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【発明の名称】 磁気共鳴イメージング装置
【発明者】 【氏名】黒目 明

【氏名】竹島 弘隆

【氏名】八尾 武

【氏名】小原 孝之

【氏名】樋口 佳也

【要約】 【課題】傾斜磁場コイルとシム鉄との間の対流と放射による伝熱量を低減することにより、シムトレイの温度変動を抑制する。

【構成】静静磁場を発生する静磁場発生手段と、静磁場の空間内に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、静磁場の均一度を調整するシム部材を保持すると共に静磁場発生手段と傾斜磁場発生手段との間に配置されたシムトレイを有する均一度調整手段と、シム部材の温度変動を抑制する手段と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場の空間内に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記静磁場の均一度を調整するシム部材を保持すると共に前記静磁場発生手段と前記傾斜磁場発生手段との間に配置されたシムトレイを有する均一度調整手段と、を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
液体冷媒により前記シム部材の温度変動を抑制する手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記傾斜磁場コイルと前記シムトレイの対向面の少なくとも一方の面に配置された反射冷却部材を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場コイルの前記シムトレイとの対向面に熱放射を抑制する部材が塗布されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記反射冷却部材に接触して配置された第1の冷却パイプを有し、前記第1の冷却パイプに前記冷媒を循環させる手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記傾斜磁場コイル内に配置された第2の冷却パイプを有し、前記第1の冷却パイプと前記第2の冷却パイプとが連結され、前記液体冷媒が前記第1の冷却パイプを先にして流されることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記静磁場発生手段は、前記静磁場を発生する静磁場発生源と該静磁場発生源を収容する磁石容器とを有して成り、
前記温度変動制御手段は、前記磁石容器の前記傾斜磁場コイルに対向する面に配置された該磁石容器より高い熱伝導率を有する部材を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記磁石容器の前記傾斜磁場コイルに対向する面に配置されたフィンを有していることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記磁石容器に接触して配置された第3の冷却パイプを有し、前記第3の冷却パイプに前記液体冷媒を循環させる手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記シムトレイは、その内部に空隙を有し、前記空隙に前記液体冷媒を通過させる手段を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記温度変動制御手段は、前記シムトレイ内に配置された第4の冷却パイプを有し、前記第4の冷却パイプに前記液体冷媒を循環させる手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に、静磁場均一度を補正するシム部材及びシムトレイの温度変動を抑制する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、静磁場中に配置された被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
