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【発明の名称】 磁気共鳴イメージング装置
【発明者】 【氏名】宮脇 昇一

【要約】 【課題】不整磁場である渦電流磁場及び/又は残留磁場の補正を簡素な装置構成でその補正制御も簡素なものとし、不整磁場による画質劣化を低減して経済的な磁気共鳴イメージング装置を提供する。

【構成】傾斜磁場の印加によって誘起される不整磁場を補正するための撮影空間成分毎の不整磁場特性データを計測する(S201)。この計測した特性データから撮影空間における前記不整磁場の1次勾配成分と分極成分を算出し、この算出値から前記1次勾配成分と分極成分の平均値を算出する。この算出した平均値から前記不整磁場を補正する電流を算出し(S202)、これを傾斜磁場電流に重畳して不整磁場を補正する(S203)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測空間に静磁場を与える静磁場発生手段と、スライス方向と位相エンコード方向と周波数エンコード方向のそれぞれに傾斜磁場を与える傾斜磁場発生手段と、前記傾斜磁場の印加によって誘起される不整磁場を補正する補正コイル及び撮影空間成分毎の前記不整磁場の特性データを備え、該特性データに基づいて該補正コイルに供給する電流を制御することによって前記不整磁場を補正制御する補正磁場制御手段を備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記補正磁場制御手段は、前記特性データから前記不整磁場の1次勾配成分と分極成分を算出する成分算出手段と、該成分算出手段で算出した1次勾配成分と分極成分の平均値を算出する平均値算出手段と、該平均値算出手段で算出した前記1次勾配成分と分極成分の平均値から前記補正コイルに供給する電流を算出する補正電流算出手段とを備えて成る磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記成分算出手段は、前記不整磁場の補正対象となる軸と平行な方向の不整磁場の1次勾配成分と分極成分を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記成分算出手段は、前記特性データから励起断面領域の不整磁場データを抽出する抽出手段を備え、この抽出手段で抽出した不整磁場データから不整磁場の補正対象となる励起断面の1次勾配成分と分極成分を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記特性データは撮影空間に対して疎らな位置での不正磁場データであって、前記抽出手段は、前記疎らな位置での不正磁場データから前記励起断面に近い該断面を囲む少なくとも二つの断面の不正磁場データを選択する選択手段と、この選択手段で選択した不正磁場データを用いて補間によって前記励起断面の不整データを算出する手段とを備えて成る請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記補正コイルは前記傾斜磁場コイルであって、前記補正電流を前記傾斜磁場コイルに流れる傾斜磁場電流に重畳して供給して成る請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
さらに、前記静磁場発生手段による静磁場を均一にするシムコイル及び/又は局在コイルを備え、前記補正コイルは、前記傾斜磁場コイルと前記シムコイル及び/又は局在コイルであって、前記補正電流算出手段は、この手段で算出した補正電流を前記シムコイル及び/又は局在コイルと前記傾斜磁場コイルに分担して供給する補正電流分担手段を備えて成る請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係り、特に、傾斜磁場を印加した際に生じる渦電流磁場や残留磁場による不整磁場に起因して発生する傾斜磁場波形の歪みや磁場変動がもたらす様々な画質劣化を防止するための前記不整磁場によって誘起される空間かつ時間的に変化する磁場を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を印加し、それによって被検体から発生する核磁気共鳴信号を収集して画像化する装置であり、NMR信号に位置情報を付加するために、静磁場に重畳して傾斜磁場を印加する。
この傾斜磁場は、通常3軸方向の傾斜磁場が用いられ、撮影方法によって、それら傾斜磁場を印加するタイミングや傾斜磁場の波形や印加量が決められている。
【0003】
このような傾斜磁場パルスを制御して断層画像を得るMRI装置において、傾斜磁場パルスの波形および印加タイミングを正確かつ柔軟に制御して所望の印加量(傾斜磁場パルス波形と時間軸との囲む面積)を印加する必要がある。
