対象血管位置データベースは、解析結果から得られた血管の位置に関する多数の数値データが記憶されており、これらのデータは、解析が行われる毎に新たなデータが追加されて更新されている。そして、解析対象血管位置データベースは、最新の数値データに基づいて解析血管分布データを常に最新の状態に更新して記憶している。解析血管分布データは、解析対象となる血管の分布する確率が高い領域の境界を表す複数の特徴点の集合として記憶されている。
【0056】
本実施例の領域設定処理部は、視神経乳頭位置検出処理部が検出した視神経乳頭部2を通過し、解析血管分布データの特徴点から近似される2次曲線を、解析対象領域と解析対象外領域の境界として定義している。そして、この2次曲線と、眼底画像1の端部とで囲まれる領域を、解析対象外領域16,16’として設定する。図12に、本実施例の画像解析装置が設定した解析対象外領域16,16’と解析対象領域17’を設定した右眼の眼底画像1を示す。
【0057】
尚、本実施例の領域設定処理部は、解析対象外領域16,16’の形状を、2次曲線で囲まれる領域として定義しているが、解析血管分布データの特徴点を通過する曲線で解析対象外領域の形状を定義する場合には、楕円、ベジエ曲線等の曲線を用いても解析対象外領域を設定できることは明らかである。
【0058】
(実施例8) 本実施例の画像解析装置は、領域設定処理部と、血管抽出処理部と、解析対象血管決定処理部と、動静脈口径比算出処理部と、視神経乳頭位置検出処理部と、位置情報左右反転処理部と、解析対象血管位置データベースとを含んでいる。本実施例におけるこれらの処理部と解析対象血管位置データベースは、これまで述べてきた実施例の画像解析装置の構成と同様に、コンピュータの内部記憶手段に、CPU(中央演算装置)で実行可能な形式のプログラムとして記憶されており、順次実行されて画像解析が行われる。
【0059】
本実施例の解析対象血管位置データベースは、右眼の眼底画像における血管の位置に関する多数の数値データと、この数値データの解析によって得られた、解析血管分布データを記憶している。右眼と左眼の血管の位置は、ほぼ左右対称となっているので、本実施例の解析対象血管位置データベースが記憶している右眼に関する解析血管分布データは、左右反転させることで、左眼の眼底画像の解析に適用することができる。
【0060】
以下、本実施例の画像解析装置によって実行される、眼底画像に撮影された血管の動静脈口径比の解析の処理の内容を、図3のフロー図に従って説明する。最初に、ステップS42で、眼底画像が撮影される。本実施例の画像解析装置は、実施例3〜実施例7で解析したものと同様の眼底画像を撮影し、解析することができる。解析対象の眼底画像が、撮影している眼の左右の識別情報を記憶していることは特に必要とされない。
【0061】
画像解析装置の視神経乳頭位置検出処理部は、眼底画像の画素値を解析して、画像に撮影されている視神経乳頭部を検出する(ステップS44)。位置情報左右反転処理部は、ステップS46で、眼底画像が左右どちらの眼を撮影した画像であるかを画像内の視神経乳頭部の位置によって判定する。即ち、画像の右側に視神経乳頭部の中心が位置している場合には右眼の画像であると判定し、画像の左側に視神経乳頭部の中心が位置している場合には左眼の画像であると判定する。眼底画像が左眼の画像であると判定した場合には、ステップS48で、解析対象血管位置データベースに記憶されている解析血管分布データを左右反転させる。
【0062】
ステップS50で、領域設定処理部は、解析血管分布データに基づいて、解析する眼底画像に、解析対象となる血管が分布する確率の高い領域を解析対象領域に設定し、解析対象となる血管が分布する確率の低い領域領域を解析対象外領域と設定する。このとき、領域設定処理部は、解析する画像が右眼を撮影した眼底画像である場合は、解析対象血管位置データベースの解析血管分布データをそのまま用いて、解析対象外領域と解析対象領域を設定する。左眼を撮影した眼底画像を解析する場合は、反転処理後の解析血管分布データを用いて、解析対象領域と解析対象外領域を設定する。
【0063】
本実施例の領域設定処理部は、解析対象外領域の形状を、視神経乳頭部を基準として、耳側又は鼻側に広がる扇形で定義し、眼底画像1の上に設定することができる。この扇形の大きさと位置は、解析血管分布データが示すところの、解析対象血管の存在する可能性の高い領域の大きさと形状の情報に基づいて決定されており、解析対象外領域は、図13の解析対象外領域18,18’のように弧の部分が眼底画像の端部と一致する場合の他、図14の解析対象外領域20のように、眼底画像の中に含まれる扇形で設定される場合がある。
【0064】
画像解析装置の血管抽出処理部は、扇形の解析対象外領域と解析対象領域が設定された眼底画像1に対し、解析対象領域の画素値の解析を行って、撮影されている血管の抽出を行う(ステップS52)。解析対象領域から識別可能な血管が全て抽出されると、解析対象血管決定処理部が、抽出された全ての血管部の太さを判定する。そして基準値以上の十分な太さを備えた血管を解析対象血管として決定する(ステップS54)。解析対象血管が決定されると、動静脈口径比算出処理部が、解析対象血管の画素値と血管径の特徴量を更に詳細に解析し、血管が動脈であるのか静脈であるのかを識別する。そして、得られた動脈と静脈の血管の太さの比から、動静脈口径比を算出し(ステップS56)、処理を終了する。