高画質の画像を取得するためには、静磁場の均一度を可能な限り高く調整して、その高均一度を安定して維持する必要がある。この静磁場の均一度調整には、シムコイルを配置してその電流を制御するアクティブシミング方式と、シム鉄などの磁性部材を配置するパッシブシミング方式がある。このパッシブシミング方式による均一度調整では、シム鉄が温度変動するとその磁化特性が変化するので静磁場均一度も変動する。その結果、画質が劣化してしまう。シム鉄の温度変動をもたらす主な原因は、傾斜磁場コイルにて発生するジュール熱がシム鉄に熱伝導してくるためである。特に、最近の高機能シーケンスでは、高傾斜磁場強度及び高静磁場均一度が要求されている。高傾斜磁場強度のために電流量を増加させると、ジュール熱が電流の2乗に比例して増加し、その熱で静磁場均一度がさらに悪化する可能性がある。このため、この相反する高傾斜磁場強度と高静磁場均一度を成立させる構造が必要である。
【0004】
特許文献1では、傾斜磁場コイルと磁石間にシム鉄片を固定し、傾斜磁場コイルとシム鉄を切り離している。これにより、傾斜磁場コイルからの直接の伝熱によるシム鉄の温度変動を抑制することが可能になる。
【特許文献1】特開2002-336215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、傾斜磁場コイルからのシム鉄への伝熱形態としては、傾斜磁場コイルとシム鉄との間の空気を媒体とした対流と、傾斜磁場コイルとシム鉄を固定している部材を介した熱伝導と、傾斜磁場コイルとシム鉄間の放射がある。傾斜磁場コイルとシム鉄の間隔が狭いと、周囲気体による伝熱量が増加する。一方、放射による伝熱量は、両者の間隔には関係なく、一定値である。また、傾斜磁場コイルを固定する部材を介した熱伝導は、局所的であり固定部材の数も少ないので、熱伝導の影響は限定的となる。よって、シム鉄の温度上昇を抑制するためには、この対流と放射による伝熱量を低減する必要がある。しかし、特許文献1には、この対流と放射による伝熱量については考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、傾斜磁場コイルとシム部材との間の対流と放射による伝熱量を低減することにより、シム部材の温度変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のMRI装置は以下のように構成される。即ち、静静磁場を発生する静磁場発生手段と、静磁場の空間内に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、静磁場の均一度を調整するシム部材を保持すると共に静磁場発生手段と傾斜磁場発生手段との間に配置されたシムトレイを有する均一度調整手段と、シム部材の温度変動を抑制する手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のMRI装置によれば、傾斜磁場コイルとシム部材との間の対流と放射による伝熱量を低減できるので、シム部材の温度変動を抑制することができる。これにより、例えば高傾斜磁場強度及び高静磁場均一度が必要な高機能なシーケンスにおいても、画質劣化の少ない良好な画像が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
最初に、本発明が適用されるMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1に示すとおり、MRI装置には、ベッド15上に載置された被検体10に印加する静磁場を発生する静磁場磁石12を備えられている。この静磁場発生磁石12の静磁場発生源は、超電導コイル、常電導コイル、又は永久磁石のいずれでも良い。また、被検体10に印加する互いに異なる3方向、例えば、X、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル14が備えられている。これらの3方向のいずれかをスライス方向、位相エンコード方向、周波数エンコード方向として傾斜磁場が印加される。また、被検体10に印加する高周波磁場パルスすなわちRFパルスを発生するRFコイル16と、被検体10から発生するNMR信号すなわちエコー信号を検出するRFプローブ18が備えられている。また、RFプローブ18により得られたエコー信号に基づいて画像を再構成する信号処理部20と、信号処理部20により再構成された画像を表示する表示部22が備えられている。
【0011】