【0004】
しかし、前記傾斜磁場パルスの印加によって渦電流磁場が誘起され、その原因となった傾斜磁場パルスの印加に伴って発生した後に、時間的に変動(時間依存性)し、かつ、空間的な分布(空間依存性)を有する。
【0005】
また、永久磁石を用いたMRI装置では、磁気履歴(ヒステリシス)特性を持つ強磁性体を装置構造物(磁気回路)に使用するため、前記渦電流磁場の他に空間的に分布(空間依存性)する残留磁場も発生する。
この残留磁場は、傾斜磁場パルスの印加を止めても、印加した傾斜磁場パルスの波形、印加した方向、および印加履歴に応じた残留磁場が残ってしまい、その結果として撮影空間の静磁場を複雑に歪ませる。
【0006】
このようにして発生する渦電流磁場や残留磁場の不整磁場(以下、特に誤解が生じない限り、渦電流磁場や残留磁場をまとめて不整磁場と記す)によって傾斜磁場パルスの印加量を所望の値で印加できなくなり、その結果としてエコー信号強度の低下や、再構成画像上において歪みやゴースト等のアーチファクトが発生し、画質が劣化する。
【0007】
上記不整磁場に起因する再構成画像の劣化を低減するための該不整磁場補正技術は特許文献1に開示されている。
特許文献1の補正技術は、傾斜磁場パルスを印加する方向と波形を色々変えて傾斜磁場パルスによって誘起される渦電流磁場や残留磁場の不整磁場を時間的および空間的に計測することで、不整磁場の各種依存性に関する較正データを取得し、この較正データに基づいてシムコイルや局在コイル若しくは傾斜磁場パルス発生系に対して補正電流を即時印加して補正するものである。
【特許文献1】特開2004-261591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示されている渦電流磁場の補正では、理論的には計測した渦電流磁場を理想的に補正することができるが、シムコイルも含めた渦電流補正系を実装するには、非常に複雑な装置構成となるために、装置原価の上昇を招き、経済性に難点がある。
【0009】
すなわち、計測した渦電流磁場の時間・空間依存性を、例えば球面調和関数の各次数項の係数とその時間変化で表して、x,y,zの方向毎に前記渦電流磁場を補正する較正データを用意し、このデータを用いて前記方向毎に各空間成分の補正電流を求め、各空間成分に対応する不整磁場補正コイルに前記補正電流をそれぞれ供給して不整磁場を補正する。
【0010】
この場合、不整磁場補正コイルには、球面調和関数の各次数項に準じたシムコイルを用い、さらに、MRI装置毎にカスタマイズした局在コイルを用いるので、シムコイル及び局在コイルは前記球面調和関数の各次数項に対応したものとするために該コイルは複雑化し、かつ較正データも膨大なものとなる。
【0011】
このように、特許文献1による技術を用いて実装するには、非常に複雑な装置構成となるので、実際には前記球面調和関数の2次項以上の不良磁場成分が存在しても、撮影空間の中心で計測した1次傾斜磁場成分と空間依存性を持たない成分であるB0成分(定数項)のみを補償する場合が殆どである。
【0012】
しかし、渦電流磁場の空間依存性による画質劣化は有意に存在し、撮影空間の中心付近で計測した渦電流磁場の1次傾斜磁場成分とB0成分のみを補償するだけでは不十分な場合が多い。例えば、撮影空間の中心付近では有用な画質が得られるが、中心から離れるにつれて画質が悪くなるという現象が代表的である。
このような渦電流磁場の補正の問題は、上記特許文献1に開示されている残留磁場の補正においても同様である。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであって、不整磁場である渦電流磁場及び/又は残留磁場の補正を簡素な装置構成でその補正制御も簡素なものとし、不整磁場による画質劣化を低減して経済的な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、計測空間に静磁場を与える静磁場発生手段と、スライス方向と位相エンコード方向と周波数エンコード方向のそれぞれに傾斜磁場を与える傾斜磁場発生手段と、前記傾斜磁場の印加によって誘起される不整磁場を補正する補正コイル及び撮影空間成分毎の前記不整磁場の特性データを備え、該特性データに基づいて前記補正コイルに供給する電流を制御することによって前記不整磁場を補正制御する補正磁場制御手段を備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記補正磁場制御手段は、前記特性データから前記不整磁場の1次勾配成分と分極成分を算出する成分算出手段と、該成分算出手段で算出した1次勾配成分と分極成分の平均値を算出する平均値算出手段と、該平均値算出手段で算出した前記1次勾配成分と分極成分の平均値から前記補正コイルに供給する電流を算出する補正電流算出手段とを備えて不整磁場を補正することを特徴とする。