【0065】
本実施例の画像解析装置は、右眼の血管の位置と、左眼の血管の位置の左右対称性に着目することで、右眼の血管の位置のデータのみを蓄積した解析対象血管データベースを用いて、左右どちらの眼の眼底画像も解析可能としている。本実施例の解析対象血管位置データベースは、左右それぞれの眼の血管位置データを記憶しているデータベースと較べると、解析対象血管データベースの構造が単純化され、データベースへのアクセスを高速化することができ、それでいて左右いずれの眼も効率よく高精度に解析することができる。
【0066】
尚、本実施例においては、右眼の血管の位置に関する数値データを蓄積した解析対象血管位置データベースを備えた画像解析装置について詳細な説明を行ったが、左眼の数値データを蓄積した解析対象血管位置データベースを備えた画像解析装置を構成できることは、本実施例の説明から明らかである。
【0067】
(実施例9) 本実施例に関する解析対象の画像、装置構成、及び処理のフローは、実施例8と同様であり、重複説明を省略する。本実施例の画像解析装置の領域設定処理部は、解析対象血管位置データベースが記憶している解析血管分布データに基づいて、血管の解析対象外領域の形状を、1又は2以上の三角形で定義する。例えば、領域設定処理部は、図15に示すように、視神経乳頭位置検出処理部が検出した視神経乳頭部2の位置を基準として、視神経乳頭部から耳側寄りに広がる三角形の領域22と、鼻側寄りに広がる三角形の領域22’を解析対象外領域として設定する。また、解析血管分布データの情報によっては、図16に示すように、視神経乳頭部2から延びる2つの三角形24を解析対象外領域として設定することもある。
【0068】
(実施例10) 本実施例の画像解析装置は、領域設定処理部と、血管抽出処理部と、解析対象血管決定処理部と、動静脈口径比算出処理部と、視神経乳頭位置検出処理部と、黄斑部位置検出処理部と、解析対象血管位置データベースとを含んでいる。本実施例における全ての処理部と解析対象血管位置データベースは、これまで述べてきた実施例の画像解析装置の構成と同様に、コンピュータの内部記憶手段に、CPU(中央演算装置)で実行可能な形式のプログラムとして記憶されており、順次実行されて画像解析が行われる。
【0069】
黄斑部位置検出処理部は、眼底画像1の画素値を解析して、画像に撮影されている黄斑部30の位置を検出する。黄斑部30は、画像内では周囲と比較して輝度が低く、色が濃くなる傾向があるため、眼底画像の中で容易に識別することができる。
【0070】
本実施例の解析対象血管位置データベースは、右眼と左眼のそれぞれについて動静脈口径比の解析対象となる血管の位置の情報をデータベース化して記憶している。記憶されている血管の位置は、視神経乳頭部と黄斑部の位置を基準として数値化されている。
【0071】
本実施例の領域設定処理部は、解析対象領域と解析対象外領域を設定する前の処理として、図17に示すように、眼底画像1に、検出した視神経乳頭部2の中心と黄斑部30の中心を結ぶ基準線32を設定する。もし、この基準線32が水平とならない場合には、眼底画像1を回転させる位置の補正を行う。そして、補正後の眼底画像1に対して、解析対象血管位置データベースの解析血管分布データに基づいて、解析対象外領域26と解析対象領域27を設定する。
【0072】
領域設定処理部は、予め定義された形状で解析対象外領域の形状を近似することにより、解析対象外領域26と解析対象領域27の境界を定める。図17に示した解析対象外領域26の形状は、耳側に延びる曲線で囲まれる領域で定義されている。しかし、領域設定処理部に、予め、設定する解析対象外領域の形状を定義することで、円、多角形、放射状に延ばした2本の線分に挟まれる領域、扇形、三角形等でも、この領域を定義することが可能である。
【0073】
ここで、領域設定処理部は、解析対象外領域26を、基準線32に対して線対称となるように設定している。これは、動静脈口径比の解析に適した血管が、視神経乳頭部2と黄斑部を基準としてほぼ上下対象に位置しているという知見に基づく設定であり、解析対象外領域26が線対称であることにより、解析対象領域27も線対称となる。このように線対称で設定された解析対象領域27には、解析に適した血管が全て含まれており、解析対象領域27から血管を抽出し、解析対象外領域26からは血管の抽出を行わないことで、効率的に解析を実施される。
【0074】
本実施例の画像解析装置は、視神経乳頭位置検出処理部に加えて、黄斑部位置検出処理部を備えており、解析する眼底画像1の中で検出された視神経乳頭部2と黄斑部30の両方を位置の基準とすることで、眼底画像1が回転している場合の補正が可能となっている。これにより、解析対象外領域26と解析対象領域27のより正確な領域設定が行われて、解析の精度を一層向上させることができる。