以上のように構成されたMRI装置の動作について説明する。静磁場磁石12により被検体10に静磁場が印加される。静磁場を印加された被検体10の観察部位(例えば心臓)に対して、制御部24の指令に基づいた傾斜磁場電源26からの電流に応じて、傾斜磁場コイル14からスライス選択傾斜磁場が印加される。さらに、スライス選択傾斜磁場の印加とともに、制御部24の指令に基づいた高周波送信部28からの高周波電流に応じてRFコイル16からRFパルスが観察部位に対して照射される。その結果、観察部位の構成物質中の原子核(例えば水素原子核)にNMR現象が誘起されてエコー信号が発生する。NMR現象が誘起された観察部位の位置情報を取得するために、傾斜磁場コイル14から位相エンコード傾斜磁場と周波数エンコード傾斜磁場がエコー信号に印加される。このエコー信号が制御部24の指令に基づいてRFプローブ18から信号検出部30により検出される。検出されたエコー信号に基づいて信号処理部20により観察部位の画像が2次元的又は3次元的に再構成され、再構成された2次元又は3次元画像が表示部22に表示される。
【0012】
次に、MRI装置の特に磁石周辺の構造を図2に基づいて説明する。図2は、静磁場磁石12の縦断面(静磁場方向に平行な断面)の概要を表す図である。静磁場磁石12は、対向して配置され、均一磁場領域55を形成する。図示せぬ被検体10は、均一磁場領域55に配置され、図示せぬベッド15上に横たわっている。上下一対の磁石容器の各々の均一磁場領域55側には、それぞれ凹部が設けられ、この凹部に傾斜磁場コイル14とシムトレイ56が配置される。傾斜磁場コイル14は、均一磁場領域55を挟んで対向配置され、静磁場磁石12と均一磁場領域55との間に固定される。RFコイル16は、均一磁場領域55を挟んで対向配置され、均一磁場領域55と傾斜磁場コイル14の間に固定される。また、シムトレイ56は、静磁場磁石12と傾斜磁場コイル14の間に配置され、鉄などの磁性体片又は磁石片を保持している。
【0013】
図3に、シムトレイ56の一例を示す。図3は、円盤状のシムトレイ56の左上1/4部分を示し、(a)に上面図を(b)に断面図を示す。他の図示してない部分は、この左上1/4部分と同様である。シムトレイ56には、複数の所望の位置に穴60が設けられ、穴60に所定の磁気特性を持つシム鉄(図示せぬ)が固定される。シムトレイ56には、SUS、アルミなどの金属や、ガラスエポキシ積層板などの樹脂等の非磁性部材が用いられる。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明のMRI装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、傾斜磁場コイルとシムトレイの対向面の少なくとも一方の面に反射冷却部材を配置する。好ましくは、シムトレイの外縁部に冷却パイプを配置して、反射冷却部材と冷却パイプとを熱的に接触させてシムトレイを構成し、冷却パイプに冷媒を流すことによって、シムトレイを冷却すると共に、その温度を一定の保持する。
【0015】
最初に、シムトレイ56の傾斜磁場コイル14からの放射熱を抑制する構造例を図4と図5に基づいて説明する。
図4は、シムトレイ56の冷却構造を含む、シムトレイ56周辺の断面図であって、特に静磁場磁石12の上側部分を示す。なお、図4は凹部を強調して表わしているが、実際の凹の領域は静磁場方向にもっと狭い。静磁場磁石12の下側部分は静磁場中心を含む水平面に関して図4に示す上側部分と略対称な配置構造になる。
シムトレイ56の傾斜磁場コイル14側表面に反射冷却板57を貼り付ける。反射冷却板57はシムトレイ56の外周部にて冷却パイプ58に接触する。冷却パイプ58には、検査室外にある図示せぬ熱交換器で一定温度に制御された冷媒がポンプにより供給される。このようにして冷却パイプ58と反射冷却板57を介して冷媒によりシムトレイ56が冷却される。(冷媒は水などの液体や空気などの気体が可能であるが、水が好適である。)
【0016】
なお、傾斜磁場コイル14のシムトレイ56との対向面に低放射率を有する反射冷却板57を貼り付けても良い。傾斜磁場コイル14とシムトレイ56との互いの対向面の少なくとも一方の面に反射冷却板57を貼り付ければよい。
【0017】
また、傾斜磁場コイル14の表面には、その表面からの放射熱を抑制して低い放射率とするために、シリカや石灰などの粉末状の低放射率部材59を略全面に塗付する。又は、アルミや銅などの板或いは箔を接着しても良いし、これらを蒸着させて表面コーティングしても良い。渦電流の発生を抑えるために、厚さは可能な限り薄い方が良く、数十〜数百μmが好適である。なお、傾斜磁場コイル14のシムトレイ56との対向面に反射冷却板57を貼り付けた場合には、この反射冷却板57上に低放射率部材59を塗付する。