【0015】
上記磁気共鳴イメージング装置の成分算出手段は、前記不整磁場の補正対象となる軸と平行な方向の不整磁場の1次勾配成分と分極成分を算出する手段である。
また、上記成分算出手段は、前記特性データから励起断面領域の不整磁場データを抽出する抽出手段を備え、この抽出手段で抽出した不整磁場データから不整磁場の補正対象となる励起断面の1次勾配成分と分極成分を算出する手段であることを特徴とする。
【0016】
上記のように、傾斜磁場の印加によって誘起される撮影空間における不整磁場(渦電流磁場及び/又は残留磁場)の1次勾配成分と分極成分のみを用いて前記不整磁場を補正するようにしたので、従来技術よりもきめの細かい補正が可能となって、装置構成及び前記不整磁場補正制御も簡素なものとなり、不整磁場による画質劣化の低減が可能となる。
【0017】
また、前記特性データは撮影空間に対して疎らな位置での不正磁場データであっても、前記抽出手段は、前記疎らな位置での不正磁場データから前記励起断面に近い該断面を囲む少なくとも二つの断面の不正磁場データを選択する選択手段と、この選択手段で選択した不正磁場データを用いて補間によって前記励起断面の不整データを算出する手段とを備えた構成でも良い。
【0018】
このように不整磁場を補正することにより、不正磁場計測時間の短縮及び不正磁場データ量が少なくなってトータルの処理時間が短縮され、これによって撮影スループットの向上にも寄与するものとなる。
【0019】
また、前記補正コイルは前記傾斜磁場コイルであって、前記補正電流を前記傾斜磁場コイルに流れる傾斜磁場電流に重畳して供給することを特徴とする。
このように、前記補正コイルに特別なコイルを用いる必要が無く、装置構成の簡単化を図ることが可能となる。
【0020】
さらに、前記静磁場発生手段による静磁場を均一にするシムコイル及び/又は局在コイルを備えた磁気共鳴イメージング装置にも本発明を適用することができる。この場合は、前記補正コイルは、前記傾斜磁場コイルと前記シムコイル及び/又は局在コイルであって、前記補正電流算出手段は、この手段で算出した補正電流を前記シムコイル及び/又は局在コイルと前記傾斜磁場コイルに分担して供給するようにすれば良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、傾斜磁場の印加によって誘起される撮影空間における不整磁場(渦電流磁場及び/又は残留磁場)の1次勾配成分と分極成分のみを用いて前記不整磁場を補正するようにしたので、前記不整磁場の補正を簡素な装置構成でその補正制御も簡素なものとなり、不整磁場による画質劣化を低減して実用的な磁気共鳴イメージング装置の提供が可能となる。
【0022】
また、前記不整磁場の補正電流を傾斜磁場コイルに流す傾斜磁場電流に重畳して供給すること、あるいは前記傾斜磁場コイルと静磁場発生手段による静磁場を均一にするシムコイル及び/又は局在コイルとに分担して供給することにより、特別な補正コイルを必要としないので、装置構成はさらに簡素なものとなり、装置コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
《MRI装置の全体構成》
最初に、本発明が適応されるMRI装置の概略を図1により説明する。
図1は本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、同図に示すように静磁場発生系1と、傾斜磁場発生系2と、送信系3と、受信系4と、信号処理系5と、シーケンサ6と、中央処理装置(CPU)7と、操作部8とを備えて構成される。
【0025】
静磁場発生系1は、被検体9の周りの空間にその体軸方向(水平磁場方式)または体軸と直交する方向(垂直磁場方式)に均一な静磁場を発生させるもので、被検体9の周りに永久磁石方式又は常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生手段が配置されている。
【0026】
傾斜磁場発生系2は、X,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル10と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源11とから成り、後述のシーケンサ6からの命令にしたがって3軸方向のコイルの傾斜磁場電源11が駆動されることにより、それぞれの方向の傾斜磁場パルスが被検体9に印加される。
【0027】