【0075】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、本実施例における画像解析装置の構成は、プログラムの形式でコンピュータに記憶させる以外に、それぞれモジュール化してコンピュータの外部装置として個々に構成することができる。また、各実施例に挙げられた解析対象血管位置データベースのデータの構成と、領域設定処理部が設定する解析対象外領域の形状は任意に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1の画像解析装置が実行する血管の解析の処理の内容を示すフロー図である。
【図2】実施例3の画像解析装置が実行する血管の解析の処理の内容を示すフロー図である。
【図3】実施例8の画像解析装置が実行する血管の解析の処理の内容を示すフロー図である。
【図4】左右反転処理前と左右反転処理後の左眼の眼底画像を示す図である。
【図5】実施例1の画像解析装置が右眼の眼底画像1に設定した解析対象外領域6と解析対象領域7を模式的に示す図である。
【図6】実施例2の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域8と解析対象領域9を模式的に示す図である。
【図7】実施例3の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域10と解析対象領域11を模式的に示す図である。
【図8】実施例3の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域10,10’と解析対象領域11’を模式的に示す図である。
【図9】実施例4の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域12,12’と解析対象領域13を模式的に示す図である。
【図10】実施例5の画像解析装置が眼底画像31に設定した解析対象外領域14,14’と解析対象領域15を模式的に示す図である。
【図11】実施例6の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域16と解析対象領域17を模式的に示す図である。
【図12】実施例7の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域16,16’と解析対象領域17’を模式的に示す図である。
【図13】実施例8の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域18,18’と解析対象領域19を模式的に示す図である。
【図14】実施例8の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域20と解析対象領域21を模式的に示す図である。
【図15】実施例9の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域22,22’と解析対象領域23を模式的に示す図である。
【図16】実施例9の画像解析装置が眼底画像1に設定した解析対象外領域24,24’と解析対象領域25を模式的に示す図である。
【図17】実施例10の画像解析装置が眼底画像1に設定した基準線32と、解析対象外領域26と、解析対象領域27を模式的に示す図である。
【図18】実施例1の画像解析装置の構成を模式的に示すブロック構成図。
【符号の説明】
【0077】
1,31 眼底画像
2 視神経乳頭
4 解析対象となる血管
5 血管4から分岐する血管
6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26 解析対象外領域
7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27 解析対象領域
32 基準線
41 画像解析装置
42 コンピュータ
44 入出力部
46 CPU
48 内部記憶手段
52 領域設定処理部
54 解析対象血管決定処理部
56 血管抽出処理部
58 動静脈口径比算出処理部
60 解析対象血管位置データベース
【出願人】 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
【識別番号】599144712
【氏名又は名称】タック株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100083932
【弁理士】
【氏名又は名称】廣江 武典

【識別番号】100129698
【弁理士】
【氏名又は名称】武川 隆宣

【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一

【識別番号】100135585
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 務


【公開番号】 特開2008−22928(P2008−22928A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196322(P2006−196322)