【0018】
図5に、反射冷却板57の一例を示す。図5は、円盤状の反射冷却板57の左上1/4部分の上面図を示し、他の図示してない部分はこの左上1/4部分と同様である。この反射冷却板57は、高熱伝導率で非磁性材料が良く、例えばアルミや銅、チタンなどが好適である。さらに、反射冷却板57の表面は、研磨等により放射率を可能な限り小さくする。また、渦電流による画像劣化を防ぐために、表面にはスリット61を設ける。このスリット61の幅は、1mm程度と小さくすることで、高熱伝導とすることが好ましい。また、反射冷却板57に流れる渦電流に対して直交する方向にスリットの長手方向が配置されることが好ましく、図5は放射状にスリット61が配置されている例を示している。また、反射冷却板57が厚くなると渦電流が大きくなり、反射冷却板57自体が発熱するので厚さは薄い方が良い。しかし、反射冷却板57を薄くすると熱伝導は小さくなる。従って、実際には、渦電流の大きさと熱伝導による伝熱量を考慮して厚さを決定する。具体的には、数百μm〜数mmとすることができる。厚さが薄く、期待した除熱量が得られなければ、冷却パイプ58をシムトレイ56内に複数ターン配置しても良い(詳細は第4の実施形態に記載)。
【0019】
さらに、図6に示すように、傾斜磁場コイル14内に冷却パイプを用いた冷却構造65を設け、シムトレイ用冷却パイプ58と連結させてもよい(連結部は図示してない)。冷媒を流す順序としては、シムトレイ用冷却パイプ58に先に冷媒を流す方が良いが、後でも良い。なお、上記構造は、コスト及びシステムの増大を抑えるために傾斜磁場コイル14の冷却構造とシムトレイ56の冷却構造とを連結させたが、これらを別々の冷却系統として、それぞれに熱交換器から一定温度に制御された冷媒を通しても良い。このようにして傾斜磁場コイル14も冷却することにより、傾斜磁場コイル14の通電電流を増加させることができる。
【0020】
次に、シムトレイ56の周囲気体の対流及び熱伝導による伝熱量を抑制する構造例を説明する。対流及び熱伝導による伝熱量を抑制するためには、傾斜磁場コイル14とシムトレイ56間に断熱材を挿入することが好適である。断熱材は厚い方が断熱効果を得られるため、傾斜磁場コイルとシムトレイ間の間隔が大きい場合に有効である。図13に、断熱材配置の具体例を示す。断熱効果を増大させるために、断熱材の径は、傾斜磁場コイル14とシムトレイ56の径よりも大きくしてあるが、同じ径でも良い。断熱材は、セラミックファイバー、ロックウール、発砲ウレタン、ポリウレタンフォームなどが好適である。
【0021】
また、傾斜磁場コイル14とシムトレイ56の周囲を真空にして真空の断熱効果を利用しても、対流及び熱伝導による伝熱量を抑制することができる。真空にする場合の具体例は、例えば特許文献2に記載されているので、これを用いることができる。
【特許文献2】特願平9-327205号公報
【0022】
以上説明した本実施形態の構造とすることにより、傾斜磁場コイル14で発生したジュール熱及びシムトレイ56に伝わった熱は、シムトレイ56の表面と傾斜磁場コイル14の表面の少なくとも一方に貼り付けられた熱伝導の良い反射冷却板57を介して、冷却パイプ58内の冷媒へ移動し、検査室外部へ放出される。また、傾斜磁場コイル14の表面に塗布された低放射率部材59により、放射による伝熱が抑制される。これらにより、離散的にシムトレイ穴60に配置されているシム鉄等のシム部材を均一に冷却し、局所的な温度変動を抑え、さらに温度の時間変化も抑制して温度を一定に保持することができる。その結果、静磁場均一度が安定するので、画像劣化を防ぐことができる。また、シムトレイ56の冷却により、静磁場均一度の変動が抑制されるため、スペクトロスコピなどの高機能なシーケンスにも安定して対応することができるようになる。
【0023】
(第2の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態のシムトレイの冷却構造は、磁石容器に冷却手段を配置して、傾斜磁場コイルから放射により伝わってくる熱を外部に排出することにより、間接的にシムトレイの温度変化を抑制する形態である。
以下、第1の実施形態と同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0024】
図7に、本実施形態のシムトレイの冷却構造の一例を示す。