より具体的には、X,Y,Zのいずれかの1方向にスライス方向傾斜磁場パルスを印加して被検体9に対するスライス面を設定し、残り2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルスと周波数エンコード方向傾斜磁場パルスを印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0028】
送信系3は、被検体9の生体組織を構成する原子の原子核スピンにNMR現象を起こさせるために高周波磁場パルス(高周波のパルス状電磁波。以下、RFパルスと記す)を照射するもので、高周波発振器12と、変調器13と、高周波増幅器14と、送信側の高周波コイル15とから成る。
高周波発振器12から出力された高周波パルスをシーケンサ6からの指令によるタイミングで変調器13により振幅変調し、高周波増幅器14で増幅した後に被検体9に近接して配置された送信側の高周波コイル15に供給することにより、RFパルスが被検体9に照射される。
【0029】
受信系4は、被検体9の生体組織を構成する原子核スピンのNMR現象により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル16と、増幅器17と、直交位相検波器18と、A/D変換器19とから成り、送信側の高周波コイル15から照射されたRFパルスによる被検体9の応答であるエコー信号(NMR信号)が被検体9に近接して配置された受信側の高周波コイル16で検出される。
このエコー信号は増幅器17で増幅された後、シーケンサ6からの指令によるタイミングで直交位相検波器18により直交する二系統の信号に分離され、それぞれがA/D変換器19でディジタル量に変換されてエコーデータとして信号処理系5に送られる。
【0030】
信号処理系5は、受信系4で検出されたエコーデータを用いて画像再構成演算を行うと共に得られた画像の表示と記録等を行うもので、エコーデータのフーリエ変換を含む画像再構成等の処理及びシーケンサ6の制御を行うCPU7と、経時的な画像解析処理及び計測を行うプログラムやその実行において用いる不変のパラメータなどを記憶するROM(読み出し専用メモリ)20と、前計測で得た計測パラメータや受信系4で検出されたエコーデータ、及び関心領域設定に用いる画像を一時保管すると共にその関心領域を設定するためのパラメータなどを記憶するRAM(随時書き込み読み出しメモリ)21と、CPU7で再構成された画像データを記録する光磁気ディスク22及び磁気ディスク24と、これらの光磁気ディスク22又は磁気ディスク24から読み出した画像データを映像化して断層画像として表示するディスプレイ23とから成る。
【0031】
シーケンサ6は、RFパルスと傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU7の制御で動作し、被検体9の断層画像のエコーデータ収集に必要な種々の命令を送信系3、傾斜磁場発生系2、および受信系4に送る。
【0032】
操作部8は、上記信号処理系5で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス25とキーボード26を有する。
この操作部8はディスプレイ23に近接して配置され、操作者がディスプレイ23を見ながら操作部8を通してインタラクティブにMRI装置の処理を制御する。
【0033】
前記MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。
プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0034】
以下、上記構成のMRI装置において、公知の技術(例えば、特開平10-272120号公報、国際公開WO2004/004563号公報)を用いて渦電流及び残留磁場特性を計測し、この計測したデータに基づいて不整磁場を補正する本発明について具体的に説明する。
【0035】
《第1の実施形態》
図2は、本発明の第1の実施形態による渦電流磁場及び残留磁場の補正を行う処理のフローチャートである。
【0036】
(1)渦電流磁場及び残留磁場の特性データの計測(S201)
先ず、ステップS201で上記公知の技術を用いて渦電流磁場及び残留磁場を計測し、この計測結果を用いて渦電流及び残留磁場特性を個々のMRI装置に適した形式のデータリストを作成し、これを特性データとして図1の磁気ディスク24に記憶しておく。前記特性データは、不整磁場を特徴付ける変数(時定数、振幅)を数値化したもので、この特性データは、渦電流及び残留磁場の空間依存性を撮影空間に亘って位置情報も含めて計測したものである。
【0037】
前記特性データの様式は、図3の301のように3次元計測を用いて空間的に連続であっても良いし、302のように2次元計測を適当なインターバルで行って撮影空間を網羅しても良い。