図7は、上部磁石容器12の断面図を示す。なお、図7は凹部を強調して表わしているが、実際の凹領域は静磁場方向にもっと狭い。磁石容器12の下側部分は静磁場中心を含む水平面に関して図7に示す上側部分と略対称な配置構造になる。磁石容器12の凹部の静磁場方向に平行な面にアルミや銅などの熱伝導の良いプレート70を貼り付け、さらに、プレート70の表面には、放射による伝熱を促進させるために、放射率の高い黒体塗料71を塗付する。この黒体塗料71は放射率が極めて1に近い。
【0025】
また、図示せぬ検査室外熱交換機に接続された冷却パイプ72がプレート70に接触して配置されており、冷媒が冷却パイプ72内に流されることにより、主にプレート70の熱を外部に放出する。これにより、傾斜磁場コイル14から放射により磁石容器12に伝わった熱は、プレート70に伝わり、プレート70の熱伝導によりプレート70に接触している冷却パイプ72内を流れる冷媒を介して外部へ放出される。冷媒は液体、気体のいずれでも良いが、水が好適である。
【0026】
図8に、本実施形態のシムトレイの冷却構造の別例を示す。図8は、上部磁石容器12の断面図を示す。図8に示す冷却構造は、図7のプレート70及び黒体塗料71の代わりに、フィン73を磁石容器12の凹部の静磁場方向に平行な面に設けて、冷却効率を増加させる構造である。フィン73の各々は、静磁場方向に垂直な方向に延在するように間隔を空けて配置される。フィン73の数は1以上有ればよい。図8は、傾斜磁場コイル14とシムトレイ56との間にまで延在するように配置された径の長いフィン73-1と、傾斜磁場コイル14の側面の対向面に配置された径の短い複数のフィン73-2の例を示している。図7と同じようにプレート70を配置して、その上にフィン73と冷却パイプ72を例えば溶接又はボルト締結により配置する。シムトレイ56設置後に、フィン73を取り付け、その後にシム鉄(例えば、M8、M6のボルト形状のもの)を取り付ける作業を行う。特にシムトレイを取り出すことは行わない。
【0027】
以上説明した本実施形態の構造とすることにより、傾斜磁場コイルから放射により磁石容器に伝わった熱が効率的に外部に放出されることになるので、凹部内の温度を一定に保持することができる。これにより、シムトレイに配置されているシム鉄等のシム部材の温度の時間変化を抑制して温度を一定に保持することができる。その結果、静磁場均一度が安定するので画像劣化を防ぐことができる。
【0028】
(第3の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第3の実施形態を説明する。本実施形態のシムトレイの冷却構造は、シムトレイ内に冷媒を通過させることにより、直接シムトレイを冷却する形態である。以下、第1の実施形態と同じ部分の詳細な説明は省略する。
図9に、本実施形態のシムトレイの構造の一例を示す。図9はシムトレイの静磁場方向の断面図を示す。一対のサンドイッチ板94によりホルダー95及び側面板96を挟み込んで固定・接着している。ホルダー95は、シム鉄等のシム部材をホールドする部材であり、ネジ穴が設けられている。このネジ穴にシム部材がネジ込まれてホルダー95に固定される。サンドイッチ板94と、ホルダー95と、側面板96とにより、ホルダー95間に空隙の有る構造、好ましくはハニカム構造が形成される。また、側面板96の一部に、冷媒を空隙に通すための出入り口用の一対のソケット97が設けられている。
【0029】
このような構造により、一方のソケット97から流入してきた冷媒がシムトレイ内の空隙を満たし、シムトレイに伝わった熱を吸収して、他方のソケット97から外部へ流出することにより、シムトレイ内の熱を外部に放出することができる。なお、空隙に冷媒を通過させるための循環ポンプや配管の図示は省略してある。冷媒は、液体、気体のいずれでも良いが、水が好適である。
【0030】
サンドイッチ板94は、アルミやチタンを用いて反射冷却板57を兼用しても良いし、樹脂を用いて、表面に反射冷却板57を貼り付けても良い。また、サンドイッチ板94には、シム鉄等のシム部材を貫通させるための貫通孔が設けられており、この貫通孔とホルダー95のネジ穴との位置が一致するように、貫通孔とホルダー95の配置位置が調整される。
【0031】
図10にホルダー95の例を示す。(a)は外形形状が四角のホルダー例を、(b)は外形形状が円筒のホルダー例をそれぞれ示しているが、ホルダー95の外形形状は、これらの形状の限定されず他の形状でも良い。またホルダー95にはシム鉄等のシム部材を固定するための穴或いはネジ穴98が設けられている。この様なホルダー95が、その穴又はネジ穴98とサンドイッチ板94の貫通孔とが互いに貫通するようにシムトレイ56内に固定される。
【0032】
図11に、本実施形態のシムトレイの構造の別例を示す。図11は上部磁石容器12の断面図を示す。磁石容器12の下側部分は静磁場中心を含む水平面に関して図11に示す上側部分と略対称な配置構造になる。図11に示すように、冷却用パイプ58をシムトレイ56の磁石側に固定する。図12に、冷却用パイプ58の配管構造の一例を示す。図12は、シムトレイ56の冷却パイプ58側の上面図を示す。一般的に、通電中の傾斜磁場コイル14には温度分布が生じる。これは、ターン密度が高い箇所の導体幅は小さく(=導体断面積が小さく)なるため、発熱量が大きくなることが原因である。そこで、傾斜磁場コイル14の温度分布に合わせて予め冷却用パイプ58の配管パターンを調整して構成する。つまり、ターン密度の高い箇所の近傍に冷却パイプ58が配置されるように冷却用パイプ58の配管パターンを構成する。図12は、渦巻き状の配置パターン例を示す。ターン密度の高い端部領域の配管密度が高くされている。
【0033】
図14に傾斜磁場コイル14の内のYコイルのターン密度分布を、図15に図14に対応した冷却用パイプ58のパターン配置の具体的例を示す。図14において、ターン密度が高い箇所を斜線部で示す。図15のように、ターン密度が高い箇所に冷却パイプの本数を多く配置して配管密度を高くし、ターン密度が低い箇所に冷却パイプの本数を少なく配置して配管密度を低くすることで、効率良く冷却することができる。
【0034】
以上説明した本実施形態の構造とすることにより、シムトレイ内を冷媒を通過させてシムトレイを直接冷却することができるので、シム鉄等のシム部材を均一に冷却し、局所的な温度変動を抑え、さらに温度の時間変化も抑制して温度を一定に保持することができる。その結果、静磁場均一度が安定するので画像劣化を防ぐことができる。
【0035】
以上までが、本発明のMRI装置における、シムトレイの冷却構造の各実施形態の説明である。しかし、本発明のMRI装置は、上記実施形態の説明で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で他の形態を取り得る。
例えば、前述の各実施形態は垂直磁場方式のMRI装置におけるシムトレイの冷却構造について説明したが、水平磁場方式のMRI装置においても同様に適用することが可能である。
また、各実施形態で開示したシムトレイの冷却構造の内の任意の複数を組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の磁気共鳴イメージング装置の一例を示す図。
【図2】本発明の磁気共鳴イメージング装置の特に磁石部を示す図。
【図3】本発明の実施例のシムトレイ形状を示す図。
【図4】本発明の実施例の冷却構造を示す図。
【図5】本発明の実施例の反射冷却板を示す図。
【図6】本発明の実施例の冷却構造を示す図。
【図7】本発明の実施例の冷却構造を示す図。
【図8】本発明の実施例の冷却構造を示す図。
【図9】本発明の実施例のシムトレイ構造を示す図。
【図10】本発明の実施例のホルダーを示す図。
【図11】本発明の実施例の冷却構造を示す図。
【図12】本発明の実施例の冷却パイプ配管パターンを示す図。
【図13】傾斜磁場コイルとシムトレイ間に断熱材を配置する例を示す図。
【図14】Yコイルの傾斜磁場コイル14のターン密度分布を示す図。
【図15】図14に対応した冷却用パイプ58のパターン配置の具体的例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
12 静磁場発生装置、14 傾斜磁場コイル、16 高周波磁場コイル、15 ベッド、55 均一磁場領域、56 シムトレイ、57 反射冷却板、58 冷却用パイプ、59 粉末,、60 シム鉄用穴、61 スリット、70 プレート、71 黒体塗料、73 フィン、94 サンドイッチ板、95 ホルダー、96 側面板、97 ソケット
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−12118(P2008−12118A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187329(P2006−187329)