また、渦電流及び残留磁場の計測に用いるMRI用ファントムも撮影空間の必要な領域を占める任意のものでよい。
【0038】
(2)渦電流磁場及び残留磁場補正値の算出(S202)
このステップS202は、本発明の第1の実施形態における要部の処理で、前記ステップS201で計測した特性データを用いて以下の処理により渦電流磁場及び残留磁場の補正値を算出する。
【0039】
先ず、渦電流磁場補正には、代表的な公知の技術である国際WO2004/004563号公報に開示されている手法を用いる。
これは、上記ステップS201の特性データの様式とした図3のX-Y平面、Y-Z平面、Z-X平面の基準3平面上の2点を用いて補正値を算出する手法で、例えば、X方向の渦電流補正値を求める場合は、Y=0におけるX-Z平面の特性データを用いる。
【0040】
すなわち、位置x、時間tiにおける磁場変化をB(x,ti)=g(ti)x+B0(ti)と仮定し、任意の2点x1、x2における磁場変化B(x1,ti)、B(x2,ti)から、(式1),(式2)を用いて1次勾配成分g(ti)と分極成分B0(ti)を算出する。
g(ti)=[B(x2,ti)−B(x1,ti)]/(x2−x1) (1)
B0(ti)=[B(x2,ti)+B(x1,ti)]/2−[g(ti)(x2+x1)] (2)
上記(式2)において、x1=−x2を満たす2点を選ぶとB0(ti)=[B(x2,ti)+B(x1,ti)]/2となりB0(ti)の計算が更に容易になる。
【0041】
本ステップS202における処理が従来技術と異なる点は、例としてX方向の渦電流補正値を求める場合、上記(式1)、(式2)を用いて1次勾配成分g(ti)と分極成分B0(ti)を全てのY方向についてのX-Z平面について算出し、それらの平均値を求めてこれを渦電流磁場の補正値とするところにある。
すなわち、Y方向の各位置にて求めた1次勾配成分をg(yj,ti)、分極成分をB0(yj,ti)とすると、本手法で求められる補正値は(式3),(式4)となる。
【数1】


【0042】
同様の処理は、残留磁場補正にも適用され、且つ全ての物理軸(X, Y, Z)に対して行われる。
【0043】
(3)補正値の転送と渦電流磁場、残留磁場の補正(S203)
上記ステップS202で求めた補正値は当該MRI装置の適当な記憶装置、例えば図1の磁気ディスク24にデータリストとして保存され、撮影前に図4に示す不整磁場補正装置30に転送される。
【0044】
不整磁場補正装置30は、前述の様にして求めた不整磁場の時間・空間依存性に対応して、傾斜磁場発生系2の各傾斜磁場コイル33(図1における10と同じ)に対して補正電流を即時印加して不整磁場の補正を行う。
【0045】
つまり、シーケンサ6によって計算された傾斜磁場パルス波形が不整磁場調整装置30の不整磁場調整装置30aに入力されると、不整磁場調整装置30aは、入力された傾斜磁場パルス波形に対応して、ステップS202で求めた補正値のデータテーブルである補正データテーブル30bに設定された補正データを参照して補正電流を計算し、各傾斜磁場コイル33に補正電流を供給して不整磁場を補正する。
【0046】
実際のパルスシーケンスでは、x,y,zの各方向に傾斜磁場パルスを印加するので、各方向の傾斜磁場パルスの印加によって誘起される不整磁場が空間成分毎に重ね合わされて時間的に変化していく。従って、このような重ね合わされた不整磁場を補正するためには、x,y,zの方向毎に上記補正データを空間成分毎に用意しておき、方向毎に各空間成分の補正電流を求め、空間成分毎に求められた補正電流を傾斜磁場パルスに印加して補正する。
【0047】
《第2の実施形態》
図5は、本発明の第2の実施形態による渦電流磁場及び残留磁場の補正を行う処理のフローチャートである。
本発明の第2の実施形態は、上記第1の実施形態のように補正値を平均化して装置固有の補正値として保持するのではなく、撮影空間の位置に応じた補正値をそのままMRI装置の記憶装置(例えば、図1の磁気ディスク24)に保持しておき、励起断面(撮影位置)に応じて前記補正値を前記記憶装置から抽出するものである。
【0048】
(1)渦電流磁場及び残留磁場の特性データの計測(S501)
上記第1の実施形態と同様に、公知の技術を用いて渦電流磁場及び残留磁場を計測し、この計測結果を用いて渦電流及び残留磁場特性を個々のMRI装置に適した形式のデータリストを作成し、これを特性データとして図1の磁気ディスク24に記憶しておく。
【0049】
(2)不整磁場データの抽出(S502)
図1の操作部26から入力して設定した臨床計測における励起位置・幅(励起断面)と一致する領域の不整磁場データを撮影前に前記ステップS501のデータリストから抽出する。
例えば図6に示すような2次元計測の場合は、MRI装置の撮影空間に渡って予め計測しておいた補正データ602の中から励起断面601の位置に対応するデータを抽出する。
【0050】
(3)励起部位の不整磁場補正値の算出(S503)
上記ステップS502で抽出した不整磁場データの平均値を算出し、それを励起部位の不整磁場補正値とする。
この不整磁場補正値は、上記(式3),(式4)式を用いて励起断面に渡って平均化した値である。
【0051】
(4)補正値の転送と渦電流磁場、残留磁場の補正(S504)
上記ステップS503で求めた補正値は当該MRI装置の適当な記憶装置、例えば図1の磁気ディスク24にデータリストとして保存され、撮影前に図4に示す不整磁場補正装置30に転送される。
不整磁場補正装置30は、前述の様にして求めた不整磁場の時間・空間依存性に対応して、傾斜磁場発生系2の各傾斜磁場コイル33(図1における10と同じ)に対して補正電流を即時印加して不整磁場の補正を行う。
【0052】
なお、上記ステップS502において、前記図6に示した602の補正データは、上記図3の301と同様、撮影空間全域に渡って計測した不正磁場データであるが、不正磁場計測時間の短縮、及び不正磁場データ量削減のために、図7の702に示すように撮影空間に対して疎らな位置での不正磁場データでも良い。
この場合、励起断面に近い不正磁場データを702から選択し、次のステップS503で前記不正磁場を補間により求めて補正値を決定する。
【0053】
上記ステップS502、S503、S504の処理は、撮影開始前にスライス毎に行って算出した位置依存の補正値はMRI装置に恒久的に保存するものでなく、撮影毎に更新する。
また、3次元撮影の場合も、2次元撮影と同様の処理をスラブ毎に行い、励起スラブ位置に応じた補正値を算出して不整磁場を補正する。
【0054】
以上、上記第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したように、撮影条件に適した不整磁場である渦電流磁場及び残留磁場の補正データを適宜算出して補正磁場を補正することによって、よりきめの細かい補正が可能となる。
これによって、簡素な装置構成によりその補正制御も簡素なものとなり、不整磁場による画質劣化を低減して実用的な磁気共鳴イメージング装置を得ることが可能となる。
【0055】
なお、上記実施形態1,2では、渦電流磁場と残留磁場の両方の不整磁場を補正する例について説明したが、渦電流磁場と残留磁場の両方を補正する必要がない場合は、いずれか一方の磁場を補正すれば良い。
【0056】
さらに、本発明は、静磁場発生系による静磁場の不均一を補正するシムコイル及び/又は局在コイルを備えたMRI装置にも適用可能である。
この場合は、不整磁場調整装置30a’と補正データテーブル30b’とから成る不整磁場補正装置30’を図8のように構成し、上記第1の実施形態又は第2の実施形態で算出した補正データに基づく補正電流を傾斜磁場コイル31(図1の10)とシムコイル及び/又は局在コイル32に分担して流し、不整磁場を補正するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態による渦電流磁場および残留磁場の補正を行う処理のフローチャート。
【図3】渦電流磁場及び残留磁場の特性データの様式。
【図4】不整磁場補正系の概略図。
【図5】本発明の第2の実施形態による渦電流磁場および残留磁場の補正を行う処理のフローチャート。
【図6】2次元計測データから励起断面の補正データを抽出する説明図。
【図7】疎らな2次元計測データから励起断面に近い不正磁場データを選択して補正データを算出する説明図。
【図8】シムコイルあるいは局在コイル備えたMRI装置に本発明を適用した場合の不整磁場補正系の概略図。
【符号の説明】
【0058】
1 静磁場発生系、2 傾斜磁場発生系、3 送信系、4 受信系、5 信号処理系、6 シーケンサ、7 中央演算装置(CPU)、8 操作部、9 被検体、10 傾斜磁場コイル、11 傾斜磁場電源、15 高周波照射コイル、16 高周波受信コイル、20 ROM 、21 RAM 、23 ディスプレイ、24 磁気ディスク、25 トラックボール又はマウス、26 キーボード、30 不整磁場補正装置、30a 不整磁場補正調整装置、30b 補正データテーブル、31 傾斜磁場コイル、32 シムコイル及び/又は局在コイル
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−22877(P2008−22877A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195175(P2006−195175)